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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】表面処理剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/18 20060101AFI20240529BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20240529BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240529BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20240529BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240529BHJP
【FI】
C09K3/18 104
C09K3/18 103
C09D5/16
C09D201/00
C09D7/65
C09D7/63
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2023071452
(22)【出願日】2023-04-25
(65)【公開番号】P2023163159
(43)【公開日】2023-11-09
【審査請求日】2023-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2022073694
(32)【優先日】2022-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 裕介
(72)【発明者】
【氏名】前平 健
(72)【発明者】
【氏名】山下 恒雄
(72)【発明者】
【氏名】三橋 尚志
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-314666(JP,A)
【文献】特開2001-354763(JP,A)
【文献】特開2022-013941(JP,A)
【文献】特開2020-090652(JP,A)
【文献】特開平5-189752(JP,A)
【文献】特開平5-247200(JP,A)
【文献】特開2003-113388(JP,A)
【文献】特開2021-17581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C09K 3/18
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A):フルオロポリエーテル基含有シラン化合物、及び
成分(B):フルオロポリエーテル基含有アルキルアミド化合物を含み、
前記成分(B)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計に対して、10~60質量%であり、
前記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、下記式(A1)又は(A2):
【化1】
[式中:
FA1は、それぞれ独立して、Rf-R-O-であり、
FA2は、-Rf -R-O-であり、
は、それぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり、
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり、
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり、
pは、0又は1であり、
qは、それぞれ独立して、0又は1であり、
Siは、それぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子又は1価の基が結合したSi原子を含む1価の基であり、
少なくとも1つのRSiは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基であり、
は、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の基であり、
α1は、1~9の整数であり、
β1は、1~9の整数であり、
γ1は、それぞれ独立して、1~9の整数である。]
で表される化合物であり、
前記フルオロポリエーテル基含有アルキルアミド化合物は、下記式(B1)又は(B2):
【化2】
[式中:
FB1は、Rf-R-O-であり、
FB2は、-Rf -R-O-であり、
は、それぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり、
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり、
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり、
pは、0又は1であり、
qは、それぞれ独立して、0又は1であり、
は、それぞれ独立して、単結合、又は2価の基であり、
B1は、それぞれ独立して、C1-6アルキル基であり、
B2は、それぞれ独立して、C1-6アルキル基、又は水素原子である。]
で表される化合物である、表面処理剤。
【請求項2】
B2は、それぞれ独立して、C1-6アルキル基である、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項3】
は、それぞれ独立して、単結合、又は、-(R67b1-(R68b2
[式中:
67は、それぞれ独立して、C1-6アルキレン基であり、
68は、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子、CO、NR69、CONR69、NR69CO、又はC6-12アリーレン基であり、
69は、それぞれ独立して、水素原子、又はC1-6アルキル基であり、
b1は、0~6の整数で有り、
b2は、0~6の整数で有り、
b1及びb2の合計は、1以上であり、
b1又はb2を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]である、
請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項4】
は、それぞれ独立して、単結合、C1-6アルキレン基、又は、-R64-O-R65-であり、
64は、単結合、又はC1-6アルキレン基であり、
65は、単結合、又はC1-6アルキレン基である、
請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項5】
式(B1)及び(B2)において、Rは、それぞれ独立して、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OCFa -(OC-(OCF
[式中:
Faは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、ただし、すべてのRFaが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。]
で表される基である、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項6】
式(B1)及び(B2)において、Rfは、C1-16パーフルオロアルキル基であり、
Rfは、C1-6パーフルオロアルキレン基であり、
は、それぞれ独立して、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF
[式中:
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項7】
式(B1)及び(B2)において、Rは、それぞれ独立して、下記式(f1)、(f2)、(f3)、(f4)、(f5)、又は(f6):
-(OC-(OC- (f1)
[式中、dは1~200の整数であり、eは0又は1である。]、
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して、0~30の整数であり、
e及びfは、それぞれ独立して、1~200の整数であり、
c、d、e及びfの和は、10~200の整数であり、
c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]、
-(R-R- (f3)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数である。]、
-(R-R-R-(R7’-R6’g’- (f4)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
6’は、OCF又はOCであり、
7’は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数であり、
g’は、2~100の整数であり、
は、
【化3】
(式中、*は、結合位置を示す。)
である。];
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f5)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f6)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項8】
式(A1)及び(A2)において、Rは、それぞれ独立して、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OCFa -(OC-(OCF
[式中:
Faは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、ただし、すべてのRFaが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。]
で表される基である、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項9】
式(A1)及び(A2)において、Rfは、C1-16パーフルオロアルキル基であり、
Rfは、C1-6パーフルオロアルキレン基であり、
は、それぞれ独立して、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF
[式中:
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項10】
式(A1)及び(A2)において、Rは、それぞれ独立して、下記式(f1)、(f2)、(f3)、(f4)、(f5)、又は(f6):
-(OC-(OC- (f1)
[式中、dは1~200の整数であり、eは0又は1である。]、
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して、0~30の整数であり、
e及びfは、それぞれ独立して、1~200の整数であり、
c、d、e及びfの和は、10~200の整数であり、
c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]、
-(R-R- (f3)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数である。]、
-(R-R-R-(R7’-R6’g’- (f4)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
6’は、OCF又はOCであり、
7’は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数であり、
g’は、2~100の整数であり、
は、
【化4】
(式中、*は、結合位置を示す。)
である。];
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f5)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f6)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項11】
Siは、下記式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)又は(S5):
【化5】
[式中:
11は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
12は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり、
n1は、(SiR11 n112 3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数であり、
11は、それぞれ独立して、単結合又は2価の基であり、
13は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり、
tは、それぞれ独立して、2以上の整数であり、
14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は-X11-SiR11 n112 3-n1であり、
15は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基、又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基であり、
a1は、それぞれ独立して、-Z-SiR21 p122 q123 r1であり;
は、それぞれ独立して、2価の基であり、
21は、それぞれ独立して、-Z1’-SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’であり;
22は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
23は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり、
p1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
q1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
p1、q1及びr1の合計は、(SiR21 p122 q123 r1)単位において、3であり、
1’は、それぞれ独立して、2価の基であり、
21’は、それぞれ独立して、-Z1”-SiR22” q1”23” r1”であり;
22’は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
23’は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり、
p1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
q1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
p1’、q1’及びr1’の合計は、(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)単位において、3であり、
1”は、それぞれ独立して、2価の基であり、
22”は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
23”は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり、
q1”は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r1”は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
q1”及びr1”の合計は、(SiR22” q1”23” r1”)単位において、3であり、
b1は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
c1は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり、
k1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
l1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
m1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
k1、l1及びm1の合計は、(SiRa1 k1b1 l1c1 m1)単位において、3であり、
d1は、それぞれ独立して、-Z-CR31 p232 q233 r2であり;
は、それぞれ独立して、単結合、2価の基であり;
31は、それぞれ独立して、-Z2’-CR32’ q2’33’ r2’であり;
32は、それぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2であり、
33は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり、
p2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
q2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
p2、q2及びr2の合計は、(CR31 p232 q233 r2)単位において、3であり、
2’は、それぞれ独立して、単結合、又は2価の基であり;
32’は、それぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2であり、
33’は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり、
q2’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r2’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
q2’及びr2’の合計は、(CR32’ q2’33’ r2’)単位において、3であり、
は、それぞれ独立して、単結合、又は2価の基であり;
34は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
35は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり、
n2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
e1は、それぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2であり、
f1は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり、
k2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
l2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
m2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
k2、l2及びm2の合計は、(CRd1 k2e1 l2f1 m2)単位において、3であり、
g1及びRh1は、それぞれ独立して、-Z-SiR11 n112 3-n1、-Z-SiRa1 k1b1 l1c1 m1、又は-Z-CRd1 k2e1 l2f1 m2であり、
は、それぞれ独立して、単結合、又は2価の基であり、
ただし、式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)及び(S5)中、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも1つ存在する。]
で表される基である、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項12】
α1、β1、及びγ1は、1であり、Xは、単結合又は2価の基である、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項13】
は、単結合又は下記式:
-(R51p5-(X51q5
[式中:
51は、単結合、-(CHs5-又はo-、m-もしくはp-フェニレン基であり、
s5は、1~20の整数であり、
51は、-(X52l5-であり、
52は、それぞれ独立して、-O-、-S-、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-C(O)O-、-Si(R53-、-(Si(R53O)m5-Si(R53-、-CONR54-、-O-CONR54-、-NR54-及び-(CHn5-からなる群から選択される基であり、
53は、それぞれ独立して、フェニル基、C1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基であり、
54は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基又はC1-6アルキル基であり、
m5は、それぞれ独立して、1~100の整数であり、
n5は、それぞれ独立して、1~20の整数であり、
l5は、1~10の整数であり、
p5は、0又は1であり、
q5は、0又は1であり、
ここに、p5及びq5の少なくとも一方は1であり、p5又はq5を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意であり、
右側がRSiに結合する。]
で表される2価の基である、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項14】
は、下記式:
【化6】
[式中、Xは、単結合又は2価の基である。]
で表される基である、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項15】
