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特許7495500レーザ加工のための教示装置及び教示方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】レーザ加工のための教示装置及び教示方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20240528BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20240528BHJP
   G05B 19/42 20060101ALI20240528BHJP
   G05B 19/4069 20060101ALI20240528BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20240528BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20240528BHJP
   B23K 26/044 20140101ALI20240528BHJP
【FI】
B25J9/22 A
B25J19/00 E
G05B19/42 J
G05B19/4069
B23K26/00 M
B23K26/21 A
B23K26/044
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022535322
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2021025344
(87)【国際公開番号】W WO2022009844
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2020119359
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169856
【弁理士】
【氏名又は名称】尾山 栄啓
(72)【発明者】
【氏名】武田 俊也
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-247677(JP,A)
【文献】特開2020-075353(JP,A)
【文献】特開平10-275007(JP,A)
【文献】特開2020-035404(JP,A)
【文献】特開2016-087750(JP,A)
【文献】特開2004-074368(JP,A)
【文献】特開平11-099493(JP,A)
【文献】特開平07-182017(JP,A)
【文献】特開2019-081206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
G05B 19/18 - 19/416
G05B 19/42 - 19/46
B23K 26/00
B23K 26/21
B23K 26/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバが接続されたレーザ加工ヘッドと該レーザ加工ヘッドを移動させるロボットとを含むレーザ加工システムの前記ロボットの動作を教示するための教示装置において、
対象物に設定される複数の加工点の位置に基づいて前記ロボットの動作経路を決定する経路決定部と、
決定された前記動作経路にしたがって前記ロボットの動作シミュレーションを実行するシミュレーション実行部と、
前記動作シミュレーションによる前記ロボットの動きにしたがって前記光ファイバの挙動をシミュレーションすることで前記光ファイバのねじれ量を求め、該ねじれ量と所定の許容範囲とを対比することで前記ねじれ量を評価するねじれ量評価部と、
前記ねじれ量が前記所定の許容範囲を超える前記ロボットの動作について、前記ねじれ量が小さくなるように前記ロボットの姿勢を変更するロボット姿勢変更部と、を備え、
前記レーザ加工ヘッドのレーザの照射範囲は矩形であり、
前記経路決定部は、前記動作経路に沿った前記ロボットの動作方向と前記照射範囲のいずれかの辺とが平行になるように前記ロボットが前記動作経路上を動作する際の前記ロボットの姿勢を決定する、教示装置。
【請求項2】
前記ねじれ量評価部と前記ロボット姿勢変更部は、前記ロボットの姿勢を変更後に前記ねじれ量を再度評価する動作を、前記動作経路全体について前記光ファイバのねじれ量が前記所定の許容範囲に収まるまで繰り返し実行する、請求項1に記載の教示装置。
【請求項3】
前記経路決定部は、前記ロボット姿勢変更部により前記ロボットの姿勢を変更した結果として、溶接中に加工点が前記レーザ加工ヘッドによるレーザの照射範囲から逸脱する前記ロボットの動作について、前記ロボットの動作速度を落とす、又は、前記加工点の溶接タイミングを調整することにより、前記加工点が溶接中に前記照射範囲に収まるようにする、請求項1又は2に記載の教示装置。
【請求項4】
前記ロボット姿勢変更部は、前記光ファイバの前記レーザ加工ヘッドへの接続端部の軸線方向と平行な軸回りに前記レーザ加工ヘッドを回転させることで前記ロボットの姿勢を変更する、請求項1からのいずれか一項に記載の教示装置。
【請求項5】
