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特許7495470(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF、及び重質有機化合物、並びに反応器パージを分離するためのシステム及び方法
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  • 特許-(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF、及び重質有機化合物、並びに反応器パージを分離するためのシステム及び方法 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF、及び重質有機化合物、並びに反応器パージを分離するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/383 20060101AFI20240528BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20240528BHJP
   C07C 17/386 20060101ALI20240528BHJP
   C07C 17/38 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C07C17/383
C07C21/18
C07C17/386
C07C17/38
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022197729
(22)【出願日】2022-12-12
(62)【分割の表示】P 2018000510の分割
【原出願日】2018-01-05
(65)【公開番号】P2023027248
(43)【公開日】2023-03-01
【審査請求日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】62/443,349
(32)【優先日】2017-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/850,724
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ユーオン・チウ
(72)【発明者】
【氏名】セリ・ガスターボ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・エイ.・コットレル
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・ダブリュー.・マクレーン
(72)【発明者】
【氏名】タオ・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ラジヴ・ラトナ・シン
(72)【発明者】
【氏名】ラジヴ・バナバリ
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-538809(JP,A)
【文献】特表2015-508818(JP,A)
【文献】特表2014-510715(JP,A)
【文献】特表2013-520421(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0115104(US,A1)
【文献】特表2012-509324(JP,A)
【文献】特表2012-521430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(240fa)、1,1,1,3-テトラクロロ-3-フルオロプロパン(241fa)、1,1,1-トリクロロ-3,3-ジフルオロプロパン(242fa)、又はこれらの組合せの少なくとも1つを含む反応物質とHFとの反応による(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの製造において反応器から得られる(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF、50g/モルより高く450g/モルよりも低い重量平均(Mw)分子量を有し、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(240fa)、1,1,1,3-テトラクロロ-3-フルオロプロパン(241fa)、1,1,1-トリクロロ-3,3-ジフルオロプロパン(242fa)、又はこれらの組合せの少なくとも1つを含む軽質有機化合物、及び500g/モル~7,000g/モルの間の重量平均分子量(Mw)を有し、前記(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの製造から形成されるオリゴマーを含む重質有機化合物の混合物を分離する方法であって、
前記混合物を、(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンを含む1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンの流れと、HF、軽質有機化合物及び重質有機化合物を含むパージ流とに分離し
フラッシュ蒸留分離器において、前記パージ流を、HF流と、軽質有機化合物及び重質有機化合物を含む有機化合物流とに分離し、ここで、HF流と有機化合物流を分離することは、フラッシュ蒸留を含む;
前記フラッシュ蒸留分離器からのHF流を第1の蒸留カラムに送り、前記フラッシュ蒸留分離器からのHF流を蒸留して、1.5重量%未満の重質有機化合物を含むHFに富む第1の蒸留カラムの塔頂物及び軽質有機化合物の第1の蒸留カラムの塔底流を形成し;
前記HFに富む第1の蒸留カラムの塔頂物を前記反応器へ再循環し;
前記軽質有機化合物の第1の蒸留カラムの塔底流を前記フラッシュ蒸留分離器に加え;
