(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】静電モータ
(51)【国際特許分類】
H02N 1/00 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
H02N1/00
(21)【出願番号】P 2023115057
(22)【出願日】2023-07-13
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】595153125
【氏名又は名称】鈴木 数馬
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 数馬
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-069402(JP,A)
【文献】特開2016-046837(JP,A)
【文献】特開2019-004549(JP,A)
【文献】実公昭47-035107(JP,Y1)
【文献】特開2007-202231(JP,A)
【文献】特開2015-012791(JP,A)
【文献】特開2023-059271(JP,A)
【文献】特開2012-200029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動子と、
前記可動子と組み合わされる固定子と、
正電位又は負電位の電圧を印加可能に構成される一方側出力端子、及び前記一方側出力端子とは逆電位の電圧を印加可能に構成される他方側出力端子を有する高電圧印加装置と
を備える静電モータであって、
前記可動子が、
回転軸線を中心に回転可能な回転体と、
前記回転体から回転軸線に沿って突出するブラシシャフトと、
前記ブラシシャフトの外周面にて前記回転体の回転方向に互いに間隔を空けて配置される複数の可動側ブラシ電極と、
前記回転体にて前記回転方向に互いに間隔を空けて配置され、かつそれぞれ前記複数の可動側ブラシ電極と電気的に接続される複数の可動子電極と
を有し、
前記固定子が、
前記複数の可動側ブラシ電極と接触可能に構成され、かつ前記ブラシシャフトと交差する軌道に沿って延びる固定側ブラシ電極と、
前記複数の可動子電極に対して隙間を空けながら対向可能であり、かつ前記固定側ブラシ電極と平行となるように配置される固定子電極と
を有し、
前記隙間は、前記複数の可動子電極と前記固定子電極との間にクーロン力が作用可能となるように定められ、
各可動子電極は、この可動子電極に接続する前記可動側ブラシ電極が前記固定側ブラシ電極と接触した状態では、前記固定子電極に対して前記回転方向にて離れるように配置され、
前記高電圧印加装置の一方側出力端子が前記固定側ブラシ電極に接続され、
前記高電圧印加装置の他方側出力端子が前記固定子電極に接続され、
前記高電圧印加装置が、前記可動子を前記軌道に沿って転動可能とすべく前記クーロン力を作用させるように高電圧を印加可能に構成されている、静電モータ。
【請求項2】
前記軌道が、直線部分を含むように延びている、請求項1に記載の静電モータ。
【請求項3】
前記軌道が、周回軸線を中心として円形に周回するように延びており、
前記可動子が、前記ブラシシャフトを回転可能とするように前記ブラシシャフトの先端部を取り付けた軸支機構を有し、
前記軸支機構は、前記回転体を前記周回軸線周りの前記円形の軌道に沿って周回可能とするように前記回転体を軸支している、請求項1に記載の静電モータ。
【請求項4】
可動子と、
前記可動子と組み合わされる固定子と、
正電位又は負電位の電圧を印加可能に構成される一方側出力端子、及び前記一方側出力端子とは逆電位の電圧を印加可能に構成される他方側出力端子を有する高電圧印加装置と
を備える静電モータであって、
前記可動子が、
回転軸線を中心に回転可能な回転体と、
前記回転体から回転軸線に沿って突出し、かつ前記回転体と一緒に回転可能となるように軸支されるブラシシャフトと、
前記ブラシシャフトの外周面にて前記回転体の回転方向に互いに間隔を空けて配置される複数の可動側ブラシ電極と、
前記回転体にて前記回転方向に互いに間隔を空けて配置され、かつそれぞれ前記複数の可動側ブラシ電極と電気的に接続される複数の可動子電極と
を有し、
前記固定子が、
前記複数の可動側ブラシ電極と接触可能に構成される固定側ブラシ電極と、
前記複数の可動子電極に対して隙間を空けながら対向可能であり、かつ前記回転体の周囲に配置される固定子電極と
を有し、
前記隙間は、前記複数の可動子電極と前記固定子電極との間にクーロン力が作用可能となるように定められ、
各可動子電極は、この可動子電極に接続する前記可動側ブラシ電極が前記固定側ブラシ電極と接触した状態では、前記固定子電極に対して前記回転方向にて離れるように配置され、
前記高電圧印加装置の一方側出力端子が前記固定側ブラシ電極に接続され、
前記高電圧印加装置の他方側出力端子が前記固定子電極に接続され、
前記高電圧印加装置が、前記可動子を定位置で回転可能とすべく前記クーロン力を作用させるように高電圧を印加可能に構成されている、静電モータ。
【請求項5】
可動子と、
前記可動子と組み合わされる固定子と、
正電位又は負電位の電圧を印加可能に構成される一方側出力端子、及び前記一方側出力端子とは逆電位の電圧を印加可能に構成される他方側出力端子を有する高電圧印加装置と
を備える静電モータであって、
前記可動子が、
細長形状に形成された壁体と、
前記壁体の底部にて前記壁体の長手方向に互いに間隔を空けて配置される複数の可動側ブラシ電極と、
前記壁体の側部にて前記壁体の長手方向に互いに間隔を空けて配置され、かつそれぞれ前記複数の可動側ブラシ電極と電気的に接続される複数の可動子電極と
を有し、
前記固定子が、
前記複数の可動側ブラシ電極と接触可能であり、かつ所定の軌道に沿って互いに間隔を空けて配置される複数の固定側ブラシ電極と、
前記複数の可動子電極に対して隙間を空けながら対向可能であり、かつ前記軌道に沿って互いに間隔を空けて配置される複数の固定子電極と
を有し、
前記隙間は、前記複数の可動子電極と前記複数の固定子電極との間にクーロン力が作用可能となるように定められ、
前記複数の固定側ブラシ電極と前記複数の固定子電極とが、前記軌道に沿って前記複数の固定側ブラシ電極の1つと前記複数の固定子電極の1つとを交互に並べるように配置され、
各可動子電極は、この可動子電極に接続する前記可動側ブラシ電極が前記複数の固定側ブラシ電極の1つと接触した状態では、この可動子電極に隣接する前記可動子電極が、前記複数の固定側ブラシ電極の1つとこれと隣接する固定側ブラシ電極との間で前記複数の固定子電極の1つと少なくとも部分的に対向するように配置され、
前記高電圧印加装置の一方側出力端子が前記複数の固定側ブラシ電極に接続され、
前記高電圧印加装置の他方側出力端子が前記複数の固定子電極に接続され、
