(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】シクロヘキサンジカルボン酸の異性化方法
(51)【国際特許分類】
C07C 51/353 20060101AFI20240528BHJP
C07C 61/09 20060101ALI20240528BHJP
C01G 25/02 20060101ALI20240528BHJP
C01G 25/00 20060101ALI20240528BHJP
B01J 21/06 20060101ALI20240528BHJP
B01J 23/10 20060101ALI20240528BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240528BHJP
【FI】
C07C51/353
C07C61/09
C01G25/02
C01G25/00
B01J21/06 Z
B01J23/10 Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2022533591
(86)(22)【出願日】2020-10-27
(86)【国際出願番号】 KR2020014713
(87)【国際公開番号】W WO2021112405
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】10-2019-0160692
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・クォン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ナムジン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スン・ウク・イ
【審査官】柴田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1208050(KR,B1)
【文献】特表平08-502747(JP,A)
【文献】特開2001-151716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/00- 409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シス異性体を含むシクロヘキサンジカルボン酸、水および異性化触媒を混合して製造した混合溶液を熱処理して前記シス異性体をトランス異性体に異性化する段階を含み、
前記異性化触媒は、ジルコニアを含み、BET比表面積が50m
2/g以上である、シクロヘキサンジカルボン酸の異性化方法。
【請求項2】
前記異性化触媒は、アンモニア昇温脱離法(NH
3-TPD)により測定される酸点の総量が400umol/gcat以上である、請求項1に記載のシクロヘキサンジカルボン酸の異性化方法。
【請求項3】
前記異性化触媒は、アンモニア昇温脱離法(NH
3-TPD)により測定される酸点の総量(100モル%)中、酸点の脱離温度が50~150℃である弱酸点の量が5~75モル%であり、酸点の脱離温度が150~450℃である中間酸点の量が15~95モル%であり、酸点の脱離温度が450℃以上である強酸点の量は残りに該当する、請求項1に記載のシクロヘキサンジカルボン酸の異性化方法。
【請求項4】
前記異性化触媒内のジルコニアは、単斜晶系ジルコニア、正方晶系ジルコニア、またはこれらの混合物である、請求項1に記載のシクロヘキサンジカルボン酸の異性化方法。
【請求項5】
前記異性化触媒は、異種遷移金属酸化物をさらに含む、請求項1に記載のシクロヘキサンジカルボン酸の異性化方法。
【請求項6】
前記異性化触媒は、チタニア-ジルコニア複合体、ランタニア-ジルコニア複合体、イットリア-ジルコニア複合体、またはこれらの混合物である、請求項5に記載のシクロヘキサンジカルボン酸の異性化方法。
【請求項7】
前記異性化触媒の総量(100重量%)中、前記異種遷移金属酸化物の含有量は1~50重量%である、請求項5に記載のシクロヘキサンジカルボン酸の異性化方法。
【請求項8】
前記異性化触媒は、内部に気孔を含み、
前記気孔の体積は、0.05cm
3/g以上~1.5cm
3/g以下である、請求項1に記載のシクロヘキサンジカルボン酸の異性化方法。
【請求項9】
前記異性化触媒は、内部に気孔を含み、
前記気孔の直径は、2.0~120nmである、請求項1に記載のシクロヘキサンジカルボン酸の異性化方法。
【請求項10】
前記シス異性体を含むシクロヘキサンジカルボン酸は、前記混合溶液の総量(100重量%)中、0.5~30重量%で含まれる、請求項1に記載のシクロヘキサンジカルボン酸の異性化方法。
【請求項11】
