(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】電気機械
(51)【国際特許分類】
H02K 1/279 20220101AFI20240528BHJP
H02K 1/276 20220101ALI20240528BHJP
H02K 21/24 20060101ALI20240528BHJP
H02K 21/22 20060101ALI20240528BHJP
H02K 21/16 20060101ALI20240528BHJP
H02K 21/12 20060101ALI20240528BHJP
H02K 1/2796 20220101ALI20240528BHJP
【FI】
H02K1/279
H02K1/276
H02K21/24 M
H02K21/22 M
H02K21/16 M
H02K21/12 M
H02K1/2796
(21)【出願番号】P 2022572868
(86)(22)【出願日】2020-12-29
(86)【国際出願番号】 JP2020049286
(87)【国際公開番号】W WO2022145035
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 真也
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/092924(WO,A1)
【文献】特開2014-7957(JP,A)
【文献】特開2000-41367(JP,A)
【文献】特開2003-513599(JP,A)
【文献】特開2007-306745(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103633806(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/279
H02K 1/276
H02K 21/24
H02K 21/22
H02K 21/16
H02K 21/12
H02K 1/2796
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電機子部と、
前記電機子部に対して相対移動可能である界磁部と
を有し、
前記界磁部は、前記電機子部と前記界磁部との相対移動の方向である機械動作方向で並んでいる複数の界磁コアと、隣り合う2つの界磁コアの間にそれぞれが配置されている複数の磁石とを含み、
前記電機子部は、前記機械動作方向に対して交差する方向で離れている第1電機子コアと第2電機子コアと、前記第1電機子コアと前記第2電機子コアとを磁気的に結合しているコア連結構造と、複数のコイルと、を含み、
前記第1電機子コアは、前記機械動作方向で並んでおり且つ磁気的に結合している第1磁極組と第2磁極組とを有し、
前記第2電機子コアは、前記機械動作方向で並んでおり且つ磁気的に結合している第3磁極組と第4磁極組とを有し、
前記機械動作方向における前記第1磁極組の位置は、前記機械動作方向における前記第3磁極組の位置に対応しており、
前記機械動作方向における前記第2磁極組の位置は、前記機械動作方向における前記第4磁極組の位置に対応しており、
前記複数のコイルは、前記第1磁極組と前記第3磁極組のうちの一方に設けられている第1コイルを含み、
前記第1コイルを通過する第1磁束と前記第1コイルを通過する第2磁束とが前記複数の磁石のうちの1つ又は複数によって形成され、
前記第1磁束が流れる第1磁気回路は、前記第1磁極組、前記第2磁極組、前記第3磁極組、前記第4磁極組、前記界磁コア、及び前記磁石を含み、
前記第2磁束が流れる第2磁気回路は、前記第1磁極組、前記コア連結構造、前記第3磁極組、前記界磁コア、及び前記磁石を含み、
前記界磁部は、前記機械動作方向に沿っている第1の面を有し、
前記第1電機子コアと前記第2電機子コアは、前記界磁部の前記第1の面に対して、前記機械動作方向に対して交差している第1の方向に位置し、
前記コア連結構造は前記機械動作方向で並んでいる複数のコア連結部を含み、
前記複数のコア連結部は、前記第1磁極組と、前記第3磁極組と、前記第1コイルとに対して前記第1の方向に位置しているコア連結部を含んでいる
電気機械。
【請求項2】
電機子部と、
前記電機子部に対して相対移動可能である界磁部と
を有し、
前記界磁部は、前記電機子部と前記界磁部との相対移動の方向である機械動作方向で並んでいる複数の界磁コアと、隣り合う2つの界磁コアの間にそれぞれが配置されている複数の磁石とを含み、
前記電機子部は、前記機械動作方向に対して交差する方向で離れている第1電機子コアと第2電機子コアと、前記第1電機子コアと前記第2電機子コアとを磁気的に結合しているコア連結構造と、複数のコイルと、を含み、
前記第1電機子コアは、前記機械動作方向で並んでおり且つ磁気的に結合している第1磁極組と第2磁極組とを有し、
前記第2電機子コアは、前記機械動作方向で並んでおり且つ磁気的に結合している第3磁極組と第4磁極組とを有し、
前記機械動作方向における前記第1磁極組の位置は、前記機械動作方向における前記第3磁極組の位置に対応しており、
前記機械動作方向における前記第2磁極組の位置は、前記機械動作方向における前記第4磁極組の位置に対応しており、
前記複数のコイルは、前記第1磁極組と前記第3磁極組のうちの一方に設けられている第1コイルを含み、
前記第1コイルを通過する第1磁束と前記第1コイルを通過する第2磁束とが前記複数の磁石のうちの1つ又は複数によって形成され、
前記第1磁束が流れる第1磁気回路は、前記第1磁極組、前記第2磁極組、前記第3磁極組、前記第4磁極組、前記界磁コア、及び前記磁石を含み、
前記第2磁束が流れる第2磁気回路は、前記第1磁極組、前記コア連結構造、前記第3磁極組、前記界磁コア、及び前記磁石を含み、
前記界磁部は、前記機械動作方向に沿っている第1の面と第2の面とを有し、
前記第1電機子コアは、前記界磁部の前記第1の面に対して、前記機械動作方向に対して交差する第1の方向に位置し、
前記第2電機子コアは、前記界磁部の前記第2の面に対して、前記機械動作方向に対して交差する第2の方向に位置している
電気機械。
【請求項3】
前記第1電機子コアと前記第2電機子コアのうち少なくとも一方の電機子コアは積層されている複数の鋼板を含む積層鋼板であり、前記複数のコア連結部が前記鋼板の積層方向においてそれぞれ嵌められる複数の嵌合穴を有し、
前記少なくとも一方の電機子コアには、前記複数の嵌合穴のそれぞれについて、前記鋼板の前記積層方向に対して交差する方向に前記嵌合穴から延びているスリット又は前記鋼板の前記積層方向に対して交差する方向に開いている開口が形成されている
請求項1に記載される電気機械。
【請求項4】
前記界磁部は前記電機子部に対して軸線を中心にして相対的に回転可能であり、
前記第1電機子コアと前記第2電機子コアのうち少なくとも一方の電機子コアは積層されている複数の鋼板を含む積層鋼板であり、前記複数のコア連結部が前記鋼板の積層方向においてそれぞれ嵌められる複数の嵌合穴を有し、
前記少なくとも一方の電機子コアは、前記複数の嵌合穴と前記少なくとも一方の電機子コアに形成されている前記複数の磁極組との間を通過し且つ前記軸線を取り囲む閉曲線と、交差するスリットが形成されている
請求項1又は3に記載される電気機械。
【請求項5】
前記コア連結構造は、前記機械動作方向で並んでいる複数のコア連結部を含み、
前記第1電機子コアと前記第2電機子コアのうち少なくとも一方の電機子コアは積層されている複数の鋼板を含む積層鋼板であり、前記複数のコア連結部が前記鋼板の積層方向においてそれぞれ嵌められる複数の嵌合穴を有し、
前記少なくとも一方の電機子コアには、前記複数の嵌合穴のそれぞれについて、前記鋼板の前記積層方向に対して交差する方向に前記嵌合穴から延びているスリット又は前記鋼板の前記積層方向に対して交差する方向に開いている開口が形成されている
請求項2に記載される電気機械。
【請求項6】
前記界磁部は前記電機子部に対して軸線を中心として相対的に回転可能であり、
前記コア連結構造は回転方向で並んでいる複数のコア連結部を含み、
前記第1電機子コアと前記第2電機子コアのうち少なくとも一方の電機子コアは積層されている複数の鋼板を含む積層鋼板であり、前記複数のコア連結部が前記鋼板の積層方向においてそれぞれ嵌められる複数の嵌合穴を有し、
前記少なくとも一方の電機子コアは、前記複数の嵌合穴と前記少なくとも一方の電機子コアに形成されている前記複数の磁極組との間を通過し且つ前記軸線を取り囲む閉曲線と、交差するスリットが形成されている
請求項2又は5に記載される電気機械。
【請求項7】
前記コア連結構造は、前記第1電機子コアと前記第2電機子コアのうちの一方と一体的に形成されている
請求項1又は2に記載される電気機械。
【請求項8】
前記コア連結構造は前記機械動作方向で並んでいる複数のコア連結部を含み、
前記第1電機子コアは第1ヨーク部を有し、前記第1磁極組と前記第2磁極組は前記第1ヨーク部の前記界磁部側に形成されており、
前記第2電機子コアは第2ヨーク部を有し、前記第3磁極組と前記第4磁極組は前記第2ヨーク部の前記界磁部側に形成されており、
前記複数のコア連結部は、前記第1ヨーク部と前記第2ヨーク部とを磁気的に結合し且つ前記機械動作方向での前記第1磁極組の位置と前記第3磁極組の位置とに対応した位置に配置されているコア連結部を含んでいる
請求項2、5、及び6のいずれかに記載される電気機械。
【請求項9】
前記第1磁極組、前記第2磁極組、前記第3磁極組、及び前記第4磁極組のそれぞれは、前記機械動作方向で並んでいる複数の磁極を有している
請求項1乃至8のいずれかに記載される電気機械。
【請求項10】
前記複数の磁極のそれぞれは、前記界磁部に向かって突出する形状を有している
請求項9に記載される電気機械。
【請求項11】
前記複数の磁極のそれぞれは、前記界磁部に向かって突出する形状を有している本体と、前記本体から機械動作方向に対して交差する方向で伸びている突出部とを有している
請求項9に記載される電気機械。
【請求項12】
前記電気機械の相数は3以上の奇数であり、
前記電機子部は、1つのコイル又は同じ巻回方向を有する2以上のコイルを各相について有し、
前記第1磁極組と前記第3磁極組が第1磁極組対を構成し、
前記第2磁極組と前記第4磁極組が第2磁極組対を構成し、
前記第1磁極組対と前記第2磁極組対のそれぞれに前記コイルが設けられ、
極性が同じであり且つ隣り合う2つの界磁コア間の角度を電気角で360度としたとき、前記第1磁極組対と前記第2磁極組対は電気角で実質的に「360×(n+m/s)」度だけ離れている、
ここでs、m、n、はそれぞれ以下の数を表す
s:相数
m:1以上、s-1以下の整数(ただしsの約数(1を除く)および約数(1を除く)の倍数を除く)
n:1以上の整数
請求項1乃至11のいずれかに記載の電気機械。
【請求項13】
前記界磁部と前記電機子部は相対回転可能であり、
(界磁部の極数)/2をp、各相についてのコイルの数をcとしたときに、
「(360/p)×(n+m/s)」は「360/s/c」に実質的に等しい
請求項12に記載の電気機械。
【請求項14】
前記電気機械の相数は3以上の奇数であり、
前記電機子部は、異なる巻回方向を有する2つのコイルで構成されるコイル対を、各相について有し、
前記第1電機子コアは、前記第1磁極組と前記第2磁極組と第5磁極組とを有し、
前記第2電機子コアは、前記第3磁極組と前記第4磁極組と第6磁極組とを有し、
前記第1磁極組と前記第3磁極組が第1磁極組対を構成し、
前記第2磁極組と前記第4磁極組が第2磁極組対を構成し、
前記第5磁極組と前記第6磁極組が第3磁極組対を構成し、
前記第1磁極組対のコイルの巻回方向と前記第2磁極組対のコイルの巻回方向は同じであり、前記第1磁極組対の前記コイルと前記第3磁極組対のコイルは前記コイル対を構成し、
極性が同じであり且つ隣り合う2つの界磁コア間の角度を電気角で360度としたとき、(i)前記第1磁極組対と前記第2磁極組対は電気角で実質的に「360×(n+m/s)」度だけ離れており、(ii)前記第1磁極組対と前記第3磁極組対は電気角で実質的に「360×(q+1/2)」度だけ離れている、
ここでs、m、n、qはそれぞれ以下の数を表す、
s:相数
m:1以上、s-1以下の整数(ただしsの約数(1を除く)および約数(1を除く)の倍数を除く)
n:1以上の整数
q:1以上の整数
請求項1乃至11のいずれかに記載の電気機械。
【請求項15】
前記界磁部と前記電機子部は相対回転可能であり、
(界磁部の極数)/2をp、各相についてのコイル対の数をcとしたときに、
「(360/p)×(n+m/s)」は「360/s/c」に実質的に等しい
請求項14に記載の電気機械。
【請求項16】
前記電気機械の相数は2以上の偶数であり、
前記電機子部は、異なる巻回方向を有する2つのコイルで構成されるコイル対を、各相について有し、
前記第1電機子コアは、前記第1磁極組と第2磁極組と第5磁極組とを有し、
前記第2電機子コアは、前記第3磁極組と第4磁極組と第6磁極組とを有し、
前記第1磁極組と前記第3磁極組とが第1磁極組対を構成し、
前記第2磁極組と前記第4磁極組とが第2磁極組対を構成し、
前記第5磁極組と前記第6磁極組とが第3磁極組対を構成し、
前記第1磁極組対のコイルの巻回方向と前記第2磁極組対のコイルの巻回方向は同じであり、前記第1磁極組対の前記コイルと前記第3磁極組対のコイルは前記コイル対を構成し、
極性が同じであり且つ隣り合う2つの界磁コア間の角度を電気角で360度としたとき、(i)前記第1磁極組対と前記第2磁極組対は電気角で実質的に「360×(n+m/s/2)」度だけ離れており、(ii)前記第1磁極組対と前記第3磁極組対は電気角で相対的に実質的に「360×(q+1/2)」度だけ離れている
ここでs、m、n、qはそれぞれ以下の数を表す、
s:相数
m:1以上、s-1以下の整数(ただしsの約数(1を除く)および約数(1を除く)の倍数を除く)
n:1以上の整数
q:1以上の整数
請求項1乃至11のいずれかに記載の電気機械。
【請求項17】
前記界磁部と前記電機子部は相対回転可能であり、
(界磁部の極数)/2をp、各相についてのコイル対の数をcとしたときに、
「(360/p)×(n+m/s/2)」は「180/s/c」に実質的に等しい、
請求項16に記載の電気機械。
【請求項18】
前記複数の磁石のそれぞれは前記機械動作方向に磁化されており、
前記複数の界磁コアのそれぞれは、隣り合う2つの磁石の間に配置され且つ前記機械動作方向で離れている2つの部分界磁コアを含んでいる
請求項1乃至17のいずれかに記載の電気機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、特許文献2、及び特許文献3において、ステータコアは回転方向で並んでいる複数のコア部を有し、複数のコイルが複数のコア部にそれぞれ設けられている。各コア部は、軸方向で対向する2つの板状部分と、2つの板状部分のそれぞれから径方向に突出する複数の磁極とを有している。軸方向で対向している2つの板状部分は磁気的に結合しており、この2つの板状部分と、回転子に設けられている磁石とによって磁気回路が形成される。
【0003】
例えば、特許文献1においては、2つの固定子板15が軸方向で対向し、且つそれらはブリッジコア10で磁気的に結合している。各固定子板15に径方向に突出する磁極(クローポール12、13)が形成されている。特許文献2おいても、軸方向で対向する磁極板21・25に回転子に対向する極歯23・27がそれぞれ形成されている。磁極板21・25は軸方向で延びている磁極芯22dによって磁気的に結合している。特許文献3においても、固定鉄心2の上層部2aと下層部2bは軸方向で対向し、上層部2aと下層部2bのそれぞれに突出部2c・2d(磁極)が形成されている。上層部2aと下層部2bは軸方向で延びている固定子圧粉鉄心1によって磁気的に結合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2003-513599号公報
【文献】特開2007-306745号公報
【文献】特開2007-185087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2及び3で開示されている構造においては、軸方向で対向する2つの板部が軸方向で延びている部分で磁気的に結合し、このことによって閉じた磁気回路を形成している。このような磁気回路では、回転電機を小型化すると、一方の板部から他方の板部に流れる磁束が形成される磁路が狭くなり、この磁路が磁気的に飽和し易くなる。磁気的な飽和を避けるために、コイルに供給する電流を低く抑える必要があり、大きなトルクを得るのが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示で提案する電気機械の一例は、電機子部と、前記電機子部に対して相対移動可能である界磁部とを有している。前記界磁部は、前記電機子部と前記界磁部との相対移動の方向である機械動作方向で並んでいる複数の界磁コアと、隣り合う2つの界磁コアの間にそれぞれが配置されている複数の磁石とを含む。前記電機子部は、前記機械動作方向に対して交差する方向で離れている第1電機子コアと第2電機子コアと、前記第1電機子コアと前記第2電機子コアとを磁気的に結合しているコア連結構造と、複数のコイルとを含む。前記第1電機子コアは、前記機械動作方向で並んでおり且つ磁気的に結合している第1磁極組と第2磁極組とを有している。前記第2電機子コアは、前記機械動作方向で並んでおり且つ磁気的に結合している第3磁極組と第4磁極組とを有している。前記機械動作方向における前記第1磁極組の位置は、前記機械動作方向における前記第3磁極組の位置に対応している。前記機械動作方向における前記第2磁極組の位置は、前記機械動作方向における前記第4磁極組の位置に対応している。前記複数のコイルは、前記第1磁極組と前記第3磁極組のうちの一方に設けられている第1コイルを含んでいる。前記第1コイルを通過する第1磁束と前記第1コイルを通過する第2磁束とが前記複数の磁石のうちの1つ又は複数によって形成される。前記第1磁束が流れる第1磁気回路は、前記第1磁極組、前記第2磁極組、前記第3磁極組、前記第4磁極組、前記界磁コア、及び前記磁石を含む。前記第2磁束が流れる第2磁気回路は、前記第1磁極組、前記コア連結構造、前記第3磁極組、前記界磁コア、及び前記磁石を含む。この電気機械によると、磁気回路が磁気的に飽和することを抑えることができる。その結果、コイルに供給する電流を増すことが可能となり、大きな動力を電気機械から得ることができる。また、各電機子コアを機械動作方向で磁気的に分割する必要がなくなるため、電機子コアの強度を増すことができる。
【0007】
(1)前記電気機械の一例において、前記界磁部は、前記機械動作方向に沿っている第1の面を有してよい。前記第1電機子コアと前記第2電機子コアは、前記界磁部の前記第1の面に対して、前記機械動作方向に対して交差している第1の方向に位置してよい。前記コア連結構造は前記機械動作方向で並んでいる複数のコア連結部を含む。前記複数のコア連結部は、前記第1磁極組と、前記第3磁極組と、前記第1コイルとに対して前記第1の方向に位置しているコア連結部を含んでよい。
【0008】
(2)前記電気機械の他の例において、前記界磁部は、前記機械動作方向に沿っている第1の面と第2の面とを有してよい。前記第1電機子コアは、前記界磁部の前記第1の面に対して、前記機械動作方向に対して交差する第1の方向に位置してよい。前記第2電機子コアは、前記界磁部の前記第2の面に対して、前記機械動作方向に対して交差する第2の方向に位置してよい。
【0009】
(3)(1)の電気機械において、前記第1電機子コアと前記第2電機子コアのうち少なくとも一方の電機子コアは、積層されている複数の鋼板を含む積層鋼板であり、前記複数のコア連結部が前記鋼板の積層方向においてそれぞれ嵌められる複数の嵌合穴を有してよい。前記少なくとも一方の電機子コアには、前記複数の嵌合穴のそれぞれについて、前記鋼板の前記積層方向に対して交差する方向に前記嵌合穴から延びているスリット又は前記鋼板の前記積層方向に対して交差する方向に開いている開口が形成されてよい。これによると、各コア連結部の周囲に誘導電流が生じることを抑えることができる。
【0010】
(4)(1)又は(3)の電気機械において、前記界磁部は前記電機子部に対して軸線を中心にして相対的に回転可能であってよい。前記第1電機子コアと前記第2電機子コアのうち少なくとも一方の電機子コアは、積層されている複数の鋼板を含む積層鋼板であり、前記複数のコア連結部が前記鋼板の積層方向においてそれぞれ嵌められる複数の嵌合穴を有してよい。前記少なくとも一方の電機子コアには、前記複数の嵌合穴と前記機械動作方向で並んでいる前記複数の磁極組との間を通過し且つ前記軸線を取り囲む閉曲線と、交差するスリットが形成されてよい。これによると、電機子コアに回転方向の誘導電流が発生することを抑えることができる。
【0011】
(5)(2)の電気機械において、前記コア連結構造は、前記機械動作方向で並んでいる複数のコア連結部を含んでよい。前記第1電機子コアと前記第2電機子コアのうち少なくとも一方の電機子コアは、積層されている複数の鋼板を含む積層鋼板であり、前記複数のコア連結部が前記鋼板の積層方向においてそれぞれ嵌められる複数の嵌合穴を有してよい。前記少なくとも一方の電機子コアには、前記複数の嵌合穴のそれぞれについて、前記鋼板の前記積層方向に対して交差する方向に前記嵌合穴から延びているスリット又は前記鋼板の前記積層方向に対して交差する方向に開いている開口が形成されてよい。これによると、各コア連結部の周囲に誘導電流が生じることを抑えることができる。
【0012】
(6)(2)又は(5)の電気機械において、前記界磁部は前記電機子部に対して軸線を中心として相対的に回転可能であってよい。前記コア連結構造は、前記機械動作方向で並んでいる複数のコア連結部を含んでよい。前記第1電機子コアと前記第2電機子コアのうち少なくとも一方の電機子コアは、積層されている複数の鋼板を含む積層鋼板であり、前記複数のコア連結部が前記鋼板の積層方向においてそれぞれ嵌められる複数の嵌合穴を有してよい。前記少なくとも一方の電機子コアには、前記複数の嵌合穴と前記機械動作方向で並んでいる前記複数の磁極組との間を通過し且つ前記軸線を取り囲む閉曲線と、交差するスリットが形成されてよい。これによると、電機子コアに回転方向の誘導電流が発生することを抑えることができる。
【0013】
(7)(1)又は(2)の電気機械において、前記コア連結構造は、前記第1電機子コアと前記第2電機子コアのうちの一方と一体的に形成されてよい。これによると、電機子部の組み立てを簡単化できる。
【0014】
(8)(2)、(5)、及び(6)のいずれかに記載の電気機械において、前記コア連結構造は前記機械動作方向で並んでいる複数のコア連結部を含んでよい。前記第1電機子コアは第1ヨーク部を有し、前記第1磁極組と前記第2磁極組は前記第1ヨーク部の前記界磁部側に形成されている。前記第2電機子コアは第2ヨーク部を有し、前記第3磁極組と前記第4磁極組は前記第2ヨーク部の前記界磁部側に形成されている。前記複数のコア連結部は、前記第1ヨーク部と前記第2ヨーク部を磁気的に結合し且つ前記機械動作方向での前記第1磁極組の位置と前記第3磁極組の位置とに対応した位置に配置されているコア連結部を含んでよい。
【0015】
(9)(1)乃至(8)のいずれかに記載の電気機械において、前記第1磁極組、前記第2磁極組、前記第3磁極組、及び前記第4磁極組のそれぞれは、前記機械動作方向で並んでいる複数の磁極を有している。これによると、電気機械が出力する動力を増すことができる。
【0016】
(10)(9)の電気機械において、前記複数の磁極のそれぞれは、前記界磁部に向かって突出する形状を有してよい。
【0017】
(11)(9)の電気機械において、前記複数の磁極のそれぞれは、前記界磁部に向かって突出する形状を有している本体と、前記本体から機械動作方向に対して交差する方向で伸びている突出部とを有してよい。これによると、界磁部と磁極との間の隙間に起因する磁気抵抗を下げることができる。
【0018】
(12)(1)乃至(11)のいずれかに記載の電気機械において、
前記電気機械の相数は3以上の奇数であり、
前記電機子部は、1つのコイル又は同じ巻回方向を有する2以上のコイルを各相について有し、
前記第1磁極組と前記第3磁極組が第1磁極組対を構成し、
前記第2磁極組と前記第4磁極組が第2磁極組対を構成し、
前記第1磁極組対と前記第2磁極組対のそれぞれに前記コイルが設けられ、
極性が同じであり且つ隣り合う2つの界磁コア間の角度を電気角で360度としたとき、前記第1磁極組対と前記第2磁極組対は電気角で実質的に「360×(n+m/s)」度だけ離れている。ここでs、m、n、はそれぞれ以下の数を表す。
s:相数
m:1以上、s-1以下の整数(ただしsの約数(1を除く)および約数(1を除く)の倍数を除く)
n:1以上の整数
【0019】
(13)(12)の電気機械において、
前記界磁部と前記電機子部は相対回転可能であり、
(界磁部の極数)/2をp、各相についてのコイルの数をcとしたときに、
「(360/p)×(n+m/s)」は「360/s/c」に実質的に等しい。
【0020】
(14)(1)乃至(11)のいずれかに記載の電気機械において、
前記電気機械の相数は3以上の奇数であり、
前記電機子部は、異なる巻回方向を有する2つのコイルで構成されるコイル対を、各相について有し、
前記第1電機子コアは、前記第1磁極組と前記第2磁極組と第5磁極組とを有し、
前記第2電機子コアは、前記第3磁極組と前記第4磁極組と第6磁極組とを有し、
前記第1磁極組と前記第3磁極組が第1磁極組対を構成し、
前記第2磁極組と前記第4磁極組が第2磁極組対を構成し、
前記第5磁極組と前記第6磁極組が第3磁極組対を構成し、
前記第1磁極組対のコイルの巻回方向と前記第2磁極組対のコイルの巻回方向は同じであり、前記第1磁極組対の前記コイルと前記第3磁極組対のコイルは前記コイル対を構成し、
極性が同じであり且つ隣り合う2つの界磁コア間の角度を電気角で360度としたとき、(i)前記第1磁極組対と前記第2磁極組対は電気角で実質的に「360×(n+m/s)」度だけ離れており、(ii)前記第1磁極組対と前記第3磁極組対は電気角で実質的に「360×(q+1/2)」度だけ離れている。ここでs、m、n、qはそれぞれ以下の数を表す。
s:相数
m:1以上、s-1以下の整数(ただしsの約数(1を除く)および約数(1を除く)の倍数を除く)
n:1以上の整数
q:1以上の整数
【0021】
(15)(14)の電気機械において、
前記界磁部と前記電機子部は相対回転可能であり、
(界磁部の極数)/2をp、各相についてのコイル対の数をcとしたときに、