前記高電圧印加装置は、前記可動子を前記軌道に沿ってリニア移動可能とすべく前記クーロン力を作用させるように高電圧を印加可能に構成されている、静電モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クーロン力を利用して可動子を固定子に対して動かすことによって駆動する静電モータに関する。
【背景技術】
【0002】
静電モータは、可動子と、この可動子と組み合わされる固定子とを有していて、可動子を固定子に対して動かすように駆動される。そして、静電モータの駆動は、可動子と固定子との間にクーロン力を発生させることによってもたらされ、クーロン力は、高電圧印加により生じたコロナ放電から得られる電荷間の作用からもたらされる。
【0003】
このような静電モータの一例としては、特許文献1に記載されるような静電モータが挙げられる。特許文献1の静電モータは、一方及び他方の出力端子を有する高電圧発生装置と、中心軸線回りに回転可能に支持されたロータ(可動子)と、このロータに配置された1つ以上のロータ電極と、ステータ(固定子)側の構成として、電荷注入電極及びステータ電極から成る1組以上の組合せとを備えている。そして、このような静電モータにおいて、電荷注入電極の先端及びステータ電極が、ロータの移動途中でロータ電極と対面できる位置に配置され、ロータ電極が電荷注入電極の先端と対面した状態でロータ電極及び電荷注入電極の先端間に第1の隙間が設けられ、ロータ電極がステータ電極と対面した状態でロータ電極及びステータ電極間に第2の隙間が設けられ、第1の隙間が、コロナ放電を生じさせることができるサイズになっており、かつ第2の隙間よりも小さくなっており、高電圧発生装置の一方の出力端子が、プラス電荷又はマイナス電荷を電荷注入電極に注入可能に構成され、高電圧発生装置の他方の出力端子が、一方の出力端子とは対極の電荷をステータ電極に注入可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記静電モータの一例においては、ロータ電極及び電荷注入電極の先端間の第1の隙間をコロナ放電可能とするように維持する必要がある。しかしながら、このような隙間を維持するように静電モータを製造することは難しく、このことは、製造コストの増加にもつながり得る。そのため、上記静電モータの一例においては、製造効率という点、コスト低減という点で改善の余地がある。
【0006】
また、コロナ放電は、絶縁破壊等の弊害をもたらすことが懸念される。そのため、上記静電モータの一例においては、耐久性という点で改善の余地がある。さらに、上記静電モータの一例においては、コロナ放電時に生じる音、いわゆる、コロナ放電音に不快感を示す者も多い。そのため、上記静電モータの一例においては、このようなコロナ放電音を含めた騒音の低減、言い換えれば、静音化も望まれている。
【0007】
このような実情を鑑みると、静電モータにおいては、製造効率を改善すること、コスト低減を図ること、耐久性を改善すること、静音化を図ることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第1態様に係る静電モータは、可動子と、前記可動子と組み合わされる固定子と、正電位又は負電位の電圧を印加可能に構成される一方側出力端子、及び前記一方側出力端子とは逆電位の電圧を印加可能に構成される他方側出力端子を有する高電圧印加装置とを備える静電モータであって、前記可動子が、回転軸線を中心に回転可能な回転体と、前記回転体から回転軸線に沿って突出するブラシシャフトと、前記ブラシシャフトの外周面にて前記回転体の回転方向に互いに間隔を空けて配置される複数の可動側ブラシ電極と、前記回転体にて前記回転方向に互いに間隔を空けて配置され、かつそれぞれ前記複数の可動側ブラシ電極と電気的に接続される複数の可動子電極とを有し、前記固定子が、前記複数の可動側ブラシ電極と接触可能に構成され、かつ前記ブラシシャフトと交差する軌道に沿って延びる固定側ブラシ電極と、前記複数の可動子電極に対して隙間を空けながら対向可能であり、かつ前記固定側ブラシ電極と平行となるように配置される固定子電極とを有し、前記隙間は、前記複数の可動子電極と前記固定子電極との間にクーロン力が作用可能となるように定められ、各可動子電極は、この可動子電極に接続する前記可動側ブラシ電極が前記固定側ブラシ電極と接触した状態では、前記固定子電極に対して前記回転方向にて離れるように配置され、前記高電圧印加装置の一方側出力端子が前記固定側ブラシ電極に接続され、前記高電圧印加装置の他方側出力端子が前記固定子電極に接続され、前記高電圧印加装置が、前記可動子を前記軌道に沿って転動可能とすべく前記クーロン力を作用させるように高電圧を印加可能に構成されている。
【0009】
上記課題を解決するために、第2態様に係る静電モータは、可動子と、前記可動子と組み合わされる固定子と、正電位又は負電位の電圧を印加可能に構成される一方側出力端子、及び前記一方側出力端子とは逆電位の電圧を印加可能に構成される他方側出力端子を有する高電圧印加装置とを備える静電モータであって、前記可動子が、回転軸線を中心に回転可能な回転体と、前記回転体から回転軸線に沿って突出し、かつ前記回転体と一緒に回転可能となるように軸支されるブラシシャフトと、前記ブラシシャフトの外周面にて前記回転体の回転方向に互いに間隔を空けて配置される複数の可動側ブラシ電極と、前記回転体にて前記回転方向に互いに間隔を空けて配置され、かつそれぞれ前記複数の可動側ブラシ電極と電気的に接続される複数の可動子電極とを有し、前記固定子が、前記複数の可動側ブラシ電極と接触可能に構成される固定側ブラシ電極と、前記複数の可動子電極に対して隙間を空けながら対向可能であり、かつ前記回転体の周囲に配置される固定子電極とを有し、前記隙間は、前記複数の可動子電極と前記固定子電極との間にクーロン力が作用可能となるように定められ、各可動子電極は、この可動子電極に接続する前記可動側ブラシ電極が前記固定側ブラシ電極と接触した状態では、前記固定子電極に対して前記回転方向にて離れるように配置され、前記高電圧印加装置の一方側出力端子が前記固定側ブラシ電極に接続され、前記高電圧印加装置の他方側出力端子が前記固定子電極に接続され、前記高電圧印加装置が、前記可動子を定位置で回転可能とすべく前記クーロン力を作用させるように高電圧を印加可能に構成されている。
【0010】
