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特許7495596交換支援システム、交換支援方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】交換支援システム、交換支援方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20240529BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20240529BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20240529BHJP
   G01M 17/02 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
G06Q10/20
B60C19/00 J
B60C13/00 A
B60C19/00 H
G01M17/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020024483
(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公開番号】P2021128696
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金成 大輔
【審査官】小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-187125(JP,A)
【文献】特開2019-035626(JP,A)
【文献】特開2018-020752(JP,A)
【文献】特開2019-184405(JP,A)
【文献】特開2018-040635(JP,A)
【文献】特開平10-320527(JP,A)
【文献】特開2003-178219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
B60C 19/00
B60C 13/00
G01M 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用されている製品の画像を取得する画像取得手段と、
前記取得された画像に基づいて、前記製品の交換の必要性を判定する交換判定手段と、
前記取得された画像に基づいて、前記製品が複数の種類のうちいずれであるかを判定する種類判定手段と、
前記種類判定手段により判定された種類の特性を示す情報を取得し前記判定された種類の特性を示すデータと、複数の種類のそれぞれの特性を示すデータに基づいて、前記複数の種類から交換の候補となる種類を決定する決定手段と、
前記判定された交換の必要性に基づいて、前記決定された種類を通知先へ通知する通知手段と、
を含む交換支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の交換支援システムにおいて、
前記種類は、前記製品のブランド、型番、およびメーカーのうち少なくとも1つである、
交換支援システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の交換支援システムにおいて、
前記交換判定手段は、製品の画像と当該製品の消耗の程度を示す教師データとを用いて学習された判定器を含む、
交換支援システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の交換支援システムにおいて、
前記製品はタイヤである、
交換支援システム。
【請求項5】
請求項4に記載の交換支援システムにおいて、
前記画像取得手段は、前記使用されている製品のトレッドおよびサイドウォールの画像を取得する、
交換支援システム。
【請求項6】
請求項5に記載の交換支援システムにおいて、
前記取得されたサイドウォールの画像に含まれる製造時期に基づいて、前記製品の交換の必要性を判定する、
交換支援システム。
【請求項7】
請求項4から6のいずれかに記載の交換支援システムにおいて、
前記種類判定手段は、前記取得された画像に基づいて、前記製品のサイズと前記種類とを判定し、
前記決定手段は、前記判定されたサイズ、前記判定された種類、複数の種類のそれぞれに存在するサイズ、および、複数の種類のそれぞれの特性を示すデータに基づいて、前記複数の種類から交換の候補となる種類を決定する、
交換支援システム。
【請求項8】
請求項4から7のいずれかに記載の交換支援システムにおいて、