前記異性化触媒は、前記シクロヘキサンジカルボン酸に対する異性化触媒の重量比(異性化触媒/シクロヘキサンジカルボン酸の重量比)が、0.1以上となる量で投入される、請求項1に記載のシクロヘキサンジカルボン酸の異性化方法。
【請求項12】
前記熱処理は、220~350℃で行われる、請求項1に記載のシクロヘキサンジカルボン酸の異性化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2019年12月5日付韓国特許出願第10-2019-0160692号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み含まれる。
【0002】
本発明は、シクロヘキサンジカルボン酸(Cyclohexane dicarboxylic acid、CHDA)の異性化方法に関し、より詳しくは触媒的異性化方法を通じてシス-シクロヘキサンジカルボン酸(c-CHDA)からトランス-シクロヘキサンジカルボン酸(t-CHDA)を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)は、医薬品、合成樹脂、合成繊維または染料などの原料として広く使用されており、特にトランス-シクロヘキサンジカルボン酸(t-CHDA)は、耐熱性、耐候性、および強度特性が要求される樹脂や繊維製造用原料として使用されている。そのために、t-CHDAの濃度が高いCHDAが要求されている。
【0004】
一般的にCHDAは、テレフタル酸(Terephthalic acid、TPA)を水素化する方法、TPA誘導体のベンゼン環を水素化する方法により製造される。一例としてTPA誘導体のベンゼン環を水素化する方法の場合、TPAのカルボキシル基をナトリウム塩などの金属塩または各種エステルに変換した後、ベンゼン環を水素化(核水素化)する方法、またはカルボキシル基を核水素化する方法がある。
【0005】
しかし、これらの方法では、TPAベンゼン環の水素化により異性体が生成し、結果として得られるCHDAは、c-CHDAおよびt-CHDAの混合物の形態である。得られたCHDA中のt-CHDAの濃度は反応条件に依存するが、50%未満と低い。
【0006】
そこで、CHDA内のt-CHDAの濃度を増加させるために多様な方法が研究されており、そのうち最も多く研究されている方法は熱的異性化方法である。
【0007】
しかし、この方法では、t-異性体の溶融点以上の温度で加熱されるため、得られるt-CHDAは非常に固く、取り扱いが難しい。また、98%の高純度を有するt-CHDAは、t-CHDAを熱処理した後、活性炭素を使用して水から再結晶する場合にのみ最終的に得られるという問題がある。
【0008】
この他にも、t-CHDAの濃度が高いCHDAを製造するための様々な方法が提案されているが、反応効率、収得率、加工性などの全ての側面で有利な方法は未だ確認されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、c-CHDAを主に含むCHDAからt-CHDAを高い含有量で含むCHDAを高効率、高収率、および低費用で製造することができる、CHDAの触媒的異性化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態では、ジルコニアを含み、BET比表面積が50m2/g以上である異性化触媒を使用することで、c-CHDAを主に含むCHDAからt-CHDAを高い含有量で含むCHDAを高効率、高収率、および低費用で製造することができる方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるCHDA異性化方法によれば、CHDA内の(トランス)trans/シス(cis)比率を容易に調節することができる。このため、シス異性体が豊富なCHDAからトランス異性体が豊富なCHDAを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例および比較例の各触媒のX線回折分析結果を示すグラフである(試験例1)。
【
図2】実施例および比較例の各触媒のアンモニア昇温脱離分析(NH
3-TPD)結果を示すグラフである(試験例1)。
【
図3】実施例および比較例の各触媒を使用した異性化反応時、反応温度によるt-CHDAの収得率を評価した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で使用する用語は、単に例示的な実施例を説明するために使用するものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0014】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な形態を有することができるところ、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0015】