上記課題を解決するために、第3態様に係る静電モータは、可動子と、前記可動子と組み合わされる固定子と、正電位又は負電位の電圧を印加可能に構成される一方側出力端子、及び前記一方側出力端子とは逆電位の電圧を印加可能に構成される他方側出力端子を有する高電圧印加装置とを備える静電モータであって、前記可動子が、細長形状に形成された壁体と、前記壁体の底部にて前記壁体の長手方向に互いに間隔を空けて配置される複数の可動側ブラシ電極と、前記壁体の側部にて前記壁体の長手方向に互いに間隔を空けて配置され、かつそれぞれ前記複数の可動側ブラシ電極と電気的に接続される複数の可動子電極とを有し、前記固定子が、前記複数の可動側ブラシ電極と接触可能であり、かつ所定の軌道に沿って互いに間隔を空けて配置される複数の固定側ブラシ電極と、前記複数の可動子電極に対して隙間を空けながら対向可能であり、かつ前記軌道に沿って互いに間隔を空けて配置される複数の固定子電極とを有し、前記隙間は、前記複数の可動子電極と前記複数の固定子電極との間にクーロン力が作用可能となるように定められ、前記複数の固定側ブラシ電極と前記複数の固定子電極とが、前記軌道に沿って前記複数の固定側ブラシ電極の1つと前記複数の固定子電極の1つとを交互に並べるように配置され、各可動子電極は、この可動子電極に接続する前記可動側ブラシ電極が前記複数の固定側ブラシ電極の1つと接触した状態では、この可動子電極に隣接する前記可動子電極が、前記複数の固定側ブラシ電極の1つとこれと隣接する固定側ブラシ電極との間で前記複数の固定子電極の1つと少なくとも部分的に対向するように配置され、前記高電圧印加装置の一方側出力端子が前記複数の固定側ブラシ電極に接続され、前記高電圧印加装置の他方側出力端子が前記複数の固定子電極に接続され、前記高電圧印加装置は、前記可動子を前記軌道に沿ってリニア移動可能とすべく前記クーロン力を作用させるように高電圧を印加可能に構成されている。
【発明の効果】
【0011】
第1~第3態様に係る静電モータによれば、製造効率を改善することができ、コスト低減を図ることができ、耐久性を改善することができ、静音化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る静電モータを模式的に示す正面図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る静電モータを模式的に示す平面図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態に係る静電モータを模式的に示す正面図である。
【
図9】
図9は、第4実施形態に係る静電モータを模式的に示す側面図である。
【
図10】
図10は、第4実施形態に係る静電モータを模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1~第4実施形態に係る静電モータについて以下に説明する。先ず、各実施形態に係る静電モータは、可動子と、この可動子と組み合わされる固定子とを有する。このような静電モータは、クーロン力を用いて可動子を固定子に対して動かすことによって駆動する。クーロン力は、高電圧印加により得られる電荷間の作用からもたらされる。各実施形態に係る静電モータは、ブラシ付き静電モータと称することもできる。
【0014】
各実施形態に係る静電モータはまた、上記高電圧印加を可能とする高電圧印加装置を有する。高電圧印加装置は、一方側出力端子と他方側出力端子とを有する。一方側出力端子は、正電位又は負電位の電圧を印加可能とするように構成される。他方側出力端子は、一方側出力端子とは逆電位の電圧を印加可能とするように構成される。
【0015】
「第1実施形態」
第1実施形態に係る静電モータについて以下に説明する。
【0016】
「静電モータの概略」
図1~3を参照すると、本実施形態に係る静電モータは概略的には以下のように構成される。静電モータは、上述のように可動子10及び固定子20を有する。なお、
図2及び3においては、固定子20は仮想線(二点鎖線)により示されている。本実施形態に係る静電モータにおいては、可動子10はロータと呼ぶこともでき、かつ固定子20はステータと呼ぶこともできる。この呼称は、後述する第2及び第3実施形態に係る静電モータにおいても同様である。静電モータはまた、上述のように一方側出力端子q1及び他方側出力端子q2を有する高電圧印加装置Pを有する。
【0017】
可動子10は、回転軸線10aを中心に回転可能な回転体11を有する。可動子10は、回転体11から回転軸線10aに沿って突出するブラシシャフト12を有する。ブラシシャフト12は回転体11と一緒になって回転可能である。
【0018】
可動子10は、ブラシシャフト12の外周面12aにて回転体11の回転方向に互いに間隔を空けて配置される複数の可動側ブラシ電極13を有する。可動子10はまた、回転体11にて回転方向に互いに間隔を空けて配置される複数の可動子電極14を有する。複数の可動子電極14は、それぞれ複数の可動側ブラシ電極13と電気的に接続される。
【0019】
固定子20は、複数の可動側ブラシ電極13と接触可能に構成される固定側ブラシ電極21を有する。固定側ブラシ電極21は、ブラシシャフト12と交差する軌道R1に沿って延びている。固定子20は、複数の可動子電極14に対して隙間G1を空けながら対向可能に構成される固定子電極22を有する。固定子電極22は、固定側ブラシ電極21と略平行となるように配置される。
【0020】
上記隙間G1は、複数の可動子電極14と固定子電極22との間にクーロン力が作用可能となるように定められる。さらに、各可動子電極14は、この可動子電極14に接続する可動側ブラシ電極13が固定側ブラシ電極21と接触した状態では、固定子電極22に対して回転方向にて離れるように配置されている。
【0021】
さらに、高電圧印加装置Pの一方側出力端子q1は、固定側ブラシ電極21に接続される。高電圧印加装置Pの他方側出力端子q2は固定子電極22に接続される。高電圧印加装置Pは、可動子10を軌道R1に沿って転動可能とすべくクーロン力を作用させるように高電圧を印加可能に構成されている。
【0022】
「静電モータの詳細」
図1~3を参照すると、本実施形態に係る静電モータは詳細には以下のように構成することができる。静電モータの固定子20の軌道R1は、直線部分を含むように延びることができる。この場合、可動子10は、軌道R1の直線部分では直進しながら転動することができる。特に図示はしないが、固定子の軌道は、直線部分に加えて曲線部分を含むように延びることもできる。この場合、可動子は、軌道の曲線部分では曲がりながら転動することができる。
【0023】
「可動子の詳細」
図1~3を参照すると、可動子10は詳細には以下のように構成することができる。可動子10は、回転体11から回転軸線10aに沿ってブラシシャフト12とは反対側に突出する補助シャフト15を有する。補助シャフト15もまた回転体11と一緒になって回転可能である。
【0024】
可動子10は、それぞれリング形状を成すように補助シャフト15の外周面15aから突出する2つのガイドリング16を有する。2つのガイドリング16は、回転軸線方向に間隔を空けて配置される。各ガイドリング16の外周形状は、回転体11の外周形状よりも小さくなっている。
【0025】
回転体11は、ブラシシャフト12の突出側に位置する一方側面11aを有する。回転体11は、その回転方向に沿った外周面11bを有する。回転体11は、補助シャフト15の突出側に位置する他方側面11cを有する。回転体11の外周面11bは、その一方及び他方側面11a,11cを連結するように延びる。