前記特性は、価格、ブレーキ性能、転がり抵抗、快適性、耐摩耗性、静粛性、氷雪性能のうち少なくとも一部を含む、
交換支援システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の交換支援システムにおいて、
前記通知手段は、前記判定された種類の特性と、前記決定された種類の特性との違いに基づいて、前記決定された種類の提案情報を作成し、前記通知先に通知する、
交換支援システム。
【請求項10】
請求項4から9のいずれかに記載の交換支援システムにおいて、
前記画像取得手段は、前記製品を装着する車両が停車する場所において前記製品を撮影する撮像手段から前記製品の画像を取得する、
交換支援システム。
【請求項11】
コンピュータが、
使用されている製品の画像を取得するステップと、
前記取得された画像に基づいて、前記製品の交換の必要性を判定するステップと、
前記取得された画像に基づいて、前記製品が複数の種類のうちいずれであるかを判定するステップと、
前記判定された種類の特性を示す情報を取得し前記判定された種類の特性を示すデータと、複数の種類のそれぞれの特性を示すデータに基づいて、前記複数の種類から交換の候補となる種類を決定するステップと、
前記判定された交換の必要性に基づいて、前記決定された種類を通知先へ通知するステップと、
を含む交換支援方法。
【請求項12】
使用されている製品の画像を取得する画像取得手段、
前記取得された画像に基づいて、前記製品の交換の必要性を判定する交換判定手段、
前記取得された画像に基づいて、前記製品が複数の種類のうちいずれであるかを判定する種類判定手段、
前記種類判定手段により判定された種類の特性を示す情報を取得し前記判定された種類の特性を示すデータと、複数の種類のそれぞれの特性を示すデータに基づいて、前記複数の種類から交換の候補となる種類を決定する決定手段、および、
前記判定された交換の必要性に基づいて、前記決定された種類を通知先へ通知する通知手段、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換支援システム、交換支援方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばタイヤのように、使用により状態が変化し、最終的に寿命を迎える製品がある。この寿命を非接触で判定する技術が開発されている。
【0003】
特許文献1には、畳み込みニューラルネットワークを用いてタイヤの画像からタイヤ種や摩耗状態などを認識できる認識方法および認識装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、車止めに配置されたレーザ変位計を用いてタイヤの溝の深さを測定することが開示されている。特許文献3には、超音波を用いてタイヤの溝の深さを計測する測定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-35626号公報
【文献】特開2019-86293号公報
【文献】特公平5-62924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えばタイヤのような製品は、その交換のタイミングを適切に認識することが容易でない。しかも、例えばその製品のサイズや性能が多様であるため、寿命を判定しただけでは適切に交換を行うことが難しい。
【0007】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであって、その目的は、使用により消耗する製品の適切な交換を支援する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかる交換支援システムは、使用されている製品の画像を取得する画像取得手段と、前記取得された画像に基づいて、前記製品の交換の必要性を判定する交換判定手段と、前記取得された画像に基づいて、前記製品が複数の種類のうちいずれであるかを判定する種類判定手段と、前記判定された種類、および、複数の種類のそれぞれの特性を示すデータに基づいて、前記複数の種類から交換の候補となる種類を決定する決定手段と、前記判定された交換の必要性に基づいて、前記決定された種類を通知先へ通知する通知手段と、を含む。
【0009】
