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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
B60C11/03 300B
B60C11/03 300E
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020080849
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021172325
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 駿
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-093102(JP,U)
【文献】特開2012-101572(JP,A)
【文献】特開平08-025914(JP,A)
【文献】特開2019-104415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ赤道面に最も近い位置に設けられ、タイヤ周方向に延在するセンター主溝と、前記センター主溝よりタイヤ幅方向外側に設けられ、タイヤ周方向に延在する外側主溝と、前記センター主溝と前記外側主溝とに交差する方向に延在するラグ溝とを含むトレッド部を有し、
前記センター主溝は、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度が互いに異なる第1直線部と第2直線部とを交互に接続したジグザグ形状を有し、
前記外側主溝は、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度が互いに異なり、かつ、タイヤ周方向長さが同じかまたは異なる第3直線部と第4直線部とを交互に接続したジグザグ形状を有し、
前記ラグ溝の溝中心線を延長した延長線は、前記外側主溝のジグザグ形状の前記第3直線部または前記第4直線部に交差し、
前記センター主溝の前記ジグザグ形状の1周期のタイヤ周方向長さに対する、前記第1直線部のタイヤ周方向長さの比が0.40以上0.60以下であり、
前記外側主溝の前記ジグザグ形状の1周期のタイヤ周方向長さに対する、前記第3直線部のタイヤ周方向長さの比が0.45以上0.75以下であり、
前記センター主溝の前記ジグザグ形状の1周期のタイヤ周方向長さに対する、前記外側主溝の前記ジグザグ形状の1周期のタイヤ周方向長さの比が0.90以上1.20以下である、
タイヤ。
【請求項2】
前記外側主溝の前記ジグザグ形状の周期と前記センター主溝の前記ジグザグ形状の周期との間に位相差があり、
前記センター主溝と前記外側主溝とがタイヤ幅方向に隣接する場合において、前記位相差に対応するタイヤ周方向長さの、前記センター主溝の前記ジグザグ形状の1周期のタイヤ周方向長さに対する比は、0.60以上0.85以下である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
複数の前記外側主溝を含み、
複数の前記外側主溝のうちのタイヤ幅方向外側の外側主溝の前記ジグザグ形状の周期と前記センター主溝の前記ジグザグ形状の周期との間の位相差に対応するタイヤ周方向長さの、前記センター主溝の前記ジグザグ形状の1周期のタイヤ周方向長さに対する比は、0.95以上1.15以下である、請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
複数の前記ラグ溝と複数の前記外側主溝とを含み、
複数の前記ラグ溝は、それぞれ、前記タイヤ赤道面から前記外側主溝まで延在しており、
複数の前記ラグ溝と前記センター主溝とによって複数のセンターブロックが区画され、
複数の前記ラグ溝と複数の前記外側主溝とによって複数の外側ブロックが区画され、
タイヤ周方向に隣り合う前記複数の外側ブロックの間における前記ラグ溝のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、タイヤ周方向に隣り合う前記複数のセンターブロックの間における前記ラグ溝のタイヤ周方向に対する傾斜角度よりも大きい、請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のタイヤ。
【請求項5】
タイヤ周方向に隣り合う前記複数のセンターブロックの間における前記ラグ溝のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、20度以上60度以下である、請求項4に記載のタイヤ。
【請求項6】
タイヤ周方向に隣り合う前記複数の外側ブロックの間における前記ラグ溝のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、60度以上89度以下である、請求項4または請求項5に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記外側ブロックが前記センターブロックのタイヤ幅方向外側に隣接する第1外側ブロックである場合、前記センターブロックのタイヤ幅方向長さに対する、前記第1外側ブロックのタイヤ幅方向長さの比は、0.80以上1.00以下であり、
前記外側ブロックが前記第1外側ブロックのタイヤ幅方向外側に位置する第2外側ブロックである場合、前記センターブロックのタイヤ幅方向長さに対する、前記第2外側ブロックのタイヤ幅方向長さの比は、0.90以上1.10以下である、請求項4から請求項6のいずれか1つに記載のタイヤ。
【請求項8】
複数の前記ラグ溝と複数の前記外側主溝とを含み、
複数の前記ラグ溝は、それぞれ、前記タイヤ赤道面から前記外側主溝まで延在しており、
複数の前記ラグ溝と前記センター主溝とによって複数のセンターブロックが区画され、
複数の前記ラグ溝と複数の前記外側主溝とによって第1外側ブロックとそのタイヤ幅方向外側の第2外側ブロックとが区画され、
前記センターブロックのタイヤ周方向長さに対する、前記第1外側ブロックのタイヤ周方向長さの比は、0.75以上1.00以下であり、
前記センターブロックのタイヤ周方向長さに対する、前記第2外側ブロックのタイヤ周方向長さの比は、0.65以上0.85以下である、請求項1から請求項7のいずれか1つに記載のタイヤ。
【請求項9】
前記外側主溝の前記ジグザグ形状の第3直線部のタイヤ周方向長さは、前記第1直線部のタイヤ周方向長さより長く、
前記外側主溝の前記ジグザグ形状の第3直線部のタイヤ周方向長さは、前記第2直線部のタイヤ周方向長さより長く、
前記外側主溝の前記ジグザグ形状の第4直線部のタイヤ周方向長さは、前記第1直線部のタイヤ周方向長さより短く、
前記外側主溝の前記ジグザグ形状の第4直線部のタイヤ周方向長さは、前記第2直線部のタイヤ周方向長さより短く、
前記第4直線部のタイヤ周方向長さは、15mm以上であり、
前記第3直線部のタイヤ周方向長さは、45mm以下である、請求項1から請求項8のいずれか1つに記載のタイヤ。
【請求項10】
前記ラグ溝を挟んでタイヤ周方向に隣り合うセンターブロック間のタイヤ周方向の距離に対する、前記ラグ溝を挟んでタイヤ周方向に隣り合う外側ブロック間のタイヤ周方向の距離の比は、0.60以上1.10以下である、請求項1から請求項9のいずれか1つに記載のタイヤ。
【請求項11】
前記ラグ溝は、前記タイヤ赤道面を挟んだタイヤ幅方向の両側において前記タイヤ赤道面から前記外側主溝まで延在しており、
前記タイヤ赤道面を挟んだ一方の側の前記外側主溝に対する前記ラグ溝の開口位置と前記タイヤ赤道面を挟んだ他方の側の前記外側主溝に対する前記ラグ溝の開口位置との間のタイヤ周方向長さの、前記トレッド部の幅に対する比は0.30以上0.60以下である、請求項1から請求項10のいずれか1つに記載のタイヤ。
【請求項12】
前記センター主溝の前記ジグザグ形状のタイヤ幅方向の振幅に対する、前記外側主溝の前記ジグザグ形状のタイヤ幅方向の振幅の比は、1.15以上1.50以下である、請求項1から請求項11のいずれか1つに記載のタイヤ。
【請求項13】
複数の前記ラグ溝と複数の前記外側主溝とを含み、
複数の前記ラグ溝と前記センター主溝とによって区画されるセンターブロックの踏面の面積の、複数の前記ラグ溝と複数の前記外側主溝とによって区画される外側ブロックの踏面の面積の比は、0.85以上1.05以下である、請求項1から請求項12のいずれか1つに記載のタイヤ。
【請求項14】
前記ラグ溝は、前記タイヤ赤道面を挟んだタイヤ幅方向の両側において前記タイヤ赤道面から前記外側主溝まで延在しており、
前記タイヤ赤道面の一方の側の前記外側主溝から前記タイヤ赤道面の他方の側の前記外側主溝までの間に変曲点を有し、
前記一方の側の前記外側主溝から前記変曲点までの湾曲のタイヤ周方向の向きと、前記他方の側の前記外側主溝から前記変曲点までの湾曲のタイヤ周方向の向きとが逆である、請求項1から請求項13のいずれか1つに記載のタイヤ。
【請求項15】
