(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】GFRAL拮抗抗体及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20240528BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240528BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240528BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240528BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240528BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240528BHJP
A23L 33/00 20160101ALI20240528BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240528BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20240528BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240528BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20240528BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A23L33/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P1/14
C12N15/13
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2022574556
(86)(22)【出願日】2021-06-02
(86)【国際出願番号】 KR2021006865
(87)【国際公開番号】W WO2021246773
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】10-2020-0067543
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0068874
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519341706
【氏名又は名称】テグ キョンプク インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】DAEGU GYEONGBUK INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】イエ キョンムー
(72)【発明者】
【氏名】イ ボムヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョン ジョンウォン
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-513018(JP,A)
【文献】特表2019-513224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/13
C07K 16/18
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号7で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2及び配列番号9で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、
配列番号10で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号11で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2及び配列番号12で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域と、
を含む、抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
請求項
1に記載の抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片をコーディングする、核酸分子。
【請求項3】
請求項
2に記載の核酸分子を含む、組換え発現ベクター。
【請求項4】
請求項
3に記載の組換え発現ベクターで形質転換された、細胞。
【請求項5】
請求項
1に記載の抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む、癌関連食欲不振または悪液質症候群(CACS)の予防または治療用薬学組成物。
【請求項6】
請求項
1に記載の抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む、癌関連食欲不振または悪液質症候群(CACS)の予防または改善用健康機能食品組成物。
【請求項7】
請求項
1に記載の抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む、抗ガン剤による食欲不振または悪液質の予防または治療用薬学組成物。
【請求項8】
前記抗ガン剤は、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ビスルファン、ニトロソウレア、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン、マイトマイシン、エトポシド、タモキシフェン、タキソール、トランスプラチナ、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、及びメトトレキサートからなる群から選択された何れか1つ以上であることを特徴とする、請求項
7に記載の抗ガン剤による食欲不振または悪液質の予防または治療用薬学組成物。
【請求項9】
請求項
1に記載の抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む、抗ガン剤による食欲不振または悪液質の予防または改善用健康機能食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GFRAL拮抗抗体及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