「(360/p)×(n+m/s)」は「360/s/c」に実質的に等しい。
【0022】
(16)(1)乃至(11)のいずれかに記載の電気機械において、
前記電気機械の相数は2以上の偶数であり、
前記電機子部は、異なる巻回方向を有する2つのコイルで構成されるコイル対を、各相について有し、
前記第1電機子コアは、前記第1磁極組と第2磁極組と第5磁極組とを有し、
前記第2電機子コアは、前記第3磁極組と第4磁極組と第6磁極組とを有し、
前記第1磁極組と前記第3磁極組とが第1磁極組対を構成し、
前記第2磁極組と前記第4磁極組とが第2磁極組対を構成し、
前記第5磁極組と前記第6磁極組とが第3磁極組対を構成し、
前記第1磁極組対のコイルの巻回方向と前記第2磁極組対のコイルの巻回方向は同じであり、前記第1磁極組対の前記コイルと前記第3磁極組対のコイルは前記コイル対を構成している。
極性が同じであり且つ隣り合う2つの界磁コア間の角度を電気角で360度としたとき、(i)前記第1磁極組対と前記第12磁極組対は電気角で実質的に「360×(n+m/s/2)」度だけ離れており、(ii)前記第1磁極組対と前記第3磁極組対は電気角で相対的に実質的に「360×(q+1/2)」度だけ離れている。ここでs、m、n、qはそれぞれ以下の数を表す。
s:相数
m:1以上、s-1以下の整数(ただしsの約数(1を除く)および約数(1を除く)の倍数を除く)
n:1以上の整数
q:1以上の整数
【0023】
(17)(16)の電気機械において、
前記界磁部と前記電機子部は相対回転可能であり、
(界磁部の極数)/2をp、各相についてのコイル対の数をcとしたときに、
「(360/p)×(n+m/s/2)」は「180/s/c」に実質的に等しい。
【0024】
(18)(1)乃至(17)のいずれかに記載の電気機械において、前記複数の磁石のそれぞれは前記機械動作方向に磁化されており、前記複数の界磁コアのそれぞれは、隣り合う2つの磁石の間に配置され且つ前記機械動作方向で離れている2つの部分界磁コアを含んでよい。これによると、界磁コアと磁石について寸法誤差の累積が抑えられて、界磁コアと磁石の位置精度が向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】本開示で提案する電気機械の1つである回転電機の第1の例を示す斜視図である。
【
図1B】第1の例による回転電機の分解斜視図である。
【
図1C】第1の例による回転電機の平面図であり、第2電機子コアが示されている。
【
図1D】第1の例による回転電機の平面図であり、第2電機子コアが部分的に破断されて、第1電機子コアが示されている。
【
図2】第1の例による回転電機の電機子部が有している磁極の位置を示す展開図である。
【
図3A】界磁部が有している界磁コアと電機子部が有している磁極との位置関係を説明するための図である。
【
図3B】
図3Aで示されるA断面、B断面、C断面、D断面、E断面を矢印の方向で見た、磁石の磁束の流れを表す模式図である。
【
図4】電機子コアにおける誘導電流の発生を防止するための構造を説明するための図である。
【
図5】電機子コアにおける誘導電流の発生を防止するための構造を説明するための断面図である。
【
図6】誘導電流の発生を説明するための図であり、電機子コア及びコア連結部の断面が模式的に示されている。コア連結部を含む磁気回路を流れる磁束が示されている。
【
図8】誘導電流の発生を説明するための図である。第1電機子コアの全体を1周する閉回路を示している。
【
図9A】
図8で示す誘導電流の発生を防止するスリットを説明するための図であり、
図7で示す第1電機子コアの平面を示している。
【
図9B】
図8で示す第1電機子コアの変形例を示す図である。
【
図10】第3の例による回転電機を示す斜視図である。界磁部の外側に電機子部が配置されている。
【
図11】第4の例による回転電機を示す斜視図である。電機子コアは、軟磁性の圧粉材料で形成されている。
【
図12A】第5の例による回転電機を示す斜視図である。各磁極組対に複数のコア連結部が設けられている。
【
図13A】第6の例による回転電機を示す分解斜視図である。電機子コアは部分電機子コアで構成されている。
【
図14A】第7の例による回転電機を示す分解斜視図である。電機子部は、各相について、巻回方向が互いに反対である2つのコイルを有している。
【
図15A】第8の例による回転電機を示す分解斜視図である。回転電機に供給される交流電流の相数は偶数である。
【
図17】第9の例として、電機子部と界磁部とが直線に沿った方向で相対移動可能なリニア電機の例を示す斜視図である。
【
図18A】第10の例による電気 機械を示す斜視図である。界磁部を挟んで互いに反対側に位置する2つの電機子コアを有するラジアルギャップタイプの回転電機が示されている。
【
図19】
図18Aで示す回転電機に設けられているコア連結部の取付構造の変形例である。
【
図20】
図18Aで示す回転電機が有する界磁部の例を示す断面図である。その切断面は軸線に対して直交する面である。
【
図21A】第11の例による電気 機械を示す斜視図である。界磁部を挟んで互いに反対側に位置する2つの電機子コアを有するリニア電機が示されている。
【
図22】突出部を有する磁極を有する電機子コアの斜視図である。
【
図23】第12の例による電気機械を示す斜視図である。ヨーク部分コアと磁極コアとを有する電機子コアを有するリニア電機が示されている。
【
図24A】第13の例による電気機械を示す斜視図である。軟磁性の圧粉材料で形成されている電機子コアを有するリニア電機が示されている。
【
図25A】第14 の例による電気機械を示す斜視図である。界磁部を挟んで2つの電機子コアが互いに反対側に配置されるアキシャルギャップタイプの回転電機が示されている。
【
図26A】第15 の例による電気機械を示す斜視図である。界磁部に対して異なる2方向に電機子コアが配置される回転電機が示されている。
【
図27A】第16 の例による電気機械を示す斜視図である。2つの電機子コアのヨーク部を磁気的に結合するコア連結構造として、機械動作方向で延びている1つのコア連結部を有するアキシャルギャップタイプの回転電機が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示で提案する電気機械の実施形態について説明する。本明細書において、電気機械には、例えば、電動モータや発電機として機能する回転電機や、リニア電機などが含まれる。回転電機は、回転電機の径方向で電機子部と界磁部とが向き合うラジアルギャップタイプと、回転電機の軸方向で電機子部と界磁部とが向き合うアキシャルギャップタイプとを含む。
【0027】
本明細書において、
図1A等で示す回転電機の軸線Ax(回転中心を通る直線)に沿った方向を「軸方向」と称し、軸線Axを中心とする回転電機M1の回転方向を単に「回転方向」と称する。なお、本明細書において「回転方向」及び「軸方向」とは「実質的な回転方向」「実質的な軸方向」のことを意味する。したがって、例えば、後述する磁石の磁化方向が回転方向であるとの説明、及び、界磁コアを構成する鋼板の積層方向が回転方向であるとの説明は、磁化方向及び積層方向が軸線Axを中心とする円の接線の方向を含むことを意味する。また、本明細書において、「機械動作方向」とは、回転電機においては可動部(電機子部又は界磁部)の回転方向を意味し、リニア電機においては可動部(電機子部又は界磁部)の動く方向を意味する。また、回転電機においては、機械動作方向に交差する方向の一つは軸方向であり、別の一つの方向は回転電機の径方向である。また、リニア電機において、機械動作方向を例えば左右方向とすると、機械動作方向に交差する方向の一つは前後方向であり、別の一つの方向は上下方向である。また、リニア電機において、機械動作方向に交差する方向は、機械動作方向に直交し、且つ前後方向と上下方向の双方に対して斜めの方向も含む。
【0028】
また、本明細書において「機械角」とは、回転電機において軸線Ax周りの1周を360度としたときに、軸線Ax周りの1周を基準として表される角度である。それに対し、「電気角」とは、回転電機或いはリニア電機において、同じ極性を有し且つ電気機械の機械動作方向(すなわち、界磁部と電機子部の相対移動の方向)で隣り合う2つの界磁コア(例えば、後述する界磁コア22N)の間の角度(言い換えると、距離)を360度としたときに、この2つの界磁コアの間の角度を基準にして表される角度(距離)である。
【0029】
[基本構成]
図1A等で例示するラジアルギャップタイプの回転電機M1について説明する。
図1Aで示すように、回転電機M1は、相対回転可能な界磁部Fsと電機子部Am1とを有している(
図1Aにおいて、界磁部Fsの回転方向の一部は図示されていない)。例えば、界磁部Fsがロータであり、電機子部Am1がステータである。界磁部Fsは、回転電機M1が搭載される装置において回転可能となるように支持され、電機子部Am1は、回転電機M1が搭載される装置が有する構造物に固定される。例えば、回転電機M1が電動車両(二輪車両や四輪車両など)に搭載される場合、界磁部Fsは、回転可能となるように支持され且つ車輪に連結される。一方、電機子部Am1は例えば車体フレームに固定される。なお、電機子部Am1がロータであり、界磁部Fsがステータであってもよい。電機子部Am1がロータである場合、ブラシとスリップリングや、ブラシと整流子などを通して、電機子部Am1が備える後述するコイルCLに電流が供給されるとよい。
【0030】
[界磁部の概要]
回転電機M1において、界磁部Fsは電機子部Am1の外側を取り囲むよう配置される。
図1Aで示すように、界磁部Fsは、回転方向で並んでいる複数の界磁コア22N・22Sと、それぞれが隣り合う2つの界磁コアの間に配置されている複数の永久磁石Mgとを有している。
図3Bでは、磁石Mgの磁化方向が矢印で表されている。矢印が示す方向にある磁石表面がN極であり、N極の表面とは反対側の磁石表面がS極である。この図で示すように、磁石Mgは、回転電機M1の回転方向(機械動作方向)に磁化されている。本明細書において「磁石Mgが回転電機M1の回転方向に磁化されている。」とは、磁化の方向が、磁石Mgの位置における、円(回転電機の軸線Axを中心とする円)の接線の方向を含むことを意味する。隣り合う2つの磁石Mgの磁化方向は反対向きであり、隣り合う2つの磁石Mgは、同じ極性を有する磁石表面が向き合う。界磁コア22Nは、隣り合う2つの磁石MgのN極表面の間にある界磁コアであり、界磁コア22Sは、隣り合う2つの磁石MgのS極表面の間にある界磁コアである。界磁コア22N・22Sは、例えば、積層鋼板や、圧粉材料、それらの結合などによって構成され得る。界磁コア22N・22Sは集磁効果を有しており、磁石Mgの表面全体の磁束を集めて、電機子部Am1へ導く。このことによって、磁石Mgによる磁束を有効に使うことができる。
【0031】
[電機子部]
図1Aで示すように、電機子部Am1は、軸方向で並んでいる複数の電機子コアH1・H2と、複数の電機子コアH1・H2を磁気的に結合するコア連結構造を有している。コア連結構造は、間隔をあけて機械動作方向で並んでいる複数のコア連結部Lを有してよい。
【0032】
電機子部Am1は、例えば、1つの第1電機子コアH1と、2つの第2電機子コアH2とを有する。2つの第2電機子コアH2の間に第1電機子コアH1が配置される。電機子コアH1・H2の形状とサイズは、互いに異なっていてよい。回転電機M1では、第1電機子コアH1にコイルCLu・CLv・CLw(
図1B参照)が設けられ、第2電機子コアH2にコイルは設けられていない。また、第1電機子コアH1の厚さ(軸方向での幅)は第2電機子コアH2の厚さ(軸方向での幅)よりも大きい。これにより、第1電機子コアH1を流れる磁束の密度が過大になることを防ぐことができる。(以下では、コイルの種類を区別しない説明において、コイルについて符号「CL」を用いる。)
【0033】
また、電機子コアの数や配置も、回転電機M1の例に限られない。電機子コアH1・H2の形状は同じであってもよい。こうすることで、電機子コアH1・H2の部品数を低減したり、金型の数を減らすことができる。また、電機子部が有する電機子コアは、例えば1つの第1電機子コアH1と1つの第2電機子コアH2だけであってもよい。
【0034】
[第1電機子コア]
図1Bで示すように、第1電機子コアH1は、回転方向で並んでいる複数の磁極組G1u・G1v・G1wを有している。(以下では、3つの磁極組G1u・G1v・G1wを区別しない説明においては、磁極組について符号G1を用いる。)各磁極組G1は、回転方向で並んでいる複数の磁極33a(
図1A参照)を有している。各磁極組G1が有している磁極33aの数は好ましくは2以上である。回転電機M1においては、各磁極組G1は5つの磁極33aで構成されている。磁極33aは第1電機子コアH1の界磁部Fsに向いた面に形成された突出部である。すなわち、磁極33aは径方向に突出する形状を有している部分である。隣り合う2つの磁極33aは回転方向で互いに離れている。界磁部Fsと第1電機子コアH1との間を流れる磁束は、この磁極33aを集中的に通過する。
【0035】
第1電機子コアH1は、軸線Axを中心とする環状であるヨーク部33c(
図1B参照)を有している。
図3Bで示すように、第1電機子コアH1は、各磁極組G1を構成する複数の磁極33aが接続している共通基部33b(
図3B参照)を有してよい。共通基部33bは、ヨーク部33cから界磁部Fsに向かって張り出し、磁極33aは共通基部33bから界磁部Fsに向かって突出してよい。第1電機子コアH1は共通基部33bを有していなくてもよい。この場合、複数の磁極33aが直接的にヨーク部33cの環状部分に接続してよい。
【0036】
後述するように、第1電機子コアH1では、回転方向で並んでいる磁極組G1の間を流れる磁束Φ1・Φ2とコア連結部Lに向かう磁束Φ7とが形成され(
図3B参照)、第2電機子コアH2では、回転方向で並んでいる磁極組G2の間を流れる磁束Φ1・Φ2とコア連結部Lに向かう磁束Φ7とが形成される(
図3B参照)。コイルCLは、これらの磁束Φ1・Φ2・Φ7がコイルCLの内側を通過するように第1電機子コアH1に配置されている。具体的には、
図1Bで示すように、コイルCLは磁極組G1に設けられ、磁極組G1を構成する複数の磁極33aに巻かれている。コイルCLのこの配置により、磁石Mgが形成する磁束が効率良くコイルCLと交わる。なお、コイルCLの配置は電機子部Am1の例に限られない。磁束Φ1・Φ2・Φ7がコイルCLの内側を通過する位置であれば、複数のコイルCLは第2電機子コアH2に配置されてもよいし、第1電機子コアH1と第2電機子コアH2とに配置されてもよい。
【0037】
回転電機M1は交流により駆動する回転電機である。回転電機M1には、例えば3相交流が供給される。したがって、第1電機子コアH1は、
図1Bで示すように、U相コイルCLu、V相コイルCLv、W相コイルCLwを有している。U相コイルCLu、V相コイルCLv、及びW相コイルCLwは、磁極組G1u・G1v・G1wにそれぞれ設けられている。回転電機M1では、各相について2つのコイルCLが設けられている。回転電機M1を軸方向で見たとき、コイルCLu・CLv・CLwは回転方向で並ぶ。このことにより、電機子部Am1及び界磁部Fsに作用する磁力をバランスさせることができる。なお、1つの相に設けられているコイルCLの数は、2つより多くてもよいし、1つでもよい。
また、各磁極組G1には外側コイルと外側コイルの内側に配置される内側コイルとが設けられてもよい。例えば、U相の磁極組G1uには、磁極組G1uを構成する全ての磁極33a(5つの磁極33a)を取り囲む外側コイルと、一部の磁極33a(真ん中の3つの磁極33a)だけを取り囲む内側コイルとが設けられてもよい。この構造によると、隣り合う2つ磁極33a間のスペースを有効に利用でき、回転電機を小型化することができる。このことは、後において説明するラジアルギャップタイプの回転電機、アキシャルギャップタイプの回転電機、及びリニア電機のいずれに適用されてもよい。
【0038】
図2で示すように、回転電機M1では、各相に設けられている複数のコイルCLの巻回方向は同じである。(
図2において、コイルCLの矢印は、コイルの巻回方向を示している。)巻回方向は、図示していないインバータなどからコイルCLに供給される電流の方向に対応し、電流の向きがプラスであるときは、矢印の方向に電流が流れる。電流の向きがマイナスであるときには、矢印とは逆方向に電流が流れる。なお、コイルCLの位置、数、及び巻回方向は、回転電機M1の例に限られない。例えば、各相について設けられるコイルの数は1つでもよいし、3以上でもよい。また、相数は、5や、7など、3以上の奇数であってもよいし、2以上の偶数であってもよい。コイルの位置や、数、及び巻回方向に関する変形例は、後において詳説する。
【0039】
[第2電機子コア]
図1B及び
図2で示すように、第2電機子コアH2は、回転方向で並んでいる複数の磁極組G2u、G2v、G2wを有している。(以下では、3つの磁極組G2u、G2v、G2wを区別しない説明においては、磁極組について符号G2を用いる。)各磁極組G2は、回転方向で並んでいる複数の磁極34aで構成されている。各磁極組G2が有している磁極34aの数は好ましくは2以上である。回転電機M1においては、各磁極組G2は6つの磁極34aで構成されている。
図1Bで示すように、磁極34aは、第2電機子コアH2の界磁部Fsに向いた面に形成された突出部である。回転電機M1においては、磁極34aは径方向に突出する部分である。第2電機子コアH2は、軸線Axを中心とする環状のヨーク部34cを有しており、磁極34aはヨーク部34cから界磁部Fsに向かって突出している。隣り合う2つの磁極34aは回転方向で互いに離れている。界磁部Fsと第2電機子コアH2との間を流れる磁束は、この磁極34aを集中的に通過する。
【0040】
図1A及び
図1Bで示すように、回転電機M1では、第2電機子コアH2が有している3つの磁極組G2u・G2v・G2wは、それぞれ、第1電機子コアH1が有している3つの磁極組G1u・G1v・G1wに対して軸方向(機械動作方向に対して交差する方向)に位置している。上述したように回転電機M1は2つの第2電機子コアH2を有しており、各磁極組G1は軸方向で離れている2つの磁極組G2の間に位置している。
【0041】
界磁部Fsと電機子コアH1・H2との距離が小さいので、磁束の多くは磁極33a・34aを通って電機子コアH1・H2と界磁部Fsとの間を移動する。このような機能を果たす形状であれば、磁極33a、34aの形状は適宜変更されてよい。例えば、磁極33aの先端面は、
図1Aでは界磁部Fsの内周面に沿った湾曲面であるが、界磁部Fsの内周面よりも大きな曲率を有する湾曲面であってもよい。こうすることで、コギングトルクを低減できる。また、隣り合う2つの磁極33aの間の溝(凹部)はU字形状であってもよいし、実質的に矩形であってもよい。さらに他の例として、磁極33aの先端面の角部を面取りしたり、磁極33aの先端面の角部が円弧状に湾曲してもよい。第2電機子コアH2の磁極34aも、ここで説明した磁極33aと同様の形状を有してよい。
【0042】
[磁極の位置]
第1電機子コアH1の磁極33aの位置と、第2電機子コアH2の磁極34aの位置は、回転方向においてずれている。
図2で示すように、回転方向における磁極33aの位置は、回転方向において隣り合う2つの磁極34aの間である。また、回転方向における磁極34aの位置は、回転方向において隣り合う2つの磁極33aの間である。
【0043】
図2で示すように、磁極33aの位置は、例えば、隣り合う2つの磁極34aの中間であり、磁極34aの位置は、例えば、隣り合う2つの磁極33aの中間である。
図2で示す数値は回転方向における角度(距離)を電気角で表したものである。回転電機M1においては、回転方向で隣り合う2つの磁極33aは電気角で360度だけ離れており、回転方向における磁極33aの位置と、回転方向における磁極34aの位置は、電気角で180度だけ離れている。磁極33aと磁極34aの相対位置はこれに限られない。回転方向における磁極33a・34aの角度(距離)は、180度より僅かに少なくてもよいし、180度より僅かに大きくてもよい。磁極33a・34aの角度(距離)は、電気角で175度や、電気角で185度でもよい。また、回転方向における磁極33a・34aの角度(距離)は、回転方向での磁極組G1・G2の端部に近づくにしたがって漸減したり漸増してもよい。
【0044】
[界磁コアと磁極との位置関係]
界磁部Fsをある位置で固定したときに、磁石Mg、界磁コア22N・22S、及び、磁極33a・34aは、以下の位置関係を有する。
【0045】
図3Bで示すように、回転方向における電機子コアH1・H2の磁極33a・34aの位置は、回転方向における界磁コア22N・22Sの位置にそれぞれ対応する。例えば、各磁極33aは界磁コア22N(又は22S)と対向し、この界磁コア22N(又は22S)との間に磁路を形成する。同様に、各磁極34aは界磁コア22S(又は22N)と対向し、この界磁コア22S(又は22N)との間に磁路を形成する。(
図3Bでは、磁気回路を流れる磁束Φ1・Φ2・Φ7が示されている。)
【0046】
図3Bで示す状態では、界磁コア22Nの位置は磁極組G1uの磁極33aの位置に一致し、界磁コア22Sの位置は磁極組G2uの磁極34aの位置に一致している。この状態では、磁極組G1v、G1wの磁極33aに界磁コア22Sが対向し、磁極組G2v、G2wの磁極34aに界磁コア22Nが対向している。回転方向における界磁コア22Sの位置は、磁極組G1v・G1wの磁極33aの位置からずれているものの、界磁コア22Sと磁極組G1v・G1wの磁極33aとの間で磁束の流れは許容されている。同様に、回転方向における界磁コア22Nの位置は磁極組G2v・G2wの磁極34aからずれているものの、界磁コア22Nと磁極組G2v・G2wの磁極34aとの間での磁束の流れは許容されている。このような位置関係により、後述する閉じた磁気回路が構成されている。
図3で例示する状態では、界磁コア22Sの位置は、磁極組G1v・G1wの磁極33aの位置から電気角で60度だけずれており、界磁コア22Nの位置は磁極組G2v・G2wの磁極34aから電気角で60度だけずれている。
【0047】
回転方向における磁極組G1・G2の位置及び界磁コア22N・22Sの位置について詳説する。この説明では、軸方向で並ぶ磁極組G1uと磁極組G2uのペアを磁極組対Pu(
図2参照)と称し、軸方向で並ぶ磁極組G1vと磁極組G2vのペアを磁極組対Pv(
図2参照)と称し、軸方向で並ぶ磁極組G1wと磁極組G2wのペアを磁極組対Pw(
図2参照)と称する。以下では、これら3つの磁極組対Pu・Pv・Pwを区別しない説明では、磁極組対について符号Pを用いる。
【0048】
磁極33a・34aの数は、複数の磁極組対Pu・Pv・Pwにおいて同じである。すなわち、第1電機子コアH1が有する各磁極組G1u・G1v・G1wの磁極33aの数は同じであり、例えば5つである。また、第2電機子コアH2が有する各磁極組G2u・G2v・G2wの磁極34aの数も同じであり、例えば6つである。磁極33a・34aの間隔も、複数の磁極組対Pu・Pv・Pwにおいて、実質的に同じである。すなわち、磁極33aの間隔(隣り合う2つの磁極33aの距離)は、第1電機子コアH1が有する3つの磁極組G1u・G1v・G1wにおいて実質的に同じであり、磁極34aの間隔(隣り合う2つの磁極34aの距離)は、第2電機子コアH2が有する3つの磁極組G2u・G2v・G2wにおいて実質的に同じである。なお、各磁極組G1において隣り合う2つの磁極33aの間隔が同じである必要は無く、この間隔は不均一であってもよい。この場合でも、複数の磁極組G1の構造は同じである。すなわち、複数の磁極組G1のそれぞれが不均一な間隔で並ぶ複数の磁極33aを有し、1つの磁極組G1と他の磁極組G1は、磁極33aの間隔について同じである。同様に、各磁極組G2において隣り合う2つの磁極34aの間隔が同じである必要は無く、この間隔は不均一であってもよい。この場合でも、複数の磁極組G2の構造は同じである。すなわち、複数の磁極組G2のそれぞれが不均一の間隔で並ぶ磁極34aを有し、1つの磁極組G2と他の磁極組G2は、磁極34aの間隔について同じである。
【0049】
さらに望ましくは、磁極33a・34aの幅及び/又は高さも、複数の磁極組対Pu・Pv・Pwにおいて、実質的に同じであってよい。すなわち、回転方向における磁極33aの幅、及び/又は、軸方向における磁極33aの高さは、第1電機子コアH1が有する3つの磁極組G1u・G1v・G1wにおいて、実質的に同じである。回転方向における磁極34aの幅、及び/又は、軸方向における磁極34aの高さは、第2電機子コアH2が有する3つの磁極組G2u・G2v・G2wにおいて、実質的に同じである。つまり、3つの磁極組対Pu・Pv・Pwは同じ構造を有する。したがって、軸線Axを中心にして1つの磁極組対(例えば、Pu)を回転移動すると、他の磁極組対P(例えば、Pv・Pw)となるのが望ましい。
【0050】
なお、各磁極組G1を構成する複数の磁極33aの幅、及び/又は、複数の磁極33aの高さは、不均一であってもよい。この場合、複数の磁極組G1u・G1v・G1wは同じ構造を有する。すなわち、複数の磁極組G1u・G1v・G1wのそれぞれが、不均一な幅及び/又は不均一な高さを有する複数の磁極33aで構成される。同様に、各磁極組G2を構成する複数の磁極34aの幅、及び/又は、複数の磁極34aの高さは不均一であってもよい。この場合、複数の磁極組G2u・G2v・G2wは同じ構造を有する。すなわち、複数の磁極組G2のそれぞれが、不均一な幅及び/又は不均一な高さを有する複数の磁極34aで構成される。
【0051】
図2で示すように、隣り合う2つの磁極組対Pの間の角度は、電気角で実質的に「360×(n+m/s)」度である。
s:相数
m:1以上、s-1以下の整数(ただしsの約数(1を除く)および約数(1を除く)の倍数を除く)
n:1以上の整数
したがって、磁極組対Puの磁極33a(又は34a)と界磁コア22N(又は22S)との角度(距離)と、別の磁極組対Pv・Pwの磁極33a(又は34a)と界磁コア22N(又は22S)との角度(距離)との間に、電気角で(360×m/s)度の差がある。回転電機M1では、s=3、n=6、m=1である。そのため、隣り合う2つの磁極組対Pの角度は電気角で2,280度である。したがって、例えば、磁極組対Puの磁極33aが界磁コア22Nに正対しているとき(磁極33aと界磁コア22Nとの角度(距離)が0度であるとき)、磁極組対Pv・Pwの磁極33aの位置は界磁コア22Nに対して電気角で120度だけずれる。このような磁極組対Pと界磁部Fsの相対位置は、リニア電機や、アキシャルギャップタイプの回転電機に適用されてよい。