複数の前記外側主溝を含み、複数の前記外側主溝は互いに相似形である、請求項1から請求項14のいずれか1つに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
重荷重用タイヤのうち、ウルトラワイドベースタイヤと呼ばれる超偏平タイヤは、ゴミ収集車などに用いられることがある。ゴミ収集車などは、加速と減速とを繰り返し行うストップアンドゴーオペレーションが多い。このため、ゴミ収集車などに、排水性能を考慮したブロックパターンの超偏平タイヤを採用すると、ヒールアンドトウ摩耗すなわち偏摩耗が発生しやすくなる。一方で、ヒールアンドトウ摩耗を抑制するためにタイヤ周方向の剛性が確保できるリブパターンを採用すると排水性能が不十分となり湿潤路面での加速性能が劣ってしまう。このため、ゴミ収集車などに用いられる超偏平タイヤについては、ドライ路面およびウエット路面における加速性能が優れていることが望まれる。
【0003】
ここで、ドライ路面における加速性能の向上は、タイヤの接地面積を増加することによって実現できる。また、ウエット路面における加速性能の向上は、タイヤの溝面積を増加することによって実現できる。したがって、ドライ路面における加速性能の向上と、ウエット路面における加速性能の向上とは二律背反の関係にある。
【0004】
特許文献1に開示の重荷重用タイヤは、S字状に湾曲した横溝を有している。特許文献1に開示の重荷重用タイヤは、高い排水性能と耐摩耗性能とを発揮できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6110838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の技術は、ドライ路面における加速性能の向上と、ウエット路面における加速性能の向上とを両立させつつ耐偏摩耗性能を向上させることについて改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的はドライ路面における加速性能の向上と、ウエット路面における加速性能の向上とを両立させつつ耐偏摩耗性能を向上させることができるタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のある態様によるタイヤは、タイヤ赤道面に最も近い位置に設けられ、タイヤ周方向に延在するセンター主溝と、前記センター主溝よりタイヤ幅方向外側に設けられ、タイヤ周方向に延在する外側主溝と、前記センター主溝と前記外側主溝とに交差する方向に延在するラグ溝とを含むトレッド部を有し、前記センター主溝は、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度が互いに異なる第1直線部と第2直線部とを交互に接続したジグザグ形状を有し、前記外側主溝は、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度が互いに異なり、かつ、タイヤ周方向長さが同じかまたは異なる第3直線部と第4直線部とを交互に接続したジグザグ形状を有し、前記ラグ溝の溝中心線を延長した延長線は、前記外側主溝のジグザグ形状の前記第3直線部または前記第4直線部に交差し、前記センター主溝の前記ジグザグ形状の1周期のタイヤ周方向長さに対する、前記第1直線部のタイヤ周方向長さの比が0.40以上0.60以下であり、前記外側主溝の前記ジグザグ形状の1周期のタイヤ周方向長さに対する、前記第3直線部のタイヤ周方向長さの比が0.45以上0.75以下であり、前記センター主溝の前記ジグザグ形状の1周期のタイヤ周方向長さに対する、前記外側主溝の前記ジグザグ形状の1周期のタイヤ周方向長さの比が0.90以上1.20以下であるタイヤである。
【0009】
前記外側主溝の前記ジグザグ形状の周期と前記センター主溝の前記ジグザグ形状の周期との間に位相差があり、前記センター主溝と前記外側主溝とがタイヤ幅方向に隣接する場合において、前記位相差に対応するタイヤ周方向長さの、前記センター主溝の前記ジグザグ形状の1周期のタイヤ周方向長さに対する比は、0.60以上0.85以下であることが好ましい。
【0010】
複数の前記外側主溝を含み、複数の前記外側主溝のうちのタイヤ幅方向外側の外側主溝の前記ジグザグ形状の周期と前記センター主溝の前記ジグザグ形状の周期との間の位相差に対応するタイヤ周方向長さの、前記センター主溝の前記ジグザグ形状の1周期のタイヤ周方向長さに対する比は、0.95以上1.15以下であることが好ましい。
【0011】
複数の前記ラグ溝と複数の前記外側主溝とを含み、複数の前記ラグ溝は、それぞれ、前記タイヤ赤道面から前記外側主溝まで延在しており、複数の前記ラグ溝と前記センター主溝とによって複数のセンターブロックが区画され、複数の前記ラグ溝と複数の前記外側主溝とによって複数の外側ブロックが区画され、タイヤ周方向に隣り合う前記複数の外側ブロックの間における前記ラグ溝のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、タイヤ周方向に隣り合う前記複数のセンターブロックの間における前記ラグ溝のタイヤ周方向に対する傾斜角度よりも大きいことが好ましい。
【0012】
タイヤ周方向に隣り合う前記複数のセンターブロックの間における前記ラグ溝のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、20度以上60度以下であることが好ましい。
【0013】
タイヤ周方向に隣り合う前記複数の外側ブロックの間における前記ラグ溝のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、60度以上89度以下であることが好ましい。
【0014】
前記外側ブロックが前記センターブロックのタイヤ幅方向外側に隣接する第1外側ブロックである場合、前記センターブロックのタイヤ幅方向長さに対する、前記第1外側ブロックのタイヤ幅方向長さの比は、0.80以上1.00以下であり、前記外側ブロックが前記第1外側ブロックのタイヤ幅方向外側に位置する第2外側ブロックである場合、前記センターブロックのタイヤ幅方向長さに対する、前記第2外側ブロックのタイヤ幅方向長さの比は、0.90以上1.10以下であることが好ましい。
【0015】
複数の前記ラグ溝と複数の前記外側主溝とを含み、複数の前記ラグ溝は、それぞれ、前記タイヤ赤道面から前記外側主溝まで延在しており、複数の前記ラグ溝と前記センター主溝とによって複数のセンターブロックが区画され、複数の前記ラグ溝と複数の前記外側主溝とによって第1外側ブロックとそのタイヤ幅方向外側の第2外側ブロックとが区画され、前記センターブロックのタイヤ周方向長さに対する、前記第1外側ブロックのタイヤ周方向長さの比は、0.75以上1.00以下であり、前記センターブロックのタイヤ周方向長さに対する、前記第2外側ブロックのタイヤ周方向長さの比は、0.65以上0.85以下であることが好ましい。
【0016】
前記外側主溝の前記ジグザグ形状の第3直線部のタイヤ周方向長さは、前記第1直線部のタイヤ周方向長さより長く、前記外側主溝の前記ジグザグ形状の第3直線部のタイヤ周方向長さは、前記第2直線部のタイヤ周方向長さより長く、前記外側主溝の前記ジグザグ形状の第4直線部のタイヤ周方向長さは、前記第1直線部のタイヤ周方向長さより短く、前記外側主溝の前記ジグザグ形状の第4直線部のタイヤ周方向長さは、前記第2直線部のタイヤ周方向長さより短く、前記第4直線部のタイヤ周方向長さは、15mm以上であり、前記第3直線部のタイヤ周方向長さは、45mm以下であることが好ましい。
【0017】
前記ラグ溝を挟んでタイヤ周方向に隣り合うセンターブロック間のタイヤ周方向の距離に対する、前記ラグ溝を挟んでタイヤ周方向に隣り合う外側ブロック間のタイヤ周方向の距離の比は、0.60以上1.10以下であることが好ましい。
【0018】
前記ラグ溝は、前記タイヤ赤道面を挟んだタイヤ幅方向の両側において前記タイヤ赤道面から前記外側主溝まで延在しており、前記タイヤ赤道面を挟んだ一方の側の前記外側主溝に対する前記ラグ溝の開口位置と前記タイヤ赤道面を挟んだ他方の側の前記外側主溝に対する前記ラグ溝の開口位置との間のタイヤ周方向長さの、前記トレッド部の幅に対する比は0.30以上0.60以下であることが好ましい。
【0019】
前記センター主溝の前記ジグザグ形状のタイヤ幅方向の振幅に対する、前記外側主溝の前記ジグザグ形状のタイヤ幅方向の振幅の比は、1.15以上1.50以下であることが好ましい。
【0020】
複数の前記ラグ溝と複数の前記外側主溝とを含み、複数の前記ラグ溝と前記センター主溝とによって区画されるセンターブロックの踏面の面積の、複数の前記ラグ溝と複数の前記外側主溝とによって区画される外側ブロックの踏面の面積の比は、0.85以上1.05以下であることが好ましい。
【0021】