光ファイバが接続されたレーザ加工ヘッドと該レーザ加工ヘッドを移動させるロボットとを含むレーザ加工システムの前記ロボットの動作を教示するための教示方法において、
対象物に設定される複数の加工点の位置に基づいて前記ロボットの動作経路を決定し、
決定された前記動作経路に従い前記ロボットの動作シミュレーションを実行し、
前記動作シミュレーションによる前記ロボットの動きにしたがって前記光ファイバの挙動をシミュレーションすることで前記光ファイバのねじれ量を求め、該ねじれ量と所定の許容範囲とを対比することで前記ねじれ量を評価し、
前記ねじれ量が前記所定の許容範囲を超える前記ロボットの動作について、前記ねじれ量が小さくなるように前記ロボットの姿勢を変更する、ことを含み、
前記レーザ加工ヘッドのレーザの照射範囲は矩形であり、
前記動作経路に沿った前記ロボットの動作方向と前記照射範囲のいずれかの辺とが平行になるように、前記ロボットが前記動作経路上を動作する際の前記ロボットの姿勢を決定する、教示方法。
【請求項6】
前記ロボットの姿勢を変更後に前記ねじれ量を再度評価する動作を、前記動作経路全体について前記光ファイバのねじれ量が前記所定の許容範囲に収まるまで繰り返し実行する、請求項に記載の教示方法。
【請求項7】
前記ロボットの姿勢を変更した結果として、溶接中に加工点が前記レーザ加工ヘッドによるレーザの照射範囲から逸脱する前記ロボットの動作について、前記ロボットの動作速度を落とす、又は、前記加工点の溶接タイミングを調整することにより、前記加工点が溶接中に前記照射範囲に収まるようにする、請求項又はに記載の教示方法。
【請求項8】
前記ロボットの姿勢の変更は、前記光ファイバの前記レーザ加工ヘッドへの接続端部の軸線方向と平行な軸回りに前記レーザ加工ヘッドを回転させることで行われる、請求項からのいずれか一項に記載の教示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットを用いたレーザ加工システムの教示を行うレーザ加工のための教示装置及び教示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットのアーム先端に搭載した加工ヘッドからレーザを照射し、ワークに対する溶接等の加工を行うレーザ加工システムが提案されている(例えば、特許文献1-5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-35404号公報
【文献】特開2006-344052号公報
【文献】特開2018-086711号公報
【文献】特開2006-281304号公報
【文献】特開2007-21550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザ加工ヘッドとしてガルバノスキャナを用いるレーザ加工システムでは、打点の配置から、ロボットに取り付けられたガルバノスキャナの照射範囲に打点が入るように、教示装置によってロボットの動作経路が生成される。このように生成された動作経路に従ってロボットを動作させた場合、ガルバノスキャナの姿勢によっては、ガルバノスキャナに接続されたファイバが許容範囲を超えて捻じれてしまう場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、光ファイバが接続されたレーザ加工ヘッドと該レーザ加工ヘッドを移動させるロボットとを含むレーザ加工システムの前記ロボットの動作を教示するための教示装置において、対象物に設定される複数の加工点の位置に基づいて前記ロボットの動作経路を決定する経路決定部と、決定された前記動作経路にしたがって前記ロボットの動作シミュレーションを実行するシミュレーション実行部と、前記動作シミュレーションによる前記ロボットの動きにしたがって前記光ファイバの挙動をシミュレーションすることで前記光ファイバのねじれ量を求め、該ねじれ量と所定の許容範囲とを対比することで前記ねじれ量を評価するねじれ量評価部と、前記ねじれ量が前記所定の許容範囲を超える前記ロボットの動作について、前記ねじれ量が小さくなるように前記ロボットの姿勢を変更するロボット姿勢変更部と、を備え、前記レーザ加工ヘッドのレーザの照射範囲は矩形であり、前記経路決定部は、前記動作経路に沿った前記ロボットの動作方向と前記照射範囲のいずれかの辺とが平行になるように前記ロボットが前記動作経路上を動作する際の前記ロボットの姿勢を決定する、教示装置である。
【0006】
本開示の別の態様は、光ファイバが接続されたレーザ加工ヘッドと該レーザ加工ヘッドを移動させるロボットとを含むレーザ加工システムの前記ロボットの動作を教示するための教示方法において、対象物に設定される複数の加工点の位置に基づいて前記ロボットの動作経路を決定し、決定された前記動作経路に従い前記ロボットの動作シミュレーションを実行し、前記動作シミュレーションによる前記ロボットの動きにしたがって前記光ファイバの挙動をシミュレーションすることで前記光ファイバのねじれ量を求め、該ねじれ量と所定の許容範囲とを対比することで前記ねじれ量を評価し、前記ねじれ量が前記所定の許容範囲を超える前記ロボットの動作について、前記ねじれ量が小さくなるように前記ロボットの姿勢を変更する、ことを含み、前記レーザ加工ヘッドのレーザの照射範囲は矩形であり、前記動作経路に沿った前記ロボットの動作方向と前記照射範囲のいずれかの辺とが平行になるように、前記ロボットが前記動作経路上を動作する際の前記ロボットの姿勢を決定する、教示方法である。
