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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】状態判定装置及び状態判定方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
B29C45/76
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022555456
(86)(22)【出願日】2021-10-04
(86)【国際出願番号】 JP2021036563
(87)【国際公開番号】W WO2022075244
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2020168774
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】堀内 淳史
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-044836(JP,A)
【文献】特開2020-055145(JP,A)
【文献】特開2017-202632(JP,A)
【文献】特開2007-196480(JP,A)
【文献】特開2020-052821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機における成形状態を判定する状態判定装置であって、
前記射出成形機に係る状態を示すデータとして所定の物理量に係るデータと生産数を取得するデータ取得部と、
前記物理量に係るデータに基づいて、前記射出成形機の状態の特徴を示す特徴量を算出する特徴量算出部と、
前記特徴量と前記生産数とを関連づけて記憶する特徴量記憶部と、
所定の特徴量から所定の統計量を算出するための統計関数を少なくとも含む統計条件を記憶する統計条件記憶部と、
前記特徴量記憶部に記憶された前記特徴量に基づいて、前記統計条件記憶部に記憶された統計条件を参照して統計量を統計データとして算出する統計データ算出部と、
前記統計データと前記生産数とを関連づけて記憶する統計データ記憶部と、
前記統計データ記憶部に記憶された統計データ及び生産数に基づいて、所定の回帰式による回帰分析を行い、前記所定の回帰式の係数を算出する回帰分析部と、
前記回帰分析部が求めた回帰式を用いて、予め定めた成形異常を示す警告値に達する生産数又は日時を判定する判定部と、
を備えた状態判定装置。
【請求項2】
前記統計関数は、分散、標準偏差、平均偏差、変動係数、加重平均、重み付き調和平均、刈り込み平均、二乗和平均平方根、最小値、最大値、最頻値、加重中央値のいずれかである、
請求項1に記載の状態判定装置。
【請求項3】
前記所定の回帰式は、直線回帰式、ルート回帰式、自然対数回帰式、ロジスティック回帰式のいずれかである、
請求項1に記載の状態判定装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記警告値に達する生産数と、前記射出成形機の運転ペース乃至サイクルタイムに基づいて、前記警告値に達する日時を算出する、
請求項1に記載の状態判定装置。
【請求項5】
前記データ取得部は、有線または無線のネットワークを介して接続され複数の射出成形機からデータを取得する、
請求項1に記載の状態判定装置。
【請求項6】
前記射出成形機と有線又は無線のネットワークを介して接続された上位装置上に実装されている、
請求項1に記載の状態判定装置。
【請求項7】
前記判定部による判定の結果は、表示装置に対して表示出力される、
請求項1に記載の状態判定装置。
【請求項8】
前記判定部が判定した前記生産数又は前記日時に達したら、前記射出成形機の運転を停止、減速、または前記射出成形機を駆動する原動機の駆動トルクを制限する信号のうち少なくともいずれかを出力する、
請求項1に記載の状態判定装置。
【請求項9】
前記統計条件記憶部の統計条件は、さらに、複数の特徴量毎に定められた統計条件が属する所定の成形状態を含み、
前記判定部は、前記所定の成形状態に属する複数の特徴量が、前記警告値に達する生産数の平均又は日時の平均を算出し、算出した平均に基づいて前記所定の成形状態が前記警告値に達する生産数又は日時を判定する、
請求項1に記載の状態判定装置。
【請求項10】
射出成形機における成形状態を判定する状態判定方法であって、
前記射出成形機に係る状態を示すデータとして所定の物理量に係るデータと生産数を取得するステップと、
前記物理量に係るデータに基づいて、前記射出成形機の状態の特徴を示す特徴量を算出するステップと、
前記特徴量に基づいて、所定の特徴量から所定の統計量を算出するための統計関数を少なくとも含む統計条件に従い統計量を統計データとして算出するステップと、
前記統計データ及び生産数に基づいて、所定の回帰式による回帰分析を行い、前記所定の回帰式の係数を算出するステップと、
前記ステップで求めた回帰式を用いて、予め定めた成形異常を示す警告値に達する生産数又は日時を判定するステップと、