前記フラッシュ蒸留分離器からの有機化合物流を第2の蒸留カラムに送り、前記フラッシュ蒸留分離器からの有機化合物流を蒸留して、前記フラッシュ蒸留分離器からの有機化合物流を、第2の蒸留カラムのHF第2の蒸留カラムの軽質有機化合物及び第2の蒸留カラムの重質有機化合物に分離し;
前記第2の蒸留カラムのHF流を前記第1の蒸留カラムに加え;
前記第2の蒸留カラムの軽質有機化合物前記反応器へ再循環し;そして
前記第2の蒸留カラムの重質有機化合物を回収する;
工程を含む、方法。
【請求項2】
前記パージ流に洗浄流体を加えることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
HFと、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(240fa)、1,1,1,3-テトラクロロ-3-フルオロプロパン(241fa)、1,1,1-トリクロロ-3,3-ジフルオロプロパン(242fa)、又はこれらの組合せの少なくとも1つを含む共沸性又は共沸混合物様の組成物をフラッシュ蒸留分離器において形成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
HFと、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(240fa)、1,1,1,3-テトラクロロ-3-フルオロプロパン(241fa)、1,1,1-トリクロロ-3,3-ジフルオロプロパン(242fa)、又はこれらの組合せの少なくとも1つからなる共沸性又は共沸混合物様の組成物を含む組成物をフラッシュ蒸留分離器において形成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記洗浄流体が、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(240fa)、1,1,1,3-テトラクロロ-3-フルオロプロパン(241fa)、1,1,1-トリクロロ-3,3-ジフルオロプロパン(242fa)、HCl、又はこれらの組合せの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2017年1月6日出願の「(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF、及び重質有機化合物、並びに反応器パージを分離するためのシステム及び方法」と題された米国仮特許出願62/443,349の35.USC.§119(e)(その全部の開示事項を参照として本明細書中に明示的に包含する)に基づく利益を主張する。
【0002】
[0002]本発明は、重質有機化合物からのHFの分離に関する。より具体的には、本発明は、((E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd(E))の製造からの重質有機化合物の分離及び回収に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]フルオロカーボンベースの流体は、産業において、冷媒、エアゾール噴射剤、発泡剤、熱伝達媒体、及び気体状誘電体としての使用などの数多くの用途における広い使用が見出されている。それに関係する比較的高い地球温暖化係数などの、これらの流体の幾つかの使用に関係する疑わしい環境上の問題のために、ゼロのオゾン層破壊係数(ODP)も有することに加えて、可能な限り低い地球温暖化係数(GWP)を有する流体を用いることが望ましい。而して、上述の用途のための環境により優しい材料を開発することに相当な興味が持たれている。
【0004】
[0004]ゼロのオゾン層破壊係数及び低い地球温暖化係数を有するヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)は、このニーズを満足する可能性があるものとして確認されている。しかしながら、かかる化学物質の毒性、沸点、及び他の物理特性は、異性体間で大きく変化する。価値のある特性を有する1つのHCFOは(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd(E))であり、これは次世代の非オゾン層破壊性及び低地球温暖化係数の溶媒として提案されている。
【0005】
[0005]HCFO-1233zd(E)を製造するためのプロセスでは、種々の重質有機化合物のような種々の副生成物が生成する。更に、HCFC-1233zd(Z)及びHCFC-244faはまた、米国特許7,829,747、8,217,208、8,835,700、及び9,045,386(これらの開示事項は参照として本明細書中に包含する)に記載されているように、HCFO-1233zd(E)の製造における中間体でもある。
【0006】
[0006]本明細書において用いる「重質有機(有機化合物)」又は「重質有機相(有機化合物相)」という用語には、HCFO-1233zd(E)の製造から形成されるタール又はタール様の物質、或いはオリゴマーを含めることができる。「重質有機(有機化合物)」という用語は、約500g/モル~約7,000g/モルの間の重量平均分子量(Mw)を有する有機組成物(例えば、C、H、O、F、Cl等、及びこれらの組合せの鎖)であると理解することができる。例えば、重質有機化合物は、500g/モル、550g/モル、590g/モル、600g/モル、800g/モル、1,000g/モルのような小さい値、1,200g/モル、3,000g/モル、4,000g/モル、5,000g/モル、及び6,000g/モル、7,000g/モルのような大きい値、或いは例えば500g/モル~700g/モル、600g/モル~6,000g/モル、及び1,000g/モル~1,200g/モルのような上記の値の任意の2つの間で規定される任意の範囲内の分子量を有していてよい。
【0007】