含フッ素オイル、シリコーンオイル、アルコール、及び触媒から選択される1種又はそれ以上の他の成分をさらに含有する、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項16】
さらに溶媒を含む、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項17】
防汚性コーティング剤又は防水性コーティング剤として使用される、請求項1に記載の表面処理剤。
【請求項18】
請求項1に記載の表面処理剤を含有するペレット。
【請求項19】
基材と、該基材上に、請求項1に記載の表面処理剤より形成された層とを含む物品。
【請求項20】
前記基材は、ガラス基材である、請求項19に記載の物品。
【請求項21】
光学部材である、請求項19に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表面処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、基材の表面処理に用いると、優れた撥水性、撥油性、防汚性などを提供し得ることが知られている。フルオロポリエーテル基含有シラン化合物を含む表面処理剤から得られる層(以下、「表面処理層」とも言う)は、いわゆる機能性薄膜として、例えばガラス、プラスチック、繊維、衛生用品、建築資材など種々多様な基材に施されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-218639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、優れた機能を有する表面処理層を与えることができるが、より高い摩擦耐久性を有する表面処理層が求められている。
【0005】
本開示は、摩擦耐久性がより高い表面処理層を有する物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の態様を含む。
[1] 成分(A):フルオロポリエーテル基含有シラン化合物、及び
成分(B):式(B1)又は(B2):
【化1】
[式中:
FB1は、Rf-R-O-であり、
FB2は、-Rf -R-O-であり、
は、それぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり、
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり、
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり、
pは、0又は1であり、
qは、それぞれ独立して、0又は1であり、
は、それぞれ独立して、単結合、又は2価の基であり、
B1は、それぞれ独立して、C1-6アルキル基であり、
B2は、それぞれ独立して、C1-6アルキル基、又は水素原子である。]
で表されるフルオロポリエーテル基含有アルキルアミド化合物
を含む、表面処理剤。
[2] RB2は、それぞれ独立して、C1-6アルキル基である、上記[1]に記載の表面処理剤。
[3] Xは、それぞれ独立して、単結合、又は、-(R67b1-(R68b2
[式中:
67は、それぞれ独立して、C1-6アルキレン基であり、
68は、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子、CO、NR69、CONR69、NR69CO、又はC6-12アリーレン基であり、
69は、それぞれ独立して、水素原子、又はC1-6アルキル基であり、
b1は、0~6の整数で有り、
b2は、0~6の整数で有り、
b1及びb2の合計は、1以上であり、
b1又はb2を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
である、上記[1]または[2]に記載の表面処理剤。
[4] Xは、それぞれ独立して、単結合、C1-6アルキレン基、又は、-R64-O-R65-であり、
64は、単結合、又はC1-6アルキレン基であり、
65は、単結合、又はC1-6アルキレン基である、
上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[5]
は、それぞれ独立して、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OCFa -(OC-(OCF
[式中:
Faは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、ただし、すべてのRFaが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。]
で表される基である、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[6]
Rfは、C1-16パーフルオロアルキル基であり、
Rfは、C1-6パーフルオロアルキレン基であり、
は、それぞれ独立して、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF
[式中:
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、ただし、すべてのRFaが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。]
で表される基である、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[7]
は、それぞれ独立して、下記式(f1)、(f2)、(f3)、(f4)、(f5)、又は(f6):
-(OC-(OC- (f1)
[式中、dは1~200の整数であり、eは0又は1である。]、
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して、0~30の整数であり、
e及びfは、それぞれ独立して、1~200の整数であり、
c、d、e及びfの和は、10~200の整数であり、
c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]、
-(R-R- (f3)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数である。]、
-(R-R-R-(R7’-R6’g’- (f4)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
6’は、OCF又はOCであり、
7’は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数であり、
g’は、2~100の整数であり、
は、
【化2】
(式中、*は、結合位置を示す。)
である。];
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f5)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f6)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[8]
前記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、下記式(A1)又は(A2):
【化3】
[式中:
FA1は、それぞれ独立して、Rf-R-O-であり、
FA2は、-Rf -R-O-であり、
は、それぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり、
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり、
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり、
pは、0又は1であり、
qは、それぞれ独立して、0又は1であり、
Siは、それぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子又は1価の基が結合したSi原子を含む1価の基であり、
少なくとも1つのRSiは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基であり、
は、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の基であり、
α1は、1~9の整数であり、
β1は、1~9の整数であり、
γ1は、それぞれ独立して、1~9の整数である。]
で表される化合物である、上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[9]
式(A1)及び(A2)において、Rは、それぞれ独立して、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OCFa -(OC-(OCF
[式中:
Faは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、ただし、すべてのRFaが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。]
で表される基である、上記[8]に記載の表面処理剤。
[10]
式(A1)及び(A2)において、Rfは、C1-16パーフルオロアルキル基であり、
Rfは、C1-6パーフルオロアルキレン基であり、
は、それぞれ独立して、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF
[式中:
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意であり、ただし、すべてのRFaが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。]
で表される基である、上記[8]又は[9]に記載の表面処理剤。
[11]
式(A1)及び(A2)において、Rは、それぞれ独立して、下記式(f1)、(f2)、(f3)、(f4)、(f5)、又は(f6):
-(OC-(OC- (f1)
[式中、dは1~200の整数であり、eは0又は1である。]、
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して、0~30の整数であり、
e及びfは、それぞれ独立して、1~200の整数であり、
c、d、e及びfの和は、10~200の整数であり、
c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]、
-(R-R- (f3)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数である。]、
-(R-R-R-(R7’-R6’g’- (f4)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
6’は、OCF又はOCであり、
7’は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数であり、
g’は、2~100の整数であり、
は、
【化4】
(式中、*は、結合位置を示す。)
である。];
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f5)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f6)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である、上記[8]~[10]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[12]
Siは、下記式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)又は(S5):
【化5】
[式中:
11は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
12は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり、
n1は、(SiR11 n112 3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数であり、
11は、それぞれ独立して、単結合又は2価の基であり、
13は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり、
tは、それぞれ独立して、2以上の整数であり、
14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は-X11-SiR11 n112 3-n1であり、
15は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基、又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基であり、
a1は、それぞれ独立して、-Z-SiR21 p122 q123 r1であり;
は、それぞれ独立して、2価の基であり、
21は、それぞれ独立して、-Z1’-SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’であり;
22は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
23は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり、
p1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
q1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
p1、q1及びr1の合計は、(SiR21 p122 q123 r1)単位において、3であり、
1’は、それぞれ独立して、2価の基であり、
21’は、それぞれ独立して、-Z1”-SiR22” q1”23” r1”であり;
22’は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
23’は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり、
p1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
q1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
p1’、q1’及びr1’の合計は、(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)単位において、3であり、
1”は、それぞれ独立して、2価の基であり、
22”は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
23”は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり、
q1”は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r1”は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
q1”及びr1”の合計は、(SiR22” q1”23” r1”)単位において、3であり、
b1は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
c1は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり、
k1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
l1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
m1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
k1、l1及びm1の合計は、(SiRa1 k1b1 l1c1 m1)単位において、3であり、
d1は、それぞれ独立して、-Z-CR31 p232 q233 r2であり;
は、それぞれ独立して、単結合、2価の基であり;
31は、それぞれ独立して、-Z2’-CR32’ q2’33’ r2’であり;
32は、それぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2であり、
33は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり、
p2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
q2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
p2、q2及びr2の合計は、(CR31 p232 q233 r2)単位において、3であり、
2’は、それぞれ独立して、単結合、又は2価の基であり;
32’は、それぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2であり、
33’は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり、
q2’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
r2’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
q2’及びr2’の合計は、(CR32’ q2’33’ r2’)単位において、3であり、
は、それぞれ独立して、単結合、又は2価の基であり;
34は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
35は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり、
n2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
e1は、それぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2であり、
f1は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり、
k2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
l2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
m2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
k2、l2及びm2の合計は、(CRd1 k2e1 l2f1 m2)単位において、3であり、
g1及びRh1は、それぞれ独立して、-Z-SiR11 n112 3-n1、-Z-SiRa1 k1b1 l1c1 m1、又は-Z-CRd1 k2e1 l2f1 m2であり、
は、それぞれ独立して、単結合、又は2価の基であり、
ただし、式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)及び(S5)中、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも1つ存在する。]
で表される基である、上記[8]~[11]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[13]
α1、β1、及びγ1は、1であり、Xは、単結合又は2価の基である、上記[8]~[12]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[14]
は、単結合又は下記式:
-(R51p5-(X51q5
[式中:
51は、単結合、-(CHs5-又はo-、m-もしくはp-フェニレン基であり、
s5は、1~20の整数であり、
51は、-(X52l5-であり、
52は、それぞれ独立して、-O-、-S-、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-C(O)O-、-Si(R53-、-(Si(R53O)m5-Si(R53-、-CONR54-、-O-CONR54-、-NR54-及び-(CHn5-からなる群から選択される基であり、
53は、それぞれ独立して、フェニル基、C1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基であり、
54は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基又はC1-6アルキル基であり、
m5は、それぞれ独立して、1~100の整数であり、
n5は、それぞれ独立して、1~20の整数であり、
l5は、1~10の整数であり、
p5は、0又は1であり、
q5は、0又は1であり、
ここに、p5及びq5の少なくとも一方は1であり、p5又はq5を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意であり、
右側がRSiに結合する。]
で表される2価の基である、上記[8]~[13]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[15]
は、下記式:
【化6】
[式中、Xは、単結合又は2価の基である。]
で表される基である、上記[8]~[14]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[16]
前記成分(B)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計に対して、1~70質量%である、上記[1]~[15]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[17]
前記成分(B)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計に対して、1~50質量%である、上記[1]~[16]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[18]
