(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】ロボットシステム及びオフセット取得方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
H01L21/68 A
(21)【出願番号】P 2022550426
(86)(22)【出願日】2021-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2021030880
(87)【国際公開番号】W WO2022059436
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-03-14
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517340611
【氏名又は名称】カワサキロボティクス(ユーエスエー),インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】中原 一
(72)【発明者】
【氏名】チン ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】グエン ルック
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-141237(JP,A)
【文献】特開2008-192933(JP,A)
【文献】国際公開第2014/069291(WO,A1)
【文献】特開2005-5608(JP,A)
【文献】特開平11-106044(JP,A)
【文献】特開2020-87980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持部によってウエハを保持可能なロボットと、
前記ロボットによって保持されるウエハ治具と、
前記ウエハ治具を置くことが可能な位置決め台と、
前記位置決め台と異なる位置に配置され、検出基準位置からの前記ウエハ治具の位置ズレを検出可能な位置ズレ検出装置と、
前記ロボットに指令を与えて制御する制御部と、
前記ロボットへの指令位置と実際の位置の間に生じるオフセットを取得するオフセット取得部と、
を備え、
前記位置決め台は、前記ウエハ治具に接触可能な接触部材を備え、
前記ウエハ治具にはテーパ面が形成されており、
前記テーパ面は、当該テーパ面が前記接触部材に接触する位置が相対的に高くなるのに従って、当該ウエハ治具の中心を所定位置に近づけるように前記ウエハ治具を案内し、
前記ロボットは、前記制御部からの指令に基づいて、前記位置決め台に前記ウエハ治具を置いた後、当該ウエハ治具を保持して前記位置ズレ検出装置に搬送し、
前記オフセット取得部は、搬送された前記ウエハ治具の位置ズレを前記位置ズレ検出装置が検出した結果に基づいて、前記オフセットを取得することを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のロボットシステムであって、
前記テーパ面は、前記ウエハ治具の円形の下面の周囲に形成されていることを特徴とするロボットシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のロボットシステムであって、
前記ウエハ治具の下面には、前記接触部材を下から差込み可能な差込穴が形成され、
前記テーパ面は、前記差込穴に配置されていることを特徴とするロボットシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のロボットシステムであって、
前記ウエハ治具は、ウエハよりも厚みが大きい部分を有することを特徴とするロボットシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のロボットシステムであって、
前記接触部材は、前記位置決め台に複数配置されていることを特徴とするロボットシステム。
【請求項6】
保持部によってウエハを保持可能なロボットと、
前記ロボットによって保持されるウエハ治具と、
前記ウエハ治具を置くことが可能な位置決め台と、
前記位置決め台と異なる位置に配置され、検出基準位置からの前記ウエハ治具の位置ズレを検出可能な位置ズレ検出装置と、
前記ロボットに指令を与えて制御する制御部と、
を備えるロボットシステムにおける、前記ロボットへの指令位置と実際の位置の間に生じるオフセットを取得するオフセット取得方法であって、
