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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】多芯ケーブルの撚り戻し装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/14 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
H02G1/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022558990
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(86)【国際出願番号】 JP2021037935
(87)【国際公開番号】W WO2022091788
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2020179422
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】川崎 美幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶紀
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-336219(JP,A)
【文献】特開平6-325635(JP,A)
【文献】特開昭49-061681(JP,A)
【文献】実開平3-120622(JP,U)
【文献】特開平5-168120(JP,A)
【文献】実開平6-13321(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/14
H01R 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の電線と前記電線を被覆するシースとを有する多芯ケーブルのシースの先端部を引き抜くと共に前記電線の撚り癖を矯正する多芯ケーブルの撚り戻し装置であって、
先端部と非先端部との間に切れ目が入ったシースの非先端部を保持する保持部材と、
前記シースの先端部を把持する把持部材と、
前記把持部材が前記保持部材から遠ざかるように前記把持部材および前記保持部材の少なくとも一方を移動させることにより、前記シースの先端部を引き抜く引き抜き装置と、
前記把持部材に把持された前記シースの先端部と非先端部とを相対的に回転させる回転装置と、
前記引き抜き装置および前記回転装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記シースの先端部の引き抜きを開始してから終了するまでの間に、前記シースの先端部の単位移動距離当たりの回転量が予め定められた所定回転量よりも小さくなるように前記引き抜き装置および前記回転装置を制御する第1制御と、前記シースの先端部の単位移動距離当たりの回転量が前記所定回転量以上となるように前記引き抜き装置および前記回転装置を制御する第2制御と、を実行するように構成されている、多芯ケーブルの撚り戻し装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1制御では、前記シースの先端部を回転させずに引き抜き、前記第2制御では、前記シースの先端部を回転させながら引き抜くように構成されている、請求項1に記載の多芯ケーブルの撚り戻し装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1制御の後に前記第2制御を実行するように構成されている、請求項1または2に記載の多芯ケーブルの撚り戻し装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記シースの先端部の引き抜きを開始してから終了するまでの間に、前記第1制御および前記第2制御を2回以上繰り返すように構成されている、請求項1~3のいずれか一つに記載の多芯ケーブルの撚り戻し装置。
【請求項5】
前記第1制御の各回の引き抜き長さは互いに等しく、および/または、前記第2制御の各回の引き抜き長さは互いに等しい、請求項4に記載の多芯ケーブルの撚り戻し装置。
【請求項6】
n回目(ただし、nは所定の自然数)の第1制御および第2制御における前記シースの先端部の合計の引き抜き長さは、m回目(ただし、mはn以外の所定の自然数)の第1制御および第2制御における前記シースの先端部の合計の引き抜き長さよりも短く、
n回目の第2制御における前記シースの先端部の回転量は、m回目の第2制御における前記シースの先端部の回転量よりも小さい、請求項4または5に記載の多芯ケーブルの撚り戻し装置。
【請求項7】
n回目(ただし、nは所定の自然数)の第1制御および第2制御における前記シースの先端部の合計の引き抜き長さをL、n回目の第2制御における前記シースの先端部の回転量をα、n+1回目の第1制御および第2制御における前記シースの先端部の合計の引き抜き長さをLn+1、n+1回目の第2制御における前記シースの先端部の回転量をαn+1としたときに、α/L=αn+1/Ln+1に設定されている、請求項4または5に記載の多芯ケーブルの撚り戻し装置。
【請求項8】