前記ラグ溝は、前記タイヤ赤道面を挟んだタイヤ幅方向の両側において前記タイヤ赤道面から前記外側主溝まで延在しており、前記タイヤ赤道面の一方の側の前記外側主溝から前記タイヤ赤道面の他方の側の前記外側主溝までの間に変曲点を有し、前記一方の側の前記外側主溝から前記変曲点までの湾曲のタイヤ周方向の向きと、前記他方の側の前記外側主溝から前記変曲点までの湾曲のタイヤ周方向の向きとが逆であることが好ましい。
【0022】
複数の前記外側主溝を含み、複数の前記外側主溝は互いに相似形であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかるタイヤは、ドライ路面における加速性能の向上と、ウエット路面における加速性能の向上とを両立させつつ耐偏摩耗性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本実施形態に係るタイヤの子午断面図である。
図2図2は、本実施形態に係るタイヤのトレッド面を示す平面図である。
図3図3は、図2の一部を拡大して示す図である。
図4図4は、ラグ溝と周方向主溝との交差位置を説明する図である。
図5図5は、主溝の構造の例を示す図である。
図6図6は、主溝の構造の例を示す図である。
図7図7は、主溝の構造の例を示す図である。
図8図8は、主溝の構造の例を示す図である。
図9図9は、主溝の構造の例を示す図である。
図10図10は、主溝の構造の例を示す図である。
図11図11は、主溝の構造の例を示す図である。
図12図12は、主溝の構造の例を示す図である。
図13図13は、図2の一部を拡大して示す図である。
図14図14は、ラグ溝と底上げ部との溝深さの関係を示す図である。
図15図15は、主溝の断面形状の変形例を示す図である。
図16図16は、主溝の断面形状の変形例を示す図である。
図17図17は、主溝の断面形状の変形例を示す図である。
図18図18は、主溝の断面形状の変形例を示す図である。
図19図19は、主溝の断面形状の変形例を示す図である。
図20図20は、主溝の断面形状の変形例を示す図である。
図21図21は、主溝の断面形状の変形例を示す図である。
図22図22は、主溝の断面形状の変形例を示す図である。
図23図23は、主溝の断面形状の変形例を示す図である。
図24図24は、主溝の断面形状の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の各実施形態の説明において、他の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。各実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0026】
図1は、本実施形態に係るタイヤ1の子午断面図である。図2は、本実施形態に係るタイヤ1のトレッド面を示す平面図である。本実施の形態によるタイヤ1は、空気入りタイヤであることが好ましい。タイヤ1に充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0027】
以下の説明において、タイヤの子午断面とは、タイヤの回転軸(図示せず)を含む平面でタイヤを切断したときの断面として定義される。タイヤ径方向とは、タイヤ1の回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、上記タイヤ回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、上記タイヤ回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、タイヤ1の回転軸に直交すると共に、タイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、タイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ幅は、タイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあってタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。本実施形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
【0028】
図1に示すように、本実施形態にかかるタイヤ1は、トレッド部2と、そのタイヤ幅方向両外側のショルダー部3と、各ショルダー部3から順次連続するサイドウォール部4およびビード部5とを有している。また、このタイヤ1は、カーカス層6と、ベルト層7とを含む。
【0029】
図1において、ショルダー部3は、トレッド部2のタイヤ幅方向両外側の部位である。また、サイドウォール部4は、タイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出したものである。また、ビード部5は、ビードコア51とビードフィラー52とを有する。ビードコア51は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー52は、カーカス層6のタイヤ幅方向端部がビードコア51の位置でタイヤ幅方向外側に折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。
【0030】
カーカス層6は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコア51でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6は、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつタイヤ周方向にある角度を持って複数並設されたカーカスコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。カーカスコードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。
【0031】
ベルト層7は、例えば、4層のベルト71、72、73、74を積層した多層構造をなし、トレッド部2においてカーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、カーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト71、72、73、74は、タイヤ周方向に対して所定の角度で複数並設されたコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。
【0032】
トレッド部2は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、タイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面がタイヤ1の輪郭となる。トレッド部2の外周表面、つまり、走行時に路面と接触する踏面には、トレッド面21が形成されている。トレッド面21は、タイヤ周方向に延在する複数(本実施形態では6本)の周方向主溝22A、22B、23を有する。そして、トレッド面21は、これら複数の周方向主溝22A、22B、23によって区画され、タイヤ周方向に沿って延在し、タイヤ幅方向に複数(本実施形態では7本)並ぶ陸部20C、20M1、20M2、20Sを有する。なお、タイヤ接地端T同士のタイヤ幅方向の長さTWは、トレッド幅である。
【0033】
周方向主溝22Aは、タイヤ赤道線CLに最も近い位置に設けられた周方向主溝である。周方向主溝22Bは、2番目にタイヤ赤道線CLに近い周方向主溝である。周方向主溝22Bは、周方向主溝22Aのタイヤ幅方向外側に設けられた周方向主溝である。周方向主溝23は、周方向主溝22Bのタイヤ幅方向外側に設けられた周方向主溝である。周方向主溝23は、タイヤ接地端Tに最も近い周方向主溝である。主溝とは、JATMAに規定されるウェアインジケータの表示義務を有する溝である。
【0034】
陸部20Cは、タイヤ赤道線CLを挟んで隣り合う周方向主溝22A、22Aの間に設けられている。陸部20Cは、2本の周方向主溝22A、22Aによって区画されている。陸部20M1は、周方向主溝22Aと周方向主溝22Bとの間に設けられている。陸部20M1は、周方向主溝22Aと周方向主溝22Bとによって区画されている。陸部20M2は、周方向主溝22Bと周方向主溝23との間に設けられている。陸部20M2は、周方向主溝22Bと周方向主溝23とによって区画されている。陸部20Sは、周方向主溝23のタイヤ幅方向外側に設けられている。以下の説明では、周方向主溝を単に「主溝」と呼ぶことがある。また、以下の説明では、周方向主溝22Aをセンター主溝、周方向主溝22Bおよび周方向主溝23を外側主溝と呼ぶことがある。
【0035】
(トレッド部)