を実行する状態判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に係る状態判定装置及び状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機による成形品の生産では、成形に係る判別条件を予め設定し、この判別条件を用いて成形された成形品に対する良否判別を行っている。例えば、成形品の材料である樹脂の製造ロットが切り換わると、射出シリンダ内の樹脂の可塑化状態が変動して、成形品の不良が生じることがある。また、スクリュ等の部品の摩耗や可動部へのグリス切れによっても成形品の不良が生じることがある。そこで、経時変化や環境変化によって変動する成形状態の正常あるいは異常(不良)の良否判別は、成形サイクルにおける射出工程の射出時間やピーク圧力、計量工程の計量時間や計量位置等の特徴量の変化に基づいて行っている。
【0003】
樹脂の可塑化状態が最適であった時の特徴量と比べて、特徴量に多少の差異が生じたとしても、その差異が著しいものでもない限り、必ずしも成形品に異常が生じるとは限らない。そこで、特徴量の判別条件には、許容範囲を設けるのが一般的である。例えば、特許文献1には、成形サイクル毎に検出した測定データの最大値及び最小値に基づき良否判別することが示されている。また、特許文献2~4には、時系列データより特徴量(例:射出時間、ピーク圧力、計量位置などの実績値/操業データ)を算出し、算出した特徴量に係る基準値、基準値との偏差、平均値、標準偏差、などの許容範囲に基づいて正常(良品)あるいは異常(不良品)を判別し、アラーム(成形品に異常が発生した可能性)として報知することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平02-106315号公報
【文献】特開平06-231327号公報
【文献】特開2002-079560号公報
【文献】特開2003-039519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
射出成形機や成形品の異常(不良)を引き起こす要因はさまざまであり、突発的な要因と、中長期的な要因がある。突発的な要因の例としては、センサの破損、可動部への異物の混入、生産材料への異物の混入、オペレータの操作ミスが挙げられる。一方、中長期的な要因の例としては、機構部材の摩耗、消耗、劣化(スクリュの摩耗、ベルトの消耗、可動部のグリス切れ、電装品の経年劣化、金型の摩耗など)や、生産環境の変化(生産材料(樹脂)の劣化、樹脂ロットの切換えなど)が挙げられる。突発的な要因と、中長期的な要因とは、その異常に至るまでの時間に長短の差異があるだけでなく、その異常に至るまでの成形状態(生産状態)の推移に差異がある。
【0006】
従来、成形状態の正常あるいは異常の判別は、実成形時に得た生産情報や特徴量を基に、リアルタイムに行っていた。そのため、射出成形機の機構部品や金型などが破損するなどの致命的な異常が生じた場合、異常を検知したタイミングで成形品の生産が不用意に停止することになる。そのような状況にて成形品の生産を再開するには、修理部品を取り寄せるなど、機械の復旧に長時間を要す問題があった。また、機構部品の破損などといった大事に至らずとも、異常が生じたことに気付くのが遅れると、大量の不良品が発生することになり、不良品の廃棄や材料費など多大な生産コストの増大に繋がる。そのため、異常の兆候を早期に把握することが求められている。
【0007】
このような事態は、異常が生じていない状態であっても、機械を定期的にオーバーホールして点検することで、予防保全できる。しかしながら、オーバーホールするためには機械の稼働を停止しなければならない。そのため、可能な限り、正常な状態では機械を止めずに成形状態の正常または異常を判定し、機械の稼働率を向上させることが望ましい。
【0008】
また、スクリュや金型の摩耗や腐食は長時間をかけて緩やかに進行し、不良品の発生や機構部品の破損など成形状態に異常が生じる。そのため、成形状態が異常となる時期を予測して、異常が生じる前に射出成形機を点検すること、保守作業を行うことが必要である。
このように、成形状態の異常(成形異常)の早期発見を可能とする予防保全の手法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による状態判定装置は、射出成形機の成形動作に係る時系列データ(例:圧力、電流、速度など)と生産数(ショット数)に基づいて、成形工程毎に時系列データの特徴量(該成形工程におけるピーク値など)を算出し、算出された複数の特徴量に統計関数を用いて統計量を算出する。そして算出した特徴量を回帰分析して回帰式を算出し、算出した回帰式によって推定される推定値が「予め決められた成形異常を示す警告値」に達する「生産数、日時」を推定する。
【0010】