前記回転装置は、前記把持部材を回転させるアクチュエータを有している、請求項1~7のいずれか一つに記載の多芯ケーブルの撚り戻し装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記シースの先端部の引き抜きを開始してから終了するまでの間に、前記シースの先端部を60mm以上引き抜くように構成されている、請求項1~8のいずれか一つに記載の多芯ケーブルの撚り戻し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多芯ケーブルの先端のシースを引き抜くと共にシース内の電線の撚り癖を矯正する多芯ケーブルの撚り戻し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数本の電線とそれら電線を被覆するシースとを有する多芯ケーブルが知られている。多芯ケーブルに対しては、シースの先端部に切り込みを入れる処理、および、シースの先端部を引き抜くことによって各電線の先端部を露出させる処理が行われる。その後、例えば、各電線の先端部に端子を圧着する処理などが行われる。しかし、シースの先端部を引き抜いたときに電線に撚り癖が残っていると、電線に対するその後の処理を良好に行うことができない。そこで、従来から、電線の撚り癖を矯正する装置が提案されている。
【0003】
実開平3-120622号公報には、電線の撚り戻しとシースの引き抜きとを同時に行う電線撚り戻し装置が開示されている。この電線撚り戻し装置は、多芯ケーブルのシースの非剥離部を保持する保持部材と、剥離すべきシースを把持する把持手段とを備えている。把持手段は、シースを挟み込むことによって把持する上側部材および下側部材を有している。シースを引き抜く際、把持手段は保持部材から離れるように移動すると同時に、上側部材および下側部材が左右方向に互いに逆向きに移動する。これにより、シースは回転しながら引き抜かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平3-120622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シースの総回転量は、シース内にて撚れている電線の撚りピッチに応じて、予め設定することができる。シースのストリップ長をL[mm]、シースの総回転量をα[度]とした場合、引き抜かれるシースは、多芯ケーブルの軸方向に距離L[mm]だけ移動する間にα[度]だけ回転することになる。シースを一定の速度で引き抜くと共に一定の回転速度で回転させる場合、シースの単位移動距離当たりの回転量はα/L[度/mm]となる。
【0006】
ところが、本願発明者らによる試験の結果、シースを一定の速度で引き抜くと共に一定の回転速度で回転させた場合、引き抜くべきシースが長い場合等、電線の撚りを十分に矯正できない場合があることが分かった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、シースの引き抜きと電線の撚り癖の矯正とを同時に行う多芯ケーブルの撚り戻し装置において、撚り癖を従来よりも良好に矯正可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る多芯ケーブルの撚り戻し装置は、複数本の電線と前記電線を被覆するシースとを有する多芯ケーブルのシースの先端部を引き抜くと共に前記電線の撚り癖を矯正する多芯ケーブルの撚り戻し装置である。前記撚り戻し装置は、先端部と非先端部との間に切れ目が入ったシースの非先端部を保持する保持部材と、前記シースの先端部を把持する把持部材と、前記把持部材が前記保持部材から遠ざかるように前記把持部材および前記保持部材の少なくとも一方を移動させることにより、前記シースの先端部を引き抜く引き抜き装置と、前記把持部材に把持された前記シースの先端部と非先端部とを相対的に回転させる回転装置と、前記引き抜き装置および前記回転装置を制御する制御装置と、を備えている。前記制御装置は、前記シースの先端部の引き抜きを開始してから終了するまでの間に、前記シースの先端部の単位移動距離当たりの回転量が予め定められた所定回転量よりも小さくなるように前記引き抜き装置および前記回転装置を制御する第1制御と、前記シースの先端部の単位移動距離当たりの回転量が前記所定回転量以上となるように前記引き抜き装置および前記回転装置を制御する第2制御と、を実行するように構成されている。なお、「所定回転量よりも小さくなるように」には、回転量が零(言い換えると無回転)の場合が含まれる。
【0009】
多芯ケーブルでは、シースを引き抜く際に、電線はシースから摩擦力を受けて引っ張られる。ところが、シース内の電線には撚り癖がついているため、電線が引っ張られると、電線同士は密着する。電線同士が密着した状態では、電線が撚られている方向と逆方向にシースを回転させても、単位移動距離当たりの回転量が比較的小さいと、撚り癖は十分に矯正されない。
【0010】
ところが、上記撚り戻し装置によれば、シースの先端部の引き抜きを開始してから終了するまでの間に、第1制御および第2制御が実行される。第2制御では、シースの先端部の単位移動距離当たりの回転量は比較的大きい。例えば、シースのストリップ長をL[mm]、シースの総回転量をα[度]としたときに、第2制御におけるシースの単位移動距離当たりの回転量は、α/L[度/mm]よりも大きい。そのため、上記撚り戻し装置によれば、従来よりも撚り癖を矯正することができる。一方、第1制御では、シースの先端部の単位移動距離当たりの回転量は比較的小さいか、あるいは、零である。そのため、引き抜きを開始してから終了するまでの間に、シースの先端部の総回転量が大きくなりすぎることはない。よって、シースの先端部を過剰に回転させてしまうことが避けられ、電線に逆向きの新たな撚り癖を付けてしまうことはない。
【0011】