本発明の一態様では、前記種類は、前記製品のブランド、型番、およびメーカーのうち少なくとも1つであってよい。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記交換判定手段は、製品の画像と当該製品の消耗の程度を示す教師データとを用いて学習された判定器を含んでよい。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記製品はタイヤであってよい。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記画像取得手段は、前記使用されている製品のトレッドおよびサイドウォールの画像を取得してよい。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記取得されたサイドウォールの画像に含まれる製造時期に基づいて、前記製品の交換の必要性を判定してよい。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記種類判定手段は、前記取得された画像に基づいて、前記製品のサイズと前記種類とを判定し、前記決定手段は、前記判定されたサイズ、前記判定された種類、複数の種類のそれぞれに存在するサイズ、および、複数の種類のそれぞれの特性を示すデータに基づいて、前記複数の種類から交換の候補となる種類を決定してよい。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記特性は、価格、ブレーキ性能、転がり抵抗、快適性、耐摩耗性、静粛性、氷雪性能のうち少なくとも一部を含んでよい。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記通知手段は、前記判定された種類の特性と、前記決定された種類の特性との違いに応じた態様により、前記決定された種類を前記通知先に通知してよい。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記画像取得手段は、前記製品を装着する車両が停車する場所において前記製品を撮影する撮像手段から前記製品の画像を取得してよい。
【0018】
また、本発明にかかる交換支援方法は、使用されている製品の画像を取得するステップと、前記取得された画像に基づいて、前記製品の交換の必要性を判定するステップと、前記取得された画像に基づいて、前記製品が複数の種類のうちいずれであるかを判定するステップと、前記判定された種類、および、複数の種類のそれぞれの特性を示すデータに基づいて、前記複数の種類から交換の候補となる種類を決定するステップと、前記判定された交換の必要性に基づいて、前記決定された種類を通知先へ通知するステップと、を含む。
【0019】
また、本発明にかかるプログラムは、使用されている製品の画像を取得する画像取得手段、前記取得された画像に基づいて、前記製品の交換の必要性を判定する交換判定手段、前記取得された画像に基づいて、前記製品が複数の種類のうちいずれであるかを判定する種類判定手段、前記判定された種類、および、複数の種類のそれぞれの特性を示すデータに基づいて、前記複数の種類から交換の候補となる種類を決定する決定手段、および、前記判定された交換の必要性に基づいて、前記決定された種類を通知先へ通知する通知手段、としてコンピュータを機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態にかかる情報処理システムの構成の一例を示す図である。
図2】タイヤを備える車両の一例を模式的に示す側面図である。
図3図2に示される車両を模式的に示す上面図である。
図4】情報処理装置が実現する機能を示すブロック図である。
図5】情報処理装置の処理の概要を示すフロー図である。
図6】撮影されたトレッドの画像の一例を示す図である。
図7】撮影されたサイドウォールの画像の一例を示す図である。
図8】提案ブランド決定部の処理の一例を示すフロー図である。
図9】ブランドの特性情報の一例を説明する図である。
図10】ブランドの特性情報の一例を説明する図である。
図11】提案情報生成部の処理の一例を示すフロー図である。
図12】交換判定部の処理の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。同じ符号を付された構成に対しては、重複する説明を省略する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態にかかる情報処理システムの構成の一例を示す図である。本実施形態にかかる情報処理システムは、情報処理装置1と、通知装置21と、撮影装置22a,22bとを含む。情報処理装置1は、パーソナルコンピュータなどのコンピュータである。図1に示すように情報処理装置1は、例えば、プロセッサ11、記憶部12、通信部13、入出力部14を含む。
