(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】まだら模様を有する建築用シーリング材及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/682 20060101AFI20240529BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240529BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240529BHJP
C09D 201/10 20060101ALI20240529BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240529BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240529BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20240529BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
E04B1/682 A
C09K3/10 G
C09K3/10 D
C09K3/10 Z
C09D7/63
C09D201/10
B05D7/00 K
B05D7/00 P
B05D7/24 303A
B05D7/24 302T
B05D7/24 302Y
B05D7/24 302P
B05D7/24 302R
B05D7/24 301N
B05D5/06 104B
B05D5/00 C
(21)【出願番号】P 2020165025
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】305032254
【氏名又は名称】サンスター技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】井上 春香
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 智之
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-151687(JP,A)
【文献】特開平11-035876(JP,A)
【文献】国際公開第2019/130160(WO,A1)
【文献】特開2019-151676(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0112395(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
B05D 1/00 - 7/26
C09K 3/10
C09D 7/63
C09D 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)建築用シーリング材組成物の硬化物と、該硬化物の表面に部分的に形成された(II)部分被覆塗装用組成物の硬化物とで構成される建築用シーリング材であって、
該建築用シーリング材は、(A)反応性ポリマーと(B)充填材と(C)硬化触媒とを含有する
前記(I)建築用シーリング材組成物の硬化物の表面が、前記(A)反応性ポリマーに含まれる官能基と同じ官能基を有する(A’)反応性ポリマーを含有する
前記(II)部分被覆塗装用組成物の硬化物により部分的に被覆されることで形成されたまだら模様を有し、
当該(II)部分被覆塗装用組成物の硬化物の引張破断伸びが100%以上であ
り、
分光色彩計で測定される前記(II)部分被覆塗装用組成物の硬化物のL*と前記(I)建築用シーリング材組成物の硬化物のL*との差であるΔLが0.5~50である、建築用シーリング材。
【請求項2】
前記(A)反応性ポリマーに含まれる前記官能基がシリル基又はイソシアネート基であり、前記(A)反応性ポリマーの主骨格がポリオキシアルキレン骨格および/又は(メタ)アクリル酸エステル骨格を含む、請求項1記載の建築用シーリング材。
【請求項3】
前記(I)建築用シーリング材組成物の硬化物の表面を部分的に被覆する(II)部分被覆塗装用組成物の硬化物の面積比率が、10~70%である請求項1又は2に記載の建築用シーリング材。
【請求項4】
前記(I)建築用シーリング材組成物の硬化物は、2枚以上の窯業系サイディングボード間に幅5~30mmの隙間に配置されている、請求項1~3の何れか一項に記載の建築用シーリング材。
【請求項5】
前記窯業系サイディングボードの表面が、前記まだら模様と同じ模様が形成されている請求項4記載の建築用シーリング材。
【請求項6】
前記(II)部分被覆塗装用組成物が、前記(A’)反応性ポリマー、(C’)硬化触媒、(D’)可塑剤を含有する、請求項1~5の何れか一項に記載の建築用シーリング材。
【請求項7】
(I)建築用シーリング材組成物の硬化物と、該硬化物の表面に部分的に形成された(II)部分被覆塗装用組成物の硬化物とで構成される建築用シーリング材を壁材間に打設する、まだら模様を有する建築用シーリング材の施工方法であって、
複数の壁材を所定間隔で隙間を形成して所定位置に設置する工程、
前記隙間に前記(I)建築用シーリング材組成物を投入した後、表面を平滑にして下塗り層を形成する工程、
下塗り層の表面を硬化させた後、前記(II)部分被覆塗装用組成物をまだら模様に塗布する工程、
を含
み、
前記(I)建築用シーリング材組成物が、(A)反応性ポリマーと(B)充填材と(C)硬化触媒とを含有し、
前記(II)部分被覆塗装用組成物が、前記(A)反応性ポリマーに含まれる官能基と同じ官能基を有する(A’)反応性ポリマーを含有し、当該(II)部分被覆塗装用組成物の硬化物の引張破断伸びが100%以上である、建築用シーリング材の施工方法。
【請求項8】
前記(II)部分被覆塗装用組成物が、スプレー塗布又は展着塗装により塗布される、請求項7に記載の建築用シーリング材の施工方法。
【請求項9】
前記下塗り層の表面硬化時間が、23℃、相対湿度50%RHの条件下で表面からの厚さ0.5mm硬化するのに5時間以下である請求項7又は8に記載の建築用シーリング材の施工方法。
【請求項10】
容器(I)に収容されている(I)建築用シーリング材組成物と、容器(II)に収容されている(II)部分被覆塗装用組成物とを含む、まだら模様を有する建築用シーリング材形成用セットにおいて、
前記(I)建築用シーリング材組成物は、(A)反応性ポリマーと(B)充填材と(C)硬化触媒とを含有し、
前記(II)部分被覆塗装用組成物は、前記(A)反応性ポリマーに含まれる官能基と同じ官能基を有する(A’)反応性ポリマーを含有し、当該(II)部分被覆塗装用組成物の硬化物の引張破断伸びが100%以上である、まだら模様を有する建築用シーリング材形成用セット。
【請求項11】
(I)建築用シーリング材組成物を硬化させる際の、当該(I)建築用シーリング材組成物の外表面から厚み方向0.5mmまでの表層部が硬化するまでの時間が、23℃、相対湿度50%RHの条件下において、5時間以下である、請求項10に記載のまだら模様を有する建築用シーリング材形成用セット。
【請求項12】
前記(I)建築用シーリング材組成物及び前記(II)部分被覆塗装用組成物のせん断速度2.1sec
-1の粘度が、20万~500万mPa・sである請求項10又は11に記載のまだら模様を有する建築用シーリング材形成用セット。
【請求項13】
前記(A)反応性ポリマーに含まれる前記官能基が、トリメトキシシリル基及びジメトキシメチルシリル基から選択される少なくとも一種の加水分解性シリル基であり、
前記(C)硬化触媒が4価錫系触媒であり、その含有量が、前記加水分解性シリル基を含有する前記(A)反応性ポリマーに対して、0.1~12質量%である請求項10~12の何れか一項に記載のまだら模様を有する建築用シーリング材形成用セット。
【請求項14】
前記(I)建築用シーリング材組成物が(D)可塑剤を含み、
前記(II)部分被覆塗装用組成物が(B’)充填剤及び(D’)可塑剤を含む請求項10~13の何れか一項に記載のまだら模様を有する建築用シーリング材形成用セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、まだら模様を有する建築用シーリング材及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の内外壁は、コンクリート、モルタル、サイディングボード等の壁材と、壁材の継ぎ目となる目地に充填され、防水、壁材の膨張や収縮等に起因する歪を吸収する目的で設けられる建築用シーリング材(以下、「シーリング材」と称する場合がある。)とで構成されることが一般的である。近年、意匠性に優れる建築物が増え、壁材のデザインは多様となっており、この壁材の意匠性を損なうことなく、シーリング材表面とこれに隣接する壁材表面とが調和して、外壁全体が統一されたデザインとなることが求められている。