そして、本発明の一態様は、射出成形機における成形状態を判定する状態判定装置であって、前記射出成形機に係る状態を示すデータとして所定の物理量に係るデータと生産数を取得するデータ取得部と、前記物理量に係るデータに基づいて、前記射出成形機の状態の特徴を示す特徴量を算出する特徴量算出部と、前記特徴量と前記生産数とを関連づけて記憶する特徴量記憶部と、所定の特徴量から所定の統計量を算出するための統計関数を少なくとも含む統計条件を記憶する統計条件記憶部と、前記特徴量記憶部に記憶された前記特徴量に基づいて、前記統計条件記憶部に記憶された統計条件を参照して統計量を統計データとして算出する統計データ算出部と、前記統計データと前記生産数とを関連づけて記憶する統計データ記憶部と、前記統計データ記憶部に記憶された統計データ及び生産数に基づいて、所定の回帰式による回帰分析を行い、前記所定の回帰式の係数を算出する回帰分析部と、前記回帰分析部が求めた回帰式を用いて、予め定めた成形異常を示す警告値に達する生産数又は日時を判定する判定部と、を備えた状態判定装置である。
【0011】
本発明の他の態様は、射出成形機における成形状態を判定する状態判定方法であって、前記射出成形機に係る状態を示すデータとして所定の物理量に係るデータと生産数を取得するステップと、前記物理量に係るデータに基づいて、前記射出成形機の状態の特徴を示す特徴量を算出するステップと、前記特徴量に基づいて、所定の特徴量から所定の統計量を算出するための統計関数を少なくとも含む統計条件に従い統計量を統計データとして算出するステップと、前記統計データ及び生産数に基づいて、所定の回帰式による回帰分析を行い、前記所定の回帰式の係数を算出するステップと、前記ステップで求めた回帰式を用いて、予め定めた成形異常を示す警告値に達する生産数又は日時を判定するステップと、を実行する状態判定方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様により、実成形して得た時系列データの特徴を示す統計量に基づいて異常に至るまでの成形状態の推移を推定し、将来的に成形異常が生じると予測される生産数や日時を把握することが可能となり、予防保全を実現することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態による状態判定装置の概略的なハードウェア構成図である。
図2】射出成形機の概略構成図である。
図3】第1実施形態による状態判定装置の概略的な機能ブロック図である。
図4】1つの成形品を製造する成形サイクルの例を示す図である。
図5】1つの時系列データから特徴量を算出する例を示す図である。
図6】2つ以上の時系列データから特徴量を算出する例を示す図である。
図7】統計条件の例を示す図である。
図8A】ショット毎の特徴量をプロットしたグラフを示す図である。
図8B】特徴量から算出された統計データをプロットしたグラフを示す図である。
図9】回帰式のグラフを例示する図である。
図10】判定部による警告表示の例を示す図である。
図11】統計条件の入力画面の例を示す図である。
図12】統計条件に成形状態を加えた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は本発明の一実施形態による状態判定装置の要部を示す概略的なハードウェア構成図である。本実施形態による状態判定装置1は、例えば制御用プログラムに基づいて射出成形機4を制御する制御装置として実装することができる。また、本実施形態による状態判定装置1は、制御用プログラムに基づいて射出成形機4を制御する制御装置に併設されたパソコンや、有線/無線のネットワークを介して制御装置と接続されたパソコン、セルコンピュータ、フォグコンピュータ6、クラウドサーバ7の上に実装することができる。本実施形態では、状態判定装置1を、ネットワーク9を介して制御装置3と接続されたパソコンの上に実装した例を示す。
【0015】
本実施形態による状態判定装置1が備えるCPU11は、状態判定装置1を全体的に制御するプロセッサである。CPU11は、バス22を介してROM12に格納されたシステム・プログラムを読み出し、該システム・プログラムに従って状態判定装置1全体を制御する。RAM13には一時的な計算データや表示データ、及び外部から入力された各種データ等が一時的に格納される。
【0016】
不揮発性メモリ14は、例えば図示しないバッテリでバックアップされたメモリやSSD(Solid State Drive)等で構成され、状態判定装置1の電源がオフされても記憶状態が保持される。不揮発性メモリ14には、インタフェース15を介して外部機器72から読み込まれたデータ、インタフェース18を介して入力装置71から入力されたデータ、ネットワーク9を介して射出成形機4から取得されたデータ等が記憶される。記憶されるデータには、例えば制御装置3により制御される射出成形機4に取り付けられた各種センサ5により検出された駆動部のモータ電流、電圧、トルク、位置、速度、加速度、金型内圧力、射出シリンダの温度、樹脂の流量、樹脂の流速、駆動部の振動や音等の物理量に係るデータが含まれていてよい。不揮発性メモリ14に記憶されたデータは、実行時/利用時にはRAM13に展開されてもよい。また、ROM12には、公知の解析プログラムなどの各種システム・プログラムが予め書き込まれている。
【0017】