【発明の効果】
【0007】
上記構成によれば、光ファイバのねじれが許容範囲に収めるようにレーザ加工システムにおける教示を行うことができる。
【0008】
添付図面に示される本発明の典型的な実施形態の詳細な説明から、本発明のこれらの目的、特徴および利点ならびに他の目的、特徴および利点がさらに明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るレーザ加工教示装置を含むレーザ加工システムの全体構成図である。
図2】レーザ加工教示装置、ロボット制御装置及びスキャナの機能構成を表す図である。
図3】動作プログラム作成処理を表すフローチャートである。
図4】動作経路の生成及び動作速度の決定処理を表すフローチャートである。
図5】打点群のグループ分け及び経路の決定を説明するための図である。
図6A】ロボットが照射範囲の辺に沿って移動する状態を表す図である。
図6B】ロボットの移動方向が照射範囲に沿っていない状態を表す図である。
図7】動作経路を移動する際のロボットの姿勢を、ロボットの移動方向がスキャナの照射範囲の辺に沿うように決定した場合の例を表している。
図8】線条体の挙動シミュレーションで用いられる線条体モデルの一例を示す斜視図である。
図9】線条体と着目点の画像の例を示す図である。
図10】線条体の挙動シミュレーションにおけるねじれ量の算出手順を示す図である。
図11】ねじれ量を解消するためのロボットの姿勢の変更を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。参照する図面において、同様の構成部分または機能部分には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。また、図面に示される形態は本発明を実施するための一つの例であり、本発明は図示された形態に限定されるものではない。
【0011】
図1は一実施形態に係るレーザ加工教示装置60を含むレーザ加工システム100の全体構成図である。レーザ加工システム100は、ロボット110の所定の可動部位(本実施形態ではアーム先端部)に取り付けられたレーザ加工ヘッドとしてのガルバノスキャナ(以下、単にスキャナと記す)90を移動させながらレーザ光を走査させワークW上の各加工点の加工を行う、いわゆる協調型のリモートレーザ加工システムとして構成されている。図1の構成例では、レーザ加工システム100は、ロボット110と、ロボット110の制御を行うロボット制御装置70と、レーザ発振器80と、レーザ加工教示装置60とを含む。ロボット110は図1の構成例では垂直多関節ロボットであるが、他のタイプのロボットが用いられても良い。また、ガルバノスキャナ以外のレーザ走査装置が用いられても良い。スキャナ90は、レーザ発振器80から光ファイバ81を介して送られてくるレーザ光をミラーを駆動することによってXY方向に走査させる機能、およびレンズをZ方向に駆動してレーザスポットをZ方向に移動させる機能を有する。
【0012】
光ファイバ81は、スキャナ90への接続端部81aがスキャナ90の上面90aに対してほぼ垂直となる状態で、上面90aの中央部に接続されている。
【0013】
レーザ加工教示装置60は、オフランでロボット110およびスキャナ90の動作プログラムを生成するプログラミング装置である。レーザ加工教示装置60は、CPU、ROM、RAM、ハードディスク、入力装置、表示装置、ネットワークインタフェース等のハードウェア構成要素を有する一般的なPCとしての構成を有していても良い。レーザ加工教示装置60としては、デスクトップ型PC,ノートブック型PC,携帯型情報端末など、各種の情報処理装置を用いることができる。図1に示した構成例では、レーザ加工教示装置60は、ネットワークを介してロボット制御装置70と接続されており、レーザ加工教示装置60で作成されたロボット110及びスキャナ90の動作プログラムは、ネットワークを介してレーザ加工教示装置60からロボット制御装置70に転送することができる。
【0014】
ロボット制御装置70は、動作プログラムにしたがってロボット110を制御する動作制御部71を備える。ロボット制御装置70は、CPU、ROM、RAM、記憶装置等を有する一般的なコンピュータとしての構成を有していても良い。レーザ加工教示装置60で生成されたスキャナ90の動作プログラムは、レーザ加工教示装置60からロボット制御装置70を経由してスキャナ90の制御部91に転送される。スキャナ90の制御部91は、ロードされた動作プログラムにしたがって動作可能となる。スキャナ90の制御部91は、CPU、ROM、RAM、記憶装置等を有する一般的なコンピュータとしての構成を有していても良い。
【0015】