前記位置決め台は、前記ウエハ治具に接触可能な接触部材を備え、
前記ウエハ治具にはテーパ面が形成されており、
前記テーパ面は、当該テーパ面が前記接触部材に接触する位置が相対的に高くなるのに従って、当該ウエハ治具の中心を所定位置に近づけるように前記ウエハ治具を案内し、
前記方法は、
前記制御部が前記ロボットに指令して、前記位置決め台に前記ウエハ治具を置く動作をさせる第1工程と、
前記制御部が前記ロボットに指令して、当該ウエハ治具を保持して前記位置ズレ検出装置に搬送する動作をさせる第2工程と、
搬送された前記ウエハ治具の位置ズレを前記位置ズレ検出装置が検出した結果に基づいて、前記オフセットを取得する第3工程と、
を含むことを特徴とするオフセット取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボットに対する指令位置と、指令位置により実現されたロボットの実際の位置と、の間に生じるオフセットの取得に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体ウエハ(半導体基板)を製造するクリーンルーム内に配置され、半導体ウエハを搬送するロボットに、半導体ウエハの搬送位置を自動教示するロボットシステムが知られている。特許文献1は、この種のロボットシステムを開示する。
【0003】
特許文献1のロボットシステムは、ロボットと、2以上の基準部材と、姿勢検出器と、制御装置と、を備える。2以上の基準部材は、基準位置を囲むように配置される。それぞれの基準部材は、水平方向の断面が下方に向かうにつれて大きくなるように形成された第1部分を有する。ワークが基準位置に正しく搬送された場合、ワークの外周と、基準部材の第1部分の基端部との間の距離が、所定の第1閾値となっている。ロボットは、ワークを保持した状態で、基準位置に向かってワークを下降させる。このとき、ロボットの制御ループゲインは、例えばゼロとされる。ワークが第1部分と接触することによる、ロボットの水平方向における移動方向が、姿勢検出器が検出したロボットの姿勢情報に基づいて算出される。基準位置に対し、算出された移動方向に第1閾値を加算することで、基準位置が補正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本願発明者は、特許文献1に開示されている自動教示システムとは異なる、自動教示に好適なロボットシステム及びオフセット取得方法を見出した。
【0006】
本開示は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、自動教示に好適なロボットシステム及びオフセット取得方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本開示の第1の観点によれば、以下の構成のロボットシステムが提供される。即ち、このロボットシステムは、ロボットと、ウエハ治具と、位置決め台と、位置ズレ検出装置と、制御部と、オフセット取得部と、を備える。前記ロボットは、保持部によってウエハを保持可能である。前記ウエハ治具は、前記ロボットによって保持される。前記位置決め台には、前記ウエハ治具を置くことが可能である。前記位置ズレ検出装置は、前記位置決め台と異なる位置に配置される。前記位置ズレ検出装置は、検出基準位置に対する前記ウエハ治具の位置ズレを検出可能である。前記制御部は、前記ロボットに指令を与えて制御する。前記オフセット取得部は、前記ロボットへの指令位置と実際の位置の間に生じるオフセットを取得する。前記位置決め台は、接触部材を備える。前記接触部材は、前記ウエハ治具に接触可能である。前記ウエハ治具にはテーパ面が形成されている。前記テーパ面は、当該テーパ面が前記接触部材に接触する位置が相対的に高くなるのに従って、当該ウエハ治具の中心を所定位置に近づけるように前記ウエハ治具を案内する。前記ロボットは、前記制御部からの指令に基づいて、前記位置決め台に前記ウエハ治具を置いた後、当該ウエハ治具を保持して前記位置ズレ検出装置に搬送する。前記オフセット取得部は、搬送された前記ウエハ治具の位置ズレを前記位置ズレ検出装置が検出した結果に基づいて、前記オフセットを取得する。
【0009】