以下、トレッド部2の詳細について説明する。以下の説明において、溝深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド面から溝底までの距離の最大値として測定される。また、溝が部分的な凹凸部やサイプを溝底に有する構成では、これらを除外して溝深さが測定される。
【0036】
図2に示すように、トレッド部2は、ラグ溝24を有する。ラグ溝とは、タイヤ幅方向に延在する横溝であり、タイヤ接地時に開口して溝として機能する。ラグ溝24は、周方向主溝22A、22Bに交差する方向に延在し、タイヤ周方向に複数並んで設けられている。各ラグ溝24は、一方の周方向主溝23から他方の周方向主溝23まで、タイヤ幅方向に延在している。各ラグ溝24は、一方の周方向主溝23からタイヤ幅方向に延在し、陸部20M2、陸部20M1、陸部20C、陸部20M1、陸部20M2を順に貫通し、他方の周方向主溝23に開口している。
【0037】
ラグ溝24は、タイヤ赤道面CLを挟んだタイヤ幅方向の両側において、タイヤ赤道面CLから外側主溝である周方向主溝23まで延在している。タイヤ赤道面CLを挟んだ一方の側の周方向主溝23に対するラグ溝24の開口位置である点P1とタイヤ赤道面CLを挟んだ他方の側の周方向主溝23に対するラグ溝24の開口位置である点P2との間のタイヤ周方向長さ、すなわちラグ溝24のタイヤ周方向の延在長さを長さLとする。トレッド部21のトレッド幅TWに対する、長さLの比L/TWは、0.30以上0.60以下であることが好ましい。比L/TWが0.30未満であると、タイヤ接地面積が小さい場合に各ブロックBKのひずみが過大になり、ドライ性能が悪化するため好ましくない。比L/TWが0.60を超えると、タイヤ接地面積が小さい場合にラグ溝24が分断され、耐偏摩耗性能が悪化するため好ましくない。なお、比L/TWは、0.40以上0.50以下であることがより好ましい。
【0038】
陸部20Cは、周方向主溝22Aと周方向主溝22Bとに接続して周方向主溝22Aと周方向主溝22Bとを繋げるラグ溝24を有する。陸部20Sは、周方向主溝23のタイヤ幅方向外側に区画され、トレッド部2のタイヤ幅方向最外側に配置されている。陸部20Sは、タイヤ幅方向外側のエッジ部にラグ溝30を有する。ラグ溝30は、陸部20Sに、タイヤ周方向に所定のピッチで設けられる。ラグ溝30は、タイヤ赤道面CLに近い側の端部が陸部20S内で終端している。ラグ溝30は、タイヤ赤道面CLから遠い側の端部がタイヤ接地端Tを越えてタイヤ幅方向に延在し、ショルダー部3に開口している。
【0039】
タイヤ接地端Tは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に荷重をかけない静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を加えたときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大幅位置として定義される。
【0040】
規定リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。
【0041】
図2に示すように、本例では、トレッド部2の陸部20Cにおいて、周方向主溝22A、22B、23と、タイヤ幅方向に延在するラグ溝24とによって、複数のブロックBKが区画される。図2に示すように、周方向主溝22A、22B、23は、タイヤ幅方向に振幅をもつジグザグ形状を有する。以下の説明では、陸部20CのブロックBKをブロックBK1、陸部20M1のブロックBKをブロックBK2、陸部20M2のブロックBKをブロックBK3と呼ぶことがある。
【0042】
ラグ溝24において、タイヤ周方向に隣り合うブロックBK同士の間には底上げ部240が設けられている。底上げ部240は、溝底を隆起させて溝の深さを他の部分よりも浅くした部分である。
【0043】
(ブロック)
トレッド部2は、複数のブロックBKを含む。各ブロックBKは、複数の主溝22A、22B、23と、複数のラグ溝24とによって区画される。各ブロックBKは、それぞれ、少なくとも1つの屈曲点Kを備えている。このため、ブロックBKは、平面視においてブロックBKの内側に凸となる屈曲形状を有する。各ブロックBKは、屈曲点Kを複数備えていてもよい。
【0044】
ブロックBK1は、タイヤ赤道面CLを挟んで両側に設けられている2つの周方向主溝22Aと複数のラグ溝24とによって区画されるセンターブロックである。ブロックBK2、BK3は、ブロックBK1のタイヤ幅方向外側に設けられる外側ブロックである。ブロックBK2は、ブロックBK1に隣接している。ブロックBK3は、ブロックBK2に隣接している。ブロックBK3は、ブロックBK2よりもタイヤ接地端Tに近い。
【0045】
ここで、ブロックBK1のタイヤ幅方向長さWb1に対する、ブロックBK2のタイヤ幅方向長さWb2の比Wb2/Wb1は、0.80以上1.00以下であることが好ましい。ブロックBK1のタイヤ幅方向長さWb1に対する、ブロックBK3のタイヤ幅方向長さWb3の比Wb3/Wb1は、0.90以上1.10以下であることが好ましい。比Wb2/Wb1、および、比Wb3/Wb1が上記数値範囲内であれば、各ブロックのタイヤ幅方向の長さがほぼ等しくなり、耐偏摩耗性能が向上する。
【0046】
センターブロックであるブロックBK1、そのタイヤ幅方向外側に隣接する第1外側ブロックであるブロックBK2、さらにそのタイヤ幅方向外側の第2外側ブロックであるブロックBK3については、タイヤ周方向長さが次のような関係であることが好ましい。すなわち、センターブロックであるブロックBK1のタイヤ周方向長さWb4に対する、第1外側ブロックであるブロックBK2のタイヤ周方向長さWb5の比Wb5/Wb4は、0.75以上1.00以下であることが好ましい。また、センターブロックであるブロックBK1のタイヤ周方向長さWb4に対する、第2外側ブロックであるブロックBK3のタイヤ周方向長さWb6の比Wb6/Wb4は、0.65以上0.85以下であることが好ましい。比Wb5/Wb4、および、Wb6/Wb4が上記数値範囲内であれば、耐偏摩耗性能が向上する。
【0047】
ここで、ブロックBK1の1つ分の踏面の面積をSBK1、ブロックBK1のタイヤ幅方向外側に設けられているブロックBK2の1つ分の踏面の面積をSBK2、ブロックBK2のタイヤ幅方向外側に設けられているブロックBK3の1つ分の踏面の面積をSBK3とする。このとき、面積の比SBK2/SBK1、および、面積の比SBK3/SBK1は、いずれも0.85以上1.05以下であることが好ましい。ブロックの踏面の面積比が上記数値範囲内であれば、ドライ性能とウエット性能とを両立させることができる。上記の比SBK2/SBK1、比SBK3/SBK1が0.85未満であるとセンターブロックの接地面積が少なくなり、ドライ性能が低下するため、好ましくない。上記の比SBK2/SBK1、比SBK3/SBK1が1.05を超えるとウエット性能が低下するため、好ましくない。上記の比SBK2/SBK1、比SBK3/SBK1は、0.90以上1.00以下であることがより好ましい。
【0048】
図3は、図2の一部を拡大して示す図である。図2中のA部を拡大して示す図である。図3は、タイヤ赤道面CLを中心とするトレッド面21の片側を示す。本例のタイヤ1のトレッド面21の構造は、タイヤ赤道面CL上の一点を中心とする点対称になっている。以下、トレッド面21の一方の側に注目して説明する場合があるが、トレッド面21の他方の側についても、同様の構造であり、その説明を省略することがある。
【0049】
図3に示すように、センター主溝である周方向主溝22Aの溝中心線220は、第1直線部22A1と第2直線部22A2とを交互に接続したジグザグ形状を有する。第1直線部22A1と第2直線部22A2とは、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度が互いに異なる。第1直線部22A1のタイヤ周方向長さをLC1、第2直線部22A2のタイヤ周方向長さをLC2とする。センター主溝である周方向主溝22Aのジグザグ形状の1周期のタイヤ周方向長さPDcに対する、第1直線部22A1のタイヤ周方向長さLC1の比LC1/PDcは0.40以上0.60以下であることが好ましい。比LC1/PDcは0.40以上0.60以下であることは、タイヤ周方向長さLC1とタイヤ周方向長さLC2とがほぼ同じであり、周方向主溝22Aのジグザグ形状がほぼ単一周期であることを意味する。ジグザグ形状がほぼ単一周期であることにより、耐偏摩耗性能が向上する。比LC1/PDcが0.40未満、または、比LC1/PDcが0.60を超える場合、周方向主溝22Aのジグザグ形状が単一周期ではなく、外側主溝のジグザグ形状の周期に近づき、耐偏摩耗性能が低下するため、好ましくない。
【0050】