[0007]更に、「重質有機(有機化合物)」という用語は、単一の単位又はモノマーから構成される有機化合物を含むと理解することができ、種々のコモノマーを含んでいてよく、1~15(端点を含む)の間の重合度を有していてよい。例えば、重合度は、1、2、4、5のように小さく、又は9、10、12、15のように大きく、或いは例えば1~15、2~12、4~10、及び5~9のような上記の値の任意の2つの間で規定される範囲内であってよく、端点を含む任意の範囲内(例えば、端点を含んで1~15の間、端点を含んで2~10の間、及び端点を含んで5~9の間)であってよい。
【0008】
[0008]種々の態様においては、重質有機化合物は約3psia~約73psiaの間の圧力において約120℃~約300℃の間の沸点を有していてよい。この沸点は、約60℃、80℃、100℃のような低い値、350℃、400℃、500℃のような高い値、又は上記の値の任意の2つの間で規定される任意の範囲内(例えば約60℃~約500℃の間)であってよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許7,829,747
【文献】米国特許8,217,208
【文献】米国特許8,835,700
【文献】米国特許9,045,386
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[0009]HCFO-1233zd(E)と、HCFO-1233zd(Z)、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(240fa)、1,1,1,3-テトラクロロ-3-フルオロプロパン(241fa)、1,1,1-トリクロロ-3,3-ジフルオロプロパン(242fa)などの他の反応物質/生成物の沸点は近似しており、多くの分子間力が存在しているので、従来の分離方法は遂行するのが多少困難であることが判明している場合がある。更に、上述の化合物の種々の組合せの間で幾つかの共沸混合物及び/又はヘテロ共沸混合物が形成される可能性があるので、重質有機化合物から上述の化合物を有効に分離することが必要である。
【0011】
[0010]また、HFは有効な溶媒であるので、重質有機化合物からHFを有効に取り出すことが望ましい。HFは、重質有機化合物をその後のプロセスにおいて用いることができるか、又は処分することができる前に重質有機化合物から取り出さなければならないので、HFを含む他の化合物から1233zd(E)を生成させる反応器からのパージ流中の重質有機化合物を分離することに取り組む必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0011]本発明は、HCFO-1233zd(E)の種々の製造プロセスから得られる重質有機化合物に関する分離方法を提供する。かかる分離方法によって、HFを含むHCFO-1233zd(E)を形成するのに必要な反応物質から重質有機化合物を回収及び/又は分離することが可能になる。かかる分離又は回収方法は、種々の分離技術(例えば、デカンテーション、液-液分離、蒸留、及びフラッシュ蒸留)を用いることができ、共沸性又は共沸混合物様の組成物の独特の特性を利用することもできる。HFを実質的に含まない重質有機化合物を回収することによって、それらをその後の製造プロセスにおいて用いるか、又は処分することが可能になる。
【0013】
[0012]反応器を洗浄する方法には、HF及び重質有機化合物を含む反応器パージを取り
出し、HF相と、(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン及び重質有機化合物を含む有機相を分離し、重質有機化合物相を留出させ、留出した重質有機化合物を回収することを含めることができる。種々の態様において、HF相と有機相を分離することには、デカンテーション、遠心分離、液-液抽出、蒸留、フラッシュ蒸留、結晶化/濾過、又はこれらの組合せの少なくとも1つを含めることができる。本発明において用いる蒸留のタイプは特に限定されず、例えば単蒸留、分子蒸留、真空蒸留、バッチ蒸留、連続蒸留、フラッシュ蒸留、分別蒸留、共沸蒸留、及びこれらの組合せを挙げることができる。
【0014】
[0013]種々の態様においては、HFと重質有機化合物の分離は、回収する際の反応器パージよりも高い圧力、高い温度、又は高い圧力及び温度の両方で行うことができる。幾つかの態様においては、分離は、回収する際の反応器パージよりも低い温度又は低い圧力、或いは低い圧力及び低い温度の両方で行うことができる。
【0015】
[0014]幾つかの態様においては、共沸性又は共沸混合物様の組成物を形成することができる。共沸性又は共沸混合物様の組成物としては、HFと、240、241、242、又はこれらの組合せの少なくとも1つとの間の共沸混合物を挙げることができる。幾つかの態様においては、共沸性又は共沸混合物様の組成物はヘテロ共沸混合物を含んでいてよい。共沸性又は共沸混合物様の組成物は、約3psia~約73psiaの圧力において約0℃~約60℃の沸点を有していてよい。
【0016】
[0015](E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF、及び重質有機化合物を分離する方法には、(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF、及び重質有機化合物の混合物を液-液分離器に供給し、HF相と、(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン及び重質有機化合物を含む有機相を分離し、HF相を蒸留して、HFに富む塔頂物及び軽質有機化合物の塔底物を形成し、軽質有機化合物相を液-液分離器に加え、液-液分離器から重質有機化合物を留出させ、そして重質有機化合物を回収する工程を含めることができる。
【0017】