以下、発明の具体的な実施形態によるCHDAの異性化方法および異性化触媒などについてより詳しく説明する。
【0016】
シクロヘキサンジカルボン酸の異性化方法
本発明の一実施形態では、ジルコニアを含み、BET比表面積が50m2/g以上である異性化触媒を使用することで、c-CHDAを主に含むCHDAからt-CHDAを高い含有量で含むCHDAを高効率、高収率、および低費用で製造することができる方法を提供する。
【0017】
本発明の一実施形態によるCHDAの異性化反応は、c-CHDAが異性化触媒に吸着された状態で異性化反応が進行した後、t-CHDAに異性化された生成物が脱離する反応メカニズムを利用することによって、既に知られているTPAの水素化方法、熱的異性化方法などに比べて加工費用を節減しながらも、高効率と高収率でt-CHDAを製造することができる触媒的異性化方法に該当する。
【0018】
ここで、c-CHDAと異性化触媒の相互作用、そして反応物と異性化触媒の吸着、および反応完了後の生成物と異性化触媒の脱離が、異性化反応効率および異性化された生成物の収得率に大きく影響を与えるため、異性化触媒は反応物と生成物の両方に対してそれぞれ適切な強度の吸着力および脱離力を示すことが可能でなければならない。
【0019】
触媒の必須構成成分およびBET比表面積
具体的に、本発明の一実施形態によるCHDAの異性化反応は、シリカ、セリアなどの無機酸化物に比べて、c-CHDAに対する優れた相互作用を示して反応効率の向上に寄与することができるジルコニアを含む。
【0020】
また、異性化反応完了後、生成物であるt-CHDAが異性化触媒に強く吸着して分離されないことによって収得率を減少させるアルミナ、マグネシアなどとは異なり、ジルコニアは特別な表面処理または改質なしでも異性化反応時に反応物および生成物に対してそれぞれ適切な吸着力および脱離力を示すことができる。
【0021】
さらに、ジルコニアは、高い溶融点を有して優れた耐火性を示し、化学的にも非常に安定しているため、異性化反応の触媒として使用されても副反応を招く虞が少ない。
【0022】
ただし、ジルコニアを含んでも、その物性により反応効率、t-CHDAの収得率などが変わり得ることを考慮する必要がある。
【0023】
もちろん、BET比表面積が広い触媒であるほど、より多量の反応物が吸着するため、反応効率を上げるのに寄与するという点は、既に広く知られた事実である。
【0024】
ただし、CHDAの異性化反応において反応効率、t-CHDAの収得率などを顕著に改善できる触媒のBET比表面積特性は現在まで提示されておらず、本発明の一実施形態では実際試験を通じて確認された最適なBET比表面積特性を提示する。
【0025】
具体的に、前記一実施形態によるCHDAの異性化反応を実際に試験した時、ジルコニアを含みながらも、BET比表面積が50m2/g以上であるものを異性化触媒として使用した場合、反応初期効率が顕著に改善され、さらにはt-CHDAの収得率も顕著に増加することが確認された。
【0026】
より具体的に、ジルコニアを含みながら、50m2/g以上、60m2/g以上、70m2/g以上、または80m2/g以上の範囲でBET比表面積がより広い触媒を使用するほど、CHDAの異性化反応中により多量のc-CHDAが触媒に吸着して反応することができるため、反応初期効率およびt-CHDAの収得率が改善され得る。
【0027】
前記異性化触媒のBET比表面積の上限は、特に制限されないが、比表面積が過度に高い場合、生成物(つまり、t-CHDA)の脱離が難しいこともあることを考慮して、200m2/g以下、180m2/g以下、160m2/g以下、または140m2/g以下である範囲に制御することができる。
【0028】
総合的に、本発明の一実施形態によるCHDAの異性化方法は、シス異性体を含むCHDA、水および異性化触媒を混合して製造した混合溶液を熱処理することによって前記シス異性体をトランス異性体に異性化する段階を含み、前記異性化触媒としては、ジルコニアを含み、BET比表面積が50m2/g以上であるものを使用することによって、反応初期効率およびt-CHDAの収得率を改善する。
【0029】
この他にも、前記異性化触媒の組成、気孔特性、酸特性などをさらに調節することによって反応初期効率およびt-CHDAの収得率をさらに改善することができ、これについて詳しく説明する。
【0030】
触媒の酸特性
前記一実施形態によるCHDAの異性化反応において、異性化触媒が有する酸点の量は、CHDAの異性化反応の反応性、これによるt-CHDAの収得率などに影響を与え得る。
【0031】