【0003】
このようなシーリング材と壁材とが調和した意匠性を確保したり、シーリング材の意匠性を向上させるための提案はなされている。特許文献1には、不定形なシーリング主材に、所定の大きさの鱗片状又は粒状の物質が配合されたシーリング材を用い、当該シーリング材を目地に充填した後表面仕上げの際に、ヘラでこすりつけて鱗片状又は粒状の物質を表面に浮き出させる方法が開示されている。これにより、従来の滑らかな表面のシーリング材と比較して意匠性が向上するとされている。
【0004】
特許文献2には、テープ本体と、これに脱離可能に付着された微細物質とからなる表面仕上げテープを用い、不定形シーリング材の未硬化状態の表面に表面仕上げテープを圧接して、微細物質をシーリング材の表面に浮き出るように固着させることで、意匠性を高める方法が記載されている。
【0005】
また、このようなシーリング材と壁材の表面を調和させることを目的としたものではないが、基材上に意匠性を付与する或いは基材上の意匠性を向上させる塗膜形成方法は提案されている。特許文献3には、予め凹凸及び彩色模様を有する基材上に、水系合成樹脂エマルションと、着色顔料と、体質顔料としての炭酸塩又は硫酸塩と、ウレタン会合系増粘剤を含有する水系塗料を、前記基材の凹凸の少なくとも一部が認識出来るように、且つ隠蔽膜厚以上の膜厚で塗装して、塗料塗膜を形成し、当該塗料塗膜が未乾燥の間に、表面に凹凸を有するパターンローラーで、少なくとも当該塗料塗膜の一部分に凹凸を形成し、膜厚を変化させて、当該塗料塗膜の一部を隠蔽膜厚以下の膜厚に形成した意匠性塗膜形成方法が記載されている。
【0006】
特許文献4には、被塗面の少なくとも一部分に、中塗り塗料(I)を塗装して、中塗り塗膜の固形分が85質量%未満となるように乾燥させる工程(1)、工程(1)で得られた塗板上の少なくとも一部分に、中塗り塗料(I)による塗膜との色差ΔEが7以上の塗膜を形成する中塗り塗料(II)を押圧具を用いて塗装し乾燥させることによりぼかし調模様塗膜を形成する工程(2)、工程(2)で得られたぼかし調模様塗膜を有する塗板上に、着色塗料粒子入り塗料(III)を塗装して乾燥させる工程(4)を含む塗膜形成方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平9-53063号公報
【文献】特開2005-75974号公報
【文献】特開2012-45520号公報
【文献】特許第5748221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2に記載の発明では、シーリング材の表面に凹凸を形成することは可能であるが、近年の壁材の多様化には対応できない。また、特許文献3、4に記載の発明では、(a)煩雑な工程が必要になり工期が長くなる、(b)シーリング材の材質に適した塗料の選択が困難である、(c)シーリング材の材質に適さない塗料を用いると、塗膜の割れや剥離が発生したり、塗膜の汚染(例えば、シーリング材に含まれる成分が塗膜へ移行して塗料性能を損なったり、表面にべたつきができて汚れを生じたりすること等。)が発生したりする、ことが懸念される。
【0009】
ところで、近年では、素材の質感を生かした壁材が注目されており、このような素材の表面には、素材特有の、異なる色や同色の濃淡が入り混じった不均一な模様が形成されている。このような複雑な模様を含む壁材の風合いを損なうことなく容易に施工可能で、塗膜の割れや剥離の発生を抑制可能なシーリング材が求められている。しかし、前述の従来技術によっては、このような市場の要求に対応できないのが現状である。
【0010】
そこで、本発明の目的は、まだら模様のように異なる色や同色の濃淡が入り混じった不均一な模様が表面に形成された壁材と調和したまだら模様を有し、塗膜の割れや剥離の発生を抑制可能な建築用シーリング材を提供すること、また、このような建築用シーリング材を容易に形成可能な施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前述の課題解決のため、鋭意検討を行った。その結果、目地に打設するシーリング材を形成する組成物と、シーリング材の表面に部分的に塗布する組成物とに、共通する官能基を有する反応性ポリマーを含有させ、シーリング材の表面に部分的に塗布する組成物の硬化物の引張破断伸びを100%以上とすることで、前述の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。本発明の要旨は以下のとおりである。
【0012】
(1)(A)反応性ポリマーと(B)充填材と(C)硬化触媒とを含有する(I)建築用シーリング材組成物の硬化物の表面が、前記(A)反応性ポリマーに含まれる官能基と同じ官能基を有する(A’)反応性ポリマーを含有する(II)部分被覆塗装用組成物の硬化物により部分的に被覆されることで形成されたまだら模様を有し、当該(II)部分被覆塗装用組成物の硬化物の引張破断伸びが100%以上である、建築用シーリング材。
(2)前記(A)反応性ポリマーに含まれる前記官能基がシリル基又はイソシアネート基であり、前記(A)反応性ポリマーの主骨格がポリオキシアルキレン骨格および/又は(メタ)アクリル酸エステル骨格を含む、前記項(1)記載の建築用シーリング材。
(3)前記(I)建築用シーリング材組成物の硬化物の表面を部分的に被覆する(II)部分被覆塗装用組成物の硬化物の面積比率が、10~70%である前記項(1)又は(2)に記載の建築用シーリング材。
(4)前記(I)建築用シーリング材組成物の硬化物は、2枚以上の窯業系サイディングボード間に幅5~30mmの隙間に配置されている、前記項(1)~(3)の何れか一項に記載の建築用シーリング材。
(5)前記窯業系サイディングボードの表面が、前記まだら模様と同じ模様が形成されている前記項(4)記載の建築用シーリング材。
(6)前記(II)部分被覆塗装用組成物が、前記(A’)反応性ポリマー、(C’)硬化触媒、(D’)可塑剤を含有する、前記項(1)~(5)の何れか一項に記載の建築用シーリング材。
(7)前記項(1)~(6)の何れか一項に記載の建築用シーリング材を壁材間に打設する、まだら模様を有する建築用シーリング材の施工方法であって、複数の壁材を所定間隔で隙間を形成して所定位置に設置する工程、前記隙間に前記(I)建築用シーリング材組成物を投入した後、表面を平滑にして下塗り層を形成する工程、下塗り層の表面を硬化させた後、前記(II)部分被覆塗装用組成物をまだら模様に塗布する工程、を含む、建築用シーリング材の施工方法。
(8)前記(II)部分被覆塗装用組成物が、スプレー塗布又は展着塗装により塗布される、前記項(7)に記載の建築用シーリング材の施工方法。
(9)前記下塗り層の表面硬化時間が、23℃、相対湿度50%RHの条件下で表面からの厚さ0.5mm硬化するのに5時間以下である前記項(7)又は(8)に記載の建築用シーリング材の施工方法。
(10)容器(I)に収容されている(I)建築用シーリング材組成物と、容器(II)に収容されている(II)部分被覆塗装用組成物とを含む、まだら模様を有する建築用シーリング材形成用セットにおいて、前記(I)建築用シーリング材組成物は、(A)反応性ポリマーと(B)充填材と(C)硬化触媒とを含有し、前記(II)部分被覆塗装用組成物は、前記(A)反応性ポリマーに含まれる官能基と同じ官能基を有する(A’)反応性ポリマーを含有し、当該(II)部分被覆塗装用組成物の硬化物の引張破断伸びが100%以上である、まだら模様を有する建築用シーリング材形成用セット。
(11)(I)建築用シーリング材組成物を硬化させる際の、当該(I)建築用シーリング材組成物の外表面から厚み方向0.5mmまでの表層部が硬化するまでの時間が、23℃、相対湿度50%RHの条件下において、5時間以下である、前記項(10)に記載のまだら模様を有する建築用シーリング材形成用セット。
(12)前記(I)建築用シーリング材組成物及び前記(II)部分被覆塗装用組成物のせん断速度2.1sec-1の粘度が、20万~500万mPa・sである前記項(10)又は(11)に記載のまだら模様を有する建築用シーリング材形成用セット。