【0052】
ここでの説明において、2つの磁極組対Pの間の角度(距離)とは、具体的には、回転方向での磁極組G1の中心間の角度(距離)や、回転方向での磁極組G2の中心間の角度(距離)である。磁極組G1の中心間の角度(距離)とは、例えば、回転方向での磁極組G1uの中心と回転方向での磁極組G1vの中心との距離である。同様に、磁極組G2の中心間の角度(距離)とは、例えば、回転方向での磁極組G2uの中心と回転方向での磁極組G2vの中心との距離である。
【0053】
また、隣り合う2つの磁極組対Pの間に、機械角で「(360/p)×(n+m/s)」度が確保される。また、隣り合う2つの磁極組対Pの角度は、機械角で「360/s/c」度とも表せる。
p:(界磁部の極数)/2
c:各相についてのコイルの数
したがって、「(360/p)×(n+m/s)」は「360/s/c」に実質的に等しくなる。「界磁部の極数」は界磁部Fsが有している界磁コア22N・22Sの数に一致し、回転電機M1では、例えば76である(p=38)。また、s=3、c=2である。そのため、隣り合う2つの磁極組対Pの間の角度は、機械角で約60度となる。言い換えれば、「(360/p)×(n+m/s)」が「360/s/c」に実質的に等しくなるように、界磁部Fsの極数(p×2)や、電機子部のコイル数(s×c)、磁極33a・34aの数などが設定されている。
【0054】
[回転方向での磁気的結合]
第1電機子コアH1において、回転方向で隣り合う2つの磁極組G1は磁気的に互いに結合している。回転電機M1においては、複数の磁極組G1は、それらの内側に形成されているヨーク部33cを介して磁気的に結合している。このため、磁石Mgが形成する磁束は2つの磁極組G1の間を流れる(
図3B参照)。同様に、第2電機子コアH2において、回転方向で隣り合う2つの磁極組G2も磁気的に互いに結合している。具体的には、複数の磁極組G2は、それらの内側に形成されているヨーク部34cを介して磁気的に結合している。このため、磁石Mgが形成する磁束は2つの磁極組G2の間を流れる(
図3B参照)。
【0055】
第1電機子コアH1のヨーク部33cは、隣り合う2つの磁極組G1の間に、それらを磁気的に分離する構造を有していない。2つの磁極組G1を磁気的に分離する構造とは、例えば、ヨーク部33cに形成されるスリットや、電機子コアH1の他の部分に比して大きな磁気抵抗を有する材料で形成された部分である。第1電機子コアH1と同様、第2電機子コアH2のヨーク部34cは、隣り合う2つの磁極組G2の間に、それらを磁気的に分離する構造を有していない。このことは、回転方向での磁束Φ1・Φ2(
図3B参照)の形成に寄与する。
【0056】
回転電機M1では、
図3Bで示すように、径方向でのヨーク部33cの幅Waは、回転方向において実質的に一定である。また、径方向でのヨーク部34cの幅Wbも、回転方向において実質的に一定である。この構造も、回転方向での磁束Φ1・Φ2(
図3B参照)の形成に寄与する。
【0057】
さらに、回転電機M1では、
図3Bで示すように、径方向でのヨーク部33cの幅Waは、磁極33aの突出幅W3よりも大きい。また、ヨーク部33cの幅Waは磁極33aの幅と共通基部33bの幅との和より大きくてもよい。また、径方向でのヨーク部34cの幅Wbは、磁極34aの突出幅W4よりも大きい。この構造も、回転方向での磁束Φ1・Φ2(
図3B参照)の形成に寄与する。
【0058】
[コア連結部]
コア連結部Lは電機子コアH1・H2を磁気的に結合している。電機子コアH1・H2との間にコア連結部Lを通る磁束Φ7(
図3B参照)が形成される。電機子部Am1は複数のコア連結部L(
図1A参照)を有し、これらは間隔をあけて回転方向(すなわち、機械動作方向)で並んでいる。
図3Bで示すように、複数のコア連結部Lは複数の磁極組対Pにそれぞれ設けられている。例えば、U相の磁極組対Pu(磁極組G1u・G2u)にコア連結部Lが設けられ、第1電機子コアH1の磁極組G1uと第2電機子コアH2の磁極組G2uとの間にはコア連結部Lを介した磁路が形成される。同様に、他の2つの磁極組対Pw・Pvのそれぞれにコア連結部Lが設けられている。
【0059】
電機子部Am1は1つの第1電機子コアH1と2つの第2電機子コアH2を有している。コア連結部Lはこれら3つの電機子コアH1・H2を磁気的に結合している。各コア連結部Lは上側の第2電機子コアH2から下側の第2電機子コアH2まで延びている。これとは異なり、電機子部Am1は、軸方向で並ぶ2本のコア連結部Lを有してもよい。そして、第1のコア連結部Lは第1電機子コアH1と上側の第2電機子コアH2とを結合し、第2のコア連結部Lは第1電機子コアH1と下側の第2電機子コアH2とを結合してもよい。
【0060】
図1Aで示すように、回転電機M1はラジアルギャップタイプの回転電機であり、磁極組G1・G2は界磁部Fsに対して径方向に位置している。より具体的には、電機子部Am1は界磁部Fsの内側に位置し、そのため磁極組G1・G2は界磁部Fsに対して径方向における内側に位置している。
図1C及び
図1Dで示すように、コア連結部Lは磁極組G1・G2の内側に位置している。言い換えると、コア連結部Lは磁極組G1・G2及びそれらに設けられたコイルCLを挟んで界磁部Fsとは反対側に位置している。これにより、コイル連結部Lを流れる磁束Φ7がコイルCLの内側を通過するとともに、回転方向で離れている2つの磁極組(例えば、磁極組G1u・G1v)を流れる磁束Φ1・Φ2と、コア連結部Lを流れる磁束Φ7とが干渉することを抑えることができる。その結果、磁気回路に形成される磁束を効率的に利用してトルクを得ることができる。
【0061】
回転方向におけるコア連結部Lの位置は、回転方向における磁極組G1・G2の中心に一致していてよい。回転電機M1では、各磁極組G2を構成する磁極34aの数と、磁極組G1を構成する磁極33aの数は1つだけ相違している。こうすることによって、回転方向での磁極組G1の中心の位置と、回転方向での磁極組G2の中心の位置とが一致する。このため、3つの要素(磁極組G1・G2、及びコア連結部L)の回転方向における中心が一致している。
【0062】
図1A及び
図1Eで示すように、コア連結部Lは電機子コアH1・H2のヨーク部33c・34cを磁気的に結合している。電機子部Am1においては、ヨーク部33c・34cに、これらを軸方向に貫通する嵌合穴33h・34h(
図1B参照)が形成されている。コア連結部Lはこの嵌合穴33h・34hに嵌められている。コア連結部Lの上端は電機子部Am1の上面(上側の電機子コアH2の上面)に達し、コア連結部Lの下端は電機子部Am1の下面(下側の電機子コアH2の下面)に達している。
【0063】
なお、回転電機M1とは反対に、電機子部Am1は界磁部Fsの外側に位置してもよい。この場合、磁極組G1・G2は界磁部Fsに対して径方向おける外側に位置し、コア連結部Lは磁極組G1・G2の外側に配置される。
【0064】
また、電機子部Am1とは異なり、コア連結部Lは、いずれか一方の電機子コアH1・H2と一体的に形成されてもよい。電機子部Am1において電機子コアH1・H2は後述するように積層鋼板であるが、電機子コアH1・H2の一方又は双方は軟磁性の圧粉材料で形成されてもよい。この場合、圧粉材料で形成されている電機子コアとコア連結部とが一体的に形成されていてよい。
【0065】
図1C及び
図1Dで示すように、回転方向(機械動作方向)でのコア連結部Lの幅W20は、回転方向での磁極組G1・G2の幅W21・W22よりも小さい。このため、コア連結部Lを介して流れる磁束Φ7(
図3B参照)と、回転方向で離れている2つの磁極組の間を流れる磁束Φ1・Φ2(
図3B参照)の双方がより有効に形成される。
【0066】
第1電機子コアH1においては、
図1Dで示すように、各磁極組G1を構成する複数の磁極33aのうち少なくとも両端にそれぞれ位置する2つの磁極33aがコア連結部Lの両端部Leより外方に位置しているとよい。
図1Dの例では、右端に位置する磁極33aがコア連結部Lの右端部Leより右方に位置し、左端に位置する磁極33aがコア連結部Lの左端部Leより左方に位置している。同様に、
図1Cで示す第2電機子コアH2においても、各磁極組G2を構成する複数の磁極34aのうち少なくとも両端にそれぞれ位置する2つの磁極34aがコア連結部Lの両端部Leより外方に位置しているとよい。こうすることで、回転方向で離れている2つの磁極組の間を流れる磁束Φ1・Φ2が形成され易くなる。
【0067】
なお、電機子部Am1とは異なり、電機子コアH1(及び/又はH2)においては、複数の磁極がコア連結部Lの両端部Leより外方(同図において右方と左方)に位置してもよい。例えば、右端に位置する複数の磁極33aがコア連結部Lの右端部Leより右方に位置し、左端に位置する複数の磁極33aがコア連結部Lの左端部Leより左方に位置してもよい。
【0068】
また、
図1Dで示すように、径方向でのコア連結部Lの幅W23は、径方向でのヨーク部33c・34cの幅Wa・Wbよりも小さい。このため、コア連結部Lが嵌められるヨーク部33c・34cの嵌合穴33h・34hのサイズが小さくなり、電機子コアH1・H2の強度を確保できる。
【0069】
第1電機子コアH1と第2電機子コアH2はコア連結部Lだけで磁気的に結合し、コア連結部L以外の領域において磁気的に分離されている。具体的には、
図1Eで示すように、第1電機子コアH1と第2電機子コアH2との間に、隙間S1・S2が確保されている。(
図1Eにおいて、隙間S1はヨーク部33cとヨーク部34cとの間の隙間である。隙間S2は磁極33aと磁極34aとの間の隙間である。)回転電機M1では、隙間S1は隙間S2と実質的に同じであってよい。
【0070】
また、
図1Eで示すように、隙間S1・S2はコイルCLの巻き線の太さよりも大きい。また、電機子コアH1・H2は、軸方向に突出する凸部をヨーク部33c・34cに有していない。すなわち、電機子コアH1・H2は、隙間S1を隙間S2よりも小さくする構造物を、コア連結部L以外には、ヨーク部33c・34cに有していなくてよい。
【0071】
第1電機子コアH1と第2電機子コアH2とコイルCLとコア連結部L、すなわち電機子部Am1の全体は、非磁性であり且つ絶縁性を有する材料によって固められてよい。このような材料としては樹脂が利用でき、電機子部Am1は樹脂でモールドされてよい。この場合、隙間S1・S2は、この樹脂で埋められてよい。これとは異なり、隙間S1・S2には、例えば空気層が形成されてもよい。
【0072】
[磁気回路]
例えば、界磁部Fsの界磁コア22Nと磁極組G1uの磁極33aとの角度差が0度(電気角)の状態において、電機子部Am1と界磁部Fsとに、
図3Bで示すような、磁石Mgによる磁束Φ1・Φ2・Φ7が形成される。これらの図において、磁石Mgが形成する磁束Φ1・Φ2・Φ7は、電機子部Am1と界磁部Fsの間の隙間を通過して、界磁コア22Nから第1電機子コアH1の磁極組G1uに入り、コイルCLuの内側を通過する磁束である。
【0073】
図3Bで示すように、磁束Φ1が形成される磁気回路は、第1電機子コアH1の磁極組G1u・G1v、第2電機子コアH2の磁極組G2u・G2v、界磁コア22N・22S、及びそれらの間の磁石Mgを含む。すなわち、磁束Φ1は、界磁コア22Nから第1電機子コアH1の磁極組G1uに入り、第1電機子コアH1において磁極組G1uと磁極組G1vとの間を回転方向で流れる。また、磁束Φ1は、第2電機子コアH2において磁極組G2vと磁極組G2uとの間を回転方向で流れる。磁束Φ1は、磁極組G1vと磁極組G2vとの間を界磁コア22N・22S及び磁石Mgを通って軸方向で流れ、磁極組G1uと磁極組G2uとの間を界磁コア22N・22S及び磁石Mgを通って軸方向で流れる。磁束Φ1は、U相コイルCLuとV相コイルCLvの内側を通過する。同様に、磁束Φ2が形成される磁気回路は、第1電機子コアH1の磁極組G1u・G1w、第2電機子コアH2の磁極組G2u・G2w、界磁コア22N・22S、及びこの2つの界磁コアの間の磁石Mgを含む。
【0074】
図3Bで示すように、磁束Φ7が流れる磁気回路の1つは、第1電機子コアH1の磁極組G1u、コア連結部L、第2電機子コアH2の磁極組G2u、界磁コア22N・22S、及びこの2つの界磁コアの間の磁石Mgを含む。すなわち、磁束Φ7は、界磁コア22Nから第1電機子コアH1の磁極組G1uに入り、U相コイルCLuの内側を通過し、コア連結部Lを介して第2電機子コアH2の磁極組G2uに流れる。また、磁束Φ7は、第1電機子コアH1の磁極組G1uと第2電機子コアH2の磁極組G2uとの間を、界磁部Fsの界磁コア22N・22S及び磁石Mgを通って軸方向で流れる。なお、
図3Bで示すように、第1電機子コアH1の磁極組G1vと第2電機子コアH2の磁極組G2vとの間をコア連結部Lを介して流れる磁束Φ7と、第1電機子コアH1の磁極組G1wと第2電機子コアH2の磁極組G2wとの間をコア連結部Lを介して流れる磁束Φ7も形成される。
【0075】
このような回転電機M1によると、従来の回転電機とは異なり、各電機子コアH1・H2を回転方向で磁気的に分割する必要がなくなる。そのため、電機子コアH1・H2の強度を増すことができる。また、コア連結部Lを含む磁気回路と、回転方向で離れている2つの磁極組(例えば、磁極組G1u・G1v)を含む磁気回路の2つの回路に磁束が形成される。そのため、磁気回路の磁気的な飽和を抑えることができる。その結果、例えば、ヨーク部33c・34cの幅を狭くし、電機子部Am1の小型化・軽量化が容易となる。特に、1つの磁極組G1・G2を構成する磁極33a・34aの数を増す場合に、この利点は顕著となる。また、ヨーク部33c・34cの幅を増すことなく、磁気回路を飽和する磁束を増すことができるので、コイルCLに供給する電流を増し、回転電機の出力トルクを大きくできる。これらの効果は、後述するアキシャルギャップタイプの回転電機や、リニア電機においても得られる。
【0076】
また、磁極組G1・G2は界磁部Fsに対して径方向おける内側に位置している。
図1C及び
図1Dで示すように、コア連結部Lは磁極組G1・G2の内側に位置している。より具体的には、回転方向におけるコア連結部Lの位置は、回転方向における磁極組G1・G2の中心に一致している。これにより、2つの磁極組を回転方向において流れる磁束Φ1・Φ2と、コア連結部Lを流れる磁束Φ7が干渉することを抑えることができる。その結果、2つの磁気回路を流れる磁束を効率的に利用してトルクを得ることができる。
【0077】
また、回転電機M1では、2つの第2電機子コアH2の間に第1電機子コアH1が配置されているため、軸方向で並ぶ2つの磁気回路が形成されている。この構造によると、界磁コア22N・22Sを軸方向に流れる磁束の密度を下げたり、或いは、界磁コア22N・22Sの断面積(軸方向に対して垂直な面での断面積)を縮小できる。また、コイルCLは第1電機子コアH1に設けられ、第2電機子コアH2にコイルは設けられていない。このため、第1電機子コアH1と第2電機子コアH2のそれぞれについて、最適な形状を選択でき、形状についての自由度が高くなる。
なお、上述した2種類の磁束Φ1・Φ2・Φ7の双方が通過する位置であれば、コイルCLの位置は回転電機M1の例に限られない。例えば、コイルCLは第1電機子コアH1の磁極組G1と第2電機子コアH2の磁極組G2の双方に設けられてもよい、一部のコイルCLは第1電機子コアH1の磁極組G1に設けられ、残りの一部のコイルCLは第2電機子コアH2の磁極組G2に設けられてもよい。コイルCLは第1電機子コアH1の磁極組G1と第2電機子コアH2の磁極組G2の双方に設けられる構造においては、例えば、第1電機子コアH1の磁極組G1uに設けられるコイルCLの巻回方向と、第2電機子コアH2の磁極組G2uに設けられるコイルCLの巻回方向は反対となる。
【0078】
[磁束の変化]
なお、界磁部Fsが
図3Bで示す位置から磁極組G1v・G2vに向けて30度(電気角)だけ回転すると、界磁部Fsの磁石Mgが形成する磁束は変化する。具体的には、磁極組G1v・G2vを構成する磁極33a・34aが界磁部Fsの磁石Mgと正対する。このため、第1電機子コアH1の磁極組G1u・G1v、界磁部Fsの界磁コア22S・22N及び磁石Mg、並びに第2電機子コアH2の磁極組G2u・G2vで構成される磁気回路を通る磁束が流れなくなる。また、第1電機子コアH1の磁極組G1v、コア連結部L、第2電機子コアH2の磁極組G2v、界磁コア22N・22S、及びこの2つの界磁コア22N・22Sの間の磁石Mgを含む磁気回路を通る磁束が流れなくなる。
【0079】
また、界磁部Fsが
図3Bで示す位置から磁極組G1v・G2vに向けて60度(電気角)だけ回転すると、界磁部Fsの磁石Mgが形成する磁束はさらに変化する。具体的には、磁極組G1v・G2vを構成する磁極33a・34aが界磁部Fsの界磁コア22N・22Sと対向するようになる(
図3Bとは対向する極性が変わる)。このため、第1電機子コアH1の磁極組G1v・G1w、界磁部Fsの界磁コア22S・22N及び磁石Mg、並びに第2電機子コアH2の磁極組G2v・G2wで構成される磁気回路を通る磁束が形成される。また、第1電機子コアH1の磁極組G1v、コア連結部L、第2電機子コアH2の磁極組G2v、界磁コア22N・22S、及びこの2つの界磁コア22N・22Sの間の磁石Mgを含む磁気回路を通る磁束が形成される(
図3Bとは磁束の流れる向きが逆となる)。このように、界磁部Fsの回転にともなってU・V・W相コイルCLu・CLv・CLwの内側を通る磁束の磁路は変化する。また、磁路を流れる磁束の量や向きも変化する。具体的には、U・V・W相コイルCLu・CLv・CLwの内側を通る磁束は電気角で120度ずれた略正弦波状に変化する。
【0080】
[電機子部の材料]
回転電機M1においては、各電機子コアH1・H2は積層鋼板である。すなわち、第1電機子コアH1の全体が、軸方向で積層されている複数の鋼板Sp1(より具体的には電磁鋼板)で構成され、第2電機子コアH2の全体も軸方向で積層されている複数の鋼板Sp1(より具体的には電磁鋼板)で構成されている。電機子コアH1・H2のこの構造によると、回転方向において離れている2つの磁極組G1の間を流れる磁束に起因して電機子コアH1・H2に誘導電流が発生することを、抑えることができる。
【0081】
コア連結部Lも、積層されている複数の鋼板Sp2(より具体的には電磁鋼板)を含む積層鋼板である。コア連結部Lの鋼板Sp2が積層される方向は、電機子コアH1・H2の鋼板Sp1が積層される方向とは異なっている。具体的には、
図1A及び
図1Eで示すように、コア連結部Lの各鋼板Sp2は電機子コアH1・H2が離れている方向、言い換えれば、磁束Φ7の方向に沿って配置され、複数の鋼板Sp2が積層される方向は回転電機M1の回転方向(機械動作方向)である。回転電機M1においては、コア連結部Lの鋼板Sp2は軸方向に沿って配置され、複数の鋼板Sp2は回転方向(より具体的には、回転の接線方向)において積層されている。コア連結部Lのこの構造によると、磁極組G1・G2の間を軸方向で流れる磁束Φ7に起因してコア連結部Lに誘導電流が発生することを、抑えることができる。
【0082】
なお、後において詳説するように、電機子コアH1・H2の全体が、軟磁性の圧粉材料で形成されてもよいし、電機子コアH1、H2の大部分が積層鋼板で構成され、一部が軟磁性の圧粉材料により形成されてもよい。また、コア連結部Lも、軟磁性の圧粉材料で形成されてもよい。この場合、コア連結部Lは、同じく軟磁性の圧粉材料で形成されている電機子コアH1(又はH2)と一体的に形成されてもよい。
【0083】
[電機子コアの数の変更例]
電機子コアの数は、3つより多くてもよい。電機子部は、例えば、軸方向で離れている2つの第1電機子コアH1と、2つの第1電機子コアH1の間に配置されている第3電機子コアと、2つの第1電機子コアH1の上側と下側とにそれぞれ配置される2つの第2電機子コアH2とを有してよい。第3電機子コアは、2つの第2電機子コアH2が軸方向で合体した構造を有してよい。例えば、第3電機子コアの軸方向での幅が、2つの電機子コアH2の幅の合計であってよい。界磁部Fsの軸方向での幅は、5つの電機子コアの全体の軸方向での幅に対応していてよい。電機子部は、さらに多くの電機子コア(例えば、7つの電機子コアや、9つの電機子コア)が軸方向で重ねられた構造を有してもよい。
【0084】
電機子コアの数は、3つより少なくてもよい。例えば、電機子部は、1つの第1電機子コアH1と、1つの第2電機子コアH2とで構成されてよい。電機子部の第2電機子コアH2は、
図1Aを参照して説明した2つの第2電機子コアH2が軸方向で合体した構造を有してよい。すなわち、第2電機子コアH2の軸方向での幅が、
図1Aで示した2つの電機子コアH2の幅の合計であってよい。第2電機子コアH2は第1電機子コアH1の片側(これらの図において上側又は下側)に配置されてよい。この構造によると、部品数を減らすことができ、またコイルCLが上側又は下側に露出するので、コイルCLに電流を供給する部材(例えば、バスバー)のコイルCLへの接続作業が容易化できる。
【0085】
電機子部では、同じ構造を有する複数の電機子コアが軸方向で並べられてもよい。こうすることで、部品数の低減や、金型費の低減などの利点が得られる。この場合、一方の電機子コアが有する各磁極組の磁極の数と、他方の電機子コアが有する各磁極組の磁極の数は同じとなる。そして、2つの電機子コアは、磁極の位置が電気角で180度だけずれるように配置されてよい。
【0086】
[誘導電流防止構造]
電機子コアH1・H2は、それらの鋼板Sp1の積層方向においてコアH1・H2を貫通する嵌合穴33h・34h(
図1B参照)を有している。コア連結部Lはこの嵌合穴33h・34hに嵌められている。
図1C及び
図1Dで示すように、電機子コアH1・H2にはスリットS3・S4が形成されている。このスリットS3・S4によって、コア連結部Lを流れる磁束Φ7(
図3B参照)に起因して電機子コアH1・H2に誘導電流が発生することを防止できる。
【0087】
図4及び
図5は、電機子コアH1・H2における誘導電流の発生を防止するための構造を説明するための図である。
図5は
図4のV-V線での断面図である。これらの図の電機子コアH1・H2にはスリットS3・S4は形成されていない。
図5で示すように、コア連結部Lの鋼板Sp2から電機子コアH1の鋼板Sp1に流れる磁束Φ11~Φ14が形成される。この磁束Φ11~Φ14によって、
図4で示されるように、コア連結部Lの周囲に誘導電流C1が発生する。
図1C及び
図1Dで示すように、電機子コアH1・H2では上述したスリットS3・S4が形成されている。このスリットS3・S4は各コア連結部Lが嵌められている嵌合穴33h・34hから電機子コアH1の鋼板Sp1の積層方向に対して交差する方向(回転電機M1において径方向)に延びており且つ嵌合穴33h・34hを取り囲む閉曲線と交差する。本明細書において「嵌合穴を取り囲む閉曲線」とは、例えば嵌合穴33h・34hを取り囲む円や楕円であるが、これに限られず、コア連結部Lが嵌められる嵌合穴33h・34hの形状に応じた形状を有してよい。回転電機M1の例では、スリットS3・S4は、界磁部Fsに向かって延び、電機子コアH1・H2の界磁部Fs側の開口に達している。このため、スリットS3・S4によって誘導電流C1の発生を防止できる。回転電機M1において、界磁部Fsは電機子部Am1の外側に配置されているので、スリットS3・S4は径方向における外側に向かって嵌合穴33h・34hから延びている。
【0088】
図6は、電機子コアH1・H2及びコア連結部Lの断面を示す模式図である。同図の磁束Φ7は、
図3Bで示した、コア連結部Lを含む磁気回路を流れる磁束である。回転電機M1においては、コア連結部Lを流れる磁束Φ7と電機子コアH1・H2のヨーク部33c・34cを通る磁束Φ1・Φ2(
図3B参照)とが存在する。そのため、U相、V相、及びW相の3つの相のそれぞれについて形成される磁束Φ7の合計はゼロとはならない。例えば、第1電機子コアH1から第2電機子コアH2に向かって複数のコア連結部Lを介して流れる磁束Φ7が、第2電機子コアH2から第1電機子コアH1に向かって複数のコア連結部Lを介して流れる磁束Φ7より多くなったり、その逆が生じる。
【0089】
スリットS3が形成されていない場合、複数のコア連結部Lと界磁部Fsとの間に軸線Axを中心として第1電機子コアH1の全体を通る閉回路(
図8において誘導電流C2が流れる回路)が形成される。同様に、スリットS4が形成されていない場合、複数のコア連結部Lと界磁部Fsとの間に軸線Axを中心として第2電機子コアH2の全体を通る閉回路が形成される。
図6においては、コア連結部Lから界磁部Fsまでの間の部分M・N(網掛け部分)に回転方向の閉回路が形成される。上述したように全てのコア連結部Lを流れる磁束Φ7の合計はゼロとはならないため、磁束Φ7に起因してこの閉回路に誘導電流が形成される。ところが、回転電機M1においては、スリットS3・S4が、回転方向で並んでいる複数の嵌合穴33h・34hと回転方向で並んでいる複数の磁極組G1・G2との間を通り且つ軸線Axを取り囲む閉曲線と交差する。本明細書において、「軸線Axを取り囲む閉曲線」は、例えば、軸線Axを中心とする円であるが、嵌合穴33h・34hの位置を避ける迂回部を有する曲線であってもよい(例えば、
図8の線C2参照)。スリットS3・S4は嵌合穴33h・34hから界磁部Fsに向かって延び、電機子コアH1・H2の界磁部Fs側の開口に達している。このため、電機子コアH1・H2の全体を通る閉回路がスリットS3・S4によって遮断され、電機子コアH1・H2に回転方向の誘導電流C2(
図8参照)が発生することを防止できる。
【0090】
なお、電機子コアH1・H2には、スリットS3・S4には電気的絶縁材料が充填されていてもよい。例えば、電機子コアH1・H2の全体が樹脂でモールドされる場合、このスリットS3・S4には樹脂(電気的絶縁材料)が充填されることとなる。また、スリットS3・S4は電気的に絶縁されていればよく、幅を狭くして磁気的な抵抗を小さくすることが望ましい。
【0091】
嵌合穴33h・34hは閉じた内面を有する貫通穴であり、
図1C及び
図1Dに示すスリットS3・S4はこの嵌合穴33h・34hから延びている。誘導電流の発生を防止する構造は必ずしもスリットS3・S4に限られない。
図7で示すように、電機子コアH1・H2には、鋼板Sp1の積層方向に対して交差する方向に開いている嵌合穴33g・34gが形成されてもよい。
図7の例では、嵌合穴33g・34gは界磁部Fsとは反対側に向かって開口している。この嵌合穴33g・34gによって、各コア連結部Lの周囲に誘導電流C1(