1975年、最初の単クローン抗体を導出した以来、抗原に対する強い結合親和力を有する抗体の特性を用いて、1994年、最初に抗体治療剤が発売され、治療用抗体は、医薬品中で最も速い成長を記録している。2007年、基準治療用抗体の世界市場規模は、270億ドルであり、2011年447億ドル、2016年577億ドルに持続的な成長を示している。このような成長に基づいて、2014年度基準全世界医薬品売上のうち、抗体医薬品の売上比重は、10%を記録し、2016年度売上上位10個の医薬品のうち、6個が抗体医薬品である。化学合成物質を基盤とした既存の治療剤に比べて、抗体医薬品は、高い結合特異性及び人体内の安定性によって相対的に副作用が少なく、治療効能は優れていると証明されており、抗体医薬品の開発分野は、新薬研究開発の次世代核心分野としして脚光を浴びている。これと共に、抗体医薬品の開発過程に必須的な高分子タンパク質発現、生産、精製及び工学技術などの飛躍的な発展と臨床実験成功率とが高くて、抗体医薬品は、次世代治療剤として定着するものと見られる。
【0003】
癌関連食欲不振または悪液質症候群(CACS、Cancer-related anorexia-cachexia syndrome)は、持続的な食欲不振及び体重減少を特徴とした過度な異化状態を意味し、これにより、筋肉及び脂肪分解の増加、栄養学的代謝不均衡、基礎代謝量の増加などを招いて、全体的な身体機能の低下をもたらす。このようなCACSは、癌患者で重要な死亡原因の1つであり、否定的な治療結果を予測することができる最も重要な独立予後因子である。さらに、抗ガン化学療法や放射線治療または手術などの治療による栄養摂取の制限などが伴われて治療に対する反応率が低く、効率的な治療の進行も難しくなって、結果として患者の生存率や生活の質を低下させる主要原因である。それにも拘らず、CACSは、過小評価されており、未充足医療需要が残っているが、現在、一般的な食欲促進剤、筋肉合成促進剤などとしては効果的な治療を期待しにくい状況である。
【0004】
GDF15(Growth differentiation factor 15)は、免疫反応、代謝作用などに関与して生体内で多様な機能を行うサイトカインである。正常な状況でGDF15は、ほとんどの組織で低濃度で発現され、肝、腎臟、心臓及び肺のような組織の損傷時に、その数値が大きく増加する。2007年、前立腺癌患者の体内で食欲不振を通じた悪液質を誘導する物質が、GDF15であり、前立腺癌患者の場合、血液内のGDF15の濃度が正常者の10~100倍に増加し、癌患者の食欲不振を通じた体重減少とGDF15濃度との間に明らかな相関関係があることが明かになった(Nature medicine 2007;12(10);1333-40)。2016年、GDF15が多様な癌腫で悪液質を誘導する主要サイトカインであることが明かされ、GDF15抗体は、多様な癌悪液質マウスモデルで体重の増加と筋肉、脂肪組織の損失を緩和し、悪液質の改善効果を示した(Journal of cachexia,sarcopenia and muscle 2016;7:467-482)。
【0005】
2015年、シスプラチンのような化学抗ガン剤を処理した時の副作用としてGDF15発現が増加し、食欲不振と悪液質症状とを通じて抗ガン治療に対する抵抗性を増加させるということが知られた(PLoS One 2015;10(1);e0115372)。2017年、GDF15が受容体GFRALを通じて食欲を抑制するという事実が明らかになり、GDF15単独処理あるいはシスプラチン処理後、GDF15の信号伝達過程は、GFRAL依存的に作用するということが明かになった(Nature 2017;550(7675);255-259)。GFRALは、共同受容体RETと共に細胞の内部に信号を伝達し、抗体医薬品の接近が可能な脳血管障壁の外側である後脳(hindbrain)AP(Area postrema)、NTS(Nucleus tractus solitaris)地域に特異的に発現する。
【0006】
これにより、抗GFRAL抗体は、シスプラチンのような白金抗ガン剤の投与によってCACSを経験する癌患者の食欲不振現象を改善し、それによる体重の増加と骨格筋代謝量の増加とを通じて抗ガン化学療法に対する抵抗性を減らして、癌患者の福祉増加及び生命延長に寄与することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、前記抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片をコーディングする核酸分子、該核酸分子を含む組換え発現ベクター及び該組換え発現ベクターで形質転換された細胞を提供することである。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、前記抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む癌関連食欲不振または悪液質症候群(CACS)の予防、改善または治療用組成物を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、前記抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む抗ガン剤による食欲不振または悪液質の予防、改善または治療用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を果たすために、本発明は、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2及び配列番号3で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;及び配列番号4で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2及び配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域;を含む抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0012】
また、本発明は、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2及び配列番号9で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;及び配列番号10で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号11で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2及び配列番号12で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域;を含む抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0013】