具体的に、異性化触媒が有する弱酸点の量および中間酸点の量が多く、それにより総酸点の量が多いほど、前記一実施形態によるCHDAの異性化反応がより促進され、そのために最終的なt-CHDAの収得率も向上し得る。
【0032】
一般的に知られている触媒の酸点分析方法は、アンモニア昇温脱離分析(NH3-TPD、temperature programmed desorption)であり、特定条件下で脱離されるアンモニアの量を測定して昇温脱離曲線を図示した後、その昇温脱離曲線に示されるピークを酸点と把握することができる。
【0033】
前記異性化触媒の場合、酸の強さ(strength)により二つまたは三つのピークが示すされ得る。ここで、低い温度の領域から弱酸点、中間酸点、および強酸点に分類し、各酸点で脱離されるNH3の量を各ピークの面積から求めることができる。
【0034】
これに関する実際試験によれば、ジルコニアを含み、50m2/g以上のBET比表面積を有し、アンモニア昇温脱離法(NH3-TPD)により測定される酸点の総量が、400umol/gcat以上、500umol/gcat以上、600umol/gcat以上、700umol/gcat以上、または750umol/gcat以上の多い触媒を使用するほど、CHDAの異性化反応によるt-CHDAの収得率が向上することが確認された。
【0035】
ここで、前記異性化触媒が有する弱酸点の量および中間酸点の量が多く、それによる総酸点の量が多いほど、より低い反応温度でCHDAの異性化反応が進行し、より高いt-CHDAの収得率(約65%以上)の達成に寄与し得る。
【0036】
具体的に、前記異性化触媒は、アンモニア昇温脱離法(NH3-TPD)により測定される酸点の総量(100モル%)中、酸点の脱離温度が50~150℃である弱酸点の量が5~75モル%、具体的に10~70モル%であり、酸点の脱離温度が150~450℃である中間酸点の量が15~95モル%、具体的に20~90モル%であり、酸点の脱離温度が450℃以上である強酸点の量は残りに該当するように酸点が構成される時、これを満たさない場合より低い反応温度でCHDAの異性化反応促進、より高いt-CHDAの収得率などを達成することができる。
【0037】
触媒の結晶性および追加構成成分
先に言及したとおり、前記一実施形態によるCHDAの異性化反応において、異性化触媒の結晶性、異性化触媒内部の気孔体積および平均気孔サイズよりも、BET比表面積および酸特性が、反応効率およびt-CHDAの収得率により大きい影響を与え得る。
【0038】
具体的に、ジルコニアは、単斜晶系、正方晶系または六方晶系の多様な結晶構造を有することができ、単に熱的、化学的安定性のみを考慮すれば単斜晶系の結晶構造を有するジルコニアを触媒として選択しなければならない。
【0039】
ただし、必須構成成分であるジルコニアの結晶構造が単斜晶系でないか、および/または前記追加構成成分をさらに含んでいても、前記一実施形態で提示したBET比表面積と酸点の総量とを満たす異性化触媒を使用する場合には、熱的、化学的安定性で不利があり得るとしても、優れた初期反応効率を示し、高いt-CHDA収得率を達成することができることには変わりない。
【0040】
これに関連して、前記異性化触媒の必須構成成分であるジルコニアは、単斜晶系ジルコニア、正方晶系ジルコニア、またはこれらの混合物とすることができる。
【0041】
また、前記異性化触媒は、前記必須構成成分であるジルコニアを含みながら、追加構成成分として異種遷移金属酸化物をさらに含むことができる。ここで、異種遷移金属酸化物は、チタニア、ランタニア、イットリア、またはこれらの混合物であり得る。
【0042】
前記追加構成成分として例示したチタニア、ランタニア、およびイットリアは、それぞれ化学的、物質的安定性に優れ、反応物に対して十分な相互作用を示すことによって、CHDA異性化反応時に、より優れた触媒効果を示すことができる。
【0043】
具体的に、チタニアは、アナターゼ(anatase)、ルチル(rutile)およびブルカイト(brookite)の結晶構造を有することができ、ランタニア、およびイットリアは、それぞれ単斜晶系、正方晶系、六方晶系または立方晶系の結晶構造を有することができる。
【0044】
これに対して、特に制限するものではないが、触媒製造の容易さおよびCHDA異性化反応に対する触媒効果を考慮すると、アナターゼチタニア、正方晶系ランタニア、および正方晶系イットリアを使用することができる。
【0045】
前記追加構成成分が前記異性化触媒に含まれる形態は特に制限されず、前記必須構成成分であるジルコニアと混合されたものや複合化されたものであり得る。例えば、前記追加構成成分が前記必須構成成分であるジルコニアと複合化された場合、前記異性化触媒は、チタニア-ジルコニア複合体、ランタニア-ジルコニア複合体、イットリア-ジルコニア複合体、またはこれらの混合物であり得る。