図8参照)が発生することを防止できる。また、コア連結部Lのこの配置によれば、磁極組G1・G2から嵌合穴33g・34gまでの距離を増すことができ、その結果、回転方向で流れる磁束によってヨーク部33c・34cが飽和することを、より効果的に抑えることができる。
【0092】
図7で示すように、回転方向での嵌合穴33g・34gの開口の幅(回転電機M1において回転方向での幅W1、
図8参照)は、コア連結部Lの同方向での幅の半分より大きい。より望ましくは、回転方向での嵌合穴33g・34gの開口の幅W1はコア連結部Lの同方向での幅に実質的に対応しているのが望ましい。この構造によって、コア連結部Lの回転方向での端部を通過する磁束Φ7に起因してコア連結部Lの端部の周りに誘導電流が発生することを防止できる。
図7で示す例では、嵌合穴33g・34gの開口の縁はコア連結部Lの端部に位置する1又は2の鋼板Sp2だけに接し、残りの鋼板Sp2は嵌合穴33g・34gの開口から露出している。
【0093】
電機子コアH1・H2には、径方向に開口している嵌合穴33g・34gに代えて、コア連結部Lが嵌められている嵌合穴33h・34h(
図1B参照)から界磁部Fsとは反対側に向かって延びているスリットが形成されてもよい。この構造おいても、各コア連結部Lの周囲に誘導電流C1が発生することを防止できる。
【0094】
図7で示したように嵌合穴33g・34gが界磁部Fsとは反対側に向かって開口している構造おいては、複数のコア連結部Lと界磁部Fsとの間に形成され、軸線Axを中心として電機子コアH1・H2の全体を通る閉回路(
図8において誘導電流C2が流れる回路)が形成される。そのため、
図6で示した磁束Φ7に起因して、この閉回路に誘導電流C2(
図8参照)が生じる。そこで、
図7及び
図9Aで示すように、電機子コアH1・H2にはスリットS5・S6が形成されてもよい。スリットS5・S6は、回転方向で並んでいる複数の嵌合穴33g・34gと回転方向で並んでいる複数の磁極組G1・G2との間を通り且つ軸線Axを取り囲む閉曲線と交差する。このスリットS5・S6によって、軸線Axを中心として電機子コアH1・H2の全体を通る閉回路が遮断され、電機子コアH1・H2に回転方向の誘導電流C2(
図8参照)が発生することを防止できる。スリットS5は、例えば複数の嵌合穴33gのうちの1つから界磁部Fsに向かって延び、界磁部Fs側の開口に達する。より具体的には、スリットS5は、回転方向における嵌合穴33gの中心から磁極組G1に向かって延びている。同様に、スリットS6(
図7参照)は、例えば複数の嵌合穴34gのうちの1つから界磁部Fsに向かって延び、界磁部Fs側の開口に達している。
【0095】
スリットS5・S6は必ずしも嵌合穴33g・34gに接続していなくてもよい。例えば、
図9Bで示すように、スリットS5は隣り合う2つの磁極組G1の間に形成されてもよい。このスリットS5は、第1電機子コアH1の界磁部Fs側の縁から延び、反対側の縁に達している。第2電機子コアH2のスリットS6も、
図9Bで示すスリットS5と同様に、隣り合う2つの磁極組G2の間に形成されてもよい。このようなスリットS5・S6も回転方向で並んでいる嵌合穴33g・34gと回転方向で並んでいる複数の磁極組G1・G2との間を通り且つ軸線Axを取り囲む閉曲線と交差することとなる。その結果、電機子コアH1・H2に回転方向の誘導電流が発生することを防止できる。スリットS5・S6は電気的に絶縁されていればよく、幅を狭くして磁気的な抵抗を小さくすることが望ましい。
【0096】
コア連結部Lと嵌合穴33h・34hの内面とが電気的に接続していると、コア連結部Lの一部(スリットS3よりも右側に位置する部分、及びスリットS3よりも左側に位置する部分)を通る磁束によって、この磁束を取り囲む閉回路が形成され、そこに誘導電流C3(
図1D参照)が生じ得る。そこで、コア連結部Lと嵌合穴33h・34hの内面との間には部分的に隙間(絶縁部)が形成されてよい。こうすることで、そのような誘導電流C3を低減できる。
【0097】
また、コア連結部Lを構成する複数の鋼板Sp2(
図1A参照)は、回転電機M1の機械動作方向(回転方向)において積層されている。回転電機M1の例とは異なり、コア連結部Lの鋼板Sp2が径方向に積層されている場合、径方向の端部に位置する鋼板Sp2に磁束Φ7に起因する誘導電流が発生しやすくなる。これに対して、回転電機M21では、コア連結部Lの鋼板Sp2は径方向に積層されているので、そのような誘導電流が発生することを抑えることができる。
【0098】
[電機子コアの内側に界磁部が配置されている例]
図10は、本開示で提案する回転電機の別の例として、界磁部Fsの外側に電機子部Am3が配置される例を示す斜視図である。
図10において、電機子部Am3の回転方向の一部は図示していない。ここでは、
図1Aで示した回転電機M1との相違点を中心にして説明する。
図10で示す回転電機M3について説明のない事項は、
図1Aの回転電機M1の構造が適用されてよい。
【0099】
電機子部Am3においても、電機子部Am1と同様、2つの第2電機子コアH2の間に、第1電機子コアH1が配置されている。電機子コアH1・H2は、円環状のヨーク部33c・34cと、ヨーク部33c・34cの内側に形成され回転方向で並んでいる複数の磁極組G1・G2とを有している。各磁極組G1・G2は、界磁部Fsに向かって突出し回転方向で並んでいる複数の磁極33a・34aを有している。磁極組G1を構成する複数の磁極33aにコイルCLが巻かれている。第2電機子コアH2のヨーク部34cの外径と第1電機子コアH1のヨーク部33cの外径は、一致しているとよい。こうすることで、回転電機M3が搭載される装置が有する構造物に電機子部Am3を固定するときに、その固定構造を簡単化・高精度化できる。
【0100】
図10の例において、各磁極組G1は4つの磁極33aを有し、各磁極組G2は5つの磁極34aを有しているが、これらの数は適宜変更されてよい。磁極組G2の端部に位置する磁極34aは、隣の磁極組G2の磁極34aと一体化していてもよい。
【0101】
隣り合う2つの磁極組対Pの間の角度(機械角及び電気角)についての条件は、
図2で示した例と同様であってよい。上述したように、隣り合う2つの磁極組対Pの間の角度は、電気角で実質的に「360×(n+m/s)」度であり、隣り合う2つの磁極組対Pの間に、機械角で「(360/p)×(n+m/s)」度が確保される(上述したように、機械角は「360/s/c」とも表される)。
s:相数
m:1以上、s-1以下の整数(ただしsの約数(1を除く)および約数(1を除く)の倍数を除く)
n:1以上の整数
p:(界磁部の極数)/2
c:各相についてのコイルの数
図10の例では、s=3,n=4,m=1,c=3,p=39である。
複数の相のそれぞれに設けられているコイルCLの巻回方向は、
図1A等で説明した例と同様、同じであってもよい。例えば、3つのU相コイルCLuの巻回方向は同じである。
【0102】
電機子部Am3も、間隔をあけて回転方向(すなわち、機械動作方向)で並んでいる複数のコア連結部Lを有している。電機子部Am3は1つの第1電機子コアH1と2つの第2電機子コアH2を有しており、コア連結部Lはこれら3つの電機子コアH1・H2を磁気的に結合している。これとは異なり、電機子部Am3は、第1電機子コアH1と上側の第2電機子コアH2とを結合する第1のコア連結部Lと、第1電機子コアH1と下側の第2電機子コアH2とを結合する第2のコア連結部Lとを有してもよい。
【0103】
図10で示すように、コア連結部Lは磁極組対P(例えば磁極組G1u・G2u)及びそれらに設けられたコイルCLを挟んで界磁部Fsとは反対側に位置している。言い換えれば、コア連結部Lは径方向において磁極組G1・G2の外側に位置している。回転方向におけるコア連結部Lの位置は、回転方向における磁極組G1・G2の中心に一致しているとよい。これにより、回転方向で離れている2つの磁極組を流れる磁束と、コア連結部Lを流れる磁束とが干渉することを抑えることができる。
【0104】
電機子コアH1・H2のヨーク部33c・34cに、これらを軸方向に貫通する嵌合穴33h・34hが形成されている。コア連結部Lはこの嵌合穴33h・34hに嵌められている。第2電機子コアH2においては、隣り合う2つの嵌合穴34h(隣り合う2つのコア連結部L)の間に孔34eが形成されてもよい。これによって、第2電機子コアH2の重量の増加を抑えることができる。
【0105】
回転電機M3においても、2種類の磁気回路が形成される。第1の磁気回路の1つは、例えば、
図3Bで説明した回転電機M1と同様、第1電機子コアH1の磁極組G1u・G1v、第2電機子コアH2の磁極組G2u・G2v、界磁コア22N・22S、及びこの2つの界磁コア22N・22Sの間の磁石Mgを含む。また、第1の磁気回路の別の1つは、第1電機子コアH1の磁極組G1u・G1w、第2電機子コアH2の磁極組G2u・G2w、界磁コア22N・22S、及びこの2つの界磁コアの間の磁石Mgを含む。第2の磁気回路は、第1電機子コアH1の磁極組G1u、コア連結部L、第2電機子コアH2の磁極組G2u、界磁コア22N・22S、及びこの2つの界磁コア22N・22Sの間の磁石Mgを含む。
【0106】
電機子部Am3においても、
図1Aの電機子部Am1と同様、回転方向(機械動作方向)でのコア連結部Lの幅は、回転方向での磁極組G1・G2の幅よりも小さい。このため、コア連結部Lを介して流れる磁束Φ7(
図3B参照)と、回転方向で離れている2つの磁極組の間を流れる磁束Φ1・Φ2(
図3B参照)の双方がより有効に形成される。
【0107】
電機子部Am3においても、
図1C及び
図1Dで示した構造と同様、各磁極組G1を構成する複数の磁極33aのうち少なくとも両端にそれぞれ位置する2つの磁極33aがコア連結部Lの両端部Leより外方(時計回り方向及び反時計回り方向)に位置し、各磁極組G2を構成する複数の磁極34aのうち少なくとも両端にそれぞれ位置する2つの磁極34aがコア連結部Lの両端部Leより外方(時計回り方向及び反時計回り方向)に位置しているとよい。こうすることで、回転方向で離れている2つの磁極組G1・G2の間を流れる磁束Φ1・Φ2(
図3B参照)が形成され易くなる。
【0108】
電機子コアH1・H2は積層鋼板である。電機子コアH1・H2には、
図10で示すように、各嵌合穴33h・34hから延びているスリットS3・S4が形成されている。スリットS3・S4は、界磁部Fsに向かって延び、電機子コアH1・H2の界磁部Fs側の縁に達し、界磁部Fsに向かって開口している。これによって、各コア連結部Lの周囲に誘導電流C1(
図4参照)が発生することを、このスリットS3・S4によって防止できる。スリットS3・S4によると、電機子コアH1の全体に回転方向の誘導電流C2(
図8参照)が生じることを防止でき、電機子コアH2の全体に回転方向の誘導電流が生じることを防止できる。
【0109】
なお、複数のコア連結部Lがそれぞれ嵌められる複数の嵌合穴は、
図7の例とは反対に、電機子コアH1・H2の径方向の外側に開口していてもよい。(言い換えれば、コア連結部Lが少なくとも部分的に径方向の外側に露出していてよい。)すなわち、複数の嵌合穴は、界磁部Fsとは反対側に開口していてもよい。この開口によって、各コア連結部Lを取り囲む誘導電流C1(
図4参照)が発生することを防止できる。このような構造においては、
図9A及び
図9Bで示したように、複数のコア連結部Lが嵌められている複数の嵌合穴と回転方向で並んでいる複数の磁極組G1・G2との間を通り且つ軸線Axを取り囲む閉曲線と交差するスリットS5・S6が電機子コアH1・H2に形成されてもよい。
【0110】
なお、界磁部Fsの内側に電機子部Am1が配置される例として
図1A等で説明し、界磁部Fsの外側に電機子部Am3が配置される例として
図10で説明したが、回転電機の一例においては、1つの界磁部Fsの内側と外側に2つの電機子部が配置されてもよい。
【0111】
[圧粉材料で形成される電機子コアを有する例]
電機子コアは、軟磁性の圧粉材料で形成されてもよい。
図11は、本開示で提案する回転電機の別の例として、このような構造を有する回転電機M4を示している。
図11は回転電機M4の斜視図である。界磁部Fsの回転方向の一部は図示していない。
図11で示す回転電機M4について説明のない事項は、
図1Aの回転電機M1が有する構造が適用されてよい。この図で示す電機子コアの構造は、図で示すラジアルギャップタイプの回転電機だけでなく、リニア電機や、アキシャルギャップタイプの回転電機に適用されてよい。
【0112】
回転電機M4の電機子部Am4は、軟磁性の圧粉材料(Soft Magnetic Composite (SMC) materials)で形成されている電機子コアH1・H2を有している。すなわち、電機子コアH1・H2は、軟磁性の粉末と粉末の表面を覆う絶縁膜(例えば、樹脂膜)とを含む複合材料で形成されている。複合材料は圧縮成型され且つ熱処理されて、電機子コアH1・H2を形成する。このような電機子コアH1・H2は高い電気抵抗率を有するので、電機子コアH1・H2を通過する磁束の向きに依ることなく、誘導電流が抑えられる。したがって、これまで説明した回転電機M1等とは異なり、電機子コアH1・H2にスリットS3・S4・S5・S6は形成されていなくてよい。
【0113】
圧粉材料は積層鋼板とは異なり、金型を利用して作製される。そのため、磁極33a・34aの形状について、高い自由度が確保できる。電機子部Am4においては、磁極33a・34aの幅が軸方向で変化している。磁極33aの幅は、第2電機子コアH2に近づくに従って徐々に小さくなっている。一方、磁極34aの幅は、第1電機子コアH1に近づくに従って徐々に小さくなっている。これによって、コギングトルクが低減できる。
【0114】
また、磁極33a・34aは、軸方向に伸びている突出部(不図示)を磁極33a・34aの先端部に有してもよい。これにより、磁極33a・34aの先端面の面積(界磁部Fsに向く面の面積)が増し、界磁部Fsと磁極33a・34aとの間の隙間に起因する磁気抵抗を下げることができる。
【0115】
隣り合う2つの磁極組対Pの間の角度(機械角及び電機角)についての条件は、
図2で示した例と同様であってよい。また、複数の相のそれぞれに設けられているコイルCLの巻回方向は、
図1等で説明した例と同様、同じであってもよい。これとは異なり、複数の相のそれぞれについて、巻回方向が異なる2つのコイルCLが設けられてもよい。例えば、2つのU相コイルCLuの巻回方向は互いに反対であってもよい。
【0116】
図11で示すように、回転電機M4も、回転電機M1と同様、間隔をあけて回転方向(すなわち、機械動作方向)で並んでいる複数のコア連結部Lを有している。電機子部Am4は1つの第1電機子コアH1と2つの第2電機子コアH2を有しており、コア連結部Lはこれら3つの電機子コアH1・H2を磁気的に結合している。コア連結部Lは磁極組対P(軸方向で並ぶ磁極組G1・G2)及びそれらに設けられたコイルCLを挟んで界磁部Fsとは反対側に位置している。回転方向におけるコア連結部Lの位置やサイズは、
図1A等で示した回転電機M1と同じであってもよい。
【0117】
電機子コアH1・H2のヨーク部33c・34cに、これらを軸方向に貫通する嵌合穴33h・34hが形成されている。コア連結部Lはこの嵌合穴33h・34hに嵌められている。これとは異なり、複数のコア連結部Lは例えば第1電機子コアH1と一体的に形成されてもよい。この場合、コア連結部Lは第2電機子コアH2に形成されている嵌合穴34hに嵌められてよい。反対に、複数のコア連結部Lは第2電機子コアH2と一体的に形成されてもよい。この場合、コア連結部Lは第1電機子コアH1に形成されている嵌合穴33hに嵌められてよい。
【0118】
[各磁極組に複数のコア連結部が設けられる例]
回転電機M1~M4の例では、各磁極組対Pの設けられるコア連結部Lの数は1つであった。これとは異なり、各磁極組対Pに、回転方向(機械動作方向)で並ぶ複数のコア連結部Lが設けられてもよい。回転電機M1~M4の例では、各磁極組G1・G2に設けられている磁極33a・34aの数は4~6であったが、各磁極組G1・G2に設けられている磁極33a・34aの数はより多くてもよい。このような場合に、各磁極組対Pに複数のコア連結部Lが設けられるとよい。この構造によると、各磁極組対Pに設けられる複数のコア連結部Lの全断面積(軸方向で見たときの面積)を増やすことができる。そのため、ヨーク部33c・34cの幅及び重量の増加を抑えながら、各磁極組G1・G2を通過する磁束を増すことができる。
【0119】
図12A及び
図12Bは、このような構造を有する電機子コアを有する回転電機の例として、回転電機M5を示す図である。
図12Aは回転電機M5の一部の斜視図であり、
図12Bは回転電機M5が有する第1電機子コアH1の平面図である。ここでは、
図1Aで示した回転電機M1との相違点を中心にして説明する。回転電機M5について説明のない事項は、回転電機M1が有する構造が適用されてよい。ここで説明する電機子コアの構造は、図で示すラジアルギャップタイプの回転電機だけでなく、リニア電機や、アキシャルギャップタイプの回転電機に適用されてよい。
【0120】
回転電機M5において、各磁極組G1は11個の磁極33aを有し、各磁極組G2は12個の磁極34aを有している。各磁極組G1にコイルCLが設けられている。すなわち、各磁極組G1を構成する11個の磁極33aに1つのコイルCLが巻回されている。各磁極組対Pを構成する磁極組G1・G2は回転方向で並んでいる複数のコア連結部Lで磁気的に結合されている。
図12Aにおいては、磁極組G1・G2は3つのコア連結部Lで磁気的に結合されている。これによると、隣り合う2つのコア連結部Lの角度を変えることが可能となり、複数のコア連結部Lの並びを全体として磁極組G1・G2の湾曲に合わせることができる。1つの磁極組対Pに設けられるコア連結部Lの数は2つでもよいし、3つより多くてもよい。
【0121】
図12Bで示すように、各磁極組G1を構成する複数の磁極33aのうち少なくとも両端にそれぞれ位置する2つの磁極33aが3つのコア連結部Lの両端部Leより外方(時計回り方向及び反時計回り方向)に位置しているとよい。同図では、右端に位置する複数の磁極33a(より具体的には2つの磁極33a)が3つのコア連結部Lの右端部Leより右方に位置し、左端に位置する複数の磁極33a(より具体的には2つの磁極33a)が3つのコア連結部Lの左端部Leより左方に位置している。第2電機子コアH2においても、各磁極組G2を構成する複数の磁極34aのうち少なくとも両端にそれぞれ位置する2つの磁極34aが3つのコア連結部Lの両端部Leより外方(時計回り方向及び反時計回り方向)に位置しているとよい。こうすることで、回転方向で離れている2つの磁極組の間を流れる磁束Φ1・Φ2(
図3B参照)が形成され易くなる。
【0122】
図12Bで示すように、3つのコア連結部Lが嵌められている3つの嵌合穴33hは回転方向において隙間33mを介して繋がっている。そして、3つの嵌合穴33hのうち1つの嵌合穴33hから界磁部Fsに向かって延びているスリットS3が形成されている。3つの嵌合穴33hの全体を取り囲む閉曲線とスリットS3は交差している。これによって、3つのコア連結部Lを取り囲む誘導電流が第1電機子コアH1に発生することを防止できる。
【0123】
なお、
図12Bの例とは異なり、3つの嵌合穴33hは相互に分離していてよい。すなわち、隣り合う2つの嵌合穴33hの間に隙間33mは形成されていなくてよい。この場合、3つのスリットS3が3つの嵌合穴33hからそれぞれ界磁部Fsに向かって延びていてもよい。こうすることで、各コア連結部Lを取り囲む誘導電流が第1電機子コアH1に発生することを防止できる。
【0124】
また、
図12Bの例とは異なり、3つの嵌合穴33hのうち1つの嵌合穴33h(又は複数の嵌合穴33h)から界磁部Fsとは反対側に延びているスリットが形成されてもよい。この場合、
図9A或いは
図9Bで示した例と同様、第1電機子コアH1に、回転方向で並んでいる複数の嵌合穴33hと回転方向で並んでいる複数の磁極組G1との間を通り且つ軸線Axを取り囲む閉曲線と交差するスリットS5が形成されてもよい。スリットS5は、
図9Aで示すように、例えば、複数の嵌合穴33hのうちの1つから界磁部Fsに向かって延び、界磁部Fs側に縁で開口してもよいし、
図9Bで示すように、例えば2つの磁極組G1の間に形成されてもよい。ここで説明する構造は、回転電機M5の第2電機子コアH2に適用されてもよい。
【0125】
回転電機M5においても、隣り合う2つの磁極組対Pの間の角度は、電気角で実質的に「360×(n+m/s)」度である。
s:相数
m:1以上、s-1以下の整数(ただしsの約数(1を除く)および約数(1を除く)の倍数を除く)
n:1以上の整数
回転電機M5では、s=3、m=1、n=12である。そのため、隣り合う2つの磁極組対Pの角度は電気角で4,440度である。
【0126】
また、隣り合う2つの磁極組対Pの間に、機械角で「(360/p)×(n+m/s)」度が確保される。また、隣り合う2つの磁極組対Pの角度は、機械角で「360/s/c」度とも表せる。
p:(界磁部の極数)/2
c:各相についてのコイルの数
したがって、「(360/p)×(n+m/s)」は「360/s/c」に実質的に等しくなる。「界磁部の極数」は界磁部Fsが有している界磁コア22N・22Sの数に一致し、回転電機M1では、例えば148である(p=74)。また、s=3、c=2である。そのため、隣り合う2つの磁極組対Pの間の角度は、機械角で約60度となる。言い換えれば、「(360/p)×(n+m/s)」が「360/s/c」に実質的に等しくなるように、界磁部Fsの極数(p×2)や、電機子部のコイル数(s×c)、磁極33a・34aの数などが設定されている。
【0127】
[電機子コアが複数の部分コアで構成されている例]
電機子コアは、別個に形成され且つ互いに結合している複数の部分(部分電機子コア)で構成されてもよい。
図13A及び
図13Bは本開示で提案する回転電機の別の例として、このような構造を有する回転電機が有する電機子部Am6を説明するための図である。
図13Aは電機子部Am6の分解斜視図である。
図13Bは電機子部Am6を構成する第1電機子コアH1の平面図である。電機子部Am6は、これまで説明した他の回転電機の電機子部と同様、第1電機子コアH1と、2つの第2電機子コアH2と、電機子コアH1・H2を磁気的に結合するコア連結部Lとを有している。なお、ここで説明する電機子コアの構造は、図で示すラジアルギャップタイプの回転電機だけでなく、リニア電機や、アキシャルギャップタイプの回転電機に適用されてよい。
【0128】
第1電機子コアH1は、回転方向で並んでいる複数の磁極組部分コア33A(
図13A参照)を有している。磁極組部分コア33Aは、回転方向で並ぶ複数の磁極33a(
図13B参照)と、複数の磁極33aの基部に位置している共通基部33b(
図13B参照)とを有している。複数の磁極33aは磁極組G1を構成している。また、第1電機子コアH1は、環状のヨーク部分コア33D(
図13A参照)を有している。
【0129】
図13Aで示すように、複数の磁極組部分コア33Aは、ヨーク部分コア33Dの外側に配置されている。磁極組部分コア33Aは、ヨーク部分コア33Dとは別個に形成された部分であり、連結機構Li1(係合部55a・被係合部55b、
図13B参照)によってヨーク部分コア33Dに連結している。磁極組部分コア33Aとヨーク部分コア33Dのそれぞれが積層鋼板で形成されている。このような第1電機子コアH1によると、電機子コアの全体が1つの積層鋼板で構成される場合に比して、第1電機子コアH1の製造時におけるコア材料の歩留まりが向上できる。
【0130】
図13Aで示すように、電機子部Am6では、回転電機M1の例と同様、磁極組G1にコイルCLが設けられている。つまり、電機子部Am6では、コイルCLが設けられる部分(すなわち磁極組部分コア33A)が、ヨーク部分コア33Dとは別個に形成されている。そのため、電機子部Am6の製造過程において、例えばボビン巻または空芯巻されたコイルCLを磁極組部分コア33Aに取り付け、その後に、磁極組部分コア33Aをヨーク部分コア33Dに連結するという作業工程が可能となる。このため、隣り合う磁極組部分コア33Aの距離K1(
図13B参照)を小さくできる。その結果、1つの磁極組G1を構成する磁極33aの数を増やすことが可能となり、磁石Mgの利用効率が増し、回転電機の出力トルクを増すことができる。
【0131】
図13Bで示すように、各磁極組G1を構成する複数の磁極33aは、回転方向における最も外側に位置する磁極33a1を含んでいる。磁極33a1は共通基部33bの側面33uよりも回転方向に突出している。磁極組部分コア33Aのこの形状により、1つの磁極組G1を構成する磁極33aの数を増やすことができる。
【0132】
図13Bで示すように、磁極組部分コア33Aは、コア連結部Lを流れる磁束に起因する誘導電流の発生を防止するためのスリットS3を有している。磁極組部分コア33Aは、回転方向で分離されている第1部分コア33A1と、第2部分コア33A2とを含んでいる。この2つの部分コア33A1・33A2は互いに離れている面33eを有している。(以下では、この面33eをスリット面と称する。)この2つのスリット面33eとの間にスリットS3が形成されている。この2つの部分コア33A1・33A2はスリットS3を挟んで対称の形状を有している。スリットS3は磁極組部分コア33Aの界磁部Fs側の面に達している。
【0133】
図13Bで示すように、第1部分コア33A1と第2部分コア33A2のそれぞれが、連結機構Liによって環状のヨーク部分コア33Dに連結されている。この3つの部分コア33A1・33A2・33Dによって、スリットS3、及びコア連結部Lが嵌められている嵌合穴が形成されている。詳細には、ヨーク部分コア33Dは、界磁部Fsに向いた面に凹部33d(
図13A参照)を有している。各部分コア33A1・33A2は、ヨーク部分コア33Dに向いた面33iを有している。(以下では、面33iを「連結面」と称する。)連結面33iに、連結機構Li1を構成する係合部55aを有している。連結面33iと凹部33dとの内面とによって、コア連結部Lが嵌められる嵌合穴が形成され、また2つの部分コア33A1・33A2の間に形成されているスリットS3は嵌合穴に接続している。
【0134】
