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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】地域警報装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 27/00 20060101AFI20240529BHJP
   G08B 25/10 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
G08B27/00 C
G08B25/10 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020045413
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021149165
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】横田 憲
(72)【発明者】
【氏名】清水 高志
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-181363(JP,A)
【文献】特開2013-164695(JP,A)
【文献】特開2018-152110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B17/00
19/00-31/00
H04B7/24-7/26
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象地域にある家屋などの対象施設のそれぞれに設置され、自機を中心に前記対象地域内の所定範囲での通信を可能とする通信機能を備えた地域警報装置であって、
他の前記地域警報装置から送信され、異常状態の発生元識別情報と発生した異常状態に関する情報とを含み、中継回数の格納欄と発生元からの距離の格納欄とを有する警報送信データを受信する受信手段と、
前記受信手段を通じて受信した前記警報送信データの受信信号強度から、直前の送信元である他の前記地域警報装置から自機までの距離を取得する距離取得手段と、
前記受信手段を通じて受信した前記警報送信データの前記中継回数の格納欄の値に1を加算し、前記距離の格納欄の値に前記距離取得手段で取得した前記距離を加算して、中継データとしての警報送信データを形成する第1の形成手段と、
前記第1の形成手段で形成した前記警報送信データを前記所定範囲にある他の前記地域警報装置に送信する第1の送信手段と、
前記受信手段を通じて受信した前記警報送信データに基づいて、発生元からの距離を含む、異常状態の発生の警報を行う第1の警報処理手段と
異なる方角に設けられる複数のアンテナのそれぞれにより受信された前記警報送信データの受信信号強度を、前記複数のアンテナごとに検出する受信信号強度検出手段と、
前記受信信号強度検出手段からの検出出力に基づいて、どの方角に設けられたアンテナにより受信された前記警報送信データの受信信号強度が高いかに応じて、前記警報送信データの到来方向を判別する判別手段と
を備え、
前記第1の警報処理手段は、前記判別手段により判別した警報送信データの到来方向を、異常状態の発生元のある方向として報知する
を備えることを特徴とする地域警報装置。
【請求項2】
請求項1に記載の地域警報装置であって、
異なる方角に設けられる前記複数のアンテナは、少なくとも2本であり、好ましくは、東西南北の4方向のそれぞれに1本ずつ設けられることを特徴とする
地域警報装置。
【請求項3】
対象地域にある家屋などの対象施設のそれぞれに設置され、自機を中心に前記対象地域内の所定範囲での通信を可能とする通信機能を備えた地域警報装置であって、
他の前記地域警報装置から送信され、異常状態の発生元識別情報と発生した異常状態に関する情報とを含み、中継回数の格納欄と発生元からの距離の格納欄とを有する警報送信データを受信する受信手段と、
前記受信手段を通じて受信した前記警報送信データの受信信号強度から、直前の送信元である他の前記地域警報装置から自機までの距離を取得する距離取得手段と、
前記受信手段を通じて受信した前記警報送信データの前記中継回数の格納欄の値に1を加算し、前記距離の格納欄の値に前記距離取得手段で取得した前記距離を加算して、中継データとしての警報送信データを形成する第1の形成手段と、
前記第1の形成手段で形成した前記警報送信データを前記所定範囲にある他の前記地域警報装置に送信する第1の送信手段と、
前記受信手段を通じて受信した前記警報送信データに基づいて、発生元からの距離を含む、異常状態の発生の警報を行う第1の警報処理手段と