【0023】
プロセッサ11は、例えばCPUのように、記憶部12に記憶されたプログラムやデータに従って処理を実行する。またプロセッサ11は通信部13、入出力部14、を制御する。
【0024】
記憶部12は、RAMなどの揮発性メモリと、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリと、ハードディスクなどの記憶装置と、を含む。記憶部12は、上記プログラムを格納する。また、記憶部12は、プロセッサ11、通信部13、入出力部14から入力される情報や演算結果を格納する。上記プログラムは、インターネット等を介して提供されてもよいし、フラッシュメモリや光ディスク等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納されて提供されてもよい。
【0025】
通信部13は、無線通信用の通信インタフェースを実現する集積回路等を含む。通信部13は、プロセッサ11の制御に基づいて、他の装置から受信した情報をプロセッサ11や記憶部12に入力し、他の装置に情報を送信する。
【0026】
入出力部14は、表示出力デバイス、音声出力デバイスおよび入力デバイスへのインタフェースにより構成される。表示出力デバイスは例えば液晶ディスプレイであり、音声出力デバイスは例えばスピーカであり、入力デバイスは例えばキーボードやマウスなどのユーザインタフェースである。入出力部14は、表示出力デバイス、音声出力デバイスおよび入力デバイスを含んでもよい。
【0027】
通知装置21は、ユーザに情報を提示する装置であり、例えば、表示出力デバイス、音声出力デバイス、および、画像を印刷するデバイスのうちいずれかである。通知装置21は、例えばスマートフォンのような、ユーザが所有する携帯デバイスであってもよい。
【0028】
撮影装置22aおよび22bは、カメラなどの撮影デバイスであり、撮影によって生成される画像を情報処理装置1へ出力する。撮影装置22bは、三次元画像が撮影可能なステレオカメラや、奥行き画像が撮影可能なデプスカメラのような、深さ情報を含む画像を撮影するデバイスであってもよい。
【0029】
図2は、タイヤ32を備える車両30の一例を模式的に示す側面図である。図3は、図2に示される車両30を模式的に示す上面図である。撮影装置22a,22bは、タイヤ32を装着する車両30が停車する場所においてタイヤ32を撮影することが可能な場所に設置されている。例えば、撮影装置22a,22bは、駐車場やガソリンスタンドに設置されており、車両30は、例えば、撮影される際にはその駐車場やガソリンスタンドに駐車している。
【0030】
この場合、通知装置21は、駐車場やガソリンの代金を支払う箇所に設けられたディスプレイやスピーカであってもよいし、通知を含むレシートを印刷するプリンタであってもよい。なお、撮影装置22a,22bがエスカレータに配置され、ユーザが履いている靴の靴底を撮影し、通知装置21としてエスカレータの降り口に広告を表示するモニタが設置されてもよい。
【0031】
図2および図3に示すように、本実施形態では、撮影装置22aは、車両30の左後輪として装着されるタイヤ32の左側面が撮影可能な位置に配置される。また、撮影装置22bは、車両30の左後輪として装着されるタイヤ32のトレッド面が撮影可能な位置に配置される。図2および図3には左後輪が撮影される例を示しているが、右後輪および左右前輪も撮影されてよい。
【0032】
本実施形態では、撮影装置22aにより撮影されたトレッド画像40(図6参照)と、撮影装置22bにより撮影されたサイドウォール画像34(図7参照)とに基づいて、タイヤ32の交換の必要性を判定し、ユーザに通知するタイヤの種類(特にブランド)を決定する。以下では、この処理について説明する。
【0033】
図4は、情報処理装置1が実現する機能を示すブロック図である。情報処理装置1は、機能的に、画像取得部51、交換判定部52、種類判定部53、提案ブランド決定部55、提案情報出力部56を含む。これらの機能は、記憶部12に格納されるプログラムをプロセッサ11が実行し、さらにプロセッサ11が必要に応じて通信部13および入出力部14を制御することにより実装される。また、図4に示される機能は、複数のコンピュータにより実行されてもよい。
【0034】