レーザ加工システム100は、溶接、切断等の様々なレーザ加工を行うことができる。以下では、レーザ加工システム100が溶接を行うものとして説明を行う。以下で詳細に説明するように、レーザ加工教示装置60は、溶接対象の打点群を溶接する動作プログラムの作成過程において、ロボット110の動作シミュレーションを実行し、ロボット110の移動に伴う光ファイバ81のねじれ量を評価することで、光ファイバ81のねじれが生じないようにロボット110の姿勢を修正する。
【0016】
図2は、レーザ加工教示装置60、ロボット制御装置70及びスキャナ90の機能構成を表す図である。図2に示されるレーザ加工教示装置60の機能ブロックは、レーザ加工教示装置60のCPU61がソフトウェアを実行することによって実現されても良いし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用のワードウェアによって実現されても良い。図2に示されるように、レーザ加工教示装置60は、データ入力部161、経路決定部162、シミュレーション実行部163、ねじれ量評価部164、ロボット姿勢変更部165、動作プログラム作成部166を有する。
【0017】
データ入力部161は、溶接対象の打点群、各打点の溶接時間、溶接パターン、ロボット110、ワークW等のモデルデータを含む動作プログラム作成処理に必要な各種データを取得する。これらの各種データは、レーザ加工教示装置60内の記憶装置に予め格納されていても良く、レーザ加工教示装置60に対して操作部を介して入力されるものであっても良い。或いは、各種データは、外部装置からネットワークを介してレーザ加工教示装置60に入力されても良い。
【0018】
経路決定部162は、データ入力部161によって取得された打点群のグループ分を行い、各グループを通る動作経路を決定し、溶接対象の全打点が溶接可能でサイクルタイムが短縮化できるように動作速度を決定する。
【0019】
シミュレーション実行部163は、経路決定部162により決定された動作経路及び動作速度を用いてロボット110の動作シミュレーションを実行する。
【0020】
ねじれ量評価部164は、動作シミュレーションによるロボット110の動きにしたがって光ファイバ81の挙動をシミュレーションすることで光ファイバ81のねじれ量を求め、該ねじれ量と所定の許容範囲とを対比することでねじれ量を評価する。
【0021】
ロボット姿勢変更部165は、ねじれ量が所定の許容範囲を超えるロボット110の動作について、ねじれ量が小さくなるようにロボット110の姿勢を変更する。
【0022】
動作プログラム作成部166は、各種調整が行われた、動作経路、動作速度、各打点の溶接期間等のデータを用いてロボット110及びスキャナ90の動作プログラムを作成する。これにより、光ファイバ81のねじれ量を許容範囲に収めることのできるように所定の溶接作業を実行するロボット110の動作経路(動作プログラム)及びスキャナ90の動作プログラムが生成される。
【0023】
図3は、光ファイバ81のねじれ量を許容範囲に収めながら所定に溶接作業を実行するための動作プログラムを生成する動作プログラム作成処理を表すフローチャートである。図3の動作プログラム作成処理は、レーザ加工教示装置60のCPU61による制御の下で実行される。なお、動作プログラム作成処理の開始にあたり、溶接対象の打点群、各打点の溶接時間、溶接パターン、ワークW等のモデルデータを含む動作プログラム作成処理に必要な各種データは、データ入力部161を介して入力されているものとする。
【0024】
動作プログラム作成処理が開始されると、はじめに、レーザ加工教示装置60(経路決定部162)は、ロボット110の動作経路の生成及び動作速度を決定するための処理を実行する(ステップS11)。図4は、ステップS11における動作経路の生成及び動作速度の決定処理を表すフローチャートである。一例として、図5に示す打点群201-215について動作経路を生成する場合を想定する。はじめに、ステップS21では、打点群201-215を仮の打点グループにグループ分けする。ここで、一グループは、ロボット110が一つの動作命令で動作する間に溶接を行う複数の打点を規定する。一グループ内では、ロボット110が一つの動作命令で動作し、その間スキャナ90がスキャン動作を行うことでグループに属する各打点を溶接する。一動作命令ではロボット110は直線的に等速で動作する。ここででは一例として、打点群201-215を三つの打点グループG1~G3に仮に分けるものとする。
【0025】
ステップS22では、各グループG1-G3について、打点グループの中心を通るロボット110の経路を決定する。打点グループの中心を通る直線は、例えば、最小二乗法により求める。一例としてグループG1に関して述べると、経路R1は、各打点201-205から経路R1までの距離の二乗和が最小になる直線として求められる。なお、打点位置は三次元空間上の位置であるため各打点201-205は実際には3次元空間に分布しているが、各打点位置を平均した位置を通過する平面を定義して、各打点をこの平面に投影した位置に各打点が存在するものとして上記経路の決定を行う。各打点位置の平均した位置を通過する平面は、例えば、最小二乗法を用いて或いはNewellのアルゴリズムを用いて求めることができる。ステップS22での処理により、打点グループG1、G2、G3の経路としてそれぞれ経路R1、R2、R3が決定されたものとする。なお、経路とは、レーザ光の照射位置から打点グループを定義する平面に下した垂線の足が当該平面上を移動する経路として決定されても良い。