含フッ素オイル、シリコーンオイル、アルコール、及び触媒から選択される1種又はそれ以上の他の成分をさらに含有する、上記[1]~[17]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[19]
さらに溶媒を含む、上記[1]~[18]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[20]
防汚性コーティング剤又は防水性コーティング剤として使用される、上記[1]~[19]のいずれか1項に記載の表面処理剤。
[21]
上記[1]~[20]のいずれか1項に記載の表面処理剤を含有するペレット。
[22]
基材と、該基材上に、上記[1]~[21]のいずれか1項に記載の表面処理剤より形成された層とを含む物品。
[23]
前記基材は、ガラス基材である、上記[22]に記載の物品。
[24]
光学部材である、上記[23]に記載の物品。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、より高い摩擦耐久性を有する表面処理層を与えることができる表面処理剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において用いられる場合、「1価の有機基」とは、炭素を含有する1価の基を意味する。1価の有機基としては、特に限定されないが、炭化水素基又はその誘導体であり得る。炭化水素基の誘導体とは、炭化水素基の末端又は分子鎖中に、1つ又はそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有している基を意味する。尚、単に「有機基」と示す場合、1価の有機基を意味する。また、「2価の有機基」とは、炭素を含有する2価の基を意味する。かかる2価の有機基としては、例えば、有機基からさらに1個の水素原子を脱離させた2価の基が挙げられる。3価以上の有機基も同様に、有機基から所定の数の水素原子を脱離させた基を意味する。
【0009】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素及び水素を含む基であって、炭化水素から水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、C1-20炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状又は環状のいずれであってもよく、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つ又はそれ以上の環構造を含んでいてもよい。炭化水素基は、1つ又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0010】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、1個又はそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、5~10員の不飽和ヘテロシクリル基、C6-10アリール基及び5~10員のヘテロアリール基から選択される1個又はそれ以上の基が挙げられる。
【0011】
本明細書において、「加水分解性基」とは、本明細書において用いられる場合、加水分解反応を受け得る基を意味し、すなわち、加水分解反応により、化合物の主骨格から脱離し得る基を意味する。加水分解性基の例としては、-ORh1、-OCORh1、-O-N=CRh1 、-NRh1 、-NHRh1、-NCO、ハロゲン(これら式中、Rh1は、置換または非置換の炭素数1~4のアルキル基を示す)などが挙げられ、好ましくは-ORh1(即ち、アルコキシ基)である。Rh1の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が含まれる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましい。
【0012】
(表面処理剤)
本開示の表面処理剤は、
成分(A):フルオロポリエーテル基含有シラン化合物、及び
成分(B):式(B1)又は(B2):
【化7】
[式中:
FB1は、Rf-R-O-であり、
FB2は、-Rf -R-O-であり、
は、それぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり、
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり、
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり、
pは、0又は1であり、
qは、それぞれ独立して、0又は1であり、
は、それぞれ独立して、単結合、又は2価の基であり、
B1は、それぞれ独立して、C1-6アルキル基であり、
B2は、それぞれ独立して、C1-6アルキル基、又は水素原子である。]
で表されるフルオロポリエーテル基含有アルキルアミド化合物
を含む。
【0013】
本開示の表面処理剤は、成分(B)であるフルオロポリエーテル基含有アルキルアミド化合物を含むことにより、優れた摩擦耐久性を有する表面処理層を与えることができる。
【0014】
(フルオロポリエーテル基含有シラン化合物)
上記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、フルオロポリエーテル基及び加水分解性シラン基を含む化合物である。
【0015】
一の態様において、上記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、下記式(A1)又は(A2):
【化8】
[式中:
FA1は、Rf-R-O-であり、
FA2は、-Rf -R-O-であり、
は、それぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり、
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり、
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり、
pは、0又は1であり、
qは、それぞれ独立して、0又は1であり、
Siは、それぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子又は1価の基が結合したSi原子を含む1価の基であり、
少なくとも1つのRSiは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基であり、
は、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の基であり、
α1は、1~9の整数であり、
β1は、1~9の整数であり、
γ1は、それぞれ独立して、1~9の整数である。]
で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物である。
【0016】
式(A1)において、RFA1は、Rf-R-O-である。
【0017】
式(A2)において、RFA2は、-Rf -R-O-である。
【0018】
式(A1)及び(A2)において、Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基である。
【0019】
上記1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基における「C1-16アルキル基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-6アルキル基、特にC1-3アルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6アルキル基、特にC1-3アルキル基である。
【0020】
Rfは、好ましくは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-16アルキル基であり、より好ましくはCFH-C1-15パーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC1-16パーフルオロアルキル基である。
【0021】
上記C1-16パーフルオロアルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-6パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基であり、より好ましくは直鎖のC1-6パーフルオロアルキル基、特にC1-3パーフルオロアルキル基、具体的には-CF、-CFCF、又は-CFCFCFである。
【0022】
式(A1)及び(A2)において、Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基である。
【0023】
上記1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基における「C1-6アルキレン基」は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-3アルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-3アルキレン基である。
【0024】
Rfは、好ましくは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されているC1-6アルキレン基であり、より好ましくはC1-6パーフルオロアルキレン基であり、さらに好ましくはC1-3パーフルオロアルキレン基である。
【0025】
上記C1-6パーフルオロアルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC1-3パーフルオロアルキレン基であり、より好ましくは直鎖のC1-3パーフルオロアルキレン基、具体的には-CF-、-CFCF-、又は-CFCFCF-である。
【0026】
上記式において、pは、0又は1である。一の態様において、pは0である。別の態様においてpは1である。
【0027】
上記式において、qは、それぞれ独立して、0又は1である。一の態様において、qは0である。別の態様においてqは1である。
【0028】
式(A1)及び(A2)において、Rは、それぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基である。
【0029】
は、好ましくは、式:
-(OC12-(OC10-(OC-(OCFa -(OC-(OCF
[式中:
Faは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、0~200の整数であって、a、b、c、d、e及びfの和は1以上である。a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。ただし、すべてのRFaが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。]
で表される基である。
【0030】
Faは、好ましくは、水素原子又はフッ素原子であり、より好ましくは、フッ素原子である。ただし、すべてのRFaが水素原子又は塩素原子である場合、a、b、c、e及びfの少なくとも1つは、1以上である。
【0031】
a、b、c、d、e及びfは、それぞれ独立して、好ましくは0~100の整数、より好ましくは0~50の整数であってもよい。
【0032】
a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上であり、例えば25以上又は30以上であってもよい。a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは200以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは60以下であり、例えば50以下又は30以下であってもよい。
【0033】
これら繰り返し単位は、直鎖状であっても、分枝鎖状であってもよく、環構造を含んでいてもよい。例えば、-(OC12)-は、-(OCFCFCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCFCFCF)-、-(OCFCF(CF)CFCFCF)-、-(OCFCFCF(CF)CFCF)-、-(OCFCFCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCFCFCF(CF))-等であってもよい。-(OC10)-は、-(OCFCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCFCF)-、-(OCFCF(CF)CFCF)-、-(OCFCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCFCF(CF))-等であってもよい。-(OC)-は、-(OCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCF)-、-(OCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCF(CF))-、-(OC(CFCF)-、-(OCFC(CF)-、-(OCF(CF)CF(CF))-、-(OCF(C)CF)-及び-(OCFCF(C))-のいずれであってもよい。-(OC)-(即ち、上記式中、RFaはフッ素原子である)は、-(OCFCFCF)-、-(OCF(CF)CF)-及び-(OCFCF(CF))-のいずれであってもよい。-(OC)-は、-(OCFCF)-及び-(OCF(CF))-のいずれであってもよい。
【0034】
上記環構造は、下記三員環、四員環、五員環、又は六員環であり得る。
【化9】
[式中、*は、結合位置を示す。]
【0035】
上記環構造は、好ましくは四員環、五員環、又は六員環、より好ましくは四員環、又は六員環であり得る。
【0036】
環構造を有する繰り返し単位は、好ましくは、下記の単位であり得る。
【化10】
[式中、*は、結合位置を示す。]
【0037】
一の態様において、上記繰り返し単位は直鎖状である。上記繰り返し単位を直鎖状とすることにより、表面処理層の表面滑り性、摩擦耐久性等を向上させることができる。
【0038】
一の態様において、上記繰り返し単位は分枝鎖状である。上記繰り返し単位を分枝鎖状とすることにより、表面処理層の動摩擦係数を大きくすることができる。
【0039】
一の態様において、Rは、それぞれ独立して、下記式(f1)~(f6)のいずれかで表される基である。
-(OC-(OC- (f1)
[式中、dは、1~200の整数であり、eは0又は1、好ましくは0である。]、
-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f2)
[式中、c及びdは、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、e及びfは、それぞれ独立して1以上200以下の整数であり、
c、d、e及びfの和は2以上であり、
c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。]、
-(R-R- (f3)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数である。]、
-(R-R-R-(R7’-R6’g’- (f4)
[式中、Rは、OCF又はOCであり、
は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
6’は、OCF又はOCであり、
7’は、OC、OC、OC、OC10及びOC12から選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、
gは、2~100の整数であり、
g’は、2~100の整数であり、
は、
【化11】
(式中、*は、結合位置を示す。)
である。];
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f5)
[式中、eは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びfは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
-(OC12-(OC10-(OC-(OC-(OC-(OCF- (f6)
[式中、fは、1以上200以下の整数であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ独立して0以上200以下の整数であり、a、b、c、d、e又はfを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
【0040】
上記式(f1)において、dは、好ましくは5~200、より好ましくは10~100、さらに好ましくは15~50、例えば25~35の整数である。上記式(f1)におけるOCは、好ましくは(OCFCFCF)、(OCF(CF)CF)又は(OCFCF(CF))であり、より好ましくは(OCFCFCF)である。一の態様において、eは0である。別の態様において、eは1である。上記式(f1)における(OC)は、好ましくは(OCFCF)又は(OCF(CF))であり、より好ましくは(OCFCF)である。
【0041】
上記式(f2)において、e及びfは、それぞれ独立して、好ましくは5~200、より好ましくは10~200の整数である。また、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、例えば15以上又は20以上であってもよい。一の態様において、上記式(f2)は、好ましくは、-(OCFCFCFCF-(OCFCFCF-(OCFCF-(OCF-で表される基である。別の態様において、式(f2)は、-(OC-(OCF-で表される基であってもよい。
【0042】
上記式(f3)において、Rは、好ましくは、OCである。上記(f3)において、Rは、好ましくは、OC、OC及びOCから選択される基であるか、あるいは、これらの基から独立して選択される2又は3つの基の組み合わせであり、より好ましくは、OC又はOCである。OC、OC及びOCから独立して選択される2又は3つの基の組み合わせとしては、特に限定されないが、例えば-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、-OCOCOC-、及び-OCOCOC-等が挙げられる。上記式(f3)において、gは、好ましくは3以上、より好ましくは5以上の整数である。上記gは、好ましくは50以下の整数である。上記式(f3)において、OC、OC、OC、OC10及びOC12は、直鎖又は分枝鎖のいずれであってもよく、好ましくは直鎖である。この態様において、上記式(f3)は、好ましくは、-(OC-OC-又は-(OC-OC-である。
【0043】
上記式(f4)において、R、R及びgは、上記式(f3)の記載と同意義であり、同様の態様を有する。R6’、R7’及びg’は、それぞれ、上記式(f3)に記載のR、R及びgと同意義であり、同様の態様を有する。Rは、好ましくは、
【化12】
[式中、*は、結合位置を示す。]
であり、より好ましくは
【化13】
[式中、*は、結合位置を示す。]
である。
【0044】
上記式(f5)において、eは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0045】
上記式(f6)において、fは、好ましくは、1以上100以下、より好ましくは5以上100以下の整数である。a、b、c、d、e及びfの和は、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、例えば10以上100以下である。
【0046】
一の態様において、Rは、上記式(f1)で表される基である。
【0047】
一の態様において、Rは、上記式(f2)で表される基である。
【0048】
一の態様において、Rは、上記式(f3)又は(f4)で表される基である。
【0049】
一の態様において、上記Rは、上記式(f3)で表される基である。
【0050】
一の態様において、上記Rは、上記式(f4)で表される基である。
【0051】
一の態様において、Rは、上記式(f5)で表される基である。
【0052】
一の態様において、Rは、上記式(f6)で表される基である。
【0053】
において、fに対するeの比(以下、「e/f比」という)は、好ましくは0.1~10であり、より好ましくは0.2~5であり、さらに好ましくは0.2~2であり、さらにより好ましくは0.2~1.5であり、特に好ましくは0.2~0.85である。e/f比を10以下にすることにより、この化合物から得られる表面処理層の滑り性、摩擦耐久性及び耐ケミカル性(例えば、人工汗に対する耐久性)がより向上し得る。e/f比がより小さいほど、表面処理層の滑り性及び摩擦耐久性はより向上し得る。一方、e/f比を0.1以上にすることにより、化合物の安定性がより向上し得る。e/f比がより大きいほど、化合物の安定性はより向上し得る。
【0054】
一の態様において、耐熱性の観点から、上記e/f比は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.0~2.0であり得る。
【0055】
上記フルオロポリエーテル基含有シラン化合物において、RFA1及びRFB2部分の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば500~30,000、好ましくは1,500~30,000、より好ましくは2,000~10,000である。本明細書において、RFA1及びRFA2の数平均分子量は、19F-NMRにより測定される値とする。
【0056】
式(A1)及び(A2)において、RSiは、それぞれ独立して、水酸基、加水分解性基、水素原子又は1価の基が結合したSi原子を含む1価の基であり、少なくとも1つのRSiは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基である。