また、本発明は、配列番号13で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号14で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2及び配列番号15で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;及び配列番号16で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号17で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2及び配列番号18で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域;を含む抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0014】
また、本発明は、配列番号19で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号20で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2及び配列番号21で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;及び配列番号22で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号23で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2及び配列番号24で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域;を含む抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片をコーディングする核酸分子を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記核酸分子を含む組換え発現ベクターを提供する。
【0017】
また、本発明は、前記組換え発現ベクターで形質転換された細胞を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む癌関連食欲不振または悪液質症候群(CACS)の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0019】
また、本発明は、前記抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む癌関連食欲不振または悪液質症候群(CACS)の予防または改善用健康機能食品組成物を提供する。
【0020】
また、本発明は、前記抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む抗ガン剤による食欲不振または悪液質の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0021】
また、本発明は、前記抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む抗ガン剤による食欲不振または悪液質の予防または改善用健康機能食品組成物を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、GFRAL拮抗抗体及びその用途に関するものであって、より詳細に、本発明は、特定配列の重鎖CDR及び軽鎖CDRを含む抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片に係わるものです。前記抗GFRAL抗体は、癌関連食欲不振または悪液質症候群及び化学療法抗ガン剤の副作用の改善または治療に有用に活用されうると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】エポキシビーズと抗原GFRAL(マウス及びヒト)とを利用したファージディスプレイ方法を図示して示した図面である。
【
図2】酸性バッファを利用した溶出後、ファージディスプレイの各ラウンド別のバクテリオファージライブラリーのGFRALに対する結合力を多重ファージ酵素結合免疫吸着分析法を通じて確認した結果である。
【
図3】リガンドGDF15を利用した溶出後、ファージディスプレイの各ラウンド別のバクテリオファージライブラリーのGFRALに対する結合力を多重ファージ酵素結合免疫吸着分析法を通じて確認した結果である。
【
図4】単一ファージ酵素結合免疫吸着分析法進行後、GFRALに対する結合力を確認した4種の単クローンの結果である。
【
図5】4種の単クローンのCDR部位別のアミノ酸配列を確認した結果である。
【
図6】4種の単クローンをタンパク質で発現、精製後、GFRALに対する結合力を酵素結合免疫吸着分析法を通じて確認した結果である。
【
図7】単クローンA11がGFRALに結合することを免疫細胞化学法で確認した結果である。
【
図8】商業用抗体がGFRALに結合することを免疫細胞化学法で確認した結果である。
【
図9】単クローンA11のGFRALに対する結合力を表面プラスモン共鳴を通じて確認した結果である。
【
図10】GFRAL/RET/luciferase過発現細胞で単クローンA11によるルシフェラーゼ(luciferase)発現減少をレポーターアッセイを通じて確認した結果である。
【
図11】GFRAL/RET過発現細胞で単クローンA11によるpERK発現減少をウェスタンブロットを通じて確認した結果である。
【
図12】
図11の結果をデンシトメトリー(densitometry)を通じて数値上に示した結果である。
【
図13】マウスモデルで単クローンA11によるシスプラチンの体重減少効果の緩和を確認した結果である。
【
図14】マウスモデルで単クローンA11によるシスプラチンの食欲減少効果の緩和を確認した結果である。
【
図15】マウスモデルでシスプラチンによって変化したGDF15の濃度を確認した結果である。
【
図16】マウスモデルで単クローンA11によるシスプラチンの脂肪量減少効果の緩和を確認した結果である。
【
図17】マウスモデルで単クローンA11によるシスプラチンの筋肉量減少効果の緩和を確認した結果である。
【
図18】マウスモデルで単クローンA11によるシスプラチンの活性抑制を免疫組織化学法を通じて確認した結果である。
【
図19】同種移植マウス腫瘍モデルで単クローンA11によるシスプラチンの体重減少効果の緩和を確認した結果である。
