(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】制御装置、工作機械システム、および制御方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/409 20060101AFI20240528BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20240528BHJP
B23H 7/02 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G05B19/409 C
G05B19/18 X
B23H7/02 R
(21)【出願番号】P 2022557502
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2021038337
(87)【国際公開番号】W WO2022085604
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2020177325
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】久保田 里歩
(72)【発明者】
【氏名】平賀 薫
(72)【発明者】
【氏名】安部 博之
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-061017(JP,A)
【文献】特開2000-259564(JP,A)
【文献】特開2006-048385(JP,A)
【文献】特開2009-265943(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0190105(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18-19/42
B23H 7/02
G06F 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物を加工する工作機械を制御パラメータと加工プログラムとに基づいて制御することで、前記工作機械に自動運転を行わせる制御装置であって、
オペレータによる前記制御パラメータおよび前記加工プログラムの変更指示を受け付ける変更指示受付部と、
前記オペレータによる前記変更指示を累積的に記憶部に記憶させることで、前記制御パラメータおよび前記加工プログラムの変更履歴を前記記憶部に記憶させる履歴記憶制御部と、
前記オペレータの指示に応じて、前記変更履歴に基づくUndo/Redoを行うUndo/Redo処理部と、
前記Undo/Redoの実行によって前記工作機械が前記オペレータの意図しない動作をすることを防止するための所定の条件が成立したか否かを判定する判定部と、
前記所定の条件が成立したと前記判定部が判定した場合に、前記記憶部に記憶されている前記変更履歴を削除する履歴削除制御部と、
を備え
、
前記判定部は、前記自動運転の開始から前記自動運転の終了までの間における所定のタイミングにおいて、前記所定の条件が成立したと判定する、制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記判定部は、前記工作機械が
前記自動運転を開始したときに、前記所定の条件が成立したと判定する、制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の制御装置であって、
前記判定部は、前記自動運転の開始後は、前記自動運転による加工が終了したか否かを定期的に判定し、前記自動運転による加工が終了していないと判定するたびに、前記所定の条件が成立したと判定する、制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の制御装置であって、
前記判定部は、前記自動運転が一時停止している場合には、前記所定の条件が成立していると判定する、制御装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記履歴記憶制御部は、前記自動運転の開始から加工の終了までの間は、前記オペレータによる前記変更指示を前記記憶部に記憶させない、制御装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記判定部は、前記自動運転による加工が終了したときに、前記所定の条件が成立したと判定する、制御装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記制御パラメータおよび前記加工プログラムの少なくとも一方をオペレータが変更するための設定変更画面を表示部に表示させる表示制御部をさらに備え、
前記判定部は、前記表示制御部によって前記設定変更画面から別の画面への画面遷移が行われたときに、前記所定の条件が成立したと判定する、制御装置。
【請求項8】
加工対象物を加工する工作機械を制御パラメータと加工プログラムとに基づいて制御することで、前記工作機械に自動運転を行わせる制御装置であって、
オペレータによる前記制御パラメータおよび前記加工プログラムの変更指示を受け付ける変更指示受付部と、
前記オペレータによる前記変更指示を累積的に記憶部に記憶させることで、前記制御パラメータおよび前記加工プログラムの変更履歴を前記記憶部に記憶させる履歴記憶制御部と、
前記オペレータの指示に応じて、前記変更履歴に基づくUndo/Redoを行うUndo/Redo処理部と、
前記自動運転の開始から終了までの間、前記Undo/Redo処理部が前記Undo/Redoを行うことを禁止するUndo/Redo禁止部と、
を備える、制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載の制御装置であって、
前記Undo/Redoの実行によって前記工作機械が前記オペレータの意図しない動作をすることを防止するための所定の条件が成立したか否かを判定する判定部と、
前記所定の条件が成立したと前記判定部が判定した場合に、前記記憶部に記憶されている前記変更履歴を削除する履歴削除制御部と、
をさらに備える、制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の制御装置であって、
前記判定部は、前記工作機械が自動運転を開始したときに、前記所定の条件が成立したと判定する、制御装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の制御装置であって、
前記判定部は、前記自動運転の開始後は、前記自動運転による加工が終了したか否かを定期的に判定し、前記自動運転による加工が終了していないと判定するたびに、前記所定の条件が成立したと判定する、制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載の制御装置であって、