異常状態の発生を検出するセンサ手段からの検出出力を受け付ける受付手段と、
前記受付手段を通じて前記検出出力を受け付けた場合に、自機の識別情報を前記発生元識別情報とし、前記検出出力に基づいて前記異常状態に関する情報を形成し、前記中継回数の格納欄と発生元からの前記距離の格納欄とに初期値を設定した発生元データとしての警報送信データを形成する第2の形成手段と、
前記第2の形成手段で形成した前記警報送信データを前記所定範囲にある他の前記地域警報装置に送信する第2の送信手段と、
前記受付手段を通じて前記検出出力に基づいて、異常状態の発生の警報を行う第2の警報処理手段と
異なる方角に設けられる複数のアンテナのそれぞれにより受信された前記警報送信データの受信信号強度を、前記複数のアンテナごとに検出する受信信号強度検出手段と、
前記受信信号強度検出手段からの検出出力に基づいて、どの方角に設けられたアンテナにより受信された前記警報送信データの受信信号強度が高いかに応じて、前記警報送信データの到来方向を判別する判別手段と
を備え、
前記第1の警報処理手段は、前記判別手段により判別した警報送信データの到来方向を、異常状態の発生元のある方向として報知する
ことを特徴とする地域警報装置。
【請求項4】
請求項3に記載の地域警報装置であって、
異なる方角に設けられる前記複数のアンテナは、少なくとも2本であり、好ましくは、東西南北の4方向のそれぞれに1本ずつ設けられることを特徴とする
地域警報装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、自治会が構成されている地域などといった特定地域(特定エリア)内で発生する災害などの異常状態の発生を、当該地域内で共有できるようにする地域警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から一般住宅にも火災警報器の設置が義務付けられている。一般住宅に設置される火災警報器は、単体で機能するものの他、配線などの面倒な施工作業を行うことなく、無線通信を利用して複数の火災警報器を連動させる火災警報システムも提供されている。後に記す特許文献1には、各火災警報器で互いに電波干渉が起こるのを防ぐと共に、全ての火災警報器に迅速に火災発生を知らせることのできる火災警報システムに関する発明が開示されている。また、後に記す特許文献2には、例えば、無線通信を利用して複数の火災警報器を連動させる火災警報システムにおいて、中継ルートの設定に必要な時間を短くすることのできる無線通信システムに関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5469412号
【文献】特許第6016156号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般住宅に設置される火災警報器は、熱や煙を感知することにより、火災発生の蓋然性が高い場合に警報を発し、迅速な初期消火を促したり、その場からの退避を促したりして、延焼の防止や逃げ遅れの防止に役立つものである。しかし、火災が発生した住宅の近隣住民に対しては、火災に気が付いた人が大声で叫ぶなどして知らせなければならない。また、近年、短時間の大量の降雨により、出水したことのない場所で出水したり、従来では考えられない場所で道路が冠水したりして、避難ができなくなるといった事象も発生している。更に、いわゆる空き巣などの犯罪の場合、発生場所での警報音の放音や警備会社への通報といった対応が取られている場合が多いが、周囲への報知が行われる場合は少ない。このため、防犯といった観点からは充分な対応が取られていないとする指摘がある。
【0005】
以上のことに鑑み、この発明は、災害などの異常状態の発生を検知した場合に、影響を受ける可能性のある地域(エリア)の住民に対して、適切に、かつ、迅速に警報を発することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の地域警報置は、
対象地域にある家屋などの対象施設のそれぞれに設置され、自機を中心に前記対象地域内の所定範囲での通信を可能とする通信機能を備えた地域警報装置であって、
他の前記地域警報装置から送信され、異常状態の発生元識別情報と発生した異常状態に関する情報とを含み、中継回数の格納欄と発生元からの距離の格納欄とを有する警報送信データを受信する受信手段と、
前記受信手段を通じて受信した前記警報送信データの受信信号強度から、直前の送信元である他の前記地域警報装置から自機までの距離を取得する距離取得手段と、