この構成では、位置決め台にウエハ治具を置いたときに、ウエハ治具の位置決めがテーパ面によって行われる。その後、位置決め台に位置決めされているウエハ治具をロボットが保持する。ウエハ治具を保持しようとするときの保持部の実際の位置がズレている場合、そのズレは、位置ズレ検出装置において、ウエハ治具の位置ズレとなって現れる。従って、ロボットへの指令位置と実際の位置との間に生じるオフセットを、位置ズレ検出装置によって容易に検出することができる。このように、ロボットの動作精度の向上を目的として指令位置を補正する場合に必要となるオフセットを、ウエハ治具及び位置ズレ検出装置を介して自動的に取得できる。従って、大幅な省力化を実現することができる。
【0010】
本開示の第2の観点によれば、以下の構成のオフセット取得方法が提供される。即ち、このオフセット取得方法は、ロボットと、ウエハ治具と、位置決め台と、位置ズレ検出装置と、制御部と、を備えるロボットシステムにおける、前記ロボットへの指令位置と実際の位置の間に生じたオフセットを取得する。前記ロボットは、保持部によってウエハを保持可能である。前記ウエハ治具は、前記ロボットによって保持される。前記位置決め台には、前記ウエハ治具を置くことが可能である。前記位置ズレ検出装置は、前記位置決め台と異なる位置に配置される。前記位置ズレ検出装置は、検出基準位置に対する前記ウエハ治具の位置ズレを検出可能である。前記制御部は、前記ロボットに指令を与えて制御する。前記位置決め台は、前記ウエハ治具に接触可能な接触部材を備える。前記ウエハ治具にはテーパ面が形成されている。前記テーパ面は、当該テーパ面が前記接触部材に接触する位置が相対的に高くなるのに従って、当該ウエハ治具の中心を所定位置に近づけるように前記ウエハ治具を案内する。前記方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、を含む。第1工程では、前記制御部が前記ロボットに指令して、前記位置決め台に前記ウエハ治具を置く動作をさせる。第2工程では、前記制御部が前記ロボットに指令して、当該ウエハ治具を保持して前記位置ズレ検出装置に搬送する動作をさせる。第3工程では、搬送された前記ウエハ治具の位置ズレを前記位置ズレ検出装置が検出した結果に基づいて、前記オフセットを取得する。
【0011】
この方法では、位置決め台にウエハ治具を置いたときに、ウエハ治具の位置決めがテーパ面によって行われる。その後、位置決め台に位置決めされているウエハ治具をロボットが保持する。ウエハ治具を保持しようとするときの保持部の実際の位置がズレている場合、そのズレは、位置ズレ検出装置において、ウエハ治具の位置ズレとなって現れる。従って、ロボットへの指令位置と実際の位置との間に生じるオフセットを、位置ズレ検出装置によって容易に検出することができる。このように、ロボットの動作精度の向上を目的として指令位置を補正する場合に必要となるオフセットを、ウエハ治具及び位置ズレ検出装置を介して自動的に取得できる。従って、大幅な省力化を実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、自動教示に好適なロボットシステム及びオフセット取得方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の一実施形態に係るロボットシステムの構成を示す斜視図。
【
図7】ロボットシステムの一部の構成を示すブロック図。
【0014】
次に、図面を参照して、開示される実施の形態を説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係るロボットシステム100の構成を示す斜視図である。
図2は、ロボット1の構成を示す斜視図である。
図3は、ウエハ治具2の構成を示す斜視図である。
図4は、ウエハ治具2の構成を示す側面図である。
図5は、接触部材31の構成を示す斜視図である。
図6は、ウエハ治具2及び接触部材31を示す側面断面図である。
図7は、ロボットシステム100の一部の構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すロボットシステム100は、クリーンルーム等の作業空間内でロボット1に作業を行わせるシステムである。
【0016】
ロボットシステム100は、ロボット1と、ウエハ治具2と、位置決め台3と、位置ズレ検出装置4と、コントローラ5と、を備える。
【0017】
ロボット1は、例えば、保管装置6に保管されるウエハ20を搬送するウエハ移載ロボットとして機能する。本実施形態では、ロボット1は、SCARA(スカラ)型の水平多関節ロボットによって実現される。SCARAは、Selective Compliance Assembly Robot Armの略称である。