[0016]この方法にはまた、(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF、及び重質有機化合物の混合物に洗浄流体を加えることを含めることもできる。洗浄流体には、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン、1,1,1,3-テトラクロロ-3-フルオロプロパン、1,1,1-トリクロロ-3,3-ジフルオロプロパン、HCl、又はこれらの混合物の少なくとも1つを含めることができる。
【0018】
[0017]HF相と有機相の分離には、デカンテーション、遠心分離、液-液抽出、蒸留、フラッシュ蒸留、又はこれらの組合せの少なくとも1つを含めることができる。
[0018]更に、種々の方法にはまた、液-液分離器から有機相を留出させた後に軽質有機化合物を回収すること、及び/又は(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF、及び重質有機化合物の混合物を凝縮することを包含させるか又は含めることもできる。
【0019】
[0019]本方法にはまた、共沸性又は共沸混合物様の組成物を形成することを含めることもできる。共沸性又は共沸混合物様の組成物としては、HFと、240、241、242、又はこれらの組合せの少なくとも1つの間の共沸混合物が挙げられる。共沸混合物様の組成物は、均一の共沸混合物又はヘテロ共沸混合物であってよい。
【0020】
[0020]本発明の代表的な態様の以下の記載を添付の図面と組み合わせて参照することによって、本発明の上述及び他の特徴及び対象並びにそれを実施する手段がより明らかにな
り、本発明それ自体がより良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】[0021]図1Aは、HCFO-1233zd(E)の製造から得られる反応器パージの処理を示すプロセスフロー図である。
図1B】[0022]図1Bは、HCFO-1233zd(E)の製造から得られる複数の反応器からの反応器パージの処理を示す、図1Aと同様のプロセスフロー図である。
図1C】[0023]図1Cは、HCFO-1233zd(E)の製造から得られる反応器パージの処理を示すプロセスフロー図であり、ここでは有機化合物相のHF塔頂物を反応器に再循環して戻している。
図2A】[0024]図2Aは、HCFO-1233zd(E)の製造から得られる反応器パージのフラッシュ蒸留処理を示すプロセスフロー図である。
図2B図2Bは、HCFO-1233zd(E)の製造から得られる反応器パージのフラッシュ蒸留処理を示すプロセスフロー図である。
図3】[0025]図3は、洗浄流体を加えることを含む、反応器パージの処理を示すプロセスフロー図である。
図4】[0026]図4は、留出したHF相の塔頂物を種々の態様にしたがって更に分離するプロセスを示す更に他のプロセスフロー図である。
図5】[0027]図5は、種々の態様にしたがって洗浄流体を加えてHF相をデカンテーションすることを含む、反応器パージの処理を示すプロセスフロー図である。
【0022】
[0028]幾つかの図面全体にわたって、対応する参照記号は対応する構成要素を示す。図面は本発明の幾つかの態様を示しているが、図面は必ずしも等縮尺ではなく、本発明をより良好に示し且つ説明するために幾つかの特徴が誇張されている場合がある。ここに示す例示は発明の代表的な態様を種々の形態で示すものであり、かかる例示はいかなるようにも発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[0029]上記で簡単に記載したように、本発明は、(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd(E))の製造中に生成する重質有機化合物からのHF及び軽質有機化合物の分離及び回収技術を提供する。実質的にHFを含まない重質有機化合物は、その後のプロセス、別の用途において重質有機化合物を用いることのいずれかを可能にし、或いは比較的コスト効率よく環境に優しい方法で重質有機化合物を処分することを可能にすることができるので、実質的にHFを含まない重質有機化合物を分離及び回収することが望ましい。
【0024】
[0030](E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd(E))を製造する反応器からの廃棄物流又はパージ流は、しばしば、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(240fa)、1,1,1,3-テトラクロロ-3-フルオロプロパン(241fa)、1,1,1-トリクロロ-3,3-ジフルオロプロパン(242fa)、HF、HCl、HCFO-1233zd(E)、及び種々の重質有機化合物など(しかしながらこれらに限定されない)の種々の化合物を含む。HFの溶媒特性、形成する可能性がある共沸性又は共沸混合物様の組成物、及び分離中のその後の反応のために、HFと他の物質の分離は、従来の分離技術で分離するのは多少困難であることが判明している場合がある。而して下記においては、重質有機化合物からのHF及び他の物質の分離を可能にする方法の種々の例又は態様を開示する。
【0025】
[0031]本明細書において量に関連して用いる「約」という修飾語は、規定されている値を包含するものであり、文脈によって決定される意味を有する(例えば、これは少なくとも特定の量の測定値に関連する程度の誤差を含む)。範囲の文脈において用いる場合には
、「約」の修飾語はまた、2つの端点の絶対値によって規定される範囲を開示するともみなすべきである。例えば、「約2~約4」の範囲は「2~4」の範囲も開示している。
【0026】
[0032]図1Aは、種々の態様によるプロセスフロー1を示すプロセスフロー図を示す。プロセスフロー1は、1233zdを製造するための反応器2中に流入させる投入物又は反応物質の流れ25を示している。1233zdを製造するための処理パラメーターは特に限定されず、1233zdを製造するための任意の公知のプロセスを挙げることができる。例えば、HCFC-1233zdを製造するためのプロセスは、米国特許8,921,621及び米国特許8,835,770(これらの開示事項は両方ともそれらの全部を参照として本明細書中に包含する)に詳述されている。
