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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】自己絶縁型高帯域幅コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/80 20130101AFI20240528BHJP
   H01R 13/523 20060101ALI20240528BHJP
   H01R 13/03 20060101ALI20240528BHJP
   H01R 13/46 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H04B10/80
H01R13/523
H01R13/03 A
H01R13/46 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022558548
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 US2021027080
(87)【国際公開番号】W WO2021231012
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】15/930,596
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】クレイコム、ケビン ディ.
(72)【発明者】
【氏名】グレイ、アンドリュー チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ラグア、ローレン ニコル
(72)【発明者】
【氏名】ディットマン、デイビッド ネルソン
(72)【発明者】
【氏名】イオリオ、ビンセント マイケル
(72)【発明者】
【氏名】スモールウッド、デイビッド アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィントガッセン、ジェームズ リチャード
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0055914(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0233607(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/80
H01R 13/523
H01R 13/03
H01R 13/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
複数の第1の接点と、自由空間光信号を送受信するための第1の光学アセンブリとを含む第1のコネクタと、前記第1の光学アセンブリは、少なくとも1つの自由空間光トランシーバと、前記少なくとも1つの自由空間光トランシーバを包囲する光学ハウジングと、前記光学ハウジングの開口部に固定された光学レンズとを含んでおり、前記少なくとも1つの自由空間光トランシーバと前記光学ハウジングの内面との間のギャップが、空気、または前記光学レンズの屈折率と密接に一致する屈折率を有する媒体で充填されており、
複数の第2の接点と、自由空間光信号を送受信するための第2の光学アセンブリとを含む第2のコネクタと、を備え、前記第2の光学アセンブリは、少なくとも1つの自由空間光トランシーバと、前記少なくとも1つの自由空間光トランシーバを包囲する光学ハウジングと、前記光学ハウジングの開口部に固定された光学レンズとを含んでおり、前記少なくとも1つの自由空間光トランシーバと前記光学ハウジングの内面との間のギャップが、空気、または前記光学レンズの屈折率と密接に一致する屈折率を有する媒体で充填されており、前記複数の第1の接点のうちの少なくとも1つの接点と、前記複数の第1の接点のうちの前記少なくとも1つの接点と整列される前記複数の第2の接点のうちの少なくとも1つの接点とが、悪環境にさらされたときに非導電性外層を形成する特性を有する自己不動態化遷移金属から製造されており、前記第1および第2のコネクタは、前記第1および第2の光学アセンブリを実質的に整列させ、かつ取り囲むように結合されるように構成され、前記第1および第2のコネクタが悪環境にさらされると、前記第1および第2のコネクタの嵌合に応じて、前記第1の光学アセンブリと前記第2の光学アセンブリとの間に流体で充填されたギャップが形成される、システム。
【請求項2】
前記悪環境にさらされたときに、前記複数の第1の接点が前記複数の第2の接点と嵌合すると、前記非導電性外層の少なくとも一部が、導電性接続を形成するために、前記複数の第1の接点のうちの前記少なくとも1つの接点から、および前記複数の第2の接点のうちの前記少なくとも1つの接点から削り取りにより除去される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1の光学アセンブリは、前記第1の光学アセンブリの前記少なくとも1つの自由空間光トランシーバに通信可能に接続された第1のプロセッサを含み、前記第2の光学アセンブリは、前記第2の光学アセンブリの前記少なくとも1つの自由空間光トランシーバに通信可能に接続された第2のプロセッサを含み、前記第1および第2のプロセッサは、前記自由空間光信号を処理する、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1のコネクタおよび前記第2のコネクタの少なくとも一方の外側部分または内側部分に配置されたステータスインジケータをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
高帯域幅水中電気コネクタであって、
