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特許7495455多孔性低減要素を有する縫合材及び関連するメディカルデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】多孔性低減要素を有する縫合材及び関連するメディカルデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61L 17/04 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
A61L17/04
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022146146
(22)【出願日】2022-09-14
(62)【分割の表示】P 2020534442の分割
【原出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2022171798
(43)【公開日】2022-11-11
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】62/608,349
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/227,954
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ティファニー ジェメッタ
(72)【発明者】
【氏名】レイチェル ラッドスピナー
(72)【発明者】
【氏名】エレナ テン
(72)【発明者】
【氏名】フランクリン シー. ウェザレル
【審査官】新留 素子
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-506494(JP,A)
【文献】特表平11-508811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある長さ、第一の端部及び前記第一の端部の反対側の第二の端部を画定する可撓性で長尺のコードを含み、前記コードは前記第一の端部から前記第二の端部に延在しそして多孔性表面を有するコアを含み、前記コードは、前記コードの長さに沿って、第一の方向に前記コアの周りにらせん状に巻かれた第一の部分と前記第一の方向と反対の第二の方向に前記コアの周りにらせん状に巻かれた第二の部分を含む複合材フィルムをさらに含む、縫合デバイス。
【請求項2】
第一の組織で第一の位置に取り付けるように構成されたコードの第一の端部に第一の取り付け要素をさらに含み、第二の組織で第二の位置に取り付けるように構成されたコードの第二の端部に第二の取り付け要素をさらに含む、請求項1記載の縫合デバイス。
【請求項3】
前記複合材フィルムは、前記コアの少なくとも一部の上に位置する多孔性低減要素である、請求項記載の縫合デバイス。
【請求項4】
前記複合材フィルムは、前記コアの前記多孔性表面を覆っている、請求項記載の縫合デバイス。
【請求項5】
前記複合材フィルムは、非透過性フィルムである、請求項記載の縫合デバイス。
【請求項6】
前記複合材フィルムは、前記コアの表面の微細構造よりも小さい細孔を有する微細構造を有するePTFEフィルムを含む、請求項記載の縫合デバイス。
【請求項7】
前記複合材フィルムは、前記コアの一部に結合されている、請求項1記載の縫合デバイス。
【請求項8】
前記コアは、ねじられたフルオロポリマー又はフルオロポリマー複合材から形成されている、請求項1記載の縫合デバイス。
【請求項9】
前記コアは、共に、半径方向に集められ、束ねられ又はねじられたフィルムの平らなシートから形成されている、請求項記載の縫合デバイス。
【請求項10】
前記複合材フィルムは、前記コアの一部の上のエラストマーテトラフルオロエチレン(TFE)-ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)コポリマーコーティング、エラストマー性材料TFE-PMVEコポリマーコーティング又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーコーティングを含み、前記コアの一部でコアの表面を非孔質にし、
前記エラストマーTFE-PMVEコポリマーは40~80質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及び20~60質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含み、前記エラストマー性材料TFE-PMVEコポリマーは33~39質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及び67~61質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含み、前記非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーは27~32質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及び73~68質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含む、請求項1記載の縫合デバイス。
【請求項11】
前記複合材フィルムは、前記コアの一部の細孔中に存在するエラストマーTFE-PMVEコポリマー、エラストマー性材料TFE-PMVEコポリマー又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーを含み、前記コアの一部でコアの表面を非孔質にし、
前記エラストマーTFE-PMVEコポリマーは40~80質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及び20~60質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含み、前記エラストマー性材料TFE-PMVEコポリマーは33~39質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及び67~61質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含み、前記非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーは27~32質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及び73~68質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含む、請求項1記載の縫合デバイス。
【請求項12】
前記複合材フィルムは、前記コアの一部の細孔中に存在するエラストマーTFE-PMVEコポリマー、又はエラストマー性材料TFE-PMVEコポリマーを含み、前記コアの一部の上に非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーコーティングをさらに含み、前記コアの一部でコアの表面を非孔質にし、
前記エラストマーTFE-PMVEコポリマーは40~80質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及び20~60質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含み、前記エラストマー性材料TFE-PMVEコポリマーは33~39質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及び67~61質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含み、前記非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーは27~32質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及び73~68質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含む、請求項1記載の縫合デバイス。
【請求項13】
前記複合材フィルムは、前記コアの一部の細孔の上の及び前記コアの一部の細孔中に存在するエラストマーTFE-PMVEコポリマーコーティング、エラストマー性材料TFE-PMVEコポリマーコーティング又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーコーティングを含み、前記コアの一部でコアの表面を非孔質にし、
前記エラストマーTFE-PMVEコポリマーは40~80質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及び20~60質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含み、前記エラストマー性材料TFE-PMVEコポリマーは33~39質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及び67~61質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含み、前記非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーは27~32質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及び73~68質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含む、請求項1記載の縫合デバイス。
【請求項14】