【0027】
[0033]生成した1233zd(E)は、1233zd流22によって1233zd容器12に流入させ、回収し、精製し、1233zd容器12内で輸送することができる。反応器にはまた、反応器2からパージ物質を取り出すパージ流3を与えることもできる。パージ流3は特に限定されず、連続的、半連続的、又はバッチ法を用いて運転することができる。
【0028】
[0034]更に、パージ流3は、種々の反応器からの複数のパージ流の組み合わせであってよい。例えば、一時的に図1Bを参照すると、プロセス流1の一部が複数の反応器と共に示されている。図1Bにおいては3つの反応器2が示されている。反応物質流25は、投入バルブ26内でHF再循環流9及び軽質有機化合物再循環流23と混合することができる。次に、分配バルブ28によって投入バルブ26からの流れを分配することができる。
【0029】
[0035]いかなる特定の態様にも限定されないが、並行の複数の反応器を導入することによって、残りの反応器を運転し続けながら1つの反応器を停止及び/又は洗浄することを可能にすることができる。而して、1233zd(E)は、連続的に製造することができ、或いは1つの反応器をメンテナンス及び/又は洗浄のために運転停止しながら残りの反応器からバッチ的に製造することができる。かかる態様においては、より安定して予測できる供給プロセスを達成して、連続的な1233zd(E)製造能力又は連続的に近い1233zd(E)の製造能力を得ることができる。
【0030】
[0036]再び図1Aを参照すると、反応器2にはまたパージ流3を与えることができる。パージ流3は特に限定されず、連続的に運転するか、半連続的に運転するか、又はバッチプロセスの一部として運転することができる。図1Bにおいて示す態様のような種々の態様においては、複数の反応器2からの複数のパージ流3を、例えば可変バルブ26を用いて混合することができる。
【0031】
[0037]パージ流3は次に分離器4に送ることができる。分離器4は特に限定されず、デカンテーション、遠心分離、液-液抽出、蒸留、フラッシュ蒸留、又はこれらの組合せの少なくとも1つを含めることができる。例えば、図1Bに示すように、分離器4は液-液分離器として示され、ここでHFに富む相を有機化合物相から分離する。
【0032】
[0038]塔頂流5中の重質有機物質の量は1重量%未満であってよく、又は1重量%、1.5重量%、若しくは2重量%のような少ない量であってよく、又は5重量%、6重量%、若しくは7重量%のような多い量であってよく、或いは例えば1重量%~7重量%、1.5重量%~6重量%、又は2重量%~5重量%のような上記の値の任意の2つの間で規定される任意の範囲内であってよい。塔底流11中の重質有機物質の量は、7重量%、9重量%、若しくは11重量%のような少ない量であってよく、又は15重量%、20重量%、若しくは25重量%のような多い量であってよく、或いは例えば7重量%~25重量%、9重量%~20重量%、若しくは11重量%~15重量%のような上記の値の任意の
2つの間で規定される任意の範囲内であってよい。
【0033】
[0039]次に、HF塔頂流5をHF蒸留カラム6に送って、そこで主としてHFと軽質有機化合物を分離する。次に、HFに富む塔頂物7を凝縮器14及びポンプ10に送り、次にHF再循環流9の部分を形成し、これは次に再循環して1233zdの製造に導入することができる。いかなる特定の態様にも限定されないが、再循環したHFを用いることによって、製造コストの減少及び廃棄物の減少を促進することができる。
【0034】
[0040]HF蒸留カラム6にはまた、軽質有機塔底物19も与えることができ、これは次に分離器4に戻すことができる。種々の態様においては、軽質有機化合物塔底物19はまた、若干量又は微量の重質有機化合物も有する場合がある。軽質有機化合物塔底物11は、多少の微量のHF、軽質有機化合物、及び重質有機化合物を含む可能性がある。軽質有機化合物塔底物11は次に、有機化合物相流11中に導入して、次に有機化合物蒸留カラム8に送ることができる。次に、有機化合物蒸留カラム8によって、HF、軽質有機化合物、及び重質有機化合物を分離することができる。HF蒸留カラム6及び有機化合物蒸留カラム8並びに他の蒸留カラムは、幾つかの態様においては従来の蒸留カラムと共通している特質、特徴、又はセクションを含むと理解することができる。例えば、蒸留カラムには、精留セクション、ストリッパーセクション、分縮器、部分気化器、又はこれらの組合せを含めることができる。
【0035】
[0041]本明細書において用いる「軽質有機(有機化合物)」という用語には、約50g/モルより高く約450g/モルよりも低い重量平均(Mw)分子量を有する種々の有機組成物(例えば、C、H、O、F、Cl、及びこれらの組合せの鎖)を含めることができ、これは1233zd(E)を形成するための反応物質を含むが、1233zd(E)を製造するための反応物質又は投入物のみには限定されない。而して、軽質有機化合物は、HCFO-1233zd(Z)、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(240fa)、1,1,1,3-テトラクロロ-3-フルオロプロパン(241fa)、1,1,1-トリクロロ-3,3-ジフルオロプロパン(242fa)を包含すると理解することができる。
【0036】
[0042]例えば、軽質有機化合物は、約50g/モル、約100g/モル、約125g/モル、約150g/モル、約175g/モルのような小さい値、約200g/モル、約225g/モル、約300g/モル、約400g/モル、約450g/モルのような大きい値、或いは約50g/モル~約450g/モルの間、約150g/モル~約400g/モルの間、及び約175g/モル~約300g/モルの間のような上記の値の任意の2つの間で規定される任意の範囲内の分子量を有してよい。