悪環境に浸漬されたときに非導電性外層を形成する少なくとも1つの第1の自己不動態化遷移金属接点を有する、電力を伝送するための第1の接点と、自由空間光信号を送受信するための第1の自由空間光アセンブリとを含む第1のコネクタと、前記第1の自由空間光アセンブリは、少なくとも1つの自由空間光トランシーバと、前記少なくとも1つの自由空間光トランシーバを包囲する光学ハウジングと、前記光学ハウジングの開口部に固定された光学レンズとを含んでおり、前記少なくとも1つの自由空間光トランシーバと前記光学ハウジングの内面との間のギャップが、空気、または前記光学レンズの屈折率と密接に一致する屈折率を有する媒体で充填されており、
悪環境に浸漬されたときに非導電性外層を形成する少なくとも1つの第2の自己不動態化遷移金属接点を有する、電力を受けるための第2の接点と、前記自由空間光信号を送受信するための第2の自由空間光アセンブリとを含む第2のコネクタと、を備え、前記第2の自由空間光アセンブリは、少なくとも1つの自由空間光トランシーバと、前記少なくとも1つの自由空間光トランシーバを包囲する光学ハウジングと、前記光学ハウジングの開口部に固定された光学レンズとを含んでおり、前記少なくとも1つの自由空間光トランシーバと前記光学ハウジングの内面との間のギャップが、空気、または前記光学レンズの屈折率と密接に一致する屈折率を有する媒体で充填されており、前記第1および第2のコネクタは、前記第1および第2の自由空間光アセンブリを実質的に整列させ、かつ取り囲むように結合されるように構成され、
悪環境に沈降している間に前記第1および第2のコネクタを締結することに応じて、前記第1および第2の自由空間光アセンブリの間に流体で充填されたギャップが形成され、該ギャップにて、前記第1および第2の自由空間光アセンブリが前記自由空間光信号を送受信する、高帯域幅水中電気コネクタ。
【請求項6】
前記第1の自由空間光アセンブリは、前記第1の自由空間光アセンブリの前記少なくとも1つの自由空間光トランシーバに通信可能に接続された第1のプロセッサを含み、前記第2の自由空間光アセンブリは、前記第2の自由空間光アセンブリの前記少なくとも1つの自由空間光トランシーバに通信可能に接続された第2のプロセッサを含み、前記第1および第2のプロセッサは、前記第1および第2のコネクタ間で送信されたデータを処理する、請求項に記載の高帯域幅水中電気コネクタ。
【請求項7】
悪環境に浸漬されている間に、前記第1のコネクタが前記第2のコネクタと嵌合されると、前記非導電性外層の少なくとも一部が、導電性接続を形成するために、前記少なくとも1つの第1の自己不動態化遷移金属接点から、および前記少なくとも1つの第2の自己不動態化遷移金属接点から削り取りにより除去される、請求項に記載の高帯域幅水中電気コネクタ。
【請求項8】
前記第1のコネクタおよび前記第2のコネクタの少なくとも一方の外側部分または内側部分に配置されたステータスインジケータをさらに備える、請求項に記載の高帯域幅水中電気コネクタ。
【請求項9】
データを搬送する自由空間光信号を送信する方法であって、
第1のコネクタおよび第2のコネクタを悪環境に浸漬するステップと、前記第1のコネクタは、悪環境に浸漬されると非導電性外層を形成する自己不動態化遷移金属から製造された少なくとも1つの接点を有する複数の第1の接点と、第1の自由空間光トランシーバとを含み、前記第1の自由空間光トランシーバは、光学ハウジング内に収容されており、前記第1の自由空間光トランシーバと前記光学ハウジングとの間のギャップが、空気、または前記第1の自由空間光トランシーバの光学レンズの屈折率と密接に一致する屈折率を有する媒体で充填されており、前記第2のコネクタは、流体に浸漬されると非導電性外層を形成する自己不動態化遷移金属から製造された少なくとも1つの接点を有する複数の第2の接点と、第2の自由空間光トランシーバとを含んでおり、前記第2の自由空間光トランシーバは、光学ハウジング内に収容されており、前記第2の自由空間光トランシーバと前記光学ハウジングとの間のギャップが、空気、または前記第2の自由空間光トランシーバの光学レンズの屈折率と密接に一致する屈折率を有する媒体で充填されており、
前記第1および第2のコネクタを嵌合させて、前記第1および第2のコネクタ間に電力を伝導するために前記複数の第1の接点と前記複数の第2の接点との間に電気接続を提供するとともに、前記第1の自由空間光トランシーバと前記第2の自由空間光トランシーバとの間に流体で充填されたギャップを形成するステップと、を含み、前記第1および第2の自由空間光トランシーバは、流体で充填された前記ギャップを通って前記自由空間光信号を送受信し、少なくとも1つの第1の自己不動態化遷移金属接点は、少なくとも1つの第2の自己不動態化遷移金属接点と整列して接続される、方法。
【請求項10】
前記悪環境に浸漬されている間に、前記第1のコネクタが前記第2のコネクタと嵌合されると、前記非導電性外層の少なくとも一部が、導電性接続を形成するために、前記少なくとも1つの第1の自己不動態化遷移金属接点から、および前記少なくとも1つの第2の自己不動態化遷移金属接点から削り取りにより除去される、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、電気コネクタに関し、より詳細には、高データ転送レートのハイブリッド電気および光コネクタを備えるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
高出力および高帯域幅を提供する従来の水中嵌合コネクタは、大型で、重量物であり、信頼性が低く、水中での嵌合が困難である。従来のコネクタは、挿入部の数が限られており、そのサイズが大きいため、製造コストが非常に高価である。これらのコネクタを海底で嵌合するためには、大型の無人潜水機(UUV:unmanned underwater vehicles)または遠隔操作機(ROV:remote operating vehicles)が必要である。言い換えれば、従来のコネクタは大型で、嵩高であり、水中での嵌合が困難であるため、従来のコネクタは、コネクタを嵌合するために、UUVまたはROVとともに高価なインフラストラクチャを必要とする。そのため、従来のコネクタを使用して大規模で柔軟なネットワークを構築することは、非常に時間がかかり、リスクが高く、膨大な費用がかかり、実現が困難である。
【発明の概要】
【0003】
