(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】タッチパッド
(51)【国際特許分類】
G06F 3/0354 20130101AFI20240528BHJP
G06F 3/03 20060101ALI20240528BHJP
H01H 9/02 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G06F3/0354 453
G06F3/03 400F
H01H9/02 Z
(21)【出願番号】P 2023122603
(22)【出願日】2023-07-27
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大國 滉尚
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 一生
(72)【発明者】
【氏名】中重 和美
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-9325(JP,A)
【文献】特開2014-38380(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0163294(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/0354
G06F 3/03
H01H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人手によるポインティング操作を行うタッチパッドであって、
人手による接触位置を認識可能なセンサボードと、
前記センサボードと固定されたアウターフレームと、
前記アウターフレームの内側に配置されるアーム部と、
前記アーム部の一端と前記センサボードとの間に設けられたスイッチと、
前記アーム部を中間部で俯仰傾斜可能に支持する軸支部と、
基体に対して前記センサボードを上向きに付勢する弾性体と、
を有し、
前記アーム部の他端は、前記センサボードおよび前記センサボードとともに昇降方向に変位するように支持されており、
前記センサボードが人手により押されることにともなって、前記アーム部は、前記他端が押し下げられ、前記軸支部を基準に俯仰傾斜し、前記一端が押し上げられて前記スイッチを押圧操作し、
前記弾性体は、センサボードの中心を基準として押し下げ力を相対的に重くする側で該センサボードを上向きに付勢している
ことを特徴とするタッチパッド。
【請求項2】
請求項1に記載のタッチパッドにおいて、
キーボードと前後に隣接するように筐体の上面に設けられており、
前記弾性体は、前記センサボードの押し下げ力が前後方向に沿って異なるように付勢している
ことを特徴とするタッチパッド。
【請求項3】
請求項2に記載のタッチパッドにおいて、
前記キーボードには、ディスプレイに表示されるカーソルを傾動方向に移動させるポインティングスティックが設けられ、
センサボードにおける前記キーボードに近い側の帯状領域が前記ポインティングスティックと関係付けられた操作に割り当てられており、
前記弾性体は、前記センサボードの中心よりも前記キーボードに遠い側を上向きに付勢している
ことを特徴とするタッチパッド。
【請求項4】
請求項1に記載のタッチパッドにおいて、
前記基体に対して前記センサボードが上に抜けないように係合する抜止片を有する。
ことを特徴とするタッチパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人手によるポインティング操作を行うタッチパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばノートブック型パーソナルコンピュータ(ノート型PC)では、キーボード以外にも、マウスの代替となるタッチパッドが設けられている。タッチパッドは、指先でのタッチ操作を受けてディスプレイ装置に表示されたカーソルを移動させるポインティングデバイスの一種である。タッチパッドは、一般的に本体筐体上面における手前側でキーボードに隣接して設けられる。
【0003】
このようなタッチパッドを備えた入力装置に関し、本出願人は特許文献1において、タッチ操作及び押下操作を可能とした構成を提案している。この構成では、タッチパッドのタッチ面に複数の疑似ボタン領域が設定されており、各疑似ボタン領域をタッチしながらタッチパッドを押下操作することで各疑似ボタン領域に対応した入力操作を行うことが可能となっている。このようなタッチパッドは上面で人手の接触を検出するセンサボードと、該センサボードを押し下げることでオン・オフに切り替えられるスイッチを備えており、スイッチの切り替えによってクリック感が得られるようになっている。
【0004】