(13)前記(A)反応性ポリマーに含まれる前記官能基が、トリメトキシシリル基及びジメトキシメチルシリル基から選択される少なくとも一種の加水分解性シリル基であり、
前記(C)硬化触媒が4価錫系触媒であり、その含有量が、前記加水分解性シリル基を含有する前記(A)反応性ポリマーに対して、0.1~12質量%である前記項(10)~(12)の何れか一項に記載のまだら模様を有する建築用シーリング材形成用セット。
(14)前記(I)建築用シーリング材組成物が(D)可塑剤を含み、前記(II)部分被覆塗装用組成物が(B’)充填剤及び(D’)可塑剤を含む前記項(10)~(13)の何れか一項に記載のまだら模様を有する建築用シーリング材形成用セット。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、まだら模様のように異なる色や同色の濃淡が入り混じった不均一な模様が表面に形成された壁材と調和したまだら模様を有し、塗膜の割れや剥離の発生を抑制可能な建築用シーリング材を提供すること、また、このような建築用シーリング材を容易に形成可能な施工方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例11の建築用シーリング材の表面の光学顕微鏡による撮像を示した図である。
【
図2】実施例12の建築用シーリング材の表面の光学顕微鏡による撮像を示した図である。
【
図3】実施例13の建築用シーリング材の表面の光学顕微鏡による撮像を示した図である。
【
図4】実施例14の建築用シーリング材の表面の光学顕微鏡による撮像を示した図である。
【
図5】実施例15の建築用シーリング材の表面の光学顕微鏡による撮像を示した図である。
【
図6】実施例16の建築用シーリング材の表面の光学顕微鏡による撮像を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(まだら模様を有する建築用シーリング材)
本発明の実施形態に係る建築用シーリング材は、(I)建築用シーリング材組成物(以下、「組成物(I)」と称する場合がある。)の硬化物の表面が、(II)部分被覆塗装用組成物(以下、「組成物(II)」と称する場合がある。)の硬化物により部分的に被覆されることで形成されたまだら模様を有するものである。そして、(I)建築用シーリング材組成物は、(A)反応性ポリマーと(B)充填材と(C)硬化触媒とを含有し、(II)部分被覆塗装用組成物は、前記(A)反応性ポリマーに含まれる官能基と同じ官能基を有する(A’)反応性ポリマーを含有する。また、組成物(II)の硬化物の引張破断伸びが100%以上である。
【0016】
ここで、「まだら模様」とは、異なる色や同色の濃淡の入り交じった模様を意味する。
【0017】
このように、組成物(II)と組成物(I)に含まれる反応性ポリマーが、相互に同じ官能基を有するため、両者の接着性が良好である。そのため、(a)剥離が抑制されたまだら模様を形成することが可能になる、(b)後述するように組成物(I)の表面が硬化した段階で組成物(II)を塗布することが可能になり、工期の短縮を図ることができる、というような効果が奏され得る。また、組成物(II)の硬化物の破断伸びが100%以上であるため、組成物(I)と(II)の良好な接着性と相俟って、塗膜の割れや剥離の発生をより効果的に抑制が可能であり、耐久性に優れるシーリング材が得られる。
【0018】
組成物(I)に含まれる(A)反応性ポリマーとしては、シーリング材に用いられる反応性基を有する反応性基含有ポリマーを使用できる。反応性基は、例えば、加水分解性シリル基、イソシアネート基、エポキシ基、アミノ基、水酸基等が挙げられる。このうち、物性、作業性、耐候性、接着性、硬化性等の観点から、加水分解性シリル基、イソシアネート基が好ましい。
【0019】
(A)反応性ポリマーとしては、例えば、反応性基含有ポリエーテル系ポリマー、反応性基含有シリコーン系ポリマー、反応性基含有ポリウレタン系ポリマー、反応性基含有ポリサルファイド系ポリマー、反応性基含有(メタ)アクリル系ポリマー、反応性基含有ポリイソブチレン系ポリマー、SBRやブチルゴム等の反応性基含有ゴム系ポリマー等が挙げられる。これらの反応性ポリマーは、1種のみでもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0020】
反応性基として加水分解性シリル基を含有する加水分解性シリル基含有ポリマーとしては、例えば、加水分解性シリル基含有ポリエーテル系ポリマー、加水分解性シリル基含有シリコーン系ポリマー、加水分解性シリル基含有ポリウレタン系ポリマー、加水分解性シリル基含有ポリサルファイド系ポリマー、加水分解性シリル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、加水分解性シリル基含有ポリイソブチレン系ポリマー、加水分解性シリル基含有ゴム系ポリマー等が挙げられる。このうち、加水分解性シリル基含有ポリエーテル系ポリマー(変成シリコーン)、加水分解性シリル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、加水分解性シリル基含有ポリイソブチレンポリマーが好ましく、加水分解性シリル基含有ポリエーテル系ポリマー(変成シリコーン)、加水分解性シリル基含有(メタ)アクリル系ポリマーがより好ましい。
【0021】
加水分解性シリル基は、アルコキシシリル基が好ましく、ジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、ジエトキシシリル基、トリエトキシシリル基から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、ジメトキシシリル基及びトリメトキシシリル基から選択される少なくとも1種であることがさらに好ましい。
【0022】
加水分解性シリル基含有ポリエーテル系ポリマー(変成シリコーン)としては、ポリオキシアルキレンエーテルを主鎖として有する、即ち、ポリオキシアルキレン骨格を主骨格として有するものが好ましく、主鎖の末端及び/又は側鎖、好ましくは末端に加水分解性シリル基を有するものがより好ましい。また、加水分解性シリル基の数は、1分子あたり1.2以上であるものが好ましい。
【0023】
加水分解性シリル基含有ポリエーテル系ポリマーは、加水分解性シリル基に加えてウレタン結合を含有するものであってもよい。このようなポリエーテル系ポリマーとしては、例えば、イソシアネート末端のポリエーテル系ポリマーに活性水素と加水分解性シリル基を有する化合物を反応させたポリマーや、ポリエーテル系ポリマーとイソシアネート基及びシリル基を有するケイ素化合物とを反応させたポリマー等が挙げられる。
【0024】
反応性シリル基を有するポリエーテル系ポリマーとしては、例えば、株式会社カネカ製のMSポリマーS203、S303、S810;SILYLEST250、EST280;SAT10、SAT200、SAT220、SAT350、SAT400、株式会社AGC製のEXCESTARS2410、S2420又はS3430、特許第5173364号公報に記載のもの等が挙げられる。
【0025】
加水分解性シリル基含有(メタ)アクリル系ポリマーとしては、主鎖が少なくとも(メタ)アクリル酸エステル構造単位で構成され、末端および/または側鎖に加水分解性シリル基を有するポリマーであるのが好ましい。主鎖には、(メタ)アクリル酸エステル単位以外に、(メタ)アクリル酸エステルと共重合しうる単量体、例えば炭素数4~12のオレフィン、ビニルエーテル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン類、アリルシラン類などに由来する構造単位が含まれていてもよい。
【0026】
加水分解性シリル基含有(メタ)アクリル系ポリマーの例としては、以下の(i)および(ii)等が挙げられる。
【0027】