【0018】
ロボット1は、
図2に示すように、ハンド(保持部)10と、マニピュレータ11と、姿勢検出部12と、を備える。
【0019】
ハンド10は、エンドエフェクタの一種であって、概ね、平面視でV字状又はU字状に形成されている。ハンド10は、マニピュレータ11(具体的には、後述の第2リンク16)の先端に支持されている。ハンド10は、第2リンク16に対して、上下方向に延びる第3軸c3を中心として回転する。
【0020】
マニピュレータ11は、主として、基台13と、昇降軸14、複数のリンク(ここでは、第1リンク15及び第2リンク16)と、を備える。
【0021】
基台13は、地面(例えば、クリーンルームの床面)に固定される。基台13は、昇降軸14を支持するベース部材として機能する。
【0022】
昇降軸14は、基台13に対して上下方向に移動する。この昇降により、第1リンク15、第2リンク16、及びハンド10の高さを変更することができる。
【0023】
第1リンク15は、昇降軸14の上部に支持されている。第1リンク15は、昇降軸14に対して、上下方向に延びる第1軸c1を中心として回転する。これにより、第1リンク15の姿勢を水平面内で変更することができる。
【0024】
第2リンク16は、第1リンク15の先端に支持されている。第2リンク16は、第1リンク15に対して、上下方向に延びる第2軸c2を中心として回転する。これにより、第2リンク16の姿勢を水平面内で変更することができる。
【0025】
姿勢検出部12は、複数の回転センサ12aを備える。回転センサ12aは、例えば、エンコーダから構成される。それぞれの回転センサ12aは、ハンド10、第1リンク15、第2リンク16を駆動する図略の駆動モータのそれぞれの回転位置を検出する。各回転センサ12aは、コントローラ5と電気的に接続されており、検出された回転位置をコントローラ5に送信する。
【0026】
ウエハ治具2は、ウエハ20を模擬した治具であり、全体として略円板状に形成されている。ウエハ治具2は、ウエハ20より厚く形成されている。これにより、ウエハ治具2には、後述のテーパ面23を容易に形成することができる。
【0027】
ウエハ治具2は、
図3及び
図4に示すように、位置決め本体21aと、フランジ部21bと、を備える。位置決め本体21aとフランジ部21bは、一体的に形成される。
【0028】
ウエハ治具2は通常、位置決め本体21aがフランジ部21bから下方に突出した状態で使用される。従って、フランジ部21bの突出側の端面を、ウエハ治具2の下面22と考えることができる。
【0029】
フランジ部21bは、円形の平板状に形成されている。フランジ部21bは、位置決め本体21aの外周に配置される。フランジ部21bの径は、ロボット1が搬送対象とするウエハ20の径に等しい。フランジ部21bの中心は、ウエハ治具2の中心軸2cと一致する。フランジ部21bは、中心軸2cと垂直に配置される。
【0030】
下面22は、円形の平面状に形成されている。下面22の径は、フランジ部21bの径と比べて小さい。下面22の中心は、ウエハ治具2の中心軸2cと一致する。下面22は、中心軸2cと垂直に配置される。
【0031】
テーパ面23は、位置決め本体21aの外周に形成されている。ウエハ治具2を水平に向けた状態で、テーパ面23は、高さ方向でフランジ部21bと下面22との間に配置されている。テーパ面23は、フランジ部21bから離れる(下面22に近づく)につれて径を減少させる円錐面状に形成されている。テーパ面23においてフランジ部21bに最も近い部分の径は、フランジ部21bの径より少し小さい。
【0032】
位置決め本体21aは、以上に説明したような下面22とテーパ面23とを有することで、薄い逆円錐台状に構成されている。
【0033】
位置決め台3は、ウエハ治具2を、予め設定された基準位置に位置決めするために用いられる。
【0034】
位置決め台3は、
図1に示すように、ウエハ治具2が嵌まるための1対の接触部材31を備える。2つの接触部材31の形状は同一である。2つの接触部材31により、ウエハ治具2をセットするためのステージが構成される。
【0035】
接触部材31は、
図5に示すように、平面視において円弧状に形成されている。
【0036】
図5及び
図6に示すように、各接触部材31は段状に形成されている。この段状の部分に、水平な支持面31aが形成されている。支持面31aには、フランジ部21bを載せることができる。2つの接触部材31における支持面31aの高さは同一であるため、2つの支持面31aに跨るように載った状態のウエハ治具2は水平となる。