インタフェース15は、状態判定装置1のCPU11と外部記憶媒体等の外部機器72と接続するためのインタフェースである。外部機器72側からは、例えばシステム・プログラムや射出成形機4の運転に係るプログラムやパラメータ等を読み込むことができる。また、状態判定装置1側で作成・編集したデータ等は、外部機器72を介して図示しないCFカードやUSBメモリ等の外部記憶媒体に記憶させることができる。
【0018】
インタフェース20は、状態判定装置1のCPUと有線乃至無線のネットワーク9とを接続するためのインタフェースである。ネットワーク9は、例えばRS-485等のシリアル通信、Ethernet(登録商標)通信、光通信、無線LAN、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等の技術を用いて通信をするものであってよい。ネットワーク9には、射出成形機4を制御する制御装置3やフォグコンピュータ6、クラウドサーバ7等が接続され、状態判定装置1との間で相互にデータのやり取りを行っている。
【0019】
表示装置70には、メモリ上に読み込まれた各データ、プログラム等が実行された結果として得られたデータ等がインタフェース17を介して出力されて表示される。また、キーボードやポインティングデバイス等から構成される入力装置71は、オペレータによる操作に基づく指令,データ等をインタフェース18を介してCPU11に渡す。
【0020】
図2は、射出成形機4の概略構成図である。射出成形機4は、主として型締ユニット401と射出ユニット402とから構成されている。型締ユニット401には、可動プラテン416と固定プラテン414が備えられている。また、可動プラテン416には可動側金型412が、固定プラテン414には固定側金型411が取り付けられている。一方、射出ユニット402は、射出シリンダ426と、射出シリンダ426に供給する樹脂材料を溜めるホッパ436と、射出シリンダ426の先端に設けられたノズル440とから構成されている。1つの成形品を製造する成形サイクルでは、型締ユニット401で、可動プラテン416の移動によって型閉じ・型締めの動作を行い、射出ユニット402で、ノズル440を固定側金型411に押し付けてから樹脂を金型内に射出する。これらの動作は制御装置3からの指令により制御される。
【0021】
また、射出成形機4の各部にはセンサ5が取り付けられており、駆動部のモータ電流、電圧、トルク、位置、速度、加速度、金型内圧力、射出シリンダ426の温度、樹脂の流量、樹脂の流速、駆動部の振動や音等の物理量が検出されて制御装置3に送られる。制御装置3では、検出された各物理量が図示しないRAMや不揮発性メモリ等に記憶され、必要に応じてネットワーク9を介して状態判定装置1へ送信される。
【0022】
図3は、本発明の第1実施形態による状態判定装置1が備える機能を概略的なブロック図として示したものである。本実施形態による状態判定装置1が備える各機能は、図1に示した状態判定装置1が備えるCPU11がシステム・プログラムを実行し、状態判定装置1の各部の動作を制御することにより実現される。
【0023】
本実施形態の状態判定装置1は、データ取得部100、特徴量算出部110、統計データ算出部120、回帰分析部130、判定部140を備える。また、状態判定装置1のRAM13乃至不揮発性メモリ14には、データ取得部100が制御装置3等から取得したデータを記憶するための領域としての取得データ記憶部300、特徴量算出部110が算出した特徴量を記憶するための領域としての特徴量記憶部310、統計データ算出部120による統計データの算出における統計条件を予め記憶する統計条件記憶部320、統計データ算出部120が算出した統計データを記憶するための領域としての統計データ記憶部330、回帰分析部130が算出した所定の回帰式の係数を記憶するための領域としての回帰係数記憶部340が予め用意されている。
【0024】
データ取得部100は、図1に示した状態判定装置1が備えるCPU11がROM12から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてCPU11によるRAM13、不揮発性メモリ14を用いた演算処理と、インタフェース15、18又は20による入力制御処理とが行われることで実現される。データ取得部100は、射出成形機4に取り付けられたセンサ5で検出された駆動部のモータ電流、電圧、トルク、位置、速度、加速度、金型内圧力、射出シリンダ426の温度、樹脂の流量、樹脂の流速、駆動部の振動や音等の物理量に係るデータを取得する。データ取得部100が取得する物理量に係るデータは、所定周期毎の物理量の値を示す、いわゆる時系列データであってよい。データ取得部100は、物理量に係るデータを取得する際に、その物理量が検出された際の生産数(ショット数)を併せて取得する。この生産数(ショット数)は、前回メンテナンスを行ってからの生産数(ショット数)であってよい。データ取得部100は、ネットワーク9を介して射出成形機4を制御する制御装置3から直接データを取得してもよい。データ取得部100は、外部機器72や、フォグコンピュータ6、クラウドサーバ7等が取得して記憶しているデータを取得してもよい。データ取得部100は、射出成形機4による1つの成形サイクルを構成する工程毎にそれぞれ物理量に係るデータを取得するようにしてもよい。図4は、1つの成形品を製造する成形サイクルを例示する図である。図4において、網掛け枠の工程である型閉じ工程、型開き工程、および、突き出し工程は、型締ユニット401の動作で行われる。また、白抜き枠の工程である射出工程、保圧工程、計量工程、減圧工程、および、冷却工程は、射出ユニット402の動作で行われる。データ取得部100は、これらの工程ごとに区別できるように物理量に係るデータを取得する。データ取得部100が取得した物理量に係るデータは、取得データ記憶部300に記憶される。