【
図20】同種移植マウス腫瘍モデルで単クローンA11によるシスプラチンの食欲減少効果の緩和を確認した結果である。
【
図21】同種移植マウス腫瘍モデルでシスプラチンによって変化したGDF15の濃度を確認した結果である。
【
図22】同種移植マウス腫瘍モデルで単クローンA11によるシスプラチンの脂肪量減少効果の緩和を確認した結果である。
【
図23】同種移植マウス腫瘍モデルで単クローンA11によるシスプラチンの筋肉量減少効果の緩和を確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2及び配列番号3で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;及び配列番号4で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2及び配列番号6で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域;を含む抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0025】
また、本発明は、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2及び配列番号9で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;及び配列番号10で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号11で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2及び配列番号12で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域;を含む抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0026】
また、本発明は、配列番号13で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号14で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2及び配列番号15で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;及び配列番号16で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号17で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2及び配列番号18で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域;を含む抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0027】
また、本発明は、配列番号19で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1、配列番号20で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2及び配列番号21で表されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;及び配列番号22で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1、配列番号23で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR2及び配列番号24で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域;を含む抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0028】
一方、配列番号1ないし配列番号24で表されるアミノ酸からなるCDRは、下記の表1に記載した。
【0029】
【0030】
本発明において、用語、「抗体」は、免疫学的に特定抗原と反応性を有する免疫グロブリン分子を含む、抗原を特異的に認識する受容体の役割を行うタンパク質分子を意味し、その例として、単クローン抗体、多クローン抗体、全長抗体(full-length antibody)及び抗体断片をいずれも含みうる。また、前記用語、「抗体」は、二価(bivalent)または二重特異性分子(例えば、二重特異性抗体)、ジアボディ、トリアボディまたはテトラボディを含みうる。
【0031】
本発明において、用語、「単クローン抗体」は、実質的に同じ抗体集団から収得した単一分子組成の抗体分子を称し、このような単クローン抗体は、多クローン抗体が複数個のエピトープに結合することができるものとは異なって、特定エピトープについて単一結合性及び親和度を示す。本発明において、用語、「全長抗体」は、2本の全長の軽鎖及び2本の全長の重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は、重鎖とジスルフィド結合で連結されている。重鎖不変領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)及びイプシロン(ε)タイプを有し、サブクラスでガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)及びアルファ2(α2)を有する。軽鎖の不変領域は、カッパ(κ)及びラムダ(λ)タイプを有する。IgGは、サブタイプ(subtype)であって、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む。
【0032】
本発明において、用語、「重鎖」は、抗原に特異性を付与するための十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域VH及び3個の不変領域CH1、CH2及びCH3を含む全長の重鎖及びその断片をいずれも含みうる。また、本発明において、用語、「軽鎖」は、抗原に特異性を付与するための十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域VL及び不変領域CLを含む全長の軽鎖及びその断片をいずれも含みうる。
【0033】
本発明において、用語、「断片」、「抗体断片」及び「抗原結合断片」は、抗体の抗原結合機能を保有する本発明の抗体の任意の断片を称するものであって、互換的に使われる。例示的な抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFvなどを含むが、これに制限されるものではない。