【0057】
好ましい態様において、RSiは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基、より好ましくは加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基である。
【0058】
好ましい態様において、RSiは、下記式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)又は(S5):
【化14】
で表される基である。
【0059】
上記式中、R11は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0060】
11は、好ましくは、それぞれ独立して、加水分解性基である。
【0061】
11は、好ましくは、それぞれ独立して、-ORh1、-OCORh1、-O-N=CRh1、-NRh1 、-NHRh1、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rh1は、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORh1(即ち、アルコキシ基)である。Rh1としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rh1は、メチル基である。別の態様において、Rh1は、エチル基である。
【0062】
上記式中、R12は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の基である。かかる1価の基は、上記水素原子、水酸基及び加水分解性基を除く1価の基である。
【0063】
上記1価の基は、好ましくは1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0064】
12において、1価の基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0065】
上記式中、n1は、(SiR11 n112 3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、RSiが式(S1)又は(S2)で表される基である場合、式(A1)及び式(A2)の末端のRSi部分(以下、単に式(A1)及び式(A2)の「末端部分」ともいう)において、n1が1~3である(SiR11 n112 3-n1)単位が少なくとも1つ存在する。即ち、かかる末端部分において、すべてのn1が同時に0になることはない。換言すれば、式(A1)及び式(A2)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも1つ存在する。
【0066】
n1は、(SiR11 n112 3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数、より好ましくは2又は3、さらに好ましくは3である。
【0067】
上記式中、X11は、それぞれ独立して、単結合又は2価の基である。かかる2価の基は、好ましくは酸素原子、硫黄原子、NH、CO、又は2価の有機基である。2価の基は、好ましくは2価の有機基である。かかる2価の有機基は、好ましくは-R28-O-R29-(式中、R28及びR29は、それぞれ独立して、単結合又はC1-20アルキレン基であり、xは0又は1である。)である。かかるC1-20アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。かかるC1-20アルキレン基は、好ましくはC1-10アルキレン基、より好ましくはC1-6アルキレン基、さらに好ましくはC1-3アルキレン基である。
【0068】
一の態様において、X11は、それぞれ独立して、-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキレン-又は-O-C1-6アルキレン-である。なお、X11は、右側がSiに結合する。
【0069】
好ましい態様において、X11は、それぞれ独立して、単結合又は直鎖のC1-6アルキレン基であり、好ましくは単結合又は直鎖のC1-3アルキレン基、より好ましくは単結合又は直鎖のC1-2アルキレン基であり、さらに好ましくは直鎖のC1-2アルキレン基である。
【0070】
上記式中、R13は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基である。かかるC1-20アルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。
【0071】
好ましい態様において、R13は、それぞれ独立して、水素原子又は直鎖のC1-6アルキル基であり、好ましくは水素原子又は直鎖のC1-3アルキル基、好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0072】
上記式中、tは、それぞれ独立して、2以上の整数である。
【0073】
tは、それぞれ独立して、好ましくは2~10の整数、より好ましくは2~6の整数である。
【0074】
上記式中、R14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は-X11-SiR11 n112 3-n1である。かかるハロゲン原子は、好ましくはヨウ素原子、塩素原子又はフッ素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。好ましい態様において、R14は、水素原子である。
【0075】
上記式中、R15は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基である。なお、アルキレンオキシ基は、アルキレン基が、R13を有する炭素原子に結合する。
【0076】
一の態様において、R15は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基である。
【0077】
好ましい態様において、R15は、単結合である。
【0078】
一の態様において、式(S1)は、下記式(S1-a)である。
【化15】
[式中、
11、R12、R13、X11、及びn1は、上記式(S1)の記載と同意義であり、
t1及びt2は、それぞれ独立して、0以上の整数、好ましくは1以上の整数、より好ましくは1~10の整数、さらに好ましくは2~10の整数、例えば1~5の整数又は2~5の整数であり、t1及びt2の合計は2以上であり、
t1及びt2を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
【0079】
好ましい態様において、式(S1)は、下記式(S1-b)である。
【化16】
[式中、R11、R12、R13、X11、n1及びtは、上記式(S1)の記載と同意義である]
【0080】
上記式中、Ra1は、それぞれ独立して、-Z-SiR21 p122 q123 r1である。
【0081】
は、それぞれ独立して、2価の基である。尚、以下Zとして記載する構造は、右側が(SiR21 p122 q123 r1)に結合する。
【0082】
上記2価の基は、好ましくは酸素原子、硫黄原子、NH、CO、又は2価の有機基、より好ましくは酸素原子又は2価の有機基である。
【0083】
好ましい態様において、Zは、2価の有機基である。
【0084】
好ましい態様において、Zは、Zが結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。好ましくは、式(S3)において、(Si-Z-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0085】
上記Zは、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz1-O-(CHz2-(式中、z1は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz3-フェニレン-(CHz4-(式中、z3は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0086】
好ましい態様において、Zは、C1-6アルキレン基又は-(CHz3-フェニレン-(CHz4-、好ましくは-フェニレン-(CHz4-である。Zがかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0087】
別の好ましい態様において、上記Zは、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Zは、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Zは、-CHCH-であり得る。
【0088】
21は、それぞれ独立して、-Z1’-SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’である。
【0089】
上記Z1’は、それぞれ独立して、2価の基である。尚、以下Z1’として記載する構造は、右側が(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)に結合する。
【0090】
上記2価の基は、好ましくは酸素原子、硫黄原子、NH、CO、又は2価の有機基、より好ましくは酸素原子又は2価の有機基である。
【0091】
好ましい態様において、Z1’は、2価の有機基である。
【0092】
好ましい態様において、Z1’は、Z1’が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。好ましくは、式(S3)において、(Si-Z1’-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0093】
上記Z1’は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz1’-O-(CHz2’-(式中、z1’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz3’-フェニレン-(CHz4’-(式中、z3’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0094】
好ましい態様において、Z1’は、C1-6アルキレン基又は-(CHz3’-フェニレン-(CHz4’-、好ましくは-フェニレン-(CHz4’-である。Z1’がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0095】
別の好ましい態様において、上記Z1’は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z1’は、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Z1’は、-CHCH-であり得る。
【0096】
21’は、それぞれ独立して、-Z1”-SiR22” q1”23” r1”である。
【0097】
上記Z1”は、それぞれ独立して、2価の基である。尚、以下Z1”として記載する構造は、右側が(SiR22” q1”23” r1”)に結合する。
【0098】
上記2価の基は、好ましくは酸素原子、硫黄原子、NH、CO、又は2価の有機基、より好ましくは酸素原子又は2価の有機基である。
【0099】
好ましい態様において、Z1”は、2価の有機基である。
【0100】
好ましい態様において、Z1”は、Z1”が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。好ましくは、式(S3)において、(Si-Z1”-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0101】
上記Z1”は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz1”-O-(CHz2”-(式中、z1”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz3”-フェニレン-(CHz4”-(式中、z3”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0102】
好ましい態様において、Z1”は、C1-6アルキレン基又は-(CHz3”-フェニレン-(CHz4”-、好ましくは-フェニレン-(CHz4”-である。Z1”がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0103】
別の好ましい態様において、上記Z1”は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z1”は、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Z1”は、-CHCH-であり得る。
【0104】
22”は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0105】
22”は、好ましくは、それぞれ独立して、加水分解性基である。
【0106】
22”は、好ましくは、それぞれ独立して、-ORh1、-OCORh1、-O-N=CRh1 、-NRh1 、-NHRh1、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rh1は、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORh1(即ち、アルコキシ基)である。Rh1としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rh1は、メチル基であり、別の態様において、Rh1は、エチル基である。
【0107】
23”は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0108】
一の態様において、1価の有機基は、C1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0109】
q1”は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、上記r1”は、それぞれ独立して、0~3の整数である。尚、q1”とr1”の合計は、(SiR22” q1”23” r1”)単位において、3である。
【0110】
上記q1”は、(SiR22” q1”23” r1”)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0111】
22’は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0112】
22’は、好ましくは、それぞれ独立して、加水分解性基である。
【0113】
22’は、好ましくは、それぞれ独立して、-ORh1、-OCORh1、-O-N=CRh1 、-NRh1 、-NHRh1、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rh1は、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORh1(即ち、アルコキシ基)である。Rh1としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rh1は、メチル基であり、別の態様において、Rh1は、エチル基である。
【0114】
23’は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0115】
一の態様において、1価の有機基は、C1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0116】
上記p1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、q1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、r1’は、それぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p’、q1’とr1’の合計は、(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)単位において、3である。
【0117】
一の態様において、p1’は、0である。
【0118】
一の態様において、p1’は、(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、又は3であってもよい。好ましい態様において、p1’は、3である。
【0119】
一の態様において、q1’は、(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0120】
一の態様において、p1’は0であり、q1’は、(SiR21’ p1’22’ q1’23’ r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、さらに好ましくは3である。
【0121】
22は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0122】
22は、好ましくは、それぞれ独立して、加水分解性基である。
【0123】
22は、好ましくは、それぞれ独立して、-ORh1、-OCORh1、-O-N=CRh1 、-NRh1 、-NHRh1、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rh1は、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORh1(即ち、アルコキシ基)である。Rh1としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rh1は、メチル基であり、別の態様において、Rh1は、エチル基である。
【0124】
23は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0125】
一の態様において、1価の有機基は、C1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0126】
上記p1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、q1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、r1は、それぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p1、q1とr1の合計は、(SiR21 p122 q123 r1)単位において、3である。
【0127】
一の態様において、p1は、0である。
【0128】
一の態様において、p1は、(SiR21 p122 q123 r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、又は3であってもよい。好ましい態様において、p1は、3である。
【0129】
一の態様において、q1は、(SiR21 p122 q123 r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0130】
一の態様において、p1は0であり、q1は、(SiR21 p122 q123 r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、さらに好ましくは3である。
【0131】
上記式中、Rb1は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0132】
b1は、好ましくは、それぞれ独立して、加水分解性基である。
【0133】
b1は、好ましくは、それぞれ独立して、-ORh1、-OCORh1、-O-N=CRh1 、-NRh1 、-NHRh1、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rh1は、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORh1(即ち、アルコキシ基)である。Rh1としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rh1は、メチル基であり、別の態様において、Rh1は、エチル基である。
【0134】
上記式中、Rc1は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0135】
一の態様において、1価の有機基は、C1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0136】
上記k1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、l1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、m1は、それぞれ独立して、0~3の整数である。尚、k1、l1とm1の合計は、(SiRa1 k1b1 l1c1 m1)単位において、3である。
【0137】
一の態様において、k1は、(SiRa1 k1b1 l1c1 m1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。好ましい態様において、k1は、3である。
【0138】
式(A1)及び(A2)において、RSiが式(S3)で表される基である場合、好ましくは、式(A1)及び式(A2)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0139】