特許文献1に記載の電子機器ではキーボードの略中央にポインティングスティックが設けられている。タッチパッドにおけるキーボード寄りのボタン領域はポインティングスティックと関連付けられた操作領域となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
センサボードの押下操作を可能とするためにはキーボードに隣接する縁に沿ってヒンジのような軸を設けて該軸を中心に傾動可能にするとよいが、このような構成では手前側は適度に上下動幅が確保されるものの、軸に近い奥側はあまり上下動せず、良好なクリック感が得られずユーザに違和感を与え得る。特に、タッチパッドにおけるキーボード寄りの上記ボタン領域でクリック感が得られにくい。
【0007】
また、タッチパッドを人差し指などで操作するのに対して、ボタン領域は親指の側面で操作する場合が多いため必ずしも力を入れやすいとは限らない。ポインティングスティックに関連付けられた領域に限らず、仕様により人手による操作をする領域に応じて押し下げに要する力が異なっていると好ましい。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、全面が適度に上下動可能であって、しかも操作領域に応じて押し下げに要する力を変えることのきるタッチパッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の態様に係るタッチパッドは、人手によるポインティング操作を行うタッチパッドであって、人手による接触位置を認識可能なセンサボードと、前記センサボードと固定されたアウターフレームと、前記アウターフレームの内側に配置されるアーム部と、前記アーム部の一端と前記センサボードとの間に設けられたスイッチと、前記アーム部を中間部で俯仰傾斜可能に支持する軸支部と、基体に対して前記センサボードを上向きに付勢する弾性体と、を有し、前記アーム部の他端は、前記センサボードおよび前記センサボードとともに昇降方向に変位するように支持されており、前記センサボードが人手により押されることにともなって、前記アーム部は、前記他端が押し下げられ、前記軸支部を基準に俯仰傾斜し、前記一端が押し上げられて前記スイッチを押圧操作し、前記弾性体は、センサボードの中心を基準として押し下げ力を相対的に重くする側で該センサボードを上向きに付勢している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記態様によれば、全面が適度に上下動可能であって、しかも操作領域に応じて押し下げに要する力を変えることがきる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るタッチパッドを備えた電子機器の斜視図である。
【
図4】
図4は、アウターフレームおよびインナーフレームの斜視図である。
【
図5】
図5は、アウターフレームの隅部の拡大斜視図である。
【
図9】
図9は、金属プレートと樹脂プレートとが積層固定されたベースプレートの平面図である。
【
図10】
図10は、枠体から取り外した状態のタッチパッドの底面図である。
【
図11】
図11は、枠体から取り外した状態のタッチパッドを下面からみた隅部の拡大斜視図である。
【
図13】
図13は、センサボードが押された状態のタッチパッドの模式断面図である。
【
図14】
図14は、前後方向に沿ったタッチパッドの模式断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかるタッチパッドの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係るタッチパッド10を備えた電子機器12の斜視図である。以下では、タッチパッドについて
図1に示す電子機器12に搭載された状態での使用形態を基準とし、手前側を前側(前方)、奥側を後側(後方)と呼び、電子機器12を構成する本体筐体14の厚み方向を上下方向、幅方向を左右方向と呼んで説明する。
【0014】
図1に示すように、電子機器12は、タッチパッド10及びキーボード16を有する本体筐体14と、液晶ディスプレイ等のディスプレイ18aを有するディスプレイ筐体18とを備えたノート型PCである。ディスプレイ筐体18は、左右一対のヒンジ20,20により本体筐体14に対して開閉可能に連結されている。タッチパッド10は電子機器12の内蔵タイプであるが、外付けタイプでもよい。
【0015】
本体筐体14の内部には、図示しない基板、演算処理装置、ストレージ、メモリ、バッテリー等の各種電子部品が収納されている。タッチパッド及びキーボード16は、本体筐体14の上面上で前後に並んでいる。キーボード16の略中央にはポインティングスティック22が設けられている。
【0016】