ある長さ、第一の端部及び前記第一の端部の反対側の第二の端部を画定する可撓性で長尺のコードを含み、前記コードは前記第一の端部から前記第二の端部に延在するコアを含み、前記コアは、ねじられたフルオロポリマー又はフルオロポリマー複合材から形成されておりおよび多孔性表面を有し、前記コードは前記コアの周りにらせん状に巻き付けられた第一の部分を含む多孔性低減要素をさらに含み、
前記多孔性低減要素は、前記多孔性低減要素の前記第一の部分に対して反対方向に前記コアの周りにらせん状に巻き付けられた第二の部分を含む、縫合デバイス。
【請求項15】
前記コアは、共に、半径方向に集められ、束ねられ又はねじられたフィルムの平らなシートから形成されている、請求項14記載の縫合デバイス。
【請求項16】
前記多孔性低減要素は、複合材フィルムである、請求項14記載の縫合デバイス。
【請求項17】
前記複合材フィルムは、非透過性フィルムである、請求項16記載の縫合デバイス。
【請求項18】
前記複合材フィルムは、前記コアの表面の微細構造よりも小さい細孔を有する微細構造を有するePTFEフィルムである、請求項17記載の縫合デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年12月20日に出願された仮出願第62/608,349号の利益を主張する2018年12月20日に出願された米国特許出願第16/227,954号の優先権を主張し、すべての目的のためにその全体を本明細書に取り込む。
【0002】
分野
本開示は、一般に、性能が改善された縫合材の実施形態に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
縫合材は、怪我、切開、手術、骨などで切断されたときに、人又は動物の体の皮膚、内臓、血管及び他の組織を一緒に、又は、人体の組織を非組織(例えば、メディカルデバイス)に保持するために使用されるメディカルデバイスである。創傷閉鎖の他の方法と同様に、縫合材を利用することにより、治癒が起こり得るまで組織の縁が一緒に保持される機会が可能になる。縫合材はまた、心臓血管手術、軟部組織の近置、血管移植片の吻合、頸動脈内膜剥離術、腹側ヘルニア修復、鼠径ヘルニア修復、口腔外科手術及び一般的な外科的吊り下げ手術にも使用できる。様々な用途に適した異なる特性を持つ様々なタイプの縫合材がある。一般に、縫合材は、縫合に使用して適切な結び目を形成できるように、強く、生体適合性がありそして可撓性でなければならず、一般に長尺コード又は糸である。
【0004】
永久的又は長期的な移植において、縫合材は変性し、延伸し、又は、さもなければ物理的特性を失って破損に至ることがある。この意味での破損は、意図した目的に有害な縫合材の状態である。したがって、縫合材の破損を回避する縫合材の改善が必要である。
【発明の概要】
【0005】
概要
1つの例(「例1」)によれば、縫合デバイスは、ある長さ、第一の端部及び前記第一の端部の反対側の第二の端部を画定する可撓性で長尺のコードを含み、前記コードは前記第一の端部から前記第二の端部に延在しそして多孔性表面を有するコアを含み、前記コードは前記コアの少なくとも一部の上に多孔性低減要素をさらに含み、前記コアの一部の表面の多孔性をなくす又は細孔を覆うように構成されている。
【0006】
別の例(「例2」)によれば、例1の縫合デバイスに加えて、前記多孔性低減要素は、前記コアの一部に巻き付けられて結合された非透過性フィルムである。
【0007】
別の例(「例3」)によれば、例2の縫合デバイスに加えて、前記非透過性フィルムは、前記コアの表面の微細構造よりも小さい細孔を有する微細構造を有するePTFEフィルムである。
【0008】
別の例(「例4」)によれば、例1~3のいずれか1つの縫合デバイスに加えて、前記多孔性低減要素は、前記コアの一部の上のエラストマー、エラストマー性材料又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーコーティングであり、前記コアの一部でコアの表面を非孔質にする。
【0009】
別の例(「例5」)によれば、例1~3のいずれか1つの縫合デバイスに加えて、前記多孔性低減要素は、前記コアの一部の細孔中に吸収されたエラストマー、エラストマー性材料又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーであり、前記コアの一部でコアの表面を非孔質にする。
【0010】
別の例(「例6」)によれば、例1~3のいずれか1つの縫合デバイスに加えて、前記多孔性低減要素は、前記コアの一部の細孔中に吸収されたエラストマー又はエラストマー性材料であり、前記コアの一部の上に非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーコーティングをさらに含み、前記コアの一部でコアの表面を非孔質にする。
【0011】
別の例(「例7」)によれば、例1~3のいずれか1つの縫合デバイスに加えて、前記多孔性低減要素は、前記コアの一部に巻き付けられて結合された複合材フィルムであり、前記複合材フィルムは、多孔質フィルムと、前記多孔質フィルムの細孔の上の又は前記多孔質フィルムの細孔中に吸収されたエラストマー、エラストマー性材料又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーコーティングとを含み、前記多孔質フィルムを非孔質にする。
【0012】
別の例(「例8」)によれば、例1~3のいずれか1つの縫合デバイスに加えて、前記多孔性低減要素は、前記コアの一部の細孔の上の及び前記コアの一部の細孔中に吸収されたエラストマー、エラストマー性材料又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーコーティングであり、前記コアの一部でコアの表面を非孔質にする。
【0013】
別の例(「例9」)によれば、例4~7のいずれか1つの縫合デバイスに加えて、前記コアはフルオロポリマーを含む。
【0014】
別の例(「例10」)によれば、例9の縫合デバイスに加えて、TFE-PMVEコポリマーは、約40~約80質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及び約60~約20質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含み、又は、TFE-PMVEコポリマーは、約33~約39質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約72~約61質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含み、又は、TFE-PMVEコポリマーは、約27~約32質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約73~約68質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含み、そしてTFE-PMVEコポリマーは、細孔が覆われるか又は吸収されるように前記フルオロポリマーの細孔中に存在する。
【0015】
別の例(「例11」)によれば、例9の縫合デバイスに加えて、TFE-PMVEコポリマーは、約40~約80質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及び約60~約20質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含み、又は、TFE-PMVEコポリマーは、約33~約39質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約72~約61質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含み、前記コアの一部の細孔中に吸収され、さらに、前記コアの一部の上に約27~約32質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約73~約68質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むTFE-PMVEコポリマーのコーティングを含み、前記コアの一部でコアの表面を非孔質にする。
【0016】
別の例(「例12」)によれば、例4~11のいずれか1つの縫合デバイスに加えて、前記エラストマー又はエラストマー性材料は、結び目の保持性を改善するために前記コアの粘着性を高めるように構成されている。
【0017】
別の例(「例13」)によれば、例1~12のいずれか1つの縫合デバイスに加えて、前記コアはePTFEを含む。
【0018】
別の例(「例14」)によれば、請求項1~13のいずれか1項記載の縫合デバイスに加えて、前記デバイスはまた、第一の組織で第一の位置に取り付けるように構成されたコードの第一の端部に第一の取り付け要素を含み、第二の組織で第二の位置に取り付けるように構成されたコードの第二の端部に第二の取り付け要素を含む。
【0019】
別の例(「例15」)によれば、例14の縫合デバイスに加えて、前記複合材フィルムは前記コアの周りにらせん状に巻き付けられている。
【0020】
別の例(「例16」)によれば、例15の縫合デバイスに加えて、前記コードはある長さを備え、前記複合材フィルムは、前記コアの周りにらせん状に巻き付けられた第一の部分及び第二の部分から形成され、そして前記第一の部分及び第二の部分は、前記コードの長さに沿って反対方向に巻き付けられている。
【0021】
別の例(「例17」)によれば、例1~16のいずれかの縫合デバイスに加えて、前記コアはePTFEを含み、前記多孔性低減要素は、約40~約80質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及び約60~約20質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むTFE-PMVEコポリマー、又は約33~約39質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約72~約61質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むTFE-PMVEコポリマーであり、前記コアの一部の細孔中に吸収され、そして、前記コアの一部の上に、約27~約32質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約73~約68質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むTFE-PMVEコポリマーのコーティングをさらに含み、前記コアの一部でコアの表面を非孔質にする。
