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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびマリンホース
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/02 20060101AFI20240529BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240529BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20240529BHJP
   F16L 11/08 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
C08L9/02
C08K3/36
C08K5/098
F16L11/08 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020002203
(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公開番号】P2021109909
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】都甲 真利
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-241436(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103102520(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103694511(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106893248(CN,A)
【文献】国際公開第98/044035(WO,A1)
【文献】特開平01-190739(JP,A)
【文献】国際公開第2008/001692(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
F16L
CAplus/REGISTRY (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリロニトリルブタジエン共重合体と、シリカと、脂肪酸金属塩とを含有し、
前記脂肪酸金属塩が、SCHILL&SEILACHER GMBH & CO.社製の商品名STRUKTOL EF44、又は、RheinChemie社製の商品名Aktiplast STであり、
前記脂肪酸金属塩の含有量が、前記シリカの質量に対して5質量%以上50質量%未満である、ゴム組成物。ただし、前記ゴム組成物は、酸当量が1×10 -4 ephr以上、ムーニー粘度(ML 1+4 ,100℃)が15~200及びヨウ素価が80以下のカルボキシル化ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムを含まない。
【請求項2】
前記シリカの含有量が、前記アクリロニトリルブタジエン共重合体100質量部に対して10~60質量部である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
マリンホースの形成に用いられる、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いて形成されたマリンホース。
【請求項5】
前記ゴム組成物を用いて形成された最内層を有する、請求項に記載のマリンホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびマリンホースに関する。
【背景技術】
【0002】
マリンホースは、例えば、原油のような液体燃料を、海中の原油給送施設から海上のタンカーに輸送する、海上のタンカーから陸上のプラントに輸送する、および、タンカー間で輸送するなどの際に使用されるホースである。
また、マリンホースは、液体燃料を輸送するため、マリンホースに求められる性能としては、マリンホースの最内層(チューブゴム)の耐油性などが挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、マリンホースの最内層を形成するゴム組成物として、アクリロニトリル-ブタジエンゴムと、カーボンブラックと、シリカと、レゾルシンと、ヘキサメチレンテトラミンとを含むゴム組成物が記載されている([請求項1][請求項11])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-183011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、マリンホースに対して市場からは製品寿命を延ばすことが要求されている。
このようななか、本発明者は、マリンホースの製品寿命の長さが、ゴムの破断時伸びと相関することを知見した。
そして、本発明者は、特許文献1に記載されたゴム組成物を評価したところ、耐油性と破断時伸びとを優れたレベルで両立させることに改善の余地があることを明らかとした。具体的には、本発明者は、破断時伸びを高くするために、ゴム組成物に含有されるカーボンブラック等の量を減らした場合には、耐油性が低下すること知見し、耐油性と破断時伸びつまり製品寿命とは二律背反であってその両立が困難であることを明らかとした。