前記受信手段を通じて受信した前記警報送信データの前記中継回数の格納欄の値に1を加算し、前記距離の格納欄の値に前記距離取得手段で取得した前記距離を加算して、中継データとしての警報送信データを形成する第1の形成手段と、
前記第1の形成手段で形成した前記警報送信データを前記所定範囲にある他の前記地域警報装置に送信する第1の送信手段と、
前記受信手段を通じて受信した前記警報送信データに基づいて、発生元からの距離を含む、異常状態の発生の警報を行う第1の警報処理手段と
異なる方角に設けられる複数のアンテナのそれぞれにより受信された前記警報送信データの受信信号強度を、前記複数のアンテナごとに検出する受信信号強度検出手段と、
前記受信信号強度検出手段からの検出出力に基づいて、どの方角に設けられたアンテナにより受信された前記警報送信データの受信信号強度が高いかに応じて、前記警報送信データの到来方向を判別する判別手段と
を備え、
前記第1の警報処理手段は、前記判別手段により判別した警報送信データの到来方向を、異常状態の発生元のある方向として報知する
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、対象地域に存在する家屋などの対象施設に、この発明の地域警報装置を設置することにより、対象地域における地域警報システムを構築できる。これにより、対象施設に設置された地域警報装置で災害などの異常状態の発生を検知した場合に、影響を受ける可能性のある地域(エリア)の居住者(住民)に対して、適切に、かつ、迅速に警報を発することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態の地域警報装置を用いて構成する地域警報システムの概要について説明するための図である。
図2】実施の形態の地域警報装置の構成例を説明するためのブロック図である。
図3】実施の形態の警報送信データのレイアウトとアンテナメモリの格納データの例を説明するための図である。
図4】実施の形態の地域警報装置から送信される送信データの例について説明するための図である。
図5】実施の形態の地域警報装置の正面外観の例と異常状態の報知態様の例を説明するための図である。
図6】実施の形態の地域警報装置が用いられて構成される地域警報システムで行われる警報の送信方向の例について説明するための図である。
図7】実施の形態の地域警報装置が用いられて構成される地域警報システムの動作を説明するためのシーケンス図である。
図8】実施の形態の地域警報装置において行われる中継文作成処理について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照しながら、この発明による地域警報装置の一実施の形態について説明する。この実施の形態の地域警報装置は、各家屋における異常状態の発生を検知して、発生家屋の住民に対して警報を発するだけではない。この実施の形態の地域警報装置は、近隣の家屋に設置された地域警報装置と協働することにより、当該異常状態の発生の影響を受ける可能性のある地域(エリア)に存在する家屋に対しても、当該異常状態の発生を報知できるものである。なお、異常状態は、火災、出水などの災害や空き巣などの犯罪をも含む。
【0013】
以下に説明する実施の形態においては、日本国内の地方公共団体であるX市に設けられているA自治会の対象地域(対象エリア)において、この発明による地域警報装置を用いて地域警報システムを構築する場合を例にして説明する。X市においては、X市の全域を複数の地域に分割し、分割した対象地域ごとに、地域自治のための任意団体である自治会(いわゆる町内会)を設けている。各自治会の構成員は、各自治会の対象地域に居住する世帯単位の住民である。A自治会への加入は任意であるが、この実施の形態においては、対象地域に居住する全ての世帯である約1000世帯が加入しているものとする。X市のA自治会では、構成員の総意により、A自治会独自に地域警報システムを構築することになったものとする。
【0014】
[地域警報システムの概要]
図1は、この発明による地域警報装置を用いて構成する地域警報システムの概要について説明するための図である。図1(A)は、A自治会の対象地域の一部を示している。A自治会の対象地域は住宅街であり、多数の家屋が、例えば、庭、塀、道路などによって隔てられてはいるものの、隣り合って存在している。隣り合う家屋との間隔は、各家屋の中心位置を基準にして考えると、短い場合で10m(メートル)程度、長い場合で30m(メートル)程度である。
【0015】