【0034】
本発明の抗体またはその抗原結合断片は、GFRALに特異的に結合する能力を示すことができる範囲内で、本明細書に記載の抗体の配列だけではなく、その生物学的均等物も含みうる。例えば、抗体の結合親和度及び/またはその他の生物学的特性をさらに改善させるために、抗体のアミノ酸配列に追加的な変化を与えることができる。このような変形は、例えば、抗体のアミノ酸配列残基の欠失、挿入及び/または置換を含む。このようなアミノ酸変異は、アミノ酸側鎖置換体の相対的類似性、例えば、疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づいて行われる。アミノ酸側鎖置換体のサイズ、形状及び種類に対する分析によって、アルギニン、リシンとヒスチジンは、全部正電荷を帯びた残基であり;アラニン、グリシンとセリンは、類似したサイズを有し;フェニルアラニン、トリプトファンとチロシンは、類似した形状を有するということが分かる。したがって、利点に基づいて、アルギニン、リシンとヒスチジン;アラニン、グリシンとセリン;そして、フェニルアラニン、トリプトファンとチロシンは、生物学的に機能均等物であると言える。
【0035】
また、本発明は、前記抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片をコーディングする核酸分子を提供する。
【0036】
本明細書で使われる用語、「核酸分子」は、DNA(gDNA及びcDNA)及びRNA分子を包括的に含む意味を有し、核酸分子で基本構成単位であるヌクレオチドは、自然のヌクレオチドだけではなく、糖または塩基部位が変形された類似体(analogue)も含む。本発明の重鎖及び軽鎖可変領域をコーディングする核酸分子の配列は、変形され、前記変形は、ヌクレオチドの追加、欠失、または非保存的置換または保存的置換を含む。
【0037】
また、本発明は、前記核酸分子を含む組換え発現ベクターを提供する。
【0038】
本発明において、「ベクター」は、クローン遺伝子(または、クローンDNAの他の切片)を運ぶのに使われる自ら複製されるDNA分子を意味する。
【0039】
本発明において、「発現ベクター」は、目的したコーディング配列と、特定の宿主生物で作動可能に連結されたコーディング配列の発現に必須的な適正核酸配列を含む組換えDNA分子を意味する。発現ベクターは、望ましくは、1つ以上の選択性マーカーを含みうる。前記マーカーは、通常の化学的な方法で選択される特性を有する核酸配列であって、形質転換された細胞を非形質転換細胞から区別することができるあらゆる遺伝子がこれに該当する。その例としては、アンピシリン(Ampicillin)、カナマイシン(Kanamycin)、ジェネティシン(Geneticin;G418)、ブレオマイシン(Bleomycin)、ハイグロマイシン(Hygromycin)、クロラムフェニコール(Chloramphenicol)のような抗生剤耐性遺伝子があるが、これに限定されるものではなく、当業者によって適切に選択可能である。
【0040】
本発明のDNA配列を発現させるために、非常に多様な発現調節配列のうち、如何なるものでもベクターに使われる。有用な発現調節配列の例には、例えば、SV40またはアデノウイルスの初期及び後期プロモーター、CMVのプロモーターとエンハンサー、レトロウイルスのLTR、lacシステム、trpシステム、TACまたはTRCシステム、T3及びT7プロモーター、ファージラムダの主要オペレーター及びプロモーター領域、fdコードタンパク質の調節領域、3-ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他のグリコール分解酵素に対するプロモーター、前記フォスファターゼのプロモーター、例えば、Pho5、酵母アルファ-交配システムのプロモーター及び原核細胞または真核細胞またはこれらのウイルスの遺伝子の発現を調節すると知られた構成と誘導のその他の他の配列及びこれらの多様な組み合わせが含まれうる。
【0041】
本発明の抗体を発現するベクターは、軽鎖と重鎖とが1つのベクターで同時に発現されるベクターシステムであるか、または軽鎖と重鎖とをそれぞれ別途のベクターで発現させるシステムいずれも可能である。後者の場合、2つのベクターは、同時形質転換(co-transfomation)及び標的形質転換(targeted transformation)を通じて宿主細胞に導入される。同時形質転換は、軽鎖及び重鎖をコーディングするそれぞれのベクターDNAを同時に宿主細胞に導入した後、軽鎖と重鎖とを全部発現する細胞を選別する方法である。標的形質転換は、軽鎖(または、重鎖)を含むベクターで形質転換された細胞を選別し、軽鎖を発現する選別された細胞を重鎖(または、軽鎖)を含むベクターで再び形質転換して、軽鎖及び重鎖いずれもを発現する細胞を最終的に選別する方法である。
【0042】
また、本発明は、組換え発現ベクターで形質転換された細胞を提供する。
【0043】
本発明のベクターを安定しながら連続的にクローニング及び発現させる細胞は、関連技術分野に公知の任意の宿主細胞である、例えば、エシェリキアコリ(Escherichia coli)、バチルス・サブチリス及びバチルス・チューリンゲンシスのようなバチルス属菌株、ストレプトマイセス(Streptomyces)、シュードモナス(Pseudomonas)(例えば、シュードモナスプチダ(Pseudomonas putida))、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)またはスタフィロコッカス(Staphylococcus)(例えば、スタフィロコッカス・カルノーサス(Staphylocus carnosus))のような原核宿主細胞を含むが、これらに制限されるものではない。
【0044】
前記抗体またはその抗原結合断片の製造方法において、形質転換細胞の培養は、関連技術分野に公知の適当な培地と培養条件とによって行われうる。このような培養過程は、通常の技術者であれば、選択される菌株によって容易に調整して使用することができる。細胞培養は、細胞の成長方式によって懸濁培養と付着培養、培養方法によって回分式、流加式及び連続培養式の方法に区分される。培養に使われる培地は、特定の菌株の要求条件を適切に満足させなければならない。
【0045】
また、本発明は、前記抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む癌関連食欲不振または悪液質症候群(CACS)の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0046】