ポインティングスティック22は、ディスプレイ18aに表示されるカーソルを傾動方向に移動させるポインティングデバイスの一種である。ポインティングスティック22は、小さい円柱形状であってキーボード16の略中央、例えばGキー、HキーおよびBキーの中間に設けられている。ポインティングスティック22は、主に人差し指または中指で傾動操作を行うことによってカーソルを移動させ、ポイント指定のクリックについては、主に親指でタッチパッド10を押し下げ操作する。
【0017】
次に、タッチパッド10について説明する。タッチパッド10は、本体筐体14上面におけるキーボード16の手前側のパームレスト領域の略中央に設けられている。つまり、タッチパッド10はキーボード16と前後に隣接するように設けられている。タッチパッド10の左右方向の中心はポインティングスティック22とほぼ一致している。タッチパッド10はやや横長の矩形であり、前後幅はパームレスト領域のほぼ全幅を占める。タッチパッド10の平面視の大きさは、例えば12cm×7cm程度である。
【0018】
タッチパッド10は、人手(指先およびペン先などを含む)によってカーソルを移動させるポインティング操作を行うポインティングデバイスであり、表面のセンサボード24を押し下げることにより内部のスイッチ26が切り替わってクリック感が得られるようになっている。センサボード24は人手の接触位置を認識可能となっている。タッチパッド10では、センサボード24が押し下げられたときの人手の位置により所謂右クリックおよび左クリックなどの処理が可能となっている。また、タッチパッド10はソフトウェア処理によりタップ、ダブルタップ、二本指タップ、ピンチなどの各操作に対応可能である。
【0019】
図2は、タッチパッド10の斜視図である。
図3は、タッチパッド10の分解斜視図である。タッチパッド10は、枠体28、センサボード24、スイッチ26、アウターフレーム30、インナーフレーム32、ベースプレート(基体)34を有する。枠体28はタッチパッド10の外殻を構成する部材であるが、本体筐体14の上面板14a(
図1参照)が兼ねていてもよい。アウターフレーム30は外寸がセンサボード24と同じ矩形の枠状部材であり、十分薄い粘着テープ36によって該センサボード24と固定されている。アウターフレーム30は必ずしも枠形状に限らず、例えば一部が開口した角C字形状でもよい。アウターフレーム30とセンサボード24との固定手段は係合構造などでもよい。粘着テープ36は、例えば引張剥離可能な特性を有するストレッチリリーステープ、ストレッチ両面テープ、或いはストレッチャブルテープと呼ばれる部品である。後述するガラス24aと回路基板24bとの間、および金属プレート38と樹脂プレート40との間も同様の粘着テープで固定してもよい。
【0020】
センサボード24は枠体28の開口に嵌り込む大きさで、静電容量式などセンシング機能を有するガラス24aと回路基板24bとの積層構造となっている。スイッチ26は薄く小型のものであり、インナーフレーム32の中央部とセンサボード24との間に設けられる。スイッチ26は回路基板24bに実装されていてもよい。スイッチ26は押圧することによりオン・オフが切り替わるとともに適度なクリック感が得られるようになっている。本実施例におけるスイッチ26はノーマルオープンタイプとする。
【0021】
センサボード24の上面におけるキーボード16に近い後縁に沿った帯状領域はボタン領域25に設定されている。
図2ではボタン領域をドット地で示している。ボタン領域25は指の押圧操作が可能な程度に前後幅が狭く設定されている。ボタン領域25はポインティングスティック22と関係付けられた操作に割り当てられており、左右のやや幅の広い左クリック部25a、右クリック部25bと中央で幅の狭いスクロール部25cから構成されている。スクロール部25cはWebページや文書を任意の方向にスクロールするためのものである。ボタン領域25はポインティングスティック22と組み合わせて主に親指で操作されるものであり、他の領域とは直線やドットなどのマーク25dによって区分けされている。
【0022】
ベースプレート34は、金属プレート38と樹脂プレート40との積層構造となっており、両者は固定されている。金属プレート38には周囲に複数のネジ座38aが形成されており、ネジ42によって枠体28に固定される。金属プレート38の前側には左右全幅の略1/3程度の短い舌片38bが設けられている。舌片38bは枠体28に形成された棚部28aの上面に掛かるようになっているが、レイアウト要件などによっては他3辺と同じようにネジ止めの構成としてもよい。ベースプレート34についてはさらに後述する。
【0023】
図4は、アウターフレーム30およびインナーフレーム32の斜視図である。アウターフレーム30およびインナーフレーム32をまとめてフレームユニット33とも呼ぶ。