外側主溝である周方向主溝22Bの溝中心線230は、第3直線部22BLと第4直線部22BSとを交互に接続したジグザグ形状を有する。第3直線部22BLと第4直線部22BSとは、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度が互いに異なる。第3直線部22BLのタイヤ周方向長さと第4直線部22BSのタイヤ周方向長さとは、互いに異なる。第3直線部22BLのタイヤ周方向長さをLs1、第4直線部22BSのタイヤ周方向長さをLs2とする。外側主溝である周方向主溝22Bのジグザグ形状の1周期のタイヤ周方向長さPDsに対する、第3直線部22BLのタイヤ周方向長さLs1の比Ls1/PDsは、0.45以上0.75以下であることが好ましい。比Ls1/PDsが0.45未満、または、比Ls1/PDsが0.75を超える場合、周方向主溝22Bのジグザグ形状の周期がセンター主溝である周方向主溝22Aのジグザグ形状の周期に近づき、耐偏摩耗性能が低下するため、好ましくない。
【0051】
同様に、外側主溝である周方向主溝23の溝中心線210は、第3直線部23Lと第4直線部23Sとを交互に接続したジグザグ形状を有する。周方向主溝22Bと周方向主溝23とは互いに相似形であることが好ましい。
【0052】
第3直線部23Lと第4直線部23Sとは、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度が互いに異なる。第3直線部23Lと第4直線部23Sとは、タイヤ周方向の長さが異なる。第3直線部23Lのタイヤ周方向長さをLd1、第4直線部23Sのタイヤ周方向長さをLd2とする。外側主溝である周方向主溝23のジグザグ形状の1周期のタイヤ周方向長さPDdに対する、第3直線部23Lのタイヤ周方向長さLd1の比Ld1/PDdは、0.45以上0.65以下であることが好ましい。比Ld1/PDdが0.45未満、または、比Ld1/PDdが0.65を超える場合、周方向主溝23のジグザグ形状の周期がセンター主溝である周方向主溝22Aのジグザグ形状の周期に近づき、耐偏摩耗性能が低下するため、好ましくない。
【0053】
比LC1/PDcは0.40以上0.60以下であり、かつ、比Ls1/PDs、比Ld1/PDdが0.45以上0.65以下であれば、2種類の周期のジグザグ形状の周方向主溝をトレッド部21に設けることができる。これにより耐偏摩耗性能を向上させることができる。
【0054】
センター主溝である周方向主溝22Aのジグザグ形状の1周期のタイヤ周方向長さPDcに対する、外側主溝である周方向主溝22Bのジグザグ形状の1周期のタイヤ周方向長さPDsの比PDs/PDcは0.90以上1.20以下であることが好ましい。比PDs/PDcが0.90未満、または、比PDs/PDcが1.20を超える場合、センター主溝のジグザグ形状の周期と外側主溝とジグザグ形状の周期とが大きく異なり、耐偏摩耗性能が低下するため、好ましくない。
【0055】
また、センター主溝である周方向主溝22Aのジグザグ形状の1周期のタイヤ周方向長さPDcに対する、外側主溝である周方向主溝23のジグザグ形状の1周期のタイヤ周方向長さPDdの比PDd/PDcは0.90以上1.10以下であることが好ましい。比PDd/PDcが0.90未満、または、比PDd/PDcが1.10を超える場合、センター主溝のジグザグ形状の周期と外側主溝とジグザグ形状の周期とが大きく異なり、耐偏摩耗性能が低下するため、好ましくない。
【0056】
また、図3に示すように、周方向主溝22Aのタイヤ幅方向に隣接する外側主溝である周方向主溝22Bのジグザグ形状の周期とセンター主溝である周方向主溝22Aのジグザグ形状の周期との間に位相差がある。この位相差に対応するタイヤ周方向長さφ12の、周方向主溝22Aのジグザグ形状の1周期のタイヤ周方向長さPDcに対する比φ12/PDcは、0.60以上0.85以下であることが好ましい。比φ12/PDcが0.60未満である場合、位相差が小さく、耐偏摩耗性能が低下するため、好ましくない。比φ12/PDcが0.85を超える場合、位相差が大きく、耐偏摩耗性能が低下するため、好ましくない。
【0057】
また、複数の外側主溝のうち、タイヤ幅方向外側の外側主溝である周方向主溝23のジグザグ形状の周期とセンター主溝である周方向主溝22Aのジグザグ形状の周期との間に位相差がある。この位相差に対応するタイヤ周方向長さφ13の、周方向主溝22Aのジグザグ形状の1周期のタイヤ周方向長さPDcに対する比φ13/PDcは、0.95以上1.15以下であることが好ましい。比φ13/PDcが0.95未満である場合、位相差が小さく、耐偏摩耗性能が低下するため、好ましくない。比φ13/PDcが1.15を超える場合、位相差が大きく、耐偏摩耗性能が低下するため、好ましくない。
【0058】
なお、外側主溝である周方向主溝22Bのジグザグ形状の周期と外側主溝である周方向主溝23のジグザグ形状の周期との間にも位相差がある。この位相差に対応するタイヤ周方向長さはφ23である。
【0059】
図3において、外側主溝である周方向主溝22Bのジグザグ形状の第3直線部22BLのタイヤ周方向長さLs1は、第1直線部22A1のタイヤ周方向長さLC1より長い。外側主溝である周方向主溝22Bのジグザグ形状の第3直線部22BLのタイヤ周方向長さLs1は、第2直線部22A2のタイヤ周方向長さLC2より長い。また、外側主溝である周方向主溝22Bのジグザグ形状の第4直線部22BSのタイヤ周方向長さLs2は、第1直線部22A1のタイヤ周方向長さLC1より短い。外側主溝である周方向主溝22Bのジグザグ形状の第4直線部22BSのタイヤ周方向長さLs2は、第2直線部22A2のタイヤ周方向長さLC2より短い。
【0060】
第4直線部22BSのタイヤ周方向長さは、15mm以上であることが好ましい。第3直線部22BLのタイヤ周方向長さは、45mm以下であることが好ましい。第4直線部22BSのタイヤ周方向長さが15mm未満である場合、第3直線部22BLのタイヤ周方向長さとの乖離が大きく、耐偏摩耗性能が悪化するため好ましくない。第3直線部22BLのタイヤ周方向長さが45mmを超える場合、第4直線部22BSのタイヤ周方向長さとの乖離が大きく、耐偏摩耗性能が悪化するため好ましくない。なお、第4直線部22BSのタイヤ周方向長さは、20mm以上であることがより好ましい。第3直線部22BLのタイヤ周方向長さは、40mm以下であることがより好ましい。
【0061】
ここで、周方向主溝22Aのジグザグ形状のタイヤ幅方向の変位量(タイヤ幅方向長さ)を振幅PHDcとする。周方向主溝22Bのジグザグ形状のタイヤ幅方向の変位量(タイヤ幅方向長さ)を振幅PHDsとする。周方向主溝23のジグザグ形状のタイヤ幅方向の変位量(タイヤ幅方向長さ)を振幅PHDdとする。振幅PHDcに対する振幅PHDsの比PHDs/PHDcは、1.15以上1.50以下であることが好ましい。比PHDs/PHDcが1.15未満であると、センター陸部20Cを構成するブロックBKの面積が足りず、ドライ性能が悪化するため好ましくない。比PHDs/PHDcが1.50を超えると、ショルダー陸部の不均一化により、耐偏摩耗性能が悪化するため好ましくない。なお、比PHDs/PHDcは、1.25以上1.40以下であることがより好ましい。
【0062】
振幅PHDcに対する振幅PHDdの比PHDd/PHDcは、0.90以上1.20以下であることが好ましい。比PHDd/PHDcが0.90未満であると、センター陸部20Cを構成するブロックBKの面積が足りず、ドライ性能が悪化するため好ましくない。比PHDd/PHDcが1.20を超えると、ショルダー陸部の不均一化により、耐偏摩耗性能が悪化するため好ましくない。なお、比PHDd/PHDcは、0.95以上1.15以下であることがより好ましい。
【0063】
(ラグ溝の傾斜角度)
図3に示すように、ラグ溝24は、タイヤ周方向に対して傾斜して延在している。タイヤ周方向に対する、ラグ溝24の傾斜角度は、タイヤ赤道面CLに近いほど小さく、かつ、タイヤ赤道面CLから遠いほど大きいことが好ましい。タイヤ赤道面CLに近い位置でラグ溝24とタイヤ赤道面CLとのなす角度が90度に近いと耐偏摩耗性能が悪化するため好ましくない。タイヤ赤道面CLから離れた位置でラグ溝24とタイヤ赤道面CLとのなす角度が0度に近いと耐偏摩耗性能が悪化するため好ましくない。
【0064】
つまり、タイヤ周方向に隣り合う複数のブロックBK2同士の間におけるラグ溝24のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、タイヤ周方向に隣り合う複数のブロックBK1同士の間におけるラグ溝24のタイヤ周方向に対する傾斜角度よりも大きい。また、タイヤ周方向に隣り合う複数のブロックBK3同士の間におけるラグ溝24のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、タイヤ周方向に隣り合う複数のブロックBK1同士の間におけるラグ溝24のタイヤ周方向に対する傾斜角度よりも大きい。
【0065】