好ましい一態様によれば、前記制御装置は、前記第1制御では、前記シースの先端部を回転させずに引き抜き、前記第2制御では、前記シースの先端部を回転させながら引き抜くように構成されている。
【0012】
上記態様によれば、第1制御ではシースの先端部を回転させないので、その分だけ第2制御において、シースの先端部の単位移動距離当たりの回転量を大きくすることができる。よって、シースの先端部を過剰に回転させることを避けつつ、撚り癖を良好に矯正することができる。
【0013】
好ましい一態様によれば、前記制御装置は、前記第1制御の後に前記第2制御を実行するように構成されている。
【0014】
上記態様によれば、シースの先端部を良好に引き抜くことができると共に、電線の撚り癖を良好に矯正することができる。
【0015】
好ましい一態様によれば、前記制御装置は、前記シースの先端部の引き抜きを開始してから終了するまでの間に、前記第1制御および前記第2制御を2回以上繰り返すように構成されている。
【0016】
上記撚り戻し装置では、第2制御を実行するときに電線の撚り癖を良好に矯正することができるが、その際に、把持装置に把持されているシースの部分に近い電線の部分ほど、撚り癖を効果的に矯正することができる。上記態様によれば、第1制御および第2制御は2回以上繰り返して実行される。そのため、撚り癖の効果的な矯正をこまめに実行することができる。よって、撚り癖を更に良好に矯正することができる。
【0017】
好ましい一態様によれば、前記第1制御の各回の引き抜き長さは互いに等しく、および/または、前記第2制御の各回の引き抜き長さは互いに等しい。
【0018】
上記態様によれば、第1制御および/または第2制御が簡単になる。
【0019】
好ましい一態様によれば、n回目(ただし、nは所定の自然数)の第1制御および第2制御における前記シースの先端部の合計の引き抜き長さは、m回目(ただし、mはn以外の所定の自然数)の第1制御および第2制御における前記シースの先端部の合計の引き抜き長さよりも短い。n回目の第2制御における前記シースの先端部の回転量は、m回目の第2制御における前記シースの先端部の回転量よりも小さい。
【0020】
上記態様によれば、n回目の第1制御および第2制御と、m回目の第1制御および第2制御とにおいて、シースの先端部の単位移動距離当たりの回転量を比較的均等にすることができる。よって、n回目およびm回目の第1制御および第2制御において、電線の撚り癖を比較的均等に矯正することができる。
【0021】
好ましい一態様によれば、n回目(ただし、nは所定の自然数)の第1制御および第2制御における前記シースの先端部の合計の引き抜き長さをL、n回目の第2制御における前記シースの先端部の回転量をα、n+1回目の第1制御および第2制御における前記シースの先端部の合計の引き抜き長さをLn+1、n+1回目の第2制御における前記シースの先端部の回転量をαn+1としたときに、α/L=αn+1/Ln+1に設定されている。
【0022】
上記態様によれば、n回目の第1制御および第2制御と、n+1回目の第1制御および第2制御とにおいて、シースの先端部の単位移動距離当たりの回転量が等しい。よって、n回目およびn+1回目の第1制御および第2制御において、電線の撚り癖を均等に矯正することができる。
【0023】
好ましい一態様によれば、前記回転装置は、前記把持部材を回転させるアクチュエータを有している。
【0024】
上記態様によれば、シースの先端部を安定して回転させることができるので、少なくとも第2制御を安定して実行することができる。また、シースの先端部の回転量に拘わらず把持部材を小型化することができる。
【0025】
好ましい一態様によれば、前記制御装置は、前記シースの先端部の引き抜きを開始してから終了するまでの間に、前記シースの先端部を60mm以上引き抜くように構成されている。
【0026】
一般的に、シースの先端部の引き抜き長さが長いほど、電線の撚り癖の矯正は難しい。上記態様によれば、従来よりも撚り癖を良好に矯正できるという本発明の効果が、より顕著に発揮される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、シースの引き抜きと電線の撚り癖の矯正とを同時に行う多芯ケーブルの撚り戻し装置において、撚り癖を従来よりも良好に矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、一実施形態に係る多芯ケーブルの撚り戻し装置の斜視図である。
図2図2は撚り戻し装置の側面図である。
図3図3(a)は多芯ケーブルの平面図であり、図3(b)は先端部の内部を表す多芯ケーブルの平面図である。
図4図4は把持クランプの側面図である。
図5図5は把持クランプの断面図である。
図6図6は把持クランプの正面図である。
図7図7は、制御装置およびアクチュエータ類のブロック図である。
図8図8は制御装置の機能ブロック図である。
図9図9は、一実施形態について、シース先端部の引き抜き区間とそれら区間にて実行される制御との関係を表す図である。
図10図10(a)はシース先端部が実施形態の方法によって引き抜かれた多芯ケーブルのサンプルを表す写真であり、図10(b)はシース先端部が従来方法によって引き抜かれた多芯ケーブルのサンプルを表す写真である。
図11図11は、他の実施形態について、シース先端部の引き抜き区間とそれら区間にて実行される制御との関係を表す図である。