以下では、主題の開示の基本的な理解を提供するために、その要約を簡略に説明する。この要約は、主題の開示の広範な概要ではない。主要/重要な要素を特定したり、主題の開示の範囲を説明したりすることは意図されていない。その唯一の目的は、後で提示されるより詳細な説明の前置きとして、主題の開示のいくつかの概念を簡略化された形で提示することである。
【0004】
本開示の一例では、複数の第1の接点と、自由空間光信号を送受信するための第1の光学アセンブリとを含む第1のコネクタと、複数の第2の接点と、自由空間光信号を送受信するための第2の光学アセンブリとを含む第2のコネクタとを含むシステムが提供される。複数の第1の接点のうちの少なくとも1つの接点と、複数の第1の接点のうちの少なくとも1つの接点と整列される複数の第2の接点のうちの少なくとも1つの接点とが、悪環境(adverse environment)にさらされたときに非導電性外層を形成する特性を有する自己不動態化遷移金属(self-passivating transition metal)から製造される。第1および第2のコネクタは、第1および第2の光学アセンブリを実質的に整列させ、かつ取り囲むように結合され、悪環境にさらされると、第1および第2のコネクタの嵌合に応じて、第1の光学アセンブリと第2の光学アセンブリとの間に流体で充填されたギャップが形成される。
【0005】
本開示の別の例は、悪環境に浸漬されたときに非導電性外層を形成する少なくとも1つの第1の自己不動態化遷移金属接点を有する、電力を伝送するための第1の接点と、自由空間光信号を送信および受信するための第1の自由空間光アセンブリとを含む第1のコネクタを含む高帯域幅水中電気コネクタを含む。コネクタはさらに、悪環境に浸漬されたときに非導電性外層を形成する少なくとも1つの第2の自己不動態化遷移金属接点を有する、電力を受けるための第2の接点と、自由空間光信号を送信および受信するための第2の自由空間光アセンブリとを含む第2コネクタを含み、第1および第2のコネクタは、第1および第2の自由空間光アセンブリを実質的に整列させ、かつ取り囲むように結合されるように構成されている。悪環境にさらされると、第1および第2のコネクタを締結することに応じて、第1および第2の自由空間光アセンブリの間に流体で充填されたギャップが形成され、ギャップにて、第1および第2の自由空間光アセンブリは自由空間光信号を送受信する。
【0006】
本開示のさらに別の例は、データを搬送する自由空間光信号を送信する方法を含む。方法は、第1のコネクタおよび第2のコネクタを悪環境に浸漬することを含み、第1のコネクタは、悪環境に浸漬されたときに非導電性外層を形成する少なくとも1つの第1の自己不動態化遷移金属接点を有する第1の接点と、自由空間光トランシーバとを含む。第2のコネクタは、流体に浸漬されたときに非導電性外層を形成する少なくとも1つの第2の自己不動態化遷移金属接点を有する第2の接点と、第2の自由空間光トランシーバとを含み、少なくとも1つの第1の自己不動態化遷移金属接点は、少なくとも1つの第2の自己不動態化遷移金属接点と整列して接続される。第1および第2のコネクタは、第1および第2のコネクタ間に電力を伝導するために第1の接点と第2の接点との間に電気接続を提供するとともに、第1の自由空間光トランシーバと第2の自由空間光トランシーバとの間に流体で満たされたギャップを形成するように嵌合される。第1および第2の自由空間光トランシーバは、流体で充填されたギャップを通って自由空間光信号を送受信する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本開示の様々なシステム、方法、および他の例を図示している。図中に示されている構成要素の境界(例えば、ボックス、ボックスのグループ、またはその他の図形)は、境界の一例を表している。いくつかの例では、1つの構成要素が複数の構成要素として設計され得るか、または複数の構成要素が1つの構成要素として設計され得る。いくつかの例では、別の構成要素の内部構成要素として示されている構成要素は、外部構成要素として実施され得、その逆もあり得る。
図1】例示的な高帯域幅コネクタシステムの例示的な概略図である。
図2】例示的な高帯域幅電気コネクタを示す図である。
図3】例示的な高帯域幅電気コネクタの第1の嵌合部品の一例の斜視図である。
図4】例示的な高帯域幅電気コネクタの例示的な第1の嵌合部品の端面図である。
図5】例示的な高帯域幅電気コネクタの第2の嵌合部品の一例の斜視図である。
図6】例示的な高帯域幅電気コネクタの例示的な第2の嵌合部品の端面図である。
図7図2に示された例示的な高帯域幅コネクタの切り欠き斜視図である。
図8】例示的な自由空間光(FSO:free space optical)アセンブリの斜視図である。
図9】例示的な光学ハウジングおよびFSOトランシーバの切り欠き斜視図である。
図10】水中コネクタにおいて大量のデータを高データ速度で送信するための方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、図面を参照して説明され、同様の参照番号は、全体を通して同様の構成要素を参照するために使用される。以下の説明では、説明の目的で、主題の開示を完全に理解するために、多くの具体的な詳細な説明が記載されている。しかしながら、主題の開示は、これらの具体的な詳細な説明がなくても、実施できることは明らかである。他の例では、周知の構造およびデバイスが、主題の開示を説明し易くするために、ブロック図の形で示されている。
【0009】
特定の特性(例えば、厚さ、方向、構成など)が本明細書に記載されているが、本開示の特徴、機能、および利点は、本明細書に記載されているものとは異なる特性を使用できることを理解されたい。これらの代替案は、本明細書に添付される開示および特許請求の範囲内に含まれるべきである。
【0010】