【0025】
特徴量算出部110は、図1に示した状態判定装置1が備えるCPU11がROM12から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてCPU11によるRAM13、不揮発性メモリ14を用いた演算処理が行われることで実現される。特徴量算出部110は、データ取得部100が取得した射出成形機4の状態を示す物理量に係るデータに基づいて、射出成形機4の成形サイクルを構成する工程毎に、物理量に係るデータの特徴量(射出工程における射出時間、ピーク圧力、ピーク圧力到達位置、計量工程における計量圧力ピーク値、計量終了位置、型閉じ工程における型閉じ時間、型開き工程における型開き時間など)を算出する。特徴量算出部110が算出する特徴量は、射出成形機4の工程毎の状態の特徴を示す。図5は、射出工程における圧力の変化を示すグラフである。図5のt1は、射出工程の開始時点を示し、t3は射出工程の終了時点を示す。圧力は射出シリンダ内の樹脂を金型内に射出する動作に伴い上昇を始め、その後、所定の目標圧力Pになるように射出成形機4を制御する制御装置3によって制御される。所定の目標圧力Pは、オペレータの操作に基づく指令として、オペレータが表示装置70に表示された操作画面を目視確認して入力装置71を操作して予め手動で設定される。図5に示すように、特徴量算出部110は、射出工程において取得された圧力を示す時系列データのピーク値を算出し、これを射出工程におけるピーク圧力の特徴量とする。図6は、射出工程における圧力の変化及びスクリュ位置の変化を示すグラフである。図6に示すように、特徴量算出部110は、射出工程におけるピーク圧力を算出した上で、該ピーク圧力に到達したピーク圧力到達時間t2におけるスクリュ位置を算出し、これを射出工程におけるピーク圧力到達位置の特徴量とする。このように、特徴量算出部110が算出する特徴量は、所定の工程における所定の物理量に係るデータに基づいて算出される場合や、所定の工程における複数の物理量に係るデータから算出される場合がある。特徴量算出部110が算出した特徴量は、射出成形機4による生産数(ショット数)と関連付けて特徴量記憶部310に記憶される。
【0026】
統計データ算出部120は、図1に示した状態判定装置1が備えるCPU11がROM12から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてCPU11によるRAM13、不揮発性メモリ14を用いた演算処理が行われることで実現される。統計データ算出部120は、特徴量算出部110が算出した射出成形機4の状態の特徴を示す特徴量に基づいて、該特徴量の統計量である統計データを算出する。統計データ算出部120は、統計データを算出する際に、統計条件記憶部320に記憶された統計条件を参照する。
【0027】
統計条件記憶部320に記憶された統計条件は、特徴量から統計量(例:平均値、分散など)を算出する条件を定める。図7は、統計条件記憶部320に記憶された統計条件の例である。図7に例示されるように、統計条件は特徴量と、該特徴量より統計量を算出するための統計関数とを関連付けたものである。統計条件は、図7に示すように、成形サイクルを構成する工程毎に定義されていてよい。また、統計条件は、図7に示すように、統計量を演算する際の特徴量の標本数を含んでいてよい。統計条件に含まれる統計関数は、例えば加重平均、算術平均、重み付き調和平均、調和平均、刈り込み平均、対数平均、二乗和平均平方根、最小値、最大値、中央値、加重中央値、最頻値等であってよい。この統計関数は、予め射出成形機4を試験動作させ、射出成形機4による成形品の成形状態と特徴量から算出される各統計量との間の相関性を分析しておき、その分析結果に基づいて適切なものを選択するとよい。例えば、射出成形機4による成形品の成形状態が変化していくにしたがって、所定の特徴量の最大値が変化していく場合には、該特徴量の統計量を算出する統計関数として最大値を選択するとよい。また、複数の特徴量の内に、特徴量の平均値より大きく外れている外れ値が含まれる場合には、外れ値の影響を受け難い加重中央値や最頻値等を統計関数として選択するとよい。また、例えば、射出成形機4による成形品の成形状態が変化していくにしたがって、所定の特徴量の値にばらつきが出てくる場合には、該特徴量の統計量を算出する統計関数として標準偏差を選択するとよい。