図12図12は、他の実施形態について、シース先端部の引き抜き区間とそれら区間にて実行される制御との関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る多芯ケーブルの撚り戻し装置(以下、単に撚り戻し装置と言う)について説明する。図1は撚り戻し装置1の斜視図であり、図2は撚り戻し装置1の側面図である。図3(a)は多芯ケーブル3の平面図であり、図3(b)は多芯ケーブル3の先端部の内部を表す平面図である。
【0030】
図3(a)および図3(b)に示すように、多芯ケーブル3は、複数本の被覆された電線4と、被覆されていない1本の電線6と、これらの電線4,6を被覆するシース5とを有している。図示は省略するが、電線6は、金属等の導電体からなる複数の素線を有している。電線4は、金属等の導電体からなる複数の素線と、それら素線を覆う合成樹脂等の絶縁体からなる被覆とを有している。以下では、被覆された電線4、被覆されていない電線6を、それぞれコア線、ドレイン線と称する。ここでは、多芯ケーブル3は、4本のコア線4を有している。ただし、コア線4の本数は特に限定されない。また、ドレイン線6の本数も特に限定されない。シース5の材料は特に限定されないが、例えば、クロロプレンゴム、塩化ビニル、ポリエチレン等である。
【0031】
図3(a)に示すように、撚り戻し装置1によって処理される多芯ケーブル3のシース5には、予め切れ目(スリットとも言う)5Cが入れられている。シース5は、切れ目5Cにより、先端部(以下、シース先端部という)5Aと非先端部5Bとに切断されている。図3(b)に示すように、シース5内において、コア線4およびドレイン線6は撚れている。すなわち、シース5内のコア線4およびドレイン線6は螺旋状に延びており、撚り癖がついている。撚り戻し装置1は、シース先端部5Aを引き抜くと共に、露出するコア線4およびドレイン線6の撚り癖を矯正するものである。
【0032】
図1に示すように、撚り戻し装置1は、多芯ケーブル3のシース5の非先端部5Bを保持する保持装置10と、シース先端部5Aを把持する把持装置20と、シース先端部5Aを引き抜く引き抜き装置30と、シース先端部5Aを回転させる回転装置40と、を備えている。また、図2に示すように、撚り戻し装置1は、それら保持装置10、把持装置20、引き抜き装置30、および回転装置40を制御する制御装置50を備えている。以下の説明では、便宜上、シース5の先端部5A側(図2の右側)を前側、非先端部5B側(図2の左側)を後側と言うこととする。シース先端部5Aは、前方に引き抜かれるものとする。
【0033】
図1に示すように、保持装置10は、左右一対のクランプ爪11L,11Rを有する保持クランプ11と、クランプ爪11L,11Rを互いに接近または離反させるように駆動するアクチュエータ12とを有している。アクチュエータ12は特に限定されないが、ここではエアシリンダによって構成されている。クランプ爪11L,11Rを互いに接近させると、保持クランプ11は閉じられる。これにより、シース5の非先端部5Bは、クランプ爪11L,11Rに挟まれることによって保持される。クランプ爪11L,11Rを互いに離反させると、保持クランプ11は開かれる。これにより、シース5の非先端部5Bの保持は解除される。
【0034】
把持装置20は、把持クランプ26と、把持クランプ26を開閉させるアクチュエータ25とを備えている。
【0035】
図4は把持クランプ26の側面図であり、図5は把持クランプ26の断面図である。図6は把持クランプ26の正面図である。把持クランプ26は、第1クランプ爪21と第2クランプ爪22とを有している。第1クランプ爪21および第2クランプ爪22は、シース先端部5Aを把持可能なように、互いに対向している。ここでは、第1クランプ爪21は、前後方向に並んだ複数の三角形状の板部材21aをそれぞれ有している(図5および図6参照)。また、第2クランプ爪22は、前後方向に並んだ複数の三角形状の板部材22aを有している。板部材21aおよび板部材22aは、前後方向に互い違いに配置されている。なお、ここで説明する第1クランプ爪21および第2クランプ爪22の構成は一例に過ぎない。シース先端部5Aを把持可能である限り、第1クランプ爪21および第2クランプ爪22の構成は特に限定されない。
【0036】
第1クランプ爪21および第2クランプ爪22が互いに接近すると、シース先端部5Aは第1クランプ爪21および第2クランプ爪22によって挟まれる。これにより、シース先端部5Aは第1クランプ爪21および第2クランプ爪22によって把持される。第1クランプ爪21および第2クランプ爪22が互いに離反すると、シース先端部5Aの把持は解除される。
【0037】
図5に示すように、把持クランプ26は、第1クランプ爪21および第2クランプ爪22に連結されたリンク機構23と、リンク機構23に連結されたピストンロッド24とを備えている。図2に示すように、ピストンロッド24はアクチュエータ25に連結されている。アクチュエータ25は特に限定されないが、ここではエアシリンダにより構成されている。ピストンロッド24は、アクチュエータ25に対して回転可能に連結されている。図2に示すように、アクチュエータ25がピストンロッド24を前方(図2の右方)に移動させると、第1クランプ爪21および第2クランプ爪22は互いに離間する。すなわち、ピストンロッド24が前方に伸張すると、把持クランプ26は開かれ、把持クランプ26による把持は解除される。一方、図4および図5に示すように、アクチュエータ25がピストンロッド24を後方に移動させると、第1クランプ爪21および第2クランプ爪22は互いに接近する。すなわち、ピストンロッド24が収縮すると、把持クランプ26は閉じられ、把持クランプ26はシース先端部5Aを把持する。なお、図4の実線は把持クランプ26が閉じた状態を表し、二点鎖線は把持クランプ26が開いた状態を表している。このように、把持クランプ26はアクチュエータ25によって開閉される。なお、図1ではピストンロッド24の図示は省略している。