図5は、アウターフレーム30の隅部の拡大斜視図である。
図6は、アーム部54の中間部の斜視図である。
【0024】
アウターフレーム30およびインナーフレーム32はステンレス材など一枚の金属板からプレス加工、レーザ加工および曲げ加工などによって形成されており、後述する弾性接続部68で接続されて一体となっており、組み立て及び分解時の扱いが容易である。
【0025】
アウターフレーム30は上記のとおりやや横長の枠形状となっており、本実施例では縦横比が3:5程度である。アウターフレーム30は前枠30a、後枠30bおよび左右の縦枠30cを有する。後枠30bには2つの切欠30baが形成されている。切欠30baは後述するシャフト62との干渉を避けるためのものである。
【0026】
4つの枠はそれぞれ縁に沿って素材が折り返された下層板31aと上層板31bとからなる2層構造となっており高強度である。上層板31bは後述するアーム部54が傾斜するための上方の隙間70(
図12参照)を確保するスペーサを兼ねている。上層板31bは下層板31aとほぼ同形状であるが、該下層板31aよりやや幅狭であって、各端部は45度に留め切りされている。本実施例で各枠の幅は下層板31aの部分で6mm程度である。前枠30aおよび後枠30bにおける上層板31bの左右端近傍は一部が切り欠かれている。この部分は下層板31aの上面とセンサボード24の下面との間に狭いスライド嵌合部44(
図12参照)を形成する。この場合のスライド嵌合部44は側方に非貫通の溝であるが、貫通していてもよい。
【0027】
各縦枠30cの前後端近傍には折り返されずに残存して側方に突出した状態となっている小突起46が形成されている。各縦枠30cにおける小突起46の近傍の枠内側には小さい三角状の切欠30caが形成されている。切欠30caは後述する側方突出部58を確保するための領域である。各縦枠30cの中間部からは枠中心に向かって延出する突起48が設けられている。本実施例の突起48の長さは、前枠30aおよび後枠30bの1/5程度である。突起48は根元部が太い略三角形状であって適度な強度がある。突起48の先端後部は下方に向かって屈曲する第1位置決め片48aを形成している。第1位置決め片48aは左右方向に適度な幅を有する。
【0028】
前枠30aの中間部からは枠中心に向かって延出する板バネ50が設けられている。本実施例の板バネ50の長さは縦枠30cの1/3程度である。板バネ50は細くかつ適度に長いため弾性がある。板バネ50は前枠30aに近い位置で下方にシフトするような小さい段差がある。板バネ50の先端には小さい屈曲部50aが設けられるとともに、先端部側方に第2位置決め片50bが設けられている。屈曲部50aおよび第2位置決め片50bはそれぞれベースプレート34のある下方に向けて突出している。第2位置決め片50bは前後方向に適度な幅を有しており、根元部分はやや細くなっている。
【0029】
インナーフレーム32は、アウターフレーム30の内側に配置されており、中央部52からアウターフレーム30における対称の四か所(この場合四隅)に向かって延在する4本のアーム部54を有するクロス形状の部材である。ただし、アーム部54は対称でなくてもよく、4本でなくてもよい。つまり、スイッチ26を集中点として、そこからアウターフレーム30に向かって放射状にアーム部54が伸びてさえいれば機構は成立する。本実施例で各アーム部54の幅は8mm程度である。中央部52はアーム部54が細くなって4本の延長部(一端)52aが交差する部分であり、途中の段差部52bにより、アーム部54よってわずかに下方に突出している。アーム部54が延長部52aと接続される箇所は先細りの三角状になっている。延長部52aはアーム部54の一部ともみなされる。つまり、インナーフレーム32は4本のアーム部54の一端である延長部52aが互いに接続されて他端の端部54aがアウターフレーム30における四か所に向かって延在する構成となっている。
【0030】
中央部52における4つの段差部52bより内側の範囲にはスイッチ26(
図3参照)が配置される。延長部52aは細いため弾性変形が可能である。延長部52aはアーム部54の一部と見做すこともできることから、アーム部54はスイッチ26を押圧する中央部52とその他の部分との間が弾性的に屈曲可能に構成されていることになる。また、アーム部54は、スイッチ26を押圧する中央部52とその他の部分との間に段差部52bが形成されていることになる。
【0031】
アーム部54の端部(他端)54aは前枠30aおよび後枠30bの縁に沿うように斜めにカットされて、これらの前枠30aおよび後枠30bとの間には狭い隙間56が形成されている。アーム部54の端部54aには前後方向にやや突出してスライド嵌合部44に嵌り込む側方突出部58が設けられている。側方突出部58は、金属板から切り出された状態において