高出力で大量のデータを水中で迅速に転送するために使用されている現在のコネクタ技術は、嵩高であり、高価であるか、または成長する水中テクノロジコミュニティの高出力および高帯域幅の要求を満たすことができない。水中嵌合通信グレードのケーブルは自己絶縁性がなく、嵌合には熟練とかなりの力が必要であり、接続寿命は非常に限られている。ブルーコム(Bluecomm(登録商標))シリーズなどの長距離自由空間光(FSO)デバイスは、長距離(例えば、5メートルを超える)での全方向通信用に設計されている。これらの要件のために、デバイスは、大型で、高価で、消費電力が大きく、データ帯域幅が狭くなっている。長距離FSOデバイスの使用は、特にデバイスが電力を供給できないため、高帯域幅を必要とする成長し続ける海底ネットワークでは制限される。無線電力コネクタは、水中ネットワークでの使用の可能性があるが、高価で、嵩高であり、重量物である。もう1つの欠点は、伝送技術の形において代償となる電気効率のペナルティが発生することである。
【0011】
これらの障害を克服するために、本明細書では、水(例えば、海水、塩水、井戸水、河川水、湖水など)または他の電解液に浸漬されるような腐食性環境または悪環境で使用する高出力、高帯域幅電気コネクタの例が開示される。電気コネクタは、自由空間光(FSO)通信デバイスを利用して、約10Gbpsの高データレート(高帯域幅)で大量のデータを送受信する。具体的には、FSOデバイスは、短距離光を使用してデータを高データレートで転送する。電気コネクタは、所望の電力用途のために必要な場合に電力を伝送および供給することができる電気接点をさらに含む。陽極接点である接点は、自己不動態化遷移金属(ニオブ、タンタル、チタン、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ハフニウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウムなど)から製造されている。自己不動態化遷移金属は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,893,460号に記載されているように、接点を悪環境(海水、塩水、井戸水、河川水、湖水など)による腐食作用から保護するために、接点の表面に絶縁層または非導電性不動態化外層(non-conductive passivation outer layer)を形成する。
【0012】
高帯域幅コネクタは、データ処理用の3つのセクション、即ち、1)入力/出力データ、2)データの変換、3)FSO通信を含む。デバイスからの入力データは、コネクタのケーブル内の従来の銅線経路または光ファイバ経路に沿って移動する。入力信号が高帯域幅水中コネクタに到達すると、プロセッサ(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)など)がデータを差動ペア信号に変換する。これらの信号は、FSOトランシーバに送られ、FSOトランシーバは、データをレーザビームにより送信する。このビームおよび変換された差動ペア信号は、他のコネクタのFSOトランシーバによって受信される。次に、信号は、受信コネクタのFPGAによって読み取られて変換され、電気経路または光ファイバ経路を介して受信デバイスに送信される。FPGAおよびFSOデバイスの電源は、高帯域幅水中コネクタを通る電源ケーブルから供給される。
【0013】
図1は、高速または高データレート(例えば、約10Gbps)でデータを転送する光データ通信デバイスを含む、水中環境において露出した電気接点の嵌合および嵌合解除を可能にするシステムの例を概略的に示す。具体的には、本明細書では、短距離(例えば、6cm未満)光波(例えば、レーザ)を介して高速でデータを転送する自由空間光デバイスを含む、高帯域幅の水中電気コネクタ100で構成されるシステムが開示されている。本明細書での説明のために、コネクタは「高帯域幅コネクタ」と呼ばれ、水環境に浸漬されるものとして説明する。しかしながら、高帯域幅コネクタは、例えば化学プラントなどの水中以外の悪環境を含む、コネクタに悪影響を与える上記のようなあらゆる種類の悪環境にさらされる可能性があることが理解される。
【0014】
さらに図1を参照すると、高帯域幅コネクタ100は、第1のハウジングを有する第1のコネクタ(嵌合部品)102と、第2のハウジングを有する第2のコネクタ(嵌合部品)104とを含む。第1のコネクタ102は、1つまたは複数の第1の光(例えば、FSO)データ通信アセンブリ106を含む。各第1の光学アセンブリ106は、第1のプリント回路基板(PCB)110に取り付けられた第1のFSOトランシーバ108と、PCB110に接続された第1のプロセッサ112とを含む。データ信号は、従来の銅線ケーブルまたは光ファイバケーブルを介して、第1の外部電気デバイス114から第1のプロセッサ112へ、および第1のプロセッサ112から伝達される。第1のプロセッサ112は、入力データ信号を差動ペア信号に変換し、差動ペア信号を第1のFSOトランシーバ108に伝達する。同様に、出力データ信号は、第1のFSOトランシーバ108から第1のプロセッサ112に送信され、第1のプロセッサ112は、出力データ信号を処理し、出力データ信号を同じ銅線ケーブルまたは光ファイバケーブルに沿って第1の外部電気デバイス114に送信する。一例では、第1のプロセッサ112は、高帯域幅コネクタ100の用途に基づいて所与の通信構成にプログラムされ、かつプロセッサに応じて所与の通信構成に再プログラムされ得るFPGA、ASIC、DSP等とすることができる。
【0015】
第1のコネクタ102は、自己不動態化遷移金属(例えば、ニオブ、タンタル、チタン、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ハフニウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウムなど)から製造された少なくとも1つの第1の接点(例えば、陽極接点)を有する第1の電気接点116をさらに含む。遷移金属から製造された電気接点は、水などの流体に浸漬されたときに第1の電気接点116上に形成される非導電性の不動態化外層118の形成により、水中または悪環境での嵌合および嵌合解除に適している。上述したように、不動態化外層118は、水(例えば、海水、塩水、井戸水、河川水、湖水など)などの流体中などの悪環境による腐食作用から接点を保護する。接点(contact)という用語は、ピン、レセプタ、プレートなど、あらゆるタイプの導電性の嵌合部品を指すことができる。