この実施の形態の地域警報システムは、図1(A)に示すように、A自治会の対象地域に位置している家屋H1、H2、H3、…のそれぞれに、この発明による地域警報装置1(1)、1(2)、1(3)、…を設置して構成する。地域警報装置1(1)、1(2)、1(3)、…は、詳しくは後述するが、同様に構成されるものである。ここでは、説明を簡単にするため、地域警報装置1(1)の場合を例にして、構成の概要について説明する。
【0016】
図1(B)に示すように、地域警報装置1(1)は、情報の送信機能と受信機能とを備えるものであり、送受信用のアンテナAT1、AT2、AT3、AT4が接続されている。アンテナAT1、AT2、AT3、AT4のそれぞれは、この実施の形態においては、図1(B)の外側の四角形が示す家屋H1の外縁の四方(東西南北)のそれぞれに設けられている。
【0017】
また、地域警報装置1(1)には、例えば、火災センサ、出水センサ、侵入センサなどのセンサ2(1)、2(2)、…が接続されている。火災センサは、家屋の各部屋の天井などに設けられ、煙や熱を感知することにより火災の発生を検知する。出水センサは、例えば、家屋の外側壁面の地面から例えば10cm(センチメートル)程度上に上がった位置に設けられ、降雨には反応しないが、当該出水センサの半分以上が水没した場合に、出水の発生を検知する。侵入センサは、赤外線センサなどにより構成され、出入口や窓の近傍に設置され、外出時や就寝時などにおいて動作させるようにし、空き巣などの異常な侵入の発生を検知する。
【0018】
地域警報装置1(1)は、後述もするように、設置されている家屋において、異常状態が発生した場合には、異常状態の発生を居住者に報知すると共に、後述する警報送信データの送信元となる。また、地域警報装置1(1)は、設置されている家屋が、異常状態が発生した家屋とは異なる場合には、送信されて来る警報送信データの受信先となると共に、受信した警報送信データの更新及び中継を行う中継器となる。
【0019】
すなわち、地域警報装置1(1)、1(2)、1(3)、…のそれぞれは、特定小電力(920MHz帯)の信号を用い、マルチホップ通信により、地域警報システムを構成する他の地域警報装置に異常状態の発生を通知できるものである。従って、異常発生の通知を受けた他の地域警報装置は、これが設置された家屋の居住者に対して、対象地域の他の家屋における異常状態の発生を、居住者に対して報知できる。
【0020】
マルチホップ通信は、無線機能を搭載した各通信デバイスにデータの中継機能を持たせることで、バケツリレー式にデータの転送を繰り返し、電波が直接到達することが可能な範囲の外にある通信デバイスとの通信を可能にする技術である。この実施の形態において、無線機能を搭載した通信デバイスが、地域警報装置1(1)、1(2)、1(3)、…ということになる。この実施の形態では、地域警報装置1(1)、1(2)、1(3)、…のそれぞれは、送信出力を押さえることにより、警報送信データの送信到達距離を半径30m程度に抑えている。これにより、近隣の地域警報装置を介して、半径30mの所定範囲が徐々に外側に広がっていくようにされる。
【0021】
これにより、警報送信データを受信したアンテナの設置位置(設置方向)に基づき、異常状態が発生した家屋の所在方向を把握することを可能する。また、マルチホップ通信による中継回数に基づいて、異常状態が発生した家屋までのおおよその距離を把握することを可能にする。すなわち、どちらの方向にどれだけ離れた家屋において、異常状態が発生しているのかを把握し、異常状態が火災や出水であれば、どちらの方向に避難すればよいかを居住者に対して報知することも可能にしている。
【0022】
例えば、地域警報装置1(1)が設置された家屋で異常状態が発生したとする。この場合、地域警報装置1(1)は、センサ2(1)、2(2)、…により、火災、出水、侵入などの異常状態の発生を検知すると、警報音を放音したり、警報メッセージを表示画面に表示したりするなどの警報処理を行い、異常状態の発生を居住者に報知する。更に、地域警報装置1(1)は、異常状態の発生を通知するための警報送信データを形成し、これをアンテナAT1、AT2、AT3、AT4を通じて送信する。上述もしたように、地域警報装置1(1)は、A自治会の対象地域内において、異常状態の発生家屋の所在方向や当該発生家屋までの距離概算を把握可能にするために、送信範囲は、半径30m程度となるように送信出力を調整している。
【0023】
また、地域警報装置1(1)が設置された家屋とは例えば15m程度離れた近隣の家屋で異常状態が発生したとする。この場合、地域警報装置1(1)は、当該近隣の家屋に設置されている他の地域警報装置からの警報送信データを、アンテナAT1、AT2、AT3、AT4を通じて受信する。地域警報装置1(1)は、受信した警報送信データの中継回数などの必要情報を更新し、更新後の警報送信データをアンテナAT1、AT2、AT3、AT4を通じて送信する。つまり、地域警報装置1(1)は、警報送信データの中継器として機能する。