【0022】
例18において、例1~17のいずれか1つのコードを含む腱索の修復又は置換デバイスであり、前記腱索の修復又は置換デバイスはまた、第一の組織で第一の位置に取り付けるように構成されたコードの第一の端部に結合された第一の取り付け要素を含み、第二の組織で第二の位置に取り付けるように構成されたコードの第二の端部に結合された第二の取り付け要素を含む。
【0023】
別の例(「例19」)によれば、例18の腱索の修復又は置換デバイスに加えて、前記第一の取り付け要素は、組織を貫通するように構成された第一の組織貫通部材に解放可能に結合されており、前記第二の取り付け要素は、組織を貫通するように構成された第二の組織貫通部材に解放可能に結合されている。
【0024】
別の例(「例20」)によれば、例18~19のいずれか1つの腱索の修復又は置換デバイスに加えて、前記第一の端部と前記第二の端部との間のコードの少なくとも第一の部分は、前記第二の組織に固定されるように構成されており、前記第一の部分の上の所定の位置に固定されそして前記第二の組織と係合するように構成された綿撒糸をさらに含む。
【0025】
別の例(「例21」)によれば、欠陥のある僧帽弁又は三尖弁を治療する方法は、カテーテルベースのデバイスで心臓の領域に経皮的にアクセスすること、及び、前記デバイスの使用により心臓弁を修復することを含み、前記修復は少なくとも1つの腱索を増強又は置換することを含み、置換された腱索は、例1~20のいずれかの縫合デバイスを含む。
【0026】
別の例(「例22」)によれば、置換腱索として利用される縫合部の石灰化を低減又は回避するための方法は、カテーテルベースのデバイスで心臓の領域に経皮的にアクセスすること、前記デバイスの使用により心臓弁を修復することを含み、前記修復は少なくとも1つの腱索を増強又は置換することを含み、置換された腱索は、例1~20のいずれかの縫合デバイスを含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図面の簡単な説明
添付の図面は、本開示のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、実施形態を例示し、記載とともに本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0028】
図1図1はある実施形態による縫合デバイスの図である。
【0029】
図2図2はある実施形態による別の縫合デバイスの図である。
【0030】
図3図3はある実施形態による縫合デバイスの図である。
【0031】
図4図4はある実施形態による別の縫合デバイスの図である。
【0032】
図5図5はある実施形態によるさらに別の縫合デバイスの図である。
【0033】
図6図6はある実施形態による縫合デバイスの一部の図である。
【0034】
図7図7はある実施形態による縫合デバイスの一部の図である。
【0035】
図8図8はある実施形態による縫合デバイスの可撓性コードの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【0036】
図9A図9Aはある実施形態による図9Bの実施形態の微細構造よりも開いた微細構造を示す、縫合デバイスの可撓性コードのコアの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【0037】
図9B図9Bはある実施形態による図9Aの実施形態の微細構造よりも多孔性が低いか又は密な微細構造を有するフィルムの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【0038】
図10図10は腱索、乳頭筋、僧帽弁尖及びある実施形態による縫合デバイスを備えた患者の心臓の図である。
【0039】
図11図11はある実施形態によるTFE-PMVEフィルムの様々な組成物に対する粘着試験の結果のチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
詳細な説明
当業者は、本開示の様々な態様が、意図された機能を発揮するように構成された任意の数の方法及び装置によって実現され得ることを容易に理解するであろう。本明細書で参照される添付の図面は必ずしも縮尺通りに描かれているわけではなく、本開示の様々な態様を示すために誇張されている場合もあり、その点で、図面は限定として解釈されるべきではないことにも留意されたい。
【0041】
本開示の様々な態様は、改善された特性を有する縫合材を対象とする。縫合材は、心臓内及びその周囲、組織の接続又は創傷の封鎖に利用することができる。縫合材は、例えば、腱索の修復又は置換手順において使用され得る。縫合材は、以下で詳細に説明するように、結び目保持能力(結び目強度及び結び目セキュリティ)を改善して、より速く結び目を結び、結び目を小さくし、様々な用途に最適化された表面特性(例えば、癒着を防ぐ前腹膜腔内での用途のための非孔質表面、又は組織の内部成長が望まれる多孔性表面)を可能にする。
【0042】
本明細書で論じられる縫合材(例えば、組織コネクタ)は、デバイス、方法及びシステムで使用されることができ、縫合材の破断の機会をより少なくするように構成され得る。腱索の修復又は置換などの特定の用途において、縫合材の破断は破損モードであることができる。特定の例において、そして以下でさらに詳細に論じられるように、縫合材の機械的特性は、インビボでの破損又は破断を回避するように設計される。多孔性縫合材はカルシウム及び他の血液成分が細孔に沈着しやすく、硬化及び他の材料特性の変化を引き起こし、破損につながる可能性がある。この意味での破損は、意図した目的に有害な縫合材の状態である。縫合材の石灰化は、縫合材の破断につながる可能性があり、組織の損傷又は心臓弁機能の低下をもたらす可能性がある(例えば、腱索の修復又は置換に使用される場合)。石灰化は縫合材を硬くする可能性があり、最終的に縫合材の破損/破断につながる可能性のあるストレスコンセントレータとして作用することがある。したがって、タンパク性液体が浸透して縫合材の細孔内に留まるのを防ぐことは、少なくとも無機化(例えば、石灰化)の開始を遅らせることができる。
【0043】
さらに、本明細書で論じられる縫合材の幾つかの実施形態は、柔らかく、可撓性があり、圧縮可能である。その結果、縫合材は組織の刺激を最小限に抑え、縫合材が配置されている組織の周りの漏れを防止する。さらに、縫合材の結び目が必要であるならば、幾つかの縫合材の実施形態は、表面摩擦を低く抑えて個々のスローが簡単にスライドして正確な結び目を配置できるようにしながら、結び目をよりよく保持するように動作可能な表面特性を備える。
【0044】
本明細書で使用されるときに、縫合材は、モノフィラメント又はマルチフィラメントのポリマー又は天然繊維を含むことができる。モノフィラメント縫合材は、縫合材の全長にわたって延びる単一の繊維を含む縫合材である。マルチフィラメント縫合材は、縫合材の全長にわたって延びる複数の繊維を含む。マルチフィラメント縫合材は、一緒に撚られるか又は編組される複数のモノフィラメント、又は一緒に撚られるか又は編組される繊維の束を含むことができる。さらに、マルチフィラメント縫合材は、それ自体が一緒に撚られた複数の撚り合わされた繊維を含むことができる。さらに、マルチフィラメント縫合材は、フィルムラップのように、他のモノフィラメント又はマルチフィラメント又はフィルムによって囲まれたコードの長さにわたって延びるモノフィラメント又はマルチフィラメントを含むコアを含むことができる。
【0045】
本明細書に記載される実施形態は、複合材縫合材と呼ばれる。複合材縫合材は、縫合材のコアをコーティングする及び/又は縫合材の多孔性コア中に吸収される、エラストマー、エラストマー性又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーをさらに含むモノフィラメント又はマルチフィラメント縫合材であることができる。さらに、複合材縫合材は、エラストマー、エラストマー性又は非エラストマー性ポリマーを含む単一構造であることができる。
【0046】
本明細書に記載の実施形態は、コアに巻き付けられて結合された複合材フィルム又は多孔性低減要素を含むことができる。多孔性低減要素は、膜(例えば、ePTFEコア、シリコーン、ウレタン又は他の同様の材料)をコーティングする及び/又は膜の多孔質構造に吸収されたエラストマー、エラストマー性又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーをさらに含むePTFE膜である。本明細書で使用されるときに、多孔性低減要素は、モノフィラメント又はマルチフィラメント縫合材コアを包囲して本明細書に記載のとおりの複合材縫合材を形成するなどのラップとして使用することができる。
【0047】
本開示の目的のために、約40~約80質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約20~約60質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むTFE-PMVEコポリマーは「エラストマー」と考えられる。
【0048】
本開示の目的のために、約33~約39質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約67~約61質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むTFE-PMVEコポリマーは「エラストマー性材料」と考えられる。