【0026】
回転体11の外周面11bは、回転方向に沿って略円形状に形成される。回転体11の一方及び他方側面11a,11cのそれぞれは、回転軸線10aに対して実質的に垂直な平面とすることができる。特に、回転体11の一方及び他方側面11a,11cのそれぞれは、それに可動子電極14が配置される場合には、回転軸線10aに対して実質的に垂直な平面であると好ましい。
【0027】
ブラシシャフト12及び補助シャフト15のそれぞれは、略円形状の断面を有するように回転軸線10aに沿って延びる。ブラシシャフト12及び補助シャフト15の外周面12a,15aのそれぞれは、回転方向に沿って略円形状に形成される。ブラシシャフト12及び補助シャフト15の外周形状は、回転体11の外周形状よりも小さくなっている。
【0028】
可動側ブラシ電極13の数と可動子電極14の数とは同じになっている。可動側ブラシ電極13の数と可動子電極14の数とは、可動子10を軌道R1に沿って転動可能とすべくクーロン力を作用させるように定められる。
図1~3においては、一例として、8個の可動側ブラシ電極13と8個の可動子電極14とを有する可動子10が示されている。しかしながら、可動側ブラシ電極の数と可動子電極の数とは、これに限定されてない。
【0029】
複数の可動側ブラシ電極13の間隔と、複数の可動子電極14の間隔とは、可動子10を軌道R1に沿って転動可能とすべくクーロン力を作用させるように定められる。複数の可動側ブラシ電極13は、回転方向にて実質的に等間隔に配置することができる。複数の可動子電極14もまた、回転方向にて実質的に等間隔に配置することができる。
【0030】
複数の可動側ブラシ電極13における回転方向の長さと、複数の可動子電極14における回転方向の長さとは、可動子10を軌道R1に沿って転動可能とすべくクーロン力を作用させるように定められる。複数の可動側ブラシ電極13における回転方向の長さは、実質的に等しくすることができる。複数の可動子電極14における回転方向の長さもまた、実質的に等しくすることができる。
【0031】
各可動側ブラシ電極13は、回転軸線10aに沿って略直線状に延びる。複数の可動側ブラシ電極13は、その外周面13aがブラシシャフト12の外周面12aと実質的に同一面を成すように配置されると好ましい。各可動子電極14は、回転体11の一方側面11a、外周面11b及び他方側面11cに跨って配置されている。しかしながら、各可動子電極は、回転体の一方側面及び外周面のみに跨って配置することもできる。各可動子電極は、回転体の一方側面のみに配置することもできる。
【0032】
「固定子の詳細」
図1~3を参照すると、固定子20は詳細には以下のように構成することができる。固定子20はまた、可動子10の補助シャフト15を支持可能に構成される補助レール23を有する。補助レール23もまた軌道R1に沿って延びる。補助シャフト15は、補助レール23の上端を転動することができる。なお、ブラシシャフト12は、固定側ブラシ電極21の上端を転動することができる。
【0033】
固定子20は、上記回転軸線方向にて可動子10の2つのガイドリング16間に位置するガイドレール24を有する。ガイドレール24もまた軌道R1に沿って延びる。2つのガイドリング16は、ガイドレール24に沿って移動可能である。ガイドレール24が、可動子10の2つのガイドリング16のいずれかと当接することによって、可動子10の回転軸線方向のズレが防がれることとなる。
【0034】
固定子電極22は、可動子10の回転体11の一方側面11a、外周面11b及び他方側面11cにそれぞれ対向する一方側面22a、底面22b及び他方側面22cを有する。特に、複数の可動子電極14が回転体11の一方側面11a、外周面11b及び他方側面11cに跨って配置される場合、固定子電極22は、このような一方側面22a、底面22b及び他方側面22cを有するように構成されるとよい。
【0035】
しかしながら、複数の可動子電極が回転体の一方側面及び外周面のみに跨って配置される場合、固定子電極は、一方側面及び底面を有するように構成することができる。複数の可動子電極が回転体の一方側面のみに配置される場合、固定子電極は、一方側面のみを有するように構成することができる。
【0036】
固定子電極22は、上記回転軸線方向に相当する静電モータの幅方向にて固定側ブラシ電極21と補助レール23との間に位置する。ガイドレール24は、幅方向にて固定子電極22と補助レール23との間に位置する。
【0037】
固定側ブラシ電極21の上端の高さ位置は、補助レール23の上端の高さ位置と実質的に等しくなっている。固定子電極22の上端の高さ位置は、固定側ブラシ電極21の上端の高さ位置よりも低くなっている。ガイドレール24の上端の高さ位置は、固定側ブラシ電極21の上端の高さ位置及び補助レール23の上端の高さ位置よりも低くすることができる。
【0038】
「可動子及び固定子の物性」
可動子10及び固定子20は、次のような物性を有するように構成することができる。可動子10の回転体11及びブラシシャフト12は、絶縁性を有するように構成される。その一方で、可動子10の可動側ブラシ電極13及び可動子電極14は導電性を有するように構成される。固定子20の固定側ブラシ電極21及び固定子電極22もまた導電性を有するように構成される。
【0039】
例えば、可動側ブラシ電極13、可動子電極14、固定側ブラシ電極21及び固定子電極22は、透明電極から構成することができる。この場合、これらの電極は、蒸着により形成することができる。例えば、このような透明電極は、ITO(酸化インジウムスズ)等から構成することができる。しかしながら、可動側ブラシ電極及び可動子電極の構成要素は、透明電極に限定されない。例えば、可動側ブラシ電極、可動子電極、固定側ブラシ電極及び固定子電極は、金属を用いて構成することもできる。
【0040】
「高電圧印加装置の詳細」
図1を参照すると、高電圧印加装置Pは詳細には以下のように構成することができる。高電圧印加装置Pは、圧電素子の変形によって高電圧を発生させることができるように構成される。例えば、このような高電圧印加装置Pは、20000V(ボルト)~50000Vの高電圧を発生させることができる。高電圧印加装置Pは、直流電圧を印加するように構成されている。
【0041】
しかしながら、高電圧印加装置は、高電圧を印加可能に構成されていればよく、圧電素子を用いた形態に限定されない。例えば、高電圧印加装置は、一般的な電源を用いて高電圧を発生させるように構成することもできる。
【0042】
「静電モータの動作」
図1~3を参照して、本実施形態に係る静電モータの動作について説明する。ここでは、高電圧印加装置Pの一方側出力端子q1が正電位の電圧を印加し、かつ他方側出力端子q2が負電位の電圧を印加する場合における静電モータの動作を説明する。
【0043】