図5の仮想線で示すようにアーム部54の端部54aから切欠30caの領域に突出しているのを反対側に折り返して形成されている。側方突出部58は、センサボード24の側、つまり上側に折り返されて形成されていて上層板31bと同じ高さにあり、スライド嵌合部44に入るようになっている。
【0032】
アーム部54は側方突出部58がスライド嵌合部44の内部で摺動することによってアウターフレーム30に対して前後方向および左右方向に相対変位可能になっている。また、スライド嵌合部44の上下幅は厳密には側方突出部58より粘着テープ36の厚み分だけ広いが(
図12参照)、粘着テープ36は十分薄いため実質的な上下隙間はなく、アーム部54の端部54aはセンサボード24とともに昇降方向(上下方向)に変位するように規制され、それ以外のセンサボード24の面に沿う方向には相対変位可能に支持されている。スライド嵌合部44はアウターフレーム30およびセンサボード24によって形成されているが、いずれか一方(実質的な一体要素を含む)によって形成されていてもよい。
【0033】
図5、
図6に示すように、4本のアーム部54は、略中間部分がベースプレート34に対して軸支部60で俯仰傾斜可能に軸支されている。4つの軸支部60はそれぞれ、ベースプレート34の留め具40gaに支持されてアーム部54の延在方向に略直交する向きの細いシャフト62と、アーム部54の両側に突出する一対の肩部64と、それぞれの肩部64からアーム部54の延在方向に沿って短く突出し、二段階に屈曲して段差形状をなす軸支持片66とを有する。肩部64および軸支持片66はアーム部54と一体である。軸支持片66は肩部64から下方に向かう垂直板66aと、該垂直板66aの下端に接続されてアーム部54の延在方向に沿って突出している水平板66bとを有する。シャフト62はアーム部54の下面と水平板66bの上面との間でほぼ隙間なく配置されている。
【0034】
センサボード24が人手により押されていない基準状態において、シャフト62は水平板66bの略中央に配置されており、垂直板66aとの間および水平板66bの先端66baまでにある程度の距離がある。つまり、アーム部54は軸支部60および軸受部40gによって、シャフト62を基準として俯仰可能となっているが(
図6の円弧矢印参照)該アーム部54の延在方向には規制されてなくスライド可能になっている(
図6の横矢印参照)。
【0035】
図4に戻り、4つのアーム部54のうち前側の2つ(
図4において符号54Aを付す)では、軸支持片66の水平板66bがアウターフレーム30の隅部を指向している。4つのアーム部54のうち後側の2つ(
図4において符号54Bを付す)では、軸支持片66の水平板66bがアウターフレーム30の中心部を指向している。換言すれば、4組の軸支持片66は、シャフト62の挿入および抜き取りが可能なように同一の所定方向に開いている。
【0036】
各アーム部54Bにおける2つの肩部64のうち前側のものは、それぞれ突起48に対して弾性接続部68によって接続されている。弾性接続部68は全長が適度に長く細く複数の湾曲部を有していて柔らかく、アウターフレーム30とインナーフレーム32との相対的な動作を妨げない。この場合の弾性接続部68はS字形状であるが、W字形状、Ω字形状などであってもよい。弾性接続部68はアーム部54Bおよび突起48と同一平面上にあり、同一の金属素材から打ち抜き加工で形成することができる。特に弾性接続部68の一方が接続されている肩部64は、アーム部54と同一面上であって接続先に好適であるとともに、シャフト62を支持する軸支持片66と一体的な部分であって、アーム部54がシャフト62を中心に回転することを妨げない。
【0037】
アウターフレーム30とインナーフレーム32とは弾性接続部68で接続されていることから扱いが容易である。また、弾性接続部68はアウターフレーム30とインナーフレーム32との相対的な位置決め作用がある。ただし、インナーフレーム32は何らかの位置決め手段があれば、アウターフレーム30と別体となっていてもよい。インナーフレーム32はアウターフレーム30と別体であっても、側方突出部58がスライド嵌合部44に嵌り込んでいるため抜けることがない。
【0038】
図7は、樹脂プレート40の斜視図である。
図8は、金属プレート38の斜視図である。
図9は金属プレート38と樹脂プレート40とが積層固定されたベースプレート34の平面図である。
図10は、枠体28から取り外した状態のタッチパッド10の底面図である。
図11は、枠体28から取り外した状態のタッチパッド10を下面からみた隅部の拡大斜視図である。
【0039】