【0037】
接触部材31の内周面には、円弧面状の規制面31bが形成されている。規制面31bは、支持面31aよりも低い位置に配置されている。規制面31bは、支持面31aに対して垂直である。1対の接触部材31は、それぞれの規制面31bが有する円弧中心が一致するように配置されている。
図5においては、この円弧中心が符号31cで示されている。この円弧中心31cは、位置決め台3の中心3cと考えることもできる。
【0038】
従って、ウエハ治具2を2つの接触部材31の間に置くときの平面視での位置に多少のズレがあっても、支持面31aとフランジ部21bとの間に上下方向の隙間がある状態でウエハ治具2の保持を解除すれば、ウエハ治具2が自重で落ちる過程で、テーパ面23と規制面31bとによる案内作用が生じる。
【0039】
詳細に説明する。ウエハ治具2のテーパ面23が、接触部材31に(詳細には、規制面31bと支持面31aとの境界部分に)接触したと仮定する。前述のとおり、テーパ面23は、下方に近づくに従って径が減少するように形成されている。このテーパ形状により、ウエハ治具2が自重で下降しようとすると、テーパ面23に接触部材31が接触する位置が相対的に高くなるのに従って、テーパ面23が接触部材31によって押される。これにより、ウエハ治具2の中心軸2cは、平面視で、位置決め台3の中心3cである円弧中心31cに近づけられる。
【0040】
規制面31bの円弧部分の径は、ウエハ治具2のテーパ面23においてフランジ部21bに最も近い部分の径と同一である。従って、ウエハ治具2のフランジ部21bが支持面31aに接触した状態では、ウエハ治具2の中心軸2cを、規制面31bの円弧中心31cに対して一致させることができる。この円弧中心31cは、位置決めの目標となる所定位置と言い換えることができる。
【0041】
このようにして、ウエハ治具2の平面視での位置決めが実現される。平面視での位置決め誤差を許容できる程度に応じて、規制面31bの円弧の径を、ウエハ治具2のテーパ面23においてフランジ部21bに最も近い部分の径よりも大きくしても良い。
【0042】
ウエハ治具2の高さ方向での位置決めは、フランジ部21bが支持面31aに接触することにより実現される。
【0043】
位置ズレ検出装置4は、例えば、プリアライナ(ウエハアライナ)から構成される。位置ズレ検出装置4は、
図1に示すように、回転台41と、ラインセンサ42と、を備える。本来、プリアライナはウエハ20のために用いられるが、本実施形態では、ウエハ治具2の位置ズレ検出のためにも使用される。
【0044】
回転台41は、図略の電動モータ等により、ウエハ治具2(ウエハ20)を回転させることができる。回転台41は、その上にウエハ治具2(ウエハ20)が置かれた状態で回転する。回転台41は、例えば、
図1に示すように、円柱状に形成される。しかし、これに限定されない。
【0045】
ラインセンサ42は、例えば投光部と受光部とを有する透過型センサから構成される。投光部と受光部は、互いに対向し、かつ上下方向に所定の間隔をあけて配置される。ラインセンサ42は、回転台41の径方向に並べられた投光部を介して検出光を投光し、投光部の下方に設けられた受光部を介して検出光を受光する。検出光としては、例えばレーザ光とすることができる。回転台41にウエハ治具2(ウエハ20)が載置されると、その外縁部が投光部と受光部との間に位置する。
【0046】
ラインセンサ42は、後述のオフセット取得部51に電気的に接続されている。ラインセンサ42は、受光部の検出結果をオフセット取得部51に送信する。詳細は後述するが、回転台41を回転させたときの受光部の検出結果の変化は、ウエハ治具2(ウエハ20)の外縁の形状に対応する。この外縁の形状から、ウエハ治具2(ウエハ20)の中心の、回転台41の回転中心からの位置ズレを検出することができる。従って、位置ズレ検出装置4において、位置ズレの検出基準位置は、回転台41の回転中心である。オフセット取得部51は、受光部の検出結果に基づいて、ウエハ治具2(ウエハ20)のオフセット量を取得する。
【0047】
ラインセンサ42は、透過型センサに限定されず、例えば、反射型センサから構成されても良い。
【0048】
コントローラ5は、