(i)(a)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素原子数は好ましくは2~4)、例えばエチルアクリレート、プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート等と、(b)ビニルアルコキシシラン、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン等および(メタ)アクリロキシアルコキシシラン、例えばγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の群から選ばれる1種または2種以上の混合物とを、(c)連鎖移動剤としてメルカプトアルコキシラン、例えばγ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の存在下で、ラジカル共重合(通常、α,α’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、α,α’-アゾビスイソバレロニトリル、過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキシドなど重合開始剤を用いて公知の塊状重合、溶液重合などの手法;あるいはレドックス触媒、例えば、遷移金属塩、アミン等と過酸化物系開始剤を組合せたレドックス重合法により)させることによって製造されるポリマー。例えば特公平3-80829号公報に開示のポリマー等。
【0028】
(ii)(a)ビニル系モノマー、例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、プロピルアクリレート、ペンチルアクリレート、ステアリルアクリレート等のアクリレート;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等のメタクリレート;スチレンもしくはその誘導体(α-メチルスチレン、クロルメチルスチレン等);ジエチルフマレート、ジブチルフマレート、ジプロピルフマレート等のフマル酸ジエステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化エチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニレン等のハロゲン化ビニル類等100質量部に、(b)アルコキシシリル基含有ジスルフィド化合物、例えばビス(トリメトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(メチルジメトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(メチルジエトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(プロピルジメトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(プロピルジエトキシシリルメチル)ジスルフィド、ビス(ジメチルメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等0.05~50部を加え、必要に応じて有機溶媒(トルエン、キシレン、ヘキサン、酢酸エチル、ジオクチルフタレート等)中で光重合(常温乃至50~60℃で、4~30時間の光照射)に付すことによって製造されるもの。例えば特公平4-69667号公報に開示のポリマー等。
【0029】
加水分解性シリル基含有ポリマーは、前述の加水分解性シリル基含有ポリエーテル系ポリマーと加水分解性シリル基含有(メタ)アクリル系ポリマーとの混合物又は反応物であってもよい。このような混合物又は反応物の代表的市販品としては、例えば、株式会社カネカ製のSA410、SB803S、MA903、S943等の、アルコキシシリル基を有するポリオキシアルキレン重合体とアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系重合体との混合物または反応物が挙げられる。
【0030】
加水分解性シリル基含有ポリマーのポリスチレン換算重量平均分子量は、10000~30000であってよく、好ましくは15000~28000である。
【0031】
反応性基としてイソシアネート基を含有するイソシアネート基含有ポリマーとしては、例えば、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー(以下、「末端NCO含有プレポリマー」と称する場合がある。)、DIC製 パンデックス P870、P910等が挙げられる。
【0032】
末端NCO含有プレポリマーは、各種のポリオールに対して過剰量のポリイソシアネート化合物を反応(通常、OH/NCO=1/1.3~1/3.0)させることによって得ることができる。
【0033】
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ショ糖等の多価アルコールにプロピレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドとエチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオール類;エチレングリコール、プロピレングリコールおよびこれらのオリゴグリコール類;ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール類;ポリカプロラクトンポリオール類;ポリカーボネートポリオール類;ポリエチレンアジペート等のポリエステルポリオール類;ポリブタジエンポリオール類;ヒマシ油等のヒドロキシル基を有する高級脂肪酸エステル類;ポリエーテルポリオール類またはポリエステルポリオール類にビニルモノマーをグラフト化したポリマーポリオール類等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。このうち、ポリオキシアルキレン骨格を形成し得るものが好ましい。
【0034】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族、脂肪族または脂環族に属する任意のものを用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネート(TDI;2,4-異性体、2,6-異性体およびその混合物)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、クルードTDI、クルードMDI、ポリメチレン・ボリフェニルイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、および水素化キシリレンジイソシアネート、ならびにこれらのイソシアヌレート化物、カルボジイミド化物、ビューレット化物等が挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0035】
イソシアネート基含有ポリマーのポリスチレン換算重量平均分子量は、2000~20000であってよく、好ましくは3000~10000である。
【0036】
(A)反応性ポリマーとしてイソシアネート基含有ポリマーを用いる場合は、このイソシアネート基含有ポリマーを基材成分とし、これと架橋反応する硬化剤成分としてポリオールを含むことができる。このような硬化剤成分としてのポリオールは前述のものを用いることができる。また、硬化成分としてのポリオールは、末端NCO含有プレポリマーの合成に使用したものと同じものでもよいし、異なっていてもよい。
【0037】
組成物(I)に含まれる(B)充填材としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、脂肪酸処理炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、ヒュームシリカ、沈降性シリカ、カーボンブラック、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、雲母、タルク、マイカ、クレー、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛などの無機塩類;ガラスビーズ、シラスバルーン、ガラスバルーン、シリカバルーン、プラスチックバルーンなどのバルーン;ガラス繊維、金属繊維などの無機繊維;ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維などの有機繊維;ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、グラファイト、針状結晶性炭酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、二ホウ化チタン、クリソタイル、ワラストナイト等の針状結晶性充填剤等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。
【0038】