前記判定部は、前記自動運転が一時停止している場合には、前記所定の条件が成立していると判定する、制御装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の制御装置と、前記制御装置に制御されることで自動運転を行う工作機械と、を備える、工作機械システム。
【請求項14】
請求項13に記載の工作機械システムであって、
前記工作機械はワイヤ放電加工機である、工作機械システム。
【請求項15】
加工対象物を加工する工作機械を制御パラメータと加工プログラムとに基づいて制御することで、前記工作機械に自動運転を行わせる制御方法であって、
オペレータによる前記制御パラメータおよび前記加工プログラムの変更指示を受け付ける変更指示受付ステップと、
前記オペレータによる前記変更指示のUndo/Redoを行えるように、前記変更指示を累積的に記憶部に記憶させることで、前記制御パラメータおよび前記加工プログラムの変更履歴を前記記憶部に記憶させる履歴記憶ステップと、
前記Undo/Redoの実行によって前記工作機械が前記オペレータの意図しない動作をすることを防止するための所定の条件が成立したか否かを判定する判定ステップと、
前記所定の条件が成立したと前記判定ステップで判定された場合に、前記記憶部に記憶されている前記変更履歴を削除する履歴削除制御ステップと、
を含
み、
前記判定ステップでは、前記自動運転の開始から前記自動運転の終了までの間における所定のタイミングにおいて、前記所定の条件が成立したと判定する、制御方法。
【請求項16】
加工対象物を加工する工作機械を制御パラメータと加工プログラムとに基づいて制御することで、前記工作機械に自動運転を行わせる制御方法であって、
オペレータによる前記制御パラメータおよび前記加工プログラムの変更指示を受け付ける変更指示受付ステップと、
前記オペレータによる前記変更指示のUndo/Redoを行えるように、前記変更指示を累積的に記憶部に記憶させることで、前記制御パラメータおよび前記加工プログラムの変更履歴を前記記憶部に記憶させる履歴記憶ステップと、
前記自動運転の開始から終了までの間における前記Undo/Redoの実行を禁止するための処理が実行されるUndo/Redo禁止ステップと、
を含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械を制御する制御装置、該制御装置を有する工作機械システム、および工作機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-061017号公報には、制御パラメータと加工プログラムとに基づいて加工する工作機械の制御システムが開示されている。また、特開2020-061017号公報には、制御パラメータは変更可能であることが開示されている。さらに、特開2020-061017号公報には、変更された制御パラメータのUndo/Redoの操作が可能であることが開示されている。
【発明の概要】
【0003】
工作機械は、制御パラメータと加工プログラムとに基づいて加工を行う。制御パラメータと加工プログラムとは、工作機械の制御装置に記憶される。この場合、工作機械は、加工を自動運転により実行可能である。ここで、例えば自動運転の開始前の段取り作業中、または自動運転の開始後に、制御パラメータと加工プログラムとについて、オペレータの意図しないUndo/Redoが実行される場合がある。この場合、工作機械は、自動運転中にオペレータの意図しない動作をする。
【0004】
そこで本発明は、オペレータの意図しないUndo/Redoの実行を抑止する制御装置、工作機械システム、および制御方法を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の第1の態様は、加工対象物を加工する工作機械を制御パラメータと加工プログラムとに基づいて制御することで、前記工作機械に自動運転を行わせる制御装置であって、オペレータによる前記制御パラメータおよび前記加工プログラムの変更指示を受け付ける変更指示受付部と、前記オペレータによる前記変更指示を累積的に記憶部に記憶させることで、前記制御パラメータおよび前記加工プログラムの変更履歴を前記記憶部に記憶させる履歴記憶制御部と、前記オペレータの指示に応じて、前記変更履歴に基づくUndo/Redoを行うUndo/Redo処理部と、前記Undo/Redoの実行によって前記工作機械が前記オペレータの意図しない動作をすることを防止するための所定の条件が成立したか否かを判定する判定部と、前記所定の条件が成立したと前記判定部が判定した場合に、前記記憶部に記憶されている前記変更履歴を削除する履歴削除制御部と、を備える。
【0006】
本発明の第2の態様は、加工対象物を加工する工作機械を制御パラメータと加工プログラムとに基づいて制御することで、前記工作機械に自動運転を行わせる制御装置であって、オペレータによる前記制御パラメータおよび前記加工プログラムの変更指示を受け付ける変更指示受付部と、前記オペレータによる前記変更指示を累積的に記憶部に記憶させることで、前記制御パラメータおよび前記加工プログラムの変更履歴を前記記憶部に記憶させる履歴記憶制御部と、前記オペレータの指示に応じて、前記変更履歴に基づくUndo/Redoを行うUndo/Redo処理部と、前記自動運転の開始から終了までの間、前記Undo/Redo処理部が前記Undo/Redoを行うことを禁止するUndo/Redo禁止部と、を備える。
【0007】
本発明の第3の態様は、工作機械システムであって、第1の態様または第2の態様の制御装置と、前記制御装置に制御されることで自動運転を行う工作機械と、を備える。
【0008】
本発明の第4の態様は、加工対象物を加工する工作機械を制御パラメータと加工プログラムとに基づいて制御することで、前記工作機械に自動運転を行わせる制御方法であって、オペレータによる前記制御パラメータおよび前記加工プログラムの変更指示を受け付ける変更指示受付ステップと、前記オペレータによる前記変更指示のUndo/Redoを行えるように、前記変更指示を累積的に記憶部に記憶させることで、前記制御パラメータおよび前記加工プログラムの変更履歴を前記記憶部に記憶させる履歴記憶ステップと、前記Undo/Redoの実行によって前記工作機械が前記オペレータの意図しない動作をすることを防止するための所定の条件が成立したか否かを判定する判定ステップと、前記所定の条件が成立したと前記判定ステップで判定された場合に、前記記憶部に記憶されている前記変更履歴を削除する履歴削除制御ステップと、を含む。
【0009】