本発明の薬学組成物は、薬剤学的に許容される担体をさらに含み、前記薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通用されるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、ステアリン酸マグネシウム、及びミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の癌転移の予防または治療用組成物は、前記成分の以外に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含みうる。
【0047】
本発明の薬学組成物は、経口または非経口投与し、非経口投与である場合には、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、内皮投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与及び直腸内投与などで投与することができる。経口投与時に、タンパク質またはペプチドは、消化になるために、経口用組成物は、活性薬剤をコーティングするか、胃での分解から保護されるように剤形化され、本発明の組成物は、活性物質が標的細胞に移動することができる任意の装置によって投与される。
【0048】
本発明の薬学組成物の適した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因によって多様であり、通常熟練した医者は、所望の治療または予防に効果的な投与量を容易に決定及び処方することができる。
【0049】
本発明の薬学組成物は、当業者が容易に実施することができる方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/または賦形剤を用いて製剤化して、単位容量の形態で製造されるか、または多容量容器内に内入させて製造可能である。この際、剤形は、オイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液または乳液の形態であるか、エクストラクト剤、散剤、坐剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤またはカプセル剤の形態でもあり、分散剤または安定化剤をさらに含みうる。
【0050】
また、本発明は、前記抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む癌関連食欲不振または悪液質症候群(CACS)の予防または改善用健康機能食品組成物を提供する。
【0051】
前記健康機能食品組成物は、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、シロップ、飲料または丸の形態で提供され、前記健康食品組成物は、有効成分である本発明による組成物の以外に、他の食品または食品添加物と共に使われ、通常の方法によって適切に使われる。有効成分の混合量は、その使用目的、例えば、予防、健康または治療的処置によって適するように決定される。
【0052】
前記健康機能食品組成物に含有された抗体またはその抗原結合断片の有効容量は、前記薬学組成物の有効容量に準じて使用することができるが、健康及び衛生を目的とするか、または健康調節を目的とする長期間の摂取の場合には、前記範囲以下であり、有効成分は、安全性面で何らの問題がないために、前記範囲以上の量でも使われるということは確実である。
【0053】
前記健康食品の種類には、特別な制限がなく、例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディー類、スナック類、お菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含んだ酪農製品、各種スープ、飲料水、お茶、ドリンク剤、アルコール飲料及びビタミン複合剤などが挙げられる。
【0054】
また、本発明は、前記抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む抗ガン剤による食欲不振または悪液質の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0055】
また、本発明は、前記抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片を有効成分として含む抗ガン剤による食欲不振または悪液質の予防または改善用健康機能食品組成物を提供する。
【0056】
より望ましくは、前記抗ガン剤は、シスプラチン(cisplatin)、オキサリプラチン(oxaliplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、プロカルバジン(procarbazine)、メクロレタミン(mechlorethamine)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、イホスファミド(ifosfamide)、メルファラン(melphalan)、クロラムブシル(chlorambucil)、ビスルファン(bisulfan)、ニトロソウレア(nitrosourea)、ダクチノマイシン(dactinomycin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、ブレオマイシン(bleomycin)、プリコマイシン(plicomycin)、マイトマイシン(mitomycin)、エトポシド(etoposide)、タモキシフェン(tamoxifen)、タキソール(taxol)、トランスプラチナ(transplatinum)、5-フルオロウラシル(5-fluorouracil)、ビンクリスチン(vincristin)、ビンブラスチン(vinblastin)、及びメトトレキサート(methotrexate)からなる群から選択された何れか1つ以上であるが、これらに制限されるものではない。
【0057】
また、本発明の抗GFRAL抗体またはその抗原結合断片は、抗ガン補助剤として使われることもある。本発明において、抗ガン補助剤とは、抗ガン剤の投与時に、誘発される副作用を改善することができることを意味する。すなわち、本発明の抗ガン補助剤を抗ガン剤と併用して投与することにより、抗ガン剤によって誘発される多様な副作用の発生を予防することができる。本発明の前記補助剤は、抗ガン剤と同時に(simutaneous)、別途に(separate)、または順次(sequential)に投与される。前記本発明による抗ガン補助剤の投与順序、すなわち、抗ガン剤と抗ガン補助剤との中から如何なるものを如何なる時点で、同時に、個別的または順次に投与するか否かは医者や専門家によって決定される。このような投与順序は、多くの因子によって変わりうる。
【0058】