一方側出力端子q1が正電位の電圧を固定側ブラシ電極21に印加すると、この固定側ブラシ電極21と接触した状態にある可動側ブラシ電極13には正電荷が帯電する。さらに、この可動側ブラシ電極13に接続された可動子電極14にも正電荷が帯電する。
【0044】
正電荷の帯電状態にある可動側ブラシ電極13は、同様に正電荷の帯電状態にある固定側ブラシ電極21と反発し、この反発によってブラシシャフト12及び回転子11を含む可動子10が回転する。その後、正電荷の帯電状態にある可動子電極14は、負電荷の帯電状態にある固定子電極22に引き寄せられるように移動する。
【0045】
これと同時に、他方側出力端子q2が負電荷の電圧を固定子電極22に印加すると、この固定子電極22と対向した状態にある可動子電極14に負電荷が帯電する。さらに、この可動子電極14に接続された可動側ブラシ電極13にも負電荷が帯電する。
【0046】
負電荷の帯電状態にある可動子電極14は、同様に負電荷の帯電状態にある固定子電極22と反発し、この反発によってブラシシャフト12及び回転子11を含む可動子10が回転する。その後、負電荷の帯電状態にある可動側ブラシ電極13は、正電荷の帯電状態にある固定側ブラシ電極21に引き寄せられるように移動する。
【0047】
回転方向に並ぶ複数の可動側ブラシ電極13及び複数の可動子電極14が、このような帯電を順次繰り返して、これによって、可動子10が固定子20に対して、直線部分を含む軌道R1に沿って転動することとなる。
【0048】
以上、本実施形態に係る静電モータの概略によれば、可動子10が、回転軸線10aを中心に回転可能な回転体11と、この回転体11から回転軸線10aに沿って突出するブラシシャフト12と、このブラシシャフト12の外周面12aにて回転体11の回転方向に互いに間隔を空けて配置される複数の可動側ブラシ電極13と、回転体11にて回転方向に互いに間隔を空けて配置され、かつそれぞれ複数の可動側ブラシ電極13と電気的に接続される複数の可動子電極14とを有し、固定子20が、複数の可動側ブラシ電極13と接触可能に構成され、かつブラシシャフト12と交差する軌道R1に沿って延びる固定側ブラシ電極21と、複数の可動子電極14に対して隙間G1を空けながら対向可能であり、かつ固定側ブラシ電極21と平行となるように配置される固定子電極22とを有し、隙間G1は、複数の可動子電極14と固定子電極22との間にクーロン力が作用可能となるように定められ、各可動子電極14は、この可動子電極14に接続する可動側ブラシ電極13が固定側ブラシ電極21と接触した状態では、固定子電極22に対して回転方向にて離れるように配置され、高電圧印加装置Pの一方側出力端子q1が固定側ブラシ電極21に接続され、高電圧印加装置Pの他方側出力端子q2が固定子電極22に接続され、高電圧印加装置Pが、可動子10を軌道R1に沿って転動可能とすべくクーロン力を作用させるように高電圧を印加可能に構成されている。
【0049】
そのため、固定子20に対して可動子10を転動させる方式の静電モータにおいて、複数の可動側ブラシ電極13のいずれかを固定側ブラシ電極21と接触させた状態で、高電圧を、コロナ放電を生じさせずに高電圧印加装置Pの一方側出力端子q1から固定側ブラシ電極21を介して複数の可動側ブラシ電極13に向けて順次安定的に印加することができる。従って、コロナ放電に起因する絶縁破壊及びコロナ放電音の発生を効率的に防ぐことができ、その結果、静電モータの耐久性を改善することができ、静電モータの静音化を図ることができる。
【0050】
また、上記静電モータにおいては、コロナ放電を生じさせるための隙間を維持することが不要となる。従って、このような隙間を管理せずとも静電モータを製造することができ、その結果、静電モータの製造効率を改善することができる。また、隙間の管理を省略できるので、コスト低減を図ることができる。よって、本実施形態に係る静電モータにおいては、製造効率を改善することができ、コスト低減を図ることができ、耐久性を改善することができ、静音化を図ることができる。
【0051】
本実施形態に係る静電モータの詳細によれば、軌道R1が、直線部分を含むように延びている。そのため、可動子10を固定子20に対して直線部分を含む軌道R1に沿って転動させる方式の静電モータであっても、上記のように、製造効率を改善することができ、コスト低減を図ることができ、耐久性を改善することができ、静音化を図ることができる。
【0052】
「第2実施形態」
第2実施形態に係る静電モータについて以下に説明する。
【0053】
「静電モータの概略」
図4~6を参照すると、本実施形態に係る静電モータは概略的には以下のように構成される。最初に、本実施形態に係る静電モータの概略は、第1実施形態と同様である。このような静電モータは、第1実施形態に係る静電モータの概略と同様な可動子30と、固定子40とを有する。なお、
図6においては、固定子40は仮想線(二点鎖線)により示されている。静電モータはまた、第1実施形態と同様の高電圧印加装置Pを有する。高電圧印加装置Pは、概略及び詳細共に第1実施形態と同様である。
【0054】
可動子30は、回転軸線30aを中心として回転可能である。可動子30は、第1実施形態に係る静電モータの概略と同様な回転体31と、ブラシシャフト32と、可動側ブラシ電極33と、可動子電極34とを有する。ブラシシャフト32は外周面32aを有する。固定子40は、第1実施形態に係る静電モータの概略と同様な固定側ブラシ電極41及び固定子電極42を有する。
【0055】
固定側ブラシ電極41は、ブラシシャフト32と交差する軌道R2に沿って延びる。さらに、複数の可動子電極34の少なくとも1つと固定子電極42との間に隙間G2が形成される。
【0056】
「静電モータの詳細」
図4~6を参照すると、本実施形態に係る静電モータは詳細には以下のように構成することができる。本実施形態に係る静電モータにおいて、軌道R2は周回軸線S2を中心として略円形に周回するように延びる。
【0057】
可動子30は、ブラシシャフト32を回転可能とするようにブラシシャフト32の先端部32bを取り付けた軸支機構35を有する。このような軸支機構35は、ブラシシャフト32を回転可能に軸支するためのベアリング(図示せず)を有することができる。軸支機構35は、回転体31を周回軸線S2周りの円形の軌道R2に沿って周回可能とするように回転体31を軸支している。このような軸支機構35は、回転体31を軸支するためのベアリング(図示せず)を有することもできる。
【0058】
「可動子及び固定子の詳細及び物性、並びに静電モータの動作」
図4~6を参照して、可動子30及び固定子40の詳細及び物性、並びに静電モータの動作について以下に説明する。可動子30は詳細には以下のように構成することができる。可動子30は詳細には、上述した補助シャフト及びガイドリングが設けられない点と、可動子電極34が回転体31の一方側面31aに配置され、かつ回転体31の外周面31b及び他方側面31cに配置されない点とを除いて、第1実施形態と同様である。