樹脂プレート40は、ベースプレート34のうち所謂メタルタッチなどを避けるための機能部を樹脂で形成したものであり、やや横長の六角形状の左右に矩形端部40aが設けられた形状になっている。樹脂プレート40は、例えばABS樹脂である。矩形端部40aからは前方に向かってやや上向き傾斜の細い樹脂板バネ40bが突出している。樹脂板バネ40bの先端は水平面になっており、センサボード24左右の前端近傍を上方に向けて弾性付勢するようになっている(
図11参照)。
【0040】
各矩形端部40aの根元部分にはそれぞれ第1位置決め孔(第1位置決め部)40cと該第1位置決め孔40cからみて樹脂プレート40の中心側に立設する小さい位置決め壁(第1位置決め部)40dが設けられている。上記の第1位置決め片48a(
図4参照)は第1位置決め孔40cに挿入され、位置決め壁40dに当接する。これにより、フレームユニット33は横方向に位置決めされる。後述するがフレームユニット33はベースプレート34に対して前後にスライドすることによって分解可能になっている。第1位置決め孔40cはフレームユニット33とベースプレート34との相対的な前後移動が可能となるように前後方向にやや長い孔となっている。位置決め壁40dは前後方向に沿ってやや傾斜しており、第1位置決め片48aに対して組み立て後の状態では隙間なく当接し、分解時にはわずかに隙間が生じて着脱が容易となっている。
【0041】
樹脂プレート40の前側中間部には前後にやや長い逃げ孔40eが形成されている。逃げ孔40eは板バネ50との干渉を避けるための孔である。逃げ孔40eからみて樹脂プレート40の中心側端部からは右に向けて連続する第2位置決め孔(第2位置決め部)40fが形成されている。上記の第2位置決め片50b(
図4参照)は第2位置決め孔40fに挿入・係合される。第2位置決め片50bと第2位置決め孔40fとは前後幅が等しい。したがって、フレームユニット33は前後方向に位置決めされる。第2位置決め孔40fの周囲は厚肉部40kによって補強されている。厚肉部40kは後方に向かって逃げ孔40hの近傍まで設けられている。
【0042】
樹脂プレート40は、中央の横長六角形を形成する左右の4つの辺に沿ってそれぞれ軸受部40gが設けられている。軸受部40gはシャフト62を支持するものであり、該シャフト62の両端近傍が嵌り込む一対の留め具40gaと、シャフト62を両端で押さえる抜止突起40gbと、中央部でシャフト62を下面から支持するV字ブロック40gcとを有する。留め具40gaは上方に開口した断面C字形状であり、一対の円弧部がシャフト62の両側面を挟持して支持する。各留め具40gaとV字ブロック40gcとの間には逃げ孔40gdが形成されている。逃げ孔40gdは軸支持片66(
図5参照)との干渉を避けるためのものである。
【0043】
樹脂プレート40の略中央部には、インナーフレーム32の中央部52が下降するときに干渉を避けるための扇形の逃げ孔40hが形成されている。樹脂プレート40における前縁の両端には、金属プレート38によって位置決めされる小さい切欠40iが形成されている。樹脂プレート40にはさらに複数の肉抜き孔40jが形成されている。
【0044】
上記のとおり金属プレート38には複数のネジ座38aおよび舌片38bが設けられている。金属プレート38にはさらに後縁および左右の縦縁に沿って低い屈曲壁38cが形成されており高強度となっている。金属プレート38の左右の縦縁には前後端近傍に小さい抜止片38dが設けられている。抜止片38dはプレートの一部が角型U字形状に折り返されて樹脂プレート40の中心側が開口した形状である。抜止片38dの開口にはアウターフレーム30の小突起46(
図4参照)が嵌り込むことによってセンサボード24およびフレームユニット33が上方に抜けることを防止する。
【0045】
金属プレート38には、樹脂板バネ40bが変位したときに干渉を避けるための逃げ孔38eが形成されている。金属プレート38には第1位置決め孔40cを貫通して下方に突出する第1位置決め片48aとの干渉を避けるための逃げ孔38fが形成されている。金属プレート38には第2位置決め孔40fを貫通して下方に突出する第2位置決め片50bとの干渉を避けるための逃げ孔38gが形成されている。第2位置決め片50bは逃げ孔38gを通して工具による押圧が可能となっている(
図10の矢印参照)。金属プレート38には、樹脂プレート40における逃げ孔40hおよび逃げ孔40gdに対応する位置に、同形状で同作用の逃げ孔38hおよび逃げ孔38iが形成されている。金属プレート38には、舌片38bの両脇に上方に向けた小さい屈曲突起38jが設けられている。屈曲突起38jは切欠40iに係合して樹脂プレート40の位置決めをする。
【0046】
図12は、タッチパッド10の模式断面図である。
図13は、センサボード24が押された状態のタッチパッド10の模式断面図である。
【0047】