好ましい態様において、式(S3)で表される基は、-Z-SiR22 q123 r1(式中、q1は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3であり、r1は、0~2の整数である。)、-Z1’-SiR22’ q1’23’ r1’(式中、q1’は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3であり、r1’は、0~2の整数である。)、又は-Z1”-SiR22” q1”23” r1”(式中、q1”は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3であり、r1”は、0~2の整数である。)のいずれか1つを有する。Z、Z1’、Z1”、R22、R23、R22’、R23’、R22”、及びR23”は、上記と同意義である。
【0140】
好ましい態様において、式(S3)において、R21’が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR21’において、q1”は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0141】
好ましい態様において、式(S3)において、R21が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR21において、p1’は、0であり、q1’は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0142】
好ましい態様において、式(S3)において、Ra1が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのRa1において、p1は、0であり、q1は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0143】
好ましい態様において、式(S3)において、k1は2又は3、好ましくは3であり、p1は0であり、q1は2又は3、好ましくは3である。
【0144】
一の態様において、式(S3)は、シロキサン結合を含まない。
【0145】
d1は、それぞれ独立して、-Z-CR31 p232 q233 r2である。
【0146】
は、それぞれ独立して、単結合、又は2価の基である。尚、以下Zとして記載する構造は、右側が(CR31 p232 q233 r2)に結合する。
【0147】
上記2価の基は、好ましくは酸素原子、硫黄原子、NH、CO、又は2価の有機基、より好ましくは酸素原子又は2価の有機基である。
【0148】
は、それぞれ独立して、好ましくは酸素原子又は2価の有機基、より好ましくは2価の有機基である。
【0149】
上記Zは、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz5-O-(CHz6-(式中、z5は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz7-フェニレン-(CHz8-(式中、z7は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0150】
好ましい態様において、Zは、C1-6アルキレン基又は-(CHz7-フェニレン-(CHz8-、好ましくは-フェニレン-(CHz8-である。Zがかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0151】
別の好ましい態様において、上記Zは、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Zは、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Zは、-CHCH-であり得る。
【0152】
31は、それぞれ独立して、-Z2’-CR32’ q2’33’ r2’である。
【0153】
2’は、それぞれ独立して、単結合、又は2価の基である。尚、以下Z2’として記載する構造は、右側が(CR32’ q2’33’ r2’)に結合する。
【0154】
上記2価の基は、好ましくは酸素原子、硫黄原子、NH、CO、又は2価の有機基、より好ましくは酸素原子又は2価の有機基である。
【0155】
2’は、それぞれ独立して、好ましくは酸素原子又は2価の有機基、より好ましくは2価の有機基である。
【0156】
上記Z2’は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz5’-O-(CHz6’-(式中、z5’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz7’-フェニレン-(CHz8’-(式中、z7’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0157】
好ましい態様において、Z2’は、C1-6アルキレン基又は-(CHz7’-フェニレン-(CHz8’-、好ましくは-フェニレン-(CHz8’-である。Z2’がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0158】
別の好ましい態様において、上記Z2’は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z2’は、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Z2’は、-CHCH-であり得る。
【0159】
32’は、それぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2である。
【0160】
上記Zは、それぞれ独立して、単結合、又は2価の基である。尚、以下Zとして記載する構造は、右側が(SiR34 n235 3-n2)に結合する。
【0161】
上記2価の基は、好ましくは酸素原子、硫黄原子、NH、CO、又は2価の有機基、より好ましくは酸素原子又は2価の有機基である。
【0162】
は、それぞれ独立して、好ましくは酸素原子又は2価の有機基、より好ましくは2価の有機基である。
【0163】
一の態様において、Zは酸素原子である。
【0164】
一の態様において、Zは2価の有機基である。
【0165】
上記Zは、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz5”-O-(CHz6”-(式中、z5”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz7”-フェニレン-(CHz8”-(式中、z7”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0166】
好ましい態様において、Zは、C1-6アルキレン基又は-(CHz7”-フェニレン-(CHz8”-、好ましくは-フェニレン-(CHz8”-である。Zがかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0167】
別の好ましい態様において、上記Zは、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Zは、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Zは、-CHCH-であり得る。
【0168】
34は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0169】
34は、好ましくは、それぞれ独立して、加水分解性基である。
【0170】
34は、好ましくは、それぞれ独立して、-ORh1、-OCORh1、-O-N=CRh1 、-NRh1 、-NHRh1、-NCO、又はハロゲン(これら式中、Rh1は、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)であり、より好ましくは-ORh1(即ち、アルコキシ基)である。Rh1としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が挙げられる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rh1は、メチル基であり、別の態様において、Rh1は、エチル基である。
【0171】
35は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0172】
35において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0173】
上記式中、n2は、(SiR34 n235 3-n2)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、RSiが式(S4)で表される基である場合、式(A1)及び式(A2)の末端部分において、n2が1~3である(SiR34 n235 3-n2)単位が少なくとも1つ存在する。即ち、かかる末端部分において、すべてのn2が同時に0になることはない。換言すれば、式(A1)及び式(A2)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも1つ存在する。
【0174】
n2は、(SiR34 n235 3-n2)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2又は3、さらに好ましくは3である。
【0175】
33’は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0176】
33’において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基又はR41’-(OR42’y1’-Oy2’-(式中、R41’は、水素原子又はC1-6アルキル基であり、R42’は、それぞれ独立して、C1-6アルキレン基であり、y1’は、1~30の整数であり、y2’は、0又は1である。)で表される基であり得る。
【0177】
一の態様において、R41’は、水素原子である。
【0178】
別の態様において、R41’は、C1-6アルキル基、好ましくはC1-3アルキル基である。
【0179】
42’は、それぞれ独立して、C1-6アルキレン基、好ましくはC1-3アルキレン基、より好ましくはC2-3アルキレン基である。
【0180】
y1’は、1~30の整数、好ましく1~20の整数、より好ましくは1~10の整数、さらにより好ましくは2~10の整数、例えば、2~6の整数、2~4の整数、3~6の整数、又は4~6の整数である。
【0181】
一の態様において、R33’は、水酸基である。
【0182】
別の態様において、R33’は、C1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0183】
別の態様において、R33’は、R41’-(OR42’y1’-Oy2’-である。
【0184】
上記q2’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、上記r2’は、それぞれ独立して、0~3の整数である。尚、q2’とr2’の合計は、(CR32’ q2’33’ r2’)単位において、3である。
【0185】
q2’は、(CR32’ q2’33’ r2’)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2又は3、さらに好ましくは3である。
【0186】
32は、それぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2である。かかる-Z-SiR34 n235 3-n2は、上記R32’における記載と同意義である。
【0187】
33は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0188】
33において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基又はR41-(OR42y1-Oy2-(式中、R41は、水素原子又はC1-6アルキル基であり、R42は、それぞれ独立して、C1-6アルキレン基であり、y1は、1~30の整数であり、y2は、0又は1である。)で表される基であり得る。
【0189】
一の態様において、R41は、水素原子である。
【0190】
別の態様において、R41は、C1-6アルキル基、好ましくはC1-3アルキル基である。
【0191】
42は、それぞれ独立して、C1-6アルキレン基、好ましくはC1-3アルキレン基、より好ましくはC2-3アルキレン基である。
【0192】
y1は、1~30の整数、好ましく1~20の整数、より好ましくは1~10の整数、さらにより好ましくは2~10の整数、例えば、2~6の整数、2~4の整数、3~6の整数、又は4~6の整数である。
【0193】
一の態様において、R33は、水酸基である。
【0194】
別の態様において、R33は、C1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0195】
別の態様において、R33は、R41-(OR42y1-Oy2-である。
【0196】
上記p2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、q2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、r2は、それぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p2、q2及びr2の合計は、(CR31 p232 q233 r2)単位において、3である。
【0197】
一の態様において、p2は、0である。
【0198】
一の態様において、p2は、(CR31 p232 q233 r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、又は3であってもよい。好ましい態様において、p2は、3である。
【0199】
一の態様において、q2は、(CR31 p232 q233 r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0200】
一の態様において、p2は0であり、q2は、(CR31 p232 q233 r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、さらに好ましくは3である。
【0201】
e1は、それぞれ独立して、-Z-SiR34 n235 3-n2である。かかる-Z-SiR34 n235 3-n2は、上記R32’における記載と同意義である。
【0202】
f1は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0203】
f1において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基又はR43-(OR44y3-Oy4-(式中、R43は、水素原子又はC1-6アルキル基であり、R44は、それぞれ独立して、C1-6アルキレン基であり、y3は、1~30の整数であり、y4は、0又は1である。)で表される基であり得る。
【0204】
一の態様において、R43は、水素原子である。
【0205】
別の態様において、R43は、C1-6アルキル基、好ましくはC1-3アルキル基である。
【0206】
44は、それぞれ独立して、C1-6アルキレン基、好ましくはC1-3アルキレン基、より好ましくはC2-3アルキレン基である。
【0207】
y3は、1~30の整数、好ましく1~20の整数、より好ましくは1~10の整数、さらにより好ましくは2~10の整数、例えば、2~6の整数、2~4の整数、3~6の整数、又は4~6の整数である。
【0208】
一の態様において、Rf1は、水酸基である。
【0209】
別の態様において、Rf1は、C1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0210】
別の態様において、Rf1は、R43-(OR44y3-Oy4-である。
【0211】
上記k2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、l2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、m2は、それぞれ独立して、0~3の整数である。尚、k2、l2及びm2の合計は、(CRd1 k2e1 l2f1 m2)単位において、3である。
【0212】
式(A1)及び(A2)において、RSiが式(S4)で表される基である場合、好ましくは、式(A1)及び式(A2)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0213】
一の態様において、RSiが式(S4)で表される基である場合、n2が1~3、好ましくは2又は3、より好ましくは3である(SiR34 n235 3-n2)単位は、式(A1)及び式(A2)の各末端部分において、2個以上、例えば2~27個、好ましくは2~9個、より好ましくは2~6個、さらに好ましくは2~3個、特に好ましくは3個存在する。
【0214】
好ましい態様において、式(S4)において、R32’が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR32’において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0215】
好ましい態様において、式(S4)において、R32が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR32において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0216】
好ましい態様において、式(S4)において、Re1が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのRa1において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0217】
好ましい態様において、式(S4)において、k2は0であり、l2は2又は3、好ましくは3であり、n2は、2又は3、好ましくは3である。
【0218】
一の態様において、式(S4)は、シロキサン結合を含まない。
【0219】
g1及びRh1は、それぞれ独立して、-Z-SiR11 n112 3-n1、-Z-SiRa1 k1b1 l1c1 m1、-Z-CRd1 k2e1 l2f1 m2である。ここに、R11、R12、Ra1、Rb2、Rc1、Rd1、Re1、Rf1、n1、k1、l1、m1、k2、l2、及びm2は、上記と同意義である。
【0220】
好ましい態様において、Rg1及びRh1は、それぞれ独立して、-Z-SiR11 n112 3-n1である。
【0221】
上記Zは、それぞれ独立して、単結合、又は2価の基である。尚、以下Zとして記載する構造は、右側が(SiR11 n112 3-n1)に結合する。
【0222】
上記2価の基は、好ましくは酸素原子、硫黄原子、NH、CO、又は2価の有機基、より好ましくは酸素原子又は2価の有機基である。
【0223】
は、それぞれ独立して、好ましくは酸素原子又は2価の有機基、より好ましくは2価の有機基である。
【0224】
一の態様において、Zは酸素原子である。
【0225】
一の態様において、Zは2価の有機基である。
【0226】
上記Zは、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CHz5”-O-(CHz6”-(式中、z5”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CHz7”-フェニレン-(CHz8”-(式中、z7”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0227】
好ましい態様において、Zは、C1-6アルキレン基又は-(CHz7”-フェニレン-(CHz8”-、好ましくは-フェニレン-(CHz8”-である。Zがかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0228】
別の好ましい態様において、上記Zは、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Zは、-CHCHCH-であり得る。別の態様において、Zは、-CHCH-であり得る。
【0229】
一の態様において、RSiは、式(S2)、(S3)、(S4)又は(S5)で表される基である。これらの化合物は、高い表面滑り性を有する表面処理層を形成することができる。
【0230】
一の態様において、RSiは、式(S1)、(S3)、(S4)又は(S5)で表される基である。これらの化合物は、一の末端に複数の加水分解性基を有することから、基材に強く密着し、高い摩擦耐久性を有する表面処理層を形成することができる。
【0231】
一の態様において、RSiは、式(S1)、(S3)又は(S4)で表される基である。これらの化合物は、一の末端に複数の加水分解性基を有することから、基材に強く密着し、高い摩擦耐久性を有する表面処理層を形成することができる。
【0232】
一の態様において、RSiは、式(S3)又は(S4)で表される基である。これらの化合物は、一の末端に、一のSi原子又はC原子から分岐した複数の加水分解性基を有し得ることから、さらに高い摩擦耐久性を有する表面処理層を形成することができる。
【0233】
一の態様において、RSiは、式(S1)で表される基である。
【0234】
一の態様において、RSiは、式(S2)で表される基である。
【0235】
一の態様において、RSiは、式(S3)で表される基である。
【0236】
一の態様において、RSiは、式(S4)で表される基である。
【0237】
一の態様において、RSiは、式(S5)で表される基である。
【0238】
式(A1)及び(A2)において、Xは、主に撥水性及び表面滑り性等を提供するフルオロポリエーテル部(RFA1及びRFA2)と基材との結合能を提供する部(RSi)とを連結するリンカーと解される。従って、当該Xは、式(A1)及び(A2)で表される化合物が安定に存在し得るものであれば、単結合であってもよく、いずれの基であってもよい。
【0239】