【0016】
引き続き図1を参照すると、第2のコネクタ104は、1つまたは複数の第2の光(例えば、FSO)データ通信アセンブリ120を含む。各第2の光学アセンブリ120は、第2のPCB124に取り付けられた第2のFSOトランシーバ122と、第2のPCB124に接続された第2のプロセッサ126とを含む。データ信号は、従来の銅線ケーブルまたは光ファイバケーブルを介して、第2の外部電気デバイス128から第2のプロセッサ126へ、および第2のプロセッサ126から伝達される。第2のプロセッサ126は、入力データ信号を差動ペア信号に変換し、差動ペア信号を第2のFSOトランシーバ122に伝達する。同様に、出力データ信号は、第2のFSOトランシーバ122から第2のプロセッサ126に送信され、第2のプロセッサ126は出力データ信号を処理し、出力データ信号を同じ銅線ケーブルまたは光ファイバケーブルに沿って第2の外部電気デバイス128に送信する。一例では、第2のプロセッサ126は、高帯域幅コネクタ100の用途に基づいて所与の通信構成にプログラムされ、かつプロセッサに応じて所与の通信構成に再プログラムされ得るFPGA、ASIC、DSP等とすることができる。
【0017】
第2のコネクタ104は、自己不動態化遷移金属(例えば、ニオブ、タンタル、チタン、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ハフニウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウムなど)から製造された少なくとも1つの第2の接点(例えば、陽極接点)を有する第2の電気接点130をさらに含む。従って、少なくとも1つの第1の遷移金属接点と同様に、非導電性の不動態化外層118は、接点を悪環境による腐食作用から保護するように少なくとも1つの第2の遷移金属接点上に形成され、電解質である場合には、液体環境を介したイオン伝導による陽極接点と陰極接点との間の伝導を防止する。第1および第2のコネクタ102、104が嵌合すると、少なくとも1つの第1の遷移金属接点と少なくとも1つの第2の遷移金属接点とが整列され、かつ係合して、電気接続を形成する。
【0018】
FSOトランシーバ108、122がプロセッサ112、126からの入力信号を受信した後、FSOトランシーバ108、122は、レーザなどの短距離光波(short range light wave)を介して信号を他方のFSOトランシーバ122、108に送信する(即ち、第1のFSOトランシーバ108は、第2のFSOトランシーバ122に送信し、第2のFSOトランシーバ122は、第1のFSOトランシーバ108に送信する)。第1および第2のFSOトランシーバ108、122の間の距離は、1~6cmの範囲である。
【0019】
以下でさらに説明するように、各FSOトランシーバ108、122は、ハウジングの表面に形成された開口部を有する光学ハウジング内に収容されている。開口部には、光が第1および第2のFSOトランシーバ108、122の間を移動できるようにする光学レンズ(ディスク)が配置されている。従って、データ信号を搬送する送信光は、送信FSOトランシーバの光学レンズを通過する前に、光学ハウジング内のギャップを通過する。次に、光は、高帯域幅コネクタ100が浸漬されている悪条件の媒体を通過して受信FSOアセンブリに移動する。最終的に、光は、受信FSOアセンブリの光学レンズと、光学ハウジング内のギャップとを通過して、受信FSOトランシーバに到達する。送信および受信FSOアセンブリの両方の光学ハウジング内のギャップは、エアギャップであり得るか、または光学レンズの屈折率に密接に(closely)一致する屈折率を有する媒体(例えば、ゲル、オイル)で充填され得る。
【0020】
上述したように、コネクタが水に浸漬され、水がコネクタ内に存在する用途では、FSO通信デバイスは、約10Gbpsの高データレート(高帯域幅)で大量のデータを送受信することができる。さらに、遷移金属電気接点は、所望の電力用途のために電力を伝送および供給することができる。その結果、高帯域幅コネクタ100は、水中用途または悪環境での使用のために設計された、軽量、高帯域幅、高電力、自己絶縁性、低ノイズ、防水性のコネクタである。
【0021】
図2図7は、水中用途で使用するための高帯域幅コネクタ200の一例を示す。図2は、組み立てられた状態の高帯域幅コネクタ200の斜視図である。高帯域幅コネクタ200は、第1のハウジング204を有する第1の嵌合部品(コネクタ)202と、第2のハウジング208を有する第2の嵌合部品(コネクタ)206とを含む。図3および図4は、それぞれ、第1の嵌合部品202の斜視図および端面図である。同様に、図5および図6は、それぞれ、第2の嵌合部品206の斜視図および端面図である。図7は、高帯域幅コネクタ200の切り欠き斜視図である。
【0022】
図2図7に示される例では、第1の嵌合部品202は、雄(第1の)接点210を含む雄コネクタであり、第2の嵌合部品206は、雌(第2の)接点212を含む雌嵌合部品である。上述したように、第1および第2の嵌合部品202、206のそれぞれの雄接点210および雌接点212の各々からの少なくとも1つの接点(例えば、陽極接点)は、自己不動態化遷移金属(例えば、ニオブ、タンタル、チタン、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ハフニウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウムなど)から製造されており、本明細書では第1および第2の遷移金属接点と呼ばれる。前述したように、自己不動態化遷移金属は、接点の表面に絶縁層またはスキンを形成し、水による腐食作用から接点を保護する。第1および第2の嵌合部品202、206が嵌合すると、第1および第2の遷移金属接点が整列され、かつ係合して、導電性接続を形成する。第1および第2の嵌合部品202、206が嵌合するとき、第1および第2の遷移金属接点の各々で自己不動態化層の少なくとも一部が除去されて(削り取られて)、導電性接続を形成するように雄接点210が雌接点212に挿入される。