【0059】
なお、可動子は、回転体、ブラシシャフト、可動側ブラシ電極及び可動子電極を有する複数の回転組立体を有することもできる。この場合、複数の回転組立体は、軌道の周回方向に間隔を空けて配置される。さらに、各回転体のブラシシャフトの先端部は、このブラシシャフトを回転可能とするように軸支機構に取り付けられる。
【0060】
固定子40は詳細には以下のように構成することができる。固定子40は詳細には、上述した補助レール及びガイドレールが設けられていない点と、固定子電極42が一方側面42aのみを有し、かつ上述した底面及び他方側面を有さない点とを除いて、第1実施形態と同様である。
【0061】
なお、可動子電極は、回転体の一方側面及び外周面のみに跨って配置することもできて、この場合、固定子電極は、回転体の一方側面及び外周面にそれぞれ対向する一方側面及び底面を有することができる。可動子電極は、回転体の一方側面、外周面及び他方側面に跨って配置することもできて、この場合、固定子電極は、回転体の一方側面、外周面及び他方側面にそれぞれ対向する一方側面、底面及び他方側面を有することができる。
【0062】
次に、可動子30及び固定子40の物性は第1実施形態と同様である。さらに、静電モータの動作は、可動子30が第1実施形態のような直線部分を含む軌道R1の代わりに上記のように略円形の軌道R2に沿って転動する点を除いて、第1実施形態と同様である。
【0063】
以上、本実施形態に係る静電モータの概略によれば、静電モータは第1実施形態に係る静電モータの概略と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態に係る静電モータの詳細によれば、軌道R2が、周回軸線S2を中心として円形に周回するように延びており、可動子30が、ブラシシャフト32を回転可能とするようにブラシシャフト32の先端部32bを取り付けた軸支機構35を有し、軸支機構35は、回転体31を周回軸線S2周りに円形の軌道R2に沿って周回可能とするように回転体31を軸支している。
【0064】
そのため、可動子30を固定子40に対して円形の軌道R2に沿って転動させる方式の静電モータにおいて、第1実施形態に係る静電モータと同様に、製造効率を改善することができ、コスト低減を図ることができ、耐久性を改善することができ、静音化を図ることができる。
【0065】
「第3実施形態」
第3実施形態に係る静電モータについて以下に説明する。
【0066】
「静電モータの概略」
図7及び8を参照すると、本実施形態に係る静電モータは概略的には以下のように構成される。静電モータは、上述のように可動子50及び固定子60を有する。静電モータはまた、第1実施形態と同様の高電圧印加装置Pを有する。高電圧印加装置Pは、概略及び詳細共に第1実施形態と同様である。
【0067】
可動子50は、回転軸線50aを中心に回転可能な回転体51を有する。可動子50は、回転体51から回転軸線50aに沿って突出するブラシシャフト52を有する。ブラシシャフト52は、回転体51と一緒に回転可能となるように軸支される。
【0068】
可動子50は、ブラシシャフト52の外周面52aにて回転体51の回転方向に互いに間隔を空けて配置される複数の可動側ブラシ電極53を有する。可動子50は、回転体51にて回転方向に互いに間隔を空けて配置される複数の可動子電極54を有する。複数の可動子電極54は、それぞれ複数の可動側ブラシ電極53と電気的に接続される。
【0069】
固定子60は、複数の可動側ブラシ電極53と接触可能に構成される固定側ブラシ電極61を有する。固定子60は、複数の可動子電極54に対して隙間G3を空けながら対向可能に構成される固定子電極62を有する。固定子電極62は、回転体51の周囲に配置される。なお、
図8においては、固定子電極62は仮想線(二点鎖線)により示されている。
【0070】
上記隙間G3は、複数の可動子電極54と固定子電極62との間にクーロン力が作用可能となるように定められる。各可動子電極54は、この可動子電極54に接続する可動側ブラシ電極53が固定側ブラシ電極61と接触した状態では、固定子電極62に対して回転方向にて離れるように配置される。
【0071】
高電圧印加装置Pの一方側出力端子q1は固定側ブラシ電極61に接続される。高電圧印加装置Pの他方側出力端子q2は固定子電極62に接続される。高電圧印加装置Pは、可動子50を定位置で回転可能とすべくクーロン力を作用させるように高電圧を印加可能に構成されている。
【0072】
「可動子の詳細」
図7及び8を参照すると、可動子50は詳細には以下のように構成することができる。可動子50は、回転体51から回転軸線50aに沿ってブラシシャフト52とは反対側に突出する補助シャフト55を有する。補助シャフト55もまた、回転体51と一緒になって回転可能となるように軸支される。
【0073】
回転体51は、ブラシシャフト52の突出側に位置する一方側面51aを有する。回転体51は、その回転方向に沿った外周面51bを有する。回転体51は、補助シャフト55の突出側に位置する他方側面51cを有する。回転体51の外周面51bは、その一方及び他方側面51a,51cを連結するように延びる。
【0074】
回転体51の外周面51bは、回転方向に沿って略円形状に形成される。回転体51の一方及び他方側面51a,51cのそれぞれは、回転軸線50aに対して実質的に垂直な平面とすることができる。
【0075】
ブラシシャフト52及び補助シャフト55のそれぞれは、略円形状の断面を有するように回転軸線50aに沿って延びる。ブラシシャフト52及び補助シャフト55の外周面52a,55aのそれぞれは、回転方向に沿って略円形状に形成される。ブラシシャフト52及び補助シャフト55の外周形状は、回転体51の外周形状よりも小さくなっている。
【0076】
可動側ブラシ電極53の数と可動子電極54の数とは同じになっている。可動側ブラシ電極53の数と可動子電極54の数とは、可動子50を定位置で回転可能とすべくクーロン力を作用させるように定められる。複数の可動側ブラシ電極53は、回転方向にて実質的に等間隔に配置することができる。複数の可動子電極54もまた、回転方向にて実質的に等間隔に配置することができる。
図7及び8においては、一例として、8個の可動側ブラシ電極53と8個の可動子電極54とを有する可動子50が示されている。しかしながら、可動側ブラシ電極の数と可動子電極の数とは、これに限定されてない。
【0077】
複数の可動側ブラシ電極53の間隔と、複数の可動子電極54の間隔とは、可動子50を定位置で回転可能とすべくクーロン力を作用させるように定められる。複数の可動側ブラシ電極53は、回転方向にて実質的に等間隔に配置することができる。複数の可動子電極54もまた、回転方向にて実質的に等間隔に配置することができる。
【0078】