【0046】
ただし、前記異性化触媒に必須構成成分のみが単独で含まれている場合だけでなく、追加構成成分がさらに含まれる場合にも、BET比表面積が50m2/g以上を満たすようにし、選択的にアンモニア昇温脱離法(NH3-TPD)により測定される酸点の総量が400umol/gcat以上を満たしていなければならないことはもちろんである。
【0047】
実際試験の結果によれば、チタニア-ジルコニア複合体、ランタニア-ジルコニア複合体、またはイットリア-ジルコニア複合体を含みながら、そのBET比表面積および酸点の総量が前記各範囲を満たす触媒を使用すると、ジルコニアのみを単独で含み、BET比表面積および酸点の総量が前記各範囲を満たす場合と比べて、同等またはそれ以上の初期反応効率とt-CHDAの収得率とが達成されることが確認された。
【0048】
前記追加構成成分が前記異性化触媒に含まれる場合、その含有量は1~50重量%、具体的に5~45重量%であり得る。ただし、初期反応効率およびt-CHDAの収得率において、前記異性化触媒内の追加構成成分の含有量よりも、その触媒のBET比表面積および酸特性がより重要な因子であることは前述したとおりである。
【0049】
触媒の内部気孔体積および直径
前記異性化触媒は、内部に多数の気孔を含む多孔性触媒であり得る。
【0050】
この時、前記異性化触媒内の気孔の体積は、0.05cm3/g以上~1.5cm3/g以下、具体的に0.10cm3/g以上~1.0cm3/g以下であり得る。また、前記異性化触媒内の気孔の直径は、2.0~120nm、具体的に3.0~100nmであり得る。
【0051】
ここで、気孔の体積は、前記異性化触媒一つに含まれている気孔の総体積を示し、気孔の直径は、前記異性化触媒一つに含まれている全気孔の平均的な直径を示したものであり、窒素吸着法を利用する一般的な測定機器で測定可能である。
【0052】
触媒および反応物の各使用量
前記一実施形態によるCHDA異性化時、前記異性化触媒は、反応物であるシス異性体を含むCHDAの含有量によりその使用量を適切に制御することができる。具体的にCHDAに対する異性化触媒の含有量が高いほど反応速度が増加するため、発明の一実施形態によるCHDA異性化方法において前記異性化触媒は異性化触媒/CHDAの重量比が0.1以上になる量で添加することができる。しかし、CHDAに対する異性化触媒の含有量が一定水準以上である場合、使用量に対する反応速度の増加効果が微々となり、反応効率性が低下する点を考慮すると、前記異性化触媒は、より具体的に異性化触媒/CHDAの重量比が0.1~2.0を満たす量で添加することができる。異性化触媒/CHDAの重量比が0.1未満であれば十分な異性化効果を得にくく、2.0を超えれば前述した通り触媒使用量に対する反応効率性の増加が微々になり得る。異性化触媒/CHDAの重量比制御による反応速度改善効果およびt-CHDAの収得率増加効果を考慮すると、前記異性化触媒は、異性化触媒/CHDAの重量比が0.14~1.67、より具体的には0.14~1.0あるいは0.14~0.83となる量で添加することがより好ましい。
【0053】
一方、前記異性化触媒を利用した本発明の一実施形態によるCHDA異性化方法は、シス異性体を含むCHDA、水および異性化触媒を混合して製造した混合溶液を利用する。
【0054】
前記CHDAは、シス異性体のみを含むこともでき、シス異性体以外にトランス異性体をさらに含むことができる。トランス異性体をさらに含む場合、十分な異性化効果を得るためにその含有量はCHDA総重量に対して50重量%未満、より具体的には40重量%以下であることが好ましい。
【0055】
前記混合溶液は、CHDAおよび触媒を水に溶解して製造するが、この時、CHDAの溶解度を増加させ、さらには異性化効率を上げるためにアルカリ金属、アルカリ土類金属または塩基性水溶液などをさらに添加すること、攪拌工程などを任意選択でさらに行うこともできる。
【0056】
また、前記混合溶液中のCHDA濃度は、CHDAの異性化反応に影響を与える。具体的には、CHDAの濃度が低くなると異性化反応の反応速度が増加する。しかし、CHDAの濃度が過度に低ければt-CHDAの生成および収得率が低下し、反応効率性が低下する虞があり、CHDAの濃度が過度に高い場合、反応速度が低下して十分な異性化効果を得にくいこともある。そこで、発明の一実施形態によるCHDA異性化方法において、前記CHDAの濃度は、混合溶液総重量に対して0.5~30重量%であり得る。CHDAの濃度が0.5重量%未満であれば、生成物の生成量および収得率が過度に少なくて効率性が低い。反面、CHDAの濃度が30重量%を超えれば反応速度が遅くなって製造工程が長くなり、異性化効果が低下するなどの虞があり、また高濃度のCHDAが固相で析出される虞がある。より具体的に前記混合溶液中のCHDA濃度は、0.8~20重量%、あるいは0.8~6.5重量%であり得、CHDAの濃度制御による反応速度増加およびt-CHDA収得率増加効果を考慮すると、0.8~3.5重量%、あるいは0.8~3.2重量%であることが好ましい。