【0023】
図7に最もよく示されるように、第1の嵌合部品202は、第1のFSO通信アセンブリ214をさらに含み、第2の嵌合部品206は、第2のFSO通信アセンブリ216をさらに含む。上述したように、データを1つの外部電気デバイス(例えば、第1の外部電気デバイス114)から別の外部電気デバイス(例えば、第2の外部電気デバイス128)へ、またはその逆へ転送するために、データ信号は、第1および第2のFSO通信アセンブリ214、216の間で高速で伝達される。
【0024】
第1の嵌合部品202および第2の嵌合部品206は、ステータスインジケータ218、220をさらに含む。ステータスインジケータ218、220は、ライト、LEDライト、シンボリックライト(symbolic lights)、カラーライトなどを含み得る。ステータスインジケータ218、220は、第1のコネクタおよび/または第2のコネクタの図2に示されるような外側部分、または内側部分に配置され得る。ステータスインジケータ218、220は、高帯域幅コネクタ200の動作状態を提供するために使用され得る。例えば、1つのステータスインジケータが電力状態を提供してもよく、別のステータスインジケータが受信および送信データの状態を提供してもよく、別のステータスインジケータが第1および第2のFSO通信アセンブリ214、216の間でデータ信号を搬送する光源の状態を提供してもよい。
【0025】
第1の嵌合部品202および第2の嵌合部品206は、接点210、212の反対側の端部に形成された開口部222、224をさらに含む。開口部222、224は、電源ケーブルおよびデータ伝送ケーブル(例えば、銅、光ファイバなど)の挿入を可能にするように構成される。電源ケーブルは、電源から雄接点210および雌接点212に電力を伝送し、データ伝送ケーブルは、外部電気デバイスとFSO通信アセンブリ214、216との間でデータ信号を伝送する。
【0026】
図8は、図7に示されるFSOアセンブリ214、216に対応する例示的なFSOアセンブリ300の斜視図である。さらに、図9は、図8に示されるFSOアセンブリ300の部分的な切り欠き図である。従って、以下の図8および図9の例の説明では、図7の例を参照する。FSOアセンブリ300は、プリント回路基板(PCB)304に取り付けられた1つまたは複数のFSOトランシーバ302と、PCB304に接続され、かつPCB304と通信するプロセッサ(例えば、FPGA、ASIC、DSPなど)306とを含む。また、光学ハウジング308は、PCB304に取り付けられるとともに、FSOトランシーバ302をキャビティ内に収容する。従って、FSOトランシーバ302と光学ハウジング308の内面との間にギャップ310が存在する。光学ハウジング308内のギャップ310は、エアギャップであり得るか、または光学レンズ316の屈折率に密接に一致する屈折率を有する媒体(例えば、ゲル、オイル)で充填され得る。開口部312は、PCB304に取り付けられた表面とは反対側にある光学ハウジング308の表面(例えば、頂部)314に形成される。光学レンズ(ディスク)316は、例えば、図7に示されるFSOアセンブリ214、216の間で光が移動できるように開口部312内に配置される。光学レンズ316は、赤外線帯域で、より具体的には近赤外線帯域において、全海洋深度(full ocean depth)の静水圧(例えば、約10,000psi(68.95MPa))下で、本明細書に開示される高速でデータ信号を伝送することができる材料(例えば、サファイア、石英、アクリル、ソーダ石灰、ホウケイ酸塩など)から製造される。従って、光学レンズ316は、FSOトランシーバ302を水から隔離する、即ち防水性を提供する一方で、FSO光波の伝送のための経路を可能にする。
【0027】
以前に説明したように、データ信号は、従来の銅線ケーブルまたは光ファイバケーブルを介して外部電気デバイスからFSOアセンブリ300へ、およびFSOアセンブリ300から伝達される。プロセッサ306は、入力データ信号を差動ペア信号に変換し、差動ペア信号を送信FSOトランシーバ302に伝達する。送信FSOトランシーバ302は、レーザなどの短距離光波を介してデータ信号を他方の、即ち受信FSOトランシーバ302に送信する。送信FSOトランシーバ302と受信FSOトランシーバ302との間の距離は、1~6cmの範囲である。受信されたデータ信号は、受信FSOトランシーバ302から受信プロセッサ306に送信され、受信プロセッサ306は、出力データ信号を処理し、銅線ケーブルまたは光ファイバケーブルを介して出力データ信号を外部電気デバイスに送信する。FSOトランシーバ302は、データを送受信することが可能である。これにより、双方向通信が可能になり、送信できるデータ量が増加する。さらに、各FSOアセンブリは、複数のFSOトランシーバを含むことができ、それによって、送信データ通信ラインの数が増加する。
【0028】
データ信号を搬送する送信光は、送信FSOトランシーバ302の光学レンズ316を通過する前に、光学ハウジング308のエアギャップ310を通過する。次に、光は、高帯域幅コネクタが浸漬されている悪条件の媒体(例えば、水)を通過して受信FSOトランシーバ302に移動する。最終的に、光は、受信FSOトランシーバ302の光学ハウジング308内の光学レンズ316およびギャップ310を通過する。
【0029】