【0049】
本開示の目的のために、約27~約32質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約73~約68質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むTFE-PMVEコポリマーは、エラストマー又はエラストマー性材料とは考えられず、本明細書において「非エラストマー性TFE-PMVEコポリマー」と考えられる。この非エラストマー性コポリマーは、上記のエラストマー及びエラストマー性TFE-PMVEコポリマーと比較して、粘着性が低く、本明細書で提供されるような粘着試験に合格することができるという独特の特性を有する。粘着性の程度は、特定の目的のために選択され得ることが理解される。より粘着性の高い縫合材は結び目保持能力が向上する可能性があるが、粘着性の低い又は非粘着性の縫合材は経カテーテル手順においてより良好な取り扱い特性を有する可能性がある。この非エラストマーTFE-PMVEコポリマーは、上記のエラストマー及びエラストマー性TFE-PMVEコポリマーと比較して、より低い粘着性を示すという独特の特性を有する。
【0050】
複合材縫合材の実施形態によれば、モノフィラメント縫合材のコアは、エラストマー、エラストマー性材料又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーでコーティングされる。1つの実施形態によれば、縫合材のコアは、TFE-PMVE性コポリマーに浸漬コーティングされて、縫合材にコーティングを施す。別の実施形態によれば、縫合材のコアは、TFE-PMVEコポリマーに浸漬コーティングされて、さらに、加熱及び/又は圧力下で処理されて、コーティングを施し、そして縫合材のコアの細孔中にTFE-PMVEコポリマーを少なくとも部分的に吸収させる。別の実施形態によれば、縫合材のコアは、TFE-PMVEコポリマーのフィルムで包囲され、さらに加熱及び/又は圧力下で処理されて、コーティングを施し、及び/又は縫合材の細孔中にTFE-PMVEコポリマーを少なくとも部分的に吸収させる。別の実施形態によれば、縫合材のコアは、非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーの第二のフィルムで包囲され、さらに、加熱及び/又は圧力下で処理されて、縫合材上に非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーのコーティングを施す。この実施形態において、非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーコーティングは、縫合材の多孔性コアの細孔の可能性を有意に低減し、1つの実施形態において、延伸フルオロポリマー縫合材はカルシウム沈着を引き起こす可能性がある流体を受け取る可能性を有意に低減する。
【0051】
複合材縫合材のコアの実施形態によれば、マルチフィラメント縫合材は、全体として、又はマルチフィラメント縫合材を構成する個々のモノフィラメント又は繊維のそれぞれとして、エラストマー、エラストマー性又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーによりコーティングされる。1つの実施形態によれば、マルチフィラメント縫合材、又は、マルチフィラメント縫合材を構成する個々のモノフィラメント又は繊維のそれぞれは、TFE-PMVEコポリマー中に浸漬コーティングされて、縫合材にコーティングを施す。別の実施形態によれば、縫合材、又は、マルチフィラメント縫合材を構成する個々のモノフィラメント又は繊維のそれぞれは、TFE-PMVEコポリマー中に浸漬コーティングされ、さらに、加熱及び/又は圧力下で処理されて、コーティングを施し、そして縫合材の細孔又はマルチフィラメント縫合材を構成する個々のモノフィラメント又は繊維のそれぞれの細孔中に少なくとも部分的にTFE-PMVEコポリマーを吸収させる。別の実施形態によれば、縫合材は、TFE-PMVEコポリマーのフィルムで包囲され、さらに、加熱及び/又は圧力下で処理されて、コーティングを施し、そして縫合材の細孔中に少なくとも部分的にTFE-PMVEコポリマーを吸収させる。別の実施形態によれば、縫合材、又は、マルチフィラメント縫合材を構成する個々のモノフィラメント又は繊維のそれぞれは、非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーの第二のフィルムで包囲され、さらに、加熱及び/又は圧力下で処理されて、コーティングを施し、そして縫合材又はマルチフィラメント縫合材を構成する個々のモノフィラメント又は繊維のそれぞれの上に非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーのコーティングを施す。この実施形態において、非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーコーティングは、多孔性縫合材の細孔又はマルチフィラメント縫合材を構成する個々のモノフィラメント又は繊維のそれぞれの細孔の可能性を有意に低減し、1つの実施形態において、延伸フルオロポリマー縫合材がカルシウム沈着につながる可能性のある液体又は他の血液成分に曝され又はそれを受け入れるために開放する可能性を有意に低減する。その開放は、一部には、高サイクル撓みに曝される時間にわたって発生する可能性がある縫合材の細孔内のエラストマー又はエラストマー性TFE-PMVEコポリマー材料のクリープが原因である。
【0052】
図1は、1つの実施形態による例示的な縫合デバイス100の図である。特定の例において、縫合デバイス100は、本明細書においてコード102とも呼ばれる複合材縫合材、前記コード102の一端に配置された第一の組織貫通部材104及び前記コード102の他端に配置された第二の組織貫通部材106を含むことができる。
【0053】
第一の組織貫通部材104及び第二の組織貫通部材106はコード102に取り付けられることができる。さらに、第一の組織貫通部材104及び第二の組織貫通部材106は、それぞれ心臓組織を貫通するように構成されうる。特定の例において、第一の組織貫通部材104及び第二の組織貫通部材106は、コード102に解放可能に取り付けられ又は結合される。第一の組織貫通部材104及び第二の組織貫通部材106が、コード102に解放可能に取り付けられ又は結合される場合において、第一の組織貫通部材104及び第二の組織貫通部材106はコード102が患者内で位置合わせされた後に除去されうる。
【0054】
特定の例において、縫合デバイス100は、コード102、前記コード102の一端に配置された第一の組織貫通部材104及び前記コード102の他端に配置された第二の組織貫通部材106を含むことができる。
【0055】
第一の組織貫通部材104及び第二の組織貫通部材106はコード102に取り付けられることができる。さらに、第一の組織貫通部材104及び第二の組織貫通部材106は、それぞれ心臓組織を貫通するように構成されうる。特定の例において、第一の取り付け要素108は、コード102の一端に結合又は取り付けられることができ、第二の取り付け要素110は、コード102の他端に結合又は取り付けられることができる。第一の取り付け要素108及び第二の取り付け要素110は、コード102を心臓の組織に取り付けるように構成される。第一の取り付け要素108及び第二の取り付け要素110は、組織を貫通し、コード102を第一の取り付け要素108及び第二の取り付け要素110により第一の場所と第二の場所との間に保持するアンカーであり、第一の取り付け要素108及び第二の取り付け要素110は、それぞれ、第一の場所及び第二の場所で組織の表面で又はその内部に突き刺さって保持する。第一の取り付け要素108及び第二の取り付け要素110は、バーブ、固定らせん又は任意の同様の構造であることができる。
【0056】
特定の例において、コード102は、欠陥のある僧帽弁又は三尖弁を治療するために使用されうる。これらのこのような例において、心臓の領域(例えば、頂端領域)は、カテーテルベースのデバイスで経皮的にアクセスされる。少なくとも1つの腱索を修復又は交換することができる(例えば、図10に示すように)。特定の例において、コード102(例えば、組織コネクタ)は、概して円形の断面を含む。他の例において、コード102は、逆流を経験している弁の閉鎖を確実にするために、心臓又は弁輪の周囲に巻き付けられることができる。これらの例において、コード102は、心臓又は弁輪を圧縮して、弁の弁尖が完全に閉じることを確保する。コード102は、以下でさらに詳細に記載されるように、置換腱索として利用される縫合材の石灰化を低減又は回避するために使用されうる。
【0057】
特定の例において、コード102は可撓性であり、そして多孔性低減要素を含む(例えば、図3を参照してさらに詳細に説明されるとおり)。本実施形態の主旨の範囲内で、複数のタイプのフルオロポリマー及び複数のタイプの多孔性低減要素又は複合材フィルムを組み合わせることができる。また、多孔性低減要素又は複合材フィルムは、本実施形態の主旨の範囲内で、複数のエラストマー、無機フィラー、治療剤、放射線不透過性マーカーなどの複数のタイプの非エラストマー性成分を含むことができることも容易に理解されたい。多孔率低減要素は、コアに巻かれて結合されることができる。
【0058】
以下でより詳細に記載される1つの実施形態において、コード102の破損は、比較的低強度のエラストマー、エラストマー性又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマー(例えば、多孔性低減要素)を比較的高い百分率でコード102のフルオロポリマー縫合材コアの細孔に加えることによって有意に減少した。驚くべきことに、多孔質フルオロポリマー膜がエラストマー、エラストマー性又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーで吸収されている幾つかの実施形態において、エラストマー、エラストマー性又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーの存在は縫合材の全体的な厚さを増加させ、エラストマー、エラストマー性又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーの添加によりフルオロポリマー部材の厚さを増加させ、驚くべきことに、まだ柔軟性を有意に阻害又は低下させずに、石灰化に対する耐性を向上させた。エラストマー、エラストマー性材料及び非エラストマー性材料による延伸フルオロポリマー膜の細孔の吸収は、当業者に知られている様々な方法によって行うことができる。