【0026】
次に、ステップS23では、それぞれの打点グループについて、各打点がスキャナ90の動作範囲(照射範囲)内にあるか否かの確認が行われる。例えば打点グループG1に関して説明すると、各打点201-205から経路R1までの距離がスキャナ90の動作範囲内であるか否かにより本ステップS23での確認を行うことができる。スキャナ90の動作範囲外である打点が見つかった場合には(S23:NG)、グループ分けをやり直す(ステップS21)。
【0027】
次に、ステップS24では、打点グループ間の移動順序および打点グループ内での打点順序の最適化を行う。ここでは、グループ間の総移動距離が最小となるようにグループ間の移動順序および打点グループ内での打点順序を決定する。打点グループ間の総移動距離を最小にする移動順序を決定する手法としては、いわゆる巡回セールスマン問題を解くための当分野で知られた各種手法を用いることができる。以上の処理により、図5に示す通り打点群201-215について打点グループG1-G3及び経路R1-R3が決定されたものとする。なお、打点群に対し動作経路を決定する手法としては、当分野知られた各種手法(例えば、特開2020-35404に記載された動作経路の決定方法)を適用しても良い。
【0028】
次に、ステップS25では、ロボット110の動作速度を決定する。ロボット110の動作速度の決定は、下記のような手順で実行しても良い。
(手順1)各打点グループについての仮の動作速度を決定する。
(手順2)決定された経路および動作速度を用いてロボットの動作シミュレーションを実行する。
(手順3)ロボットの動作経路上で各打点を溶接できる期間を算出
(手順4)各打点を溶接する位置・時間を決定する。
(手順5)動作速度を最適化する。
【0029】
各手順について具体的に説明する。手順1では、仮の速度は、各打点グループの打点を問題なく溶接できると考えられる低い速度を全打点グループについて一律に設定しても良い。或いは、経験値に基づく代表的な速度を各打点グループに一律に設定しても良い。
【0030】
次に手順2では、上述のように決定された経路(経路R1-R3)及び仮の動作速度を用いて、ロボット110の動作シミュレーションを実行する。動作シミュレーションの実行により、ロボットの補間周期毎の位置データ(以下、動作経路とも記す)を取得する。
【0031】
次に手順3では、次に、ロボット110の動作シミュレーションにより得られたロボット110の動作経路を用いて、ロボット110の動作経路上で各打点を溶接できる範囲に対応する期間(以下、溶接可能期間と記す)を算出する。具体的には、まず、ロボット110の動作経路上の位置に基づいてロボット110のアーム先端に取り付けられているスキャナ90の位置(具体的には、例えば、スキャナ90内の集光レンズの位置)を求め、スキャナ90の位置と打点の位置とを結ぶレーザ光の経路を求める。このとき、
(1)レーザ光の経路がワーク、ジグと干渉しない、
(2)レーザ光の経路がスキャナの動作範囲である、
(3)打点位置でのワークの法線方向とレーザ光とがなす角度である照射角度が所定の許容範囲であること、
の条件を満たすとき、このレーザ光の経路については溶接可能であると判定しても良い。そして、動作経路上で連続してレーザ光の経路が溶接可能であると判定される範囲に対応する期間が、各打点についての溶接可能期間である。
【0032】
次に手順4では、各打点についての溶接可能期間を用いて、各打点を溶接する位置、時間を決定する。ここでは、第1の条件として、各打点の溶接時間を考慮し、各打点の溶接可能期間の開始時間の先後に依存することなく、各打点の溶接時間が確実に満たされるように溶接の時間を決定する。例えば、溶接時間が同じ1秒の二つの打点A,Bがあり、打点Aの溶接可能期間が動作開始から1秒目から4秒目、打点Bの溶接可能期間が動作開始から1.1秒目から2.1秒目である場合を想定する。この場合、先に溶接可能になるのは打点Aであるが、打点Aを1秒目から2秒目に溶接すると打点Bの溶接ができなくなる。このような場合、打点Bを1.1秒目から2.1秒目に溶接し、打点Aを2.1秒目から3.1秒目に溶接する。
【0033】
次に、手順5では、全打点が溶接できて且つサイクルタイムが短くなるように動作速度を調整し最適化する。例えば、全打点グループについてロボット110の動作速度を同じ値として全打点について溶接可能となるまで動作速度を下げ、次に、各打点グループ毎に動作速度を上げるというやり方が考えられる。以上により、ステップS25における動作速度の決定処理が終了する。
【0034】
ステップS11における動作経路及び動作速度の決定処理においては、経路決定部162は、ロボット110の姿勢(すなわち、スキャナ90の姿勢)を以下のように決定しても良い。ロボット110が動作しながらある打点を溶接する場面を想定する。ロボット110がその打点を溶接するためにレーザ光を照射している間、その打点はスキャナ90の照射範囲に居続ける必要がある。スキャナ90の照射範囲が矩形であるとすると、ロボット110の動作方向が、照射範囲の縦方向の辺または横方向の辺のいずれかに沿っていた方が、その打点の溶接時間中にロボット110が移動できる距離が長くなり、ロボット110の動作速度をいっそう高くすることができる。また、それによりサイクルタイムを短縮することが可能となる。このことについて図6A及び図6Bを参照して説明する。