なお、特徴量の値のばらつきを示す統計関数としては、標準偏差に限定するものではなく、分散、標準偏差、平均偏差、変動係数等であってよい。このように、所定の特徴量に係る統計条件には、射出成形機4の状態の変化を判定するために有用な統計関数を選択することが望ましい。また、統計条件に含まれる標本数の選定については、例えば、可動側金型412や固定側金型411に摩耗や消耗等が進行する異常の場合、型開きトルクピーク値等の型締めユニット401の動作に係る統計量は、成形サイクルを繰り返しながら徐々に大きな値へと一方向に推移する。そこで、型開きトルクピーク値に関連づける統計条件は、統計関数として最大値、標本数として100ショットなど多めのショット数を定めるとよい。また、射出シリンダ426に溜められた樹脂材料に不純物が混入する等の異常の場合、計量トルクピーク値等の射出シリンダ426に係る統計量は、不純物が混入した直後のサイクルから即座にばらつきとして現れる。そこで、計量トルクピーク値に関連づける統計条件は、統計関数として標準偏差等のばらつきを評価する関数、標本数として10ショット等の少なめのショット数を定めるとよい。このように、特徴量の特性に応じて統計関数と標本数の組合わせを選定することにより、特徴量毎に適切な統計量を算出する統計条件を定めることができる。
【0028】
統計条件は、図11に例示するように、オペレータが表示装置70に表示された操作画面から入力装置71を操作して手動で設定・更新できるようにしてもよい。図11は、オペレータが特徴量の射出時間より統計量を算出する統計関数として加重平均を選択し、特徴量のピーク圧力到達位置より統計量を算出する統計関数として標準偏差を選択した場合の表示例を示している。また、統計関数が統計量の算出に用いる標本数は、特徴量の射出時間が30ショット、特徴量のピーク圧力到達位置が10ショットであることを示している。標本数の決め方としては、射出時間やピーク圧力到達位置のように少ないショット数で特徴量の値に変化が生じる場合は標本数として小さな値を選定し、型開き時間のように特徴量の値がショット毎に安定していて変化の幅が小さかったり、射出シリンダ426の温度のように特徴量が緩やかに多くのショット数を経て変化する場合は標本数として90ショットなど大きな値を選定するとよい。このように、標本数は、特徴量がショット毎に変化する具合に応じて異なるショット数を適宜選定してよい。
【0029】
統計データ算出部120は、統計条件記憶部320に記憶された統計条件を参照して、予め定めた所定のタイミングで特徴量記憶部310に記憶された特徴量から統計データを算出する。例えば、統計データ算出部120は、所定の成形サイクル毎(1ショット毎、10ショット毎、統計条件に設定された標本数毎など)に統計データを算出するようにしてよい。図8A図8Bは、ピーク圧力到達位置の統計データの例を示している。図8Aはショット毎の特徴量をプロットしたグラフであり、図8Bは特徴量から算出された統計データをプロットしたグラフである。図7に例示するように、ピーク圧力到達位置の統計量を算出する統計条件(統計条件No.3)は、標本数として10ショット、統計関数として標準偏差が定められている。この時、統計データ算出部120は、ショット毎に算出されたピーク圧力到達位置の特徴量を10ショット毎に分けてそれぞれ標準偏差を算出し、その結果をピーク圧力到達位置の統計データとする。このようにして算出した統計データを、統計データ算出部120は射出成形機4による生産数(ショット数)と関連付けて統計データ記憶部330に記憶する。なお、統計条件に定める統計関数を決定する際は、図8Aにプロットされる特徴量の散布状態をオペレータが目視確認して統計関数を選定してもよい。
【0030】
回帰分析部130は、図1に示した状態判定装置1が備えるCPU11がROM12から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてCPU11によるRAM13、不揮発性メモリ14を用いた演算処理が行われることで実現される。回帰分析部130は、統計データ記憶部330に記憶された統計データを参照して、それぞれの物理量に係る統計データを回帰分析して、所定の回帰式の係数を算出する。回帰分析部130は、算出した回帰式の係数を、回帰係数記憶部340に記憶する。
【0031】
図9は、図8Bで例示したピーク圧力到達位置の統計データを回帰分析して得られた回帰式のグラフの例を示している。図9の点線で示される直線は、直線回帰式y=ax+bを所定の回帰式とした単回帰分析を回帰分析部130が行ったものとする。このとき、回帰分析部130は、例えば目標変数yをピーク圧力到達位置の統計量(標準偏差)、説明変数xを生産数(ショット数)とし、説明変数xから推定される値と、目的変数yとの誤差(推定誤差)が最小となるような係数a,bを最小二乗法により算出する。算出された係数a,bは、回帰係数記憶部340に記憶する。所定の回帰式としては、上記した直線回帰式以外にも、統計量の変化傾向に応じて、ルート回帰式、自然対数回帰式、分数回帰式、べき乗回帰式、指数回帰式、修正指数回帰式、ロジスティック回帰式等を随時使用してよい。所定の回帰式を選定する際は、図9にプロットされる統計量の散布状態をオペレータが目視確認して、統計量の変化の傾向に適合する回帰式(直線的に変化するのであれば1次式である直線回帰式、曲線的に変化する場合にはn次式である指数回帰式等や、その他の回帰式)としてもよい。回帰式には、過去に繰り返し行われた成形動作によって得られた統計量が反映されている。即ち、繰り返し行われた成形動作に伴って生じるスクリュの摩耗やベルトの消耗などの状態が進行していく過程が回帰式に反映されているので、成形品の実成形による成形状態の推移を考慮した分析が可能となる。