図12に示すように、上層板31bがスペーサとなってアーム部54とセンサボード24との間に狭い隙間70が形成されている。中央部52は段差部52bによりやや下方に突出しており、スイッチ26は中央部52にほぼ接するようになっている。この状態でスイッチ26は接点状態が切り替わるような押圧力を受けていない。アーム部54の端部54aは側方突出部58がスライド嵌合部44に嵌り込んで高さが規制されている。そのため、アーム部54は重力や振動の影響を受けずに水平に保たれる。アーム部54の端部54aが不用意に下降することがないため、シャフト62を挟んだ反対側の中央部52も適正高さに維持され、スイッチ26がオフ状態に維持される。
【0048】
図13に示すように、センサボード24は上面のいずれかの箇所を人手によって押すとやや下降する。そうするとセンサボード24の端でアウターフレーム30とともに形成されたスライド嵌合部44も下降し、その内部に挿入されている側方突出部58も下降する。アーム部54の端部54aはセンサボード24が人手により押されることにともなって下降するように構成されていればよく、例えば側方突出部58以外の箇所をセンサボード24と一体の要素が上から押し、またはアウターフレーム30と一体の要素が下から引いてもよい。
【0049】
アーム部54の中間部は軸受部40gで軸支されていることから、端部54aが下降するとアーム部54が軸受部40gを基準に俯仰傾斜し、中央部52が押し上げられてスイッチ26を押圧操作してオン状態に切り替える。センサボード24はボタン領域25を含む全面が適度に上下動可能であって、ユーザはいずれの箇所を押してもスイッチ26の接点状態の切り替わりにともなうクリック感を感じることができる。
【0050】
なお、このとき各アーム部54は、傾斜して中央部52が持ち上げられることにともない、その他の部分が中央部52に向かって若干引き寄せられるが(
図5の矢印参照)、アーム部54の端部54aはアウターフレーム30に対して前後方向および左右方向に相対的な移動が許容されており、側方突出部58がスライド嵌合部44内で摺動しながら変位するためアーム部54には張力はほとんど発生せず、該アーム部54の傾斜を阻害することがない。
【0051】
また同様に、各アーム部54の中間部も中央部52に向かって若干引き寄せられるが、上記のとおりアーム部54はその延在方向には規制されていないことからスライド可能に軸支されていて、該アーム部54の変位は阻害されない。
【0052】
このように、各アーム部54は端部54aおよび中間部においてアウターフレーム30やベースプレート34に対してスライド可能に構成されていることから傾斜にともなって無理な引っ張り力が生じることがなく、ある程度長く設定することも可能でありタッチパッド10を大型化することができる。ただし、タッチパッド10が小型で、アーム部54の端部54aおよび中間部のスライド量が十分に小さいと想定される場合にはいずれか一方または両方のスライド機構を省略してもよい。
【0053】
また、各アーム部54は端部54aと中央部52で若干弾性変形する。特に中央部52を構成する4本の延長部52a(
図4参照)は細くて弾性変形しやすく、その他のアーム部54が傾斜しても中央部52は山なりになることがなくほぼ水平に維持され、スイッチ26を正しく押圧操作することができる。
【0054】
さらに、インナーフレーム32は狭い隙間56を介してアウターフレーム30の内側に配置されており、仮に外力などによってインナーフレーム32が水平面で回転するようなことがあっても、いずれかの隙間56の部分で両者が当接することになり過度な回転ずれを防止することができる。
【0055】
人手によるセンサボード24の押圧を解除するとアーム部54は弾性復元力により水平に復帰し、センサボード24も元の高さに復帰し、スイッチ26はオフ状態に戻る。
【0056】
上記のインナーフレーム32では4本のアーム部54がX字形状にクロスしているが、十字形状でもよい。4本のアーム部54はアウターフレーム30の四隅でスライド可能に支持されているが、4つの枠材の各中間部で支持されていてもよい。インナーフレーム32は4本のアーム部54から構成されており構造およびスイッチ26の押圧操作の観点からバランスがよいが、スペース上の制約などの理由によっては、1本~3本としてもよい。
【0057】
図14は、前後方向に沿ったタッチパッド10の模式断面側面図である。上記のとおり、センサボード24の左右の前端近傍は樹脂板バネ40bによって上方に弾性付勢されている。
図14の上向き矢印は樹脂板バネ40bによる上向き弾性付勢力を示している。センサボード24は後端には特段の外力が作用しないためアンバランスが生じる。しかし、センサボード24と一体的に固定されたアウターフレーム30における四隅近傍の小突起46とベースプレート34の抜止片38dとの係合によりセンサボード24はベースプレート34に対して平行状態に保たれる。また、これらの4箇所の係合部のうち前側の2か所は上向き矢印で示す樹脂板バネ40bによる作用点のすぐ近くに設けられており、上向き弾性力を確実に支持することができる。