本発明の各態様によれば、オペレータの意図しないUndo/Redoの実行を抑止する制御装置、工作機械システム、および制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態の工作機械システムの全体構成図である。
【
図2】
図2Aは、第1の実施の形態の表示部に表示される設定変更画面の第1例を示す模式図である。
図2Bは、第1の実施の形態の表示部に表示される設定変更画面の第2例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態の制御方法の流れを例示するフローチャートである。
【
図4】
図4は、変形例1の制御方法の第1例の流れを例示するフローチャートである。
【
図5】
図5は、変形例1の制御方法の第2例の流れを例示するフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2の実施の形態の工作機械システムの概略構成図である。
【
図7】
図7は、第2の実施の形態の制御方法の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の制御装置、工作機械システム、および制御方法について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0012】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態の工作機械システム10の全体構成図である。
図1に示した複数の方向軸線のうち、X軸線と、Y軸線と、は水平面と平行する方向軸線である。Z軸線は、重力方向と平行する方向軸線である。X軸線と、Y軸線と、Z軸線とは互いに直交する。また、
図1のU軸線は、X軸線に平行な方向軸線である。V軸線は、Y軸線に平行な方向軸線である。
【0013】
本実施の形態の工作機械システム10は、工作機械12と、制御装置14とを備える(
図1参照)。本実施の形態の工作機械12は、ワイヤ放電加工機である。したがって、以下では工作機械12を指してワイヤ放電加工機12とも記載する。ただし、ワイヤ放電加工機12は例示である。したがって、工作機械12の機種は、ワイヤ放電加工機に限定されない。
【0014】
ワイヤ放電加工機12は、ワイヤ電極16と加工対象物Wとの極間gに発生させる放電によって、加工対象物Wに対して放電加工を施す工作機械12である。ワイヤ放電加工機12は、テーブル18と、上側ガイド20と、下側ガイド22と、電源24とを備える(
図1参照)。
【0015】
テーブル18は、加工対象物Wを支持する支持台である。上側ガイド20は、テーブル18のZ方向の上方でワイヤ電極16をガイドするワイヤガイドである。下側ガイド22は、テーブル18のZ方向の下方でワイヤ電極16をガイドするワイヤガイドである。ワイヤ電極16は、上側ガイド20と下側ガイド22との間で張架される。これにより、ワイヤ電極16は、加工対象物Wと共に極間gを形成する。
【0016】
ワイヤ放電加工機12は、ワイヤ電極16をZ方向に沿って走行させるワイヤ送り機構をさらに備える。ただし、本実施の形態においてワイヤ送り機構の図示は省略される。ワイヤ送り機構は、例えば複数のローラと、モータとを有する。ここで、各ローラには、ワイヤ電極16が架け渡される。モータは、各ローラの回転トルクを制御する。
【0017】
電源24は、ワイヤ電極16と加工対象物Wとの各々に電圧を印加するための要素である。例えば電源24は、電圧パルスを発生可能な電気回路を有する。極間gには、電源24の電圧パルスに応じて、前述の放電が発生する。
【0018】
ワイヤ放電加工機12は、テーブル移動機構26と、上側ガイド移動機構28と、下側ガイド移動機構30とをさらに備える。
【0019】
テーブル移動機構26は、テーブル18をX方向とY方向との各方向に沿って移動させるための機構である。テーブル移動機構26は、例えばX軸モータ32と、Y軸モータ34を有する。X軸モータ32は、テーブル18をX方向に沿って移動させるための駆動源である。Y軸モータ34は、テーブル18をY方向に沿って移動させるための駆動源である。テーブル18を水平方向に移動させることにより、水平方向に関して、テーブル18上の加工対象物Wとワイヤ電極16との相対移動が実現される。
【0020】
上側ガイド移動機構28は、上側ガイド20をU方向とV方向との各方向に沿って移動させるための機構である。上側ガイド移動機構28は、例えばU軸モータ36UPPERと、V軸モータ38UPPERとを有する。U軸モータ36UPPERは、上側ガイド20をU方向に沿って移動させるための駆動源である。V軸モータ38UPPERは、上側ガイド20をV方向に沿って移動させるための駆動源である。下側ガイド移動機構30は、下側ガイド22をU方向とV方向との各方向に移動させるための機構である。下側ガイド移動機構30は、例えばU軸モータ40LOWERと、V軸モータ42LOWERとを有する。U軸モータ40LOWERは、下側ガイド22をU方向に沿って移動させるための駆動源である。V軸モータ42LOWERは、下側ガイド22をV方向に沿って移動させるための駆動源である。上側ガイド移動機構28と下側ガイド移動機構30とは、上側ガイド20と下側ガイド22との水平方向での相対位置を一致させることができる。これにより、上側ガイド20と下側ガイド22との間において、ワイヤ電極16がZ軸線に平行になる。また、上側ガイド移動機構28と下側ガイド移動機構30とは、上側ガイド20と下側ガイド22との水平方向での相対位置を異ならせることもできる。これにより、上側ガイド20と下側ガイド22との間において、ワイヤ電極16がZ軸線に対して傾斜する。
【0021】
以上のワイヤ放電加工機12は、ワイヤ電極16を加工対象物Wに対して相対移動させつつ、極間gに放電を発生させる。これにより、ワイヤ放電加工機12は、ワイヤ電極16の相対移動の経路(加工経路)に沿った形状へと加工対象物Wを加工する。また、ワイヤ放電加工機12は、前述の通りZ軸線に対するワイヤ電極16の傾斜角度を容易に調節可能である。したがって、ワイヤ放電加工機12は、いわゆるテーパ加工を容易に実施可能である。
【0022】
制御装置14は、ワイヤ放電加工機12を制御することで、ワイヤ放電加工機12に自動運転を行わせる電子装置である。制御装置14は、表示部44と、操作部46と、記憶部48と、演算部50とを備える(
図1参照)。
【0023】
表示部44は、情報を表示する。表示部44は、例えば液晶や有機EL(OEL:Organic Electro-Luminescence)のモニタを有する。
【0024】
操作部46は、工作機械システム10のオペレータによる情報入力を受け付ける。操作部46は、例えばキーボードと、マウスと、タッチパネルとを有する。タッチパネルは、例えば表示部44のモニタに設置される。
【0025】