【0057】
前述の異性化触媒の添加後、混合溶液を加熱などの方法で熱処理すると異性化反応が起こる。この時、反応温度を制御することによって反応速度を調節することができる。具体的に異性化反応時に反応温度を高めることによって反応速度が増加するが、反応温度が一定水準を超える場合、反応速度の制御が難しいこともある。そこで、発明の一実施形態によるCHDA異性化方法では、前記異性化触媒の添加後、反応系を220~280℃の温度範囲で熱処理する工程を行う。異性化反応時、温度が220℃未満であれば反応速度が遅く、280℃を超える場合、反応速度制御が難しいことがある。反応温度制御による反応速度増加およびt-CHDA収得率向上の効果を考慮すると、前記熱処理工程は230~270℃、より具体的には250~270℃で行うことがより好ましい。
【0058】
また、前記異性化反応の間に攪拌工程を行うこともでき、前記攪拌工程の間の速度制御を通じて異性化反応時の反応効率を上げることができる。具体的に前記攪拌工程は、500~2000rpmの速度で行うことができ、より具体的には700~1300rpmあるいは1000~1300rpmの速度で行うことが好ましい。
【0059】
一方、前記攪拌工程は、通常の攪拌装置を利用して行い得る。
【0060】
前述の異性化反応条件を全て満たす条件で2~5時間異性化反応を行うことが、工程効率性の面でより好ましい。
【0061】
異性化されたシクロヘキサンジカルボン酸を含む組成物(t-CHDA含有量が高いt-CHDAおよびc-CHDAの混合物)
本発明の他の一実施形態では、前述した方法で異性化されたシクロヘキサンジカルボン酸を含む組成物を提供する。
【0062】
これは、ジルコニアを含み、BET比表面積が50m2/g以上である触媒を使用することで、c-CHDAを主に含むCHDAの異性化反応を進行させた結果として得られるものであって、t-CHDAの含有量が高いCHDAを含む組成物である。
【0063】
具体的に、ジルコニアを含むが、BET比表面積が50m2/g未満に小さい触媒を使用する場合、異性化反応の初期反応速度が低く、t-CHDAの収得率は60%以下の水準に留まることがある。
【0064】
その反面、ジルコニアを含み、BET比表面積が50m2/g以上である触媒を使用する場合、より広いBET比表面積を有することで、異性化反応の初期反応速度が改善され、t-CHDAの収率(つまり、収得率)が63%以上に高くなり得る。
【0065】
また、前述した通り、異性化触媒が有する弱酸点の量および中間酸点の量が多く、それにより総酸点の量が多いほど、前記一実施形態によるCHDAの異性化反応がより促進され、そのため最終的なt-CHDAの収得率も向上し得る。
【0066】
これに関する実際試験によれば、ジルコニアを含み、50m2/g以上のBET比表面積を有しながら、アンモニア昇温脱離法(NH3-TPD)により測定される酸点の総量が400umol/gcat以上、500umol/gcat以上、600umol/gcat以上、700umol/gcat以上、または750umol/gcat以上とより多い触媒を使用するほど、CHDAの異性化反応によるt-CHDAの収得率が63%以上、63.5%以上、64%以上、64.5%以上、または65%以上に高くなり得る。
【0067】
参考までに、前記t-CHDAの収率(つまり、収得率)は、前記異性化反応前のCHDA反応物に含まれているc-CHDAの量(100モル%)中、異性化反応を通じてt-CHDAに転換されるc-CHDAのモル%で示すことができる。しかし、前記異性化反応前のCHDA反応物はc-CHDAを主に含むため、前記異性化反応後に得られたCHDA総モル量に対するt-CHDAの含有量(モル%)を前記t-CHDAの収得率で示すことも可能である。
【0068】
言い換えると、前記一実施形態の組成物内の全シクロヘキサンジカルボン酸中、トランス異性体の含有量が63重量%以上、63.5%以上、64%以上、64.5%以上、または65%以上であり得る。
【0069】
また、前述した一実施形態によれば、前記異性化触媒の使用によりCHDA内トランス(trans)の含有量を容易に増加および調節することができるだけでなく、副反応発生の虞がない。
【0070】
そこで、前記一実施形態の組成物は、医薬品、合成樹脂、合成繊維または染料の原料として使用され得る。
【0071】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例により限定されるものではない。また、以下の実施例、比較例で含有量を示す「%」および「部」は特に言及しない限り、重量基準である。