【0032】
判定部140は、図1に示した状態判定装置1が備えるCPU11がROM12から読み出したシステム・プログラムを実行し、主としてCPU11によるRAM13、不揮発性メモリ14を用いた演算処理が行われることで実現される。判定部140は、回帰分析部130により係数が決定された回帰式に基づいて、各統計量が予め定めた所定の警告値に達するタイミングを判定する。警告値に達するタイミングである生産数(ショット数)は、直線回帰式を説明変数xについて解いたx=(y-b)/aの目的変数yに警告値を代入して逆推定される。警告値は、予め試験動作を行い、射出成形機4が正常な成形動作が行えなくなる統計量の値を求めておけばよい。図9の例では、ピーク圧力到達位置の標準偏差の警告値が6mmと設定されており、判定部140は、回帰式から算出される値が警告値6.0mmに達するタイミングである生産数(ショット数)x1を、警告を発するタイミングと判定する。そして、判定部140は、その判定結果を出力する。判定部140はその判定結果を、表示装置70に対して表示出力するようにしてよい。また、判定部140はその判定結果を、ネットワーク9を介して射出成形機4の制御装置3やフォグコンピュータ6やクラウドサーバ7等の上位装置に対して送信出力してもよい。
【0033】
判定部140が判定して警告を発するタイミングは、上述したように射出成形機4による生産数(ショット数、図9の例ではx1)であってよい。また、射出成形機4の現在の生産数(ショット数)からみて、警告に達するまでの残り生産数(ショット数、図9の例では、現在30ショット行っている場合にはx1-30)を成形サイクル毎に表示装置70に表示出力してもよい。また、別の表示出力の例として、1回のショットに係る時間や、現在の射出動作のペースやサイクルタイムなどに基づいて、生産数(ショット数)から日時乃至残り時間へと換算したものを表示装置70に表示出力してもよい。図10は、判定部140による判定結果を表示出力した例として、警告値に達するまでの残り生産数(ショット数)と警告値に達する日時を含む警告表示を示している。
【0034】
上記構成を備えた本実施形態による状態判定装置1は、実成形して得た時系列データに基づいて、将来的に成形異常が生じると予測される生産数や日時を把握することが可能となる。その結果、計画的な予防保全を実施できるので、従来行われてきた定期的な点検作業の頻度を低減し、オペレータの負担を軽減し、作業効率と稼働率の向上を実現する。このように、オペレータは、成形状態に異常が生じる前に、生産を継続するための処置(例:可動部へのグリス給脂、運転条件の調整など)を実施することが可能となり、ダウンタイムを最小限に留め、稼働率を向上させることができる。また、不良品の製造を未然に防止できるので、コスト削減となる。これらの判定は、オペレータの経験と勘に頼った異常有無の判断ではなく、実成形して得た数値情報に基づいて推定するので、再現性のある安定した判定を実現する。
【0035】
本実施形態による状態判定装置1の一変形例として、判定部140は、統計条件記憶部320に記憶する統計条件に、複数の特徴量毎に定められた統計条件が属する所定の成形状態を定め、所定の成形状態が警告値に達する生産数(ショット数)又は日時を判定するようにしてもよい。所定の成形状態とは、例えば、射出成形機4が製造する成形品の良否に係る状態、射出成形機4の機構部品や金型の摩耗や消耗に係る状態などである。図12は、統計条件記憶部320に記憶された所定の成形状態を含む統計条件と、判定部140が算出した警告値に達する生産数(ショット数)を例示する図である。なお、図12に示した統計条件に含まれる成形工程、特徴量、統計関数、標本数は前述した図7に一致する。
【0036】
統計条件は、図12に示すように、所定の成形状態毎に統計条件を分類し、1つの成形状態に対して複数の特徴量に係る統計条件を組み合わせて定義されていてもよい。所定の成形状態毎に関連づける統計条件は、予め射出成形機4を試験動作させ、射出成形機4による成形品の成形状態と特徴量から算出される各統計量との間の相関性を分析しておき、その分析結果に基づいて適切なものを選定するとよい。
例えば、成形品の重量がばらついたり、成形品の外観形状にバリ等が生じる成形品の不良に係わる異常は、射出工程にて金型内のキャビティに充填する樹脂の容量や圧力の状態が不安定な場合に生じるので、射出工程にてデータ取得部100が取得した時系列データより算出した特徴量を成形状態に関連づけるとよい。例えば、図12に示したように、成形状態が「成形品の不良」である場合の特徴量は、成形工程が射出工程に一致する射出時間、ピーク圧力等を選定するとよい。