式(A1)において、α1は1~9の整数であり、β1は1~9の整数である。これらα1及びβ1は、Xの価数に応じて変化し得る。α1及びβ1の和は、Xの価数と同じである。例えば、Xが10価の基である場合、α1及びβ1の和は10であり、例えばα1が9かつβ1が1、α1が5かつβ1が5、又はα1が1かつβ1が9となり得る。また、Xが2価の基である場合、α1及びβ1は1である。
【0240】
式(A2)において、γ1は1~9の整数である。γ1は、Xの価数に応じて変化し得る。即ち、γ1は、Xの価数から1を引いた値である。
【0241】
は、それぞれ独立して、単結合又は2~10価の基である。
【0242】
は、それぞれ独立して、好ましくは単結合又は2~10価の有機基である。
【0243】
一の態様において、Xは、シロキサン結合(-Si-O-Si-)を含まない。
【0244】
上記Xにおける2~10価の基は、好ましくは2~8価の基である。一の態様において、かかる2~10価の基は、好ましくは2~4価の基であり、より好ましくは2価の基である。別の態様において、かかる2~10価の基は、好ましくは3~8価の基、より好ましくは3~6価の基である。
【0245】
一の態様において、Xは、単結合又は2価の基であり、α1は1であり、β1は1である。
【0246】
一の態様において、Xは、単結合又は2価の基であり、γ1は1である。
【0247】
上記2価の基は、好ましくは酸素原子、硫黄原子、NH、CO、又は2価の有機基、より好ましくは酸素原子又は2価の有機基、さらに好ましくは2価の有機基である。
【0248】
一の態様において、Xは、3~6価の基、好ましくは3~6価の有機基であり、α1は1であり、β1は2~5である。
【0249】
一の態様において、Xは、3~6価の基、好ましくは3~6価の有機基であり、γ1は2~5である。
【0250】
一の態様において、Xは、3価の基、好ましくは3価の有機基であり、α1は1であり、β1は2である。
【0251】
一の態様において、Xは、3価の基、好ましくは3価の有機基であり、γ1は2である。
【0252】
が、単結合又は2価の基である場合、式(A1)及び(A2)は、下記式(A1’)及び(A2’)で表される。
【化17】
【0253】
一の態様において、Xは単結合である。
【0254】
別の態様において、Xは2価の有機基である。
【0255】
一の態様において、Xとしては、例えば、単結合又は下記式:
-(R51p5-(X51q5
[式中:
51は、単結合、-(CHs5-又はo-、m-もしくはp-フェニレン基を表し、好ましくは-(CHs5-であり、
s5は、1~20の整数、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~3の整数、さらにより好ましくは1又は2であり、
51は、-(X52l5-を表し、
52は、それぞれ独立して、-O-、-S-、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-C(O)O-、-Si(R53-、-(Si(R53O)m5-Si(R53-、-CONR54-、-O-CONR54-、-NR54-及び-(CHn5-からなる群から選択される基を表し、
53は、それぞれ独立して、フェニル基、C1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基を表し、好ましくはフェニル基又はC1-6アルキル基であり、より好ましくはメチル基であり、
54は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基又はC1-6アルキル基(好ましくはメチル基)を表し、
m5は、各出現において、それぞれ独立して、1~100の整数、好ましくは1~20の整数であり、
n5は、各出現において、それぞれ独立して、1~20の整数、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~3の整数であり、
l5は、1~10の整数、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数であり、
p5は、0又は1であり、
q5は、0又は1であり、
ここに、p5及びq5の少なくとも一方は1であり、p5又はq5を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意であり、
右側がRSiに結合する。]
で表される2価の有機基が挙げられる。ここに、X(典型的にはXの水素原子)は、フッ素原子、C1-3アルキル基及びC1-3フルオロアルキル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。好ましい態様において、Xは、これらの基により置換されていない。
【0256】
好ましい態様において、上記Xは、それぞれ独立して、-(R51p5-(X51q5-R52-である。R52は、単結合、-(CHt5-又はo-、m-もしくはp-フェニレン基を表し、好ましくは-(CHt5-である。t5は、1~20の整数、好ましくは2~6の整数、より好ましくは2~3の整数である。ここに、R52(典型的にはR52の水素原子)は、フッ素原子、C1-3アルキル基及びC1-3フルオロアルキル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。好ましい態様において、R56は、これらの基により置換されていない。
【0257】
好ましくは、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合、
1-20アルキレン基、
-R51-X53-R52-、又は
-X54-R
[式中、R51及びR52は、上記と同意義であり、
53は、
-O-、
-S-、
-C(O)O-、
-CONR54-、
-O-CONR54-、
-Si(R53-、
-(Si(R53O)m5-Si(R53-、
-O-(CHu5-(Si(R53O)m5-Si(R53-、
-O-(CHu5-Si(R53-O-Si(R53-CHCH-Si(R53-O-Si(R53-、
-O-(CHu5-Si(OCHOSi(OCH-、
-CONR54-(CHu5-(Si(R53O)m5-Si(R53-、
-CONR54-(CHu5-N(R54)-、又は
-CONR54-(o-、m-又はp-フェニレン)-Si(R53
(式中、R53、R54及びm5は、上記と同意義であり、
u5は1~20の整数、好ましくは2~6の整数、より好ましくは2~3の整数である。)を表し、
54は、
-S-、
-C(O)O-、
-CONR54-、
-O-CONR54-、
-CONR54-(CHu5-(Si(R54O)m5-Si(R54-、
-CONR54-(CHu5-N(R54)-、又は
-CONR54-(o-、m-又はp-フェニレン)-Si(R54
(式中、各記号は、上記と同意義である。)
を表す。]
であり得る。
【0258】
より好ましくは、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合、
1-20アルキレン基、
-(CHs5-X53-、
-(CHs5-X53-(CHt5
-X54-、又は
-X54-(CHt5
[式中、X53、X54、s5及びt5は、上記と同意義である。]
である。
【0259】
より好ましくは、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合、
1-20アルキレン基、
-(CHs5-X53-(CHt5-、又は
-X54-(CHt5
[式中、各記号は、上記と同意義である。]
であり得る。
【0260】
好ましい態様において、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合
1-20アルキレン基、
-(CHs5-X53-、又は
-(CHs5-X53-(CHt5
[式中、
53は、-O-、-CONR54-、又は-O-CONR54-であり、
54は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基又はC1-6アルキル基を表し、
s5は、1~20の整数であり、
t5は、1~20の整数である。]
であり得る。
【0261】
好ましい態様において、上記Xは、それぞれ独立して、
-(CHs5-O-(CHt5
-CONR54-(CHt5
[式中、
54は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基又はC1-6アルキル基を表し、
s5は、1~20の整数であり、
t5は、1~20の整数である。]
であり得る。
【0262】
一の態様において、上記Xは、それぞれ独立して、
単結合、
1-20アルキレン基、
-(CHs5-O-(CHt5-、
-(CHs5-(Si(R53O)m5-Si(R53-(CHt5-、
-(CHs5-O-(CHu5-(Si(R53O)m5-Si(R53-(CHt5-、又は
-(CHs5-O-(CHt5-Si(R53-(CHu5-Si(R53-(Cv2v)-
[式中、R53、m5、s5、t5及びu5は、上記と同意義であり、v5は1~20の整数、好ましくは2~6の整数、より好ましくは2~3の整数である。]
である。
【0263】
上記式中、-(Cv2v)-は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、例えば、-CHCH-、-CHCHCH-、-CH(CH)-、-CH(CH)CH-であり得る。
【0264】
上記Xは、それぞれ独立して、フッ素原子、C1-3アルキル基及びC1-3フルオロアルキル基(好ましくは、C1-3パーフルオロアルキル基)から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。一の態様において、Xは、非置換である。
【0265】
一の態様において、Xは、それぞれ独立して、-O-C1-6アルキレン基以外であり得る。
【0266】
別の態様において、Xとしては、例えば下記の基が挙げられる:
【化18】
【化19】
[式中、R41は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、炭素数1~6のアルキル基、又はC1-6アルコキシ基、好ましくはメチル基であり、
Dは、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CFO(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH4-、
-CONH-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、及び
【化20】
(式中、R42は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6のアルキル基又はC1-6のアルコキシ基、好ましくはメチル基又はメトキシ基、より好ましくはメチル基を表す。)
から選択される基であり、
Eは、-(CH-(nは2~6の整数)であり、
Dは、分子主鎖のRFA1又はRFA2に結合し、Eは、RSiに結合する。]
【0267】
上記Xの具体的な例としては、例えば:
単結合、
-CHOCH-、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CHO(CHSi(CHOSi(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHOSi(CHOSi(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHO(Si(CHO)Si(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHO(Si(CHO)Si(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHO(Si(CHO)10Si(CH(CH-、
-CHO(CHSi(CHO(Si(CHO)20Si(CH(CH-、
-CHOCFCHFOCF-、
-CHOCFCHFOCFCF-、
-CHOCFCHFOCFCFCF-、
-CHOCHCFCFOCF-、
-CHOCHCFCFOCFCF-、
-CHOCHCFCFOCFCFCF-、
-CHOCHCFCFOCF(CF)CFOCF-、
-CHOCHCFCFOCF(CF)CFOCFCF-、
-CHOCHCFCFOCF(CF)CFOCFCFCF-、
-CHOCHCHFCFOCF-、
-CHOCHCHFCFOCFCF-、
-CHOCHCHFCFOCFCFCF-、
-CHOCHCHFCFOCF(CF)CFOCF-、
-CHOCHCHFCFOCF(CF)CFOCFCF-、
-CHOCHCHFCFOCF(CF)CFOCFCFCF-、
-CHOCFCHFOCFCFCF-C(O)NH-CH-、
-CHOCH(CHCHSi(OCHOSi(OCH(CHSi(OCHOSi(OCH(CH-、
-CHOCHCHCHSi(OCHOSi(OCH(CH-、
-CHOCHCHCHSi(OCHCHOSi(OCHCH(CH-、
-CHOCHCHCHSi(OCHOSi(OCH(CH-、
-CHOCHCHCHSi(OCHCHOSi(OCHCH(CH-、
-(CH-Si(CH-(CH-、
-CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-CO-、
-CONH-、
-CONH-CH-、
-CONH-(CH-、
-CONH-(CH-、
-CONH-(CH-、
-CONH-(CH-、
-CONH-(CH-、
-CON(CH)-CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(Ph)-CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、
-CONH-(CHNH(CH-、
-CONH-(CHNH(CH-、
-CHO-CONH-(CH-、
-CHO-CONH-(CH-、
-S-(CH-、
-(CHS(CH-、
-CONH-(CHSi(CHOSi(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHOSi(CHOSi(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHO(Si(CHO)Si(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHO(Si(CHO)Si(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHO(Si(CHO)10Si(CH(CH-、
-CONH-(CHSi(CHO(Si(CHO)20Si(CH(CH-、
-C(O)O-(CH-、
-C(O)O-(CH-、
-CH-O-(CH-Si(CH-(CH-Si(CH-(CH-、
-CH-O-(CH-Si(CH-(CH-Si(CH-CH(CH)-、
-CH-O-(CH-Si(CH-(CH-Si(CH-(CH-、
-CH-O-(CH-Si(CH-(CH-Si(CH-CH(CH)-CH-、
-OCH-、
-O(CH-、
-OCFHCF-、
【化21】

などが挙げられる。
【0268】
さらに別の態様において、Xは、それぞれ独立して、式:-(R16x1-(CFR17y1-(CHz1-で表される基である。式中、x1、y1及びz1は、それぞれ独立して、0~10の整数であり、x1、y1及びz1の和は1以上であり、括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。
【0269】
上記式中、R16は、それぞれ独立して、酸素原子、フェニレン、カルバゾリレン、-NR18-(式中、R18は、水素原子又は有機基を表す)又は2価の有機基である。好ましくは、R18は、酸素原子又は2価の極性基である。
【0270】
上記「2価の極性基」としては、特に限定されないが、-C(O)-、-C(=NR19)-、及び-C(O)NR19-(これらの式中、R19は、水素原子又は低級アルキル基を表す)が挙げられる。当該「低級アルキル基」は、例えば、炭素数1~6のアルキル基、例えばメチル、エチル、n-プロピルであり、これらは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい。
【0271】
上記式中、R17は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子又は低級フルオロアルキル基であり、好ましくはフッ素原子である。当該「低級フルオロアルキル基」は、例えば、炭素数1~6、好ましくは炭素数1~3のフルオロアルキル基、好ましくは炭素数1~3のパーフルオロアルキル基、より好ましくはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、さらに好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0272】
尚、上記Xは、各式の左側がRFA1又はRFA2に結合し、右側がRSiに結合する。
【0273】
さらに別の態様において、Xの例として、下記の基が挙げられる:
【化22】
[式中、
41は、それぞれ独立して、水素原子、フェニル基、炭素数1~6のアルキル基、又はC1-6アルコキシ基好ましくはメチル基であり、
各X基において、Tのうち任意のいくつかは、分子主鎖のRFA1又はRFA2に結合する以下の基:
-CHO(CH-、
-CHO(CH-、
-CFO(CH-、
-(CH-、
-(CH-、
-(CH4-、
-CONH-(CH-、
-CON(CH)-(CH-、
-CON(Ph)-(CH-(式中、Phはフェニルを意味する)、又は
【化23】
[式中、R42は、それぞれ独立して、水素原子、C1-6のアルキル基又はC1-6のアルコキシ基、好ましくはメチル基又はメトキシ基、より好ましくはメチル基を表す。]
であり、別のTのいくつかは、分子主鎖のRSiに結合し、存在する場合、残りのTは、それぞれ独立して、メチル基、フェニル基、C1-6アルコキシ基又はラジカル捕捉基又は紫外線吸収基である。
【0274】
ラジカル捕捉基は、光照射で生じるラジカルを捕捉できるものであれば特に限定されないが、例えばベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、安息香酸エステル類、サリチル酸フェニル類、クロトン酸類、マロン酸エステル類、オルガノアクリレート類、ヒンダードアミン類、ヒンダードフェノール類、又はトリアジン類の残基が挙げられる。
【0275】
紫外線吸収基は、紫外線を吸収できるものであれば特に限定されないが、例えばベンゾトリアゾール類、ヒドロキシベンゾフェノン類、置換及び未置換安息香酸もしくはサリチル酸化合物のエステル類、アクリレート又はアルコキシシンナメート類、オキサミド類、オキサニリド類、ベンゾキサジノン類、ベンゾキサゾール類の残基が挙げられる。
【0276】
好ましい態様において、好ましいラジカル捕捉基又は紫外線吸収基としては、
【化24】
が挙げられる。
【0277】
この態様において、Xは、それぞれ独立して、3~10価の基であり得る。
【0278】
さらに別の態様において、Xの例として、下記の基が挙げられる:
【化25】
[式中、R25、R26及びR27は、それぞれ独立して2~6価の有機基であり、
25は、少なくとも1つのRFA1又はRFA2に結合し、R26及びR27は、それぞれ、少なくとも1つのRSiに結合する。]
【0279】
一の態様において、R25は、単結合、C1-20アルキレン基、C3-20シクロアルキレン基、C5-20アリーレン基、-R57-X58-R59-、-X58-R59-、又は-R57-X58-である。上記、R57及びR59は、それぞれ独立して、単結合、C1-20アルキレン基、C3-20シクロアルキレン基、又はC5-20アリーレン基である。上記X58は、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-又は-COO-である。
【0280】
一の態様において、R26及びR27は、それぞれ独立して、炭化水素、又は炭化水素の端又は主鎖中にN、O及びSから選択される少なくとも1つの原子を有する基であり、好ましくは、C1-6アルキル基、-R36-R37-R36-、-R36-CHR38 -などが挙げられる。ここに、R36は、それぞれ独立して、単結合又は炭素数1~6のアルキル基、好ましくは炭素数1~6のアルキル基である。R37は、N、O又はSであり、好ましくはN又はOである。R38は、-R45-R46-R45-、-R46-R45-又は-R45-R46-である。ここに、R45は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基である。R46は、N、O又はSであり、好ましくはOである。
【0281】
この態様において、Xは、それぞれ独立して、3~10価の基であり得る。
【0282】
さらに別の態様において、Xは、下記:
【化26】
[式中、Xは、単結合又は2価の有機基である。]
で表される基である。
【0283】
上記Xは、イソシアヌル環に直接結合する単結合又は二価の連結基である。Xとしては、単結合、アルキレン基、又は、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びスルフィド結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む二価の基が好ましく、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、又は、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びスルフィド結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む炭素数1~10の二価の炭化水素基がより好ましい。
【0284】
としては、下記式:
-(CX121122x1-(Xa1y1-(CX123124z1
(式中、X121~X124は、それぞれ独立して、H、F、OH、又は、-OSi(OR121(式中、3つのR121は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基である。)であり、