【実施例】
【0072】
実施例1
CHDAの異性化反応のために、反応器として300℃、150barでも耐えることができる回分式反応器を選定した。準備した回分式反応器にシス異性体を含むCHDA4.05g、Saint-Gobain社製のジルコニア(単斜晶系)1.125g、および溶媒である蒸溜水250gを入れ、50rpmで攪拌しながら250℃まで混合溶液の温度を昇温させた(溶液中のCHDA濃度:1.6重量%、ジルコニア/CHDAの重量比=0.28)。混合溶液の温度が250℃に到達した後、攪拌速度を1000rpmに上げて攪拌しながら5時間反応させた。
【0073】
ここで使用したジルコニア(単斜晶系)のBET比表面積、気孔体積、および平均気孔直径は表1に示すとおりであり、酸特性は表2に示すとおりである。
【0074】
実施例2
前記実施例1で使用したSaint-Gobain社製のジルコニア(単斜晶系)の代わりに、Johnson matthey社製のジルコニア(単斜晶系)を使用することを除き、前記実施例1と同様の方法で行った。
【0075】
実施例3
前記実施例1で使用したSaint-Gobain社製のジルコニア(単斜晶系)の代わりに、混合物総量(100重量%)中のチタニア(アナターゼ)の含有量が41重量%であるSaint-Gobain社製のジルコニア(単斜晶系)-チタニア(アナターゼ)を使用したことを除き、前記実施例1と同様の方法で行った。
【0076】
実施例4
前記実施例1で使用したSaint-Gobain社製のジルコニア(単斜晶系)の代わりに、混合物総量(100重量%)中のランタニア(正方晶系)の含有量が8.3重量%であるSaint-Gobain社製のジルコニア-ランタニア(正方晶系)を使用したことを除き、前記実施例1と同様の方法で行った。
【0077】
実施例5
前記実施例1で使用したSaint-Gobain社製のジルコニア(単斜晶系)の代わりに、混合物総量(100重量%)中のイットリア(正方晶系)の含有量が7.3重量%であるSaint-Gobain社製のジルコニア-イットリア(正方晶系)を使用したことを除き、前記実施例1と同様の方法で行った。
【0078】
比較例1
前記実施例1で使用したSaint-Gobain社製のジルコニア(単斜晶系)の代わりに、CNVISION社製のジルコニア(単斜晶系)を使用したことを除き、前記実施例1と同様の方法で行った。
【0079】
比較例2
前記実施例1で使用したSaint-Gobain社製のジルコニア(単斜晶系)の代わりに、Kanto chemical社製のジルコニア(単斜晶系)を使用したことを除き、前記実施例1と同様の方法で行った。
【0080】
試験例1:触媒分析
c-CHDAのt-CHDAへの異性化反応に最適化した触媒を選択するために、触媒の組成および結晶構造だけでなく、その内部に含まれている気孔の総体積、平均気孔直径、各酸点での酸量および総酸量を総合的に検討する。
【0081】
これに関連して、異性化反応試験に先立ち、実施例1~5および比較例1および2の各触媒について次のような分析を実施した。
【0082】
(1)XRD
実施例1~5および比較例1および2の各触媒の結晶構造確認のために、CuKαによるX線回折分析を行い、その結果を
図1および表1に示した。
【0083】
(2)BET比表面積
実施例1~5および比較例1および2の各触媒について、BET比表面積測定機器(製造会社:BEL Japan、機器名:BELSORP_Mini)を利用して、液体窒素温度下(77K)での窒素ガス吸着量から比表面積を評価し、その評価結果を表1に示した。
【0084】
(3)平均気孔直径および体積
実施例1~5および比較例1および2の各触媒について、BET比表面積測定機器(製造会社:BEL Japan、機器名:BELSORP_Mini)を利用して、液体窒素温度(77K)下で、相対圧(P/P01)で測定される吸着量と、0.03で測定される脱離量とを利用して、BJH数式から平均気孔直径および体積を測定して表1に示した。
【0085】
(4)NH
3-TPD
実施例1~5および比較例1および2の各触媒の酸特性を調査するために、アンモニア昇温脱離分析(NH
3-TPD)を行い、その結果を表2および
図2に示した。具体的な分析方法は次のとおりである。
【0086】
実施例1~5および比較例1および2の各触媒を0.2g取って石英反応器に入れ、150℃で1時間にわたって20ml/分の速度のヘリウム下で前処理を実施した。常温に放冷した後、15%アンモニア/ヘリウムガスを利用して触媒表面のアンモニア吸着量を飽和させた。
【0087】
そして、物理吸着されたアンモニアを除去するために150℃で1時間真空処理した。その後、1分当たり10℃の速度で900℃まで昇温させながら10ml/分速度のヘリウム下で脱離されるアンモニアの量を、ガスクロマトグラフィー検出器が備えられたNH