記憶部48は、情報を記憶する。記憶部48は、メモリを有する。ここで、メモリは、例えばRAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)とを含む。本実施の形態の記憶部48は、加工プログラム52と、制御パラメータ54と、変更履歴56とを記憶する。変更履歴56は、加工プログラム52と制御パラメータ54との変更履歴である。
【0026】
加工プログラム52は、前述の加工経路が規定される所定のプログラムである。オペレータは、操作部46を介して加工プログラム52を変更(編集)可能である。加工プログラム52の変更内容は、履歴記憶制御部64により、変更履歴56として記憶部48に累積的に記憶される。なお、履歴記憶制御部64の説明は後述される。
【0027】
制御パラメータ54は、ワイヤ放電加工機12の制御に必要な情報のうち、オペレータが指定可能であって加工経路以外の情報全般を指す。記憶部48は、複数種類の制御パラメータ54(54A、54B、・・・)を記憶可能である(
図1参照)。制御パラメータ54の種類には、例えば電圧パルスのパルス間隔(休止時間)と、ワイヤ電極16の対加工対象物Wの相対移動速度(送り速度)とがある。ただし、制御パラメータ54は、休止時間と送り速度とに限定されない。例えば制御パラメータ54は、ワイヤ電極16の径(ワイヤ径)または材質に関する情報を含んでもよい。また、制御パラメータ54は、加工対象物Wの材質または板厚に関する情報を含んでもよい。オペレータは、操作部46を介して制御パラメータ54を変更可能である。制御パラメータ54の変更内容は、後述される履歴記憶制御部64により、変更履歴56として記憶部48に累積的に記憶される。
【0028】
演算部50は、情報を演算処理する。演算部50は、プロセッサを有する。ここで、プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)と、GPU(Graphics Processing Unit)とを含む。演算部50は、運転制御部58と、表示制御部60と、変更指示受付部62と、履歴記憶制御部64と、Undo/Redo処理部66と、判定部68と、履歴削除制御部70とを備える(
図1参照)。運転制御部58と、表示制御部60と、変更指示受付部62と、履歴記憶制御部64と、Undo/Redo処理部66と、判定部68と、履歴削除制御部70とは、演算部50が所定の制御プログラムを実行することにより、仮想的に実現される。ここで、所定の制御プログラムは、演算部50が読み取れるように、記憶部48に予め記憶される(不図示)。
【0029】
運転制御部58は、加工プログラム52と制御パラメータ54とに基づいてワイヤ放電加工機12を制御することにより、ワイヤ放電加工機12に自動運転を行わせる。運転制御部58は、例えばオペレータが操作部46を介して自動運転の開始を指示した場合に、記憶部48に記憶された加工プログラム52と制御パラメータ54とを参照する。運転制御部58は、参照した加工プログラム52と制御パラメータ54とに基づいて、ワイヤ放電加工機12の自動運転を開始する。その自動運転において、運転制御部58は、例えば電源24に関する制御パラメータ54に基づいて休止時間を自動制御する。また、運転制御部58は、加工プログラム52に基づいて、ワイヤ電極16の相対移動(テーブル移動機構26)を自動制御する。
【0030】
表示制御部60は、設定変更画面72(
図2A、
図2B参照)を表示部(モニタ)44に表示させる。設定変更画面72は、加工プログラム52と制御パラメータ54との少なくとも一方をオペレータが変更するための画面である。また、変更指示受付部62は、オペレータによる操作部46の操作に基づいて、加工プログラム52と制御パラメータ54との変更指示を受け付ける。これにより、オペレータは、設定変更画面72を見ながら、変更指示受付部62に変更指示を送ることができる。変更指示受付部62は、オペレータの変更指示に基づいて、加工プログラム52と制御パラメータ54とを変更(更新)する。
【0031】
図2Aは、第1の実施の形態の表示部44に表示される設定変更画面72の第1例を示す模式図である。
図2Bは、第1の実施の形態の表示部44に表示される設定変更画面72の第2例を示す模式図である。
【0032】
設定変更画面72は、例えば設定変更画面72A(
図2A参照)と、設定変更画面72B(
図2B参照)とを有する。なお、設定変更画面72Aのユーザインターフェースは、
図2Aの例示に限定されない。また、設定変更画面72Bのユーザインターフェースは、
図2Bの例示に限定されない。
【0033】
設定変更画面72Aは、オペレータが制御パラメータ54を変更する場合に、表示部44に表示される。ここで、表示制御部60は、表示部44に設定変更画面72Aを表示させる。設定変更画面72Aには、制御パラメータ54を指定する項目が複数表示される。ここで、複数の項目は、例えば前述の休止時間を指定するための項目と、送り速度を指定するための項目とを含む。オペレータは、設定変更画面72Aを見ながら、操作部46を介して各項目に対応する制御パラメータ54を指定することができる。ここでいう制御パラメータ54の指定は、オペレータが既に指定した制御パラメータ54を変更する作業を含む。
【0034】
設定変更画面72Bは、オペレータが加工プログラム52を変更(編集)する場合に、表示部44に表示される。ここで、表示制御部60は、設定変更画面72Bを表示部44に表示させる。設定変更画面72Bには、加工プログラム52の内容が表示される。すなわち、設定変更画面72Bには、加工経路を表現するコードが表示される。オペレータは、設定変更画面72Bを見ながら、操作部46を介して加工プログラム52の変更(編集)作業を行うことができる。
【0035】
設定変更画面72(72A、72B)は、2つのアイコン74(74UNDO、74REDO)を含む。2つのアイコン74は、設定変更画面72Aと、設定変更画面72Bとの両方に共通して表示される。アイコン74UNDOは、オペレータがUndoを指示するためのアイコン74である。オペレータは、アイコン74UNDOをマウスでクリックする、またはタッチパネルをタッチすることで、制御装置14にUndoの実行を指示できる。また、アイコン74REDOは、オペレータがRedoを指示するためのアイコン74である。オペレータは、アイコン74REDOをマウスでクリックする、またはタッチパネルをタッチすることで、制御装置14にRedoの実行を指示できる。
【0036】