組成物(I)に含まれる(C)硬化触媒は、(A)反応性ポリマーの種類等を考慮して適宜選択することができる。例えば、加水分解性シリル基含有ポリマーの場合は、例えば、スズ金属触媒、非スズ金属触媒などを使用できる。スズ金属触媒としては、例えば、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ステアリン酸錫、ジオクチル酸錫、ジステアリン酸錫、ジナフテン酸錫などの錫カルボン酸塩類、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ビス(アルキルマレエート)等のジブチル錫ジカルボキシレート類;ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジフェノキシド等のジアルキル錫のアルコキシド誘導体類;ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫アセトアセテート、ジブチル錫ジエチルヘキサノエート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ビスエトキシシリケート、ジオクチル錫オキシド等のジアルキル錫の分子内配位性誘導体類;ジブチル錫オキシドとエステル化合物による反応混合物、ジブチル錫オキシドとシリケート化合物による反応混合物、およびこれらジアルキル錫オキシド誘導体のオキシ誘導体等の4価ジアルキル錫オキシドの誘導体等が挙げられる。また、非スズ金属触媒としては、例えば、オクチル酸やオレイン酸、ナフテン酸、ステアリン酸等をカルボン酸成分とするカルボン酸カルシウム;カルボン酸ジルコニウム、カルボン酸鉄、カルボン酸バナジウム、カルボン酸ビスマス、カルボン酸鉛、カルボン酸チタニウム、カルボン酸ニッケル等のカルボン酸金属塩類等が挙げられる。これらの中でも、4価錫系触媒が好ましい。硬化触媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
また、(A)反応性ポリマーがイソシアネート基含有ポリマーの場合は、例えば、オクチル酸錫、ナフテン酸錫、ステアリン酸錫、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、ジブチル錫ビストリエトキシシリケート、ジブチル錫ジオレイルマレート、ジブチル錫ジアセテート、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ジラウリルオキシカルボニル-ジスタノキサン、ジブチル錫オキシビスエトキシシリケート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物、ジブチル錫オキサイドとマレイン酸ジエステルとの反応物、ジブチル錫ジアセチルアセトナート等が挙げられる。その他の有機金属化合物としては、ビスマス、バリウム、カルシウム、インジウム、チタン、ジルコニウム、カルシウム、亜鉛、鉄、コバルト、鉛のカルボン酸(例えば、オクチル酸)塩等、例えば、オクチル酸ビスマス、オクチル酸カルシウムなどが挙げられる。これらの中でも、4価錫系触媒が好ましい。硬化触媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
(C)硬化触媒の水に対する安定性を向上させるため、これらの触媒に加えてカルボン酸を触媒安定剤として併用することができる。特に、(A)反応性ポリマーとしてイソシアネート基含有ポリマーを用いる場合に好適である。このようなカルボン酸としては、例えば、安息香酸、フタル酸などの芳香族カルボン酸;オクチル酸(2-エチルヘキサン酸)、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸などの脂肪族カルボン酸;アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、パラストリン酸などの樹脂酸が挙げられ、それぞれ単独で用いても2種以上を併用してもよい。なかでも、オクチル酸が好ましい。
【0041】
組成物(I)に含まれる(D)可塑剤は、パラフィン系、ナフテン系、ポリブテン等の炭化水素を、引火点、粘度、塗料付着性などに支障のない範囲で使用することができる。また、フタル酸ジエステル類(ジイソノニルフタレート(DINP)等)、エポキシ化ヘキサヒドロフタル酸ジエステル類、アルキレンジカルボン酸ジエステル類、アルキルベンゼン類等も塗料付着性、粘度などに支障のない範囲で使用することができる。また、高分子可塑剤も、他の可塑剤と同様の範囲で使用することができる。
【0042】
高分子可塑剤としては、例えば、ビニル系モノマーを種々の方法で重合して得られるビニル系重合体;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等のポリアルキレングリコールのエステル類;セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸等の2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の2価アルコールから得られるポリエステル系可塑剤;分子量500以上、好ましくは1000以上のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールあるいはこれらポリエーテルポリオールの水酸基をエステル基、エーテル基などに変換した誘導体等のポリエーテル類;ポリスチレンやポリ-α-メチルスチレン等のポリスチレン類;ポリブタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ブタジエン-アクリロニトリル、ポリクロロプレン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。高分子可塑剤は、反応性ケイ素基を有しないものでよいし、有するものでもよいが、反応性ケイ素基を有する場合、硬化物からの可塑剤の移行を防止できる。反応性ケイ素基を有する場合、1分子あたり平均して1個以下が好ましく、0.8個以下がより好ましい。
【0043】
組成物(I)には、必要に応じて、他の添加剤を添加してもよい、このような添加剤としては、着色剤、揺変剤、密着剤、安定剤、酸化防止剤、溶剤、紫外線吸収剤・光安定剤等が挙げられる。
【0044】
着色剤としては、特に限定はなく、壁材の色彩に応じて適宜選択することができる。例えば、ベンガラ、酸化チタン、カーボンブラック、他の着色顔料、染料等が挙げられる。
【0045】
揺変剤としては、例えば、コロイダルシリカ、有機ベントナイト、アマイドワックス、水添ひまし油等が挙げられる。
【0046】
密着剤としては、例えば、アミノシラン、メルカプトシラン、エポキシシラン、ケイ酸エステルなどのシランカップリング剤、エポキシ化合物、アクリルオリゴマー等が挙げられる。
【0047】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール類等のフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0048】
溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、リグロイン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、n-ヘキサン、ヘプタンや、イソパラフィン系溶剤などが挙げられる。
【0049】
紫外線吸収剤・光安定剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類等が挙げられる。
【0050】
組成物(I)に含まれる上記各成分の組成は、(A)反応性ポリマーの種類等に応じて適宜決定することができる。(A)反応性ポリマーとして、(a)加水分解性シリル基含有ポリエーテル系ポリマーを用いる場合、(b)末端NCO含有プレポリマーを用いる場合をについて例示すると以下のとおりである。
【0051】
(a)の場合は、(A)反応性ポリマーが組成物(I)中10~50質量%、(B)充填剤が組成物(I)中1~75質量%、(C)硬化触媒が、(A)反応性ポリマーに対して1~12質量%、(D)可塑剤が組成物(I)中1~50質量%が好ましい。また、他の添加剤は、合計で組成物(I)中0.01~50質量%が好ましい。
【0052】