【0037】
また、金型の摩耗に係る異常は、金型を取り付けた可動プラテン416の動作に係る型閉じ工程および型開き工程にて生じるので、型閉じ工程および型開き工程にてデータ取得部100が取得した時系列データより算出した特徴量を警告値に関連づけるとよい。例えば、図12に示したように、成形状態が「金型の摩耗」である場合の特徴量は、型閉じ時間、型開き時間、および型開きトルクピーク値等を選定するとよい。
なお、所定の成形状態としては、上述した成形品の不良や金型の摩耗の他にも、射出シリンダ426の摩耗、機構部材のベルトの消耗、可動部のグリス切れ、電装品の経年劣化、樹脂の劣化などであってもよい。
【0038】
判定部140は、前述したように、回帰分析部130により係数が決定された回帰式に基づいて、各統計条件に定められた特徴量より算出された統計量が予め定めた所定の警告値に達する生産数(ショット数)を算出する。そして、判定部140は、図12に示すように、統計条件に成形状態を含む場合、統計条件記憶部320に記憶された統計条件を参照して、該成形状態に属する統計条件に係る所定の警告値に達する生産数(ショット数)の平均を算出する。
例えば、図12において成形状態が「金型の摩耗」の場合、「金型の摩耗」に属する統計条件に係る特徴量として型閉じ時間(統計条件No.10)、型開き時間(統計条件No.11)、型開きトルクピーク値(統計条件No.12)の3個が関連づけられており、それぞれの特徴量が警告値に達する生産数(ショット数)は、200、210、220ショットなので、その平均は210=(200+210+220)/3と算出される。即ち、成形状態が「金型の摩耗」である場合の警告値に達する生産数(ショット数)は、210ショットと判定される。
また、現在の射出動作のペースやサイクルタイムなどに基づいて、生産数(ショット数)から日時乃至残り時間へと換算してもよい。そして、判定部140は、その判定結果を表示装置70に対して表示出力するようにしてよい。
【0039】
このように、複数の統計条件を用いることによって、特徴量毎ではなく、異常の要因を示す成形状態に応じた生産数(ショット数)、日時乃至残り時間を算出することができる。これにより、成形状態が異常となる生産数に達する前に、オペレータは迅速に保守作業を行うことができる。例えば、射出成形機4は複数のメンテナンス箇所や点検箇所を有するため、異常が生じる前に予防保全すべき箇所をオペレータが特定することは困難である。オペレータが成形状態の異常に気付かず、射出成形機4の機構部品や金型などが破損すると、生産設備を復旧して生産を再開するには長時間のダウンタイムを要し、多大な損失をもたらす。しかしながら、本実施例では、異常が生じる前に、オペレータが異常と判定された成形状態に基づき該成形状態に係わるメンテナンス箇所や点検箇所を推定することが可能となり、機械が壊れる前に必要な修理部品を取り寄せて修理することが可能となる。また、予防保全のために定期的に機械の稼働を停止してオーバーホールする等の点検作業の頻度を低減できるので、機械の稼働率を向上させることができる。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態の例のみに限定されることなく、適宜の変更を加えることにより様々な態様で実施することができる。
例えば、上述した実施形態における判定部140は、単に判定結果の出力をするだけでなく、判定した生産数又は日時に到達した際に、射出成形機4の運転を停止、減速、または射出成形機4を駆動する原動機の駆動トルクを制限する信号等を出力するようにしてもよい。このように構成することで、警告値に達する生産数や日時をオペレータが見落とした場合であっても、成形不良が増加する前に射出成形機4の動作を停止したり、射出成形機4の破損を防止する安全な待機状態とすることができる。
【0041】
また、複数の射出成形機4がネットワーク9を介して相互に接続されている場合、複数の射出成形機からデータを取得して其々の射出成形機の成形状態を1つの状態判定装置1で判定してもよいし、複数の射出成形機が備える其々の制御装置上に状態判定装置1を配置して、其々の射出成形機の成形状態を該射出成形機が備える其々の状態判定装置で判定してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 状態判定装置
3 制御装置
4 射出成形機
5 センサ
6 フォグコンピュータ
7 クラウドサーバ
9 ネットワーク
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 不揮発性メモリ
15,17,18,20 インタフェース
22 バス
70 表示装置
71 入力装置
72 外部機器
100 データ取得部
110 特徴量算出部
120 統計データ算出部
130 回帰分析部
140 判定部
300 取得データ記憶部
310 特徴量記憶部
320 統計条件記憶部
330 統計データ記憶部
340 回帰係数記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12