ここで、Undo/Redoが説明される。ただし、Undo/Redoは既知であるため、簡単に説明される。「Undo/Redo」は、「Undo」と「Redo」との2種類の処理を含む処理である。Undoは、変更指示を取り消す処理である。Undoが実行されると、加工プログラム52または制御パラメータ54は、変更指示が出される前の状態に戻される。Undoが連続で実行されると、加工プログラム52または制御パラメータ54の変更指示は、Undoの実行回数分の数だけ取り消される。一方、Redoは、上記のUndoを取り消す処理である。Undoの実行後にRedoが実行されると、加工プログラム52または制御パラメータ54は、Undoが実行される前の状態に戻される。また、Redoが連続で実行されると、その実行回数分の数だけUndoの実行が取り消される。
【0037】
制御装置14がUndo/Redoを実行するためには、オペレータの過去の変更指示の累積的な記録が必要である。本実施の形態では、履歴記憶制御部64が、変更履歴56を記憶部48に記憶させる。すなわち、履歴記憶制御部64は、オペレータによる変更指示を累積的に記憶部48に記憶させることで、制御パラメータ54および加工プログラム52の変更履歴56を記憶部48に記憶させる。
【0038】
Undo/Redo処理部66は、本実施の形態においてUndo/Redo処理を行う。Undo/Redo処理部66は、オペレータがアイコン74UNDOを押した場合に、Undoを実行する。ここで、Undo/Redo処理部66は、必要に応じて、変更履歴56を参照する。また、Undo/Redo処理部66は、オペレータがアイコン74REDOを押した場合に、Redoを実行する。ここでも、Undo/Redo処理部66は、必要に応じて、変更履歴56を参照する。
【0039】
判定部68は、所定の条件が成立したか否かを判定する。ここで、所定の条件は、Undo/Redoが実行されることに起因してワイヤ放電加工機12がオペレータの意図しない動作をすることを防止するために決められた条件である。履歴削除制御部70は、所定の条件が成立したと判定部68が判定した場合に、記憶部48に記憶されている変更履歴56を削除する。
【0040】
所定の条件は、Undo/Redoの実行が禁止される期間の開始タイミングを指定する。変更履歴56は、所定の条件の成立時に削除される。したがって、Undo/Redo処理部66は、所定の条件の成立後において、変更履歴56を参照することができない。そのため、Undo/Redo処理部66によるUndo/Redoの実行は、所定の条件の成立以降において実質的に禁止される。その結果、所定の条件の成立以降では、オペレータが意図しないUndo/Redoの実行が防止される。したがって、ワイヤ放電加工機12がオペレータの意図しない動作をするおそれが低減される。
【0041】
以下において、所定の条件の具体例が説明される。自動運転による加工の開始からその加工の終了までの間にUndo/Redoが実行されると、ワイヤ放電加工機12は、オペレータの意図しない動作をする可能性がある。これを考慮すると、所定の条件は、例えば「ワイヤ放電加工機12の自動運転の開始」である。この場合、判定部68は、ワイヤ放電加工機12が自動運転を開始した場合に、所定の条件が成立したと判定する。また、履歴削除制御部70は、ワイヤ放電加工機12が自動運転を開始した場合に、記憶部48に記憶されている変更履歴56を削除する。これにより、自動運転中におけるUndo/Redoの実行が実質的に禁止される。
【0042】
図3は、第1の実施の形態の制御方法の流れを例示するフローチャートである。
【0043】
以下に、
図3に示される制御方法が説明される。制御装置14は、
図3の制御方法を実行可能である。
図3に示される制御方法は、変更指示受付ステップS1と、履歴記憶ステップS2と、判定ステップS3と、履歴削除制御ステップS4とを含む。
【0044】
変更指示受付ステップS1と、履歴記憶ステップS2とは、オペレータの準備作業(いわゆる「段取り」)に含まれる。段取りは、ワイヤ放電加工機12が自動運転を開始する前に行われる。変更指示受付ステップS1では、変更指示受付部62が、オペレータによる制御パラメータ54と加工プログラム52との変更指示を受け付ける。ここで、履歴記憶ステップS2が既に一回以上行われている場合(後述)、記憶部48には変更履歴56が既に記憶されている。この場合、オペレータは、必要に応じてUndo/Redoの実行をUndo/Redo処理部66に指示してもよい。
【0045】
履歴記憶ステップS2では、履歴記憶制御部64が、変更履歴56を記憶部48に記憶させる。これにより、Undo/Redo処理部66は、オペレータの指示に応じて、Undo/Redoを行うことができる。
【0046】
変更指示受付ステップS1と履歴記憶ステップS2とは、制御パラメータ54と加工プログラム52との設定作業が終了(
図3の「変更終了?」:YES)するまで、繰り返し行ってもよい(
図3参照)。
【0047】
判定ステップS3では、判定部68が、ワイヤ放電加工機12が自動運転を開始したか否か(所定の条件が成立したか否か)を判定する。ここで自動運転を開始したと判定された場合(S3:YES)は履歴削除制御ステップS4が実行される。一方、ここで自動運転は開始されていないと判定された場合(S3:NO)は、本実施の形態の制御方法はそのまま終了する(RETURN)。
【0048】
履歴削除制御ステップS4では、履歴削除制御部70が、記憶部48に記憶されている変更履歴56を削除する。これにより、履歴削除制御ステップS4以降において、オペレータが意図しないUndo/Redoの実行が防止される。履歴削除制御ステップS4は、本実施の形態では前述の通り、自動運転の開始時に実行される。
【0049】
以上の通り、本実施の形態によれば、オペレータの意図しないUndo/Redoの実行を抑止することで、工作機械12が自動運転中にオペレータの意図しない動作をすることを低減する制御装置14が提供される。また、その制御装置14を含む工作機械システム10が提供される。また、制御装置14により実行可能な制御方法が提供される。
【0050】
[変形例]
以上、本発明の一例として第1の実施の形態が説明された。第1の実施の形態には、多様な変更または改良を加えることが可能である。また、その様な変更または改良を加えた形態が本発明の技術的範囲に含まれ得ることは、請求の範囲の記載から明らかである。
【0051】
以下には、第1の実施の形態に係る変形例が記載される。ただし、第1の実施の形態と重複する説明は、以下の説明では可能な限り省略される。第1の実施の形態で説明済の構成要素の参照符号は、特に断らない限り、第1の実施の形態から流用される。
【0052】
(変形例1)
所定の条件は「工作機械12の自動運転が開始されたこと」(第1の実施の形態)に限定されない。
【0053】