画像取得部51は、タイヤ32の画像を取得する。タイヤ32はユーザにより使用されている製品であって消耗により形状が変化する商品である。タイヤ32は空気入りタイヤであってよく、空気入りタイヤには空気、窒素等の不活性ガス及びその他の期待を充填することができる。画像取得部51はタイヤ32の代わりに靴底の画像を取得してもよい。
【0035】
交換判定部52は、取得された画像に基づいて、撮影されたタイヤ32の交換の必要性を判定する。交換判定部52は、タイヤ32の画像とタイヤ32の消耗の程度を示す教師データとを用いて学習された判定器を含む。
【0036】
種類判定部53は、取得された画像に基づいて、撮影されたタイヤ32が予め定められた複数の種類のうちいずれかであるか判定する。タイヤの種類は、製品のブランド、型番、メーカーのうち少なくとも1つを含む。また種類判定部53は、取得された画像に基づいて、撮影されたタイヤ32のサイズを取得する。
【0037】
提案ブランド決定部55は、判定されたタイヤ32の種類、および、あらかじめ定められた複数の種類のそれぞれの特性を示すデータに基づいて、その複数の種類から交換の候補となる種類を決定する。特性は、価格、ブレーキ性能、転がり抵抗、快適性、耐摩耗性、静粛性、氷雪性能のうち少なくとも一部を含む。
【0038】
提案情報出力部56は、判定された交換の必要性に基づいて、決定された種類を含む情報を通知先となるユーザに向けて出力することにより、そのユーザにその決定された種類を通知する。より具体的には、通知装置21へ向けて決定された種類を示す画像または音声の情報を出力し、通知装置21は、ユーザにその画像または音声を出力する。なお、通知先となるユーザはタイヤに応じて定まればよく、タイヤまたは車両を使用するユーザと通知先となるユーザとが異なっていてもよい。例えば、車両およびタイヤの所有者が法人である場合には、通知装置21は、その法人の窓口となるメールアドレス等へその決定された種類を含むメールを出力してもよい。
【0039】
図5は情報処理装置1の処理の概要を示すフロー図である。はじめに、情報処理装置1の画像取得部51は、撮影装置22a,22bからタイヤ32のトレッド画像40およびサイドウォール画像34を取得する(ステップS101)。
【0040】
図6は、撮影装置22bによって撮影されたタイヤ32のトレッド画像40の一例を示す図である。図6の例では、トレッド面のスリップサイン42が写っている。主溝44のそれぞれに数か所のスリップサイン42が設けられている。またトレッド画像40には、トレッドパターンも写っていてよい。なお、図6に示すトレッド画像40では、トレッドパターンの記載は省略されている。トレッド画像40においてスリップサイン42およびトレッド面の表面が写る着目領域46は、タイヤ32の摩耗の判定に用いられる。
【0041】
図7は、撮影装置22aによって撮影される、タイヤ32の左側面が写るサイドウォール画像34の一例を示す図である。図7に示すように、サイドウォール画像34には、タイヤ32のサイドウォールに刻印された、ブランド記載36a、メーカー記載36b、製造時期記載36c、サイズ記載38が写っている。図7では記載が省略されているが、サイドウォール画像34にタイヤ32のショルダー部に刻印された側面のスリップサインが写っていてもよい。側面のスリップサインは着目領域46の特定に用いられてよい。
【0042】
トレッド画像40およびサイドウォール画像34が取得されると、種類判定部53はサイドウォール画像34に基づいて、タイヤ32のサイズを判定する(ステップS102)。より具体的には、種類判定部53は、サイドウォール画像34に含まれるサイズ記載38を公知の文字認識技術により認識することによりタイヤ32のサイズを判定する。
【0043】
そして種類判定部53は、サイドウォール画像34およびトレッド画像40に基づいて、タイヤ32のブランドを判定する(ステップS103)。より具体的には、種類判定部53は、サイドウォール画像34に含まれるブランド記載36aを公知の文字認識技術により認識し、さらにトレッド画像40に含まれるトレッドパターンと各ブランドのトレッドパターンとの類似度を算出し、認識されたブランド記載36aの文字と算出された類似度とに基づいてタイヤ32のブランドを判定する。なお、種類判定部53はサイドウォール画像34およびトレッド画像40のうち一方のみに基づいてブランドを判定してもよい。また、種類判定部53は、サイドウォール画像34に含まれるメーカー記載36bまたは製造時期記載36cを公知の文字認識技術により認識し、それぞれメーカー名または製造時期を取得してもよい。種類判定部53は、取得されたメーカーが特定のメーカーである場合には、ブランドを判定する処理を実行しなくてもよい。また種類判定部53はブランドの代わりに型番そのものを判定してもよい。