図7等に示すように、オフセット取得部51と、制御部52と、を備える。コントローラ5は、CPU、ROM、RAM、補助記憶装置等を備える公知のコンピュータとして構成されている。補助記憶装置は、例えばHDD、SSD等として構成される。補助記憶装置には、本開示のオフセット取得方法を実現するためのロボット制御プログラム等が記憶されている。これらのハードウェア及びソフトウェアの協働により、コントローラ5を、オフセット取得部51及び制御部52等として動作させることができる。
【0049】
オフセット取得部51は、上述のように、ラインセンサ42からの検出結果に基づいてウエハ20(即ち、ウエハ治具2)のオフセット量を取得する。
【0050】
制御部52は、予め定められる動作プログラム又はユーザから入力される移動指令等に従って、上述のロボット1の各部を駆動するそれぞれの駆動モータに指令値を出力して制御し、予め定められる指令位置にハンド10を移動させる。
【0051】
次に、本実施形態のロボットシステム100において、ロボット1への指令位置を補正するのに必要となるオフセットを取得する方法について、詳細に説明する。
【0052】
ウエハ治具2は、非使用時には、
図1で示すように適宜の保管位置7に保管されている。ロボット1は、制御部52からの制御指令に応じて、保管位置7にあるウエハ治具2を保持して、位置決め台3の直上に搬送する。
【0053】
位置決め台3の直上にウエハ治具2が位置すると、制御部52は、ウエハ治具2を、位置決め台3の1対の接触部材31の間にセットするように、ロボット1を制御する。
【0054】
ロボット1によるウエハ治具2の保持が解除されると、ウエハ治具2が位置決め台3に置かれる。このとき、位置決め台3の中心3cとウエハ治具2の中心軸2cとが一致していない場合でも、上述のテーパ面23と規制面31bによる案内作用によって、その中心軸2cが位置決め台3の中心3cと一致するようにウエハ治具2が移動する。この結果、ウエハ治具2は、位置決め台3によって物理的に正確に位置決めされる。
【0055】
その後、制御部52はロボット1を制御して、位置決め台3に置かれたウエハ治具2に対して、予め定められた指令位置で、当該ウエハ治具2を保持させる。この指令位置は、典型的には、ハンド10の中心が位置決め台3の中心3cと一致する位置に定められる。しかし、ロボット1の公差等によって、この指令位置と実際の位置との間にズレが生じる場合がある。このズレにより、ウエハ治具2の中心は、ハンド10の中心に対してズレた状態で保持される。以下、このズレを保持ズレと呼ぶことがある。
【0056】
制御部52はロボット1を更に制御して、保持されたウエハ治具2を、位置ズレ検出装置4の回転台41に搬送する。このときの指令位置は、ハンド10の中心が回転台41の回転中心と一致する位置に定められる。位置決め台3の中心3cと、回転台41の回転中心と、の位置関係は、予め正確に測定され、これに基づく搬送指令がロボット1に教示されている。従って、ロボット1が位置決め台3のウエハ治具2を保持するときの保持ズレは、回転台41に置かれたウエハ治具2の中心軸2cと、回転台41の回転中心と、のズレとなって現れる。
【0057】
位置ズレ検出装置4は、ウエハ治具2の周縁位置をラインセンサ42で継続的に検出しながら、回転台41を回転させる。ウエハ治具2の中心軸2cが回転台41の回転中心と完全に一致する場合、ラインセンサ42により検出されるウエハ治具2の周縁位置は、回転台41の回転位相にかかわらず一定である。ウエハ治具2の中心が回転台41の中心とズレている場合、回転台41の回転に連動して、ウエハ治具2の周縁位置は、ズレの距離に応じた振幅で変化する。また、ズレの向きは、例えば、周縁位置が極大又は極小となる回転台41の位相に基づいて得ることができる。
【0058】
オフセット取得部51は、ラインセンサ42の検出結果に基づいて、ズレ量を取得する。ズレ量は、ウエハ治具2の中心軸2cが、回転台41の回転中心に対して、どの方向にどの距離だけズレているかを示す。ズレ量は、例えば平面ベクトル(ox,oy)で表すことができる。計算手法は公知であるため省略するが、このズレ量は、公知の幾何学的な計算を行うことで得ることができる。このズレ量は、上記の保持ズレのオフセット量と一致している。従って、ズレ量を取得することにより、オフセット量を取得することができる。
【0059】
オフセット取得部51は、取得したオフセット量を制御部52に送信する。制御部52は、オフセット取得部51から受信したオフセット量に応じて、平面視での、ハンド10に対する指令位置を補正する。補正後の指令位置は、元の指令位置からオフセット量のベクトルを減算することにより得ることができる。即ち、(補正後の指令位置)=(指令位置)-(オフセット量)。補正後の指令位置をコントローラ5がロボット1に与えることにより、ロボット1の動作精度を向上することができる。