【0035】
図6A及び図6Bにおいて、ロボット110の手首部に取り付けられたスキャナ90の照射範囲(走査範囲)を符号90Aで示している。また図6A及び図6Bには、ロボット110の手首部に固定した(すなわちスキャナ90に固定した)XY座標系を示している。照射範囲90Aは、X軸方向の幅WX、Y軸方向の幅WYを有する矩形の領域である。図6Aでは、打点221にレーザを照射する際に、X軸に平行な方向(図6A中A方向)にスキャナ90を移動させるものとする。この場合、ロボット110の移動方向Aは、照射範囲90Aの辺(X軸方向)に沿った方向となっているため、打点221の溶接時間の間、ロボット110は距離L1を移動することができる。
【0036】
他方、ロボット110の手首部(すなわち、スキャナ90)が図6Bのような姿勢で図中矢印B方向に移動する場合を想定する。この場合、ロボット110の移動方向は、照射領域90Aの辺の方向に沿っていない。そのため、ロボット110が打点221を溶接する溶接時間の間にロボット110が移動可能な距離は距離L2となる。距離L2は距離L1より短い(L2<L1)。以上から、ロボット110の移動方向がスキャナ90の照射範囲のいずれかの辺(X軸又はY軸)に沿っていた方が、その打点の溶接時間中にロボット110が移動できる距離が長くなること、つまりロボット110の動作速度を上げることができることが理解できる。
【0037】
図7は、経路R1-R3を移動する際のロボット110(スキャナ90)の姿勢を、ロボット110の移動方向がスキャナ90の照射範囲のいずれかの辺(X軸又はY軸)に沿うように決定した場合の例を表している。図7の例では、経路R1では、照射範囲90AのY軸が経路R1と平行になるようにロボット110の手首部の姿勢が決定され、経路R2では、照射範囲90AのX軸が経路R2と平行になるようにロボット110の手首部の姿勢が決定され、経路R3では、照射範囲90AのY軸が経路R3と平行になるようにロボット110の手首部の姿勢が決定されている。
【0038】
以上のようにロボット110の手首部(スキャナ90)の姿勢を決定する場合、スキャナ90の鉛直軸回りでの回転動作が生じる。スキャナ90の鉛直軸回りの回転は光ファイバ81のねじれを生じる要因となり得る。動作プログラム決定処理(図3)のステップS12では、ねじれ量評価部164は、物理シミュレーションにより光ファイバ81のねじれ量を評価する。線条体としての光ファイバ81のねじれ量の物理シミュレーションについて図8図10を参照して説明する。
【0039】
図8は、円形断面を有する線条体モデル2の一例を示す斜視図である。図8に示すように、線条体モデル2は、複数の質点3と、質点3同士を接続する複数のばね要素4とによって形成されている。質点3は、線条体の長手方向に垂直である平面20上に配置された第1質点31と第2質点32とを含む。第1質点31は、平面20の径方向中央部に配置されている。第2質点32は、第1質点31の周囲に周方向等間隔に配置され、線条体の外周面を規定する。第1質点31と第2質点32とは、線条体の長手方向に沿って等間隔に配置されている。各質点3は、質量情報と、3次元位置情報(位置データ)と、3次元速度情報とを有する。各質点3の質量は、線条体の質量を質点の個数で除算した値とすることができる。
【0040】
ばね要素4は、同一平面20の円周上に配置された第2質点32同士を接続する第1ばね41と、平面20上で第1質点31から放射状に延びて第1質点31と第2質点32とを接続する第2ばね42と、線条体の長手方向に沿って一列に配置された第1質点31同士および第2質点32同士を順次接続する第3ばね43と、長手方向に配置された第2質点32同士を斜めに接続する第4ばね44とを含む。第1ばね41と第2ばね42とは、線条体の径方向の弾性を表し、第3ばね43と第4ばね44とは、線条体の長手方向の弾性を表す。
【0041】
ねじれ量評価部164は、線条体モデル2上に、線条体のねじれ状態を把握するための複数の着目点33を設定する。図8では、線条体モデルの周方向一部に、より具体的には、第3ばね要素43を介して順次接続された線条体の長手方向に沿った一列の第2質点32に着目点33が設定されている。着目点33は、レーザ加工教示装置60の操作部を介して線条体モデル2上にユーザが任意に設定することができる。
【0042】
ねじれ量評価部164は、予め定められた動作プログラムに従いロボットモデルを動作させ、ロボットの動作に伴う線条体の挙動をシミュレーションする。すなわち、ロボットモデルの動作に伴い、線条体モデル2の各質点3に作用するばね要素4からの弾性力と重力と減衰力とを所定の単位時間毎に算出し、単位時間毎に各質点3の位置を変更するようなシミュレーション(物理シミュレーション)を実行する。
【0043】
この場合、質点3Aと質点3Bとがばね要素4を介して互いに接続されているときの、質点3Aに作用するばね要素4の弾性力F1は、次式(I)で算出できる。