なお、スリットS3及びコア連結部Lが嵌められる嵌合穴を形成するための構造は、ここで説明する例に限られない。例えば、コア連結部が嵌められる嵌合穴は、磁極組部分コア33Aの共通基部33bに形成されてもよい。この場合、スリットS3はこの嵌合穴から界磁部Fsに向かって伸びていてよい。この場合、磁極組部分コア33Aは、相互に分割されている2つの部分コア33A1・33A2を有していなくてよい。言い換えれば、2つの部分コア33A1・33A2はスリットS3以外の部分で繋がっていてよい。
【0135】
さらに他の例では、ヨーク部分コア33Dの内周面(界磁部Fsとは反対側の面)に、
図7で示した例と同様の嵌合穴33gが形成されてもよい。この場合、複数の嵌合穴33gと複数の磁極組G1との間を通過し且つ軸線Axを取り囲む閉曲線と交差するスリットS5(
図9A及び
図9B参照)がヨーク部分コア33Dに形成されてよい。
【0136】
図13Bで示すように、連結機構Li1は係合部55aと被係合部55bとで構成されている。同図の例では、係合部55aが部分コア33A1・33A2に形成され、被係合部55bがヨーク部分コア33Dに形成されている。係合部55aは、磁極組部分コア33Aの連結面33iから突出している凸部である。一方、被係合部55bは係合部55aが嵌まる凹部である。電機子部Am6の例とは反対に、凸部である係合部55aがヨーク部分コア33Dに形成され、凹部である被係合部55bが磁極組部分コア33Aに形成されてもよい。
【0137】
図13Bに示すように、磁極組部分コア33Aが連結機構Li1を介してヨーク部分コア33Dに連結している状態において、磁極組部分コア33Aの連結面33iはヨーク部分コア33Dに接し、磁極組部分コア33Aはヨーク部分コア33Dに磁気的に結合している。
【0138】
磁極組部分コア33Aとヨーク部分コア33Dとの連結構造は、
図13A及び
図13Bで示す例に限られない。例えば、磁極組部分コア33Aとヨーク部分コア33Dは、連結機構Li1を有することなく、それらの接合面の接着やろう付けによって、互いに連結されたり、樹脂でモールドされてもよい。
【0139】
電機子コアの分割構造は、
図13A及び
図13Bで示す例に限られない。例えば、電機子コアは、回転方向で並んでいる複数の部分コアを有してもよい。この場合、各部分コアに磁極組G1・G2が形成されてよい。また、各部分コアに、コア連結部Lが嵌められる嵌合穴と、嵌合穴から界磁部Fsに向かって延びるスリットS3とが形成されてよい。複数の部分コアは互いに別個に形成された部材であり、回転方向で隣り合う2つの部分コアが連結機構Li1によって互いに連結され、且つ磁気的に結合していてよい。そして、複数の部分コアは全体として環状の電機子コアを構成してよい。このような電機子コアの構造でも、電機子コアの全体が1つの積層鋼板で構成される場合に比して、電機子コアの製造時におけるコア材料の歩留まりを向上できる。
【0140】
図13Aで示すように、磁極組部分コア33Aの磁極33aは、界磁部Fsに向かって突出する形状の本体と、この本体から軸方向に伸びている突出部33nを有してよい。これにより、磁極33aの先端面の面積(界磁部Fsに向く面の面積)が増し、界磁部Fsと磁極33aとの間の隙間に起因する磁気抵抗を下げることができる。また、この突出部33nが、界磁コア22N・22Sに加えて、軸方向で流れる磁束の流路の一部として機能し得るので、界磁コア22N・22Sの磁気飽和を緩和することができる。
【0141】
図13Aで示すように、磁極組部分コア33Aは、軸方向での端部(
図13Aにおいて上端と下端)に位置している複数の端部鋼板33Eと、それらの間に配置されている複数の本体鋼板33Fとを有している。この端部鋼板33Eの磁極の先端が第2電機子コアH2に向かって折り曲げられ、突出部33nを構成している。図で示す例では、上端に位置する2枚の端部鋼板33Eの先端と、下端に位置する2枚の端部鋼板33Eの先端とが折り曲げられている。突出部33nを構成する端部鋼板33Eの枚数は、1枚でもよいし、2枚より多くてもよい。なお、このような磁極33aの形状(突出部33n)は、一体的に形成されている電機子コア(例えば、
図1Aで示した、部分コアを有していない電機子コアH1)に適用されてもよい。
【0142】
図13Aで示すように、第2電機子コアH2のヨーク部34cには、コア連結部Lが嵌められている嵌合穴34hが形成されている。また、第2電機子コアH2は、嵌合穴34hから界磁部Fsに向かって延びているスリットS4を有している。また、隣り合う2つの嵌合穴34hの間には孔34eが形成されている。この孔34eによって、電機子部Am6の軽量化を図ることができる。
【0143】
第2電機子コアH2の内径(ヨーク部34cの内径)は、第1電機子コアH1の内径(ヨーク部分コア33Dの内径)と一致していてもよい。こうすることで、第2電機子コアH2と第1電機子コアH1の内側に円筒形の支持部材を入れることで、これらを強固に固定できる。
【0144】
図13Aで示すように、第2電機子コアH2の磁極34aも、界磁部Fsに向かって突出する形状の本体と、本体から軸方向に伸びている突出部34nとを有している。第2電機子コアH2は積層鋼板で形成され、端部鋼板34Eと本体鋼板34Fとを有している。端部鋼板34Eは、本体鋼板34Fに対して第1電機子コアH1側に配置されている。第2電機子コアH2は、第1電機子コアH1と同様、軸方向での端部に複数(図で示す例では2枚)の端部鋼板34Eを有している。端部鋼板34Eの枚数は、1枚でもよいし、2枚より多くてもよい。端部鋼板34Eにおいて、磁極34aの先端は他の鋼板の長さよりも長くなっており、第1電機子コアH1に向かって折り曲げられて、突出部34nを構成している。これにより、磁極34aの先端面の面積(界磁部Fsに向く面の面積)が増し、界磁部Fsと磁極34aとの間の隙間に起因する磁気抵抗を下げることができる。また、この突出部34nが、界磁コア22N・22Sに加えて、軸方向で流れる磁束の流路の一部として機能し得るので、界磁コア22N・22Sの磁気飽和を緩和することができる。
【0145】
[巻回方向が異なっている2つの同相のコイルを有する例]
回転電機は、各相(例えば、U相、V相、W相)について、巻回方向が互いに反対である2つのコイルを有してもよい。
図14A及び
図14Bは本開示で提案する回転電機の別の例として、このような構造を有する回転電機の電機子部Am7を示している。
図14Aは電機子部Am7の分解斜視図であり、
図14Bは電機子部Am7が有している磁極の位置を示す展開図であり、図中の数値は回転方向における角度(距離)を電気角で表したものである。ここでは、
図1Aで示した回転電機M1の電機子部Am1との相違点を中心にして説明する。
図14A及び
図14Bで示す電機子部Am7について説明のない事項は、
図1Aの回転電機M1が有する構造が適用されてよい。ここで説明する電機子部の構造は、図で示すラジアルギャップタイプの回転電機だけでなく、リニア電機や、アキシャルギャップタイプの回転電機に適用されてよい。
【0146】
電機子部Am7が有する複数のコイルCLは、巻回方向が互いに反対となる2つのコイルCLを、各相について有している。電機子部Am7を有する回転電機は3相交流が供給される回転電機である。したがって、複数のコイルCLは、
図14Aで示すように、U+相コイルCLu+、U-相コイルCLu-、V+相コイルCLv+、V-相コイルCLv-、W+相コイルCLw+、及びW-相コイルCLw-を有している。これら6つのコイルCLは、第1電機子コアH1の磁極組G1にそれぞれ設けられており、回転方向で並んでいる。(
図14A及び
図14Bでは、磁極組G1として、G1u+・G1v+・G1w+・G1u-・G1v-・G1w-が示されている。)
【0147】
図14Bで示すように、ここでは、6つのコイルCLが設けられている6つの磁極組対Pをそれぞれ、磁極組対Pu+、磁極組対Pv+、磁極組対Pw+、磁極組対Pu-、磁極組対Pv-、磁極組対Pw-と称する。これら6つの磁極組対Pは同じ構造を有する。すなわち、磁極33a・34aの数は、複数の磁極組対Pu+・Pv+・Pw+・Pu-・Pv-・Pw-において同じである。磁極33a・34aの間隔も、複数の磁極組対Pu+・Pv+・Pw+・Pu-・Pv-・Pw-において、実質的に同じである。磁極33a・34aの幅及び高さも、複数の磁極組対Pu+・Pv+・Pw+・Pu-・Pv-・Pw-において、実質的に同じである。磁極組対Pu+・Pv+・Pw+・Pu-・Pv-・Pw-のそれぞれにコア連結部Lが設けられている。各コア連結部LはコイルCLを挟んで界磁部Fsとは反対側に位置し、回転方向におけるコア連結部Lの位置は、回転方向における磁極組G1・G2の中心に一致している。軸線Axを中心にして1つの磁極組対(例えば、Pu+)を回転移動すると、他の磁極組対P(例えば、Pv+・Pw+・Pu-・Pv-・Pw-)となる。
【0148】
図14Bにおいて、相が同じであり巻回方向が反対となるコイルCLがそれぞれ設けられた2つの磁極組対Pに注目する。例えば、磁極組対Pu+と磁極組対Pu-に注目すると、これらは電気角で実質的に「360×(q+1/2)」度だけ離れている。(q:1以上の整数)つまり、第1電機子コアH1においては、磁極組対Pu+の磁極33aと界磁コア22Nとの角度(距離)と、磁極組対Pu-の磁極33aと界磁コア22Nとの角度(距離)との間に、電気角で180度の差がある。したがって、例えば、磁極組対Pu+の磁極33aが界磁コア22Nに正対しているとき(磁極33aと界磁コア22Nとの角度(距離)が0度であるとき)、磁極組対Pu-の磁極33aは界磁コア22Nに対して電気角で180度だけずれた位置に位置し、界磁コア22Sに正対する。第2電機子コアH2においても、磁極組対Pu+の磁極34aと界磁コア22Sとの角度(距離)と、磁極組対Pu-の磁極34aと界磁コア22Sとの角度(距離)との間に、電気角で180度の差がある。電機子部Am7では、q=18である。そのため、磁極組対Pu+と磁極組対Pu-との間の角度は、電気角で6,660度である。なお、この説明において、磁極組対Pu+と磁極組対Pu-との間の角度とは、具体的には、回転方向での磁極組G1u+の中心と磁極組G1u-の中心との角度(距離)及び、回転方向での磁極組G2u+の中心と磁極組G2u-の中心との角度(距離)である。これらのことは、他の磁極組対Pv+、Pv-、Pw+、Pw-についても同様である。
【0149】
また、巻回方向が同じコイルCLが設けられた2つの磁極組対Pに注目する。例えば、磁極組対Pv+と磁極組対Pw+とに注目する。第1電機子コアH1においては、磁極組対Pv+の磁極33aと界磁コア22Nとの角度(距離)と、磁極組対Pw+の磁極33aと界磁コア22Nとの角度(距離)との間に、電気角で120度の差がある。したがって、例えば、磁極組対Pv+の磁極33aが界磁コア22Nに正対しているとき(磁極33aと界磁コア22Nとの角度(距離)が0度であるとき)、磁極組対Pw+の磁極33aは界磁コア22Nに対して電気角で120度だけずれた位置に位置する。第2電機子コアH2においては、磁極組対Pv+の磁極34aと界磁コア22Sとの角度(距離)と、磁極組対Pw+の磁極34aと界磁コア22Sとの角度(距離)との間に、電気角で120度の差がある。つまり、
図14Bで示すように、磁極組対Pv+と磁極組対Pw+は、電気角で実質的に「360×(n+m/s)」度だけ離れている。
s:相数
m:1以上、s-1以下の整数(ただしsの約数(1を除く)および約数(1を除く)の倍数を除く)
n:1以上の整数
電機子部Am7において、s=3であり、n=12である。また、m=1とすると、磁極組対Pv+と磁極組対Pw+は、電気角で4,440度だけ離れている。このことは、巻回方向が同じコイルCLが設けられている他の2つの磁極組対Pの間の角度(例えば、磁極組対Pu+と磁極組対Pw+との間の角度や、磁極組対Pv+と磁極組対Pu+との間の角度)についても同様である。このような磁極組対Pと界磁部Fsの相対位置は、リニア電機や、アキシャルギャップタイプの回転電機に適用されてよい。
【0150】
また、巻回方向が同じコイルCLが設けられた2つの磁極組対Pの間には、機械角で「(360/p)×(n+m/s)」度が確保される。また、この2つの磁極組対Pの角度は、機械角で「360/s/c」度とも表せる。
p:(界磁部の極数)/2
c:各相についてのコイル対の数
したがって、「(360/p)×(n+m/s)」は「360/s/c」に実質的に等しくなる。電機子部Am7では、界磁部Fsの極数は例えば74(p=37)である。また、s=3、c=1である。そのため、巻回方向が同じコイルCLが設けられた隣り合う2つの磁極組対Pの間の角度は、機械角で120度となる。言い換えると、「(360/p)×(n+m/s)」が「360/s/c」に実質的に等しくなるように、界磁部Fsの極数(p×2)や、コイル対数(s×c)、磁極33a・34aの数などが設定されている。
【0151】
なお、
図14A及び
図14Bで示す例では、1つの磁極組(例えば、磁極組G1u-)に1つのコイル(例えば、CLu-)が巻回される集中巻(concentrated winding)によるコイルが得られていた。しかしながら、例えば、コイルは重ね巻(lap winding)や、波巻(wave winding)によって得られてもよい。
【0152】
重ね巻のコイルを有する電機子コアにおいては、例えば、U+相コイルCLu+は、隣り合う3つの磁極組G1w-・G1u+・G1v-に巻回され、U-相コイルCLu-は、隣り合う3つの磁極組G1w+・G1u-・G1v+に巻回される。残りの相のコイルCLv+・CLv-・CLw+・CLw-も、同様に、隣り合う3つの磁極組に巻回されている。
【0153】
波巻のコイルを有する電機子コアにおいては、例えば、隣り合う3つの磁極組G1w+・G1u-・G1v+は、U+相コイルCLu+(U+相の電線)とU-相コイルCLu-(U-相の電線)との間に配置される。隣り合う3つの磁極組G1u-・G1v+・G1w-は、V+相コイルCLv+(V+相の電線)とV-相コイルCLv-(V-相の電線)との間に配置される。隣り合う3つの磁極組G1v+・G1w-・G1u+はW+相コイルCLw+(W+相の電線)とW-相コイルCLw-(W-相の電線)との間に配置される。
【0154】
また、電機子部Am7が有するコイルCLの配置は、図で示す例に限られない。例えば、巻回方向が異なっているために反対の極の磁界を発生し且つ同じ相の2つのコイルCLがそれぞれ設けられた2つの磁極組対P(例えば、磁極組対Pu+・Pu-)は、回転方向で隣り合っていてもよい。この場合、磁極組対Pv+と磁極組対Pv-も回転方向で隣り合い、磁極組対Pw+と磁極組対Pw-も回転方向で隣り合っていてよい。
【0155】
[相数が偶数である例]
回転電機に供給される交流電流の相数は偶数であってもよい。例えば、交流電流の相数は2であってもよい。
図15A及び
図15Bは本開示で提案する回転電機の別の例として、このような構造を有する回転電機が有する電機子部Am8を示している。
図15Aは電機子部Am8の分解斜視図である。
図15Bは電機子部Am8が有している磁極の位置を示す展開図であり、図中の数値は回転方向における角度(距離)を電気角で表したものである。ここでは、
図1Aで示した回転電機M1の電機子部Am1との相違点を中心にして説明する。
図15A及び
図15Bで示す電機子部Am8について説明のない事項は、回転電機M1が有する構造が適用されてよい。ここで説明する電機子部の構造は、図で示すラジアルギャップタイプの回転電機だけでなく、リニア電機や、アキシャルギャップタイプの回転電機に適用されてよい。
【0156】
電機子部Am8において、複数のコイルCLは、
図15Bで示すように、A+相コイルCLa+、B+相コイルCLb+、A-相コイルCLa-、B-相コイルCLb-を含んでいる。A-相コイルCLa-、及びB-相コイルCLb-は、A+相コイルCLa+、B+相コイルCLb+とは巻回方向が反対のコイルである。第1電機子コアH1は、各相について4つのコイルCLを有している。磁極組G1にコイルCLが巻かれている。(
図15Aでは、磁極組G1として、G1a+・G1a-・G1b+・G1b-が示されている。)
【0157】
磁極組G1は、軸方向で並ぶ磁極組G2とともに磁極組対Pを構成する。4つのコイルCLa+、CLb+、CLa-、CLb-が設けられている4つの磁極組対Pをそれぞれ、磁極組対Pa+、磁極組対Pb+、磁極組対Pa-、磁極組対Pb-と称する。これら4つの磁極組対Pは実質的に同じ構造を有している。すなわち、磁極33a・34aの数は、複数の磁極組対Pa+・Pb+・Pa-・Pb-において同じである。磁極33a・34aの間隔も、複数の磁極組対Pa+・Pb+・Pa-・Pb-において、実質的に同じである。さらに、磁極33a・34aの幅及び/又は高さも、複数の磁極組対Pa+・Pb+・Pa-・Pb-において、実質的に同じである。複数の磁極組対Pa+・Pb+・Pa-・Pb-のそれぞれにコア連結部Lが設けられている。各コア連結部LはコイルCLを挟んで界磁部Fsとは反対側に位置し、回転方向におけるコア連結部Lの位置は、回転方向における磁極組G1・G2の中心に一致している。軸線Axを中心にして1つの磁極組対P(例えば、Pa+)を回転移動すると、他の磁極組対P(例えば、Pb+・Pa-・Pb-)となる。
【0158】
相が同じであり巻回方向が反対となるコイルCLがそれぞれ設けられた2つの磁極組対Pに注目する。例えば、磁極組対Pa+と磁極組対Pa-に注目すると、第1電機子コアH1においては、磁極組対Pa+の磁極33aと界磁コア22Nとの角度(距離)と、磁極組対Pa-の磁極33aと界磁コア22Nとの角度(距離)との間に、電気角で180度の差がある。したがって、例えば、磁極組対Pa+の磁極33aが界磁コア22Nに正対しているとき(磁極33aと界磁コア22Nとの角度(距離)が0度であるとき)、磁極組対Pa-の磁極33aは界磁コア22Nに対して電気角で180度だけずれた位置に位置し、界磁コア22Sに正対する。第2電機子コアH2においても、磁極組対Pa+の磁極34aと界磁コア22Sとの角度(距離)と、磁極組対Pa-の磁極34aと界磁コア22Sとの角度(距離)との間に、電気角で180度の差がある。
【0159】
つまり、
図15Bで示すように、磁極組対Pa+と磁極組対Pa-は、電気角で実質的に「360×(q+1/2)」度だけ離れている。(q:1以上の整数)電機子部Am8では、q=8であり、磁極組対Pa+と磁極組対Pa-は、電気角で3,060度だけ離れている。この説明において、磁極組対Pa+と磁極組対Pa-との間の角度とは、具体的には、回転方向での磁極組G1a+の中心と磁極組G1a-の中心との角度(距離)や、回転方向での磁極組G2a+の中心と磁極組G2a-の中心との角度(距離)である。これらのことは、他の磁極組対Pb+、Pb-についても同様である。なお、回転電機M8では、界磁部Fsの極数は68(p=34)である。そのため、磁極組対Pa+と磁極組対Pa-は、機械角で90度(=3,060/34)の角度(距離)である。
【0160】
巻回方向が同じコイルCLが設けられた2つの磁極組対Pに注目する。例えば、磁極組対Pa+と磁極組対Pb+とに注目する。第1電機子コアH1においては、磁極組対Pa+の磁極33aと界磁コア22Nとの角度(距離)と、磁極組対Pb+の磁極33aと界磁コア22Nとの角度(距離)との間に、電気角で90度の差がある。したがって、例えば、磁極組対Pa+の磁極33aが界磁コア22Nに正対しているとき(磁極33aと界磁コア22Nとの角度(距離)が0度であるとき)、磁極組対Pb+の磁極33aは界磁コア22Nに対して電気角で90度だけずれた位置に位置する。また、第2電機子コアH2においては、磁極組対Pa+の磁極34aと界磁コア22Sとの角度(距離)と、磁極組対Pb+の磁極34aと界磁コア22Sとの角度(距離)との間に、電気角で90度の差がある。つまり、
図15Bで示すように、磁極組対Pa+と磁極組対Pb+は、電気角で実質的に「360×(n+m/s/2)」度だけ離れている。
s:相数
m:1以上、s-1以下の整数(ただしsの約数(1を除く)および約数(1を除く)の倍数を除く)
n:1以上の整数
電機子部Am8においては、s=2であり、n=4である。また、m=1とすると、磁極組対Pa+と磁極組対Pb+は、電気角で1,530度だけ離れている。このことは、巻回方向が同じ2つのコイルCLが設けられている他の磁極組対Pの間の角度(例えば、磁極組対Pa-と磁極組対Pb-との間の角度)についても同様である。このような磁極組対Pと界磁部Fsの相対位置は、リニア電機や、アキシャルギャップタイプの回転電機に適用されてよい。
【0161】
また、巻回方向が同じコイルCLが設けられた2つの磁極組対Pの間には、機械角で「(360/p)×(n+m/s/2)」度が確保される。また、この2つの磁極組対Pの角度は、機械角で「180/s/c」度とも表せる。
p:(界磁部の極数)/2
c:各相についてのコイル対の数
したがって、「(360/p)×(n+m/s/2)」は「180/s/c」に実質的に等しくなる。電機子部Am8では、界磁部Fsの極数は例えば68(p=34)である。また、s=2、c=2である。そのため、隣り合う2つの磁極組対Pの間の角度は、機械角で45度となる。言い換えると、「(360/p)×(n+m/s/2)」が「180/s/c」に実質的に等しくなるように、界磁部Fsの極数(p×2)や、コイル対数(s×c)、磁極33a・34aの数などが設定されている。
【0162】
[部分界磁コアを有する例]
図16は、界磁部Fsの例を示す断面図である。(切断面は回転方向に平行な面である。)同図に示すように、各界磁コア22N・22Sは、例えば、隣り合う2つの磁石の間に配置され且つ回転方向で離れている複数の部分コアで構成されてよい。具体的には、各界磁コア22N・22Sは、回転方向で離れている2つの部分界磁コア22fで構成され、2つの部分界磁コア22fの間の隙間K3が確保されてよい。こうすることで、界磁コア22N・22Sと磁石Mgについて寸法誤差の累積が抑えられて、界磁コア22N・22Sと磁石Mgの位置精度が向上できる。
図16で示す界磁部Fsは、径方向において電機子部の外側に配置される界磁部である。したがって、磁石Mg及び部分界磁コア22fの幅は径方向に一定である一方で、隙間K3は径方向の外側に向かって徐々に大きくなっている。これにより、界磁部Fsは全体として円筒状となっている。
【0163】
図16で示すように、隙間K3には、例えば、非磁性で且つ絶縁性の材料が充填される。例えば、界磁コア22N・22Sと磁石Mgは固定部23で相互に固定される。固定部23は例えば樹脂で形成される。隣り合う部分界磁コア22fの間の隙間K3に固定部23が充填される。この構造によると、界磁コア22N・22Sの位置精度を向上でき、また回転電機の組立作業の作業性が向上できる。つまり、界磁部の極数が多くなり、界磁コア22N・22S間の距離(機械角)が小さくなると、界磁コア22N・22Sの位置精度の、回転電機の性能への影響が大きくなる。また、極数の増加により部品数が多くなり、それらが密着した状態で固定されると、部品の寸法誤差の累積が生じ、界磁コアの位置精度の低下に繋がる可能性がある。これに対して、
図16で例示する界磁部Fsの構造では、各界磁コア22N・22Sが2つの部分界磁コア22fで構成され、その2つの部分界磁コア22fの間に隙間K3が設けられているので、寸法誤差の累積が抑えられ、界磁コア22N・22Sと磁石Mgの位置精度が向上できる。また、回転電機の組立作業時に界磁部Fsを一体に取り扱うことができるので、組立作業の作業性が向上できる。
【0164】
界磁部Fsの製造過程では、例えば複数の磁石Mgと複数の部分界磁コア22fとが治具や固定具によって位置決めされる。その後、非磁性で且つ絶縁性の材料(具体的には、樹脂23)でモールドされ、固定される。このとき、全ての磁石Mgと全ての部分界磁コア22fとが位置決めされて、樹脂23でモールドされてもよいし、界磁部Fsが複数の部分に分割されて、それぞれが樹脂23でモールドされてもよい。この場合、それぞれがモールドされた複数の部分が回転方向で並べられ相互に固定されて環状の界磁部Fsを構成する。複数の部分のそれぞれが固定部材に固定されて環状の界磁部Fsを構成してもよい。
【0165】
各部分界磁コア22fは磁石Mgの表面(N極面、S極面)に近接して配置されている。各部分界磁コア22fは磁石Mgの表面(N極面、S極面)に接してよい。各部分界磁コア22fは磁石Mgの表面に接着材で固定されてもよい。こうすることによって、磁石Mgと界磁コア22N、22Sとの間には隙間がなくなり、磁力の低下を防ぐことができる。
【0166】
各部分界磁コア22fは積層鋼板で形成されている。すなわち、各部分界磁コア22fは、回転方向において積層されている複数の鋼板22eで形成されている。本明細書において、「複数の鋼板22eが積層されている方向」は、軸線Axを中心とする文字通りの回転方向だけでなく、部分界磁コア22fの位置における、軸線Axを中心とする円の接線の方向を含む。鋼板22eの回転方向での幅(鋼板の厚さ)は、部分界磁コア22fを構成する複数の鋼板22eにおいて同じである。なお、各部分界磁コア22fは1枚の鋼板だけで構成されてもよい。
【0167】
なお、上述した界磁部Fsの構造は、
図10で示すように、回転電機の径方向において電機子部の内側に配置される界磁部Fsに適用されてもよい。また、後述するリニア電機やアキシャルギャップタイプの回転電機に適用されてもよい。
【0168】
なお、各界磁コア22N・22Sにおいて、部分界磁コア22fは軟磁性の圧粉材料で形成されてもよい。この場合、各界磁コア22N・22Sを構成する2つの部分界磁コア22fの間の隙間に非磁性で且つ絶縁性の材料が充填されてよい。例えば、界磁コア22N・22Sと磁石Mgは樹脂でモールドされ、隙間に樹脂が充填される。さらに他の例として、各界磁コア22N・22Sは複数の部分界磁コア22fを有していなくてもよい。この場合、各部分界磁コア22fは積層鋼板ではなく、軟磁性の圧粉材料で形成されてもよい。
【0169】
[リニア電機]
本開示で提案する電気機械の構造は、電機子部と界磁部とが直線に沿った方向で相対移動可能なリニア電機に適用されてもよい。
図17は、本開示で提案する構造が適用されたリニア電機の例として、リニア電機M10を示す斜視図である。
【0170】
なお、リニア電機M10においても、これまで説明した、部分コアを有する電機子コアや、軟磁性の圧粉材料を利用した電機子コア、各相について巻回方向が異なる2つのコイルCLを有する電機子コア、磁極の端部に突出部を有する電機子コアなどが適用されてよい。
【0171】
リニア電機M10は、界磁部Fsと電機子部Am10とを有している。界磁部Fsと電機子部Am10は直線に沿った方向(機械動作方向、