図10は、高データ速度で水中コネクタを介して大量のデータを送信するための方法400の例を示す。402において、第1のコネクタ(例えば、第1の嵌合コネクタ202)および第2のコネクタ(例えば、第2の嵌合コネクタ206)は、悪環境(例えば、水)にさらされるか、または浸漬される。第1のコネクタは、悪環境にさらされたときに非導電性外層を形成する少なくとも1つの第1の自己不動態化遷移金属接点を有する第1の接点(例えば、第1の接点210)と、第1の自由空間光トランシーバ(例えば、自由空間光トランシーバ302)とを含む。第2のコネクタは、悪環境にさらされたときに非導電性外層を形成する少なくとも1つの第2の自己不動態化遷移金属接点を有する第2の接点(例えば、第2の接点212)と、第2の自由空間光トランシーバ(例えば、自由空間光トランシーバ302)とを含む。404において、第1および第2のコネクタが嵌合されて、第1の接点と第2の接点との間に電気接続を提供し、第1および第2のコネクタ間に電力を伝導する。流体で充填されたギャップ(例えば、ギャップ310)が、第1の自由空間光トランシーバと第2の自由空間光トランシーバとの間に形成される。第1および第2の自由空間光トランシーバは、流体で充填されたギャップを通って大量のデータを高データ速度(例えば、10Gbps)で送受信する。
【0030】
本明細書で開示される高帯域幅コネクタは、水中ケーブルネットワークの設置および維持のコストを削減する。高帯域幅コネクタを使用した水中ケーブルは、様々なROVまたはUUVを使用して接続することができる。これは、高帯域幅コネクタのサイズおよび重量が小さいため可能である。前述したように、現在の海底コネクタは、嵩高であり、設置には多大な力が必要であり、非常にコストがかかる大型のROVを使用する必要がある。大型のROVには大型の船およびより多くの作業者が必要なため、設置の選択肢が制限されるか、設計者がロボットを使用する必要がないシステムを再設計する必要がある。ロボットは、作業者にとって危険な環境でネットワークを実現することを可能にするため、ロボットを回避することは好ましくない。ケーブルを非常に深い場所に敷設する必要がある場合でも、過酷な環境でネットワークを構築する必要がある場合でも、ロボットプラットフォームの拡張性のために、ロボットの使用が好まれる。より小規模なプラットフォームで設置を行うことができれば、中小企業にも門戸が開かれて、より多くの選択肢が利用可能となる。プラットフォームが小規模であるほど、必要な作業者およびサポート要員も少なくなり、必要な人員が削減される。
【0031】
従って、短距離FSO通信デバイスと自己絶縁性の遷移金属接点とを組み合わせることで、今日の水中ネットワークの増大する要求を満たすことができる新たなコネクタが創作された。高帯域幅コネクタは、大量のネットワークトラフィックおよび電力消費に対処することができる小型で軽量なデバイスを提供する。これは、ロボットを使用した海底ネットワークの迅速な構築を可能にする実現技術である。さらに、自己絶縁機能により、ほぼ無限の接続嵌合サイクル、メンテナンス不要の動作、活線の安全な取り扱い、ノイズ耐性が可能になり、海水中に無期限に放置することができる。同等量の電力およびデータを転送することができる現在のコネクタは、実質的により大型で、より重く、接続数が限られており、多くの場合、接続を行うために必要とされる膨大な力のために取り付け治具を使用する必要がある。
【0032】
上記の説明は、開示のいくつかの例を構成する。もちろん、本開示を説明する目的のために構成要素または方法の考えられるあらゆる組み合わせを説明することは不可能であるが、当業者は本開示の多くのさらなる組み合わせおよび置換が可能であることを認識するであろう。従って、本開示は、添付の特許請求の範囲を含む本出願の範囲内に含まれるすべてのそのような代替形態、修正形態、および変形形態を包含することを意図している。
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]
システムであって、
複数の第1の接点と、自由空間光信号を送受信するための第1の光学アセンブリとを含む第1のコネクタと、
複数の第2の接点と、自由空間光信号を送受信するための第2の光学アセンブリとを含む第2のコネクタと、を備え、前記複数の第1の接点のうちの少なくとも1つの接点と、前記複数の第1の接点のうちの前記少なくとも1つの接点と整列される前記複数の第2の接点のうちの少なくとも1つの接点とが、悪環境にさらされたときに非導電性外層を形成する特性を有する自己不動態化遷移金属から製造されており、前記第1および第2のコネクタは、前記第1および第2の光学アセンブリを実質的に整列させ、かつ取り囲むように結合されるように構成され、前記第1および第2のコネクタが悪環境にさらされると、前記第1および第2のコネクタの嵌合に応じて、前記第1の光学アセンブリと前記第2の光学アセンブリとの間に流体で充填されたギャップが形成される、システム。
[付記2]
前記悪環境にさらされたときに、前記複数の第1の接点が前記複数の第2の接点と嵌合すると、前記非導電性外層の少なくとも一部が、導電性接続を形成するために、前記複数の第1の接点のうちの前記少なくとも1つの接点から、および前記複数の第2の接点のうちの前記少なくとも1つの接点から削り取りにより除去される、付記1に記載のシステム。
[付記3]
前記自己不動態化遷移金属は、ニオブ、タンタル、チタン、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ハフニウム、タングステン、レニウム、オスミウム、およびイリジウムを含む群から選択される、付記2に記載のシステム。
[付記4]
前記第1の光学アセンブリおよび前記第2の光学アセンブリはそれぞれ、前記自由空間光信号を送受信するための少なくとも1つの自由空間光トランシーバと、前記自由空間光トランシーバを包囲する光学ハウジングとを含み、前記光学ハウジングは、該光学ハウジング内に形成された開口部と、前記自由空間光トランシーバが前記自由空間光信号を送受信することを可能にする前記開口部に固定されたレンズとを含む頂部を有する、付記1に記載のシステム。
[付記5]
前記第1の光学アセンブリは、前記第1の光学アセンブリの前記少なくとも1つの自由空間光トランシーバに通信可能に接続された第1のプロセッサを含み、前記第2の光学アセンブリは、前記第2の光学アセンブリの前記少なくとも1つの自由空間光トランシーバに通信可能に接続された第2のプロセッサを含み、前記第1および第2のプロセッサは、前記自由空間光信号を処理する、付記4に記載のシステム。
[付記6]