【0038】
図1に示すように、回転装置40は、把持クランプ26を回転可能に支持する支持板43と、把持クランプ26に回転力を与えるモータ41とを有している。モータ41は支持板43に支持されている。モータ41の回転軸41aと把持クランプ26とは、ベルト42によって連結されている。ベルト42は、モータ41の動力を把持クランプ26に伝達する伝動部材である。ただし、伝動部材はベルト42に限らず、歯車、チェーン等の他の形態の伝動部材であってもよい。また、モータ41は把持クランプ26に回転力を与えるアクチュエータの一例であるが、把持クランプ26に回転力を与えるアクチュエータはモータ41に限定されない。本実施形態では、回転装置40は、把持クランプ26を回転させることにより、シース先端部5Aを回転させるように構成されている。
【0039】
引き抜き装置30は、多芯ケーブル3の長手方向に沿って把持クランプ26を保持クランプ11から遠ざかるように移動させることにより、シース先端部5Aを引き抜くように構成されている。引き抜き装置30は、把持装置20および回転装置40を支持する可動台31と、可動台31を前方および後方に移動させるモータ32と、可動台31およびモータ32を支持する固定台35とを備えている。固定台35の上には、前後に延びるレール36が設けられている。可動台31の右下部には、レール36に摺動可能に係合したスライダ37が固定されている。モータ32にはボールネジ33が接続されている。図2に示すように、可動台31の左下部には、ボールネジ33に係合するスライダ34が固定されている。スライダ34には、ボールネジ33が挿入された孔(図示せず)が形成されている。この孔の内周面には、ボールネジ33と係合する螺旋状の溝が形成されている。モータ32が一方の方向に回転すると、ボールネジ33が同方向に回転し、スライダ34は前方に移動する。その結果、把持クランプ26は前方に移動する。モータ32が逆方向に回転すると、ボールネジ33も逆方向に回転し、スライダ34は後方に移動する。その結果、把持クランプ26は後方に移動する。このように、モータ32が一方向または逆方向に回転することにより、把持クランプ26は前方または後方に移動する。
【0040】
制御装置50は、保持装置10、把持装置20、引き抜き装置30、および回転装置40を制御する。図7に示すように制御装置50は、CPU50A、ROM50B、RAM50C等を有するコンピュータにより構成されている。制御装置50は、保持装置10のアクチュエータ12、把持装置20のアクチュエータ25、引き抜き装置30のモータ32、および回転装置40のモータ41と通信可能に接続されている。制御装置50は、撚り戻し装置1用の専用のコンピュータであってもよく、パーソナルコンピュータ等の汎用のコンピュータであってもよい。
【0041】
図8は、制御装置50の機能ブロック図である。制御装置50は、ROM50Bまたは外部の記憶装置等に保存されたコンピュータプログラムを実行することにより、以下の引き抜き制御部51および回転引き抜き制御部52として機能する。
【0042】
引き抜き制御部51は、シース先端部5Aを回転させずに引き抜く制御(以下、第1制御という)を実行する。詳しくは、引き抜き制御部51は、回転装置40のモータ41を停止させつつ、引き抜き装置30のモータ32を駆動する。これにより、シース先端部5Aを把持する把持クランプ26は、回転することなく前方に移動する。
【0043】
回転引き抜き制御部52は、シース先端部5Aを回転させながら引き抜く制御(以下、第2制御という)を実行する。詳しくは、回転引き抜き制御部52は、回転装置40のモータ41を駆動しつつ、引き抜き装置30のモータ32を駆動する。これにより、シース先端部5Aを把持する把持クランプ26は、回転しながら前方に移動する。第2制御は第1制御に引き続いて行われる。本実施形態では、シース先端部5Aの引き抜きが開始されてから終了するまでの間に、第1制御および第2制御は複数回繰り返し行われる。なお、シース5内のコア線4およびドレイン線6の撚れている方向(以下、撚れ方向という)は予め分かっている。第2制御では、シース先端部5Aは、コア線4およびドレイン線6の撚れ方向と逆方向に回転させられる。
【0044】
以上が撚り戻し装置1の構成である。次に、撚り戻し装置1によるシース先端部5Aの引き抜き方法について説明する。以下の説明では、シース先端部5Aの引き抜きを開始してから終了するまでの間、シース先端部5Aを一定の回転角度で回転させながら一定の速度で引き抜く方法を「従来方法」と言う。この従来方法と対比させながら、本実施形態に係る引き抜き方法について説明する。
【0045】
引き抜かれるシース先端部5Aの長さ(すなわち、ストリップ長)をL[mm]、引き抜きを開始してから終了するまでの間のシース先端部5Aの総回転量をα[度]とする。従来方法では、引き抜きを開始してから終了するまでの間、シース先端部5Aは一定の回転角度で回転しながら一定の速度で前方に移動するので、シース先端部5Aの単位移動距離当たりの回転量は、α/L[度/mm]となる。例えば、L=80[mm]、α=960[度]の場合、シース先端部5Aは、α/L=12[度/mm]の条件下で回転しながら引き抜かれる。
【0046】
