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特許7495512支援システムによって車両の自動的に実行される機能性を適合させるための方法、および運転者支援システム
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  • 特許-支援システムによって車両の自動的に実行される機能性を適合させるための方法、および運転者支援システム 図1
  • 特許-支援システムによって車両の自動的に実行される機能性を適合させるための方法、および運転者支援システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】支援システムによって車両の自動的に実行される機能性を適合させるための方法、および運転者支援システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240528BHJP
   B60W 50/08 20200101ALI20240528BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W50/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022553643
(86)(22)【出願日】2021-02-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2021053724
(87)【国際公開番号】W WO2021180433
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】102020001539.5
(32)【優先日】2020-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ペーターズ
(72)【発明者】
【氏名】ディミトラ・テオファノウ-フュエルビール
(72)【発明者】
【氏名】ジェンス・アイゼレ
(72)【発明者】
【氏名】ジョアナ・ホイス
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・スチューダー
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-193210(JP,A)
【文献】特開2000-118263(JP,A)
【文献】特開2018-181269(JP,A)
【文献】特開2009-137550(JP,A)
【文献】特開2020-138578(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0269844(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111619573(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
B60W 50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支援システムによって車両の自動的に実行される機能性を適合させるための方法であって、
運転者により前記自動的に実行される機能性が中止された場合、前記中止が記録および保存され、前記中止の頻度が事前設定された閾値を超えた場合、前記中止された機能性は、変更されたまたは新しい機能性によって置き換えられること、および
前記中止の頻度が前記事前設定された閾値を超えた場合、前記中止された機能性の判定に使用された基準について情報が前記運転者に出力されることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記車両によって前記車両の自動的に設定される現在の機能性の中止は、前記運転者による所望の機能性の手動設定によって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変更されたまたは新しい機能性は、前記運転者による確認後に実行されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記車両によって現在の前記自動的に実行される機能性が中止される場合、運転状況に関連する現在のセンサ信号が、それぞれの場合において保存され、新しい機能性がトリガされるときを含め、前記中止の頻度の評価において考慮されることを特徴とする、請求項1からいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