例えば判定部68は、自動運転による加工の開始後において、加工が終了したか否かを定期的に判定してもよい。この場合、判定部68は、自動運転による加工が終了していないと判定するたびに、所定の条件が成立したと判定してもよい。この場合、履歴削除制御部70は、所定の条件が成立したと判定されるたびに、変更履歴56を削除する。つまり、履歴削除制御部70は、自動運転による加工の実行中において、定期的に、変更履歴56を削除する。工作機械システム10の設計者またはオペレータは、判定部68が判定を行う時間間隔を予め吟味して決めてもよい。
【0054】
本変形例によれば、自動運転中におけるオペレータの意図した変更指示を許容しつつ、且つ、オペレータの意図しないUndo/Redoの実行は防止される。つまり、第1の実施の形態の制御装置14は、自動運転の開始後におけるUndo/Redoの実行を防止する。しかしながら、例えば自動運転の開始後において、オペレータが設定ミスに気付く場合がある。そのような場合を考慮すると、自動運転中において加工プログラム52と制御パラメータ54とをオペレータが意図的に変更することは、許容されるのが好ましい。ただし、その場合、自動運転開始後のオペレータの変更指示に基づいて変更履歴56が新たに記憶部48に記憶される。これにより、制御装置14は、再びUndo/Redoを実行可能になる。ここで、本変形例の履歴削除制御部70は、工作機械システム10が自動運転の実行中である場合に、変更履歴56を定期的に削除する。削除処理を繰り返す時間間隔は、Undo/Redoが実行されることがないように、できるだけ小さいことが好ましい。これにより、制御装置14は、自動運転中におけるオペレータの意図した変更指示を許容しつつ、且つ、オペレータの意図しないUndo/Redoの実行を防止する。
【0055】
なお、工作機械システム10は、自動運転を一時停止する場合がある。工作機械システム10は例えば次の理由(1)~(4)により、自動運転を一時停止する。(1)自動運転の一時停止を含むプログラムを工作機械システム10が実行する場合。(2)加工中にアラームが発生した場合。(3)オペレータが停止指示を出した場合。(4)ワイヤ電極16が断線した場合。自動運転の一時停止中は、自動運転制御は中断されているが加工が終了していない状況である。したがって、オペレータが意図的に変更指示を出す場合を除き、自動運転の一時停止中において制御パラメータ54と加工プログラム52とが変更されることは好ましくない。以上の理由から、判定部68は、自動運転が一時停止している場合であっても所定の条件が成立していると判定するのが好ましい。これにより、履歴削除制御部70は、自動運転の一時停止中においても変更履歴56を削除する。その結果、オペレータの意図しないUndo/Redoの実行がより好適に防止される。自動運転が一時停止しているか否かの判定は、定期的に行ってもよい。
【0056】
図4は、変形例1の制御方法の第1例の流れを例示するフローチャートである。
【0057】
上記例に係る判定部68は、自動運転の開始後において、加工が終了したか否かを判定する(
図4のS3’)。ここで、仮に自動運転が一時停止中である場合、判定部68は、加工が終了していないと判定するのが好ましい。加工が終了していないと判定された場合(S3’:NO)、履歴削除制御部70が変更履歴56を削除する(
図4のS4’)。一方、加工が終了したと判定された場合(S3’:YES)、制御方法は終了する(RETURN)。
【0058】
また、本変形例の別の例として、履歴記憶制御部64は、自動運転の開始から加工の終了までの間において、変更指示を記憶部48に記憶させなくてもよい。これにより、自動運転中におけるオペレータの意図した変更指示を許容しつつ、且つ、オペレータの意図しないUndo/Redoの実行は防止される。つまり、前述の通り、自動運転中において加工プログラム52と制御パラメータ54とをオペレータが意図的に変更することは、許容されるのが好ましい。ただし、オペレータの変更指示に基づく変更履歴56が記憶部48に記憶されると、それ以降においてUndo/Redoの実行を防止することができない。そこで、履歴記憶制御部64は、自動運転の開始から加工の終了までの間に出された変更指示についての変更履歴56を記憶部48に記憶させない。これにより、本変形例に係る制御装置14は、自動運転中におけるオペレータの意図した変更指示を許容しつつ、且つ、オペレータの意図しないUndo/Redoの実行は防止することができる。
【0059】
図5は、変形例1の制御方法の第2例の流れを例示するフローチャートである。
【0060】
自動運転の開始以降において、上記例に係る履歴記憶制御部64は、加工が終了するまでの間、オペレータによる変更指示を累積的に記憶しない(
図5のS5)。判定部68は、自動運転の開始後、加工が終了したか否かを判定する(
図5のS6)。ここで、加工が終了したと判定された場合には(S6:YES)、変更指示の記憶が許可される(
図5のS7)。これ以降において、変更指示が出された場合、履歴記憶制御部64は、変更指示に基づいて変更履歴56を更新する。一方、加工が終了していないと判定された場合には(S6:NO)、変更指示の記憶が継続して禁止される。
【0061】
図5の例において、変更履歴56の削除タイミング(
図5のS4’’)は、自動運転の開始時である。これにより、自動運転中においてUndo/Redoが実行されることが防止される。なお、
図5の例において、変更履歴56は、
図4の例と同様に、定期的に削除されてもよい。
【0062】
(変形例2)
判定部68は、自動運転による加工が終了した場合に、所定の条件が成立したと判定してもよい。この場合、履歴削除制御部70は、自動運転による加工が終了した場合に変更履歴56を削除する。
【0063】
工作機械システム10は、1回目の加工を完了した後に、2回目の加工を行ってもよい。ここで、加工プログラム52と制御パラメータ54とは、1回目の加工と2回目の加工とで異なってもよい。この場合、オペレータは、1回目の加工の終了後に、2回目の加工の段取りを行う。ただし、2回目の加工の段取り作業中においてオペレータが不用意にUndo/Redoを指示すると、1回目の加工で用いられていた加工プログラム52と制御パラメータ54とが制御装置14に設定される可能性がある。この場合、2回目の加工中において加工不良が発生する可能性がある。
【0064】
その点、本変形例によれば、自動運転による加工が終了した場合に変更履歴56が削除される。したがって、オペレータが加工プログラム52と制御パラメータ54との設定作業を行う場合に、直前の自動運転で使用されていた加工プログラム52と制御パラメータ54とが制御装置14に設定されることが防止される。
【0065】
(変形例3)
表示制御部60は、複数の画面を、画面遷移可能に表示部44に表示させてもよい。ここで、複数の画面は、設定変更画面72を含む。判定部68は、設定変更画面72から別の画面への画面遷移が行われた場合に、所定の条件が成立したと判定する。また、履歴削除制御部70は、設定変更画面72から別の画面への画面遷移が行われた場合に、変更履歴56を削除する。