センターブロックであるブロックBK1同士の間におけるラグ溝24のタイヤ周方向に対する傾斜角度θ1は、20度以上60度以下であることが好ましい。傾斜角度θ1は、仮想線VL1とタイヤ周方向とのなす角度である。仮想線VL1は、ブロックBK1同士の間におけるラグ溝24の周方向主溝22Aへの開口位置の中点同士を結ぶ直線である。傾斜角度θ1が20度未満であると、ブロックBK1の耐外傷性能が悪化するため(すなわちブロックBK1の一部が欠ける可能性が高まるため)、好ましくない。傾斜角度θ1が60度を超えると、ドライ性能が悪化するため好ましくない。傾斜角度θ1は、30度以上50度以下であることがより好ましい。
【0066】
ブロックBK1に隣接する外側ブロックであるブロックBK2同士の間におけるラグ溝24のタイヤ周方向に対する傾斜角度θ2は、60度以上85度以下であることが好ましい。傾斜角度θ2は、仮想線VL2とタイヤ周方向とのなす角度である。仮想線VL2は、ブロックBK2同士の間におけるグ溝24の周方向主溝22Aへの開口位置の中点P3と周方向主溝22Bへの開口位置の中点P4とを結ぶ直線である。傾斜角度θ2が60度未満であると耐偏摩耗性能が悪化するため好ましくない。傾斜角度θ2が85度を超えるとブロック剛性不均一化によるドライ性能が悪化するため好ましくない。傾斜角度θ2は、65度以上80度以下であることがより好ましい。
【0067】
タイヤ接地端Tに近い外側ブロックであるブロックBK3同士の間におけるラグ溝24のタイヤ周方向に対する傾斜角度θ3は、60度以上89度以下であることが好ましい。傾斜角度θ3は、仮想線VL3とタイヤ周方向とのなす角度である。仮想線VL3は、ブロックBK3同士の間におけるラグ溝24の周方向主溝22Bへの開口位置の中点P5と周方向主溝23への開口位置の中点P6とを結ぶ直線である。傾斜角度θ3が60度未満であると耐偏摩耗性能が悪化するため好ましくない。傾斜角度θ3が89度を超えるとブロック剛性不均一化によるドライ性能が悪化するため好ましくない。傾斜角度θ3は、65度以上85度以下であることがより好ましい。
【0068】
(ラグ溝の交差位置)
図4は、図2の一部を拡大して示す図である。図2中のB部を拡大して示す図である。図4は、ラグ溝24と、周方向主溝22B、周方向主溝23との交差位置を説明する図である。図4において、仮想線VLは、ラグ溝24の溝中心線を延長した延長線である。仮想線VLは、外側主溝である周方向主溝22Bのジグザグ形状の短尺直線部22BSに交差する。また、仮想線VLは、外側主溝である周方向主溝23のジグザグ形状の短尺直線部23Sに交差する。
【0069】
このように、仮想線VLが第3直線部22BLではなく、第4直線部22BSに交差しているので、第3直線部22BLがブロックBK2のタイヤ幅方向の側面に位置することになる。ブロックBK2のタイヤ幅方向の側面に第3直線部22BLが位置するため、ブロックBK2の踏面の面積を確保できる。これにより、ドライ性能および耐偏摩耗性能が向上する。
【0070】
同様に、仮想線VLが第3直線部23Lではなく、第4直線部23Sに交差しているので、第3直線部23LがブロックBK3のタイヤ幅方向の側面に位置することになる。ブロックBK3のタイヤ幅方向の側面に第3直線部23Lが位置するため、ブロックBK3の踏面の面積を確保できる。これにより、ドライ性能および耐偏摩耗性能が向上する。
【0071】
(ラグ溝の形状)
また、図2に示すように、仮想線VLはS字形状になっている。つまり、ラグ溝24は、平面視においてS字形状になっている。仮想線VLは、タイヤ赤道面CLを挟んだタイヤ幅方向の両側においてタイヤ赤道面CLから外側主溝である周方向主溝23まで延在している。タイヤ赤道面CLの一方の側の周方向主溝23からタイヤ赤道面CLの他方の側の周方向主溝23までの間に変曲点P0を有する。本例では、ラグ溝24とタイヤ赤道面CLとが交差する点が仮想線VLの変曲点P0である。そして、一方の側の周方向主溝23から変曲点P0までの湾曲のタイヤ周方向の向きと、他方の側の周方向主溝23から変曲点P0までの湾曲のタイヤ周方向の向きとが互いに逆になっている。このように、ラグ溝24がS字形状であることにより、ドライ性能、ウエット性能および耐偏摩耗性能を向上させることができる。
【0072】
ただし、仮想線VLの変曲点P0は、タイヤ赤道面CLと交差する位置以外の位置であってもよい。変曲点P0がタイヤ赤道面CLと交差する位置以外の位置であっても、ラグ溝24がS字形状であることにより、ドライ性能、ウエット性能および耐偏摩耗性能を向上させることができる。
【0073】
(主溝の断面形状)
図5から図12を参照して、主溝の断面形状の例について説明する。図5から図12は、主溝の構造の例を示す図である。図5は、図2の一部を拡大して示す図である。図6から図8は、図5中の主溝22Aの断面形状の例を示す図である。図6は、図5中の点P5’における、主溝22Aの断面形状を示す図である。図7は、図5中の点P6’における、主溝22Aの断面形状を示す図である。図8は、図5中の点P56における、主溝22Aの断面形状を示す図である。
【0074】
ここで、主溝22A、22B、23の両側の溝壁の、トレッド面の法線Nに対する角度を、溝壁角度と呼ぶ。主溝22A、22B、23の溝壁角度は、10度以上35度以下であることが好ましい。溝壁角度が10度未満の場合、ドライ性能が悪化するため、溝壁角度が35度を超える場合、ウエット性能が悪化するため、好ましくない。
【0075】
図5において、ラグ溝24によって区画されるブロックBK1の踏面のエッジのうち、エッジE1を挟んでタイヤ周方向に隣り合う2つのエッジE3、E4をそれぞれ延長した仮想線H12、仮想線H13と主溝22Aの溝中心線220との交点を点P5、点P6とする。点P5を点P6に近づける方向に、所定距離Lb1’だけ移動させた点が点P5’である。点P6を点P5に近づける方向に、所定距離Lb1’だけ移動させた点が点P6’である。点P56は、点P5から点P6までのタイヤ周方向の長さLb1の中点である。
【0076】
図6は、図5中の点P5’において、仮想線H12に平行な仮想線H21に沿って主溝22Aを切断し、矢印Y1の方向から見た、断面図である。図6に示すように、主溝22Aのトレッド面21への溝開口端部22Abから溝底221へ向かう間に、段部222が設けられている。段部222の溝中心側の端部222Tは、トレッド面21の法線Nに対する溝壁22Aaの角度が変化する屈曲点となる。つまり、溝壁22Aaは、屈曲点を有する。主溝22Aの断面図である図6中の端部222Tによる屈曲点は、平面図である図5において稜線222Rとして見える。
【0077】
図6において、主溝22Aの両側の溝壁22Aaの、トレッド面の法線Nに対する角度をα15、α25とする。角度α15は、例えば、30度である。角度α25は、例えば、15度である。したがって、本例において、角度α15と角度α25との角度差は、15度である。角度α15と角度α25との角度差は、1度以上15度以下であることが好ましい。この角度差が15度を超えると、ブロック剛性が不均一になり、耐偏摩耗性能が低下するため、好ましくない。
【0078】
図7は、図5中の点P6’において、仮想線H13に平行な仮想線H22に沿って主溝22Aを切断し、矢印Y2の方向から見た、主溝22Aの断面形状を示す図である。図6の場合と同様に、端部222Tは、トレッド面21の法線Nに対する溝壁22Aaの角度が変化する屈曲点となる。図7中の端部222Tによる屈曲点は、平面図である図5において稜線222Rとして見える。
【0079】
図7において、主溝22Aの両側の溝壁22Aaの、トレッド面の法線Nに対する角度をα16、α26とする。角度α16は、例えば、15度である。角度α26は、例えば、30度である。したがって、本例において、角度α16と角度α26との角度差は、15度である。角度α16と角度α26との角度差は、1度以上15度以下であることが好ましい。この角度差が15度を超えると、ブロック剛性が不均一になり、耐偏摩耗性能が低下するため、好ましくない。
【0080】
図8は、図5中の点P56において、溝中心線220に直交する仮想線HM1に沿って主溝22Aを切断し、矢印Y3の方向から見た、主溝22Aの断面形状を示す図である。図6図7の場合と同様に、端部222Tは、トレッド面21の法線Nに対する溝壁22Aaの角度が変化する屈曲点となる。図8中の端部222Tによる屈曲点は、平面図である図5において稜線222Rとして見える。
【0081】
図8において、主溝22Aの両側の溝壁22Aaの、トレッド面の法線Nに対する角度をα17、α27とする。角度α17は、例えば、15度である。角度α27は、例えば、15度である。すなわち、角度α17と角度α27とは等しい。つまり、溝中心線220に沿った2つの点P5と点P6との中点である点P56において、主溝22Aの両側の溝壁22Aaのトレッド面21の法線Nに対する角度は等しい。点P56において、この角度が等しいことにより、主溝22Aの両側のブロックBKの剛性を維持することができ、耐偏摩耗性能を向上させることができる。