【0060】
(1)保管位置7から位置決め台3へのウエハ治具2の搬送、(2)位置決め台3から位置ズレ検出装置4へのウエハ治具2の搬送、(3)位置ズレ検出装置4におけるウエハ治具2の位置ズレの取得、(4)オフセット量の取得、(5)位置ズレ検出装置4から保管位置7へのウエハ治具2の搬送、という一連の手順は、プログラムとしてコントローラ5に記憶されている。従って、上述のオフセットを取得して指令位置を補正する一連の作業を、ウエハ治具2及び位置ズレ検出装置4を用いて、完全に自動化することができる。
【0061】
以上に説明したように、本実施形態のロボットシステム100は、ロボット1と、ウエハ治具2と、位置決め台3と、位置ズレ検出装置4と、制御部52と、オフセット取得部51と、を備える。ロボット1は、ハンド10によってウエハ20を保持可能である。ウエハ治具2は、ロボット1によって保持される。位置決め台3には、ウエハ治具2を置くことが可能である。位置ズレ検出装置4は、位置決め台3と異なる位置に配置される。位置ズレ検出装置4は、回転台41の回転中心に対するウエハ治具2の位置ズレを検出可能である。制御部52は、ロボット1に指令を与えて制御する。オフセット取得部51は、ロボット1への指令位置と実際の位置の間に生じるオフセットを取得する。位置決め台3は、接触部材31を備える。接触部材31は、ウエハ治具2に接触可能である。ウエハ治具2にはテーパ面23が形成されている。テーパ面23は、当該テーパ面23が接触部材31に接触する位置が相対的に高くなるのに従って、当該ウエハ治具2の中心を所定位置(位置決め台3の中心3c)に近づけるようにウエハ治具2を案内する。ロボット1は、制御部52からの指令に基づいて、位置決め台3にウエハ治具2を置いた後、当該ウエハ治具2を保持して位置ズレ検出装置4に搬送する。オフセット取得部51は、搬送されたウエハ治具2の位置ズレを位置ズレ検出装置4が検出した結果に基づいて、オフセットを取得する。
【0062】
この構成では、位置決め台3にウエハ治具2を置いたときに、ウエハ治具2の位置決めがテーパ面23によって行われる。その後、位置決め台3に位置決めされているウエハ治具2をロボット1が保持する。ウエハ治具2を保持しようとするときのハンド10の実際の位置がズレている場合、そのズレは、位置ズレ検出装置4において、ウエハ治具2の位置ズレとなって現れる。従って、ロボット1への指令位置と実際の位置との間に生じるオフセットを、位置ズレ検出装置4によって容易に検出することができる。このように、ロボット1の動作精度の向上を目的として指令位置を補正する場合に必要となるオフセットを、ウエハ治具2及び位置ズレ検出装置4を介して自動的に取得できる。従って、大幅な省力化を実現することができる。
【0063】
また、本実施形態のロボットシステム100において、テーパ面23は、ウエハ治具2の円形の下面の周囲に形成されている。
【0064】
これにより、大きな径のテーパ面23が得られるので、ウエハ治具2の中心の位置決め精度を向上することができる。
【0065】
また、本実施形態のロボットシステム100において、ウエハ治具2は、ウエハ20より厚みが大きい部分を有する。
【0066】
これにより、ウエハ治具2にテーパ面23を容易に配置することができる。
【0067】
また、本実施形態のロボットシステム100において、接触部材31は、位置決め台3に複数配置されている。
【0068】
これにより、複数箇所での位置決めにより、ウエハ治具2の中心の位置決め精度を向上することができる。
【0069】
次に、上記実施形態の変形例を説明する。
図8は、変形例のウエハ治具2xを示す図である。なお、本変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0070】
本変形例のウエハ治具2xにおいては、
図8に示すように、上記の実施形態のフランジ部21bが省略され、位置決め本体21aの部分だけに相当する構成となっている。ウエハ治具2xの外周面は、中心軸2cと平行となっている。言い換えれば、ウエハ治具2xの外周にはテーパ面が形成されていない。
【0071】
ウエハ治具2xの下面22xには、円錐状の差込穴24が複数(本実施形態においては3つ)形成されている。差込穴24の内周面は、テーパ面23xを構成する。このテーパ面23xは、下側に行くに従って径が増大するように広がっている。