【0024】
更に、地域警報装置1(1)は、アンテナAT1、AT2、AT3、AT4のそれぞれに、受信信号の受信信号強度を測定し、この測定結果から異常状態の発生している家屋の所在方向を把握する。また、地域警報装置1(1)は、詳しくは、警報送信データの受信信号強度に基づいて中継器として機能する地域警報装置で求められる距離の累積値に基づいて、異常状態の発生している家屋までの距離を把握する。地域警報装置1(1)は、受信した警報送信データの内容をも考慮して、どちらの方向に、どれだけ離れた家屋において、どのような異常状態が発生しているのかを、自機が設置された家屋の居住者に対して報知する。
【0025】
このように、この実施の形態の地域警報システムを構成する地域警報装置1(1)は、火災、出水、侵入等の異常状態が発生した場合には、これを検知し、居住者に対して警報を行うことができる。更に、地域警報装置1(1)は、異常状態の発生を検知した場合には、警報送信データを形成して送信することにより、近隣にも異常状態の発生を報知できる。また、地域警報装置1(1)は、警報送信データを受信した場合には、方向や距離を特定して、近隣において異常状態が発生していることを居住者に報知できると共に、近隣の地域警報装置に対して、警報送信データの中継を行うことができる。
【0026】
ここでは、地域警報装置1(1)の場合を例にして説明したが、地域警報システムを構成する他の地域警報装置1(2)、1(3)、…も同様に機能するものである。このため、地域警報装置1(1)、1(2)、1(3)、…が設置されることにより、地域警報システムが構築されているA自治会においては、A自治会が構成されている対象地域における異常状態の発生について、情報の共有化を図ることができる。従って、異常状態が発生している方向に避難するといった間違った対応でなく、的確で、迅速な対応が可能になる。
【0027】
[地域警報装置の構成例]
次に、この実施の形態の地域警報装置1(1)、1(2)、1(3)、…の構成例について説明する。地域警報装置1(1)、1(2)、1(3)、…のそれぞれは、同様の構成を備え、同様に機能するものである。このため、以下においては、区別して示す必要がある場合を除き、地域警報装置1(1)、1(2)、1(3)、…のそれぞれを、地域警報装置1と総称する。
【0028】
図2は、地域警報装置1の構成例を説明するためのブロック図である。地域警報装置1は、いわゆるドアホン併用型の装置である。まず、ドアホン機能を実現する部分について、簡単に説明する。地域警報装置1は、表示制御部121、表示部122、音声出力部123、スピーカ124、マイクロホン125、音声入力部126、LED部127、LED制御部128を備えると共に、I/F部129を通じて屋外装置130が接続される。屋外装置130は、呼び鈴ボタン、カメラ、マイクロホン、スピーカが、1つの筐体内に収められて構成され、門柱や玄関脇の外側壁面などの屋外に取り付けられて、主に訪問者によって利用される。
【0029】
表示制御部121は、屋外装置130のカメラによって撮影された映像の映像データから、表示用の映像信号を形成し、これを表示部122に供給する。表示部122は、LCD(Liquid Crystal Display)やOELD(Organic Electro-Luminescence Display)などの薄型の表示デバイスであり、表示制御部121からの映像信号に応じた映像を表示画面に表示する。音声出力部123は、屋外装置130のマイクロホンによって収音された音声の音声データから、スピーカ駆動用の音声信号を形成し、これをスピーカ124に供給する。スピーカ124は、音声出力部123からの音声信号に応じた音声を放音する。また、音声出力部123及びスピーカ124は、屋外装置130の呼び鈴ボタンが押下操作された場合に、後述する制御部101の制御の下、呼び出しのためのチャイム音を放音する機能も実現する。
【0030】
マイクロホン125は、使用者の音声を収音して音声信号に変換し、これを音声入力部126に供給する。音声入力部126は、マイクロホンからの音声信号を自機において処理可能な形式の音声データに変換し、これをI/F部129を通じて屋外装置130に供給する。屋外装置130では、I/F部129を通じて受け付けた音声データをスピーカ駆動用の音声信号に変換し、これを屋外装置130のスピーカに供給する。これにより、マイクロホン125により収音された音声が、屋外装置130のスピーカから放音される。これらの各部が協働し、訪問者の来訪の通知、訪問者の映像確認、訪問者との通話といったドアホン機能が実現される。