以下、本発明の理解を助けるために、実施例を挙げて詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明の内容を例示するものであり、本発明の範囲が、下記の実施例に限定されるものではない。本発明の実施例は、当業者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0059】
<実施例1>細胞培養
【0060】
HEK-293FT細胞(ヒト胚芽腎臓)は、10%ウシ胎児血清、1%ペニシリン及びストレプトマイシンが添加されたDMEM培地(Hyclone)で培養し、Expi-293F細胞(ヒト胚芽腎臟)は、Expi-293 expression medium培地(Gibco)で培養した。
【0061】
<実施例2>ファージディスプレイ方法
【0062】
Dynabeads M-270エポキシビーズ(#14301、Invitrogen)に組換えヒトGFRAL(#9647-GR、R&D systems)または組換えマウスGFRAL(#9844-GR、R&D systems)を結合させた後、ヒト患者由来のscFvライブラリーを利用したファージディスプレイを進めた。ヒトGFRALとマウスGFRALとについて交互にそれぞれ2回のパンニングを進めた。ファージを常温で一般ビーズに1時間反応させた後、結合していない上澄み液をGFRAL結合ビーズに2時間反応させ、3~8回洗浄後、GFRALと結合したファージを組換えヒトGDF15リガンド(#8146-GD、R&D systems)または酸性バッファ(0.1Mグリシン-塩化水素、pH2.2)を用いて溶出した。
【0063】
<実施例3>多重クローンファージ酵素結合免疫吸着分析法
【0064】
96 well half area plate(#3690、Corning)を組換えヒトGFRALまたは組換えマウスGFRAL、またはウシ血清アルブミンと4℃で一晩中反応させてコーティングした後、PBSを用いて1回洗浄した。以後、5%脱脂牛乳が含まれたPBSで37℃で1時間ブロッキングさせた。以後、ラウンド別のファージライブラリーと37℃で2時間反応させた後、PBSを用いて5回洗浄し、HRPが接合された抗ファージ抗体(#11973-MM05T-H、Sino Biological)と37℃で1時間反応させた後、PBSで5回洗浄した。最後に、TMBを用いて常温で10分間発色させた後、停止液を用いて発色を停止させた。以後、マイクロプレートリーダー機を用いて450nmの波長で吸光度を測定した。
【0065】
<実施例4>単クローンファージ酵素結合免疫吸着分析法
【0066】
単クローンファージの獲得のために、96 well deep well plate(#90060、Bioneer)の各ウェルにカルベニシリン(#C1389、Sigma)が50ug/mlの濃度で含まれたSBメディアを分注し、ファージライブラリーを含んだコロニーを接種させて、37℃、250rpmの条件で3時間培養した。以後、M13K07ヘルパーファージを1010 phage/mlの濃度で処理し、同じ条件で2時間さらに培養した。以後、カナマイシン(#K4000、Sigma)を70ug/mlの濃度で処理し、一晩中培養した。ファージ酵素結合免疫吸着分析法の進行時に、ブロッキング後、培養液のうち一部を処理し、残りの過程は、多重クローンファージ酵素結合免疫吸着分析法と同様に進めた。
【0067】
<実施例5>高性能液体クロマトグラフィーを利用した精製方法
【0068】
GFRALに結合力を有する単クローンのscFv配列は、pFUSEベクター(#pfuse hg1fc2、InvivoGen)に基づいて構成された発現ベクターでsfiI制限酵素を用いて移された後、Expi293F細胞内に形質注入された。形質注入は、ExpiFectamine 293 Transfection Kit(#A14524、Gibco)を使用して進めた。Expi293F細胞を500mlのフラスコに約2.5×106細胞/mlの密度で培養し、Opti-MEM(#31985-070、Gibco)培地下にExpiFectamine 293 Reagent、scFvを発現するベクターを混合して処理した後、37℃、125rpmの条件で一晩中培養した。翌日ExpiFectamine 293 Transfection Enhancer 1と2とを処理した後、3日間さらに培養して、scfv-Fc形態の抗体を生成させた。次いで、上澄み液をAKTA prime plus(GE healthcare)錠剤機とIgG分離カラム(#17-0404-01、GE healthcare)とを用いて錠剤した。20mMリン酸ナトリウムバッファ(pH7.4)でカラムに抗体を結合させた後、0.1Mグリシン-塩化水素バッファ(pH2.7)で溶出する過程を進めた。次いで、Amicon Ultra-4-30K(#UFC803024、Millipore)で濃縮し、Spin-X filter(#8160、Corning)で滅菌した。内毒素は、内毒素除去カラム(#88274、Thermo Fisher Scientific)を用いて除去し、濃度は、BCAキット(#23227、Thermo Fisher Scientific)を用いて測定した。
【0069】
<実施例6>抗体酵素結合免疫吸着分析法
【0070】
96 well half area plateを組換えヒトGFRALまたは組換えマウスGFRAL、またはウシ血清アルブミンと4℃で一晩中反応させてコーティングした後、1次抗体でクローンscFv-Fc抗体を、2次抗体でHRP接合された抗ヒトIgG抗体(#Ab97225、Abcam)を使用して酵素結合免疫吸着分析法を進めた。
【0071】
<実施例7>HEK-293FT細胞への形質注入
【0072】
HEK-293FT細胞を6ウェルプレートに約1×106細胞/ウェルの密度で接種し、Opti-MEM培地下にLipofectamine 2000 Reagent(#11668-027、Thermo Fisher Scientific)、GFRALを発現するベクター(#OHu31183D、GenScript)、RETを発現するベクター(#HG11997-CF、Sino Biological)を1:1の比率で混合して処理した後、37℃で一晩中培養した。翌日上澄み液を除去し、10%ウシ胎児血清が添加された新鮮な培地に取り替えた。以後、ERK信号伝達過程にルシフェラーゼを発現させるベクターを注入した後、37℃で一晩中培養及び翌日上澄み液を除去し、10%ウシ胎児血清が添加された新鮮な培地に取り替える過程をさらに進めた。
【0073】
<実施例8>免疫細胞化学法
【0074】