【0066】
本変形例によれば、設定変更画面72から別の画面への画面遷移が行われた後における、遷移前の変更履歴56に基づくオペレータの意図しないUndo/Redoの実行が防止される。例えば、オペレータが設定変更画面72A(
図2A参照)を見ながら制御パラメータ54を変更する。その後、表示制御部60が、設定変更画面72Aから設定変更画面72B(
図2B参照)へと画面を遷移させる。設定変更画面72Aにおいてオペレータが変更した制御パラメータ54は、設定変更画面72Bに表示されない。ここで仮に、制御パラメータ54についての変更履歴56が、設定変更画面72Bへの画面遷移後に記憶部48に残ったままであるとする。この場合、オペレータが設定変更画面72B上で不用意にUndo/Redoを指示すると、制御パラメータ54が変更される。制御パラメータ54は設定変更画面72Bに表示されないので、オペレータは、制御パラメータ54が意図せず変更されたことに気付きにくい。その点、本変形例によれば、設定変更画面72Aから他画面(72B)への画面遷移が行われた場合に、変更履歴56が削除される。これにより、画面遷移先の他画面において、設定変更画面72A上で変更された制御パラメータ54のUndo/Redoが防止される。
【0067】
(変形例4)
ワイヤ放電加工機(工作機械)12の構成要素は、第1の実施の形態で説明された構成要素に限定されない。例えば制御装置14は、ワイヤ送り機構(第1の実施の形態参照)を制御パラメータ54に基づいて自動制御するための構成要素を備えてもよい。
【0068】
(変形例5)
前述の各変形例は、矛盾の生じない範囲内で適宜組み合わされてもよい。
【0069】
[第2の実施の形態]
以下には、第2の実施の形態の工作機械システム10’が説明される。ただし、第1の実施の形態と重複する説明は、以下の説明では可能な限り省略される。第1の実施の形態で説明済の構成要素の参照符号は、特に断らない限り、第1の実施の形態から流用される。
【0070】
図6は、第2の実施の形態の工作機械システム10’の概略構成図である。
【0071】
本実施の形態の工作機械システム10’は、工作機械12と、制御装置14’とを備える。工作機械12は、例えばワイヤ放電加工機である。
【0072】
制御装置14’は、履歴削除制御部70に代えてUndo/Redo禁止部76を備える点で、第1の実施の形態の制御装置14(
図1参照)と相違する。したがって、以下では主にUndo/Redo禁止部76が説明される。
【0073】
Undo/Redo禁止部76は、運転制御部58等と同様に、プログラムに基づいて仮想的に実現される。Undo/Redo禁止部76は、自動運転の開始から終了までの間において、Undo/Redoを禁止する。Undo/Redo禁止部76は、Undo/Redo処理部66に指示することで、Undo/Redoを禁止する。なお、自動運転の開始から終了までの間に該当するか否かの判定は、例えば判定部68が行う。また、上記の自動運転の終了とは、自動運転の一時停止ではなく、自動運転により予定された加工が終了することをいう。
【0074】
図7は、第2の実施の形態の制御方法の流れを例示するフローチャートである。
【0075】
制御装置14’は、
図7の制御方法を実行可能である。
図7の制御方法は、変更指示受付ステップS1と、履歴記憶ステップS2と、第1判定ステップS13と、Undo/Redo禁止ステップS14と、第2判定ステップS15とを含む。なお、変更指示受付ステップS1と、履歴記憶ステップS2とは、第1の実施の形態において説明済である。したがって、変更指示受付ステップS1と、履歴記憶ステップS2との説明は割愛される。
【0076】
第1判定ステップS13では、判定部68が、自動運転が開始したか否かを判定する。ここで自動運転が開始したと判定された場合には(S13:YES)、Undo/Redo禁止ステップS14が実行される。一方、自動運転が開始していないと判定された場合には(S13:NO)、本実施の形態の制御方法はそのまま終了する(RETURN)。
【0077】
Undo/Redo禁止ステップS14では、Undo/Redo禁止部76が、Undo/Redo処理部66によるUndo/Redoの実行を禁止する。第2判定ステップS15では、自動運転が終了したか否かを判定部68が判定する。ここで自動運転が終了したと判定されると(S15:YES)、本実施の形態の制御方法は終了する(RETURN)。一方、自動運転が終了していないと判定されると(S15:NO)、Undo/Redo禁止ステップS14が継続される。
【0078】
本実施の形態によれば、変更履歴56を削除するまでもなく、自動運転の開始から終了までの間におけるオペレータの意図しないUndo/Redoの実行が防止される。
【0079】
なお、制御装置14’は、履歴削除制御部70(第1の実施の形態参照)をさらに備えてもよい。その場合、履歴削除制御部70は、自動運転の開始から終了までの間に、変更履歴56を削除する。自動運転の開始から終了までの間には、自動運転の終了時が含まれる。所定の条件が成立したとするタイミングは、自動運転の開始から終了までの間であれば特に限定されない。すなわち、変更履歴56を削除するタイミングは、自動運転の開始から終了までの間であれば特に限定されない。
【0080】
履歴削除制御部70が変更履歴56を削除することで、加工プログラム52と制御パラメータ54との誤設定のおそれが低減される。つまり、本実施の形態では、自動運転中のUndo/RedoはUndo/Redo禁止部76によって禁止される。しかし、自動運転開始前までに作成された変更履歴56は削除されない。この場合、1回目の自動運転の終了後に行われる2回目の加工の段取り作業中において、オペレータが意図しないUndo/Redoを指示することで、加工プログラム52と制御パラメータ54とが誤設定される可能性がある。その点、履歴削除制御部70は、1回目の自動運転に係る変更履歴56を削除する。これにより、2回目の加工の段取り作業中において、加工プログラム52と制御パラメータ54が誤設定されるおそれが低減される。
【0081】
また、第1の実施の形態について前述した変形例は、矛盾の生じない範囲内であれば、本実施の形態にも適宜適用され得る。
【0082】
[実施の形態から得られる発明]
上記実施の形態および変形例から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0083】
<第1の発明>