(b)の場合は、基材成分である(A)反応性ポリマーを合成する前の成分を基準に組成物(I)の成分組成を決定することができる。基材成分を構成するポリオールは、組成物(I)中10~50質量%、基材成分を構成するポリイソシアネートは、組成物(I)中1~10質量%、(B)充填剤が組成物(I)中0~70質量%、(C)硬化触媒が、組成物(I)に対して0.0001~5質量%、(D)可塑剤が組成物(I)中0~50質量%が好ましい。また、他の添加剤は、合計で組成物(I)中0.01~50質量%が好ましい。
【0053】
組成物(I)は、硬化させる際に、外表面から厚み方向0.5mmまでの表層部が硬化するまでの時間が、23℃、相対湿度50%RHの条件下において、好ましくは8時間以下、より好ましくは6時間以下、さらに好ましくは5時間以下であるように構成され得る。これにより、完全硬化させる前に組成物(II)の塗装を開始することが可能になり、工期の短縮が可能になる。このような組成物(I)の表層部の硬化時間の制御は、例えば、触媒種、触媒量、反応性ポリマーの反応基の種類、反応性ポリマーの骨格構造、PHの調整などにより行うことができる。
【0054】
組成物(I)は、せん断速度2.1sec-1の粘度が、20万~500万mPa・sであるものが好ましく、20万~100万mPa・sであるものがより好ましい。これにより、シーリング材としての作業性(吐出性と垂れ性)のバランスのとれた材料となる。このような粘度は、後述する方法で測定することができる。このような組成物(I)の粘度の制御は、例えば、ポリマー粘度に支配され、それを上げるために充填材等で調整したり、下げるためには可塑剤や溶剤を使用することにより行うことができる。
【0055】
組成物(I)の硬化物の引張破断伸びは、特に限定はなく、シーリング材用途として一般的なものであればよく、例えば、500%以上、好ましくは600%以上、の引張破断伸びが望ましい。
【0056】
組成物(II)に含まれ得る、(A’)反応性ポリマー、(B’)充填剤、(C’)硬化触媒、(D’)可塑剤、その他の添加剤は、組成物(I)と同様のものを用いることができる。また、これらは、組成物(I)の成分組成に応じて、適宜選択することができる。
【0057】
但し、(A’)反応性ポリマーは、(A)反応性ポリマーに含まれる官能基と同じ官能基を有するものである。この(A)反応性ポリマーに含まれる官能基は、反応性官能基を意味する。したがって、(A’)反応性ポリマーは、(A)反応性ポリマーに含まれる反応性官能基と同じ反応性官能基を有する。これにより、組成物(I)と(II)の接着性を確保できる。
【0058】
(A’)反応性ポリマーは、主骨格も(A)反応性ポリマーと同様のものを有するのが好ましい。これにより、組成物(I)と(II)の接着性を確保できるとともに、比較的に類似の物性値となり、壁材の伸縮等による追従が可能となる。
【0059】
また、その他の添加剤のうち、着色剤は、まだら模様を形成するため、組成物(I)のと異なる色(濃淡)となるように選択する。このような色の組合せは、壁材の表面の意匠に応じて選択する。このような色の組み合わせの基準としては、硬化後の組成物(I)と組成物(II)に対する後述するL*の差(L*(組成物(II))-L*(組成物(I)))であるΔLに基づいて決定することができる。ΔLは、0.5~50が好ましく、5~30がより好ましく、5~20がさらに好ましい。ΔLがこのような範囲の場合に、壁材とシーリング材の模様が調和し、違和感がない仕上がりとなる傾向にある。
【0060】
組成物(II)は、せん断速度2.1sec-1の粘度が、5万~500万mPa・sであるものが好ましく、20万~100万mPa・sであるものがより好ましい。これにより、液垂れが抑制され、まだら模様になるように不均一な塗膜の形成がより容易となる。このような粘度は、後述する方法で測定することができる。このような組成物(II)の粘度の制御は、例えば、組成物(I)と同様の方法により行うことができる。
【0061】
組成物(II)は、硬化物の引張破断伸びが100%以上であるように構成されるのが好ましく、200%以上であるように構成されるのがより好ましい。これにより、まだら模様になるように不均一に塗膜が形成されても、組成物(II)の硬化物の割れ、剥離等をより効果的に抑制することが可能になる。また、組成物(II)の硬化物は、組成物(I)の硬化物が可逆変形した際に追随可能であればよく、引張破断伸びの上限は特に限定はない。このような組成物(II)の引張破断伸びの制御は、例えば、反応性ポリマーの種類や可塑剤量や充填材量により行うことができる。
【0062】
組成物(II)の塗膜の厚みは、壁材の模様と調和している限り特に限定はないが、後述するように、組成物(II)を組成物(I)の硬化した表面に塗布する前に目地際に貼り付けたマスキングテープを除去する際に、マスキングテープに巻き込まれて破断部分で硬化物が変形する可能性がある。これを防止する観点からは、組成物(II)の成分組成に応じて、厚みを所定範囲に調整するのが好ましいく、例えば、反応性ポリマーとして、加水分解性シリル基含有ポリエーテル系ポリマー(変成シリコーン)を用いる場合は、5mm未満とするのが好ましく、3mm以下とするのがより好ましい。隠蔽性の観点からは、0.1mm以上が好ましい。
【0063】
本発明の実施形態に係る建築用シーリング材は、前述の組成物(I)の硬化物の表面に、組成物(II)を部分的にまだら模様になるように塗布して形成される。組成物(I)の硬化物の表面を組成物(II)の硬化物により部分的に被覆する際の、組成物(II)の硬化物が被覆する面積比率(組成物(II)/組成物(I))は、使用する壁材の表面の意匠に応じて決定することができるが、各種壁材意匠との調和性の観点から、10~70%が好ましい。
【0064】
本発明の実施形態に係る建築用シーリング材を適用可能な壁材は、特に限定はないが、シーリング材に形成されたまだら模様と調和のとれた意匠性を有するものが好ましい。このような壁材は、建築物の外壁、内壁等を構成するものが挙げられる。建築物の外壁としては、例えば、各種ビル、戸建、集合住宅等の外壁が挙げられる。外壁を構成する材料としては、プレキャストコンクリート板、繊維強化コンクリート板等の無機系板、アルミカーテンウォール等の金属系板、セメント板、繊維強化セメント板、押出しセメント板等の窯業系サイディングボード、金属系サイディングボード等が挙げられる。また、これらの表面は、多種、多様な色に着色されたり、タイル貼り、天然石貼りのような外観を呈すように模様付けされたりしたものが好適である。
【0065】
このように、壁材の表面は、前述の組成物(I)、(II)を組み合わせて用いて形成されるシーリング材のまだら模様と同じ模様が形成されているのが好ましい。換言すると、シーリング材表面のまだら模様は、隣接する壁材表面のまだら模様と同じ模様であるのが好ましい。ここで、「同じ模様」とは、全く同一である模様のほか、隣接する壁材とシーリング材の表面の模様が調和しているまだら模様を含む。
【0066】
後述するように、このような壁材を建築物の外壁等に用いる場合は、一般に複数の壁材を所定の隙間(目地)を形成して設置し、この隙間に前述のような組成物(I)を打設する。この隙間の幅は、特に限定はないが、組成物(I)の硬化物によるシール機能をより効果的に発揮させる観点から、5~30mmが好ましい。この隙間の幅は、壁材が窯業系サイディングボードの場合により好適である。
【0067】
(まだら模様を有する建築用シーリング材形成用セット)
実施形態に係る、まだら模様を有する建築用シーリング材形成用セット(以下、単に「建築用シーリング材セット」と称する場合がある。)は、前述の組成物(I)と組成物(II)をそれぞれ別々の容器(I)、(II)に収容し、組み合わせたものを含む。このように組み合わせて提供することで、前述のまだら模様を有する建築用シーリング材の施工を容易に行うことができる。この建築用シーリング材セットには、必要に応じて、組成物(II)を塗布するための塗布用具を含んでいてもよい。
【0068】
組成物(I)及び組成物(II)は、何れも反応性ポリマーを含有するため、建築用シーリング材を施工する際に、反応性ポリマーを反応させる必要がある。そのため、施工直前に、組成物(I)、(II)を調製して使用する。つまり、容器(I)、(II)に収容されている組成物(I)、(II)は、調製前後で態様が異なるが、「容器(I)に収容されている」及び「容器(II)に収容されている」には、両態様が含まれる。具体的には、調製後では、容器(I)、(II)に収容されている組成物(I)、(II)は、それらをそれぞれ構成する各成分が混合されたものである。一方、調製前では、反応性ポリマーの種類に応じて、少なくとも、反応性ポリマーと硬化触媒とをさらに別々の容器に収容したものである。反応性ポリマーが、例えば、変成シリコーンである場合は、例えば、硬化触媒とそれ以外の成分を個別の容器に収容し、これらをまとめて容器に収容したものが挙げられる。また、反応性ポリマーが末端NCO含有プレポリマーである場合は、末端NCO含有プレポリマー及び必要に応じて添加される溶剤と、それ以外の成分とを個別の容器に収容し、これらをまとめて容器に収容したものが挙げられる。