F1=(3A→3Bの単位ベクトル)×ばね定数×ばね伸縮量 (I)
上式(I)で、ばね要素4の伸縮量(ばね伸縮量)は、ある状態のばね要素4の長さからばね要素4の自然長を減算した値とする。ばね要素4の自然長は、線条体モデル2の伸縮および曲げがない自然な状態の質点3A、3B間の距離に相当する。
【0044】
ばね要素の減衰力には、ばねの振動を抑える減衰力F2と各質点3の並進運動を抑える減衰力F3とがあり、それぞれ次式(II),(III)で算出できる。
F2=v×vの内積×振動の減衰係数 (II)
F3=各質点の速度×並進運動の減衰係数 (III)
上式(II)で、vは、(質点3Bの速度-質点3Aの速度)の単位ベクトルである。減衰力F2,F3は、ばねの動きを遅くように作用する。
【0045】
各質点3に作用する重力F4は、次式(IV)で算出できる。
F4=重力方向の単位ベクトル×重力加速度×質点の質量 (IV)
なお、線条体モデル2の質点3が、ある干渉面に衝突したとき、質点3には反発力が作用する。この点を考慮し、弾性力と重力と減衰力だけでなく、質点に作用する反発力を算出してもよい。この場合、衝突時の質点の速度の、衝突した面の面直方向の成分の値は、衝突前の速度に反発係数を乗算して符号を反転した値になる。このとき、反発力は、衝突の前後の速度の変化量を単位時間で割って得られる加速度に、質点の質量を乗算することで算出できる。
【0046】
ねじれ量評価部164は、各質点3に作用する力F1~F4の合力をさらに算出し、これを質量で除算することにより質点3の加速度を算出する。また、加速度×単位時間により質点3の速度の変化量を算出し、これを質点3の速度に加算することで質点3の速度を算出する。さらに、速度×単位時間により質点3の変位量を算出し、これを質点3の3次元の位置データに加算することで質点3の位置を算出する。
【0047】
すなわち、ねじれ量評価部164は、単位時間毎に、ロボットの動きに合わせて線条体取付部(光ファイバ81のスキャナ90への接続部)における質点3の位置を変更し、各質点3に作用する力F1~F4を上述したようにして算出するとともに、これらの合力を算出し、各質点3の速度および位置を更新することにより、線条体の挙動をシミュレートする。これにより各質点3の時系列の位置データが得られる。また、着目点33は質点3の一部であるので、着目点33の位置データも得られる。
【0048】
図9は、シミュレーション結果にしたがって、線条体の状態を画像化した線条体画像51と、着目点を画像化した場合の着目点画像52の一例を示す図である。図9において、線条体画像51は実線で、着目点画像52は黒丸で示されている。着目点33は、線条体の周方向同一位相に長手方向一列に設定されるため、線条体がねじれると、図9に示すように、着目点画像52が線条体画像51上にねじれた状態となる。
【0049】
ねじれ量評価部164は、さらに線条体のねじれ状態を定量的に表すため、ねじれ量を算出する機能を有する。図10は、ねじれ量の算出手順を説明する図である。図10において、20n,20n+1は、質点3が設定される線条体モデル2の互いに隣り合う平面であり、31n,31n+1は、それぞれ平面20n,20n+1の中央部に位置する質点であり、32n,32n+1は、それぞれ平面20n,20n+1の円周上の周方向互いに同一位置(同一位相)に位置する質点である。質点32n,32n+1は、例えば着目点33である。
【0050】
平面20n,20n+1間における線条体のねじれ量は、質点31n,32n,31n+1によって形成される面と質点31n+1,32n+1,31nによって形成される面とのなす角度によって定義することができる。一例として、線条体の長さ方向の先端部(スキャナ側)に向かって、右回りのねじれをプラス、左回りのねじれをマイナスと定義する。このような定義の下、ねじれ量評価部164は、スキャナ90の上面90aの中央部にその一端が接続された光ファイバ81の全体のねじれ量を算出する。なお、光ファイバ81が中間の位置でロボット110のアームに固定されている場合には、ねじれ量は、光ファイバ81のスキャナ90への接続端とロボット110への取付位置との間で算出しても良い。
【0051】
ねじれ量評価部164は、ロボット110が各経路R1-R3(すなわち、動作経路全体)を移動する場合における光ファイバ81のねじれ量を評価する。例えば、ロボット110が経路R1、経路R2、経路R3を動作する場合における光ファイバ81のねじれ量がそれぞれ、ねじれ量T1、T2、T3として求められたとする。ねじれ量評価部164は、ねじれ量T1、T2、T3と所定の許容範囲とを比較する。所定の許容範囲を超えるねじれ量がある場合、ねじれ量評価部164は、ねじれ量が許容値を超える場合のロボット110の動作を姿勢変更の対象とする(ステップS12)。
【0052】
次に、ステップS13では、ロボット姿勢変更部165は、ねじれ量が許容範囲を超えるロボット110の動作について姿勢変更を行う。姿勢の変更は、例えば、ねじれの方向がプラス方向である場合には、光ファイバ81がマイナス方向にねじれるように、スキャナ90を、光ファイバ81のスキャナ90への接続端部81aの軸線方向と平行な軸線周りで回転させることで行っても良い。接続端部81aの軸線方向と平行な軸線周りとは、例えば、接続端部81aの軸線周り、或いは、スキャナ90の上面90aの中心を通る鉛直方向の軸線周りである。