上記Xa1は、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、又は、-NHC(=O)NH-であり(各結合の左側がCX121122に結合する。)、
x1は0~10の整数であり、y1は0又は1であり、z1は1~10の整数である。)
で表される基が更に好ましい。
【0285】
上記Xa1としては、-O-又は-C(=O)O-が好ましい。
【0286】
上記Xとしては、下記式:
-(CFm11-(CHm12-O-(CHm13
(式中、m11は1~3の整数であり、m12は1~3の整数であり、m13は1~3の整数である。)
で表される基、
-(CFm14-(CHm15-O-CHCH(OH)-(CHm16
(式中、m14は1~3の整数であり、m15は1~3の整数であり、m16は1~3の整数である。)
で表される基、
-(CFm17-(CHm18
(式中、m17は1~3の整数であり、m18は1~3の整数である。)
で表される基、
-(CFm19-(CHm20-O-CHCH(OSi(OCH)-(CHm21
(式中、m19は1~3の整数であり、m20は1~3の整数であり、m21は1~3の整数である。)
で表される基、又は、
-(CHm22
(式中、m22は1~3の整数である。)
で表される基が特に好ましい。
【0287】
上記Xとして、特に限定されないが、具体的には、
-CH-、-C-、-C-、-C-、-C-O-CH-、-CO-O-CH-CH(OH)-CH-、-(CFn5-(n5は0~4の整数である。)、-(CFn5-(CHm5-(n5およびm5は、それぞれ独立して、0~4の整数である。)、-CFCFCHOCHCH(OH)CH-、-CFCFCHOCHCH(OSi(OCH)CH
等が挙げられる。
【0288】
この態様において、Xは、それぞれ独立して、2又は3価の基であり得る。
【0289】
一の態様において、式(A1)又は式(A2)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、シロキサン結合(-Si-O-Si-)を含まない。
【0290】
式(A1)又は式(A2)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、特に限定されるものではないが、5×10~1×10の数平均分子量を有し得る。かかる範囲のなかでも、2,000~32,000、より好ましくは2,500~12,000の数平均分子量を有することが、摩擦耐久性の観点から好ましい。なお、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物の数平均分子量は、19F-NMRにより測定される値とする。
【0291】
一の態様において、式(A1)又は式(A2)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の数平均分子量は、500~30,000、好ましくは1,000~20,000、より好ましくは2,000~15,000、さらにより好ましくは2,000~10,000、例えば3,000~6,000であり得る。
【0292】
別の態様において、式(A1)又は式(A2)で表されるフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の数平均分子量は、4,000~30,000、好ましくは5,000~10,000、より好ましくは6,000~10,000であり得る。
【0293】
一の態様において、本開示の表面処理剤中、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、式(A1)で表される化合物である。
【0294】
別の態様において、本開示の表面処理剤中、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、式(A2)で表される化合物である。
【0295】
別の態様において、本開示の表面処理剤中、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物は、式(A1)で表される化合物及び式(A2)で表される化合物である。
【0296】
別の態様において、本開示の表面処理剤中、式(A1)で表される化合物及び式(A2)で表される化合物は、それぞれ、あるいは互いに部分的に縮合していてもよい。即ち、式(A1)で表される化合物同士、式(A2)で表される化合物同士、あるいは式(A1)で表される化合物及び式(A2)で表される化合物間で、部分的に縮合した状態で存在してもよい。従って、本開示の表面処理剤は、式(A1)で表される化合物の部分縮合物、式(A2)で表される化合物の部分縮合物、又は式(A1)で表される化合物と式(A2)で表される化合物の部分縮合物を含有し得る。
【0297】
本開示の表面処理剤中、式(A1)で表される化合物と式(A2)で表される化合物との合計に対して、式(A2)で表される化合物が、好ましくは0.1モル%以上35モル%以下である。式(A1)で表される化合物と式(A2)で表される化合物との合計に対する式(A2)で表される化合物の含有量の下限は、好ましくは0.1モル%、より好ましくは0.2モル%、さらに好ましくは0.5モル%、さらにより好ましくは1モル%、特に好ましくは2モル%、特別には5モル%であり得る。式(A1)で表される化合物と式(A2)で表される化合物との合計に対する式(A2)で表される化合物の含有量の上限は、好ましくは35モル%、より好ましくは30モル%、さらに好ましくは20モル%、さらにより好ましくは15モル%又は10モル%であり得る。式(A1)で表される化合物と式(A2)で表される化合物との合計に対する式(A2)で表される化合物は、好ましくは0.1モル%以上30モル%以下、より好ましくは0.1モル%以上20モル%以下、さらに好ましくは0.2モル%以上10モル%以下、さらにより好ましくは0.5モル%以上10モル%以下、特に好ましくは1モル%以上10モル%以下、例えば2モル%以上10モル%以下又は5モル%以上10モル%以下である。式(A2)で表される化合物をかかる範囲とすることにより、より摩擦耐久性を向上させることができる。
【0298】
上記の式(A1)又は(A2)で表される化合物は、例えば、上記特許文献1、国際公開第2006/10708号、特開2019-183160号公報等に記載の方法により得ることができる。
【0299】
(フルオロポリエーテル基含有アルキルアミド化合物)
上記フルオロポリエーテル基含有アルキルアミド化合物は、アルキル基を有するアミド基、及びフルオロポリエーテル基を含む化合物である。
【0300】
本開示の表面処理剤は、成分(A)のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物に加え、成分(B)のフルオロポリエーテル基含有アルキルアミド化合物を含有することにより、摩擦耐久性がより向上する。
【0301】
一の態様において、上記フルオロポリエーテル基含有アルキルアミド化合物は、式(B1)又は(B2):
【化27】
[式中:
FB1は、Rf-R-O-であり、
FB2は、-Rf -R-O-であり、
は、それぞれ独立して、2価のフルオロポリエーテル基であり、
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-16アルキル基であり、
Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよいC1-6アルキレン基であり、
pは、0又は1であり、
qは、それぞれ独立して、0又は1であり、
は、それぞれ独立して、単結合、又は2価の基であり、
B1は、それぞれ独立して、C1-6アルキル基であり、
B2は、それぞれ独立して、C1-6アルキル基、又は水素原子である。]
で表される化合物である。
【0302】
式(B1)において、RFB1は、Rf-R-O-である。
【0303】
式(B2)において、RFB2は、-Rf -R-O-である。
【0304】
式(B1)及び(B2)におけるRFB1及びRFB2は、それぞれ、式(A1)及び(A2)におけるRFA1及びRFA2に対応する。式(B1)及び(B2)におけるRf-R-O-及び-Rf -R-O-は、式(A1)及び(A2)におけるRf-R-O-及び-Rf -R-O-と同意義であり、同態様を有し得る。なお、表面処理剤中、RFB1とRFA1、及びRFA2とRFB2は、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
【0305】
式(B1)及び(B2)において、Xは、それぞれ独立して、単結合、又は2価の基である。なお、以下において、Xは、左側がRFB1又はRFB2に結合する。
【0306】
上記2価の基は、好ましくは酸素原子、硫黄原子、NH、CO、又は2価の有機基、より好ましくは酸素原子又は2価の有機基、より好ましくは2価の有機基である。
【0307】
一の態様において、Xは、それぞれ独立して、単結合、又は、-(R67b1-(R68b2
[式中:
67は、それぞれ独立して、C1-6アルキレン基であり、
68は、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子、CO、NR69、CONR69、NR69CO、又はC6-12アリーレン基であり、
69は、それぞれ独立して、水素原子、又はC1-6アルキル基であり、
b1は、0~6の整数で有り、
b2は、0~6の整数で有り、
b1及びb2の合計は、1以上であり、
b1又はb2を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
で表される基である。
【0308】
は、それぞれ独立して、好ましくは、単結合、C1-6アルキレン基、又は、-R64-O-R65-である。R64は、単結合、又はC1-6アルキレン基であり;R65は、単結合、又はC1-6アルキレン基である。
【0309】
一の態様において、Xは、それぞれ独立して、単結合、又はC1-6アルキレン基である。
【0310】
別の態様において、Xは、それぞれ独立して、単結合である。
【0311】
別の態様において、Xは、それぞれ独立して、C1-6アルキレン基である。
【0312】
上記Xは、それぞれ独立して、フッ素原子、C1-3アルキル基及びC1-3フルオロアルキル基(好ましくは、C1-3パーフルオロアルキル基)から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。一の態様において、Xは、非置換である。
【0313】
式(B1)及び(B2)において、RB1は、それぞれ独立して、C1-6アルキル基であり、RB2は、それぞれ独立して、C1-6アルキル基、又は水素原子である。
【0314】
上記RB1はにおけるC1-6アルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。一の態様において、R61におけるC1-6アルキル基は、直鎖である。別の態様において、R61におけるC1-6アルキル基は、分枝鎖である。
【0315】
上記RB1におけるC1-6アルキル基は、好ましくはC1-3アルキル基、より好ましくはC1-2アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0316】
一の態様において、RB2は、水素原子である。
【0317】
別の態様において、RB2は、C1-6アルキル基である。
【0318】
上記RB2におけるC1-6アルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。一の態様において、RB2におけるC1-6アルキル基は、直鎖である。別の態様において、RB2におけるC1-6アルキル基は、分枝鎖である。
【0319】
上記RB2におけるC1-6アルキル基は、好ましくはC1-3アルキル基、より好ましくはC1-2アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0320】
式(B1)又は(B2)で表されるフルオロポリエーテル基含有アルキルアミド化合物の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、5×10~1×10の数平均分子量を有し得る。かかる範囲のなかでも、1,000~20,000、より好ましくは2,000~10,000の数平均分子量を有することが、摩擦耐久性の観点から好ましい。なお、フルオロポリエーテル基含有オキシアルキルアミド化合物の数平均分子量は、19F-NMRにより測定される値とする。
【0321】
上記式(B1)及び(B2)で表されるフルオロポリエーテル基含有アルキルアミド化合物は、例えば、下記のように合成することができる。
【0322】
下記式(1a)又は(2a):
FB1-X-COOH (1a)
HOOC-X-RFB2-X-COOH (2a)
[式中、各記号は上記と同意義である。]
で表される化合物を、ハロゲン化剤と反応させて、下記式(1b)又は(2b):
FB1-X-COR (1b)
OC-X-RFB2-X-COR (2b)
[式中:
は、ハロゲン原子、好ましくは塩素原子であり、
FB1、RFB2、及びXは、上記と同意義である。]
で表される化合物を得る。
【0323】
上記ハロゲン化剤としては、例えば、塩化チオニル、塩化オキサリル等が挙げられる。
【0324】
次いで、上記で得られた式(1b)又は(2b)で表される化合物を、下記式:
HNRB1B2
[式中、各記号は上記と同意義である。]
と反応させることにより、得ることができる。
【0325】
一の態様において、本開示の表面処理剤中、フルオロポリエーテル基含有アルキルアミド化合物は、式(B1)で表される化合物である。
【0326】
別の態様において、本開示の表面処理剤中、フルオロポリエーテル基含有アルキルアミド化合物は、式(B2)で表される化合物である。
【0327】
別の態様において、本開示の表面処理剤中、フルオロポリエーテル基含有アルキルアミド化合物は、式(B1)で表される化合物及び式(B2)で表される化合物である。
【0328】
別の態様において、本開示の表面処理剤中、式(B1)で表される化合物及び式(B2)で表される化合物は、それぞれ、あるいは互いに部分的に縮合していてもよい。即ち、式(B1)で表される化合物同士、式(B2)で表される化合物同士、あるいは式(B1)で表される化合物及び式(B2)で表される化合物間で、部分的に縮合した状態で存在してもよい。従って、本開示の表面処理剤は、式(B1)で表される化合物の部分縮合物、式(B2)で表される化合物の部分縮合物、又は式(B1)で表される化合物と式(B2)で表される化合物の部分縮合物を含有し得る。
【0329】
成分(B)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり得る。また、成分(B)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計に対して、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下、さらにより好ましくは25質量%以下、特に好ましくは20質量%以下であり得る。成分(B)を上記の量で含ませることにより、優れた摩擦耐久性を有する表面処理層を得ることができる。
【0330】
一の態様において、成分(B)の含有量は、成分(A)と成分(B)の合計に対して、好ましくは1~70質量%、より好ましくは1~50質量%、さらに好ましくは5~50質量%である。
【0331】
表面処理剤中、成分(A)及び成分(B)の濃度は、合計で、好ましくは0.1~99.9質量%であり、より好ましくは1.0~50質量%、さらに好ましくは5.0~30質量%、さらにより好ましくは5.0~15質量%である。
【0332】
本開示の表面処理剤中、成分(A)と成分(B)は、部分的に縮合した状態で存在してもよい。即ち、本開示の表面処理剤は、成分(A)と成分(B)の部分縮合物を含有し得る。
【0333】
(他の成分)
本開示の表面処理剤は、溶媒、アルコール類、含フッ素オイルとして理解され得る(非反応性の)フルオロポリエーテル化合物、好ましくはパーフルオロポリエーテル化合物(以下、まとめて「含フッ素オイル」と言う)、シリコーンオイルとして理解され得る(非反応性の)シリコーン化合物(以下、「シリコーンオイル」と言う)、相溶化剤、触媒、界面活性剤、重合禁止剤、増感剤等を含み得る。
【0334】
上記溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、酢酸カルビトール、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル-2-ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチルセルソルブ、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル等のグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール、3-ペンタノール、オクチルアルコール、3-メチル-3-メトキシブタノール、tert-アミルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等の環状エーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート;1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン、ジメチルスルホキシド、1,1-ジクロロ-1,2,2,3,3-ペンタフルオロプロパン(HCFC225)、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(例えば、ゼオローラH)、パーフルオロブチルメチルエーテル(COCH)(例えば、HFE7100)、パーフルオロブチルエチルエーテル(COC)(例えば、HFE7200)、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(CCF(OCH)C)(例えば、HFE7300)、CFCHOH、CFCFCHOH、(CFCHOH、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル(CFCFHCFOCH)(HFE-356mec)等のフッ素含有溶媒等が挙げられる。あるいはこれらの2種以上の混合溶媒等が挙げられる。
【0335】
上記アルコール類としては、例えば1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~6のアルコール、例えば、メタノール、エタノール、iso-プロパノール、tert-ブタノール、CFCHOH、CFCFCHOH、(CFCHOH、H(CFCF)CHOH、H(CFCFCHOH、H(CFCFCHOHが挙げられる。これらのアルコール類を表面処理剤に添加することにより、表面処理剤の安定性を向上させ、また、成分(A)及び成分(B)と溶媒の相溶性を改善させる。
【0336】
好ましい態様において、本開示の表面処理剤は、溶媒とアルコールを含む。
【0337】
アルコールの含有量は、溶媒とアルコールの合計に対して、好ましくは0.1~50質量%、より好ましくは0.5~30質量%、さらに好ましくは1.0~20質量%、さらにより好ましくは2.0~10質量%である。
【0338】
含フッ素オイルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の一般式(3)で表される化合物(パーフルオロポリエーテル化合物)が挙げられる。
Rf-(OCa’-(OCb’-(OCc’-(OCFd’-Rf ・・・(3)
式中、Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~16アルキル基(好ましくは、C1―16のパーフルオロアルキル基)を表し、Rfは、1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~16アルキル基(好ましくは、C1-16パーフルオロアルキル基)、フッ素原子又は水素原子を表し、Rf及びRfは、より好ましくは、それぞれ独立して、C1-3パーフルオロアルキル基である。
a’、b’、c’及びd’は、ポリマーの主骨格を構成するパーフルオロポリエーテルの4種の繰り返し単位数をそれぞれ表し、互いに独立して0以上300以下の整数であって、a’、b’、c’及びd’の和は少なくとも1、好ましくは1~300、より好ましくは20~300である。添字a’、b’、c’又はd’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。これら繰り返し単位のうち、-(OC)-は、-(OCFCFCFCF)-、-(OCF(CF)CFCF)-、-(OCFCF(CF)CF)-、-(OCFCFCF(CF))-、-(OC(CFCF)-、-(OCFC(CF)-、-(OCF(CF)CF(CF))-、-(OCF(C)CF)-及び(OCFCF(C))-のいずれであってもよいが、好ましくは-(OCFCFCFCF)-である。-(OC)-は、-(OCFCFCF)-、-(OCF(CF)CF)-及び(OCFCF(CF))-のいずれであってもよく、好ましくは-(OCFCFCF)-である。-(OC)-は、-(OCFCF)-及び(OCF(CF))-のいずれであってもよいが、好ましくは-(OCFCF)-である。
【0339】
上記一般式(3)で表されるパーフルオロポリエーテル化合物の例として、以下の一般式(3a)及び(3b)のいずれかで示される化合物(1種又は2種以上の混合物であってよい)が挙げられる。
Rf-(OCFCFCFb”-Rf ・・・(3a)
Rf-(OCFCFCFCFa”-(OCFCFCFb”-(OCFCFc”-(OCFd”-Rf ・・・(3b)
これら式中、Rf及びRfは上記の通りであり;式(3a)において、b”は1以上100以下の整数であり;式(3b)において、a”及びb”は、それぞれ独立して0以上30以下の整数であり、c”及びd”はそれぞれ独立して1以上300以下の整数である。添字a”、b”、c”、d”を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。
【0340】