【0059】
1つの実施形態において、複合材縫合材又はフィルムラップは、例えば、米国特許第7,306,729号明細書に一般的に記載されるように、多孔性ePTFEから作製された延伸フルオロポリマー材料を含む。記載された延伸フルオロポリマー縫合材又はフィルムラップを形成するために使用される延伸性フルオロポリマーはPTFEホモポリマーを含むことができる。別の実施形態では、PTFE、延伸性変性PTFE及び/又はPTFEの延伸コポリマーのブレンドを使用することができる。適切なフルオロポリマー材料の非限定的な例は、例えば、Brancaの米国特許第5,708,044号明細書、Baillieの米国特許第6,541,589号明細書、Sabolらの米国特許第7,531,611号明細書、Fordらの米国特許出願番号第11/906,877号明細書及びXuらの米国特許出願番号第12/410,050号明細書に記載されている。
【0060】
1つの実施形態において、ePTFEと組み合わされる多孔性低減要素は、テトラフルオロエチレン(TFE)とペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)の熱可塑性コポリマーである。材料は、材料が延伸フルオロポリマーコア表面内のボイドスペース又は細孔の実質的にすべてを占めるように、延伸フルオロポリマーコア表面と組み合わされる。延伸フルオロポリマーコア表面の細孔のエラストマーでのこの充填は、以下でさらに詳細に議論されるような様々な方法によって実施することができる。別の実施形態において、ePTFEと組み合わされる非エラストマー性材料は、上記のようなテトラフルオロエチレン(TFE)とペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)の熱可塑性コポリマーである。材料は、材料が延伸フルオロポリマー基材表面内のボイドスペース又は細孔の実質的にすべてを占めるように、延伸フルオロポリマー基材表面と組み合わされる。非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーによる延伸フルオロポリマーコア表面の細孔のこの充填は、以下でさらに詳細に議論されるような様々な方法によって実施することができる。
【0061】
特定の例において、TFE-PMVEコポリマーのTFE及びPMVE成分は質量パーセント(wt%)で示される。参考までに、40、33~39及び27~33のPMVEのwt%は、それぞれ29、23~28及び18~22のモル%に対応する。特定の例において、TFE-PMVEコポリマーは、エラストマー、エラストマー性又は非エラストマー性である。
【0062】
エラストマー性及び非エラストマー性特性を示すTFE-PMVEコポリマーと組み合わされる延伸フルオロポリマー膜の実施形態は、少なくとも幾つかの有意な方法で腱索の修復又は置換などの高周期屈曲インプラント用途での使用に必要な性能属性を提供する。例えば、エラストマー、エラストマー性及び非エラストマー性特性を示すTFE-PMVEコポリマーを添加すると、ePTFEのみの材料で観察される硬化を無くし又は減少させることにより、コード102の疲労性能が向上する。さらに、材料がしわ又は折り目などの永久変形を経験し、性能が低下する可能性を低減する。1つの実施形態において、エラストマー、エラストマー性又は非エラストマー性特性を示すTFE-PMVEコポリマーは、延伸フルオロポリマー膜の多孔質構造内の実質的にすべての細孔体積又は空間を占める。別の実施形態において、エラストマー性又は非エラストマー性特性を示すTFE-PMVEコポリマーは、少なくとも1つのフルオロポリマー層の実質的にすべての細孔中に存在する。細孔容積を満たす又は実質的にすべての細孔中に存在するエラストマー、エラストマー性又は非エラストマー性特性を示すTFE-PMVEコポリマーを使用すると、異物材料が縫合材のコアに望まれずに取り込まれる可能性がある空間が減少する。
【0063】
エラストマー又はエラストマー性TFE-PMVEコポリマーを細孔内に有する多孔質延伸フルオロポリマーモノフィラメントを含む複合材縫合材で開く可能性がある細孔又は空間に入り込むそのような異物材料の例はカルシウムである。例えば、コード102で使用されるように、カルシウムが複合材縫合材に組み込まれるようになると、サイクリング中に機械的損傷が発生する可能性があり、それにより構造的特性の劣化につながる。
【0064】
約27~約32質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約73~約68質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むTFE-PMVEコポリマーの層又はコーティングは、延伸フルオロポリマー縫合材の多孔質構造の細孔がカルシウム沈着物又は他の血液成分を受容する又は受容するように開放する可能性を有意に低減する。これは、部分的には、延伸フルオロポリマー縫合材の細孔内のエラストマー又はエラストマー性材料が原因である。
【0065】
1つの実施形態による材料は、延伸フルオロポリマー縫合材及び前記延伸フルオロポリマーの細孔内のエラストマー性材料を含み、さらに、約27~約32質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及び約73~約68質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むTFE-PMVEコポリマーのコーティングを含む。本開示の主旨の範囲内で、複数のタイプのフルオロポリマー縫合材及び複数のタイプのエラストマー、エラストマー性又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーをコード102で使用するために組み合わせることができることが容易に理解されるはずである。
【0066】
本開示の目的のために、約27~約32質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約73~約68質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むTFE-PMVEコポリマーはエラストマー又はエラストマー性材料でないと考えられ、本明細書において「非エラストマー性TFE-PMVEコポリマー」と呼ばれる。不溶性であることで、非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーは、押出と同様に、縫合材又はマルチフィラメント縫合材の個々のモノフィラメントに結合するのに適したシートに熱成形されうる。
【0067】
1つの実施形態において、エラストマー又はエラストマー性材料で吸収された延伸フルオロポリマー膜を含む複合材縫合材又はマルチフィラメント縫合材を構成する個々のモノフィラメント又は繊維のそれぞれを、約27~約32質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約73~約68質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含む非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーでコーティングする方法は、複合材縫合材又はマルチフィラメント縫合材を構成する個々のモノフィラメント又は繊維のそれぞれを、非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーのシートと、非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーが複合材縫合材又はマルチフィラメント縫合材を構成する個々のモノフィラメント又は繊維のそれぞれと結合することを可能にする熱及び/又は圧力の条件下で接触させる工程を含む。
【0068】
例として、限定するわけではないが、上記の非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーの1.5μm厚の層を、約33~約39質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約72~約61質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むエラストマー性TFE-PMVEコポリマーが吸収されたePTFE膜に、前記膜を2つの非エラストマー性TFE-PMVEコポリマー層の間に900kPaの圧力及び165℃の温度で15分間挟むことにより結合させ、構成要素間の接着を行った。
【0069】
多孔質膜又はモノフィラメントに加えて、非多孔質膜又はモノフィラメントは、特定の目的に適した、約27~約32質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約73~約68質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含む非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーでコーティングされうることが理解される。とりわけ、非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーは、コード102が経カテーテル配置の前にデリバリー形態に構成されたときに接着に抵抗する不粘着性材料を提供することが理解される。限定するわけではないが、不粘着性の表面が設けられているコード102などのメディカルデバイスは、タッキー又は粘着性表面を有するものよりも特定の取り扱い上の利点を有することが理解される。