一方、本実施形態では、図9に示すように、シース先端部5Aの引き抜きを開始してから終了するまでの間を8つの区間に分け、第1制御および第2制御を4回繰り返す。図中の記号C1、C2は、それぞれ第1制御、第2制御を実行する区間を表している。第1制御では、シース先端部5Aを回転させずに一定の速度で10mm引き抜く。第2制御では、従来方法と同様、シース先端部5Aを一定の速度で回転させながら一定の速度で引き抜く。しかし、本実施形態では、合計4回の第2制御を行うことによって総回転量α=960[度]回転させるので、第2制御の一回当たりの回転量は960/4=240[度]となる。第2制御における単位移動距離当たりの回転量α/Lは、240/10=24[度/mm]であり、従来方法の2倍となる。
【0047】
図10(a)に、シース先端部5Aが本実施形態に係る方法によって引き抜かれた多芯ケーブルの3本のサンプルを表す。図10(b)に、シース先端部5Aが従来方法によって引き抜かれた多芯ケーブルの3本のサンプルを表す。図10(a)および図10(b)を見比べると分かるように、本実施形態によれば、コア線4およびドレイン線6の撚り癖は、従来よりも良好に矯正される。
【0048】
多芯ケーブル3では、シース先端部5Aとコア線4との間、および、シース先端部5Aとドレイン線6との間に、摩擦力が発生する。シース先端部5Aを回転させると、この摩擦力により、コア線4およびドレイン線6に回転力が伝えられ、撚り癖が矯正される。しかし、シース先端部5Aは前方に引っ張られるので、上記摩擦力により、コア線4およびドレイン線6も前方に引っ張られる。ここで、コア線4およびドレイン線6は撚れているので、引っ張られると互いに密着してしまう。コア線4およびドレイン線6が互いに密着していると、シース先端部5Aを比較的大きく回転させなければ、コア線4およびドレイン線6の撚り癖を十分に矯正できないと推定される。従来方法では、シース先端部5Aの単位移動距離当たりの回転量が比較的小さいため、コア線4およびドレイン線6の撚り癖を十分に矯正できないものと推定される。
【0049】
これに対して、本実施形態では、第1制御および第2制御を行い、第2制御において、シース先端部5Aの単位移動距離当たりの回転量が比較的大きい。第2制御における単位移動距離当たりの回転力は、従来方法の2倍である。そのため、コア線4およびドレイン線6の撚り癖を十分に矯正することができたものと推定される。なお、シース先端部5Aを引き抜かずに回転させることも可能であるが、装置の運転条件次第では、コア線4およびドレイン線6が回転中心から径方向の外側に膨らみ、座屈が生じる場合があり得る。しかし、第2制御では、シース先端部5Aを引き抜きながら回転させる。そのため、コア線4およびドレイン線6の座屈を防止することができる。
【0050】
ところで、従来方法において、単位移動距離当たりの回転量を大きくすることが考えられる。例えば、従来方法において、α/L=24[度/mm]とすることが考えられる。しかし、その場合、シース先端部5Aの総回転量は、24[度/mm]×80[mm]=1920度となる。総回転量は2倍となる。ところが、総回転量が大きすぎると、コア線4およびドレイン線6を撚り方向と逆方向に過剰に撚り戻してしまい、コア線4およびドレイン線6の品質が低下するおそれがある。また、コア線4およびドレイン線6に、逆方向の新たな撚り癖を付けてしまうおそれがある。一方、本実施形態によれば、第1制御ではシース先端部5Aを回転させない。そのため、第2制御における単位移動距離当たりの回転量が比較的大きくても、シース先端部5Aの総回転量が大きくなりすぎることはない。
【0051】
本実施形態によれば、シース先端部5Aを良好に引き抜くことができると共に、コア線4およびドレイン線6の品質を損なうことなく、それらの撚り癖を良好に矯正することができる。本実施形態によれば、従来方法と同様、シース先端部5Aの引き抜きとコア線4およびドレイン線6の矯正とを同時に行うことができるので、多芯ケーブル3の処理のサイクルタイムを短縮することができる。加えて、本実施形態によれば、コア線4およびドレイン線6の撚り癖を従来よりも良好に矯正することができるので、コア線4およびドレイン線6に対するその後の処理を良好に行うことができる。コア線4およびドレイン線6に対するその後の処理を自動化しやすくなる。
【0052】
ところで、シース先端部5Aがコア線4およびドレイン線6の先端近傍にあるときにシース先端部5Aを回転させた場合、コア線4およびドレイン線6の先端近傍部分は撚り戻すことができるが、根元部分は撚り戻すことができない。特に、ストリップ長が長い場合、そのような傾向が大きい。しかし、本実施形態では、第1制御および第2制御を複数回繰り返す。そのため、シース先端部5Aの引き抜きを開始してから終了するまでの間に、コア線4およびドレイン線6の撚り戻しをこまめに行うことができる。また、第1制御にてシース先端部5Aを引き抜いた部分に対して、第2制御において撚り癖を集中的に矯正することができる。例えば、1回目の第2制御のときには、コア線4およびドレイン線6の根元部分を十分に撚り戻すことができる。4回目の第2制御のときには、コア線4およびドレイン線6の先端部分を十分に撚り戻すことができる。したがって、ストリップ長が長い場合であっても、コア線4およびドレイン線6の撚り癖を良好に矯正することができる。
【0053】