【0069】
(まだら模様を有する建築用シーリング材の施工方法)
実施形態に係る、まだら模様を有する建築用シーリング材の施工方法は、前述のサイディングボード等の壁材、前述の組成物(I)、(II)を用いて、複数の壁材間に形成された隙間である目地にまだら模様を有する建築用シーリング材を形成する方法である。具体定には、例えば、以下のようにして施工することができる。
【0070】
先ず、複数の壁材を所定間隔で隙間(目地)を形成して所定位置に設置する工程を行う。この際の隙間の幅は、特に限定はないが、幅5~30mmであるのが好ましい。使用する壁材は特に限定はないが、サイディングボードが好ましく、窯業系のサイディングボードがより好ましい。壁材表面の意匠は特に限定はないが、まだら模様が形成されているのが好適である。
【0071】
次に、形成した目地に前述の組成物(I)を投入した後、投入した組成物(I)の表面を平滑にして下塗り層を形成する。下塗り層の表面の高さは壁材の表面に一致しているか、若干低く、凹部が形成されるのが好ましい。
【0072】
次に、下塗り層の表面を硬化させた後、前述の組成物(II)を塗布し、下塗り層の表面を部分的に被覆してまだら模様を形成する。この際の下塗り層の表面の硬化は、表面からの厚さが0.5mm以上硬化させるのが好ましい。また、その際の硬化時間は、23℃、相対湿度50%RHの条件下においては8時間以下であるのが好ましく、3時間以下であるのがより好ましく、2時間以下がさらに好ましい。組成物(II)の塗膜の厚みは、壁材の表面の意匠と調和している限り、特に限定はないが、後述するようにマスキングテープを用いる場合は、組成物(II)の硬化物の変形を抑制する観点から、その成分組成に応じて適宜決定することができる。組成物(II)の塗布方法は、特に限定はなく、組成物(II)の特性に応じて適宜選択することができ、例えば、スプレー塗布、展着塗装等が挙げられる。スプレー塗布は、公知のスプレーガン、霧吹き等を用いて行うことができる。展着塗装を行う際に用いる塗装用具としては、まだら模様を形成しやすいものが好ましく、表面にしわが形成されたもの、柔軟な毛や繊維を有するもの等が挙げられ、例えば、スポンジ、刷毛、ベンダー、軍手、しわがつくように丸めたラップ等が挙げられる。このうち、壁材の様々なまだら模様等の意匠と調和したまだら模様を効率的に形成する観点からは、しわがつくように丸めたラップが特に好適である。また、組成物(II)の塗布は、壁材の模様に応じて、組成物(I)の表面積に対して10~70%を部分的に被覆するのが好ましい。
【0073】
そして、組成物(II)を硬化させ、まだら模様が形成された建築用シーリング材が形成される。
【0074】
尚、壁材の目地際には、壁材の汚染を防止する観点から、マスキングテープを貼り付けるのが好ましい。マスキングテープの貼り付けは、組成物(I)を打設する前でもよいし、組成物(I)を打設後、組成物(II)を塗布する前でもよい。また、組成物(II)の塗膜の厚みを調整するため、必要に応じて、マスキングテープの表面にスペーサーを設けてもよい。スペーサーは組成物(II)を塗布後、硬化前に除去可能なものが好ましい。組成物(II)が硬化した後、マスキングテープを除去する。前述のように、組成物(II)の成分組成に応じて厚みを調整することで、マスキングテープを除去する際に組成物(II)の硬化物の変形が抑制される。
【0075】
以上のように、前述の組成物(I)、(II)を用いることで、意匠性の高い壁材を用いた際に、壁材の模様に調和したまだら模様を有するシーリング材を容易に施工することができる。
【0076】
前述の組成物(I)、(II)を用いた建築用シーリング材は、意匠性の高い壁材を用いて建築物の外壁等を形成する際に適用することで、外壁等全体が統一されたデザインとすることができるが、このような外壁を施工後、所定期間が経過して、壁材の模様が変化した場合であっても、変化した壁材の模様に応じて、それと調和したシーリング材を適用することで、統一されたデザインの外壁等を再度形成することも可能である。この場合は、定法に従って、外壁を設けた当初のシーリング材を除去し、新たに前述の建築用シーリング材を適用すればよい。
【実施例】
【0077】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0078】
実施例及び比較例で用いた成分は下記のとおりである。尚、反応性ポリマーとして、(1)変成シリコーン又は合成して得られる(2)イソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを用いた。
【0079】
(1)変成シリコーン
(反応性ポリマー)
・反応性シリル基としてジメトキシメチルシリル基を末端に有するポリエーテル系ポリマー、株式会社カネカ製、カネカMSポリマー(登録商標)S203(表1中「S203」)
・反応性シリル基として加水分解性シリル基を有するアクリル系ポリマー、株式会社カネカ製、テレケリックポリアクリレートXMAP SB802S(表1中「SB802S」)
(充填剤)
・表面処理炭酸カルシウム:脂肪酸表面処理、白石カルシウム株式会社製、CCR-B(表1中「CCR-B」)
・重質炭酸カルシウム:白石カルシウム株式会社製、300M(表1中「300M」)、ホワイトンSB(表1中「ホワイトンSB」)
(硬化触媒)
・ジブチル錫トリエチルシリケート:日東化成株式会社製、ネオスタンU-303(表1中「ネオスタンU-303」)
・ジ-n-ブチル錫オキサイドとフタル酸ジイソノニルの4:6混合物:大協化成工業株式会社製、DSC4(表1中「DSC4」)
(可塑剤)
・フタル酸エステル類:フタル酸ジイソノニル(表1中「DINP」)
・ポリエーテルポリオール:AGC株式会社製、エクセノール3020(表1中「エクセノール3020」)、数平均分子量Mn=3200、平均官能基数f=2、OH価=35
(揺変剤)
アマイドワックス:伊藤製油株式会社製、A-S-A T-1800(表1中「A-S-A T-1800」)
(密着剤)
・アミノシランカップリング剤:信越化学工業株式会社製、KBM-603(表1中「KBM-603」)
・テトラエチルシリケート:エボニック・ジャパン株式会社製、Dynasylan A(表1中「Dynasylan A」)
(酸化防止剤)
フェノール系酸化防止剤:株式会社アデカ製、アデカスタブAO-60P(表1中「AO-60P」)
(着色剤)
・グレートナー(A)(表1中「グレートナー(A)」):下記黒トナーと下記白トナーを質量比(黒/白)が1/205で混合したもの
・グレートナー(B)(表1中「グレートナー(B)」):下記黒トナーと下記白トナーを質量比(黒/白)が1/58で混合したもの
・グレートナー(C)(表1中「グレートナー(C)」):下記黒トナーと下記白トナーを質量比(黒/白)が1/410で混合したもの
・黒トナー:カーボンブラック(X)とDINP(Y)を質量比(X/Y)が40/60で混合したもの
・白トナー:酸化チタン(Z)とDINP(Y)を質量比(Z/Y)が50/50で混合したもの
【0080】
(2)イソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマー
<基材>
(i)ポリオール
AGC株式会社製、エクセノール2020(表2中「エクセノール2020」)、数平均分子量Mn=2000、平均官能基数f=2、OH価=56
(ii)ジイソシアネート
トルエンジイソシアネート(TDI)(表2中「TDI」)、2,4-異性体100重量%
(iii)溶剤
イソパラフィン系炭化水素:出光興産株式会社製、出光スーパゾルFP-38(表2中「FP-38」)
<硬化剤>
(i)ポリオール
三洋化成工業株式会社製、サンニックスCH-5000(表2中「サンニックスCH-5000」)、数平均分子量Mn=5000、平均官能基数f=3、OH価=33
(ii)触媒
・オクチル酸ビスマス系触媒:日東化成株式会社製、ネオスタンU-660(表2中「ネオスタンU-660」)
・オクチル酸金属石鹸:日本化学産業株式会社製、ニッカオクチックスCa5%(表2中「ニッカオクチックスCa5%」)
(iii)触媒安定剤
チッソ株式会社製、オクチル酸(表2中「オクチル酸」)