図17においてY1-Y2方向)で相対移動可能である。(以下において、Y1-Y2方向を「前後方向」と称する。)例えば、リニア電機M10が搭載される装置が備える構造物に界磁部Fsが固定され、電機子部Am10が前後方向で動くよう案内される。この場合、界磁部Fsは、電機子部Am10の可動範囲に対応した長さを有している。これとは反対に、リニア電機M10が搭載される装置が備える構造物に電機子部Am10が固定され、界磁部Fsが直線に沿った方向で動くよう案内されてもよい。
【0172】
界磁部Fsは、前後方向で並んでいる複数の磁石Mgを有している。各磁石Mgは前後方向に磁化されている。界磁部Fsにおいて磁石Mgは、回転電機M1等が有している界磁部Fsと同様、同じ極性の表面(磁極面)が互いに向き合うように配置されている。隣り合う2つの界磁コア22N・22Sの間に磁石Mgが配置されている。各界磁コア22N・22Sは、前後方向で離れている部分界磁コア22fによって構成されてよい。部分界磁コア22fは積層鋼板で形成されてもよいし、軟磁性の圧粉材料で形成されてもよい。
【0173】
電機子部Am10は、左右方向(
図17においてX1-X2方向)で並んでいる複数の電機子コアH1・H2とコア連結部Lとを有している。図で示すように、電機子部Am10は、例えば、第1電機子コアH1と、2つの第2電機子コアH2とを有する。第1電機子コアH1は2つの第2電機子コアH2の間に配置されている。第1電機子コアH1と第2電機子コアH2はコア連結部Lだけで磁気的に結合し、コア連結部L以外の領域において磁気的に分離されている。
【0174】
電機子部Am10は樹脂でモールドされてよい。この場合、第1電機子コアH1と第2電機子コアH2との間の隙間に、電機子コアH1・H2をモールドする樹脂が充填されてよい。電機子部Am10を構成する電機子コアの数は、図で示す例に限られない。電機子部Am10は、例えば1つの第1電機子コアH1と1つの第2電機子コアH2とで構成されてもよい。電機子コアH1・H2は、例えば複数の電磁鋼板が左右方向で重ねられた積層鋼板である。
【0175】
図17で示すように、第1電機子コアH1は前後方向で並ぶ複数の磁極組G1を有し、複数の磁極組G1のそれぞれが、前後方向で並ぶ複数の磁極33aを有している。第2電機子コアH2も、前後方向で並ぶ複数の磁極組G2を有している。複数の磁極組G2のそれぞれは、前後方向で並ぶ複数の磁極34aを有している。各コイルCLは磁極組G1を構成する磁極33aに巻かれている。
【0176】
第1電機子コアH1は、前後方向で伸びているヨーク部33cを有している。また、第2電機子コアH2は、前後方向で伸びているヨーク部34cを有している。複数の磁極33a・34aはヨーク部33c・34cから界磁部Fsに向かって突出しており、ヨーク部33c・34cの界磁部Fs側に磁極組G1・G2が形成されている。前後方向において並ぶ複数の磁極組G1は、ヨーク部33cを介して磁気的に繋がっている。また、前後方向において並ぶ複数の磁極組G2も、ヨーク部34cを介して磁気的に繋がっている。
【0177】
リニア電機M10は、例えば3相交流で駆動するリニアモータであり、第1電機子コアH1にはU相コイルCLu、V相コイルCLv(不図示)、W相コイルCLw(不図示)が設けられている。これらの3つのコイルCLが3つの磁極組G1にそれぞれ設けられている。リニア電機に供給される交流の相数は、3に限られない。
【0178】
図17で示すように、第2電機子コアH2の磁極組G2は、第1電機子コアH1の磁極組G1に対して左右方向に位置しており、磁極組G1とともに磁極組対Pを構成している。磁極組G1を構成する磁極33aと、磁極組G2を構成する磁極34aとの位置関係は、回転電機M1の磁極33a、34aとの関係と同じであってよい。すなわち、磁極組G1の磁極33aの位置は、磁極組G2の磁極34aの位置から電気角で例えば180度だけ離れた位置である。
【0179】
コア連結部Lは左右方向に延びており、電機子コアH1・H2を磁気的に結合している。リニア電機M10は、間隔をあけて前後方向で並んでいる複数のコア連結部Lを有している。複数のコア連結部Lは複数の磁極組対P(前後方向における位置が互いに対応している磁極組G1・G2のペア)のそれぞれに設けられている。したがって、第1電機子コアH1の磁極組G1と第2電機子コアH2の磁極組G2との間にはコア連結部Lを介した磁路が形成される。
【0180】
上述したように、電機子部Am10は1つの第1電機子コアH1と2つの第2電機子コアH2を有している。コア連結部Lはこれら3つの電機子コアH1・H2を磁気的に結合している。各コア連結部Lは右側の第2電機子コアH2の右端から左側の第2電機子コアH2の左端まで延びている。これとは異なり、電機子部Am10は左右方向で並ぶ2本のコア連結部Lを有してもよい。そして、第1のコア連結部Lは第1電機子コアH1と一方の第2電機子コアH2とを結合し、第2のコア連結部Lは第1電機子コアH1と他方の第2電機子コアH2とを結合してもよい。
【0181】
コア連結部Lは磁極組G1・G2及びそれらに設けられたコイルCLを挟んで界磁部Fsとは反対側に位置している。
図17においては、界磁部Fsは電機子コアH1・H2の下側に配置され、コア連結部Lは電機子コアH1・H2の上側に配置されている。これにより、前後方向で離れている2つの磁極組G1と前後方向で離れている2つの磁極組G2を流れる磁束Φ1・Φ2(
図3B参照)と、コア連結部Lを流れる磁束Φ7(
図3B参照)とが干渉することを抑えることができる。
【0182】
コア連結部Lは、電機子コアH1・H2の鋼板の積層方向に対して交差する方向で積層されている複数の鋼板を含む積層鋼板である。具体的には、コア連結部Lは、前後方向で積層されている複数の鋼板を含む積層鋼板である。これによって、コア連結部Lの鋼板に誘導電流が生じることを抑えることができる。
【0183】
コア連結部Lはヨーク部33c・34cを磁気的に結合している。電機子部Am10においては、ヨーク部33c・34cは界磁部Fsとは反対側の面(
図17の例において、電機子コアH1・H2の上面)に嵌合穴33g・34gを有している。コア連結部Lはこの嵌合穴33g・34gに嵌められている。嵌合穴33g・34gは、電機子コアH1・H2を構成する鋼板の積層方向に交差する方向に開口している。嵌合穴33g・34gは界磁部Fsとは反対側に向かって(上側に向かって)開口している。この構造によって、コア連結部Lを流れる磁束に起因して電機子コアH1・H2に誘導電流が発生することを、防止できる。
【0184】
電機子部Am10とは異なり、コア連結部Lが嵌められる嵌合穴は、
図1Aの回転電機M1と同様、ヨーク部33c・34cを貫通し閉じた内面を有する嵌合穴であってもよい。すなわち、嵌合穴は上方に開口していなくてもよい。この場合、嵌合穴から界磁部Fsに向かって延びるスリットS3・S4(
図1C及び
図1D参照)が形成されてもよい。
【0185】
さらに他の例として、コア連結部Lは、いずれか一方の電機子コアH1・H2と一体的に形成されてもよい。電機子部Am10において、電機子コアH1・H2の一方又は双方は軟磁性の圧粉材料で形成されてもよい。この場合、圧粉材料で形成されている電機子コアとコア連結部とが一体的に形成されていてよい。
【0186】
前後方向でのコア連結部Lの幅は、前後方向での磁極組G1・G2の幅よりも小さい。このため、磁極組対Pを構成する2つの磁極組G1・G2の間をコア連結部Lを介して流れる磁束Φ7(
図3B参照)と、前後方向で離れている2つの磁極組G1(及び前後方向で離れている2つの磁極組G2)の間を流れる磁束Φ1・Φ2(
図3B参照)の双方がより有効に形成される。
【0187】
例えば、
図1C及び
図1Dで示した例と同様、各磁極組G1を構成する複数の磁極33aのうち前端に位置する1又は複数の磁極33aがコア連結部Lの前端より前方に位置し、複数の磁極33aのうち後端に位置する1又は複数の磁極33aがコア連結部Lの後端より後方に位置しているとよい。同様に、各磁極組G2を構成する複数の磁極34aのうち前端に位置する1又は複数の磁極34aがコア連結部Lの前端より前方に位置し、複数の磁極34aのうち後端に位置する1又は複数の磁極34aがコア連結部Lの後端より後方に位置しているとよい。
【0188】
リニア電機M10は、これまで説明した回転電機(例えば、回転電機M1)と同様、2種類の磁気回路を有する。すなわち、第1の磁気回路は、前後方向で離れている2つの磁極組G1と、前後方向で離れている2つの磁極組G2と、磁極組G1と磁極組G2とに対向する界磁コア22N・22Sと、界磁コア22N・22Sの間の磁石Mgとを含む。例えば、
図3Bで例示したように、界磁部Fsの界磁コア22Nと磁極組G1uの磁極33aとの角度差が0度(電気角)の状態においては、第1の磁気回路に磁束Φ1・Φ2が磁石Mgによって形成される。
【0189】
第2の磁気回路は、コア連結部Lと、左右方向で並んでおり且つコア連結部Lを介して磁気的に結合されている磁極組G1・G2と、磁極組G1と磁極組G2とに対向する界磁コア22N・22Sと、界磁コア22N・22Sの間の磁石Mgとを含む。例えば、
図3Bで例示したように、界磁部Fsの界磁コア22Nと磁極組G1uの磁極33aとの角度差が0度(電気角)の状態において、第2の磁気回路には磁束Φ7が磁石Mgによって形成される。磁束Φ1・Φ2・Φ7は、磁極組G1に設けられているコイルCLの内側を通過する。
【0190】
このようなリニア電機M10によると、各電機子コアH1・H2を前後方向で磁気的に分割する必要がなくなる。そのため、電機子コアH1・H2の強度を増すことができる。また、コア連結部Lを含む磁気回路と、前後方向で並んでいる2つの磁極組G1・G2を含む磁気回路とに磁束が形成される。そのため、磁気回路の磁気的な飽和を抑えることができる。その結果、例えば、ヨーク部33c・34cの幅を狭くし、電機子部Am10の小型化・軽量化が容易となる。特に、1つの磁極組G1・G2を構成する磁極33a・34aの数を増す場合に、この効果は顕著となる。また、ヨーク部33c・34cの幅を増すことなく、磁気回路を飽和する磁束を増すことができるので、コイルCLに供給する電流を増し、回転電機の出力トルクを大きくできる。
【0191】
[界磁部に対して異なる方向に位置する複数の電機子コア]
これまで説明した電気機械(例えば、
図1Aで例示する回転電機M1)において、複数の電機子コアH1・H2は、界磁部Fsに対して同じ方向に位置している。これとは異なり、第1電機子コアH1は界磁部Fsの第1の面に対して第1の方向に位置し、第2電機子コアH2は界磁部Fsの第2の面に対して第2の方向に位置してよい。ここで第1の方向と第2の方向は、例えば、互いに反対に向いている2方向、又は、互いに交差する2方向である。この構造においても、電機子部は複数の電機子コアH1・H2を磁気的に結合するコア連結構造(例えば、機械動作方向で並んでいる複数のコア連結部L)を有してよい。このような構造は、回転電機に適用されてもよいし、リニア電機に適用されてもよい。
【0192】
以下では、第1の方向と第2の方向との間の角度が180度となっている構造(すなわち、第1の方向と第2の方向が互いに反対に向いている構造)と、第1の方向と第2の方向との間の角度が90度となっている構造を例として、図を参照しながら説明する。第1の方向と第2の方向との角度はこれらに限られず、90度より小さい角度でもよいし、90度より大きく180度よりも小さい角度であってもよい。
【0193】
[電機子コアが界磁部を挟んで反対側に配置される例]
図18A~
図18Cは、界磁部Fsに対する相対位置が異なる第1電機子コアH1と第2電機子コアH2とを有する電気機械の例として、ラジアルギャップタイプの回転電機M21を示している。
図18Aは回転電機M21の斜視図であり、
図18Bは回転電機M21の分解斜視図である。
図18Cは回転電機M21に形成される磁束を示す図である。以下では、
図1Aで説明した回転電機M1との相違点を中心にして説明する。これらの図で示す回転電機M21について説明のない事項は、
図1Aの例が適用されてよい。
【0194】
図18Aで示すように、回転電機M21において、第1電機子コアH1と第2電機子コアH2は、界磁部Fsを挟んで互いに反対側に配置されている。界磁部Fsは筒状である。第1電機子コアH1は界磁部Fsの外周面(第1の面)に対して径方向における外方(第1の方向)に配置され、第2電機子コアH2は界磁部Fsの内周面(第2の面)に対して径方向の内方(第2の方向)に配置されている。界磁部Fsの界磁コア22N・22Sは、その内側と外側の双方において露出しているのが望ましい。このことによって、界磁部Fsと電機子コアH1・H2との間の磁気抵抗を低減できる。なお、回転電機M21とは反対に、第1電機子コアH1は界磁部Fsの内周面に対して径方向における内方に位置し、第2電機子コアH2は界磁部Fsの外周面に対して径方向の外方に位置してもよい。
【0195】
図18Bで示すように、第1電機子コアH1は回転方向で並んでいる複数の磁極組G1を有し、これらはヨーク部33cを介して磁気的に結合している。回転電機M21は、例えば3相交流で動作する回転電機であり、第1電機子コアH1にはU相コイルCLu、V相コイルCLv、W相コイルCLwが設けられる。これらの3つのコイルCLu・CLv・CLwが3つの磁極組G1u・G1v・G1wにそれぞれ設けられている。3つのコイルCLの巻回方向は同じであってよい。磁極組G1は複数の磁極33aを有し、これらは界磁部Fsの界磁コア22N・22Sと径方向で対向する。第2電機子コアH2も、回転方向で並んでいる複数の磁極組G2を有し、これらはヨーク部34cを介して磁気的に結合している。磁極組G2は複数の磁極34aを有し、これらは界磁部Fsの界磁コア22N・22Sと径方向で対向する。界磁部Fsを挟んで対向する2つの磁極組G1・G2は磁極組対Pを構成する。図で示す例では、各磁極組G1は5つ磁極33aで構成され、各磁極組G2は6つの磁極34aで構成される。各磁極組G1・G2を構成する磁極33a・34aの数はこれに限られない。
【0196】
回転電機M21において、界磁部Fsの極数は、例えば76(p=38)である。隣り合う磁極組対P間の電気角は、360×(n+m/s)と表され、例えば2,280度となる。また、隣り合う磁極組対P間の機械角は、(360/p)×(n+m/s)」と表され、「360/s/c」に実質的に一致する。この機械角は、回転電機M21においては例えば60度である(回転電機M21において、s=3、m=1、n=6、及びc=2)。
【0197】
図18Bで示すように、電機子部Am21は間隔をあけて回転方向で並んでいる複数のコア連結部Lを有している。複数のコア連結部Lは複数の磁極組対Pのそれぞれに設けられている。磁極組G1・G2はヨーク部33c・34cの界磁部Fs側に形成されている。各コア連結部Lは、ヨーク部33c・34cを磁気的に結合している。また、回転方向におけるコア連結部Lの位置は磁極組対Pを構成する磁極組G1・G2の位置に対応している。具体的には、回転方向におけるコア連結部Lの中心は、回転方向における磁極組G1・G2の中心の位置に一致している。
【0198】
図18Bで示すように、ヨーク部33cは磁極組G1を挟んで界磁部Fsとは反対側に位置する嵌合穴33hを有し、ヨーク部34cは磁極組G2を挟んで界磁部Fsとは反対側に位置する嵌合穴34hを有している。嵌合穴33h・34hは軸方向に電機子コアH1・H2を貫通する穴である。各コア連結部Lの端部は嵌合穴33h・34hに軸方向で嵌められ、ヨーク部33c・34cを磁気的に結合している。コア連結部Lの両端部はコイルCLを挟んで互いに反対側に位置している。各コア連結部Lは、径方向で延びている延伸部L3と、延伸部L3の両端部から軸方向に延びている嵌合部L1・L2とを有している。嵌合部L1が第1電機子コアH1の嵌合穴33hに嵌められ、嵌合部L2が第2電機子コアH2の嵌合穴34hに嵌められている。
【0199】
電機子部Am21に形成される磁束は、
図3Bを参照しながら説明した磁束と実質的に同じである。具体的には、
図18Cで示すように、界磁部Fsの界磁コア22Nと磁極組G1uの磁極33aとの角度差が0度(電気角)の状態において、電機子部Am21と界磁部Fsとに磁石Mgによる磁束Φ1・Φ2・Φ7が形成される。磁束Φ1が形成される第1の磁気回路は、例えば、第1電機子コアH1の磁極組G1u・G1v、第2電機子コアH2の磁極組G2u・G2v、界磁コア22N・22S、及びこの界磁コア22N・22Sの間の磁石Mgを含む。同様に、第1の磁気回路のもう一つは磁束Φ2が形成される磁気回路であり、この回路は第1電機子コアH1の磁極組G1u・G1w、第2電機子コアH2の磁極組G2u・G2w、界磁コア22N・22S、及びこの2つの界磁コアの間の磁石Mgを含む。磁束Φ7が流れる第2の磁気回路の1つは、第1電機子コアH1の磁極組G1u、コア連結部L、第2電機子コアH2の磁極組G2u、界磁コア22N・22S、及びこの2つの界磁コア22N・22Sの間の磁石Mgを含む。
【0200】
このような回転電機M21によると、従来の回転電機とは異なり、各電機子コアH1・H2を回転方向で磁気的に分割する必要がなくなる。そのため、電機子コアH1・H2の強度を増すことができる。また、コア連結部Lを含む磁気回路と、回転方向で離れている2つの磁極組(例えば、磁極組G1u・G1v)を含む磁気回路の2種類の回路に磁束が形成される。そのため、磁気回路の磁気的な飽和を抑えることができる。その結果、例えば、ヨーク部33c・34cの幅を狭くし、電機子部Am21の小型化・軽量化が容易となる。特に、1つの磁極組G1・G2を構成する磁極33a・34aの数を増す場合に、この利点は顕著となる。また、ヨーク部33c・34cの幅を増すことなく、磁気回路を飽和する磁束を増すことができるので、コイルCLに供給する電流を増し、回転電機の出力トルクを大きくできる。
【0201】
電機子部Am21の第1電機子コアH1において、各磁極組G1を構成する複数の磁極33aのうち少なくとも両端にそれぞれ位置する2つの磁極33aがコア連結部Lの両端部より外方(時計回り方向及び反時計回り方向)に位置しているとよい。同様に、電機子部Am21の第2電機子コアH2においても、各磁極組G2を構成する複数の磁極34aのうち少なくとも両端にそれぞれ位置する2つの磁極34aがコア連結部Lの両端部より外方(時計回り方向及び反時計回り方向)に位置しているとよい。こうすることで、回転方向で離れている2つの磁極組の間を流れる磁束Φ1・Φ2が形成され易くなる。
【0202】
図18Aで示すように、第1電機子コアH1には、各嵌合穴33hから延びており且つ各嵌合穴33hを取り囲む閉曲線と交差するスリットS3が形成されている。同様に、第2電機子コアH2には、各嵌合穴34hから延びており且つ各嵌合穴34hを取り囲む閉曲線と交差するスリットS4が形成されている。このスリットS3・S4によって各コア連結部Lの周囲に誘導電流が生じることを防止できる。スリットS3・S4は、
図18Aで示すように、界磁部Fs側に向いた開口に達しているのが望ましい。
【0203】
また、複数の嵌合穴33hと複数の磁極組G1との間を通り且つ軸線Axを中心として第1電機子コアH1の全体を通る閉回路が、スリットS3によって遮断される。また、複数の嵌合穴34hと複数の磁極組G2との間を通り且つ軸線Axを中心として第2電機子コアH2の全体を通る閉回路が、スリットS4によって遮断される。したがって、電機子コアH1・H2に回転方向の誘導電流が発生することを、スリットS3・S4によって防止できる。
【0204】
なお、第1電機子コアH1には、
図19で示すように、第1電機子コアH1の鋼板の積層方向に対して交差する方向に開口している嵌合穴33gが形成されてもよい。同図の例において、嵌合穴33gは第1電機子コアH1の外周面に形成され、界磁部Fsとは反対側に向かって開口している。また、
図19で示すように、第2電機子コアH2にも、第2電機子コアH2の鋼板の積層方向に対して交差する方向に開口している嵌合穴34gが形成されてもよい。同図の例において、嵌合穴34gは第2電機子コアH2の内周面に形成され、界磁部Fsとは反対側に向かって開口している。この構造においても、各コア連結部Lの周囲に誘導電流が生じることを防止できる。
【0205】
図19の構造においては、スリットS5が第1電機子コアH1に形成され、スリットS6が第2電機子コアH2に形成されてよい。スリットS5・S6は、回転方向で並んでいる複数の磁極組G1・G2と複数の嵌合穴33g・34gとの間を通り且つ軸線Axを取り囲む閉曲線と交差する。電機子コアH1・H2の全体に回転方向の誘導電流が発生することを、スリットS5・S6によって防止できる。
図19の例では、スリットS5・S6は嵌合穴33g・34gから延び、界磁部Fsに向いた開口に達している。
【0206】
図19の例とは異なり、スリットS5は隣り合う2つの磁極組G1の間に形成され、第1電機子コアH1の界磁部Fs側の面と反対側の面とにおいて開口していてもよい。また、スリットS6は隣り合う2つの磁極組G2の間に形成され、第2電機子コアH2の界磁部Fs側の面と反対側の面とにおいて開口していてもよい。
【0207】
図20は回転電機M21が有する界磁部Fsの例を示す断面図である。その切断面は軸線に対して直交する面である。
図20で示す界磁部Fsは、機械動作方向(同図においては、回転方向)において積層される電磁鋼板で形成される界磁コア22N・22Sを有している。界磁コア22N・22Sは、
図16で例示した界磁部Fsとは異なり、界磁部Fsの内周面と外周面とにおいて露出している。これによって、第1電機子コアH1と界磁部Fsとの間の磁気抵抗と、第2電機子コアH2と界磁部Fsとの間の磁気抵抗とを低減できる。
【0208】
界磁部Fsでは、各界磁コア22N・22Sは、それぞれが複数の電磁鋼板で形成されている2つの部分界磁コア22fを有している。2つの部分界磁コア22fの間に、固定部23が充填される。固定部23は、例えば非磁性で且つ絶縁性の材料(例えば樹脂)で形成される。磁石Mgの幅が外周面に向かって徐々に大きくなっている。これとは異なり、固定部23の幅が外周面に向かって徐々に大きくなってもよいし、部分界磁コア22fの幅が外周面に向かって徐々に大きくなってもよい。
【0209】
[電機子コアが反対側に配置されるリニア電機]
図18A及び
図18Bで開示する電機子コアの配置は、電機子部と界磁部とが直線に沿った方向で相対移動可能なリニア電機に適用されてもよい。
図21A及び
図21Bはリニア電機の例を示す図である。
図21Aはリニア電機M22の斜視図であり、
図21Bはリニア電機M22の分解斜視図である。
図21Aにおいて、界磁部Fsの一部と、第2電機子コアH2の一部は省略されている。ここでは、
図18A及び
図18Bで例示したラジアルギャップタイプの回転電機M21との相違点を中心にして説明する。リニア電機M22について説明のない事項は、回転電機M21の構造が適用されてよい。
【0210】
図21Aで示すように、リニア電機M22において、界磁部Fsと電機子部Am22は直線に沿った方向(
図21AにおいてY1-Y2方向)で相対移動可能である。(リニア電機M22においてY1-Y2方向は機械動作方向であり、以下では前後方向と称する。)例えば、界磁部Fsの位置が固定され、電機子部Am22が前後方向で往復動する。この場合、界磁部Fsは、電機子部Am22の可動範囲に対応した長さを有してよい。
【0211】
図21Aで示すように、第1電機子コアH1と第2電機子コアH2は、左右方向(
図21AにおいてX1-X2方向)において界磁部Fsを挟んで互いに反対側に配置されている。第1電機子コアH1は、界磁部Fsの左面(
図21AにおいてX2方向に向いた面)に対して左方に配置され、第2電機子コアH2は、界磁部Fsの右面(
図21AにおいてX1方向に向いた面)に対して右方に配置されている。界磁コア22N・22Sは右方と左方の双方において露出していてよい。こうすることによって、電機子コアH1・H2と界磁部Fsとの磁気抵抗を低減できる。
【0212】
図21Bで示すように、第1電機子コアH1は前後方向で並ぶ複数の磁極組G1(G1u・G1v・G1w)を有している。複数の磁極組G1のそれぞれが、前後方向で並び界磁部Fsに向けて突出する複数の磁極33aを有している。リニア電機M22は、例えば3相交流で動作するリニアモータであり、第1電機子コアH1にはU相コイルCLu、V相コイルCLv、W相コイルCLwが設けられる。これらの3つのコイルCLが3つの磁極組G1にそれぞれ設けられている。3つのコイルCLの巻回方向は同じであってよい。第2電機子コアH2も、前後方向で並ぶ複数の磁極組G2を有している。複数の磁極組G2のそれぞれは、前後方向で並び界磁部Fsに向けて突出する複数の磁極34aを有している。図で示す例では、第1電機子コアH1にだけコイルCLが設けられているが、第1電機子コアH1と第2電機子コアH2の双方にコイルCLが設けられてもよい。
【0213】
電機子コアH1・H2は、電機子コアH1・H2が対向する方向(左右方向)と機械動作方向(前後方向)の双方に直交する方向(上下方向)で積層された複数の電磁鋼板で形成されている。これとは異なり、電機子コアH1・H2の一方又は双方は軟磁性の圧粉材料で形成されてもよい。
【0214】
図21Aで示すように、電機子部Am21は間隔をあけて前後方向で並んでいる複数のコア連結部Lを有している。複数のコア連結部Lは複数の磁極組対P(界磁部Fsを挟んで対向する磁極組G1・G2のペア)のそれぞれに設けられている。第1電機子コアH1の磁極組G1はヨーク部33cに対して界磁部Fs側に位置し、第2電機子コアH2の磁極組G2はヨーク部34cに対して界磁部Fs側に位置している。各コア連結部Lは、ヨーク部33c・34cを磁気的に結合している。前後方向におけるコア連結部Lの位置と、前後方向における磁極組対Pの位置は相互に対応している。
【0215】
図21Bで示すように、ヨーク部33cは磁極組G1を挟んで界磁部Fsとは反対側に位置する嵌合穴33gを有し、ヨーク部34cは磁極組G2を挟んで界磁部Fsとは反対側に位置する嵌合穴34gを有している。嵌合穴33g・34gは、電機子コアH1・H2の鋼板の積層方向に対して交差する方向(すなわち、界磁部Fsとは反対側に向けて)開口している。各コア連結部Lの端部は嵌合穴33g・34gに嵌められ、ヨーク部33c・34cを磁気的に結合している。各コア連結部Lは、
図21Bで示すように、左右方向で延びている延伸部L3と、延伸部L3の両端部から下方に延びている嵌合部L1・L2とを有している。嵌合部L1・L2が嵌合穴33g・34gにそれぞれ嵌められている。嵌合穴33g・34gが開口しているので、各コア連結部Lを通る磁束によって各コア連結部Lの周囲に誘導電流が生じることを、防止できる。
【0216】