本実施形態では、第1制御および第2制御において、シース先端部5Aを同一速度で引っ張ることとしている。第1制御におけるシース先端部5Aの引き抜き速度は、第2制御におけるシース先端部5Aの引き抜き速度と等しい。すなわち、第1制御における把持クランプ26の移動速度と、第2制御における把持クランプ26の移動速度とは等しい。これにより、第1制御から第2制御に移行するとき、および、第2制御から第1制御に移行するときに、シース先端部5Aの移動速度に変化はない。よって、シース先端部5Aを安定して引き抜くことができる。
【0054】
本実施形態では、第1制御および第2制御における引き抜き長さは、いずれも10mmである。第1制御における引き抜き長さは、第2制御における引き抜き長さと等しい。これにより、シース先端部5Aを良好に引き抜くことができると共に、コア線4およびドレイン線6の撚り癖をより良好に矯正することができる。
【0055】
本実施形態では、1~4回目の第1制御における引き抜き長さは、いずれも10mmである。また、1~4回目の第2制御における引き抜き長さは、いずれも10mmである。第1制御の各回の引き抜き長さは互いに等しい。第2制御の各回の引き抜き長さは互いに等しい。これにより、第1制御および第2制御が簡単になる。また、コア線4およびドレイン線6の撚り戻しを均等に行うことができる。
【0056】
本実施形態に係る撚り戻し装置1では、回転装置40は、把持クランプ26を回転させるように構成されている。シース先端部5Aを把持する把持クランプ26を回転させることにより、シース先端部5Aを回転させる。そのため、シース先端部5Aを安定して回転させることができる。したがって、第1制御および第2制御を安定して実行することができる。また、シースを挟み込む上側部材および下側部材を互いに逆向きに移動させることによってシース先端部を回転させる構成(実開平3-120622号公報参照)では、シース先端部の回転量の分だけ、上側部材および下側部材の寸法(すなわち、移動方向の長さ)を確保しなければならない。そのため、シース先端部の回転量が大きいと、上側部材および下側部材は大型化する。一方、本実施形態に係る回転装置40によれば、シース先端部5Aの回転量が大きくても、把持クランプ26は大型化しない。よって、シース先端部5Aの回転量に拘わらず、把持クランプ26を小型化することができる。
【0057】
なお、撚り戻し装置1において、シース先端部5Aを引き抜くときの把持クランプ26の移動距離は特に限定されない。言い換えると、引き抜かれるシース先端部5Aの長さ(ストリップ長)は特に限定されない。ただし、一般的に、ストリップ長が長いほど、コア線4およびドレイン線6の撚り癖を矯正することは難しくなる。そのため、ストリップ長の長い多芯ケーブル3ほど、本実施形態に係る撚り戻し装置1の効果、すなわち、コア線4およびドレイン線6の撚り癖を良好に矯正できるという効果は、顕著となる。例えば、ストリップ長が60mm以上の場合、本実施形態に係る撚り戻し装置1は特に効果的である。制御装置50は、シース先端部5Aの引き抜きを開始してから終了するまでの間に、シース先端部5Aを60mm以上引き抜くように構成されていてもよい。
【0058】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、前記実施形態は一例に過ぎず、他にも様々な実施形態が可能である。次に、他の実施形態の例について説明する。
【0059】
前記実施形態では、第1制御における引き抜き長さと第2制御における引き抜き長さとは等しく、いずれも10mmである。しかし、第1制御における引き抜き長さと第2制御における引き抜き長さとは、異なっていてもよい。例えば、図11に示すように、ストリップ長が90mmの場合に、第1制御における引き抜き長さを20mm、第2制御における引き抜き長さを10mmとしてもよい。この場合、第2制御における引き抜き長さ(=10mm)は、第1制御および第2制御における合計の引き抜き長さ(=30mm)の1/3である。第2制御における回転量は適宜に設定することができる。例えば、第2制御における単位移動距離当たりの回転量α/Lは、従来方法における単位移動距離当たりの回転量α/Lの3倍としてもよい。なお、第1制御における引き抜き長さは、第2制御における引き抜き長さよりも長くてもよく、短くてもよい。
【0060】
前記実施形態(図9参照)では、第1制御の各回の引き抜き長さは互いに等しく、第2制御の各回の引き抜き長さは互いに等しい。例えば、1回目の第1制御の引き抜き長さは10mmであり、2回目の第1制御の引き抜き長さは10mmである。しかし、複数回の第1制御について、引き抜き長さは異なっていてもよい。また、複数回の第2制御について、引き抜き長さは異なっていてもよい。例えば、図12に示すように、1回目の第1制御の引き抜き長さが50mm、2回目の第1制御の引き抜き長さが20mmであってもよい。
【0061】
第1制御および第2制御を複数回行う場合、各回の単位移動距離当たりの回転量α/Lが一定となるようにしてもよい。これにより、コア線4およびドレイン線6の撚り癖を均等に矯正することができる。nを所定の自然数とし、n回目の第1制御および第2制御における合計の引き抜き長さをL、n回目の第2制御における回転量をα、n+1回目の第1制御および第2制御における合計の引き抜き長さをLn+1、n+1回目の第2制御における回転量をαn+1としたときに、α/L=αn+1/Ln+1に設定されていてもよい。例えば図12に示す例では、L1=60mm、L2=30mmであるので、α1/60=α2/30としてもよい。この場合、α2=0.5×α1となる。
【0062】