【0037】
[0043]下表1に示す以下の実験溶解度情報は、分離する種々の流れの組成に基づいてここに開示する分離器の種々の運転条件を調整するために当業者によって用いることができる。
【0038】
【表1】
【0039】
[0044]HF塔頂物13は、冷却器又は凝縮器(例えば凝縮器14)内で冷却及び/又は凝縮し、ポンプ10によってポンプ移送して、HFに富む流れ15によってHF蒸留カラム6に送ることができる。図1Cに例示するもののような幾つかの態様においては、HFに富む流れ15は、投入バルブ26に直接再循環して反応器2に加えることができる。軽質有機化合物は、軽質有機化合物流21によって送って、凝縮器14によって凝縮し、ポンプ10によって凝縮した軽質有機化合物流23として投入バルブ26にポンプ移送して、反応器2内における1233zd(E)の更なる製造に導入することができる。最後に、重質有機化合物は、精製重質有機化合物塔底物17から重質有機化合物容器27中に回収することができる。
【0040】
[0045]図2A及び2Bは、1233zd(E)を製造するための更なるプロセスフロー図を示す。プロセス50は、図1A及び1Bに示すプロセスと多少類似しているが、低下した温度及び/又は圧力におけるフラッシュ蒸留の使用を含んでいる。例えば、反応器2からの反応器パージ3を、フラッシュ前(pre-flash)熱交換器24によって加熱した後に
フラッシュ蒸留分離器52に送ることができる。フラッシュ蒸留カラムは特に限定されず、任意のタイプの一段階又は多段階フラッシュ蒸留を含めることができる。
【0041】
[0046]本発明において用いるフラッシュ蒸留は、パージ流3の温度を操作して部分気化又は気化させるために、(例えばフラッシュ前熱交換器24として図2A及び2Bに示されるような)加熱器又は冷却器に液体供給流を通すことを含むと理解することができる。反応器2からのパージ流3の液体/蒸気を減少した圧力の容器に導入すると、液体と蒸気が分離する。種々の態様においては、「フラッシュ」又は迅速な分離が起こるまで蒸気と液体をこのように密に接触させることができるので、生成物の液相と蒸気相を平衡に到達させることができる。更に、本発明において用いるフラッシュ蒸留は、フラッシュ蒸留分離器52に対する負荷を減少させるために用いることができるフラッシュ前処理(pre-flashing)を含むと理解することができる。
【0042】
[0047]いかなる理論にも限定されないが、幾つかの態様においては、反応器2の下流における更なる化学反応を阻止するために反応器塔底流3の温度及び/又は圧力を低下させることが好ましいと考えられる。而して、反応器2からの冷却パージ流3から下流をより低圧で運転することによって、パージ流3中に含まれる化学物質(例えば軽質有機化合物及びHF)の更なる望ましくない反応を減少又は排除することができる。
【0043】
[0048]次に、フラッシュ蒸留分離器52によって、HF塔頂流5(これはHF蒸留カラム6に送ることができる)、及び有機化合物相流11(これは有機化合物フラッシュ蒸留カラム58に送ることができる)を与えることができる。次に、有機化合物フラッシュ蒸留カラム58によって、HF、軽質有機化合物、及び重質有機化合物を更に分離することができる。HF塔頂物13は、次にHF蒸留カラム6に送ることができる。幾つかの態様においては、図2Bにおいて例示されるように、HF塔頂流5は、投入バルブ26に送って、反応器2へ投入物として含めることができる。軽質有機化合物流21は、次に投入バルブ26に再循環することができ、精製した重質有機化合物塔底物17は、他のプロセスにおいて用いるためか又は処分するために重質有機化合物容器27に送ることができる。
【0044】
[0049]種々の分離器、蒸留カラム、及びフラッシュ蒸留分離器は、種々の温度及び圧力で運転することができる。温度は、約-20℃、約0℃、約20℃、約25℃、約40℃のような低い値から、約50℃、約75℃、約100℃、約150℃のような高い値の範囲、或いは例えば約-20℃~約150℃の間、約0℃~約100℃の間、約20℃~約50℃の間のような上記の値の任意の2つの間で規定される任意の範囲内であってよい。
【0045】
[0050]圧力は、約2psia、約5psia、約10psia、約20psiaのよう
な小さい値から、約50psia、約100psia、約150psia、約300psia、約500psia、約550psiaのような高い値の範囲、或いは例えば約2psia~約500psiaの間、約5psia~約300psiaの間、及び約10psia~約50psiaの間のような上記の値の任意の2つの間で規定される任意の範囲内であってよい。
【0046】
[0051]図3は、予備調整を用いるプロセスフロー301に関する更に他のプロセスフロー図を示す。本発明において用いる予備調整は特に限定されず、分離プロセスにおいて公知の任意の予備調整を含めることができる。例えば、幾つかの処理においては、反応器パージを加熱し、部分的にフラッシュ蒸留してHF負荷を減少させることができる。而して、予備調整プロセス中に多少のHFを混合物から除去することによって、下流の分離に対する負荷を減少させることができる。反応器パージ3は、まず反応器パージ3の熱及び/又は圧力のいずれかを変化させることによって予備調整し(予備調整器304で示される)、次にまずフラッシュ蒸留分離器52内で反応器パージ3を予備フラッシング(pre-flashing)することができる。より高い有機化合物の相を含む可能性がある塔底物は、軽質
有機化合物塔底流19と混合して予備調整流511を形成することができる。予備調整流511は、次に凝縮器14内で冷却及び/又は凝縮し、液-液分離器306に送って、HF相と有機相を分離して取り出すことができる。