図21Aで示すように、コア連結部LはコイルCLの上方に配置されている。これとは異なり、電機子部Am22は、コイルCLの上方に位置するコア連結部LとコイルCLの下方に位置するコア連結部Lとを、各磁極組対Pについて有してもよい。
【0217】
リニア電機M22も、これまで説明した回転電機(例えば、回転電機M1)と同様、2種類の磁気回路を有する。すなわち、第1の磁気回路は、前後方向で離れている2つの磁極組G1と、前後方向で離れている2つの磁極組G2と、磁極組G1と磁極組G2とに対向する界磁コア22N・22Sと、界磁コア22N・22Sの間の磁石Mgとを含む。第2の磁気回路は、コア連結部Lと、左右方向で向き合っており且つコア連結部Lを介して磁気的に結合されている磁極組G1・G2と、磁極組G1と磁極組G2とに対向する界磁コア22N・22Sと、界磁コア22N・22Sの間の磁石Mgとを含む。
【0218】
図21Aで示すように、前後方向でのコア連結部Lの幅は、前後方向での磁極組G1・G2の幅よりも小さい。例えば、各磁極組G1を構成する複数の磁極33aのうち前端に位置する1又は複数の磁極33aがコア連結部Lの前端より前方に位置し、複数の磁極33aのうち後端に位置する1又は複数の磁極33aがコア連結部Lの後端より後方に位置しているとよい。同様に、各磁極組G2を構成する複数の磁極34aのうち前端に位置する1又は複数の磁極34aがコア連結部Lの前端より前方に位置し、複数の磁極34aのうち後端に位置する1又は複数の磁極34aがコア連結部Lの後端より後方に位置しているとよい。
【0219】
リニア電機M22の電機子コアH1・H2は上述したように積層鋼板である。上下方向で積層された複数の鋼板のうち積層方向の端部に位置する鋼板は、上方又は下方に延びている突出部を各磁極33a・34aに有してもよい。
図22は、このような磁極33aの例を示す図である。同図で示す例では、磁極33aの端部に位置する鋼板は積層方向に延びている突出部33nを有している。突出部33nは鋼板の折り曲げによって形成されてよい。このような突出部33nは、積層方向(上下方向)における一方の端部(例えば上端)に位置する1又は複数の鋼板と、積層方向における他方の端部(例えば下端)に位置する1又は複数の鋼板の双方に形成されてもよいし、いずれか一方にだけ形成されてもよい。他の例では、突出部33nは、必ずしも鋼板の折り曲げによって形成されていなくてもよい。例えば、磁極33aの積層方向での端部は、電磁鋼板ではなく、突出部33nを有する軟磁性の圧粉材料で形成されてもよい。
図22で示す構造は、第2電機子コアH2に適用されてもよい。
【0220】
[ヨーク部と磁極が分割されている例]
リニア電機において電機子コアH1・H2は、電磁鋼板で形成されるヨーク部分コアと、電磁鋼板で形成され且つヨーク部分コアに形成された嵌合穴に嵌められる磁極コアとを有してよい。
図23は、このような電機子コアH1・H2を有しているリニア電機M23を示す図である。ここでは、
図21A及び
図21Bで示したリニア電機M22との相違点について説明する。
図23で示すリニア電機M23について説明のない事項(例えば、磁極組対P間の距離(電気角)や界磁部Fsの構造)については、これまで説明した他の電気機械の構造が適用されてよい。なお、
図23においては、第2電機子コアH2を示すため、第1電機子コアH1の一部及び界磁部Fsの一部が省略されている。
【0221】
図23で示すように、第1電機子コアH1は、左右方向(X1-X2方向)で積層される複数の鋼板を含む積層鋼板であるヨーク部分コア33Gを有している。また、第1電機子コアH1は、前後方向(Y1-Y2方向)で並んでいる複数の磁極コア33Jを有している。各磁極コア33Jは、上下方向(Z1-Z2方向)で積層されている複数の鋼板を含む積層鋼板である。ヨーク部分コア33Gの鋼板と磁極コア33Jの鋼板は直交している。ヨーク部分コア33Gには、前後方向で並んでいる複数の嵌合穴が形成されている。磁極コア33Jは複数の嵌合穴にそれぞれ嵌められて、ヨーク部分コア33Gと磁気的に結合している。磁極コア33Jのうちヨーク部分コア33Gの表面から界磁部Fsに向かって突出している部分が磁極33aである。複数の磁極33a(5つの磁極33a)は磁極組G1を構成し、各磁極組G1にコイルCLが設けられる。
【0222】
図23で示すように、第2電機子コアH2は、左右方向で積層される複数の鋼板を含む積層鋼板であるヨーク部分コア34Gを有している。また、第2電機子コアH2は、前後方向で並んでいる複数の磁極コア34Jを有している。各磁極コア34Jは、上下方向で積層されている複数の鋼板を含む積層鋼板である。すなわち、ヨーク部分コア34Gの鋼板と磁極コア34Jの鋼板は直交している。ヨーク部分コア34Gには前後方向で並んでいる複数の嵌合穴が形成されている。磁極コア34Jは複数の嵌合穴にそれぞれ嵌められて、ヨーク部分コア34Gと磁気的に結合している。磁極コア34Jのうちヨーク部分コア34Gの表面から界磁部Fsに向かって突出している部分が磁極34aである。リニア電機M23においては、6つの磁極34aで磁極組G2が構成されている。
【0223】
磁極コア33J・34Jの鋼板は、前後方向(機械動作方向)と左右方向(電機子コアH1・H2の対向方向)の双方に交差する方向、具体的には上下方向で積層されている。リニア電機M23の例とは異なり、磁極コアの鋼板が機械動作方向に積層されている場合、機械動作方向の端部に位置する鋼板に誘導電流が発生しやすくなる。これに対して、リニア電機M23では、磁極コア33J・34aの鋼板は上下方向に積層されているので、そのような誘導電流の発生を抑えることができる。
【0224】
ヨーク部分コア33G・34Gには、
図23で示すように、各磁極コア33J・34Jが嵌められている嵌合穴から延びているスリットS7・S8が形成されている。リニア電機M23の例では、隣り合う2つの磁極コア33Jがそれぞれ嵌められる嵌合穴の間にスリットS7が形成されている。同様に、隣り合う2つの磁極コア34Jがそれぞれ嵌められる嵌合穴の間にスリットS8が形成されている。このスリットS7・S8によって、磁極コア33J・34Jを流れる磁束に起因してヨーク部分コア33G・34Gに誘導電流が発生することを、防止できる。スリットS7・S8は、
図23に示す例とは異なり、嵌合穴からヨーク部分コア33G・34Gの縁に向かって延びてもよい。
【0225】
図23で示すように、電機子部Am23は間隔をあけて前後方向で並んでいる複数のコア連結部Lを有している。複数のコア連結部Lは複数の磁極組対P(界磁部Fsを挟んで対向する磁極組G1・G2のペア)のそれぞれに設けられている。前後方向におけるコア連結部Lの位置と、前後方向における磁極組対Pの位置は相互に対応している。磁極組G1・G2(磁極コア33J・34Jのうちヨーク部分コア33G・34Gから突出している部分)はヨーク部分コア33G・34Gに対して界磁部Fs側に位置している。コア連結部Lはヨーク部分コア33G・34Gに磁気的に結合されている。詳細には、ヨーク部分コア33G・34Gの上面にヨーク部分コア33G・34Gを貫通する嵌合穴33g・34gが形成されている。この嵌合穴33g・34gにコア連結部Lが嵌められ、保持されている。
【0226】
コア連結部Lは、前後方向で積層されている複数の鋼板を含む積層鋼板である。鋼板のこの配置・積層によると、コア連結部Lに誘導電流が発生することを、抑えることができる。
【0227】
図23で示すように、嵌合穴33g・34gはヨーク部分コア33G・34Gを構成する鋼板の積層方向に対して交差する方向に開口している。具体的には、嵌合穴33g・34gは上方に開口している。そのため、各コア連結部Lの周りに誘導電流が発生することを防止できる。コア連結部LはコイルCL及び界磁部Fsの上方に位置している。電機子部Am23は、コイルCL及び界磁部Fsの上方に位置するコア連結部Lと、コイルCL及び界磁部Fsの下方に位置するコア連結部Lとを有してもよい。
【0228】
図23で示すように、リニア電機M23において、各コア連結部Lは左右方向(電機子コアH1・H2の対向方向)において並ぶ第1部分コアL5と第2部分コアL6とを有してもよい。第1部分コアL5は第1電機子コアH1の嵌合穴33gに嵌められ、第2部分コアL6は第2電機子コアH2の嵌合穴34gに嵌められている。この構造によると、リニア電機M23の組み立て作業を簡素化できる。
【0229】
リニア電機M23においても、これまで説明した回転電機(例えば、回転電機M1)と同様、2種類の磁気回路を有する。すなわち、第1の磁気回路は、前後方向で離れている2つの磁極組G1と、前後方向で離れている2つの磁極組G2と、磁極組G1と磁極組G2とに対向する界磁コア22N・22Sと、界磁コア22N・22Sの間の磁石Mgとを含む。第2の磁気回路は、コア連結部Lと、左右方向で向き合っており且つコア連結部Lを介して磁気的に結合されている磁極組G1・G2と、磁極組G1と磁極組G2とに対向する界磁コア22N・22Sと、界磁コア22N・22Sの間の磁石Mgとを含む。
【0230】
[圧粉材料で形成される電機子コアを有するリニア電機]
電機子コアH1・H2は、軟磁性の圧粉材料で形成されてもよい。
図24A及び
図24Bは、このような電気機械の例としてリニア電機M24を示す斜視図である。この図において、界磁部Fsの一部と、第1電機子コアH1の一部は省略されている。以下では、これまで説明したリニア電機との相違点を中心に説明する。
図24A及び
図24Bで示すリニア電機M24について説明のない事項(例えば、磁極組対P間の距離(電気角)や界磁部Fsの構造)については、これまで説明した他の電気機械の構造が適用されてよい。
【0231】
図24Bで示すように、電機子部Am24は、左右方向(X1-X2方向、機械動作方向に対して交差する方向)で向き合っている第1電機子コアH1と第2電機子コアH2とを有している。第1電機子コアH1は前後方向(機械動作方向)で並んでいる複数の磁極組G1を有している。磁極組G1は複数の磁極33aを有している。第1電機子コアH1はヨーク部33cの内面(第2電機子コアH2に向いた面)から界磁部Fsに向かって突出する共通基部33bを有している。磁極33aは共通基部33bから界磁部Fs側に突出している。複数の磁極33aが共通基部33bにおいて前後方向に並んでいる。
【0232】
図24Bで示すように、第2電機子コアH2の界磁部Fsに対向する面には、前後方向で並ぶ複数の凹部34bが形成されている。隣り合う2つの凹部34bの間の部分(凸部)が磁極34aである。このように隣り合う2つの凹部34bの間の部分を磁極34aとして機能させる構造によると、磁極34aの強度を増すことができる。
【0233】
リニア電機M24では、第1電機子コアH1と第2電機子コアH2は軟磁性の圧粉材料で形成されている。電機子部Am24は前後方向で並んでいる複数のコア連結部Lを有している。
図24Bで示すように、コア連結部Lは第2電機子コアH2と一体的に形成されている。すなわち、コア連結部Lと第2電機子コアの全体の形状に対応した空間を有する金型を準備し、その金型内の空間に軟磁性の圧粉材料を入れて、第2電機子コアH2とコア連結部Lとを形成している。したがって、第2電機子コアH2は、コア連結部Lに対応する位置にコア連結部Lが嵌まる構造(具体的に嵌合穴)を有していない。
【0234】
図24Bで示すように、コア連結部Lはヨーク部34cの上部から第1電機子コアH1のヨーク部33cの上部に向かって延び、第1電機子コアH1のヨーク部33cの上部に接続している。ヨーク部33cの上縁には嵌合穴33fが形成され、コア連結部Lの端部はこの嵌合穴33fに嵌められている。リニア電機M24の例では、嵌合穴33fは上方に開口している凹部である。嵌合穴33fの構造は適宜変更されてよい。
【0235】
リニア電機M24の例とは反対に、コア連結部Lは、第1電機子コアH1と一体的に形成されてもよい。さらに他の例では、コア連結部Lが2つの部分コアに分割され、一方の部分コアが第1電機子コアH1と一体的に形成され、他方の部分コアが第2電機子コアH2と一体的に形成されてもよい。
【0236】
[アキシャルギャップタイプ]
図25A~
図25Cは、界磁部Fsを挟んで第1電機子コアH1と第2電機子コアH2とが互いに反対側に配置される電気機械の例として、アキシャルギャップタイプの回転電機M25を示している。
図25Aは回転電機M25の斜視図であり、
図25Bは回転電機M25の分解斜視図である。
図25Cは回転電機M25の底面図であり、第1電機子コアH1の底面が示されている。ここでは、
図18A及び
図18Bで説明した回転電機M21との相違点を中心にして説明する。これらの図で示す回転電機M25について説明のない事項は、
図18Aの例が適用されてよい。
【0237】
図25Aで示すように、回転電機M25の第1電機子コアH1と第2電機子コアH2の双方は円盤状であり、軸方向で互いに向き合っている。2つの電機子コアH1・H2の間に円盤状の界磁部Fsが配置されている。界磁部Fsの界磁コア22N・22Sは、その上側と下側の双方において露出しているのが望ましい。このことによって、界磁部Fsと電機子コアH1・H2との磁気抵抗を低減できる。
【0238】
図25Bで示すように、第1電機子コアH1は、ヨーク部分コア33Hと、回転方向で並んでいる複数の磁極コア33Jとを有している。ヨーク部分コア33Hは軸方向で積層されている複数の鋼板を含む積層鋼板である。各磁極コア33Jは、径方向で積層されている複数の鋼板を含む積層鋼板である。したがって、ヨーク部分コア33Hの鋼板と磁極コア33Jの鋼板は直交している。ヨーク部分コア33Hには、回転方向で並んでいる複数の嵌合穴33jが形成されている。磁極コア33Jは複数の嵌合穴33jにそれぞれ嵌められて、ヨーク部分コア33Hと磁気的に結合している。磁極コア33Jのうちヨーク部分コア33Hの表面から界磁部Fsに向かって突出している部分が磁極33aである。
【0239】
図25Bで示すように、第2電機子コアH2は、第1電機子コアH1と同様、ヨーク部分コア34Hと、回転方向で並んでいる複数の磁極コア34Jとを有している。ヨーク部分コア34Hは軸方向で積層されている複数の鋼板を含む積層鋼板である。各磁極コア34Jは、径方向で積層されている複数の鋼板を含む積層鋼板である。すなわち、ヨーク部分コア34Hの鋼板と磁極コア34Jの鋼板は直交している。ヨーク部分コア34Hには回転方向で並んでいる複数の嵌合穴34jが形成されている。磁極コア34Jは複数の嵌合穴34jにそれぞれ嵌められて、ヨーク部分コア34Hと磁気的に結合される。磁極コア34Jのうちヨーク部分コア34Hの表面から界磁部Fsに向かって突出している部分が磁極34aである。
【0240】
磁極コア33J・34Jにおいて、鋼板は回転電機M25の径方向で積層されている。回転電機M25の例とは異なり、磁極コアの鋼板が回転方向に積層されている場合、回転方向の端部に位置する鋼板に誘導電流が発生しやすくなる。これに対して、回転電機M25では、磁極コア33J・34Jの鋼板は径方向に積層されているので、そのような誘導電流の発生を抑えることができる。
【0241】
図25B及び
図25Cで示すように、ヨーク部分コア33H・34Hには、磁極コア33J・34Jが嵌められている嵌合穴33j・34jを取り囲む閉曲線と交差するスリットS7・S8が形成されている。回転電機M25の例では、隣り合う2つの磁極コア33Jがそれぞれ嵌められる嵌合穴33jの間にスリットS7(
図25C参照)が形成されている。ヨーク部分コア33Hの全周に亘って複数のスリットS7が形成されている。同様に、隣り合う2つの磁極コア34Jがそれぞれ嵌められる嵌合穴34jの間にスリットS8(
図25A参照)が形成されている。ヨーク部分コア34Hの全周に亘って複数のスリットS8が形成されている。このスリットS7・S8によって、磁極コア33J・34Jを流れる磁束に起因してヨーク部分コア33H・34Hに誘導電流が発生することを、防止できる。スリットS7・S8は、嵌合穴33j・34jからヨーク部分コア33H・34Hの内縁又は外縁に向かって延び、この縁に達していてもよい。
【0242】
図25Aで示すように、電機子部Am25は間隔をあけて回転方向で並んでいる複数のコア連結部Lを有している。複数のコア連結部Lは複数の磁極組対P(界磁部Fsを挟んで対向する磁極組G1・G2のペア)のそれぞれに設けられている。回転方向におけるコア連結部Lの位置と、回転方向における磁極組対Pの位置は相互に対応している。複数の磁極33a・34aを含む磁極組G1・G2(磁極コア33J・34Jのうちヨーク部分コア33H・34Hから突出している部分)はヨーク部分コア33H・34Hに対して界磁部Fs側に位置している。コア連結部Lはヨーク部分コア33H・34Hに磁気的に結合されている。回転電機M25の例では、ヨーク部分コア33H・34Hに、ヨーク部分コア33H・34Hを鋼板の積層方向に貫通する嵌合穴33h・34h(
図25B参照)が形成されている。この嵌合穴33h・34hにコア連結部Lが嵌められ、保持されている。
【0243】
図25Bで示すように、各コア連結部Lは軸方向で並ぶ第1部分コアL5と第2部分コアL6とを有してもよい。第1部分コアL5は第1電機子コアH1の嵌合穴33hに嵌められ、第2部分コアL6は第2電機子コアH2の嵌合穴34hに嵌められている。この構造によると、回転電機M25の組み立て作業を簡素化できる。第1電機子コアH1と第2電機子コアH2とを組み合わせたとき、第1部分コアL5の先端面と第2部分コアL6の先端面とが接する。
【0244】
コア連結部Lは、それぞれが軸方向に沿って配置され回転方向(機械動作方向)で積層されている複数の鋼板を含む積層鋼板である。鋼板のこの配置・積層によると、コア連結部Lの鋼板に誘導電流が発生することを、抑えることができる。
【0245】
コア連結部Lは磁極組G1・G2(コイルCL)に対して径方向における外側に位置している。これにより、コア連結部Lの回転方向での幅を十分に確保することが容易となる。これとは異なり、コア連結部Lは磁極組G1・G2(コイルCL)に対して径方向における内側に位置してもよい。
【0246】
各コア連結部Lは回転方向(機械動作方向)においても複数の部分に分割されていてもよい。回転電機M25において、各コア連結部Lは、回転方向で並んでいる部分コアを有している。より詳細には、
図25Cで示すように、第1電機子コアH1に磁気的に結合されている第1部分コアL5は回転方向で並んでいる部分コアL5a・L5bを有している。こうすることにおって、部分コアL5aを部分コアL5bに対して傾斜させることが可能となり、部分コアL5a・L5bの姿勢を磁極33a(磁極コア33J)の並びに合わせることができる。なお、2つの部分コアL5a・L5bは1つの嵌合穴33hに嵌められてよい。この場合、2つの部分コアL5a・L5bに隙間が形成されてよい。同様に、第2電機子コアH2に磁気的に結合されている第2部分コアL6は回転方向で並んでいる部分コアL6a・L6b(
図25B参照)を有している。これによって、部分コアL6a・L6bの姿勢を磁極34a(磁極コア34J)の並びに合わせることができる。
【0247】
回転電機M25も、これまで説明した回転電機(例えば、回転電機M1)と同様、2種類の磁気回路を有する。すなわち、第1の磁気回路は、回転方向で離れている2つの磁極組G1と、回転方向で離れている2つの磁極組G2と、磁極組G1と磁極組G2とに対向する界磁コア22N・22Sと、界磁コア22N・22Sの間の磁石Mgとを含む。第2の磁気回路は、コア連結部Lと、軸方向で向き合っており且つコア連結部Lを介して磁気的に結合されている磁極組G1・G2と、磁極組G1と磁極組G2とに対向する界磁コア22N・22Sと、界磁コア22N・22Sの間の磁石Mgとを含む。
【0248】
図25Cで示すように、ヨーク部分コア33Hは、コア連結部Lの嵌合穴33hから、ヨーク部分コア33Hの鋼板の積層方向に対して交差する方向に延びているスリットS3を有している。スリットS3は各嵌合穴33hを取り囲む閉曲線と交差する。これによって、各コア連結部Lの周囲に誘導電流が形成されることを防止できる。スリットS3は径方向の内側に向かって延び、界磁部Fsに対向する位置にある開口に達している。第1電機子コアH1においては、界磁部Fsに対向する位置にスリットS7(界磁部Fsに向かって開いた開口)が位置しており、スリットS3はスリットS7に達している。スリットS3はスリットS7ではなく、磁極コア33Jの嵌合穴33jに達していてもよい。
【0249】
また、
図25Aで示すように、ヨーク部分コア34Hは、コア連結部Lの嵌合穴34h(
図25B参照)から、ヨーク部分コア34Hの鋼板の積層方向に対して交差する方向に延びているスリットS4を有している。スリットS4は各嵌合穴34hを取り囲む閉曲線と交差する。これによって、各コア連結部Lの周囲に誘導電流が形成されることを防止できる。スリットS4は嵌合穴34hの径方向の内側に向かって延び、界磁部Fsに対向する位置にある開口に達している。磁極コア34Jが嵌められる嵌合穴34jは界磁部Fsに対向する位置に形成されており、界磁部Fsに向かって開口している。スリットS4はこの嵌合穴34j(界磁部Fsに対向する位置にある開口)に達している。スリットS4は隣り合う2つの嵌合穴34jの間に形成されるスリットS8に達していてもよい。
【0250】
図25Cで示すように、第1電機子コアH1のスリットS3は、複数の嵌合穴33hと複数の磁極組G1との間を通過し且つ軸線Axを取り囲む閉曲線と交差する。このスリットS3は、第1電機子コアH1の全体を1周する閉回路が複数のコア連結部Lと複数の磁極組G1との間に形成されることを防ぐ。そのため、コア連結部Lを含む磁気回路に形成される磁束Φ7(
図3B参照)に起因して、第1電機子コアH1に回転方向の誘導電流が生じることを防止できる。同様に、第2電機子コアH2のスリットS4も、複数の嵌合穴34hと複数の磁極組G2との間を通過し且つ軸線Axを取り囲む閉曲線と交差する。そのため、磁束Φ7(
図3B参照)に起因して、第2電機子コアH2に回転方向の誘導電流が生じることを防止できる。
【0251】
なお、コア連結部Lが嵌められる嵌合穴は、ヨーク部分コア33H・34Hの外周面に開口していてもよい。この場合、各コア連結部Lに上述したスリットS3・S4は形成されていなくてもよい。スリットS3・S4に代えて、複数のコア連結部Lが嵌められている複数の嵌合穴と複数の磁極組G1・G2との間を通過し且つ軸線Axを取り囲む閉曲線と交差するスリットがヨーク部分コア33H・34Hのいずれかの位置に形成されるとよい。このスリットは、例えば、
図9A或いは
図9Bで示すスリットS5・S6と同様、いずれか1つの嵌合穴から延びて、磁極コア33J・34Jが嵌められている嵌合穴33j・34jに接続してもよいし、隣り合う2つの嵌合穴33j・34jの間のスリットS7・S8に接続してもよい。
【0252】
[電機子コアが異なる2方向に配置される例]
電機子コアH1・H2及び界磁部Fsの相対的な位置はこれまで説明した電気機械の例に限られない。例えば、回転電機においては、界磁部の外周面又は内周面に対して径方向に一方の電機子コアが配置され、界磁部Fsに対して軸方向に他方の電機子コアが配置されてよい。リニア電機においては、界磁部Fsの右側面又は左側面(機械動作方向に沿った第1の面)に対して側方に一方の電機子コアが配置され、界磁部Fsの上面又は下面(機械動作方向に沿った第2の面)に対して上方又は下方に他方の電機子コアが配置されてよい。
【0253】
図26A及び
図26Bは、このような電気機械の一例として、回転電機M26を示す図である。
図26Aは斜視図であり、
図26Bは分解斜視図である。
図26Aにおいて、電機子コアH1・H2と界磁部FsとコイルCLの一部は省略されている。ここでは、
図1Aで説明した回転電機M1との相違点を中心にして説明する。これらの図で示す回転電機M26について説明のない事項は、
図1Aの例が適用されてよい。
【0254】
図26Bで示すように、電機子部Am26は、1つの第1電機子コアH1と、2つの第2電機子コアH2とを有している。第1電機子コアH1は界磁部Fsの外周面に対して径方向における外側に位置している。回転電機M26とは異なり、第1電機子コアH1は界磁部Fsの内側に配置されてもよい。2つの第2電機子コアH2は、軸方向において界磁部Fsを挟んで互いに反対側に配置されている。すなわち、一方の第2電機子コアH2は界磁部Fsの上面(軸方向に向いた面)の上方に位置し、他方の第2電機子コアH2は界磁部Fsの下面(軸方向に向いた面)の下方に位置している。2つの電機子コアH2は同じ構造を有していてよい。こうすることで、回転電機M26の製造コストを抑えることができる。界磁コア22N・22Sは界磁部Fsの外周面と界磁部Fsの上面及び下面とにおいて露出しているのが望ましい。
【0255】
第1電機子コアH1は、例えば軸方向で積層されている複数の鋼板によって構成される。第1電機子コアH1は、軟磁性の圧粉材料で形成されてもよい。また、図で示す例では、第2電機子コアH2は、軟磁性の圧粉材料で形成されている。第2電機子コアH2は積層鋼板であってもよい。
【0256】
回転電機M26の使用時においては、例えば界磁部Fsが回転電機M26を搭載する装置に固定され、電機子部Am26が軸線Axを中心として回転する。これとは反対に、電機子部Am26が回転電機M26を搭載する装置に固定され、界磁部Fsが軸線Axを中心として回転してもよい。
【0257】
図26Bで示すように、第1電機子コアH1は、回転方向で並んでいる複数の磁極組G1を有している。第1電機子コアH1には、例えば、U相コイルCLu、V相コイルCLv、及びW相コイルCLwが設けられ、回転電機M26は例えば三相交流で駆動する電気機械である。各第2電機子コアH2は、界磁部Fsに向いている側に、回転方向で並んでいる複数の磁極組G2を有している。回転電機M26において、界磁部Fsの極数は、例えば56(p=28)である。
【0258】
隣り合う磁極組対P間の電気角は、
図2を参照して説明したように360×(n+m/s)と表され、例えば1,680度であってよい(回転電機M26において、s=3、及びm=2、n=4)。隣り合う磁極組対P間の機械角は、(360/p)×(n+m/s)」と表され、「360/s/c」に実質的に一致する。この機械角は、回転電機M26においては例えば60度である(回転電機M26においてc=2)。
【0259】
図26Bで示すように、電機子部Am26は、回転方向において間隔をあけて並んでいる複数のコア連結部Lを有している。第1電機子コアH1の磁極組G1はヨーク部33cに対して界磁部Fs側に形成されている。第2電機子コアH2の磁極組G2はヨーク部34cに対して界磁部Fs側に形成されている。コア連結部Lはヨーク部33cとヨーク部34cとを磁気的に結合している。複数のコア連結部Lは複数の磁極組対P(回転方向において相互に対応する位置にある磁極組G1・G2のペア)にそれぞれ設けられている。