【0006】
そこで、本発明は、作製されるマリンホースの耐油性と製品寿命とを優れたレベルで両立させることができるゴム組成物およびそれを用いて作製したマリンホースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、アクリロニトリルブタジエン共重合体と、シリカと、特定量の脂肪酸金属塩とを含有するゴム組成物を用いると、作製されるマリンホースの耐油性と製品寿命とを優れたレベルで両立させることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明者は、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0008】
[1] アクリロニトリルブタジエン共重合体と、シリカと、脂肪酸金属塩とを含有し、
上記脂肪酸金属塩の含有量が、上記シリカの質量に対して5質量%以上50質量%未満である、ゴム組成物。
[2] 上記脂肪酸金属塩の融点が85~105℃である、[1]に記載のゴム組成物。
[3] 上記脂肪酸金属塩が、炭素数6以上の脂肪酸の金属塩である、[1]または[2]に記載のゴム組成物。
[4] 上記脂肪酸金属塩が、脂肪酸亜鉛塩である、[1]~[3]のいずれかに記載のゴム組成物。
[5] 上記シリカの含有量が、上記アクリロニトリルブタジエン共重合体100質量部に対して10~60質量部である、[1]~[4]のいずれかに記載のゴム組成物。
[6] マリンホースの形成に用いられる、[1]~[5]のいずれかに記載のゴム組成物。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載のゴム組成物を用いて形成されたマリンホース。
[8] 上記ゴム組成物を用いて形成された最内層を有する、[7]に記載のマリンホース。
【発明の効果】
【0009】
以下に示すように、本発明によれば、作製されるマリンホースの耐油性と製品寿命とを優れたレベルで両立させることができるゴム組成物およびそれを用いて作製したマリンホースを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
また、本明細書において、特に断りのない限り、各成分の製造方法は特に制限されない。例えば従来公知の方法が挙げられる。
【0011】
[ゴム組成物]
本発明のゴム組成物は、アクリロニトリルブタジエン共重合体(以下、「NBR」とも略す。)と、シリカと、脂肪酸金属塩とを含有するゴム組成物である。
また、本発明のゴム組成物は、上記脂肪酸金属塩の含有量が、上記シリカの質量に対して5質量%以上50質量%未満である。
【0012】
本発明においては、上述した通り、NBRと、シリカと、特定量の脂肪酸金属塩とを含有するゴム組成物を用いると、作製されるマリンホースの耐油性と製品寿命とを優れたレベルで両立させることができる。
これは、詳細には明らかではないが、本発明者は以下のように推測している。
すなわち、脂肪酸金属塩の含有量が、シリカの質量に対して5質量%以上50質量%未満であることにより、NBRとシリカとのバウンドラバーが形成され易くなり、耐油性が向上したと考えられる。
また、脂肪酸金属塩の脂肪酸の部位が、ゴム組成物において可塑剤的に機能するため、破断伸びが向上し、製品寿命が延びたと考えられる。
以下、本発明のゴム組成物に含有される各成分について詳述する。
【0013】
〔アクリロニトリルブタジエン共重合体〕
本発明のゴム組成物に含有されるNBRは、アクリロニトリルとブタジエンとの共重合体、または、その水素添加物である。
【0014】
<アクリロニトリル量>
NBRのアクリロニトリル量は、作製されるマリンホースの耐油性がより良好となる理由から、NBR全量に対して、30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、43質量%以上であることが特に好ましい。
また、NBRのアクリロニトリル量は、NBR全量に対して、50質量%以下であることが好ましく、加工性に優れるという理由から、48質量%以下であることがより好ましい。
本発明において、NBRのアクリロニトリル量(結合アクリロニトリル量)は、JIS K6451-2:2016に準じてケルダール法で測定できる。
【0015】
<ムーニー粘度>
NBRのムーニー粘度は、接着性に優れ、作製されるマリンホースの耐油性と製品寿命とを更に優れたレベルで両立させることができる理由から、45~85であることが好ましく、45~60であることがより好ましい。
本発明において、アクリロニトリル-ブタジエンゴムのムーニー粘度は、JIS K6300-1:2013に準じ、100℃の条件下で測定できる。
【0016】
NBRの含有量は、作製されるマリンホースの耐油性と製品寿命とを更に優れたレベルで両立させることができる理由から、NBRを含むゴム成分全体の質量に対して、80~100質量%が好ましく、100質量%がより好ましい。
【0017】
〔その他のゴム〕
本発明のゴム組成物は、NBR以外のゴム成分を含むことができる。
上記ゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2-ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、および、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等のジエン系ゴムが挙げられる。