位置および/または時間および/または車両依存の事象および/または環境依存の事象が、前記車両によって自動的に設定される現在の機能性の前記車両の運転状況に関連して評価される前記現在のセンサ信号として使用されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記車両によって前記自動的に実行される現在の機能性の所望の機能性への置き換え、および前記車両によって自動的に設定される現在の機能性のパラメータが、前記車両の運転者プロファイルに保存されることを特徴とする、請求項1からいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支援システムによって車両の自動的に実行される機能性を適合させるための方法、およびその方法を実施するための運転者支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、運転者がトレーニングおよびコンフィグレーションモードにおいて機能性を有効にできる方法を開示している。支援システムは、トレーニングおよびコンフィグレーションモードが有効なときに運転者の運転スタイルを記録する。運転者が理想主義的な概念に従って交通状況をマスターし、車両内で実証された運転行動に応じて機能性を設定したい場合は、対応するボタンを押すか、対応するコマンドを指定することによって、設定の受け入れを確認する。
【0003】
車両の支援システムがますます良くなり、より複雑になるにつれて、車両によって自動的に実行される機能性が個々の運転状況で設定される可能性があり、それは運転者側の誤解につながる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】DE 10 2004 023 544 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、事前設定された運転状況において運転者と車両との間の誤解を防止する、支援システムによって車両の自動的に実行される機能性を適合させる方法、および運転者支援システムを規定することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、独立請求項の特徴から生じる。有利な展開および実施形態は、従属請求項の主題である。本発明の更なる特徴、可能な用途および利点は、以下の説明、ならびに図に示されている本発明の例示的な実施形態の説明から生じる。
【0007】
この課題は、支援システムによって車両の自動的に実行される機能性を適合させるための方法によって解決され、運転者が自動的に実行される機能性を中止した場合、この中止が記録および保存され、中止の頻度が事前設定された閾値を超えた場合、中止された機能性は、変更されたまたは新しい機能性によって置き換えられる。機能性という用語は、例えば、ユーザへの説明などの情報の出力、別の支援システムまたはインフォテインメントシステムの機能の有効化であると理解される。したがって、運転者支援システムによって設定された機能性は、運転者の希望や通常の行動に応じてカスタマイズされ、それに応じて適合させられる。これにより、車両と運転者との間の誤解を将来的に大きく防ぐことができ、支援システムへの信頼を高めることができる。
【0008】
一実施形態では、車両によって車両の自動的に設定される現在の機能性の中止は、運転者による所望の機能性の手動設定によって行われる。したがって、新しいまたは変更される機能性は、運転者によって直接指定される。
【0009】
更なる実施形態では、変更されたまたは新しい機能性は、運転者による確認後に実行される。運転者による確認は、運転者の希望する機能性が実際に有効化されることを確実にする。変更されたまたは新しい機能性の適合は、運転者による確認後にのみ行われる。
【0010】
更なる実施形態では、機能性が中止された場合または事前設定された閾値を超えた場合、中止された機能性の判定に使用された基準について情報が運転者に出力される。したがって、運転者には機能性が中止された理由が通知され、それは中止された車両の機能性のより良い理解に導く。
【0011】
更なる実施形態では、車両によって現在の自動的に実行される機能性が中止される場合、運転状況に関連する現在のセンサ信号が、それぞれの場合において保存され、新しい機能性がトリガされるときを含め、中止の頻度の評価において考慮される。ここで、センサ信号は、中止された機能性を特徴付けるパラメータを表し、その結果、同じ機能性の中止の頻度を決定する際の以前に中止された機能性との比較が単純化され、より正確に行うことができる。
【0012】
更なる実施形態では、位置および/または時間および/または車両依存の事象および/または環境依存の事象が、車両によって自動的に実行される現在の機能性の車両の運転状況に関連して評価される現在のセンサ信号として使用される。車両依存の事象には、加速またはブレーキングまたは車線変更またはクルーズコントロールの設定またはその他の支援システムが含まれる。例えば、湿潤状態、黒い氷または雪は、環境依存の事象と呼ぶことができる。
【0013】
更なる実施形態では、車両によって自動的に設定される現在の機能性を所望の機能性への置き換え、および車両によって自動的に設定される現在の機能性を特徴付けるセンサ信号が、車両の運転者プロファイルに保存される。運転者の変更があった場合、対応する運転者プロファイルにアクセスしたときに自動的に設定される機能性が自動的に設定され、その結果、車両はそれぞれの運転者の運転行動に適合させられる。
【0014】