形質注入されたHEK-293FT細胞を4ウェル細胞培養スライド(#154526、Thermo Fisher Scientific)に約5×104細胞/ウェルの密度で接種し、4%パラホルムアルデヒドを常温で10分処理して固定した。次いで、1% BSA、5%ヤギ血清が含まれた0.1% PBST(Tween 20)を用いて1時間ブロッキングした。次いで、1次抗体で精製したクローン抗体または商業用GFRAL抗体(#Ab107719、Abcam)と1時間反応させた。PBSTで3~5回洗浄後、FITCが結合された抗ヒトIgG抗体(#97224、Abcam)または抗ウサギIgG抗体(#A11008、Invitrogen)と1時間反応させた。PBSTで3~5回洗浄後、DAPIが含まれたPBSを15分処理した。マウンティング進行後、顕微鏡で蛍光を観察した。
【0075】
<実施例9>表面プラスモン共鳴分析法
【0076】
ヒト組換えGFRALに対するクローン抗体の結合程度の測定のために、Biacore SPR systemを使用した。ヒト組換えGFRALをリガンドにして20mM酢酸ナトリウムに溶解後、pH6.0条件でアミン結合を用いてPEGチップに固定させた。次いで、結合アッセイは、pH7.4条件でPBSに溶解されたクローン抗体を分析物として進め、30μl/mlの流速で注入された。結合時間は、4分、解離時間は、6分で進め、センサー表面は、5~10mM水酸化ナトリウムを注入して再生した。結合曲線と結合定数Ka及び解離定数Kd、そして、平衡定数KD値は、Scrubber2(Biologic Software)ソフトウェアを使用して計算した。
【0077】
実験の結果、
図9のような結合曲線を示し、結合定数K
a値は、5.556×10
-5/M・s、解離定数Kd値は、1.083×10
-3/s、そして、平衡定数K
a値は、K
D=K
d/K
aの計算方式を通じて1.95nMに計算された。
【0078】
<実施例10>抗体によるルシフェラーゼの発現分析
【0079】
形質注入されたHEK-293FT細胞を96ウェルプレートに約7×104細胞/ウェルの密度で接種し、2時間血清欠乏状態に保持し、以後、2時間クローン抗体を処理して反応させた。次いで、5分間ヒト組換えGDF15を処理し、ルシフェラーゼ酵素の基質が含まれた試薬(#E2610、Promega)を使用して発光程度を測定した。
【0080】
実験の結果、
図10のように、GDF15のみを処理した時、発光値が増加し、クローンA11及びD12を前処理した実験群で処理濃度に依存的に減少することを確認した。
【0081】
<実施例11>抗体によるpERKの発現分析
【0082】
形質注入されたHEK-293FT細胞を24ウェルプレートに約2×105細胞/ウェルの密度で接種し、2時間血清欠乏状態に保持し、以後、2時間クローン抗体を処理して反応させた。次いで、5分間ヒト組換えGDF15を処理し、PBSで洗浄後、細胞を収穫してウェスタンブロットを進めた。細胞質または細胞膜タンパク質をSDS-PAGEで分離し、ニトロセルロース膜に移動させた。以後、それぞれの一次抗体と培養し、HRPが接合された二次抗体で培養した。ECL検出試薬(#34095、Thermo Fisher Scientific、#RPN2209、GE Healthcare)を使用してイメージを視覚化し、ECLハイパーフィルム(AGFA、Morstel)を使用して定量化した。フィルム内のイメージは、ImageJプログラムを使用して数値化し、AAT BioquestのIC50 calculatorを通じてグラフで示した。
【0083】
実験の結果、
図11のように、GDF15のみを処理した実験群でpERKの発現量が増加し、クローンA11を前処理した実験群でpERK発現量が処理濃度に依存的に減少することを確認し、IC50値は、4.9μg/mlに測定された。フィルム内のイメージは、定量化して
図12のように示した。
【0084】
<実施例12>抗体によるシスプラチンの副作用の緩和分析
【0085】
8週齢のマウスにシスプラチンを10mg/kgの濃度で注入し、効能がない対照群抗体あるいはクローンA11を10mg/kg注入した後、シスプラチンによって誘導される副作用が緩和されるかを確認した。薬物は、一週間に2回の間隔で注入した。
【0086】
実験の結果、
図13のように、シスプラチンによって誘導される体重減少効果がA11によって復旧されることを確認し、
図14のように、食欲減少効果も緩和させるということを確認した。
図15から分かるように、GDF15の発現程度は、対照群グループとA11処理グループとで差がなかった。具体的な脂肪及び筋肉の重量変化は、
図16と
図17とのように定量して示した。
図18を通じてA11の効果が、マウス脳のGFRALの作用を抑制することを通じて表われるということを確認した。
【0087】
<実施例13>免疫組織化学法
【0088】
実施例12で実験を進めたマウスを灌流固定して、固定させた脳組織を30umの厚さに冷凍切片した。切片した組織は、1% BSA、5%ヤギ血清が含まれた0.1% PBST(Tween 20)を用いて1時間ブロッキングした後、1次抗体で商業用GFRAL抗体(#Ab107719、Abcam)、c-Fos抗体(#sc-166940、Santa cruz biotechnology)と1時間反応させた。PBSTで5回洗浄後、Alexa fluor 488が結合された抗マウスIgG抗体(#A11001、Invitrogen)、Alexa fluor 594が結合された抗ウサギIgG抗体(#A11008、Invitrogen)と1時間反応させた。PBSTで5回洗浄後、DAPIが含まれたPBSを15分処理した。マウンティング進行後、顕微鏡で蛍光を観察した。
【0089】
<実施例14>同種移植マウス腫瘍モデルで抗体によるシスプラチンの副作用の緩和分析
【0090】
8週齢のマウスにB16F10-Luc細胞を約1×106細胞測量して注入した後、癌サイズが一定サイズ以上育った後、シスプラチンを10mg/kgの濃度で注入し、効能がない対照群抗体あるいはクローンA11を10mg/kg注入して抗ガン治療モデルでシスプラチンによって誘導される副作用が緩和されるかを確認した。薬物は、一週間に2回の間隔で注入した。
【0091】
実験の結果、
図19のように、抗ガン治療状況でシスプラチンによって誘導される体重減少効果が、A11によって復旧されることを確認し、
図20のように、食欲減少効果も緩和させるということを確認した。
図21から分かるように、GDF15の発現程度は、対照群グループとA11処理グループとで差がなかった。具体的な脂肪及び筋肉の重量変化は、
図22と
図23とのように定量して示した。
【0092】
以上、本発明の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者にとって、このような具体的な技術は、単に望ましい具現例に過ぎず、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲とその等価物とによって定義される。
【配列表】