【0018】
〔シリカ〕
本発明のゴム組成物に含有されるシリカは特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
シリカは、作製されるマリンホースの耐油性と製品寿命とを更に優れたレベルで両立させることができる理由から、酸性シリカが好ましい。なお、酸性シリカのpHは、7より小さければ特に制限されない。
本発明において、シリカのpHは、JIS K5101-17-2:2004に準じて測定できる。
【0019】
シリカの含有量は、作製されるマリンホースの耐油性と製品寿命とを更に優れたレベルで両立させることができる理由から、NBR100質量部に対して10~60質量部であることが好ましく、15~50質量部であることがより好ましい。
【0020】
〔脂肪酸金属塩〕
本発明のゴム組成物に含有される脂肪酸金属塩は、脂肪酸と金属との塩である。
【0021】
脂肪酸金属塩の脂肪酸としては、具体的には、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、カプロン酸(ヘキサン酸)、ヘプタン酸、カプリル酸(オクタン酸)、ノナン酸、カプリン酸(デカン酸)、ラウリン酸(ウンデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、アラキジン酸(エイコサン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)、テトラコサン酸、ヘキサコサン酸等の飽和脂肪酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、エルカ酸等の不飽和脂肪酸;リシノレイン酸、ヒドロキシステアリン酸のヒドロキシ脂肪酸等が挙げられる。脂肪酸は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
これらの脂肪酸のうち、作製されるマリンホースの耐油性がより良好となる理由から、炭素数6以上の脂肪酸であることが好ましい。
【0023】
脂肪酸金属塩の金属としては、例えば、アルカリ金属(リチウム、カリウム、ナトリウムなど)、アルカリ土類金属(ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなど)、遷移金属(3~11族の金属)、亜鉛、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、アンチモン等が挙げられる。
【0024】
これらの金属のうち、脂肪酸と錯体を形成しやすいという理由から、亜鉛であることが好ましい。
【0025】
好ましい脂肪酸金属塩の具体例としては、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ラウリル酸亜鉛、リノール酸亜鉛等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
脂肪酸金属塩は、加工性が良好となる理由から、融点が85~105℃であることが好ましい。
本発明においては、脂肪酸金属塩の融点は、ASTM D3418に準じて示差走査熱量測定(DSC)により、10℃/minの昇温速度で測定できる。
【0027】
脂肪酸金属塩の含有量は、上述したシリカの質量に対して5質量%以上50質量%未満であり、5~45質量%であることが好ましい。
【0028】
〔カーボンブラック〕
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを含むことができる。
カーボンブラックは特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。
なかでも、カーボンブラックは、作製されるマリンホースの耐油性がより良好となる理由から、FTF(Fine Thermal Furnace)級、GPF(General Purpose Furnace)級、および、SRF(Semi-Reinforcing Furnace)級等のようなソフトカーボンが好ましく、FTF級またはSRF級のカーボンブラックがより好ましく、FTF級のカーボンブラックが更に好ましい。
【0029】
<カーボンブラックの窒素吸着比表面積>
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、作製されるマリンホースの耐油性がより良好となる理由から、20m/g以上40m/g以下であることが好ましく、20m/g以上30m/g以下であることがより好ましい。
本発明においては、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」に準じて測定できる。
【0030】
<カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量>
カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP吸油量)は、作製されるマリンホースの耐油性がより良好となる理由から、20ml/100g以上80ml/100g以下であることが好ましく、20ml/100g以上50ml/100g以下であることがより好ましい。
本発明においては、カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP吸油量)は、JIS K6217-4:2008「ゴム用カーボンブラック-基本特性-第4部:オイル吸収量の求め方(圧縮試料を含む)」に準じて測定できる。