【0047】
[0052]いかなる理論にも限定されないが、幾つかの態様においては、混合物を予備調整することによって、例えば種々の共沸性又は共沸混合物様の混合物を用いて分離プロセスをより有効にすることを可能にすることができる。
【0048】
[0053]図4は、洗浄流体303を用いる更に他のプロセスのプロセスフロー図を示す。図4に示す態様においては、反応器2からのパージ流3及び洗浄流体303を、ミキサー302内で混合する。ここで用いる洗浄流体という用語は、混合物の特定の成分を富化又は希釈するために用いる任意の流体であると理解することができる。例えば、幾つかの態様においては、洗浄流体は、軽質有機化合物を富化し、混合物中におけるそれらの組成を増加させる組成物であってよい。幾つかの態様においては、洗浄流体は、反応物質流25中に見られる他の成分であることが好ましい。しかしながら、洗浄流体源は特に限定されず、幾つかの態様においては、再循環した成分又は組成物を含めることができることを留意すべきである。例えば、幾つかの態様においては、洗浄流体303は、蒸留カラム408からの軽質有機化合物相流29から取ることができる。
【0049】
[0054]ミキサー302からの混合物は、次に凝縮器404内で凝縮して混合物バルブ30に送り、ここでミキサー302からの混合物を液-液分離器414からの塔頂有機化合物相流405と混合する。次に、混合物バルブ30からの混合物をフラッシュ蒸留分離器52に送り、ここでHF相(HF塔頂流5として示す)を有機化合物相(有機化合物相流11として示す)から分離する。HF塔頂流5を蒸留カラム6に送った後、HFに富む塔頂物7を凝縮器412内で凝縮することができる。
【0050】
[0055]図5は、図4に示すプロセスフロー400と類似しているが、液-液分離器406を用いて予備調整した反応器パージ3を処理するプロセスフロー500を用いる他のプロセスを示す。液-液分離器406からのHFに富む相505は、次に凝縮器512内で凝縮してポンプ10を通して再循環して、反応器2のための反応物質中に導入するHF再循環流9の一部を形成することができる。有機化合物相流11は、次に蒸留カラム408に送って更に処理して、HF、軽質有機化合物、及び重質有機化合物を分離することができる。
【0051】
[0056]ここに記載した種々のプロセスにおいて、分離は、共沸性又は共沸混合物様の組
成物を形成することによって促進させることができる。流体の熱力学的状態は、その圧力、温度、液体の組成、及び蒸気の組成によって規定される。真の共沸性組成物に関しては、与えられた温度及び圧力範囲において液体組成と蒸気相が実質的に等しい。実際面では、これは成分を相変化中に分離することができないことを意味する。ここで開示するように、共沸混合物は、周囲の混合物組成物の沸点と比べて最高又は最低の沸点を示す液体混合物である。また、本明細書において用いる「共沸混合物様」という用語は、厳密に共沸性であるか、及び/又は概して共沸性混合物のように挙動する組成物を指す。
【0052】
[0057]共沸混合物又は共沸混合物様の組成物は、与えられた圧力下において液体形態である場合に実質的に一定の温度において沸騰し、その温度が個々の成分の沸点よりも高いか又は低い可能性があり、沸騰している液体組成物と実質的に同一の蒸気組成を与える2以上の異なる成分の混合物である。
【0053】
[0058]ここで用いる共沸性組成物は、共沸混合物様の組成物(これは、共沸混合物のように挙動し、即ち一定の沸点特性を有するか、或いは沸騰又は蒸発させることによって分別されない傾向を有する組成物である)を包含するように定義することができる。而して、沸騰又は蒸発中に形成される蒸気の組成は、元の液体の組成と同じか又は実質的に同じである。したがって、沸騰又は蒸発中において、液体の組成は、変化するとしても、最小又は無視できる程度までしか変化しない。これは、沸騰又は蒸発中に液体の組成が相当程度まで変化する非共沸混合物様の組成物とは対照的である。
【0054】
[0059]したがって、共沸混合物又は共沸混合物様の組成物の重要な特徴は、与えられた圧力において、液体組成物の沸点が一定であり、沸騰している組成物の上方の蒸気の組成が実質的に沸騰している液体組成物のものであり、即ち、液体組成物の成分の分別が実質的に起こらないことである。共沸性組成物のそれぞれの成分の沸点及び重量%は両方とも、共沸混合物又は共沸混合物様の液体組成物を異なる圧力において沸騰にかけると変化する可能性がある。而して、共沸混合物又は共沸混合物様の組成物は、その成分間に存在する関係の観点、又は成分の組成範囲の観点、或いは規定圧力における一定の沸点によって特徴付けられる組成物のそれぞれの成分の実際の重量%の観点で規定することができる。
【0055】
[0060]本発明の種々の態様においては、共沸性又は共沸混合物様の組成物を形成するのに有効な量のHF、HCl、軽質有機化合物、重質有機化合物、又はこれらの組合せを含む組成物が提供される。本明細書において用いる「有効量」という用語は、他の成分と組み合わせた際に共沸混合物又は共沸混合物様の混合物を形成するそれぞれの成分の量である。本明細書において用いる「ヘテロ共沸混合物」及び「不均一共沸混合物」という用語は、同時に2つの液相と共に存在する蒸気相を含む共沸混合物様の組成物を包含する。
【0056】
[0061]幾つかの態様においては、反応器の洗浄方法、又は(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF、及び重質有機化合物を分離する方法に、共沸性又は共沸混合物様の組成物を形成することを含めることができる。共沸性又は共沸混合物様の組成物としては、HFと、240fa、241fa、242fa、又はこれらの組合せとの間の共沸混合物を挙げることができる。
【0057】