加工対象物(W)を加工する工作機械(12)を制御パラメータ(54)と加工プログラム(52)とに基づいて制御することで、前記工作機械に自動運転を行わせる制御装置(14)であって、オペレータによる前記制御パラメータおよび前記加工プログラムの変更指示を受け付ける変更指示受付部(62)と、前記オペレータによる前記変更指示を累積的に記憶部(48)に記憶させることで、前記制御パラメータおよび前記加工プログラムの変更履歴(56)を前記記憶部に記憶させる履歴記憶制御部(64)と、前記オペレータの指示に応じて、前記変更履歴に基づくUndo/Redoを行うUndo/Redo処理部(66)と、前記Undo/Redoの実行によって前記工作機械が前記オペレータの意図しない動作をすることを防止するための所定の条件が成立したか否かを判定する判定部(68)と、前記所定の条件が成立したと前記判定部が判定した場合に、前記記憶部に記憶されている前記変更履歴を削除する履歴削除制御部(70)と、を備える。
【0084】
これにより、オペレータの意図しないUndo/Redoの実行を抑止する制御装置が提供される。
【0085】
前記判定部は、前記工作機械が自動運転を開始したときに、前記所定の条件が成立したと判定してもよい。
【0086】
前記判定部は、前記自動運転の開始後は、前記自動運転による加工が終了したか否かを定期的に判定し、前記自動運転による加工が終了していないと判定するたびに、前記所定の条件が成立したと判定してもよい。これにより、自動運転中におけるオペレータの意図した変更指示を許容しつつ、且つ、オペレータの意図しないUndo/Redoの実行は防止することができる。
【0087】
前記判定部は、前記自動運転が一時停止している場合には、前記所定の条件が成立していると判定してもよい。これにより、オペレータの意図しないUndo/Redoの実行がより好適に防止されるようになる。
【0088】
前記履歴記憶制御部は、前記自動運転の開始から加工の終了までの間は、前記オペレータによる前記変更指示を前記記憶部に記憶させなくてもよい。これにより、自動運転中におけるオペレータの意図した変更指示を許容しつつ、且つ、オペレータの意図しないUndo/Redoの実行は防止することができる。
【0089】
前記判定部は、前記自動運転による加工が終了したときに、前記所定の条件が成立したと判定してもよい。これにより、オペレータが加工プログラムおよび制御パラメータの設定作業を行う場合に、直前の自動運転で使用されていた加工プログラムと制御パラメータとが設定されることが防止される。
【0090】
第1の発明は、前記制御パラメータおよび前記加工プログラムの少なくとも一方をオペレータが変更するための設定変更画面(72)を表示部(44)に表示させる表示制御部(60)をさらに備え、前記判定部は、前記表示制御部によって前記設定変更画面から別の画面への画面遷移が行われたときに、前記所定の条件が成立したと判定してもよい。これにより、設定変更画面上で変更した制御パラメータと加工プログラムとが、設定変更画面から画面遷移した後に意図せず変更されることが防止される。
【0091】
<第2の発明>
加工対象物(W)を加工する工作機械(12)を制御パラメータ(54)と加工プログラム(52)とに基づいて制御することで、前記工作機械に自動運転を行わせる制御装置(14’)であって、オペレータによる前記制御パラメータおよび前記加工プログラムの変更指示を受け付ける変更指示受付部(62)と、前記オペレータによる前記変更指示を累積的に記憶部(48)に記憶させることで、前記制御パラメータおよび前記加工プログラムの変更履歴(56)を前記記憶部に記憶させる履歴記憶制御部(64)と、前記オペレータの指示に応じて、前記変更履歴に基づくUndo/Redoを行うUndo/Redo処理部(66)と、前記自動運転の開始から終了までの間、前記Undo/Redo処理部が前記Undo/Redoを行うことを禁止するUndo/Redo禁止部(76)と、を備える。
【0092】
これにより、オペレータの意図しないUndo/Redoの実行を抑止する制御装置が提供される。
【0093】
第2の発明は、前記Undo/Redoの実行によって前記工作機械が前記オペレータの意図しない動作をすることを防止するための所定の条件が成立したか否かを判定する判定部(68)と、前記所定の条件が成立したと前記判定部が判定した場合に、前記記憶部に記憶されている前記変更履歴を削除する履歴削除制御部(70)と、を備えてもよい。これにより、オペレータが加工プログラムと制御パラメータとの設定作業を行う場合に、直前の自動運転で使用されていた加工プログラムと制御パラメータとが設定されることが防止される。
【0094】
第2の発明の前記判定部は、前記工作機械が自動運転を開始したときに、前記所定の条件が成立したと判定してもよい。
【0095】
第2の発明の前記判定部は、前記自動運転の開始後は、前記自動運転による加工が終了したか否かを定期的に判定し、前記自動運転による加工が終了していないと判定するたびに、前記所定の条件が成立したと判定してもよい。これにより、自動運転中におけるオペレータの意図した変更指示を許容しつつ、且つ、オペレータの意図しないUndo/Redoの実行は防止することができる。
【0096】
第2の発明の前記判定部は、前記自動運転が一時停止している場合には、前記所定の条件が成立していると判定してもよい。これにより、オペレータの意図しないUndo/Redoの実行がより好適に防止されるようになる。
【0097】
<第3の発明>
工作機械システム(10、10’)であって、第1の発明または第2の発明の制御装置(14、14’)と、前記制御装置に制御されることで自動運転を行う工作機械(12)と、を備える。
【0098】
これにより、オペレータの意図しないUndo/Redoの実行を抑止する工作機械システムが提供される。
【0099】
前記工作機械はワイヤ放電加工機であってもよい。
【0100】
<第4の発明>
加工対象物(W)を加工する工作機械(12)を制御パラメータ(54)と加工プログラム(52)とに基づいて制御することで、前記工作機械に自動運転を行わせる制御方法であって、オペレータによる前記制御パラメータおよび前記加工プログラムの変更指示を受け付ける変更指示受付ステップ(S1)と、前記オペレータによる前記変更指示のUndo/Redoを行えるように、前記変更指示を累積的に記憶部(48)に記憶させることで、前記制御パラメータおよび前記加工プログラムの変更履歴(56)を前記記憶部に記憶させる履歴記憶ステップ(S2)と、前記Undo/Redoの実行によって前記工作機械(12)が前記オペレータの意図しない動作をすることを防止するための所定の条件が成立したか否かを判定する判定ステップ(S3)と、前記所定の条件が成立したと前記判定ステップで判定された場合に、前記記憶部に記憶されている前記変更履歴を削除する履歴削除制御ステップ(S4)と、を含む。
【0101】
これにより、オペレータの意図しないUndo/Redoの実行を抑止する制御方法が提供される。