【0044】
ブランドなどが取得されると、交換判定部52は、トレッド画像40および機械学習モデルに基づいて、タイヤ32の交換の必要性を判定する(ステップS104)。より具体的には、交換判定部52は、トレッド画像40の着目領域46を所定画素数の画像となるよう拡大または縮小してターゲット入力画像を生成し、生成されたターゲット入力画像を学習済の機械学習モデルに入力した際の出力に基づいて、タイヤ32の摩耗度を判定する。また交換判定部52は、タイヤ32の摩耗度を交換の必要性として出力する。なお、交換判定部52は、スリップサイン42を含まない領域の画像に基づいてタイヤ32の摩耗度を判定してもよい。
【0045】
機械学習モデルは、本実施形態では例えば、アダブースト、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、サポートベクタマシン(SVM)、最近傍識別器、などの機械学習が実装された機械学習モデルである。機械学習モデルは、入力に応じて、例えばタイヤ32の摩耗度が正常であるか異常であるかを示す1ビットのデータを出力してもよいし、タイヤ32の摩耗度が予め定められた複数の段階のうちいずれであるかを示すデータを出力してもよい。
【0046】
機械学習モデルは、予め、学習入力画像と教師データとを含む学習データにより学習されている。この学習データには、タイヤ32のトレッド面が写る所定画素数の画像である学習入力画像と、当該学習入力画像に写るタイヤ32の摩耗度を示す所与の教師データと、が含まれている。
【0047】
学習入力画像は、タイヤ32のトレッド面が写る所定画素数の画像である。ここで学習入力画像の画素数は、上述のターゲット入力画像の画像の画素数と同じである。例えば、学習入力画像において、スリップサイン42の位置が定まっていてよい。また学習用入力画像は、予め収集された複数の画像であってトレッド画像40と同様の画像から着目領域46に相当する所定画素数の領域を抽出し、拡大または縮小することで生成されてもよい。
【0048】
機械学習モデルの教師あり学習においては、例えば、学習入力画像が機械学習モデルに入力する処理、学習入力画像を機械学習モデルに入力した際の出力を用いて、機械学習モデルを学習する処理が行われる。例えば、教師あり学習において、学習データに含まれる学習入力画像を機械学習モデルに入力した際の出力と、当該学習データに含まれる教師データと、の差が特定され、その特定される差に基づいて機械学習モデルのパラメータの値が更新されてよい。
【0049】
そして、タイヤ32の交換の必要性がないと判定された場合は(ステップS105のN)、処理が終了し通常の広告等がユーザに通知される。
【0050】
一方、タイヤ32の交換の必要性があると判定された場合は(ステップS105のY)、判定されたブランドまたはメーカーに基づいて、提案ブランド決定部55はユーザに提案するブランドを決定する(ステップS106)。そして、提案情報出力部56は決定された提案ブランドを含む提案情報を生成し(ステップS107)、生成された提案情報を通知装置21へ出力することにより、提案情報をユーザに通知する(ステップS108)。
【0051】
以下ではブランドを決定するステップS106の処理についてさらに詳細に説明する。図8は提案ブランド決定部55の処理の一例を示すフロー図である。
【0052】
はじめに、提案ブランド決定部55は、種類判定部53により判定されたブランド(以下では基準ブランドとも記載する)の価格帯および性能(以下ではそれぞれ基準価格帯および基準性能と記載する)を取得する(ステップS201)。より具体的には、提案ブランド決定部55は、判定されたブランドおよびサイズに関連付けられた性能を示す情報と、価格帯を示す値とを特性情報として取得する。
【0053】
ここで、予め、記憶部12にはブランドおよびサイズごとに特性情報が格納されているものとする。特定情報のうち性能を示す情報(項目)としては、転がり抵抗の値、ブレーキ性能の値、快適性、耐摩耗性、静粛性、氷雪性能を示す値がある。特性情報にはこれらの一部が含まれていなくてもよいし、他の情報が含まれてもよい。なお、基準ブランドの性能の項目のそれぞれについての値を基準値とよぶ。また記憶部12にはブランドによるタイヤ32のサイズの存在の有無を示す情報が格納されている。単に記憶部12にブランドおよび存在するサイズに特性情報を関連付けることにより、サイズの存在の有無が示されてもよい。また特性情報は、ブランドの代わりとしてのメーカーまたは型番と、サイズとに関連付けて記憶部12に格納されてもよい。