【0260】
電機子部Am26では、コア連結部Lは第2電機子コアH2と一体的に形成されている。すなわち、コア連結部Lと第2電機子コアH2の全体の形状に対応した空間を有する金型を準備し、その金型内の空間に軟磁性の圧粉材料を入れて、第2電機子コアH2とコア連結部Lとが形成されている。
【0261】
図26Bで示すように、コア連結部Lは、2つの第2電機子コアH2のそれぞれに形成されている。コア連結部Lは、第2電機子コアH2のヨーク部34cから径方向に延びている延伸部L7を有している。延伸部L7はコイルCLの位置を超えて径方向に延びている。コア連結部Lは、延伸部L7の端部から軸方向に延びている嵌合部L8を有している。第1電機子コアH1のヨーク部33cは軸方向にこれを貫通している嵌合穴33hを有している。嵌合穴33hに嵌合部L8が嵌められて、ヨーク部33cとヨーク部34cがコア連結部Lを介して磁気的に結合されている。上側の電機子コアH2のコア連結部Lの嵌合部L8と、下側の電機子コアH2のコア連結部Lの嵌合部L8は共通の嵌合穴33hに嵌められている。
【0262】
第1電機子コアH1には、第1電機子コアH1の鋼板の積層方向に対して交差する方向に嵌合穴33hから延びているスリットS3が形成されている。具体的には、スリットS3は界磁部Fsに向かって延びている。これにより、コア連結部Lに形成される磁束に起因して各コア連結部Lの周囲に誘導電流が発生することを防止できる。
【0263】
コア連結部Lの形状は電機子部Am26の例に限られない。例えば、ヨーク部34cが磁極組G1及びコイルCLに対して軸方向に位置する部分を有するように、ヨーク部34cの径方向での幅が大きい場合、コア連結部Lは径方向で延びている延伸部L7を有していなくてもよい。
【0264】
また、第2電機子コアは、軸方向で積層されている複数の鋼板を含む積層鋼板を含んでもよい。この場合、ヨーク部34cは磁極組G1及びコイルCLに対して軸方向に位置する部分を有し、ヨーク部34cのこの部分に軸方向にこれを貫通する穴が形成されてよい。そして、ヨーク部34cのこの穴と第1電機子コアH1の嵌合穴33hとにコア連結部Lが嵌められてもよい。
【0265】
回転電機M26も、これまで説明した回転電機(例えば、回転電機M1)と同様、2種類の磁気回路を有する。すなわち、第1の磁気回路は、回転方向で離れている2つの磁極組G1と、回転方向で離れている2つの磁極組G2と、磁極組G1と磁極組G2とに対向する界磁コア22N・22Sと、界磁コア22N・22Sの間の磁石Mgとを含む。第2の磁気回路は、コア連結部Lと、回転方向での角度位置が相互に対応しており且つコア連結部Lを介して磁気的に結合されている磁極組G1・G2と、磁極組G1と磁極組G2とに対向する界磁コア22N・22Sと、界磁コア22N・22Sの間の磁石Mgとを含む。2種類の磁気回路を通る磁束は、磁極組G1に設けられているコイルCLの内側を通過する。
【0266】
なお、電機子コアH1・H2の配置は、これまで説明した電気機械に限られない。例えば、界磁部Fsに対して第1電機子コアH1が位置する方向を第1の方向とし、界磁部Fsに対して第2電機子コアH2が位置する方向を第2の方向としたとき、第1の方向と第2の方向との間の角度は90度や180度ではなく、例えば120度であってもよい。この場合、界磁部Fsの断面は三角形であってもよい。
【0267】
また、界磁部Fsの断面は円形であってもよい。この場合、電機子コアH1・H2の磁極33a・34aの端面は界磁部Fsの外周面に合わせて湾曲していてもよい。
【0268】
[コア連結構造の他の例]
これまで説明した電気機械では、第1電機子コアH1と第2電機子コアH2とを磁気的に結合するコア連結構造として、機械動作方向において間隔をあけて並んでいる複数のコア連結部Lが利用されていた。コア連結構造はこれに限られず、機械動作方向で延びている1つのコア連結部Lが利用されてもよい。
図27A及び
図27Bはこのような電気機械の例として、アキシャルギャップタイプの回転電機M27を示している。
図27Aは斜視図であり、
図27Bは分解斜視図である。ここでは、ここでは、
図25A~
図25Cで説明した回転電機M25との相違点を中心にして説明する。これらの図で示す回転電機M27について説明のない事項は、
図25A~
図25Cの例が適用されてよい。
【0269】
図27Bで示すように、第1電機子コアH1は回転方向で並んでいる複数の磁極組G1を有している。磁極組G1は第2電機子コアH2に向かって軸方向で突出する磁極33aを有している。第1電機子コアH1は、円盤状のヨーク部33cを有している。ヨーク部33cの上面(第2電機子コアH2に向いた面)に磁極33aが形成されている。ヨーク部33cの径方向での幅は、電機子コアH1の全周に亘って均一である。第1電機子コアH1は、例えば、軟磁性の圧粉材料で形成される。
【0270】
図27Aで示すように、各磁極組G1に設けられているコイルCLは、磁極組G1を構成する全ての磁極33aに巻かれる第1コイルCL1と、一部の磁極33aにだけ巻かれる第2コイルCL2とを有してもよい。こうすることによって磁極33aの間の隙間を有効利用できる。なお、この2つのコイルCL1・CL2の巻回方向は同じであり、且つ直列に接続される。
【0271】
図27Bで示すように、第2電機子コアH2の界磁部Fsに対向する面には、回転方向で並ぶ複数の凹部34bが形成されている。隣り合う2つの凹部34bの間の部分(凸部)が磁極34aである。第2電機子コアH2は、円盤状のヨーク部34cを有している。ヨーク部34cの下面(第1電機子コアH1に向いた面)に凹部34b及び磁極34aが形成されている。ヨーク部34cの径方向での幅は、電機子コアH2の全周に亘って均一である。第2電機子コアH2においては、各磁極組G2は複数の磁極34a(例えば、7つの磁極34a)で構成される。第2電機子コアH2は、例えば、軟磁性の圧粉材料で形成される。
【0272】
回転電機M27において、界磁部Fsの極数は、例えば76(p=38)である。隣り合う磁極組対P間の電気角は、
図2を参照して説明したように、360×(n+m/s)と表され、回転電機M25においては例えば2,280度となる(この回転電機M25において、s=3、m=1、n=6)。また、隣り合う磁極組対P間の機械角は、(360/p)×(n+m/s)」と表され、「360/s/c」に実質的に一致する。回転電機M25において、この機械角は例えば60度である(回転電機M25において、c=2)。
【0273】
図27Aで示すように、第1電機子コアH1は、ヨーク部33cの外周縁から第2電機子コアH2に向かって延びているコア連結部L11を有している。コア連結部L11は第1電機子コアH1の全周に亘って形成されている環状である。同様に、第2電機子コアH2は、ヨーク部34cの外周縁から第1電機子コアH1に向かって延びているコア連結部L12を有している。コア連結部L12は第2電機子コアH2の全周に亘って形成されている環状である。
【0274】
第1電機子コアH1のコア連結部L11の軸方向での端面(
図27Aにおいてコア連結部L11の上面)と、第2電機子コアH2のコア連結部L12の軸方向での端面(
図27Aにおいてコア連結部L12の下面)は互いに接しているとよい。こうすることで、コア連結部L11・L12を介して形成される磁路の磁気抵抗を低減できる。
【0275】
なお、電機子部Am27において、コア連結構造は
図27A及び
図27Bに示す例に限られない。例えば、電機子コアH1・H2の一方にだけ環状のコア連結部が形成されてよい。この場合、コア連結部の軸方向での端面は、他方の電機子コアのヨーク部の外周部に接しているとよい。さらに他の例として、コア連結部L11・L12は、ヨーク部33c・34cの外周縁ではなく、ヨーク部33c・34cの内周縁に形成されてもよい。また、コア連結部L11・L12は全周にわたって形成されなくてもよい。例えば、一部が切り欠かれて、回転電機M27に電力を供給する外部の駆動回路とコイルCLとを繋ぐ電線の引き出し口として利用されてもよい。
【0276】
このようにコア連結構造が機械動作方向(回転電機M27において回転方向)で延びている1つのコア連結部L11・L12である回転電機M27においても、これまで説明した回転電機(例えば、回転電機M1)と同様、2種類の磁束がそれぞれ形成される2つ磁気回路が形成される。すなわち、第1の磁気回路は、回転方向で離れている2つの磁極組G1と、回転方向で離れている2つの磁極組G2と、磁極組G1と磁極組G2とに対向する界磁コア22N・22Sと、界磁コア22N・22Sの間の磁石Mgとを含む。第2の磁気回路は、コア連結部L11・L12と、回転方向での角度位置が相互に対応しており且つコア連結部L11・L12を介して磁気的に結合されている磁極組G1・G2と、磁極組G1と磁極組G2とに対向する界磁コア22N・22Sと、界磁コア22N・22Sの間の磁石Mgとを含む。
【0277】
なお、電機子コアH1・H2は上述したように軟磁性の圧粉材料で形成される。このような電機子コアH1・H2は高い電気抵抗率を有するので、電機子コアH1・H2を通過する磁束の向きに依ることなく、誘導電流が抑えられる。したがって、これまで説明した電気機械とは異なり、電機子コアH1・H2に誘導電流の発生を防止するためのスリットは形成されていなくてよい。
【0278】
[変形例の適用及び組み合わせ]
なお、
図27A及び
図27Bを参照して説明したコア連結部L11・L12はアキシャルギャップタイプの回転電機だけでなく、例えば、
図24Aで示したリニア電機や、
図26Aで示した回転電機、ラジアルギャップタイプの回転電機において適用されてもよい。コア連結部L11・L12がリニア電機M24に適用される場合、コア連結部L11・L12の前後方向の長さは、電機子コアH1・H2が有する複数の磁極組G1・G2の全体の長さに対応していてよい。
【0279】
これまで説明したいずれの電気機械においても、
図27Aの例と同様、各磁極組G1に複数のコイルCLが設けられてもよい。すなわち、いずれの電気機械においても、電機子部は各磁極組G1を構成する複数の磁極33aの全体を取り囲む第1コイルと、第1コイルの内側に配置され、一部の磁極33aだけを取り囲む第2コイルとを、各磁極組G1について有してよい。この場合、第1コイルの機械動作方向での中心と、第2コイルの機械動作方向での中心は一致しているとよい。
【0280】
図1A乃至
図3Bで説明した電機子部では、コイルCLの相数は奇数(例えば3相)であり、各相のコイルの巻回方向は同じであった。このコイル配置は、ラジアルギャップタイプの回転電機、アキシャルギャップタイプの回転電機、リニア電機、及び
図26Aを参照しながら説明した回転電機のいずれに適用されてよい。
【0281】
図14A及び
図14Bで示したコイル配置も、ラジアルギャップタイプの回転電機、アキシャルギャップタイプの回転電機、リニア電機、及び
図26Aを参照しながら説明した回転電機のいずれに適用されてよい。すなわち、
図14A及び
図14B以外の電気機械においても、コイルCLの相数は奇数(例えば3相)であり、各相について巻回方向が反対である2つのコイル(例えば、U+相コイルCLu+、U-相コイルCLu-)が設けられてもよい。
【0282】
また、
図15A及び
図15Bで示したコイル配置も、ラジアルギャップタイプの回転電機、アキシャルギャップタイプの回転電機、リニア電機、及び
図26Aを参照しながら説明した回転電機のいずれに適用されてよい。すなわち、
図15A及び
図15B以外の電気機械においても、コイルCLの相数は偶数(例えば2相)であり、各相について巻回方向が反対である2つのコイル(例えば、A+相コイルCLa+、A-相コイルCLa-)が設けられてもよい。
【0283】
また、これまで説明したいずれの電気機械においても、磁極33a・34aは、
図13A及び
図22で示したように、磁極の本体から機械動作方向に交差し且つ界磁部Fsの表面に沿った方向に延びている突出部33nを有してよい。突出部33nが形成された磁極を有する電機子コアが積層鋼板である場合、積層方向の端部に位置する鋼板の先端が折り曲げられて形成されてよい。電機子コアが軟磁性の圧粉材料である場合、突出部33nは磁極の本体と一体的に形成されてよい。さらに他の例として、電機子コアは積層鋼板である部分と、積層方向の端部に配置され軟磁性の圧粉材料で形成される部分とを有してよい。この場合、突出部33nは、軟磁性の圧粉材料で形成される部分と一体的に形成されてよい。
【0284】
また、コア連結部Lが積層鋼板であり且つ閉じた内面を有する嵌合穴33h・34hに嵌められる電気機械においては、コア連結部Lの鋼板は機械動作方向に積層されてよい。こうすることによって、コア連結部Lを通過する磁束Φ7に起因して鋼板に誘導電流が発生することを抑えることができる。
【0285】
また、積層鋼板で形成されている電機子コアを有する電機子部は、非磁性であり且つ絶縁性を有する材料によって固められてよい。例えば、電機子部は樹脂でモールドされてよい。この場合、磁極33a・34aの先端面は樹脂から露出しているとよい。
【0286】
また、これまで説明した例では、第1電機子コアH1だけにコイルCLが設けられていた。しかしながら、コイルCLは第1電機子コアH1と第2電機子コアH2の双方にコイルCLが設けられてもよい。
【0287】
また、
図13A及び
図13Bを参照しながら、互いに組み合わされている複数の部分コア33A・33Dによって電機子コアが構成される電機子部を説明した。この構造は、ラジアルギャップタイプの回転電機だけでなく、リニア電機など他の電気機械に適用されてもよい。また、電機子コアは、
図13A及び
図13Bで例示するように、径方向において組み合わされる部分コア33A・33Dを有してもよいし、機械動作方向において組み合わされる部分コアを有してもよい。
【0288】
リニア電機は、左右方向(複数の電機子コアの対向方向)で離れている2つの界磁部を有してもよい。この場合、電機子部は3つの電機子コアを有してもよい。そして、1つの電機子コアは2つの界磁部の間に配置され、2つの電機子コアは2つの界磁部の左右にそれぞれ配置されてよい。2つの界磁部の間に配置される電機子コアは、その右側と左側との磁極組を有してよい。この場合、2つの界磁部の間に配置される電機子コアは、前後方向(機械動作方向)での磁束の流れを許容するヨーク部を有してもよいし、左右方向(電機子コアが対向する方向)にだけ磁束の流れを許容してもよい。
【0289】
[実施形態のまとめ]
図1A及び
図18Aで例示したように、回転電機M1・M21は、電機子部Am1・Am21と、電機子部Am1・Am21に対して相対移動可能である界磁部Fsとを有している。界磁部Fsは、電機子部Am1・Am21と界磁部Fsとの相対移動の方向である回転方向(機械動作方向)で並んでいる複数の界磁コア22N・22Sと、隣り合う2つの界磁コア22N・22Sの間にそれぞれが配置されている複数の磁石Mgとを含む。電機子部Am1・Am21は、回転方向に対して交差する方向(電機子部Am1では軸方向、電機子部Am21では径方向)で離れている第1電機子コアH1と第2電機子コアH2と、第1電機子コアH1と第2電機子コアH2とを磁気的に結合しているコア連結構造と、複数のコイルCLとを含む。第1電機子コアH1は、回転方向で並んでおり且つ磁気的に結合している磁極組G1uと磁極組G1vとを有している。第2電機子コアH2は、回転方向で並んでおり且つ磁気的に結合している磁極組G2uと磁極組G2vとを有している。回転方向における磁極組G1uの位置は、回転方向における磁極組G2uの位置に対応している。回転方向における磁極組G1vの位置は、回転方向における磁極組G2vの位置に対応している。複数のコイルCLは、磁極組G1uに設けられているU相コイルCLuを含んでいる。
図3B及び
図18Cで示すように、U相コイルCLuを通過する第1磁束Φ1とU相コイルCLuを通過する第2磁束Φ7とが複数の磁石Mgのうちの1つ又は複数によって形成される。第1磁束Φ1が流れる第1磁気回路は、磁極組G1u、磁極組G1v、磁極組G2u、磁極組G2v、界磁コア22N・22S、及び磁石Mgを含む。第2磁束Φ7が流れる第2磁気回路は、磁極組G1u、コア連結構造、磁極組G2u、界磁コア22N・22S、及び磁石Mgを含む。この回転電機M1・M21によると、磁気回路が磁気的に飽和することを抑えることができる。その結果、コイルCLに供給する電流を増すことが可能となり、大きな動力を回転電機M1・M21から得ることができる。また、各電機子コアH1・H2を回転方向で磁気的に分割する必要がなくなるため、電機子コアH1・H2の強度を増すことができる。本開示で提案した他の電気機械も、上述した第1磁気回路と第2磁気回路とを有しており、同様の効果を奏する。
【0290】
(1)
図1Aで例示した回転電機M1では、界磁部Fsは、回転方向に沿っている内周面を有している。第1電機子コアH1と第2電機子コアH2は、界磁部Fsの内周面に対して径方向における内側に位置している。コア連結構造は回転方向で並んでいる複数のコア連結部Lを含む。複数のコア連結部Lは、磁極組G1uと、磁極組G2uと、磁極組G1uに設けられているU相コイルとに対して径方向における内側に位置しているコア連結部Lを含んでいる。
図10~
図17で例示した回転電機或いはリニア電機も、界磁部Fsに対して同じ方向に位置している電機子コアH1・H2を有している。
【0291】
(2)
図18Aで例示した回転電機M21では、界磁部Fsは、回転方向に沿っている面として内周面と外周面とを有している。第1電機子コアH1は、界磁部Fsの外周面に対して径方向における外側に位置し、第2電機子コアH2は、界磁部Fsの内周面に対して径方向における内側に位置している。
図21A~
図27Bで例示した回転電機或いはリニア電機も、回転電機M21と同様に、界磁部Fsに対して異なる方向に位置している電機子コアH1・H2を有している。この構造によると、電機子コアH1・H2の配置の自由度を増すことができる。
【0292】
(3)
図1Aで例示した回転電機M1では、複数のコア連結部Lがそれぞれ嵌められる複数の嵌合穴33h・34hのそれぞれについて、鋼板Sp1の積層方向に対して交差する方向に嵌合穴33h・34hから延びているスリットS3・S4が形成されている。また、
図7で例示した電機子部Am2において、電機子コアH1・H2の嵌合穴33g・34gは、鋼板Sp1の積層方向に対して交差する方向(径方向の内側)に開口している。これによると、各コア連結部Lの周囲に誘導電流が生じることを抑えることができる。
【0293】
(4)
図1Aで例示した回転電機M1において、各嵌合穴33h・34hから延びているスリットS3・S4は、回転方向(機械動作方向)で並んでいる複数の嵌合穴33h・34hと回転方向(機械動作方向)で並んでいる複数の磁極組G1・G2との間を通過し且つ軸線Axを取り囲む閉曲線と、交差する。また、
図7で例示した電機子部Am2において、スリットS5・S6は、複数の嵌合穴33g・34gと回転方向(機械動作方向)で並んでいる磁極組G1・G2との間を通過し且つ軸線Axを取り囲む閉曲線と、交差する。このスリットS3・S4・S5・S6によると、電機子コアH1・H2に、回転方向の誘導電流C2(
図8参照)が発生することを抑えることができる。
【0294】
(5)
図18Aの例において、電機子コアH1・H2は、複数の嵌合穴33h・34hのそれぞれについて、鋼板の積層方向に対して交差する方向に嵌合穴33h・34hから延びているスリットS3・S4を有している。
図19の例において、電機子コアH1・H2に形成されている嵌合穴33g・34gは、鋼板の積層方向に対して交差する方向に開口している。これによると、各コア連結部Lの周囲に誘導電流が生じることを抑えることができる。
【0295】
(6)
図18Aの例において、各嵌合穴33h・34hから延びているスリットS3・S4は、回転方向(機械動作方向)で並んでいる複数の嵌合穴33h・34hと回転方向(機械動作方向)で並んでいる複数の磁極組G1・G2との間を通過し且つ軸線Axを取り囲む閉曲線と、交差する。
図19の例において、スリットS5・S6は、複数の嵌合穴33g・34gと回転方向(機械動作方向)で並んでいる磁極組G1・G2との間を通過し且つ軸線Axを取り囲む閉曲線と、交差する。このスリットS3・S4・S5・S6によると、電機子コアH1・H2に回転方向の誘導電流が発生することを抑えることができる。
【0296】
(7)
図24A及び
図27Aで例示したように、コア連結部Lは、第1電機子コアH1と第2電機子コアH2のうちの一方又は両方と一体的に形成されている。これによると、電機子部の組み立てを簡単化できる。
【0297】
(8)
図18Aで例示したように、第1電機子コアH1はヨーク部33cを有し、磁極組G1u・G1vはヨーク部33cの界磁部Fs側に形成されている。第2電機子コアH2はヨーク部34cを有し、磁極組G2v・G2vはヨーク部34cの界磁部Fs側に形成されている。複数のコア連結部Lは、ヨーク部33c・34cを磁気的に結合し且つ回転方向での磁極組G1uの位置と磁極組G2uの位置とに対応した位置に配置されているコア連結部Lを含んでいる。
【0298】
(9)磁極組G1・G2は、機械動作方向で並んでいる複数の磁極33a・34aを有している。これによると、電気機械が出力する動力を増すことができる。
【0299】
(10)磁極33a・34aは、界磁部Fsに向かって突出する形状を有している。
【0300】
(11)
図13A及び
図22で例示したように、磁極33aは、磁極33aの本体から機械動作方向に対して交差する方向で伸びている突出部33nを有している。これによると、界磁部Fsと磁極33aとの間の隙間に起因する磁気抵抗を下げることができる。
【0301】
(12)
図1Aで例示したように、回転電機M1の相数は3以上の奇数であり、電機子部は、同じ巻回方向を有する2以上のコイルCLを各相について有してよい。この構造においては、磁極組対Puと磁極組対Pvは電気角で実質的に「360×(n+m/s)」度だけ離れている。ここでs、m、n、はそれぞれ以下の数を表す。
s:相数
m:1以上、s-1以下の整数(ただしsの約数(1を除く)および約数(1を除く)の倍数を除く)
n:1以上の整数
【0302】
(13)(12)の回転電機M1において、(界磁部の極数)/2をp、各相についてのコイルの数をcとしたときに、「(360/p)×(n+m/s)」は「360/s/c」に実質的に等しい。
【0303】
(14)
図14Aで例示したように、回転電機の相数は3以上の奇数であり、電機子部Am7は、異なる巻回方向を有する2つのコイルで構成されるコイル対(例えば、CLu+・CLu-)を、各相について有してよい。例えば、第1磁極組対Pu+のコイルの巻回方向と第2磁極組対Pv+のコイルの巻回方向は同じであり、第1磁極組対Pu+のコイルと第3磁極組対Pu-のコイルはコイル対を構成する。この構造においては、(i)第1磁極組対Pu+と第2磁極組対Pv+は電気角で実質的に「360×(n+m/s)」度だけ離れている。また、(ii)第1磁極組対Pu+と第3磁極組対Pu-は電気角で実質的に「360×(q+1/2)」度だけ離れている。ここでs、m、n、qはそれぞれ以下の数を表す。
s:相数
m:1以上、s-1以下の整数(ただしsの約数(1を除く)および約数(1を除く)の倍数を除く)
n:1以上の整数
q:1以上の整数
【0304】
(15)(14)の回転電機において、(界磁部の極数)/2をp、各相についてのコイル対の数をcとしたときに、「(360/p)×(n+m/s)」は「360/s/c」に実質的に等しい。
【0305】
(16)
図15Aで例示したように、回転電機の相数は2以上の偶数であり、電機子部Am8は、異なる巻回方向を有する2つのコイルで構成されるコイル対(例えば、CLa+・CLa-)を、各相について有してよい。
図15Bで示すように、第1磁極組対Pa+のコイルの巻回方向と第2磁極組対Pv+のコイルの巻回方向は同じであり、第1磁極組対Pa+のコイルと第3磁極組対Pa-のコイルはコイル対を構成している。この構造においては、(i)第1磁極組対と第2磁極組対は電気角で実質的に「360×(n+m/s/2)」度だけ離れており、(ii)第1磁極組対と第3磁極組対は電気角で相対的に実質的に「360×(q+1/2)」度だけ離れている。ここでs、m、n、qはそれぞれ以下の数を表す。
s:相数
n:1以上の整数
m:1以上、s-1以下の整数(ただしsの約数(1を除く)および約数(1を除く)
の倍数を除く)
q:1以上の整数
【0306】
(17)(16)の回転電機において、(界磁部の極数)/2をp、各相についてのコイル対の数をcとしたときに、「(360/p)×(n+m/s/2)」は「180/s/c」に実質的に等しい。
【0307】
(18)
図16及び
図20で例示したように、各界磁コア22N・22Sは、隣り合う2つの磁石Mgの間に配置され且つ機械動作方向で離れている2つの部分界磁コア22fを含んでもよい。これによると、界磁コア22N・22Sと磁石Mgの寸法誤差の累積が抑えられて、界磁コア22N・22Sと磁石Mgの位置精度が向上できる。
【符号の説明】
【0308】
22N・22S:界磁コア、22f:部分界磁コア、23:固定部、33A:磁極組部分コア、33A1:第1部分コア、33A2:第2部分コア、33D:ヨーク部分コア、33E:端部鋼板、33F:本体鋼板、33G・33H:ヨーク部分コア、33J:磁極コア、33a:磁極、33b:共通基部、33c:ヨーク部、33d:凹部、33e:スリット面、33f・33g・33h:嵌合穴、33i:連結面、33j:嵌合穴、33m:隙間、33n:突出部、33u:側面、34E:端部鋼板、34F:本体鋼板、34G・34H:ヨーク部分コア、34J:磁極コア、34a:磁極、34b:凹部、34c:ヨーク部、34g・33h:嵌合穴、34j:嵌合穴、34n:突出部、55a:係合部、55b:被係合部、Am1~Am8・Am10・Am21~Am27:電機子部、CL:コイル、Fs:界磁部、G1・G2:磁極組、H1:第1電機子コア、H2:第2電機子コア、L・L11・L12:コア連結部、L1・L2:嵌合部、L3:延伸部、L5:第1部分コア、L5a・L5b:部分コア、L6:第2部分コア、L6a・L6b:部分コア、L7:延伸部、L8:嵌合部、Le:コア連結部の端部、Li:連結機構、M1~M5。M8:回転電機、M10:リニア電機、M21:回転電機、M22~M24:リニア電機、M25~M27:回転電機、Mg:磁石、P:磁極組対、Sp1・Sp2:電磁鋼板、Φ1・Φ2・Φ7:磁束。