[0062]例えば、HFと241faの共沸混合物は、約2重量%のHF、15重量%、30重量%、50重量%のHFのような少ない量、60重量%のHF、70重量%のHF、90重量%のHF、及び99重量%のHFのような多い量、或いは上記の値の任意の2つの間で規定される任意の範囲内(例えば約31重量%のHF~約72重量%のHFの間、約2重量%のHF~約99重量%のHFの間、及び約15重量%のHF~約90重量%の間)であってよい。更に、一例においては、不均一共沸混合物は、蒸気流中に2重量%の241fa及び98重量%のHFを有し、頂部の液層は15重量%の241fa及び85
重量%のHFを有し、底部の液層は99重量%の241fa及び1重量%のHFであることが分かった。
【0058】
[0063]また、1233zd(E)とHFの共沸性又は共沸混合物様の混合物を形成することができる。幾つかの態様においては、1233zd(E)とHFの共沸性又は共沸混合物様の混合物は、約3psia~約73psiaの圧力において約0~約60℃の沸点を有する。
【0059】
[0064]下記に開示する態様又は例は、包括的であるか又は本発明を以下の詳細な記載において開示されている厳密な形態に限定することは意図しない。むしろ、これらの態様は、当業者がこれらの教示を利用できるように選択し記載したものである。
【0060】
[0065]本発明を代表的なデザインを有するものとして記載したが、本発明は本明細書の精神及び範囲内で更に修正することができる。したがって本出願は、その一般原理を用いる発明の任意の変更、使用、又は適合をカバーすると意図される。更に、本出願は、本発明が属する技術における公知又は慣習的な実施の範囲内に含まれる本発明からのかかる逸脱をカバーすると意図される。
【0061】
[0066]更に、ここに含まれる種々の図面において示す接続線は、種々の構成要素の間の代表的な機能的関係及び/又は物理的接続を示すものと意図される。実際のシステムにおいては、多くの別か又は更なる機能的関係又は物理的接続が存在する可能性があることを留意すべきである。しかしながら、利益、有利性、問題への解決法、及び任意の利益、有利性、又は解決法をもたらすことができるか、又はより顕著にすることができるいかなる構成要素も、臨界的、必須、又は本質的な特徴若しくは構成要素として解釈すべきではない。したがって、範囲は添付の特許請求の範囲以外の何物によっても限定されず、特許請求の範囲において構成要素を単数形で記載することは、明確に言及されていない限りは「只1つ」を意味する意図はなく、「1以上」を意味する。更に、特許請求の範囲において「A、B、又はCの少なくとも1つ」に類似する成句を用いる場合には、この成句は、一態様においてはA単独が存在する可能性があり、一態様においてはB単独が存在する可能性があり、一態様においてはC単独が存在する可能性があり、或いは単一の態様においては構成要素A、B、又はCの任意の組合せ;例えばA及びB、A及びC、B及びC、又はA及びB並びにCが存在する可能性があることを意味するように解釈されると意図される。
【0062】
[0067]本明細書における詳細な説明において、「一態様」、「1つの態様」、「一例の態様」等の記載は、記載する態様が特定の特徴、構造、又は特質を含んでいてよいが、必ずしも全ての態様がその特定の特徴、構造、又は特質を含んでいなくてもよいことを示している。更に、かかる成句は必ずしも同じ態様を記載するものではない。更には、1つの態様に関連して特定の特徴、構造、又は特質が記載されている場合は、それは、明確に記載されているかどうかに関係なく他の態様に関係するかかる特徴、構造、又は特質を実施する本発明の利益を有する当業者の知識の範囲内であると申し述べる。この記載を読んだ後は、本発明を別の態様でどのように実施するかは当業者に明らかになるであろう。
【0063】
[0068]更に、本発明における構成要素、構成部材、又は方法工程はいずれも、その構成要素、構成部材、又は方法工程が特許請求の範囲において明確に示されているかどうかに関係なく、公衆に提供されているとは意図しない。本出願における特許請求の範囲の要素はいずれも、その要素が「~のための手段」の成句を用いて明確に示されていない限りにおいて、35.USC.§112(f)の規定の下で解釈すべきではない。本明細書において用いる「含む」、「含み」、又はその任意の他の変形は、非排他的な内包物をカバーするように意図され、構成要素のリストを含むプロセス、方法、物品、又は装置は、これらの構成要素のみを含むのではなく、明確にリストされていないか、或いはかかるプロセス、方法、物品、又は装置に特有の他の構成要素を含んでいてもよい。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF、及び重質有機化合物の混合物を液-液分離器に供給し;
HF相と、(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン及び少なくとも1種類の重質有機化合物を含む有機相を分離し;
HF相を蒸留して、HFに富む塔頂物、及び軽質有機化合物の塔底物を形成し;
軽質有機化合物相を液-液分離器に加え;
液-液分離器からの重質有機化合物を蒸留し;そして
重質有機化合物を回収する;
工程を含む、(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF、及び重質有機化合物を分離する方法。
[2]
(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、HF、及び重質有機化合物の混合物に洗浄流体を加えることを更に含む、[1]に記載の方法。
[3]
HFと、1,1,1,3,3-ペンタクロロプロパン(240fa)、1,1,1,3-テトラクロロ-3-フルオロプロパン(241fa)、1,1,1-トリクロロ-3,3-ジフルオロプロパン(242fa)、又はこれらの組合せの少なくとも1つを含む共沸性又は共沸混合物様の組成物を形成することを更に含む、[1]に記載の方法。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4
図5