【0082】
図9から図11は、図5中の主溝22Bの断面形状の例を示す図である。図9は、図5中の点P7’における、主溝22Bの断面形状を示す図である。図10は、図5中の点P8’における、主溝22Bの断面形状を示す図である。図11は、図5中の点P78における、主溝22Bの断面形状を示す図である。
【0083】
図5において、ラグ溝24によって区画されるブロックBK2の踏面のエッジのうち、エッジE2を挟んでタイヤ周方向に隣り合う2つのエッジE5、E6をそれぞれ延長した仮想線H16、仮想線H18と主溝22Bの溝中心線230との交点を点P7、点P8とする。点P7を点P8に近づける方向に、所定距離Lb2’だけ移動させた点が点P7’である。点P8を点P7に近づける方向に、所定距離Lb2’だけ移動させた点が点P8’である。点P78は、点P7から点P8までのタイヤ周方向の長さLb2の中点である。
【0084】
図9は、図5中の点P7’において、仮想線H16に平行な仮想線H23に沿って主溝22Bを切断し、矢印Y4の方向から見た、断面図である。図9に示すように、主溝22Bのトレッド面21への溝開口端部23Abから溝底231へ向かう間に、段部232が設けられている。段部232の溝中心側の端部232Tは、トレッド面21の法線Nに対する溝壁23Aaの角度が変化する屈曲点となる。つまり、溝壁23Aaは、屈曲点を有する。図9中の端部232Tによる屈曲点は、平面図である図5において稜線232Rとして見える。
【0085】
図9において、主溝22Bの両側の溝壁23Aaの、トレッド面の法線Nに対する角度をα18、α28とする。角度α18は、例えば、18度である。角度α28は、例えば、13度である。したがって、本例において、角度α18と角度α28との角度差は、5度である。角度α18と角度α28との角度差は、1度以上15度以下であることが好ましい。この角度差が15度を超えると、ブロック剛性が不均一になり、耐偏摩耗性能が低下するため、好ましくない。
【0086】
なお、図6を参照して説明した、角度α15と角度α25との角度差は、角度α18と角度α28との角度差よりも大きい。タイヤ幅方向内側において角度差を大きくし、タイヤ幅方向外側において角度差を小さくすることにより、耐偏摩耗性能を向上させることができる。
【0087】
図10は、図5中の点P8’において、仮想線H18に平行な仮想線H24に沿って主溝22Bを切断し、矢印Y5の方向から見た、主溝22Bの断面形状を示す図である。図9の場合と同様に、端部232Tは、トレッド面21の法線Nに対する溝壁23Aaの角度が変化する屈曲点となる。図10中の端部232Tによる屈曲点は、平面図である図5において稜線232Rとして見える。
【0088】
図10において、主溝22Bの両側の溝壁23Aaの、トレッド面の法線Nに対する角度をα19、α29とする。角度α19は、例えば、13度である。角度α29は、例えば、18度である。したがって、本例において、角度α19と角度α29との角度差は、5度である。角度α19と角度α29の角度差は、1度以上15度以下であることが好ましい。この角度差が15度を超えると、ブロック剛性が不均一になり、耐偏摩耗性能が低下するため、好ましくない。
【0089】
なお、図7を参照して説明した、角度α16と角度α26との角度差は、角度α19と角度α29との角度差よりも大きい。タイヤ幅方向内側において角度差を大きくし、タイヤ幅方向外側において角度差を小さくすることにより、耐偏摩耗性能を向上させることができる。
【0090】
図11は、図5中の点P78において、溝中心線230に直交する仮想線HM2に沿って主溝22Bを切断し、矢印Y6の方向から見た、主溝22Bの断面形状を示す図である。図9図10の場合と同様に、端部232Tは、トレッド面21の法線Nに対する溝壁23Aaの角度が変化する屈曲点となる。図11中の端部232Tによる屈曲点は、平面図である図5において稜線232Rとして見える。
【0091】
図11において、主溝22Bの両側の溝壁23Aaの、トレッド面の法線Nに対する角度をα10、α20とする。角度α10は、例えば、13度である。角度α20は、例えば、13度である。すなわち、角度α10と角度α20とは等しい。つまり、溝中心線230に沿った2つの点P7と点P8との中点である点P78において、主溝22Bの両側の溝壁23Aaのトレッド面21の法線Nに対する角度は等しい。点P78において、この角度が等しいことにより、主溝22Bの両側のブロックBKの剛性を維持することができ、耐偏摩耗性能が向上する。
【0092】
図12は、図3中の溝中心線210に直交する仮想線HM3に沿って主溝23を切断し、矢印Y7の方向から見た、主溝23の断面形状を示す図である。図12に示すように、他の主溝22A、22Bとは異なり、主溝23のトレッド面21への溝開口端部25Abから溝底251へ向かう間に、段部は設けられていない。図12において、主溝23の両側の溝壁25Aaの、トレッド面の法線Nに対する角度をα30、α40とする。角度α30は、例えば、15度である。角度α40は、例えば、15度である。すなわち、角度α30と角度α40とは等しい。これらの角度α30、α40が等しいことにより、主溝23のタイヤ幅方向内側のブロックBK3の剛性、および、陸部20Sの剛性を維持することができ、耐偏摩耗性能が向上する。
【0093】
(ラグ溝の幅)
図13は、図2の一部を拡大して示す図である。図13は、図2中のC部を拡大して示す図である。図13において、タイヤ幅方向に隣り合う主溝22A、22Aによって区画されるブロックBK1のエッジE1、E7をそれぞれ延長した2つの仮想線HE1、HE7とラグ溝24の溝中心線241との交点P9、P10間のタイヤ幅方向の距離LRcの中点をP11とする。中点P11を通り、溝中心線241に直交する仮想線H27に沿ったラグ溝24の溝幅をW11とする。また、タイヤ幅方向に隣り合う主溝22A、22Bによって区画されるブロックBK2のエッジE2、E8をそれぞれ延長した2つの仮想線HE2、HE8とラグ溝24の溝中心線242との交点P12、P13間のタイヤ幅方向の距離LRsの中点をP14とする。中点P14を通り、溝中心線242に直交する仮想線H28に沿ったラグ溝24の溝幅をW22とする。
【0094】
また、図4において、タイヤ幅方向に隣り合う主溝22B、23によって区画されるブロックBK3のエッジE9、E10をそれぞれ延長した2つの仮想線HE9、HE10とラグ溝24の溝中心線243との交点P21、P22間のタイヤ幅方向の距離LRdの中点をP23とする。中点P23を通り、溝中心線243に直交する仮想線H20に沿ったラグ溝24の溝幅をW20とする。
【0095】
上記の溝幅W11、W22、W20に関して、溝幅W11に対する溝幅W22の比W22/W11、溝幅W11に対する溝幅W20の比W20/W11は、いずれも、0.60以上1.10以下であることが好ましい。比W22/W11または比W20/W11が0.60未満であるとウエット性能が悪化するため好ましくない。比W22/W11または比W20/W11が1.10を超えるとドライ性能が悪化するため好ましくない。
【0096】
また、図3において、陸部20Sのラグ溝30のタイヤ周方向長さをWrshとする。ラグ溝24の溝幅W20に対する、長さWrshの比Wrsh/W20は2.0以上3.0以下であることが好ましい。比Wrsh/W20が2.0未満であると、ドライ性能が悪化するため好ましくない。比Wrsh/W20が3.0を超えると、耐偏摩耗性能が悪化するため好ましくない。
【0097】
(ブロックの面取り)
また、図3に示すように、ブロックBK1は、各角部に設けられた面取り部C11、C12、C11’およびC12’を有することが好ましい。ブロックBK2は、各角部に設けられた面取り部C13、C14、C15およびC16を有することが好ましい。ブロックBK3は、各角部に設けられた面取り部C17、C18、C19およびC20を有することが好ましい。このように、各ブロックBKの各角部に面取り部C11~C20を設けることにより、各ブロックBKの剛性を維持することができ、耐偏摩耗性能が向上する。
【0098】
(主溝、ラグ溝の溝深さ)
ところで、底上げ部240は、ラグ溝24の中点P11、P14、P23を含む領域に設けられている。本例では、ラグ溝24の溝深さは、主溝22A、22B、23の溝深さに等しい。ただし、ラグ溝24において、底上げ部240が設けられている部分の溝深さは、主溝22A、22B、23の溝深さよりも浅くなっている。なお、主溝22Aの溝深さDRの最大値は、例えば、19.1mmである。
【0099】
図14は、ラグ溝24と底上げ部240との溝深さの関係を示す図である。図14にハッチングで示すように、溝底を隆起させる底上げ部240が設けられることにより、ラグ溝24の溝の深さは他の部分よりも浅くなっている。すなわち、ラグ溝24の底上げ部240が設けられていない部分、すなわち本来の溝深さに対して、底上げ部240の部分の溝深さDSは小さい。