【0070】
1つの実施形態によれば、複合材縫合材は、約33~約39質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約67~約61質量パーセントのテトラフルオロエチレンを有するTFE-PMVEコポリマーを含むエラストマー性材料及びePTFEモノフィラメント又はマルチフィラメント縫合材を含む。1つの実施形態において、TFE-PMVEコポリマーは、ePTFEモノフィラメント又はマルチフィラメント縫合材の細孔中に存在する。
【0071】
別の実施形態によれば、複合材モノフィラメント又はマルチフィラメント縫合材は、約40~約80質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約60~約20質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むエラストマー材料と、ePTFE又はPTFE膜などのフルオロポリマーとを含む。
【0072】
コード102の実施形態における使用に適することができる他の生体適合性ポリマーとしては、限定するわけではないが、ナイロン、ウレタン、シリコーン(オルガノポリシロキサン)、シリコン-ウレタンのコポリマー、スチレン/イソブチレンコポリマー、ポリイソブチレン、ポリエチレン-コ-ポリ(酢酸ビニル)、ポリエステルコポリマー、ナイロンコポリマー、フッ素化炭化水素ポリマー及び上記のそれぞれのコポリマー又は混合物の群を挙げることができる。
【0073】
図2は、1つの実施形態による別の例示的な縫合デバイス100の図である。特定の例において、縫合デバイス100は、コード102、前記コード102の一端に配置された第一の組織貫通部材104、及び、前記コード102の他端に配置された第二の組織貫通部材106を含むことができる。第一の組織貫通部材104及び第二の組織貫通部材106は、コード102に取り付けられるか、又は、解放可能に結合されることができる。さらに、第一の組織貫通部材104及び第二の組織貫通部材106は、それぞれ心臓組織を貫通するように構成されうる。
【0074】
特定の例において、コード102は、欠陥のある僧帽弁又は三尖弁を治療するために使用されうる。これらのこのような例において、心臓の頂点領域は、カテーテルベースのデバイスで経皮的にアクセスしている。心臓弁は、少なくとも1つの腱索を増強又は交換することによって修復される(例えば、図10に示されるとおり)。置換された腱索はコード102を含むことができ、これは、修復された腱索が接続した心臓組織の2つの部分を接続するコード102のために、組織コネクタと呼ぶことができる。特定の例において、コード102は、概して円形の断面を有する可撓性コードを含む。特定の例において、コード102はまた、コード102上の所定の位置に固定される綿撒糸212(又は他の同様の創傷停止構造)を含むことができる。綿撒糸(pledget)212は、組織が裂けることを保護することができる。綿撒糸212又はコード102の端部に設置されている同様の停止デバイスは、綿撒糸212に到達するまで、コード102を組織を通して完全に引っ張ることを可能にする。その後、綿撒糸212又はストップは、この位置に残されるか、又は、安全性を高めるために所定の位置に縫い付けられることができる。
【0075】
図3は、1つの実施形態による例示的な縫合デバイス100の図である。縫合デバイス100は長手方向軸320を備えたコード102を含む。図3に示されるように、コード102は、長手方向軸320に配向された一次強度を有するコア322の形態のモノフィラメント又はマルチフィラメント縫合材を含む。特定の例において、コア322は、コード102の第一の端部から第二の端部まで延在しており、そして多孔質表面を含む。コード102はさらに、コア322の少なくとも一部の上に多孔性低減要素324を含み、前記コアは、前記コア322の一部の表面の多孔性を無くす又は表面の細孔を覆うように構成されている。多孔性低減要素324(例えば、細孔内にエラストマー、エラストマー性又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーを有する多孔質延伸フルオロポリマーフィルム)は、コア322の少なくとも一部と結合されうる。特定の例において、多孔性低減要素324は非透過性フィルムであり、前記フィルムはコア322の一部の周りに巻き付けられそしてそれに結合される。さらに、非透過性フィルムは、コア322の表面の微細構造よりも小さい細孔を有する微細構造を有するePTFEフィルムである。
【0076】
加えて、コア322の強度は、長手方向軸320に沿って配向されることができ、コア322の一次強度である。コア322はフィブリルを有するフルオロポリマー材料であることができる。コア322の主要部分又はより多くのフィブリルは、長手方向軸320と一緒に配向されてコア322の一次強度をそれと共に配向させることができる。
【0077】
特定の例において、多孔性低減要素324は、コア322の表面に結合されたテープであることができる。図3に示されるように、多孔性低減要素324はコア322の周りにらせん状に巻き付けられる。他の例において、多孔性低減要素324は、コア322をシールするための多孔性低減要素324の接合端と同様にコア322の周りに巻かれることができる。
【0078】
図3を参照して上記に詳細に議論されたように、コア322は多孔質延伸フルオロポリマー(例えば、ePTFE)から形成されうる。特定の例において、コード102は、多孔質延伸フルオロポリマーコアの細孔内にTFE/PMVEコポリマーを含むことができる。TFE/PMVEコポリマーは、約40~約80質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及び約60~約20質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むことができる。エラストマー性コポリマーは、約33~約39質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約72~約61質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むTFE-PMVEコポリマーを含むことができる。
【0079】
特定の例において、多孔性低減要素324は、コア322の一部の上のエラストマー、エラストマー性材料又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーコーティングであり、コア322の一部のコア322の表面を非孔質にする。さらに、多孔性低減要素324は、コア322の一部の細孔中に吸収されたエラストマー、エラストマー性材料又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーであることができ、コア322の一部でコア322の表面を非孔質にする。特定の例において、多孔性低減要素324は、コア322の一部の細孔中に吸収されたエラストマー又はエラストマー性材料であり、さらに、コア322の一部の上に非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーコーティングを含み、コア322の一部でコア322の表面を非孔質にする。
【0080】
特定の例において、コア322はフルオロポリマーを含む。さらに、多孔性低減要素324のTFE-PMVEコポリマーは、約40~約80質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及び約60~約20質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むことができ、又はTFE-PMVEコポリマーは、約33~約39質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約72~約61質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むことができ、又は、TFE-PMVEコポリマーは、約27~約32質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約73~約68質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むことができ、TFE-PMVEコポリマーは細孔が覆われるか又は吸収されるようにフルオロポリマーの細孔中に存在する。
【0081】
特定の例において、多孔性低減要素324のTFE-PMVEコポリマーは、約40~約80質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及び約60~約20質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むことができ、又はTFE-PMVEコポリマーは、約33~約39質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約72~約61質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むことができ、それはコア322の一部の細孔中に吸収されており、そしてコア322の一部の上でTFE-PMVEコポリマーのコーティングも存在することができ、それは約27~約32質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約73~約68質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含み、コア322の一部でコア322の表面を非孔質にする。
【0082】