【0031】
本発明のゴム組成物がカーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、接着性に優れ、作製されるマリンホースの耐油性がより良好となる理由から、NBR100質量部に対して、70質量部以上100質量部以下であることが好ましく、75質量部以上95質量部以下であることがより好ましく、80質量部以上90質量部未満であることが更に好ましい。
【0032】
〔硫黄〕
本発明のゴム組成物は、接着性に優れ、作製されるマリンホースの耐油性と製品寿命とを更に優れたレベルで両立させることができる理由から、硫黄を含むことが好ましい。
硫黄は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0033】
本発明のゴム組成物が硫黄を含有する場合、硫黄の含有量は、接着性に優れ、作製されるマリンホースの耐油性と製品寿命とを更に優れたレベルで両立させることができる理由から、NBR100質量部に対して、1~3質量部であることが好ましく、1~2質量部がより好ましい。
【0034】
〔添加剤〕
本発明のゴム組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、例えば、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、硫黄以外の加硫剤、加硫促進剤、接着助剤、加硫遅延剤、シリカおよびカーボンブラック以外の充填剤等、の添加剤を、更に含むことができる。
【0035】
本発明のゴム組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等)を用いて、混合する方法等が挙げられる。
本発明のゴム組成物を製造する際の混合温度は、例えば、50~120℃が好ましい。
また、本発明のゴム組成物は、従来公知の加硫条件で加硫することができる。
【0036】
本発明のゴム組成物は、マリンホースの形成に好適に用いることができる。
本発明のゴム組成物で形成されたマリンホースを製造する方法としては、例えば、まず、マンドレルに本発明の組成物のシートを巻き付ける。本発明のゴム組成物のシートをマンドレルに巻き付ける方法は特に制限されないが、例えば、シート同士を一部重ねながら(例えば螺旋状に)巻き付ける方法が挙げられる。次に、本発明のゴム組成物のシートの上には、例えば、樹脂層、補強層、中間ゴム層、浮力材層および最外層(例えば、カバーゴム層)からなる群から選ばれる少なくとも1種を積層させることができる。上記各種の層は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。また、上記各種の層について、例えば、材料、マリンホースにおける配置等は、特に制限されない。
上記のように得られた積層体を加硫等させることによって、最内層が本発明のゴム組成物で形成されたマリンホースを製造できる。
【0037】
マリンホースは一般的に大型なので、上記積層体を加硫等する際、初期段階において、上記積層体を、例えば、100~110℃の範囲で1~1.5時間加熱し、その後、130~147℃の条件で加熱して加硫等を完了させることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0038】
[マリンホース]
本発明のマリンホースは、本発明のゴム組成物を用いて形成されたマリンホースである。
【0039】
本発明のマリンホースに使用されるゴム組成物は、本発明のゴム組成物であれば特に制限されない。
本発明のマリンホースは、上記ゴム組成物を用いて形成されたこと以外、特に制限されない。
【0040】
〔最内層〕
本発明のマリンホースは、上記ゴム組成物を用いて形成された最内層を有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0041】
最内層が本発明のゴム組成物を用いて形成された場合、上記最内層の厚さは、例えば、1.5~8.0mmとできる。
【0042】
本発明のマリンホースは、最内層以外に、更に、補強層、中間ゴム層、最外層、樹脂層および浮力材層からなる群から選ばれる少なくとも1種を有することができる。
本発明のマリンホースは、補強層を1層または複数層有することができる。中間ゴム層も同様である。
【0043】
本発明のマリンホースは、例えば、最内層、補強層、最外層を上記の順に有することができる。
上記最内層と上記補強層との間、または、上記補強層と上記最外層との間に、更に、中間ゴム層を有することができる。
補強層を複数層有する場合、補強層と補強層との間に、更に、中間ゴム層を有することができる。
本発明のマリンホースが補強層を複数層有し、補強層と補強層との間に中間ゴム層を有することができる場合、マリンホースの形態としては、例えば、最内層/[中間ゴム層/補強層]/中間ゴム層/最外層が挙げられる。上記形態において、マリンホースは、[中間ゴム層/補強層]をn層有することができる。nは例えば2~10とできる。[中間ゴム層/補強層]は、例えば、中間ゴム層と補強層との積層体、又は、中間ゴム層がコートゴムとして予め補強層に付与されたものを意味する。
【0044】
〔補強層〕
本発明のマリンホースが更に有することができる補強層は特に限定されない。