前記自由空間光トランシーバと前記光学ハウジングとの間にギャップが形成される、付記4に記載のシステム。
[付記7]
前記ギャップは、エアギャップであるか、または前記レンズの屈折率と密接に一致する屈折率を有する媒体で充填されている、付記6に記載のシステム。
[付記8]
前記レンズが、サファイア、アクリル、ソーダ石灰、石英、およびホウケイ酸塩からなる群から選択されるものである、付記4に記載のシステム。
[付記9]
前記第1のコネクタおよび前記第2のコネクタの少なくとも一方の外側部分または内側部分に配置されたステータスインジケータをさらに備える、付記1に記載のシステム。
[付記10]
高帯域幅水中電気コネクタであって、
悪環境に浸漬されたときに非導電性外層を形成する少なくとも1つの第1の自己不動態化遷移金属接点を有する、電力を伝送するための第1の接点と、自由空間光信号を送受信するための第1の自由空間光アセンブリとを含む第1のコネクタと、
悪環境に浸漬されたときに非導電性外層を形成する少なくとも1つの第2の自己不動態化遷移金属接点を有する、電力を受けるための第2の接点と、前記自由空間光信号を送受信するための第2の自由空間光アセンブリとを含む第2のコネクタと、を備え、前記第1および第2のコネクタは、前記第1および第2の自由空間光アセンブリを実質的に整列させ、かつ取り囲むように結合されるように構成され、
悪環境に沈降している間に前記第1および第2のコネクタを締結することに応じて、前記第1および第2の自由空間光アセンブリの間に流体で充填されたギャップが形成され、該ギャップにて、前記第1および第2の自由空間光アセンブリが前記自由空間光信号を送受信する、高帯域幅水中電気コネクタ。
[付記11]
前記第1の自由空間光アセンブリおよび前記第2の自由空間光アセンブリはそれぞれ、前記自由空間光信号を送受信するための少なくとも1つの自由空間光トランシーバと、前記自由空間光トランシーバを包囲する光学ハウジングとを含み、前記光学ハウジングは、該光学ハウジング内に形成された開口部と、前記自由空間光トランシーバが前記自由空間光信号を送受信することを可能にする前記開口部に固定されたレンズとを含む頂部を有する、付記10に記載の高帯域幅水中電気コネクタ。
[付記12]
前記第1の自由空間光アセンブリは、前記第1の自由空間光アセンブリの前記少なくとも1つの自由空間光トランシーバに通信可能に接続された第1のプロセッサを含み、
前記第2の自由空間光アセンブリは、前記第2の自由空間光アセンブリの前記少なくとも1つの自由空間光トランシーバに通信可能に接続された第2のプロセッサを含み、
前記第1および第2のプロセッサは、前記第1および第2のコネクタ間で送信されたデータを処理する、付記11に記載の高帯域幅水中電気コネクタ。
[付記13]
前記自由空間光トランシーバと前記光学ハウジングとの間にギャップが形成され、前記ギャップは、エアギャップであるか、または前記レンズの屈折率と密接に一致する屈折率を有する媒体で充填されている、付記11に記載の高帯域幅水中電気コネクタ。
[付記14]
前記レンズが、サファイア、アクリル、ソーダ石灰、石英、およびホウケイ酸塩からなる群から選択されるものである、付記11に記載の高帯域幅水中電気コネクタ。
[付記15]
悪環境に浸漬されている間に、前記第1のコネクタが前記第2のコネクタと嵌合されると、前記非導電性外層の少なくとも一部が、導電性接続を形成するために、前記少なくとも1つの第1の自己不動態化遷移金属接点から、および前記少なくとも1つの第2の自己不動態化遷移金属接点から削り取りにより除去される、付記10に記載の高帯域幅水中電気コネクタ。
[付記16]
前記第1のコネクタおよび前記第2のコネクタの少なくとも一方の外側部分または内側部分に配置されたステータスインジケータをさらに備える、付記10に記載の高帯域幅水中電気コネクタ。
[付記17]
自己不動態化遷移金属は、ニオブ、タンタル、チタン、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ハフニウム、タングステン、レニウム、オスミウム、およびイリジウムを含む群から選択される、付記10に記載の高帯域幅水中電気コネクタ。
[付記18]
データを搬送する自由空間光信号を送信する方法であって、
第1のコネクタおよび第2のコネクタを悪環境に浸漬するステップと、前記第1のコネクタは、悪環境に浸漬されると非導電性外層を形成する自己不動態化遷移金属から製造された少なくとも1つの接点を有する複数の第1の接点と、第1の自由空間光トランシーバとを含み、前記第2のコネクタは、流体に浸漬されると非導電性外層を形成する自己不動態化遷移金属から製造された少なくとも1つの接点を有する複数の第2の接点と、第2の自由空間光トランシーバとを含んでおり、
前記第1および第2のコネクタを嵌合させて、前記第1および第2のコネクタ間に電力を伝導するために前記複数の第1の接点と前記複数の第2の接点との間に電気接続を提供するとともに、前記第1の自由空間光トランシーバと前記第2の自由空間光トランシーバとの間に流体で充填されたギャップを形成するステップと、を含み、前記第1および第2の自由空間光トランシーバは、流体で充填された前記ギャップを通って前記自由空間光信号を送受信し、少なくとも1つの第1の自己不動態化遷移金属接点は、少なくとも1つの第2の自己不動態化遷移金属接点と整列して接続される、方法。
[付記19]
前記悪環境に浸漬されている間に、前記第1のコネクタが前記第2のコネクタと嵌合されると、前記非導電性外層の少なくとも一部が、導電性接続を形成するために、前記少なくとも1つの第1の自己不動態化遷移金属接点から、および前記少なくとも1つの第2の自己不動態化遷移金属接点から削り取りにより除去される、付記18に記載の方法。
[付記20]
前記自己不動態化遷移金属が、ニオブ、タンタル、チタン、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ハフニウム、タングステン、レニウム、オスミウム、およびイリジウムを含む群から選択される、付記18に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10