【0053】
一例として、図11に示すようにロボット110を上方からみた状態において、経路R1におけるねじれ量が右回りに許容範囲を超え、経路R3におけるねじれ量が左回りに許容範囲を超えているとする。この場合、ロボット姿勢変更部165は、経路R1の動作に関しては、スキャナ90を左回り(図11中の矢印C1方向)に回転させるようにロボット110の姿勢を変更する。経路R3の動作に関しては、ロボット姿勢変更部165は、スキャナ90を右回り(図11中矢印C2方向)に回転させるようにロボット110の姿勢を変更する。ステップS13における姿勢の変更量、すなわち、スキャナ90を回転させる量は、許容範囲を超えた分のねじれ量よりも小さい量としても良い。例えば、算出されたねじれ量が+30度で、許容範囲が±15度であるとする。この場合、許容範囲を超えるねじれ量は+15度である。この場合のスキャナ90の姿勢の変更量(回転量)は、マイナス5度程度としても良い。なお、姿勢の変更は、例えば経路R1の動作については、経路R1の始点と終点に設定した教示点において姿勢変更するやり方で行っても良い。
【0054】
ステップS13における姿勢の修正の結果、打点に指定された溶接時間が終了する間に照射範囲から逸脱してしまうような打点が発生し得る。ステップS14では、このような打点について、溶接中(レーザ照射中)に照射範囲から逸脱してしまうことがないように調整を行う。具体的には、ロボット110の動作速度を落とす、又は、当該打点の溶接のタイミングを調整することで、当該打点について溶接中に照射範囲を逸脱することがないようにする。一例として、溶接タイミングの調整は、各打点の溶接可能期間を改めて算出し、当該打点の前後の打点と溶接期間が干渉しないように当該打点の溶接期間を改めて設定する手法で行うことができる。このような調整処理を全打点について溶接中に照射範囲を逸脱することがなくなるまで繰り返す(ステップS14、S15)。
【0055】
そして、ステップS12からS15に至る一連の処理(ロボットの姿勢を変更後にねじれ量を再度評価する動作)を、ロボット110の動作経路全体の動作についてねじれ量が許容範囲に入るまで繰り返す(ステップS16)。
【0056】
動作プログラム作成部166は、以上のように生成された動作経路、動作速度、溶接期間を含む各種情報を用いてロボット110及びスキャナ90の動作プログラムを作成する。
【0057】
以上の処理により、光ファイバ81のねじれ量を許容範囲に収めるように、レーザ加工システム100における教示(すなわち、所定の溶接作業を実行するための動作プログラムを生成)を行うことができる。これにより、ロボット110による溶接作業中に光ファイバ81を破損するといった事態が生じるのを防ぐことができる。
【0058】
以上、典型的な実施形態を用いて本発明を説明したが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなしに、上述の各実施形態に変更及び種々の他の変更、省略、追加を行うことができるのを理解できるであろう。
【0059】
上述の実施形態では、ねじれ量が許容範囲を超える場合にロボットの姿勢を修正することで対処したが、このようなやり方に代えて、或いは、このようなやり方と併せて、光ファイバ81をねじれ量が解消する方向にねじってスキャナ90への取り付ける対処を行っても良い。例えば、挙動シミュレーションでねじれ量がプラス30度であったら、光ファイバ81をマイナス15度ねじってスキャナ90取り付けて、ねじれを±15度にして許容範囲(±15度)に収めることもできる。なお、線条体のねじれ量をシミュレーションにより求めるやり方として、上述の実施形態で示したやり方以外の、当分野で知られたやり方を適用しても良い。
【0060】
上述の実施形態は、光ファイバに限らず、ロボットに付設される各種ケーブル類の
ねじれの解消に適用し得る。
【0061】
上述した実施形態で説明した動作プログラム作成処理、動作経路の生成及び動作速度の決定処理、動作速度決定処理等の各種の処理(教示方法)を実行するプログラムは、コンピュータに読み取り可能な各種記録媒体(例えば、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、磁気記録媒体、CD-ROM、DVD-ROM等の光ディスク)に記録することができる。
【符号の説明】
【0062】
2 線条体モデル
3 質点
4 ばね要素
20 平面
51 線条体画像
52 着目点画像
60 レーザ加工教示装置
70 ロボット制御装置
71 動作制御部
80 レーザ発振器
81 光ファイバ
81a 接続端部
90 スキャナ
90A 照射範囲
91 制御部
100 レーザ加工システム
110 ロボット
161 データ入力部
162 経路決定部
163 シミュレーション実行部
164 ねじれ量評価部164
165 ロボット姿勢変更部
166 動作プログラム作成部
R1-R3 経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11