上記の例では、L2はL1よりも短く、α2はα1よりも小さい。このように、第1制御および第2制御を複数回行う場合、各回の合計の引き抜き長さが短いほど回転量を小さくするようにしてもよい。n回目の第1制御および第2制御における合計の引き抜き長さが、m回目(ただし、mはn以外の所定の自然数)の第1制御および第2制御における合計の引き抜き長さよりも短い場合に、n回目の第2制御における回転量は、m回目の第2制御における回転量よりも小さくてもよい。これにより、コア線4およびドレイン線6の撚り癖を比較的均等に矯正することができる。
【0063】
第1制御と第2制御とで、引き抜き速度は等しくてもよく、異なっていてもよい。また、第1制御の各回の引き抜き速度は、互いに異なっていてもよい。第2制御の各回の引き抜き速度は、互いに異なっていてもよい。例えば、後の回ほど、引き抜き速度を大きくしてもよく、小さくしてもよい。
【0064】
第1制御および第2制御は、1回のみ行ってもよい。例えば、ストリップ長の短い多芯ケーブル3の場合、第1制御および第2制御を1回行うだけでも、コア線4およびドレイン線6の撚り癖を良好に矯正することができる。
【0065】
前記実施形態では、シース先端部5Aの引き抜き開始直後に第1制御を行うが、引き抜き開始直後に第2制御を行うようにしてもよい。
【0066】
前記実施形態では、第1制御ではシース先端部5Aを回転させないが、第1制御において、シース先端部5Aを回転させながら引き抜くことも可能である。シース先端部5Aの総回転量が一定の場合、第1制御における単位移動距離当たりの回転量α/Lを従来よりも小さくすることにより、第2制御における単位移動距離当たりの回転量α/Lを従来よりも大きくすることができる。例えば、第1制御では、シース先端部5Aを第1回転速度で回転させながら引き抜き、第2制御では、シース先端部5Aを第1回転速度よりも大きな第2回転速度で回転させながら引き抜くようにする。このような制御であっても、第2制御において、α/Lを従来方法より大きくすることができる。よって、コア線4およびドレイン線6の撚り癖を従来方法よりも良好に矯正することができる。
【0067】
シース先端部5Aの引き抜きを開始してから終了するまでの間に、第1制御および第2制御のみを行ってもよく、第1制御および第2制御に加えて、他の制御を行ってもよい。例えば、シース先端部5Aの引き抜き開始直後に、シース先端部5Aをコア線4およびドレイン線6の撚り方向と同方向に回転させながら引き抜く制御を行い、その後に第1制御および第2制御を行ってもよい。なお、第2制御では、シース先端部5Aを回転させながら引き抜くが、この際の回転方向はコア線4およびドレイン線6の撚り方向と逆方向である。
【0068】
シース先端部5Aを回転させる方法は特に限定されない。シース先端部5Aを回転させるための構成は、特に限定されない。例えば、把持クランプ26が上下一対のクランプ部材を有し、それらクランプ部材がシース先端部5Aを挟んだ状態のまま、左右方向に互いに逆向きに移動するように構成されていてもよい。この場合、シース先端部5Aは、上下一対のクランプ部材に転がされることにより回転する。
【0069】
前記実施形態では、シース5の非先端部5Bを静止させつつ、シース先端部5Aを回転させることとした。しかし、シース先端部5Aを非先端部5Bに対して相対的に回転させることができれば足り、回転装置の構成および動作は特に限定されない。シース5の非先端部5Bを回転させ、シース先端部5Aを回転させないようにしてもよい。シース先端部5Aおよび非先端部5Bの両方を互いに逆方向に回転させるようにしてもよい。
【0070】
把持クランプ26の構成は特に限定されない。把持クランプ26は、シース先端部5Aを把持可能な任意の構成を備えていてもよい。例えば、把持クランプ26は、第1クランプ爪21および第2クランプ爪22に代えて、シース先端部5Aを把持する一対の板状部材を備えていてもよい。
【0071】
前記実施形態では、多芯ケーブル3は、4本のコア線4と1本のドレイン線6を有する。しかし、コア線4の本数およびドレイン線6の本数は特に限定されない。また、ドレイン線6は必ずしも必要ではない。多芯ケーブル3は、複数の被覆電線を有し、かつ、被覆されていない電線を有していなくてもよい。また、多芯ケーブル3は、被覆されていない複数の電線を有し、かつ、被覆電線を有していなくてもよい。
【0072】
前記実施形態では、引き抜き装置30は、把持クランプ26を移動させることにより、シース先端部5Aを引き抜くように構成されている。しかし、引き抜き装置30は、保持クランプ11を把持クランプ26から遠ざかるように移動させることにより、シース先端部5Aを引き抜くように構成されていてもよい。また、引き抜き装置30は、把持クランプ26が保持クランプ11から遠ざかるように把持クランプ26および保持クランプ11の両方を移動させることにより、シース先端部5Aを引き抜くように構成されていてもよい。
【0073】
前記実施形態に係る撚り戻し装置1の構成は一例に過ぎない。前述の第1制御および第2制御を実行可能な任意の装置を撚り戻し装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 多芯ケーブルの撚り戻し装置
3 多芯ケーブル
4 被覆電線(コア線)
5 シース
5A シースの先端部
5B シースの非先端部
6 被覆されていない電線(ドレイン線)
10 保持装置
11 保持クランプ(保持部材)
12 アクチュエータ
20 把持装置
25 アクチュエータ
26 把持クランプ(把持部材)
30 引き抜き装置
32 モータ
40 回転装置
41 モータ(アクチュエータ)
50 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12