【0054】
図9,10は、ブランドの特性情報の一例を説明する図であり、特定のサイズ(205/55R16)を有するブランドの価格帯および性能をプロットした図であり、例えば「A社製A」「A社製B」は、メーカーがA社であり、そのなかの互いに異なるブランドであることを示す。なお、図9および図10におけるブランドの記載は省略されているため、図9,10においてブランドの記載が同じ(例えば「A社製A」と「B社製A」)であっても実際は互いに異なるブランドであるとする。
【0055】
判定されたブランドにおける基準価格帯および基準性能が取得されると、提案ブランド決定部55は、判定されたサイズを有する所定の会社のブランドから、価格帯および性能が、判定されたブランドと所定の関係を有する1または複数のブランドを選択する(ステップS202)。より具体的には、提案ブランド決定部55は、判定されたサイズを有する特定の会社のブランドから、基準価格帯より大きい価格帯の値を有し、かつ、基準性能より性能が優れているブランドを選択する。ここで、提案ブランド決定部55は、ブレーキ性能、転がり性能、快適性、耐摩耗性、静粛性、氷雪性能のうち少なくとも一つの項目が、基準ブランドより優れているブランドを、基準性能より性能が優れているブランドとして選択してよい。ある項目が基準ブランドより優れているとは、その項目が、値が大きいほど性能が高いことを示すものである場合には、その項目の値が基準値より大きいことであり、値が小さいほど性能が高いことを示すもの(例えば転がり抵抗、耐摩耗性、静粛性)である場合には、その項目の値が基準値より小さいことである。
【0056】
また、提案ブランド決定部55は、基準価格帯の値に応じてブランドを選択する条件を切り替えてもよい。例えば、基準価格帯が閾値より小さい(価格が比較的安い)場合には、価格帯が基準価格帯より小さい特定の会社のブランドを選択し、基準価格帯の値が閾値より大きい(価格が比較的高い)場合には、性能の値が基準性能より大きいブランドを選択してもよい。また、提案ブランド決定部55は、基準性能の快適性の値を中心とする一定の範囲内にある快適性の値を有する特定の会社のブランドのうちからブランドを選択してもよい。
【0057】
ブランドが選択されると、提案ブランド決定部55は、選択されたブランドをソートし、ソートされたブランドのリストを記憶部12に格納する(ステップS203)。例えば、提案ブランド決定部55は、基準価格帯および基準性能の値に対する、価格帯および性能の値の距離が小さいものが上位となるようにソートしてよい。
【0058】
次に、提案情報を出力するためのステップS107およびステップS108の処理についてさらに詳細に説明する。図11は提案情報出力部56の処理の一例を示すフロー図である。
【0059】
はじめに、提案情報出力部56は、提案ブランド決定部55によって記憶部12に記憶されたブランドのリストから1番目のブランドを取得する(ステップS301)。そして、提案情報出力部56は、撮影されたタイヤ32の判定されたブランドに対する、取得されたブランドの価格帯および性能の差異を算出する(ステップS302)。より具体的には、価格帯、転がり抵抗の値、ブレーキ性能の値、快適性を示す値のそれぞれについて、撮影されたタイヤ32から判定された値と、リストから取得されたブランドにおける値との差を算出する。また提案情報出力部56は算出された各項目の差異をブランドと関連付けて記憶部12に格納する。なお提案情報出力部56は撮影されたタイヤ32から判定された値に対してリストから取得されたブランドにおける値が大きいまたは小さいか否かのみを算出してもよい。
【0060】
そして、リストからすべてのブランドが取得されていない場合には(ステップS303のN)、提案情報出力部56はリストから次のブランドを取得し(ステップS304)、ステップS302以降の処理を繰り返す。
【0061】