(iv)密着剤
アクリル系化合物:東亜合成株式会社製、アロニックスST-300(表2中「アロニックスST-300」)
(v)充填剤
・表面処理炭酸カルシウム:脂肪酸表面処理コロイダル炭酸カルシウム、竹原化学工業株式会社製、ネオライトSP-T(表2中「ネオライトSP-T」)
・重質炭酸カルシウム:白石カルシウム株式会社製、300M(表2中「300M」)
(vi)可塑剤
フタル酸エステル類:フタル酸ジイソノニル(表2中「DINP」)
(vii)着色剤
変成シリコーンで用いたものと同じ、グレートナー(A)(表2中「グレートナー(A)」)、グレートナー(B)(表2中「グレートナー(B)」)
【0081】
(3)比較例1で用いた部分被覆塗装用組成物(組成物(II))
ウレタン系塗料:エスケー化研社製、製品名クリーンマイルドウレタン(表3中、「組成物(II)ホ」)
【0082】
(製造例1~8)
表1に示す組成になるように、触媒以外の資材をプラネタリーミキサーにて60分撹拌した後、真空減圧下80℃で2時間撹拌した。次に、30℃まで冷却後、表1に示す組成になるように触媒を配合し、真空減圧下30℃以下で15分撹拌をして、(I)建築用シーリング材組成物(表1中「組成物(I)」)A~E(それぞれ製造例1~5)及び(II)部分被覆塗装用組成物(表1中「組成物(II)」)イ~ハ(それぞれ製造例6~8)を得た。尚、表1中の組成の単位は質量%である。
【0083】
【0084】
(製造例9、10)
表2の「基材」に示す成分組成となるように、ポリオールとTDIを85℃にて10時間反応させた後、イソシアネート基(NCO)含有率3.0重量%のポリウレタンプレポリマーを得た。該ポリウレタンプレポリマーに、表2に示す組成となるようにイソパラフィン系炭化水素を混合攪拌し、基剤を得た。表2の「硬化剤」に示す成分組成となるように、各資材を混合撹拌して硬化剤を得た後、基剤と硬化剤を1:4(重量比)で混合して、(I)建築用シーリング材組成物(表2中「組成物(I)」)F(製造例9)及び(II)部分被覆塗装用組成物(表2中「組成物(II)」)ニ(製造例10)を得た。尚、表2中の組成の単位は質量%である。
【0085】
【0086】
(評価1)
【0087】
<組成物(I)の塗工性>
幅10mm×深さ10mm×長さ100mmとなるように目地を作製した後、組成物(I)A~Fを打設して、温度23℃、湿度50%RHにて静置した。打設後1時間ごとに目地を切断し、未硬化部分を取り除いた後、硬化した部分の外表面から厚み方向の深さを定規を用いて測定した。硬化した部分の外表面からの厚みが0.5mm以上になった時の、打設後の時間を記録した。結果を表3に示す。
【0088】
<組成物(I)、(II)の硬化物の引張破断伸び>
製造例1~5、9で得られた組成物(I)A~F、製造例6、7、8、10で得られた組成物(II)イ~ニを用いて、JIS K 6251(2017)の試験片として、ダンベル状3号形を作製し、引張試験を行った。試験片の厚みは2mmとし、試験片を作製後、23℃、湿度65%RHで2週間養生した。結果を表3に示す。
【0089】
<組成物(I)、(II)の粘度>
製造例1~5、9で得られた組成物(I)A~F、製造例6、7、8、10で得られた組成物(II)イ~ニを用いて、20℃環境下にてBS型粘度計No.7ローターを用いてせん断速度2.1sec-1で1分後の粘度を測定した。結果を表3に示す。
【0090】
(評価2)
表3~5に示す、組成物(I)A~Fと組成物(II)イ~ニの組合せのセットを用いて、建築用シーリング材を作製し、以下の評価を行った。評価結果を表3~5に示す。
【0091】
<外観及びΔL>
製造例1~5、9で得られた組成物(I)A~Fを、幅10mm×深さ10mmの目地に打設し、各組成物(I)の外表面から厚み方向0.5mmまでの表層部が硬化するまで養生した。その後、ラップ(旭化成ホームプロダクツ社製、製品名サランラップ(登録商標))をしわがつくように丸めた後、組成物(II)イ~ニを適量付着させ、組成物(I)A~Fの外表面に部分的に塗布(展着塗装)した。23℃50%RHで7日間養生し、外観の観察及びΔLの算出を行った。外観は、目視により確認した。ΔLは、次のようにして組成物(I)と組成物(II)の硬化物についてL*を測定し、両者の差(L*(組成物(II))-L*(組成物(I)))を算出した。L*は分光色彩計(日本電色工業株式会社製、ハンディ型色彩計 NR-12A)を用いて測定した。尚、L*は、塗膜面に垂直な軸に対し45°の角度から光を照射し、反射した光のうち塗膜面に垂直な方向の光について測色したときの値である。評価基準は以下のとおりである。評価結果を表3に示す。
外観;まだら模様になっている:○、まだら模様になっていない:×
ΔL;0.5-50である場合に外壁とシーリング材の模様が調和し、違和感がない仕上がりである
【0092】
<動的耐久性>
断面L字形のアングルを2本用いて、幅20mm×深さ20mm×長さ100mmの目地を作製し、当該目地に組成物(I)を打設後、完全硬化となるまで23℃、50%RHにて養生した。次に、組成物(I)の硬化物の外表面に、前述と同様にしてしわがつくように丸めたラップを用いてまだら模様になるように組成物(II)を塗布(展着塗装)した後、23℃、50%RHにて7日間養生した。得られた建築用シーリング材の組成物(II)の厚みは、0.1~0.5mmであった。得られた建築用シーリング材を用いて、23℃にて、対向するアングル間の距離の変位が20%となるように圧縮、伸縮を最大10000回繰り返した後、表面を目視により観察した。評価基準は以下のとおりである。評価結果を表3に示す。
外観;組成物(II)の硬化物の割れがない:○、組成物(II)の硬化物の割れがある:×
【0093】
<マスキング除去性>
幅10mm×深さ10mmとなるようにモルタルを用いて目地を作製した。得られた目地に、組成物(I)Bを打設し、表面を平滑にして下塗り層を形成した。その後、23℃、湿度50%RHにて完全硬化となるまで養生した。目地際にマスキングテープを貼り、その上に、表4に示す各膜厚(実施例7~10)になるようにスペーサーを設置し、組成物(II)イを塗布(展着塗装)した。なお、硬化前にスペーサーは除去した。その後、23℃、湿度50%RHで12時間静置した。その後、マスキングテープをはがし、外観の観察を行った。評価基準は、マスキングテープをはがした際に、組成物(II)イの硬化物が巻き込まれ、形状が変化したものを「×」、巻き込まれることなく、形状の変化がなかったものを「○」、やや形状は変化しているが大きな変化がないものを「△」とした。評価結果を表4に示す。
【0094】
<被覆面積率及び外観>
<<シーリング材の作製>>
製造例1で得られた組成物(I)A、Dを、幅10mm×深さ10mmの目地にそれぞれ打設し、各組成物(I)の外表面から厚み方向0.5mmまでの表層部が硬化するまで養生した。その後、ラップ(旭化成ホームプロダクツ社製、製品名サランラップ(登録商標))をしわがつくように丸めた後、組成物(II)イ、ロを適量付着させ、組成物(I)A、Dの外表面に部分的にそれぞれ塗布(展着塗装)した。この際、各組成物(II)の付着量を変化させ、表5に示すように組成物(II)の被覆面積率を変化させた(実施例11~16)。23℃50%RHで7日間養生し、外観の観察及び組成物(II)の被覆面積率の算出を行った。外観は、目視により確認した。外観の評価基準は、「○」はまだら模様になっている、「△」は組成物(II)が少し多いもしくは少し少ない、「×」は組成物(II)が多いもしくは少なくまだら模様になっていない状態である。評価結果を表5に示す。被覆面積率は、以下のようにして算出した。
【0095】
<<被覆面積率の算出>>
養生後のシーリング材の表面を、光学顕微鏡(KEYENCE社製、VHX-600)により、20倍で撮影し、撮像に基づき、組成物(I)の硬化物の面積(総面積)と、組成物(II)の硬化物の面積を計測し、総面積に対する、組成物(II)の硬化物の面積の比率を被覆面積率として算出した。計測は、光学顕微鏡に付属の画像処理ソフトにより行った。計測、算出結果を表5に示す。各撮像を
図1~6に示す。
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
表3~5、
図1~6より、所定の組成物(I)、(II)を組み合わせて用いることで、サイディングボードのまだら模様と同様のまだら模様を有することが可能で、組成物(II)の硬化物の割れの発生を抑制可能で、かつ、従来よりも工期の短縮が可能な建築用シーリング材を提供可能であることが分かる。