【0072】
このウエハ治具2xに対応する位置決め台3xは、例えば、円板状に形成された基台部30と、複数(本実施形態において3つ)の接触部材31xと、を備える。
【0073】
接触部材31xは、先端が半球状に形成された棒状部材から構成される。接触部材31xは、その長手方向を上下に向けて、基台部30から上方に突出するように設けられている。それぞれの接触部材31xは、ウエハ治具2xの差込穴24のそれぞれと対応する位置に設けられている。
【0074】
本変形例においても、テーパ面23xは、接触部材31xに接触する位置が相対的に高くなるのに従って、当該ウエハ治具2xの中心軸2cを所定位置に近づけるように、ウエハ治具2xを案内することができる。この結果、ウエハ治具2xは、テーパ面23xによって、その中心が位置決め台3xの中心3cと同じ鉛直線上に位置するように、好適に案内される。
【0075】
接触部材31x及び差込穴24の数は、4以上でも良いし、2以下でも良い。接触部材31xの数が1又は2である場合、ウエハ治具2xの下面22xに接触して支持する図略の支持部材を位置決め台3に1つ以上設けると、ウエハ治具2xを安定させることができて好ましい。
【0076】
以上に説明したように、本変形例のウエハ治具2xを有するロボットシステム100において、ウエハ治具2xの下面には、接触部材31xを下から差込み可能な差込穴24が形成されている。テーパ面23xは、差込穴24に配置されている。
【0077】
これにより、接触部材31xの小型化を実現できる。
【0078】
以上に本開示の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0079】
上記の実施形態で、オフセット取得部51は、位置ズレ検出装置4のラインセンサ42の検出結果に基づいて、オフセットを取得している。これに代えて、ウエハ治具2の回転台41の中心からのズレを位置ズレ検出装置4側で計算し、得られたズレを位置ズレ検出装置4からコントローラ5に送信しても良い。この場合、オフセット取得部51は、コントローラ5が位置ズレ検出装置4から受信したズレ量に基づいて、オフセットを取得する。
【0080】
位置ズレ検出装置4の制御(例えば、回転台41を駆動する電動モータの制御)は、位置ズレ検出装置4が独自に備えるコントローラで実施されても良いし、ロボット1の制御を行うコントローラ5で実施されても良い。ロボット1の制御と位置ズレ検出装置4の制御が1つのコントローラ5で行われる場合、位置ズレ検出装置4の回転台41を駆動する電動モータと、ロボット1の各部を駆動する駆動モータのそれぞれと、を協調して制御することが容易である。この結果、オフセット取得精度を向上することができる。
【0081】
位置決め台3において、接触部材31は、3以上設けられても良い。それぞれの接触部材31の形状が互いに異なっても良い。
【0082】
フランジ部21bの外径、又はウエハ治具2xの外径は、ウエハ20の外径と一致しても良いし、異なっても良い。
【0083】
テーパ面23は、ウエハ治具2の代わりに、接触部材31に形成されても良い。
【0084】
変形例のウエハ治具2xにフランジ部21bが形成されても良い。
【0085】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成又はプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、及び/又は、それらの組合せ、を含む回路又は処理回路を使用して実行することができる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、又は手段は、列挙された機能を実行するハードウエア、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウエアである。ハードウエアは、本明細書に開示されているハードウエアであっても良いし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラム又は構成されているその他の既知のハードウエアであってもよい。ハードウエアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、又はユニットはハードウエアとソフトウエアの組合せであり、ソフトウエアはハードウエア及び/又はプロセッサの構成に使用される。