【0100】
ここで、主溝22A、22B、23の溝深さをDRとする。溝深さDRに対する、溝深さDSの比DS/DRは、0.15以上0.35以下であることが好ましい。比DS/DRが0.15より小さいとラグ溝24が浅くなり、ウエット性能が悪化するため、好ましくない。比DS/DRが0.35より大きいとラグ溝24が深くなり、ブロック剛性が低減し、耐偏摩耗性能が悪化するため、好ましくない。
【0101】
ラグ溝24の本来の溝深さと等しい主溝22A、22B、23の溝深さDRとが等しい場合には、同様にラグ溝24の本来の溝深さに対する溝深さDSの比は、0.15以上0.35以下であることが好ましい。
【0102】
(変形例)
図15から図24は、主溝22Aの断面形状の変形例を示す図である。図15から図18は、溝壁に段部222が設けられている例を示す。図15図16の例では、主溝22Aの両側の溝壁に段部222が設けられている。図17図18の例では、主溝22A’の片側の溝壁に段部222が設けられている。図3図4などを参照して説明したように、段部222の端部222Tは、稜線222Rとして見える。
【0103】
図19から図24に示すように、主溝22Aは、子午断面において、段部の代わりに屈曲点222Kを有していてもよい。図19から図22の例では、主溝22Aの両側の溝壁に屈曲点222Kが設けられている。図23図24の例では、主溝22A’の片側の溝壁に屈曲点222Kが設けられている。図6などを参照して説明したように、屈曲点222Kは、稜線222Rとして見える。
【0104】
図15から図24を参照して説明したように、主溝22Aの延在方向の両側の溝壁に屈曲点があってもよいし、両側の溝壁のうち、一方だけに屈曲点があってもよい。すなわち、主溝22Aの延在方向の両側の溝壁の少なくとも一方に屈曲点を備えていればよい。主溝22Aの両側の溝壁の少なくとも一方に屈曲点を備えていれば、転がり抵抗性能およびスノートラクション性能を向上させることができる。なお、両側の溝壁のうち、一方だけに屈曲点を備える場合、タイヤ幅方向の内側の溝壁に屈曲点を備えることが好ましい。
【0105】
以上は、図15から図24を参照して主溝22Aの断面形状について説明したが、主溝22Bの断面形状についても同様の変形例を採用することができる。
【0106】
また、上記の実施の形態では、上記のように、タイヤの一例として空気入りタイヤについて説明した。しかし、これに限らず、この実施の形態に記載された構成は、他のタイヤに対しても、当業者自明の範囲内にて任意に適用できる。他のタイヤとしては、例えば、エアレスタイヤ、ソリッドタイヤなどが挙げられる。
【0107】
(実施例)
本実施例では、条件が異なる複数種類のタイヤについて、転がり抵抗性能およびスノートラクション性能に関する性能試験が行われた(表1から表10を参照)。この性能試験では、サイズ455/55R22.5のタイヤ(重荷重用タイヤ)を、22.5インチ×14.00インチのリムに装着し、規格最大空気圧(900kPa)を充填して、試験車両(2-D・トラクターヘッド)のドライブ軸に装着し、規格最大荷重を加えた状態で実車評価を実施した。
【0108】
ドライ性能の評価においては、乾燥路面において、試験車両の速度が時速5kmから時速40kmに到達するまでに要した時間を測定し、指数化した。従来例を基準(100)とする指数で示した。この指数が大きいほど、ドライ性能が優れている。
【0109】
ウエット性能の評価においては、水深1mmに散水したアスファルトの湿潤路面において、試験車両の速度が時速5kmから時速20kmに到達するまでに要した時間を測定し、指数化した。従来例を基準(100)とする指数で示した。この指数が大きいほど、ウエット性能が優れている。
【0110】
耐偏摩耗性能の評価においては、市場モニターにより、試験車両で乾燥したアスファルト路面を50000km走行後のヒールアンドトゥ偏摩耗量を測定し、指数化した。従来例を基準(100)とする指数で示した。この指数が大きいほどヒールアンドトウ摩耗量が少なく、耐偏摩耗性能が優れている。
【0111】
表1から表5の実施例1から実施例65のタイヤは、いずれも、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度が互いに異なる第1直線部と第2直線部とを交互に接続したジグザグ形状を有するセンター主溝と、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度が互いに異なり、かつ、タイヤ周方向長さが同じかまたは異なる第3直線部第4直線部とを交互に接続したジグザグ形状を有する外側主溝とを含むタイヤである。
【0112】
また、実施例1から実施例65のタイヤは、比LC1/PDcが0.40以上0.60以下であり、かつ、比Ls1/PDsが0.45以上0.75以下であり、さらに、比PDs/PDcが0.90以上1.20以下のタイヤである。また、実施例1から実施例65のタイヤは、ラグ溝が第4直線部に交差するものと第3直線部に交差するもの、比φ12/PDcが0.60以上0.85以下であるものとそうでないもの、比φ13/PDcが0.95以上1.15以下であるものとそうでないもの、ラグ溝の傾斜角度センター陸部よりも外側の陸部において大きいものとそうでないもの、傾斜角度θ1が20度以上60度以下であるものとそうでないもの、傾斜角度θ2が60度以上89度以下であるものとそうでないもの、傾斜角度θ3が60度以上85度以下であるものとそうでないもの、比Wb2/Wb1が0.80以上1.00以下であるものとそうでないもの、比Wb3/Wb1が0.90以上1.10以下であるものとそうでないもの、比Wb5/Wb4が0.75以上1.00以下であるものとそうでないもの、比Wb6/Wb4が0.65以上0.85以下であるものとそうでないもの、第4直線部および第3直線部のタイヤ周方向長さが15mm以上45mm以下であるものとそうでないもの、比W22/W11が0.60以上1.10以下であるものとそうでないもの、比W20/W11が0.60以上1.10以下であるものとそうでないもの、比L/TWが0.30以上0.60以下であるものとそうでないもの、比PHDs/PHDcが1.15以上1.50以下であるものとそうでないもの、比PHDd/PHDcが0.90以上1.20以下であるものとそうでないもの、比SBK2/SBK1が0.85以上1.05以下であるものとそうでないもの、比SBK3/SBK1が0.85以上1.05以下であるものとそうでないもの、ラグ溝形状がS字形状であるものと直線形状であるもの、外側主溝同士が相似形であるものとそうでない(非相似形である)もの、外側開口ラグ溝を有するものと有していないもの、比Wrsh/W20が2.0以上3.0以下であるものとそうでないもの、比DS/DRが0.15以上0.35以下であるものとそうでないもの、主溝の溝壁角度が10度以上35度以下であるものとそうでないもの、溝壁の屈曲があるものとないもの、ブロック端部に面取りを有するものと有しないもの、である。
【0113】
表1中の従来例のタイヤは、3本のストレート主溝によって区画された陸部を含み、踏面が正方形のブロックからなるセンター陸部を有するタイヤである。表1中の比較例1のタイヤは、比LC1/PDcが0.40、比Ls1/PDsが0.80、比PDs/PDcが1.20のタイヤである。表1中の比較例2のタイヤは、比LC1/PDcが0.50、比Ls1/PDsが0.80、比PDs/PDcが1.20のタイヤである。表1中の比較例3のタイヤは、比LC1/PDcが0.60、比Ls1/PDsが0.80、比PDs/PDcが1.20のタイヤである。
【0114】
表1から表10の試験結果に示すように、各実施例のタイヤは、ドライ性能、ウエット性能、および、耐偏摩耗性能について優れていることが分かる。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【0118】
【表4】
【0119】
【表5】
【0120】
【表6】
【0121】
【表7】
【0122】
【表8】
【0123】
【表9】
【0124】
【表10】
【符号の説明】
【0125】
1 タイヤ
2 トレッド部
3 ショルダー部
4 サイドウォール部
5 ビード部
6 カーカス層
7 ベルト層
20C、20M1、20M2、20S 陸部
21 トレッド面
22A、22B、23 周方向主溝
22A1、22A2 直線部
22BL、23L 第3直線部
22BS、23S 第4直線部
24、30 ラグ溝
51 ビードコア
52 ビードフィラー
71、72、73、74 ベルト
240 底上げ部
BK、BK1、BK2、BK3 ブロック
C11~C20、C11’、C12’ 面取り部
CL タイヤ赤道面
K 屈曲点
T タイヤ接地端
TW トレッド幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24