複数の可動側ブラシ電極53における回転方向の長さと、複数の可動子電極54における回転方向の長さとは、可動子50を定位置で回転可能とすべくクーロン力を作用させるように定められる。複数の可動側ブラシ電極53における回転方向の長さは、実質的に等しくすることができる。複数の可動子電極54における回転方向の長さもまた、実質的に等しくすることができる。
【0079】
各可動側ブラシ電極53は、回転軸線50aに沿って略直線状に延びる。複数の可動側ブラシ電極53は、その外周面53aがブラシシャフト52の外周面52aと実質的に同一面を成すように配置されると好ましい。各可動子電極54は、回転体51の一方側面51a及び外周面51bに跨って配置されている。
【0080】
「固定子の詳細」
図7及び8を参照すると、固定子60は詳細には以下のように構成することができる。固定側ブラシ電極61は、高電圧印加装置Pの一方側出力端子q1と電気的に接続される基端部61aを有する。固定側ブラシ電極61は、基端部61aから延びるように細長形状に形成される本体部61bを有する。固定側ブラシ電極61は、その本体部61bを複数の可動側ブラシ電極53と接触可能とするように配置される。
【0081】
固定子電極62は、複数の可動子電極54と対向可能な対向面62aを有する。さらに、対向面62aは、回転子51の外周面51bと対向するように配置することができる。
図7及び8においては、一例として、1つの固定側ブラシ電極61と1つの固定子電極62とを有する固定子60が示されている。しかしながら、固定子は、複数の固定側ブラシ電極を有することもできる。また、固定子は、複数の固定子電極を有することができる。
【0082】
なお、固定子が複数の固定側ブラシ電極を有する場合、複数の固定側ブラシ電極の間隔は、可動子を定位置で回転可能とすべくクーロン力を作用させるように定めることができる。固定子が複数の固定子電極を有する場合、複数の固定子電極の間隔及び回転方向の長さは、可動子を定位置で回転可能とすべくクーロン力を作用させるように定めることができる。
【0083】
「可動子及び固定子の物性、並びに静電モータの動作」
図7及び8を参照して、可動子50及び固定子60の物性、並びに静電モータの動作を説明する。可動子50及び固定子60は、第1実施形態と同様の物性とすることができる。また、静電モータの動作は、可動子50が第1実施形態のような直線部分を含む軌道R1に沿って転動する代わりに定位置で回転する点を除いて、第1実施形態と同様である。
【0084】
以上、本実施形態に係る静電モータによれば、可動子50を固定子60に対して定位置で回転させる方式の静電モータにおいて、第1実施形態に係る静電モータと同様に、製造効率を改善することができ、コスト低減を図ることができ、耐久性を改善することができ、静音化を図ることができる。
【0085】
「第4実施形態」
第4実施形態に係る静電モータについて以下に説明する。
【0086】
「静電モータの概略」
図9~11を参照すると、本実施形態に係る静電モータは概略的には以下のように構成される。静電モータは、上述のように可動子70及び固定子80を有する。静電モータはまた、第1実施形態同様の高電圧印加装置Pを有する。高電圧印加装置Pは、概略及び詳細共に第1実施形態と同様である。
【0087】
可動子70は、細長形状に形成された壁体71を有する。可動子70は、壁体71の底部71aにて壁体71の長手方向に互いに間隔を空けて配置される複数の可動側ブラシ電極72を有する。可動子70は、壁体71の側部71bにて壁体71の長手方向に互いに間隔を空けて配置される複数の可動子電極73を有する。複数の可動子電極73は、それぞれ複数の可動側ブラシ電極72に接続される。
【0088】
固定子80は、複数の可動側ブラシ電極72と接触可能に配置される複数の固定側ブラシ電極81を有する。複数の固定側ブラシ電極81は、所定の軌道R4に沿って互いに間隔を空けて配置される。固定子80は、複数の可動子電極73に対して隙間G4を空けながら対向可能に配置される複数の固定子電極82を有する。複数の固定子電極82は、軌道R4に沿って互いに間隔を空けて配置される。
【0089】
上記隙間G4は、複数の可動子電極73と複数の固定子電極82との間にクーロン力が作用可能となるように定められる。複数の固定側ブラシ電極81と複数の固定子電極82とは、軌道R4に沿って複数の固定側ブラシ電極81の1つと複数の固定子電極82の1つとを交互に並べるように配置される。
【0090】
各可動子電極73は、この可動子電極73に接続する可動側ブラシ電極72が複数の固定側ブラシ電極81の1つと接触した状態では、この可動子電極73に隣接する可動子電極73が、複数の固定側ブラシ電極81の1つとこれと隣接する固定側ブラシ電極81との間で複数の固定子電極82の1つと少なくとも部分的に対向するように配置される。
【0091】
高電圧印加装置Pの一方側出力端子q1は複数の固定側ブラシ電極81に接続される。高電圧印加装置Pの他方側出力端子q2は複数の固定子電極82に接続される。高電圧印加装置Pは、可動子70を軌道R4に沿ってリニア移動可能とすべくクーロン力を作用させるように高電圧を印加可能とするように構成されている。
【0092】
「静電モータの詳細」
図9~11を参照すると、本実施形態に係る静電モータは詳細には以下のように構成することができる。静電モータの固定子80の軌道R4は、直線部分を含むように延びることができる。この場合、可動子70は、軌道R4の直線部分では直進しながら転動することができる。特に図示はしないが、固定子の軌道は、直線部分に加えて曲線部分を含むように延びることもできる。この場合、可動子は、軌道の曲線部分では曲がりながら転動することができる。
【0093】
「可動子の詳細」
図9~11を参照すると、可動子70は詳細には以下のように構成することができる。可動子70は、軌道R4に沿って延びるように形成される可動子本体70aを有する。この可動子本体70aが、複数の壁体71を有するとよい。
図9~11においては、一例として、2つの壁体71を有する可動子本体70aを備えた可動子70が示されている。しかしながら、可動子本体は、1つ又は3つ以上の壁体を有するように構成することもできる。
【0094】
可動子本体70aが複数の壁体71を有する場合において、可動子本体70aは、静電モータの幅方向にて隣り合う壁体71を連結する連結体74を有する。可動子70は、隣り合う壁体71の可動子電極73を電気的に接続するように連結体74に配置される接続電極75を有する。しかしながら、可動子は、接続電極を有さないように構成することもできる。
【0095】
複数の可動側ブラシ電極72の間隔と、複数の可動子電極73の間隔とは、可動子70を軌道R4に沿ってリニア移動可能とすべくクーロン力を作用させるように定められるとよい。隣り合う可動側ブラシ電極72の間隔と、隣り合う可動子電極73の間隔とは、実質的に等しくすることができる。複数の可動側ブラシ電極72は等間隔に配置されるとよい。複数の可動子電極73は等間隔に配置されるとよい。