上記補強層の材質としては、例えば、金属、繊維材料(ポリアミド、ポリエステル等)が挙げられる。
上記補強層は表面処理されたものであってもよい。また、上記補強層は、例えば、中間ゴム層がコートゴムとして予め補強層に付与されたものであってもよい。
上記補強層の形態としては、例えば、スパイラル構造および/またはブレード構造に編組されたもの、織布(例えば、帆布)、不織布等が挙げられる。
上記補強層(例えば、1層の補強層)の厚さ(またはコートゴムが予め付与された補強層の厚さ)は、例えば、0.5~1.5mmとできる。
【0045】
〔中間ゴム層〕
本発明のマリンホースが更に有することができる中間ゴム層は特に限定されない。
上記中間ゴム層に含まれるゴムとしては、例えば、天然ゴムおよび/または合成ゴムが挙げられる。
上記中間ゴム層の厚さは、例えば、2.0~8.0mmとできる。
コートゴムが予め片面又は両面に付与された補強層によって中間ゴム層が形成される場合、上記補強層(コートゴム層を除く)間の中間ゴム層の厚さは、例えば、0.5mm以上とできる。
【0046】
〔最外層〕
本発明のマリンホースが更に有することができる最外層は特に限定されない。
上記最外層を例えばゴム層とできる。
上記最外層に含まれるゴムとしては、例えば、天然ゴムおよび/または合成ゴムが挙げられる。
上記最外層の厚さは、例えば、2.0~10.0mmとできる。
【0047】
本発明のマリンホースの内径は特に制限されない。例えば、10~30インチとできる。
本発明のマリンホースの長さは特に制限されない。例えば、5~20メートルとできる。
【実施例
【0048】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0049】
[比較例1~4および実施例1~10]
〔ゴム組成物の調製〕
下記表1に記載する各成分を同表に示す組成(質量部)で配合し、ゴム組成物を調製した。
具体的には、まず、下記表1に示す成分のうち、硫黄および加硫促進剤を除く成分を、1.5リットルの密閉型ミキサーで100℃の条件下で5分間混合してマスターバッチを得た。次に、得られたマスターバッチに硫黄および加硫促進剤を下記表1に示す量で加え、これらをオープンロールで50℃の条件下で混合し、ゴム組成物を調製した。
【0050】
[評価]
調製した各ゴム組成物を用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
〔初期試験片の作製〕
調製した各ゴム組成物を148℃のプレス成型機を用い、面圧3.0MPaの圧力下で195分間加硫して、2mm厚の加硫シートを作製した。
JIS K6251:2017に準じて、上記加硫シートからJIS規格の3号ダンベルを打ち抜き、初期試験片を作製した。
【0051】
〔耐油性〕
初期試験片を、JIS K6285:2016の付属書Aに規定される試験用燃料油C〔2,2,4-トリメチルペンタン(イソオクタン)とトルエンの体積分率が50対50〕に室温の条件下で48時間浸漬させた。
浸漬前後において、各試験片の体積を測定し、下記式から体積変化率を算出した。
なお、体積変化率が27%未満であれば、耐油性に優れると評価することができ、体積変化率が0%に近いほど、耐油性により優れると評価することができる。
体積変化率(%)=[(浸漬後の体積-浸漬前の体積)/(浸漬前の体積)]×100
【0052】
〔破断伸び(製品寿命)〕
初期試験片を用いて、JIS K6251:2017に準拠して、室温の条件下で引張速度500mm/分で引張試験を行い、破断時伸び(EB)[%]を測定した。
なお、EBが495%以上であると、マリンホースの製品寿命が長いと評価することができる。
【0053】
【表1】
【0054】
上記表1に示されている各成分の詳細は以下のとおりである。
・NBR:Nipol DN005M(アクリロニトリル量:45質量%、ムーニー粘度:50、日本ゼオン社製)
・カーボンブラック:FTカーボンブラック(アサヒサーマル、窒素吸着比表面積24m/g、ジブチルフタレート吸油量28ml/100g、旭カーボン社製)
・シリカ:ニップシールAQ(東ソー・シリカ社製)
・脂肪酸金属塩1:混合脂肪酸亜鉛(商品名:STRUKTOL EF44、融点:95℃、SCHILL&SEILACHER GMBH & CO.社製)
・脂肪酸金属塩2:混合脂肪酸亜鉛(商品名:Aktiplast ST、融点:85~100℃、RheinChemie社製)
・酸化亜鉛:酸化亜鉛3種(正同化学工業社)
・ステアリン酸:ステアリン酸YR(NOF CORPORATION社製)
・可塑剤:フタル酸ジイソノニル(ジェイ・プラス社製)
・硫黄:油処理イオウ(細井化学工業社製)
・加硫促進剤:ノクセラーCZ-G(大内新興化学工業社製)
【0055】
上記表1に示す結果から、脂肪酸金属塩を配合しない場合は、耐油性が劣ることが分かった(比較例1)。
また、脂肪酸金属塩の含有量が、シリカの質量に対して50質量%以上であると、耐油性が劣ることが分かった(比較例2および3)。
また、脂肪酸金属塩の含有量が、シリカの質量に対して5質量%未満であると、破断伸びが低く、製品寿命に劣ることが分かった(比較例4)。
【0056】
一方、上記表1に示す結果から、アクリロニトリルブタジエン共重合体と、シリカと、脂肪酸金属塩とを含有し、上記脂肪酸金属塩の含有量が、上記シリカの質量に対して5質量%以上50質量%未満であると、作製されるマリンホースの耐油性と製品寿命とを優れたレベルで両立できることが分かった(実施例1~10)。