また、別の観点から、含フッ素オイルは、一般式Rf-F(式中、RfはC5-16パーフルオロアルキル基である。)で表される化合物であってよい。また、クロロトリフルオロエチレンオリゴマーであってもよい。
【0341】
上記含フッ素オイルは、500~10000の平均分子量を有していてよい。含フッ素オイルの分子量は、GPCを用いて測定し得る。
【0342】
含フッ素オイルは、本開示の表面処理剤に対して、例えば0~50質量%、好ましくは0~30質量%、より好ましくは0~5質量%含まれ得る。一の態様において、本開示の表面処理剤は、含フッ素オイルを実質的に含まない。含フッ素オイルを実質的に含まないとは、含フッ素オイルを全く含まない、又は極微量の含フッ素オイルを含んでいてもよいことを意味する。
【0343】
一の態様において、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物の平均分子量よりも、含フッ素オイルの平均分子量を大きくしてもよい。このような平均分子量とすることにより、特に真空蒸着法により表面処理層を形成する場合において、より優れた摩擦耐久性と表面滑り性を得ることができる。
【0344】
一の態様において、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物の平均分子量よりも、含フッ素オイルの平均分子量を小さくしてもよい。このような平均分子量とすることにより、かかる化合物から得られる表面処理層の透明性の低下を抑制しつつ、高い摩擦耐久性及び高い表面滑り性を有する硬化物を形成できる。
【0345】
含フッ素オイルは、本開示の表面処理剤によって形成された層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
【0346】
上記シリコーンオイルとしては、例えばシロキサン結合が2,000以下の直鎖状又は環状のシリコーンオイルを用い得る。直鎖状のシリコーンオイルは、いわゆるストレートシリコーンオイル及び変性シリコーンオイルであってよい。ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルを、アルキル、アラルキル、ポリエーテル、高級脂肪酸エステル、フルオロアルキル、アミノ、エポキシ、カルボキシル、アルコールなどにより変性したものが挙げられる。環状のシリコーンオイルは、例えば環状ジメチルシロキサンオイルなどが挙げられる。
【0347】
本開示の表面処理剤中、かかるシリコーンオイルは、上記本開示のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の合計100質量部(2種以上の場合にはこれらの合計、以下も同様)に対して、例えば0~300質量部、好ましくは50~200質量部で含まれ得る。
【0348】
シリコーンオイルは、表面処理層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
【0349】
上記相溶化剤としては、2,2,2-トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール又は2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1-ペンタノール等のフッ素置換アルコール、好ましくは末端がCFHであるフッ素置換アルコール、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等のフッ素置換アリール、好ましくはフッ素置換ベンゼン等が挙げられる。
【0350】
上記触媒としては、酸(例えば酢酸、トリフルオロ酢酸等)、塩基(例えばアンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等)、遷移金属(例えばTi、Ni、Sn等)等が挙げられる。
【0351】
触媒は、本開示のフルオロポリエーテル基含有シラン化合物の加水分解及び脱水縮合を促進し、本開示の表面処理剤により形成される層の形成を促進する。
【0352】
他の成分としては、上記以外に、例えば、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン等も挙げられる。
【0353】
本開示の表面処理剤は、多孔質物質、例えば多孔質のセラミック材料、金属繊維、例えばスチールウールを綿状に固めたものに含浸させて、ペレットとすることができる。当該ペレットは、例えば、真空蒸着に用いることができる。
【0354】
本開示の表面処理剤は、上記した成分に加え、不純物として、例えばPt、Rh、Ru、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、トリフェニルホスフィン、NaCl、KCl、シランの縮合物などを微量含み得る。
【0355】
(物品)
以下、本開示の物品について説明する。
【0356】
本開示の物品は、基材と、該基材表面に本開示の表面処理剤より形成された層(表面処理層)とを含む。
【0357】
本開示において使用可能な基材は、例えば、ガラス、樹脂(天然又は合成樹脂、例えば一般的なプラスチック材料であってよい)、金属、セラミックス、半導体(シリコン、ゲルマニウム等)、繊維(織物、不織布等)、毛皮、皮革、木材、陶磁器、石材等、建築部材等、衛生用品、任意の適切な材料で構成され得る。
【0358】
例えば、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面を構成する材料は、光学部材用材料、例えばガラス又は透明プラスチックなどであってよい。また、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面(最外層)に何らかの層(又は膜)、例えばハードコート層や反射防止層などが形成されていてもよい。反射防止層には、単層反射防止層及び多層反射防止層のいずれを使用してもよい。反射防止層に使用可能な無機物の例としては、SiO、SiO、ZrO、TiO、TiO、Ti、Ti、Al、Ta、Ta,Nb、HfO、Si、CeO、MgO、Y、SnO、MgF、WOなどが挙げられる。これらの無機物は、単独で、又はこれらの2種以上を組み合わせて(例えば混合物として)使用してもよい。多層反射防止層とする場合、その最外層にはSiO及び/又はSiOを用いることが好ましい。製造すべき物品が、タッチパネル用の光学ガラス部品である場合、透明電極、例えば酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛などを用いた薄膜を、基材(ガラス)の表面の一部に有していてもよい。また、基材は、その具体的仕様等に応じて、絶縁層、粘着層、保護層、装飾枠層(I-CON)、霧化膜層、ハードコーティング膜層、偏光フィルム、相位差フィルム、及び液晶表示モジュールなどを有していてもよい。
【0359】
上記基材の形状は、特に限定されず、例えば、板状、フィルム、その他の形態であってよい。また、表面処理層を形成すべき基材の表面領域は、基材表面の少なくとも一部であればよく、製造すべき物品の用途及び具体的仕様等に応じて適宜決定され得る。
【0360】
一の態様において、かかる基材としては、少なくともその表面部分が、水酸基を元々有する材料から成るものであってよい。かかる材料としては、ガラスが挙げられ、また、表面に自然酸化膜又は熱酸化膜が形成される金属(特に卑金属)、セラミックス、半導体等が挙げられる。あるいは、樹脂等のように、水酸基を有していても十分でない場合や、水酸基を元々有していない場合には、基材に何らかの前処理を施すことにより、基材の表面に水酸基を導入したり、増加させたりすることができる。かかる前処理の例としては、プラズマ処理(例えばコロナ放電)や、イオンビーム照射が挙げられる。プラズマ処理は、基材表面に水酸基を導入又は増加させ得ると共に、基材表面を清浄化する(異物等を除去する)ためにも好適に利用され得る。また、かかる前処理の別の例としては、炭素-炭素不飽和結合基を有する界面吸着剤をLB法(ラングミュア-ブロジェット法)や化学吸着法等によって、基材表面に予め単分子膜の形態で形成し、その後、酸素や窒素等を含む雰囲気下にて不飽和結合を開裂する方法が挙げられる。
【0361】
別の態様において、かかる基材としては、少なくともその表面部分が、別の反応性基、例えばSi-H基を1つ以上有するシリコーン化合物や、アルコキシシランを含む材料から成るものであってもよい。
【0362】
好ましい態様において、上記基材はガラスである。かかるガラスとしては、サファイアガラス、ソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、クリスタルガラス、石英ガラスが好ましく、化学強化したソーダライムガラス、化学強化したアルカリアルミノケイ酸塩ガラス、及び化学結合したホウ珪酸ガラスが特に好ましい。
【0363】
本開示の物品は、上記基材の表面に、上記の本開示の表面処理剤の層を形成し、この層を必要に応じて後処理し、これにより、本開示の表面処理剤から層を形成することにより製造することができる。
【0364】
本開示の表面処理剤の層形成は、上記表面処理剤を基材の表面に対して、該表面を被覆するように適用することによって実施できる。被覆方法は、特に限定されない。例えば、湿潤被覆法及び乾燥被覆法を使用できる。
【0365】
湿潤被覆法の例としては、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング及び類似の方法が挙げられる。
【0366】
乾燥被覆法の例としては、蒸着(通常、真空蒸着)、スパッタリング、CVD及び類似の方法が挙げられる。蒸着法(通常、真空蒸着法)の具体例としては、抵抗加熱、電子ビーム、マイクロ波等を用いた高周波加熱、イオンビーム及び類似の方法が挙げられる。CVD方法の具体例としては、プラズマ-CVD、光学CVD、熱CVD及び類似の方法が挙げられる。
【0367】
更に、常圧プラズマ法による被覆も可能である。
【0368】
湿潤被覆法を使用する場合、本開示の表面処理剤は、溶媒で希釈されてから基材表面に適用され得る。本開示の組成物の安定性及び溶媒の揮発性の観点から、次の溶媒が好ましく使用される:炭素数5~12のパーフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン及びパーフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサン);ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン);ポリフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、C13CHCH(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AC-6000)、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(例えば、日本ゼオン株式会社製のゼオローラ(登録商標)H);ヒドロフルオロエーテル(HFE)(例えば、パーフルオロプロピルメチルエーテル(COCH)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7000)、パーフルオロブチルメチルエーテル(COCH)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7100)、パーフルオロブチルエチルエーテル(COC)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7200)、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(CCF(OCH)C)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7300)などのアルキルパーフルオロアルキルエーテル(パーフルオロアルキル基及びアルキル基は直鎖又は分枝状であってよい)、あるいはCFCHOCFCHF(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AE-3000))など。これらの溶媒は、単独で、又は、2種以上の混合物として用いることができる。なかでも、ヒドロフルオロエーテルが好ましく、パーフルオロブチルメチルエーテル(COCH)及び/又はパーフルオロブチルエチルエーテル(COC)が特に好ましい。
【0369】
乾燥被覆法を使用する場合、本開示の表面処理剤は、そのまま乾燥被覆法に付してもよく、又は、上記した溶媒で希釈してから乾燥被覆法に付してもよい。
【0370】
表面処理剤の層形成は、層中で本開示の表面処理剤が、加水分解及び脱水縮合のための触媒と共に存在するように実施することが好ましい。簡便には、湿潤被覆法による場合、本開示の表面処理剤を溶媒で希釈した後、基材表面に適用する直前に、本開示の表面処理剤の希釈液に触媒を添加してよい。乾燥被覆法による場合には、触媒添加した本開示の表面処理剤をそのまま蒸着(通常、真空蒸着)処理するか、あるいは鉄や銅などの金属多孔体に、触媒添加した本開示の表面処理剤を含浸させたペレット状物質を用いて蒸着(通常、真空蒸着)処理をしてもよい。
【0371】
触媒には、任意の適切な酸又は塩基を使用できる。酸触媒としては、例えば、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸などを使用できる。また、塩基触媒としては、例えばアンモニア、有機アミン類などを使用できる。
【0372】
本開示の物品に含まれる表面処理層は、高い摩擦耐久性の双方を有する。また、上記表面処理層は、高い摩擦耐久性に加えて、使用する表面処理剤の組成にもよるが、撥水性、撥油性、防汚性(例えば指紋等の汚れの付着を防止する)、防水性(電子部品等への水の浸入を防止する)、表面滑り性(又は潤滑性、例えば指紋等の汚れの拭き取り性や、指に対する優れた触感)、耐薬品性などを有し得、機能性薄膜として好適に利用され得る。
【0373】
従って、本開示はさらに、上記表面処理層を最外層に有する光学材料にも関する。
【0374】
光学材料としては、後記に例示するようなディスプレイ等に関する光学材料のほか、多種多様な光学材料が好ましく挙げられる:例えば、陰極線管(CRT;例えば、パソコンモニター)、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機薄膜ELドットマトリクスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、電界放出ディスプレイ(FED;Field Emission Display)などのディスプレイ又はそれらのディスプレイの保護板、又はそれらの表面に反射防止膜処理を施したものが挙げられる。
【0375】
本開示の物品は、特に限定されるものではないが、光学部材であり得る。光学部材の例には:眼鏡などのレンズ;PDP、LCDなどのディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板;携帯電話、携帯情報端末などの機器のタッチパネルシート;ブルーレイ(Blu-ray(登録商標))ディスク、DVDディスク、CD-R、MOなどの光ディスクのディスク面;光ファイバー;時計の表示面など、が挙げられる
【0376】
また、本開示の物品は、医療機器又は医療材料であってもよい。
【0377】
上記層の厚さは、特に限定されない。光学部材の場合、上記層の厚さは、1~50nm、1~30nm、好ましくは1~15nmの範囲であることが、光学性能、摩擦耐久性及び防汚性の点から好ましい。
【0378】
以上、本開示の表面処理剤及び物品について詳述した。なお、本開示の表面処理剤及び物品などは、上記で例示したものに限定されない。
【実施例
【0379】
以下、本開示の表面処理剤について、実施例において説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において、フルオロポリエーテル及びポリエーテルを構成する繰り返し単位の存在順序は任意であり、以下に示される化学式は平均組成を示す。
【0380】
(成分(A))
フルオロポリエーテル基含有シラン化合物として、下記化合物(a1)及び(a2)を準備した。
【0381】
・化合物(a1):m=15、n=16
【0382】
【化28】
【0383】
・化合物(a2):m=21、n=36
【0384】
【化29】
【0385】
(成分(B))
フルオロポリエーテル基含有アルキルアミド化合物として、下記化合物(b1)を準備した。
【0386】
・化合物(b1):m=19.5、n=33.3
【化30】
【0387】
合成例(b1)
還流冷却器、温度計および撹拌機を取り付けた50mLの3つ口フラスコに、平均組成HOCOCFO(CFCF19.5(CFO)33.3CFCOOH(ただし、混合物中には(CFCFCFO)および/または(CFCFCFCFO)の繰り返し単位を微量に含む化合物も微量に含まれる)で表わされるパーフルオロポリエーテル変性カルボン酸体4g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン2g、N,N-ジメチルホルムアミド0.13g、及び塩化チオニル0.4gを仕込み、60℃で2時間攪拌した。続いて、減圧下で揮発成分を留去することにより、末端が塩化アシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物(b1’)を4g得た。
Cl-CO-CFO(CFCF)20.4(CFO)34.5CF-CO-Cl (b1’)
【0388】
還流冷却器、温度計、及び撹拌機を取り付けた50mLの3つ口フラスコに、上記合成で得られた塩化アシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物(b1’)4g、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン2gを仕込み、5℃に冷却した。続いて、ジメチルアミンTHF溶液(2mol/L)2.2mLを仕込み、室温で終夜攪拌した。その後、分液ロートで3N塩酸による洗浄操作(より詳細には、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン相にフルオロ系化合物を維持し、塩酸層(水系)に非フルオロ系化合物を分離する操作)を3回行った。続いて、減圧下で揮発成分を留去することにより、パーフルオロポリエーテル基含有アルキルアミド化合物(b1)を3.14g得た。
(CHN-CO-CFO(CFCF20.4(CFO)34.5CF-CO-N(CH (b1)
【0389】
(成分(C))
フルオロポリエーテル基含有アミド化合物として、下記化合物(c1)を準備した。
・化合物(c1):m=22.7、n=22.0
【化31】
【0390】
実施例1~6
(表面処理剤の調製)
表1に示すフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(成分A)及びフルオロポリエーテル基含有アルキルアミド化合物(成分B)を、表1に示す割合となるように混合した。得られた混合物を、成分Aと成分Bの合計の濃度が20質量%となるように、ハイドロフルオロエーテル(スリーエム社製、ノベック7200)で希釈して、表面処理剤を調製した。
【0391】
比較例1~4
比較例1~2に関しては成分Bを用いないこと以外、上記実施例と同様にして、表面処理剤を調製した。比較例3~4に関しては、表1に示すフルオロポリエーテル基含有シラン化合物(成分A)及びフルオロポリエーテル基含有アミド化合物(成分C)を、表1に示す割合となるように混合したこと以外、上記実施例と同様にして、表面処理剤を調製した。
【0392】
【表1】
【0393】
(表面処理層の形成)
上記で調製した表面処理剤(実施例1~6及び比較例1~4)を化学強化ガラス(コーニング社製、「ゴリラ」ガラス、厚さ0.7mm)上に真空蒸着した。真空蒸着の処理条件は、圧力3.0×10-3Paとし、まず、化学強化ガラス表面に二酸化ケイ素膜を形成し、続いて、表面処理剤400mgを蒸着し、表面処理層を形成した。
【0394】
(初期接触角の測定)
上記の実施例1~6及び比較例1~4の表面処理剤から得られた表面処理層について、水の静的接触角(度)を5点測定し、その平均値(度)をとり、初期接触角(度)の値とした(摩擦回数0回)。
【0395】
(消しゴム(ER)摩擦耐久性試験)
表面処理層を形成した基材を水平配置し、消しゴム(minoan製、型番:MB006004、直径0.6cm)を該表面処理層の表面に接触させ、その上に1000gfの荷重を付与し、その後、荷重を加えた状態で消しゴムを20mm/秒の速度で往復させ、消しゴム摩擦耐久試験を実施した。往復回数100回毎に、水の静的接触角(度)を5点測定し、その平均値(度)をとった。接触角の平均値(度)が100度未満となった時点で試験を中止し、その前の接触角が100度を超えていた時の往復回数を消しゴム摩擦耐久性の数値(回)として採用し、下記表に示す。
【0396】
【表2】

【0397】
・スチールウール(SW)摩擦耐久性評価
表面処理層を形成した基材について、スチールウール摩擦耐久性評価を実施した。具体的には、表面処理層を形成した基材を水平配置し、スチールウール(番手♯0000、寸法5mm×10mm×10mm)を基材の表面処理層に接触させ、その上に1,000gfの荷重を付与し、その後、荷重を加えた状態でスチールウールを140mm/秒の速度で往復させた。往復回数1000回毎に水の静的接触角(度)を測定し、接触角の測定値が100度未満となった時点で評価を中止した。最後に接触角が100度を超えた時の往復回数を、下記表に示す。(表中、記号「-」は測定せず)。なお、往復回数20000回で試験を中止した。
【0398】
【表3】

【0399】
上記の結果から、フルオロポリエーテル基含有シラン化合物、及びフルオロポリエーテル基含有アルキルアミド化合物を含有する本開示の表面処理剤は、優れた摩擦耐久性を有する表面処理層を形成できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0400】
本開示の物品は、種々多様な用途、例えばタッチパネル等の光学部材として好適に利用され得る。