【0058】
一方、センサボード24は樹脂板バネ40bによる上向き弾性力が前端近傍に作用することから、前端近傍を指で押し下げるための力F1より後端近傍を押し下げるための力F2は小さくて済む。換言すれば前端近傍を指で押し下げる力F1は比較的大きく確実な操作感が得られるのに対し、後端近傍を指で押し下げる力F2は比較的小さく、ボタン領域25の操作感が軽くなる。ボタン領域25は、ポインティングスティック22を人差し指で操作しながら親指の側面で操作する場合が多いため必ずしも力を入れやすいとは限らないが、本実施例では前端近傍と比較して軽い力で操作が可能となっており、操作領域に応じて押し下げに要する力が変えられている。
【0059】
なお、樹脂板バネ40bの作用点はセンサボード24の前端近傍になっているが、センサボード24の押し下げ力が前後方向に沿って異なるように、かつボタン領域25の押し下げ力を相対的に軽くするには、センサボード24の中心(スイッチ26の位置)よりもキーボード16に遠い側を上向きに付勢すればよい。2つの樹脂板バネ40bは左右でバランスよくセンサボード24を弾性付勢するが、1つの横長形状であってもよく、または3つ以上設けてもよい。センサボード24の押し下げ力を場所によって変化をつけるためには樹脂板バネ40bによって中心以外の箇所を上向きに付勢すればよいが、樹脂板バネ40bが複数ある場合には、付勢力同士が相殺しない箇所を作用点とする。基本的にはセンサボード24の中心を基準として押し下げ力を相対的に重くする側に作用点を設ける。
【0060】
センサボード24を弾性付勢するのは板バネに限らず他の弾性体であってもよい。樹脂板バネ40bは樹脂であってセンサボード24に傷をつけることがないが、条件によっては金属プレート38の一部を樹脂板バネ40bと同形状にしてセンサボード24を弾性付勢してもよい。
【0061】
樹脂板バネ40bによればポインティングスティック22に関係付けられたボタン領域25の操作感を相対的に軽くすることができるが、該ボタン領域25はポインティングスティック22とは無関係の他の操作に割り当てられていてもよい。また仕様により、ボタン領域25のような特定の操作割り当て領域をセンサボード24の前端部に設ける場合、センサボード24の押し下げ力が前後方向に沿って異なるように、かつ該領域の押し下げ力を相対的に軽くするには、樹脂板バネ40bはセンサボード24の中心よりもキーボード16に近い側を上向きに付勢すればよい。樹脂板バネ40bによってセンサボード24の押し下げ力に変化を付けることにより、例えばユーザはマーク25d(
図2参照)がなくても押し下げ力の軽い方が特定の操作領域であると認識可能になる。
【0062】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
10 タッチパッド
12 電子機器
14 本体筐体
16 キーボード
22 ポインティングスティック
24 センサボード
25 ボタン領域
26 スイッチ
28 枠体
30 アウターフレーム
31a 下層板
31b 上層板
32 インナーフレーム
33 フレームユニット
34 ベースプレート(基体)
38 金属プレート
38d 抜止片
40 樹脂プレート
40b 樹脂板バネ(弾性体)
40c 第1位置決め孔
40d 位置決め壁
40f 第2位置決め孔
40g 軸受部
44 スライド嵌合部
46 小突起
48a 第1位置決め片
50 板バネ
50b 第2位置決め片
52 中央部
52a 延長部
52b 段差部
54,54A,54B アーム部
56 隙間
58 側方突出部
60 軸支部
62 シャフト
64 肩部
66 軸支持片
66a 垂直板
66b 水平板
68 弾性接続部
【要約】
【課題】全面が適度に上下動可能であって、しかも操作領域に応じて押し下げに要する力を変えることのできるタッチパッドを提供する。
【解決手段】タッチパッド10は、センサボード24と固定されたアウターフレーム30と、アウターフレーム30の内側に配置されるアーム部54と、アーム部54を支持する軸支部60と、ベースプレー34トに対してセンサボード24を上向きに付勢する樹脂板バネ40bとを有する。アーム部54の他端はセンサボード24とともに昇降方向に変位するように支持されており、センサボード24が人手により押されることにともなって、アーム部54は、他端が押し下げられ、軸支部60を基準に俯仰傾斜し、一端が押し上げられてスイッチ24を押圧操作する。樹脂板バネ40bはセンサボード24の中心以外を上向きに付勢している。
【選択図】
図14