【0096】
複数の可動側ブラシ電極72における長手方向の長さと、複数の可動子電極73における長手方向の長さとは、可動子70を軌道R4に沿ってリニア移動可能とすべくクーロン力を作用させるように定められるとよい。各可動側ブラシ電極72における長手方向の長さと、各可動子電極73における長手方向の長さとは、実質的に等しくすることができる。複数の可動側ブラシ電極72における長手方向の長さは実質的に等しいとよい。複数の可動子電極73における長手方向の長さは実質的に等しいとよい。なお、各可動側ブラシ電極は、ローラを有するように構成することもできる。この場合、固定子は、各可動側ブラシ電極のローラを各固定側ブラシ電極に対して接触可能かつ転動可能としながら可動子を軌道に沿って移動させることができるように構成される。
【0097】
図9~11においては、一例として、3つの可動側ブラシ電極72と3つの可動子電極73とを有する可動子70が示されている。しかしながら、可動側ブラシ電極の数と可動子電極の数とは、これに限定されてない。
【0098】
「固定子の詳細」
図9~11を参照すると、固定子80は詳細には以下のように構成することができる。固定子80は、軌道R4に沿って延びるベースレール83を有する。なお、ベースレール83は、軌道R4に沿って連続する1つの要素から構成される。しかしながら、ベースレールは、軌道に沿って分割された複数の要素から構成することもできる。
【0099】
各固定側ブラシ電極81は、ローラとして構成することができる。この場合、各固定側ブラシ電極81は、それに接触する壁体71を軌道R4に沿って移動させることができるように回転可能な状態でベースレール83に取り付けられている。特に、各固定側ブラシ81は、壁体71と対向するベースレール83の側面部に取り付けることができる。
【0100】
各固定子電極82は、ベースレール83に取り付けられている。特に、各固定子電極82は、壁体71と対向するベースレール83の側面部に取り付けることができる。各固定子電極82は、各固定側ブラシ電極81よりも上方に位置する。さらに、少なくとも1つの固定側ブラシ電極81と少なくとも1つの固定子電極82と交互に配置する間隔は、可動子70を軌道R4に沿ってリニア移動可能とすべくクーロン力を作用させるように定められるとよい。
【0101】
「可動子及び固定子の物性」
可動子70及び固定子80は、次のような物性を有するように構成することができる。可動子70の可動子本体70aは、絶縁性を有するように構成される。固定子80のベースレール83もまた、絶縁性を有するように構成される。
【0102】
その一方で、可動子70の可動側ブラシ電極72、可動子電極73及び接続電極75は導電性を有するように構成される。固定子80の固定側ブラシ電極81及び固定子電極82もまた導電性を有するように構成される。
【0103】
「静電モータの動作」
図9~11を参照して、本実施形態に係る静電モータの動作について説明する。ここでは、高電圧印加装置Pの一方側出力端子q1が正電位の電圧を印加し、かつ他方側出力端子q2が負電位の電圧を印加する場合における静電モータの動作を説明する。
【0104】
一方側出力端子q1が正電位の電圧を固定側ブラシ電極81に印加すると、固定側ブラシ電極81と接触した状態にある可動側ブラシ電極72には正電荷が帯電する。さらに、この可動側ブラシ電極72に接続された可動子電極73にも正電荷が帯電する。
【0105】
正電荷の帯電状態にある可動側ブラシ電極72は、同様に正電荷の帯電状態にある固定側ブラシ電極81と反発し、この反発によって可動子本体70aを含む可動子70がリニア移動する。その後、正電荷の帯電状態にある可動子電極73は、負電荷の帯電状態にある後続の固定子電極82に引き寄せられるようにリニア移動移動する。
【0106】
これと同時に、他方側出力端子q2が負電荷の電圧を固定子電極82に印加すると、固定子電極82と対向した状態にある可動子電極73に負電荷が帯電する。さらに、この可動子電極73に接続された可動側ブラシ電極72にも負電荷が帯電する。
【0107】
負電荷の帯電状態にある可動子電極73は、同様に負電荷の帯電状態にある固定子電極82と反発し、この反発によって可動子本体70aを含む可動子70がリニア移動する。その後、負電荷の帯電状態にある可動側ブラシ電極72は、正電荷の帯電状態にある後続の固定側ブラシ電極81に引き寄せられるように移動する。
【0108】
軌道R4に沿って並ぶ複数の可動側ブラシ電極72及び複数の可動子電極73が、このような帯電を順次繰り返して、これによって、可動子70が固定子80に対して、直線部分を含む軌道R4に沿ってリニア移動することとなる。
【0109】
以上、本実施形態に係る静電モータによれば、固定子80に対して可動子70をリニア移動させる方式の静電モータにおいて、第1実施形態に係る静電モータと同様に、製造効率を改善することができ、コスト低減を図ることができ、耐久性を改善することができ、静音化を図ることができる。
【0110】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【符号の説明】
【0111】
10…可動子,10a…回転軸線,11…回転体,12…ブラシシャフト,12a…外周面,13…可動側ブラシ電極,14…可動子電極,20…固定子,21…固定側ブラシ電極,22…固定子電極,G1…隙間,R1…軌道
30…可動子,30a…回転軸線,31…回転体,32…ブラシシャフト,32a…外周面,32b…先端部,33…可動側ブラシ電極,33a…外周面,34…可動子電極,35…軸支機構,40…固定子,41…固定側ブラシ電極,42…固定子電極,G2…隙間,R2…軌道,S2…周回軸線
50…可動子,50a…回転軸線,51…回転体,52…ブラシシャフト,52a…外周面,53…可動側ブラシ電極,54…可動子電極,60…固定子,61…固定側ブラシ電極,62…固定子電極,G3…隙間
70…可動子,71…壁体,72…可動側ブラシ電極,73…可動子電極,80…固定子,81…固定側ブラシ電極,82…固定子電極,G4…隙間,R4…軌道
P…高電圧印加装置,q1…一方側出力端子,q2…他方側出力端子
【要約】
【課題】静電モータにおいて、製造効率を改善し、コスト低減を図り、耐久性を改善し、静音化を図る。
【解決手段】本発明の静電モータにおいては、可動子10,30,50,70の可動側ブラシ電極13,33,53,72と固定子20,40,60,80の固定側ブラシ電極21,41,61,81とが通電可能に接触し、可動子の可動子電極14,34,54,73と固定子の固定子電極22,42,62,82とが、クーロン力を発生可能とするように隙間G1,G2,G3,G4を空けて配置された状態で、固定側ブラシ電極及び固定子電極にそれぞれ互いに対して逆電位の高電圧を印加することによって、可動子が固定子に対して移動可能になっている。
【選択図】
図2