本発明の更なる展開は、支援システムによって車両の自動的に実行される機能性を適合させるための方法に関する。運転者の感情の評価によってトリガされる自動的に実行される機能性の中止の場合、この中止は記録および保存され、この中止の頻度が事前設定された閾値を超えた場合、この中止された機能性は、変更されたまたは新しい機能性によって置き換えられる。運転者の感情、例えば頭の振れや話し方などの顔の表情の評価は、車両と運転者の間の誤解を迅速に検出し、それを迅速に修正することができる。感情は、脈拍、血圧、顔の表情を監視することによっても検出できる。感情を判定する代表値は、感情判定測定変数に基づいて形成される。代表値が事前設定された制限を超えるとすぐに、自動的に実行される機能性の中止がトリガされる。あるいは、その中止は、事前設定された回数制限を超えた場合にのみ起こり得る。例えば、ナビゲーションシステムによる経路選択中に、感情の低下、すなわち満足の状態が数回判定され、そこで、経路案内の中止および/または代替経路による今後の置き換えを選択するよう要求が運転者に出される。
【0015】
本発明の更なる展開は、支援システムによって車両の自動的に実行される機能性を運転者の運転行動に適合させるための運転者支援システムに関する。運転者支援システムは、運転者によって中止された車両の自動的に実行される現在の機能性を記録する評価装置を備え、この評価装置は、中止された機能性を保存するメモリを備え、かつ運転者による自動的に実行される機能性の中止の頻度を判定するカウンタに接続されるものであり、比較装置は、カウンタによって測定された中止の頻度が閾値を超えると、変更されたまたは新しい機能性を有効化するためにトリガ装置をトリガする。
【0016】
更なる利点、特徴および詳細は、以下の説明から生じ、その中で、必要に応じて図面を参照して、少なくとも1つの例示的な実施形態が詳細に説明される。記載されたおよび/または図に描かれた特徴は、それ自体で、または必要に応じて、特許請求の範囲とは無関係に、任意の意味のある組み合わせで本発明の主題を形成することができ、特に追加的に、1つ以上の別個の出願の主題でもあり得る。同一、類似および/または機能的に同一の部分には、同一の符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による運転者支援システムの例示的な実施形態を示す。
図2】本発明による方法の例示的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1では、本発明による運転者支援システムの例示的な実施形態が、車両で使用されるものとして示されている。運転者支援システム1は、評価装置3を備え、その中にリングバッファとして設計されたメモリ5が配置されている。評価装置3は、カウンタ7に接続されている。カウンタ7は、今度は比較装置9に結合され、それはトリガ装置11に信号を出力する。
【0019】
図2を用いて、運転者支援システム1によって行われる本発明による方法の原理を説明する。本方法の開始(ブロック100)の後、ブロック110において、車両の自動的に実行される機能性を実行するように運転者支援システム1がトリガされたかどうかについてチェックが行われる。そうである場合、運転者支援システムは、車両に自動的に設定される機能性を実行する(ブロック120)。ブロック130において、現在自動的に実行される機能性が、運転状況に関連する自動的に実行される機能性の現在のセンサ信号と共にメモリ5に保存される。リングバッファを使用すると、最後に自動的に実行される機能性とそのトリガが最後の数秒間永続的に保存される。ブロック120または130から開始して、自動的に実行される機能性が運転者によって中止されたかどうかが判定される(ブロック140)。これが行われていない場合、システムは開始(ブロック100)に戻る。自動的に実行される機能性が運転者によって中止された場合、ブロック150にログファイルが作成され、そこで、自動的に実行される機能性が中止されたことが記録される。この目的のために、車両が自動的に実行した機能性、または車両によって実行されることを意図していた機能性は、その機能性が中止されたとき、車両のGPS位置で記録される。この目的のために、メモリ5に保存されている現在自動的に実行される機能性は、運転状況およびそのトリガに関連する自動的に実行される機能性の現在のセンサ信号と共に加算される。続いて、カウンタ7により判定されたログファイル内の中止された機能性のエントリ数が事前設定された閾値を超えているか否かをブロック160でチェックする。そうでない場合は、ブロック100に戻り、本プロセスが再開される。カウンタ7のエントリ数が事前設定された閾値を超えたと判定された場合、中止された機能性について評価されたエントリが、特定の位置Yの周囲に空間的にクラスタとして生じているかどうかを判定するために、ブロック170においてチェックが行われる。これは、ログファイルに格納されているGPSデータと比較することにより比較装置9で調べられる。特定の位置で評価されたエントリのクラスタを判定できない場合、ブロック100に戻る。クラスタが検出された場合、運転者は、中止された機能性が将来、位置Yでもはや実行されるべきでないかどうかを尋ねられる(ブロック180)。運転者が同意する場合、運転者支援システム1は、位置Yにおいて中止された機能性をもはや実行しないように、ブロック190において指示される。運転者が要請を否定した場合はブロック180から、またはチェックされた機能性の不実行を保存した後はブロック190から、ブロック200に移動され、ここで、位置Yにおける検査された機能性のためのすべてのエントリがログファイルから削除される。その後、ブロック100において本プロセスが再び開始される。