特定の例において、コア322はePTFEを含み、多孔性低減要素322は、約40~約80質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及び約60~約20質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むTFE-PMVEコポリマーであり、又は、TFE-PMVEコポリマーは、約33~約39質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約72~約61質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含み、それはコア322の一部の細孔中に吸収されており、また、コア322の一部の上のTFE-PMVEのコポリマーのコーティングも含み、それは約27~約32質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約73~約68質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含み、コア322の一部でコア322の表面を非孔質にする。
【0083】
図4は、1つの実施形態による別の例示的な縫合デバイス100の図である。縫合デバイス100は、長手方向軸320を有するコード102を含み、前記コード102は前記コード102の長手方向軸320に向いた特定の強度426を有するコア322を含む。さらに、多孔性低減要素324はコア322の少なくとも一部に結合され又はそれと結合されうる。多孔性低減要素324(例えば、細孔内にエラストマー、エラストマー性又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーを有する多孔質延伸フルオロポリマーフィルム)は、コード102の表面の多孔度を低減するように構成されうる。
【0084】
特定の例において、多孔性低減要素324は、図4に示されるように、コア32に結合される。さらに、コア322の強度は、長手方向軸320に向けられることができ、コア322の一次強度である。図4に示されるように、多孔性低減要素324はコア322を覆う。多孔性低減要素324は、コア322(多孔質でありうる)の周りに巻き付けられ、次いで、多孔性低減要素324をコア322に結合する熱及び/又は圧力の条件下でさらに処理されうる。
【0085】
図5は、1つの実施形態によるさらに別の例示的な縫合デバイス100の図である。縫合デバイス100はコア322を有するコード102を含む。コア322は、多孔性低減要素324(例えば、エラストマー、エラストマー性又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーを含む複合材フィルム、又は、エラストマー、エラストマー性又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマー及びePTFE膜を含む複合材フィルム)をコア322と組み合わせた単一コード102であることができる。特定の例において、多孔性低減要素324はコア322内部に吸収される。他の例において、コア322の細孔は、コア322の細孔中に部分的又は完全に流入するのに適切な粘度及び表面張力を有する溶液を作成するのに適した溶媒中にエラストマーを溶解することによって充填される。延伸フルオロポリマー長尺体を有するコア322は溶媒を蒸発させて、エラストマー又はエラストマー性コポリマーを後に残すことができる。
【0086】
1つの実施形態において、コア322の細孔の少なくとも一部を充填する方法は、分散液を介してフィラーを送達して、細孔を部分的又は完全に充填する工程を含む。別の実施形態において、コア322の細孔は、まず細孔をエラストマーのプレポリマーで充填し、次いでエラストマーを少なくとも部分的に硬化させることにより、コア322の細孔内で多孔性低減要素324を重合することによって充填されうる。
【0087】
図6は、1つの実施形態による例示的な縫合デバイスの一部の図である。図6に示されるように、コア322は、束ねられた又はねじられたフルオロポリマー又はフルオロポリマー複合材から形成される(上記で詳細に記載されているとおり)。上で詳細に論じたように、束ねられた又はねじれたコア322は均一又は不均一な隆起を有して可撓性コードを形成することができる。束ねられた又はねじられたコア322は、コアとの整列のための強度の制御された分布を可能にすることができる。
【0088】
束ねられた又はねじられたコア322を形成するために、フィルムの平らなシートは共に、半径方向に集められ、束ねられ又はねじられて、より均一な直径を有する束ねられた又はねじられたコア322のコード状構造が生成される。
【0089】
図7は、1つの実施形態による例示的な縫合デバイスの一部の図である。図7に示されるように、多孔性低減要素324は、第一の部分732及び第二の部分734から形成される。第一の部分732及び第二の部分734は、可撓性コードの長さに沿って一緒に編組されうる。特定の例において、第一の部分732及び第二の部分734は、反対方向に巻かれ又は編組される。これらの例において、第一の部分732及び第二の部分734が可撓性コードと共に配置されると、第一の部分732及び第二の部分734は、可撓性コードを延ばすにつれて締まることができる。第一の部分732及び第二の部分734は、コアとの整列のための強度の制御された分布を可能にすることができる。
【0090】
図8は、1つの実施形態による縫合デバイスの例示的なコード102の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。図8は、コア322を多孔性低減要素324で巻き付けることによって補強された例示的なコード102の断面を示す。特定の例において、コア322は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又は延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)から形成される。多孔性低減要素324は、コア322の可撓性及び強度を維持するePTFE、TFE-PMVEコポリマー又は別の同様の材料であることができる。コア322は、多孔性低減要素324がコア322をカバーして石灰化の機会を減らすように構成されている多孔質構造であることができる。さらに、コア322は、コード102が天然の腱索の可撓性を模倣するように構成されるように多孔性低減要素324とともに可撓性であることができ、コア322の可撓性を維持する。
【0091】
図9Aは、コード102の可撓性コードのコアの走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、1つの実施形態による図9Bの実施形態の微細構造よりも開いた微細構造を示している。図9Aに示されるように、コード102は、多孔性構造であるコア322を含む。図9Bは、コア322の細孔を充填又は被覆するための多孔性低減要素324(例えば、TFE-PMVEコポリマー)の吸収後の図9Aの可撓性コード102である。特定の例において、可撓性コード102は、コア322の細孔を充填又は被覆するために多孔性低減要素324でコーティングされ、浸漬され又は巻き付けられ又はラップされうる。細孔が覆われ、コーティングされ又は吸収されたコード102は石灰化の機会を少なくする。
【0092】
図10は、1つの実施形態による腱索、乳頭筋、僧帽弁弁尖及び縫合デバイスを備えた患者の心臓の図である。図10は、大動脈弓1004、左心房1006、左心室1008を含み、僧帽弁1010が左心房1006と左心室1008との間に配置されている、患者の心臓1000の左側を示している。腱索1002a~gは一方の端部で僧帽弁1010の弁尖に取り付けられており、もう一方の端部で左心室1008の乳頭筋1012に取り付けられている。僧帽弁1010(及び三尖弁)の弁尖は薄い透視構造であり、装填された状態で弁の能力を維持するために腱索1002a~gのシステムに依存する。これらの腱索1002a~gは乳頭筋を弁尖に取り付ける。
【0093】
伸張され、破裂され又は破壊された腱索1002a~gは、僧帽弁1010の弁尖の機能を変化させることができる。これらの例において、例えば、僧帽弁1010はもはや完全に接合又は閉鎖しない可能性がある。結果として、血液は、左心室1008から左心房1006に戻って流れることができる(例えば、僧帽弁逆流)。腱索の置換又は修復のために、上で詳細に論じたように、コード102の経カテーテルデリバリーアプローチ及び埋め込みは、罹患率及び死亡リスクを低減することができる。
【0094】
図11は、TFE-PMVEフィルムの様々な組成物に対する粘着試験の結果のグラフである。27よりも大きい質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテルを有する一対のTFE-PMVEフィルムは、実用的な粘着性結果を提示することに留意されたい。約27質量パーセント以下のペルフルオロメチルビニルエーテルを有するTFE-PMVE組成物では粘着性は見られない。
【0095】
実施形態によれば、コード102は本明細書で提供されるとおりの粘着試験に合格する。上記で詳細に論じたように、粘着試験は、別の表面に粘着するコード102の抵抗を評価する。TFE-PMVEコポリマーの様々な組成物の粘着性の程度のテストに従って、TFE-PMVEフィルムの幾つかのペアを提供し、同様の質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれの質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むペアの各メンバーを提供し、互いに直接接触して配置した。次に、それぞれのペアのTFE-PMVEフィルムをポリイミドフィルムの間に挟み、モデルMカーバープレス(Carver Laboratory Press,Wasbash Indiana USA)で39℃、200psiで15分間プレスした。15分後、TFE-PMVEフィルムのペアをプレスから取り外し、ポリイミドフィルムを取り外した。次に、2つのTFE-PMVEフィルムのペアを互いから分離した。もし2つのTFE-PMVEフィルムの間に接着性がなく、2つのTFE-PMVEフィルムを分離するのに力が必要なかったならば、TFE-PMVEの組成物は「不粘着性」と決定された。2つのTFE-PMVEフィルムを互いから分離するために力を必要とする2つのTFE-PMVEフィルムのペアは、「粘着性」があると決定された。上記の処理でそのように変性されたコードはタックに関連する同様の結果を示すことが理解される。