3-TPD装置(AutoChem2920)で測定して、その昇温脱離曲線を
図2に示した。
【0088】
図2で実施例1~5および比較例1および2の各触媒は、二つまたは三つのピークを有していた。低い温度の領域から弱酸点、中間酸点、および強酸点に分類し、各ピークの面積から各酸点で脱離されるNH
3の量を求めて下記表2に示した。
【0089】
【0090】
【0091】
前記表1で、比較例1および2の触媒に比べて、BET比表面積が広い実施例1~5の触媒にはより多量の反応物が吸着されるため、反応効率を上げることに寄与し得ることが分かる。
【0092】
一方、触媒の弱酸点および中間酸点が多いほどCHDAの異性化反応が顕著に促進されることによって、反応物の生成物への転換率が向上することが知られている。
【0093】
このような観点で前記表2をみると、実施例1~5の触媒は、比較例1および2の触媒に比べて、弱酸点の量および中間酸点の量が多く、それによる総酸点の量が顕著に多いため、CHDAの異性化反応がより促進され、t-CHDAの収得率を向上させることに寄与できることが予想される。
【0094】
試験例2:CHDAの異性化反応に対する触媒影響の評価
実際に、CHDAの異性化反応に触媒が及ぼす影響を評価するために、実施例1~5および比較例1および2の各触媒を使用した異性化反応の完了後、t-CHDAの含有量をそれぞれ測定した。CHDA反応物に含まれているc-CHDAの量(100モル%)中、異性化反応を通じてt-CHDAに転換されたc-CHDAのモル%を収得率として、
図3に示した。
【0095】
図3によれば、比較例1および2の触媒に比べて、実施例1~5の触媒を使用した場合、異性化反応によるt-CHDAの収得率が顕著に増加したことが確認される。
【0096】
具体的に、比較例2の触媒を使用した場合、t-CHDAの収得率は50%にも達しておらず、比較例1の触媒を使用した場合、t-CHDAの収得率は60%水準に留まった。
【0097】
ここで、比較例1と比較例2の触媒は、単斜晶系のジルコニアであり、その結晶構造と組成が同一である。ただし、平均気孔直径は類似水準であるが、気孔体積、BET比表面積、各酸点での酸量および総酸量が多い比較例1の触媒では、比較例2よりもt-CHDAの収得率が一部増加したことが分かる。
【0098】
しかし、実施例1と2の触媒も単斜晶系のジルコニアであり、その結晶構造と組成は比較例1および2と同一であるが、その初期反応効率およびt-CHDAの収得率が、比較例1および2よりも顕著に改善されたことが確認される。
【0099】
ここには大きく二つの要因が作用したと推論される。具体的に、実施例1と2の触媒は、比較例1および2よりもさらに広いBET比表面積を有することで、初期反応速度を改善することができた。また、実施例1と2の触媒は、比較例1および2に比べて弱酸点での酸量、中間酸点での酸量、およびこれによる総酸量が多いため、より低い反応温度でCHDAの異性化反応を進行させ、より高いt-CHDAの収得率(約65%以上)を達成することができた。
【0100】
一方、実施例1~5を比較すると、触媒の結晶性、触媒内部の気孔体積および平均気孔サイズよりも、BET比表面積および酸特性が、反応効率およびt-CHDAの収得率により大きい影響を与えることが確認される。
【0101】
具体的に、ジルコニアは、単斜晶系、正方晶系または六方晶系の多様な結晶構造を有することができ、単に熱的、化学的安定性のみを考慮すれば単斜晶系の結晶構造を有するジルコニアを触媒として選択することができる。
【0102】
ただし、実施例4および5では、正方晶系のジルコニアを含むが、正方晶系ランタニアまたは正方晶系イットリアと複合化された触媒を使用した。これらは熱的、化学的安定性では不利があり得るものの、単斜晶系ジルコニアを単独で含む触媒を使用した比較例1および2よりもさらに広いBET比表面積を有し、総酸量が多いという触媒特性により、より優れた初期反応効率を示し、より高いt-CHDA収得率を達成した。
【0103】
これに関連して、単斜晶系よりも熱的、化学的安定性が低い正方晶系ジルコニアが触媒の構成成分として含まれていても、異種遷移金属酸化物との複合化の有無、BET比表面積特性、酸特性などを適切に調節することによって、単斜晶系ジルコニアを単独で含む触媒よりもさらに良い反応効率およびt-CHDA収得率を達成できることが分かる。
【0104】
この他、単斜晶系ジルコニアとアナターゼチタニアとが複合化された触媒を使用した実施例3の場合にも、比較例1および2に比べてBET比表面積が大きく、総酸量が多いという触媒特性により、熱的により良い反応効率と、t-CHDA収得率とを達成することができた。