【0020】
より良い理解のために、記載された方法の異なる用途が、ここで提示される。第1のケースでは、運転者は、事前設定された経路(現在自動的に実行される機能性)をそれらのナビゲーションシステムに設定しており、これはトリガ動作と共にメモリ5に格納される。しかしながら、運転者は、ナビゲーションシステムによって設定されたルートに従わないで、別のルートを取ることによって、例えば、ナビゲーションシステムをオフにすることなく、または新しい目的地を入力することなく、ナビゲーション計画に反して次の高速道路の出口で出ないことによって、この機能性を中止することを決定する。それは今、車両の事前設定された速度のためにクルーズコントロールを有効にする。ナビゲーションシステムは元のルートを走行する予定であるため、車両は出口の前でブレーキをかける。この場合、車両がブレーキをかけられている理由の説明が運転者に対して表示され、運転者が車両の挙動を理解できるようにする。事前設定された経路が中止された場合、中止が発生した車両のGPS位置と、メモリ5に既に記憶されている他のデータとともにログファイルに保存される。ルートの中止と中止の位置は、カウンタ7でカウントされる。そして、自動的に設定される経路が既に同じ位置で複数回中止されているか否かを比較装置9によりチェックする。この場合、カウンタ7に同じ位置で登録された中止の回数が事前設定された閾値と比較される。これを超える場合、その自動的に実行されるルートがこの位置で実行されなくすべきかどうかを運転者は尋ねられる。運転者が同意する場合、このルートは特定の位置では実行されなくなり、運転者が取ったルートに置き換えられる。
【0021】
更なる例では、前方の車両からの車両の距離を制御する距離支援システムが考慮される。支援運転車両(現在自動的に実行される機能性)は、指定された距離に合わせるためにブレーキをかけようとする。しかし、運転者は、距離支援システムよりも早くブレーキをかけ、したがって自動的に実行される制御プロセスを中止し、これは、自動的にトリガされる距離制御プロセスのトリガと共にメモリ5に保存される。GPS位置と運転者によるブレーキングの時間は、メモリ3に格納されたデータとともにログファイルに記録される。カウンタ7は、車両によるブレーキングの前に、運転者によるこのブレーキングをカウントする。運転者と車両との誤解をなくすため、先行車との距離に達したときに、なぜ車両がブレーキをかけることを望んだのか、車両から運転者に説明が出される。しかし、運転者は前方の車両からより大きな距離で早めにブレーキをかけたいため、同じGPS位置で既に同等の状況が発生しているかどうかがチェックされる。比較装置9では、カウンタ7のエントリが事前設定された閾値と比較される。これを超えた場合、距離支援システムは、トリガ装置11によって、今後は前方の車両から計算された距離での車両のブレーキングを、運転者がブレーキをかけた距離と置き換えるよう指示される。
【0022】
更なる例では、車両の軌道を維持するための車線維持システムが考えられる。車線維持システムは、車両が走行する軌道曲線を監視する。指定された軌道は路面標示を超える運転につながり、車両は指定された軌道に戻るためにブレーキングおよび/またはステアリング介入(現在自動的に実行される機能性)を自動的に実行する。運転者はこれに苛立ち、有効なステアリング介入によって自動化された動作を受け付けない。この時点で、車線維持システムは、この自動的なブレーキングおよび/またはステアリング介入がなぜ行われたかについての情報を出力する。同時に、運転者は、この自動的なステアリングまたはブレーキング介入を、対応する位置で将来、または一般的に無効にする必要があるかどうかを尋ねられる。運転者が同意すると、車線維持システムに対応する指示が与えられる。
【0023】
多くの場合、車両の自動的に実行される機能性に対する運転者の不満は、例えば、運転者の表情が顔認識システムによって評価される場合など、迅速に検出することができる。ここでは、運転者が行動を開始する前であっても、運転者と車両との間の誤解を検出し、当該方法を開始することができる。
【0024】
以上、本発明を好ましい例示的な実施形態によりさらに詳細に例示および説明したが、本発明は、開示された実施例によって限定されるものではなく、また他の変形例は、当業者によって本発明の保護の範囲を逸脱しない範囲においてこれらから引き出し得る。したがって、多数の可能な変形例が存在することは明らかである。例示的な実施形態は、実際には単なる例であり、それらは例えば保護の範囲、可能な応用、または本発明の構成を限定するものとして理解されるべきではないことも明らかである。むしろ、先の説明および図の説明は、当業者が例示的な実施形態を実際に実施することを可能にするものであり、ここで、本発明の開示された着想を認識する当業者は、上述の記載における更なる説明など、請求項およびそれらの法的同等物によって規定される保護の範囲から逸脱することなく、例えば例示的な実施形態において言及された個々の要素の機能または配置に関して様々な変更を加えることができる。
図1
図2