【0096】
本出願の発明は、一般的にも特定の実施形態に関しても上記で記載されてきた。本開示の範囲から逸脱することなく、実施形態において様々な修正及び変更を行うことができることは当業者に明らかであろう。したがって、実施形態は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等形態の範囲内に入るかぎり、本発明の修正及び変更を網羅することが意図されている。
(態様)
(態様1)
ある長さ、第一の端部及び前記第一の端部の反対側の第二の端部を画定する可撓性で長尺のコードを含み、前記コードは前記第一の端部から前記第二の端部に延在しそして多孔性表面を有するコアを含み、前記コードは前記コアの少なくとも一部の上に多孔性低減要素をさらに含み、前記コアの一部の表面の多孔性をなくす又は細孔を覆うように構成されている、縫合デバイス。
(態様2)
前記多孔性低減要素は、前記コアの一部に巻き付けられて結合された非透過性フィルムである、態様1記載の縫合デバイス。
(態様3)
前記非透過性フィルムは、前記コアの表面の微細構造よりも小さい細孔を有する微細構造を有するePTFEフィルムである、態様2記載の縫合デバイス。
(態様4)
前記多孔性低減要素は、前記コアの一部の上のエラストマー、エラストマー性材料又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーコーティングであり、前記コアの一部でコアの表面を非孔質にする、態様1~3のいずれか1項記載の縫合デバイス。
(態様5)
前記多孔性低減要素は、前記コアの一部の細孔中に吸収されたエラストマー、エラストマー性材料又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーであり、前記コアの一部でコアの表面を非孔質にする、態様1~3のいずれか1項記載の縫合デバイス。
(態様6)
前記多孔性低減要素は、前記コアの一部の細孔中に吸収されたエラストマー又はエラストマー性材料であり、前記コアの一部の上に非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーコーティングをさらに含み、前記コアの一部でコアの表面を非孔質にする、態様1~3のいずれか1項記載の縫合デバイス。
(態様7)
前記多孔性低減要素は、前記コアの一部に巻き付けられて結合された複合材フィルムであり、前記複合材フィルムは、
多孔質フィルム、及び、
前記多孔質フィルムの細孔の上の又は前記多孔質フィルムの細孔中に吸収されたエラストマー、エラストマー性材料又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーコーティングを含み、前記多孔質フィルムを非孔質にする、態様1~3のいずれか1項記載の縫合デバイス。
(態様8)
前記多孔性低減要素は、前記コアの一部の細孔の上の及び前記コアの一部の細孔中に吸収されたエラストマー、エラストマー性材料又は非エラストマー性TFE-PMVEコポリマーコーティングであり、前記コアの一部でコアの表面を非孔質にする、態様1~3のいずれか1項記載の縫合デバイス。
(態様9)
前記コアはフルオロポリマーを含む、態様4~7のいずれか1項記載の縫合デバイス。
(態様10)
TFE-PMVEコポリマーは、約40~約80質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及び約60~約20質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含み、又は、TFE-PMVEコポリマーは、約33~約39質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約72~約61質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含み、又は、TFE-PMVEコポリマーは、約27~約32質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約73~約68質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含み、そしてTFE-PMVEコポリマーは、細孔が覆われるか又は吸収されるように前記フルオロポリマーの細孔中に存在する、態様9記載の縫合デバイス。
(態様11)
TFE-PMVEコポリマーは、約40~約80質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及び約60~約20質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含み、又は、約33~約39質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約72~約61質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むTFE-PMVEコポリマーは前記コアの一部の細孔中に吸収され、さらに、前記コアの一部の上に約27~約32質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約73~約68質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むTFE-PMVEコポリマーのコーティングを含み、前記コアの一部でコアの表面を非孔質にする、態様9記載の縫合デバイス。
(態様12)
前記エラストマー又はエラストマー性材料は、結び目の保持性を改善するために前記コアの粘着性を高めるように構成されている、態様4~11のいずれか1項記載の縫合デバイス。
(態様13)
前記コアはePTFEを含む、態様1~12のいずれか1項記載の縫合デバイス。
(態様14)
第一の組織で第一の位置に取り付けるように構成されたコードの第一の端部に第一の取り付け要素をさらに含み、第二の組織で第二の位置に取り付けるように構成されたコードの第二の端部に第二の取り付け要素をさらに含む、態様1~13のいずれか1項記載の縫合デバイス。
(態様15)
前記複合材フィルムは前記コアの周りにらせん状に巻き付けられている、態様14記載の縫合デバイス。
(態様16)
前記コードはある長さを備え、前記複合材フィルムは、前記コアの周りにらせん状に巻き付けられた第一の部分及び第二の部分から形成され、そして前記第一の部分及び第二の部分は、前記コードの長さに沿って反対方向に巻き付けられている、態様15記載の縫合デバイス。
(態様17)
前記コアはePTFEを含み、
前記多孔性低減要素は、約40~約80質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及び約60~約20質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むTFE-PMVEコポリマー、又は約33~約39質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約72~約61質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むTFE-PMVEコポリマーであり、前記コアの一部の細孔中に吸収され、そして、前記コアの一部の上に、約27~約32質量パーセントのペルフルオロメチルビニルエーテル及びそれぞれ約73~約68質量パーセントのテトラフルオロエチレンを含むTFE-PMVEコポリマーのコーティングをさらに含み、前記コアの一部でコアの表面を非孔質にする、態様1~16のいずれか1項記載の縫合デバイス。
(態様18)
態様1~17のいずれか1項記載のコードを含む腱索の修復又は置換デバイスであって、
第一の組織で第一の位置に取り付けるように構成されたコードの第一の端部に結合された第一の取り付け要素をさらに含み、
第二の組織で第二の位置に取り付けるように構成されたコードの第二の端部に結合された第二の取り付け要素をさらに含む、腱索の修復又は置換デバイス。
(態様19)
前記第一の取り付け要素は、組織を貫通するように構成された第一の組織貫通部材に解放可能に結合されており、前記第二の取り付け要素は、組織を貫通するように構成された第二の組織貫通部材に解放可能に結合されている、態様18記載の腱索の修復又は置換デバイス。
(態様20)
前記第一の端部と前記第二の端部との間のコードの少なくとも第一の部分は、前記第二の組織に固定されるように構成されており、前記第一の部分の上の所定の位置に固定されそして前記第二の組織と係合するように構成された綿撒糸をさらに含む、態様18~19のいずれか1項記載の腱索の修復又は置換デバイス。
(態様21)
欠陥のある僧帽弁又は三尖弁を治療する方法であって、カテーテルベースのデバイスで心臓の領域に経皮的にアクセスすること、及び、前記デバイスの使用により心臓弁を修復することを含み、前記修復は、
態様1~20のいずれか1項記載の縫合デバイスで少なくとも1つの腱索を増強又は置換することを含む、方法。
(態様22)
置換腱索として利用される縫合部の石灰化を低減又は回避するための方法であって、
カテーテルベースのデバイスで心臓の領域に経皮的にアクセスすること、及び、
前記デバイスの使用により心臓弁を修復することを含み、前記修復は態様1~20のいずれか1項記載の縫合デバイスで少なくとも1つの腱索を増強又は置換することを含む、方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11