一方、リストからすべてのブランドが取得された場合には(ステップS303のY)、提案情報出力部56は、各ブランドにおいて算出された差異に基づいて、その差異に応じた提案情報を生成する(ステップS305)。例えば、提案情報出力部56は、ブランドのそれぞれについて、撮影されたタイヤ32の判定されたブランドに対する価格帯の差が価格閾値以下の場合には、「コストパフォーマンスで選ぶならこのブランド」という提案文とそのブランドを説明する情報(説明情報)を含む提案情報を作成する。同様に、提案情報出力部56は、転がり抵抗の値の差が抵抗閾値以上の場合には、「低燃費ならこのブランド」という提案文と説明情報を含む提案情報を作成し、快適性の値の差が性能閾値より大きい場合には「走り重視ならこのブランド」という提案文と説明情報とを含む提案情報を作成してよい。また提案文の代わりに、説明文に各ブランドの価格帯および性能を記載し、よりメリットのある価格帯および性能の項目を強調する画像を生成してもよい。また提案情報に各ブランドのタイヤの販売場所や在庫状況が含まれてもよい。提案情報出力部56は、提案情報として画像の情報を生成してもよいし、提案情報として音声情報を生成してもよいし、提案情報としてメッセージのテキストの文面を生成してもよい。
【0062】
提案情報が生成されると、提案情報出力部56は、生成された提案情報を通知装置21へ送信し、通知装置21に提案情報を出力させる(ステップS306)。通知装置21は提案情報を受信し、その提案情報が示す画像や音声をユーザへ向けて出力する。
【0063】
本実施形態では、撮影装置22a,22bの画像によりタイヤ32の交換の必要性が判定され交換の提案がされる。これにより、ユーザがより適切なタイミングで交換の必要性を認識することが可能になる。また、撮影されるタイヤ32のブランドの特性の違いに応じて提案されるタイヤのブランドおよび提案情報が生成されることにより、よりユーザの志向にそった提案が可能になる。これらから、本実施形態により適切なタイヤ32の交換を支援することができる。またこの情報処理システムの導入により、システムの運営側がユーザによるタイヤ32の買い替えを促進し、利益を得ることも可能になる。
【0064】
これまでの説明では、交換判定部52はトレッド画像40に基づいてタイヤ32の交換の必要性を判定していたが、他の手法で交換の必要性を判定してもよい。図12は、交換判定部52の処理の変形例を示す図である。
【0065】
図12に示される処理では、交換判定部52は、取得されたサイドウォール画像34から認識された製造時期を取得する(ステップS501)。より具体的には、交換判定部52は、サイドウォール画像34に含まれる製造時期記載36cを公知の文字認識技術により認識することによりタイヤ32の製造時期を取得してよい。
【0066】
また、交換判定部52は、種類判定部53により判定されたブランドに応じた交換判定閾値を取得する(ステップS502)。より具体的には、記憶部12には、予め、複数のブランドのそれぞれに関連付けて交換判定閾値が格納されており、交換判定部52は、判定されたブランドに関連付けられた交換判定閾値を取得する。
【0067】
そして、交換判定部52は、製造時期からの経過期間が交換判定閾値より大きい(または交換判定閾値以上である)場合には(ステップS504のY)、タイヤ32を交換する必要性ありと判定する(ステップS504)。一方、製造時期からの経過期間が交換判定閾値以下である(または交換判定閾値より小さい)場合には(ステップS504のN)、タイヤ32を交換する必要性なしと判定する(ステップS505)。図12に示される処理は、例えばスタッドレスタイヤや一部のスポーティーなタイヤなどの経年劣化に考慮してタイヤ32の交換の必要性を判定するものである。経年劣化のしやすさはブランド等により異なるため、ブランドごとに判定基準を異ならせることでより適切に交換の必要性を判定することができる。もちろん、交換判定部52は、製造時期からの経過期間と、トレッド画像40との両方に基づいて交換の必要性を判定してもよい。
【0068】
これまでに本発明の実施形態について説明したが、発明はその記載された範囲のみに限定されるものではない。本実施形態における具体的な数値や文字列、並びに、図面中の具体的な数値や文字列は例示であり、これらの数値や文字列には限定されない。
【符号の説明】
【0069】
1 情報処理装置、11 プロセッサ、12 記憶部、13 通信部、14 入出力部、21 通知装置、22a,22b 撮影装置、30 車両、32 タイヤ、34 サイドウォール画像、36a ブランド記載、36b メーカー記載、36c 製造時期記載、38 サイズ記載、40 トレッド画像、42 スリップサイン、44 主溝、46 着目領域、51 画像取得部、52 交換判定部、53 種類判定部、55 提案ブランド決定部、56 提案情報出力部。
図1
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図11
図12