【0031】
なお、LED(Light Emitting Diode)制御部128は、後述する制御部101からの制御に応じて、LED部127に設けられている1以上のLEDの点灯、消灯、点滅を制御する。これにより、例えば、屋外装置130の呼び鈴ボタンが操作された場合には、所定のLEDを点滅させるなどことができる。すなわち、LED部127に設けられているLEDの点灯、消灯、点滅等の状態に応じて、この実施の形態の地域警報装置1の状態等を使用者に通知できる。
【0032】
次に、地域警報装置1(1)の警報機能を実現する構成部分について説明する。制御部101は、図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリなどを備えたマイクロプロセッサであり、地域警報装置1の各部を制御する。操作部102は、屋外装置130との間で通話を行うための通話ボタン、屋外装置130のカメラを通じて屋外の状況をモニタするためのモニタボタン、その他幾つかの操作ボタンを備え、操作ボタンが操作された場合に、これを制御部101に通知する。これにより、制御部101は各部を制御し、操作されたボタンに応じた処理を行うようにできる。
【0033】
センサI/F103は、異常状態を検知するためのセンサ2(1)、2(2)、…からの検出出力を受け付けて、これを自機において処理可能な形式のデータに変換して取り込み、制御部101に供給する。センサ2(1)、2(2)、…は、上述もしたように、火災センサ、出水センサ、侵入検出のための赤外線センサなどである。この実施の形態においては、センサI/F103に対して、各センサ2(1)、2(2)、…は、有線により接続されている。もちろん、有線による接続に限るものではなく、無線により接続する形態とすることもできる。この場合には、センサI/F103は、例えば、Wi-Fi(登録商標)規格やBluetooth(登録商標)規格の無線受信部となり、各センサ2(1)、2(2)、…は、対応する無線通信規格の無線送信部を備えたものとなる。
【0034】
制御部101が、センサI/F103を通じてのセンサからの検出出力の供給を受けたとする。この場合、表示制御部121と音声出力部123とを制御し、表示部122に警報表示を行ったり、スピーカ124から警報音を放音したりすることによって、異常状態の発生を居住者に報知する。更に、制御部101は、送信信号形成部104、送信部105、アンテナ共用部106を制御して、検知した異常状態に応じた警報送信データ(発生元データ)を形成し、これを送信する処理を行う。
【0035】
送信信号形成部104は、制御部101の制御の下、検知した異常状態に応じた警報送信データ(発生元データ)を形成し、これを送信部105に供給する。図3は、警報送信データのレイアウト(図3(A))と、後述するアンテナメモリの格納データの例(図3(B))を説明するための図である。すなわち、送信信号形成部104は、図3(A)に示すレイアウトの警報送信データを形成し、これを送信部105に供給する。
【0036】
図3(A)に示すように、警報送信データは、同期ワード、中継回数、中継機器ID、警報情報、発信元、距離からなる。同期ワードは、警報送信データの先頭に置かれた、いわゆるプリアンブルの予め決められた同期用文字列(Sync Word)である。受信側では当該同期ワードを検出した後で、フレームの切り出しと取り込みを行うことにより、警報送信データを適切に取り込むことができる。当該警報送信データは、上述もしたように、マルチホップ通信により近隣の地域警報装置1が中継器となって中継される。このため、中継回数は、中継器となった地域警報装置1においてカウントアップされる値であって、中継された回数を示す値となる。
【0037】
中継機器IDは、中継器となって警報送信データを中継した地域警報装置1の識別情報である。図3(A)においては、1段目からn段目までの格納領域が用意されている場合を示している。なお、nは正の整数であり、図3(A)に示した例の場合には、3段目までは存在しているため、4以上の整数となる。なお、中継回数がnを越えた場合には、中継回数のカウントアップは継続されるが、n+1段目以降の中継機器IDは、1段目の欄から上書きされる。従って、中継回数がn段を越えた場合には、直近のn段分の中継機器IDの把握が可能となる。
【0038】
警報情報は、警報番号、警報種別、警報レベルからなる。警報番号は、マルチホップ通信で警報送信データを複数受信した場合に、重複情報の管理/中継をしないように判断するための情報である。警報番号は、地域警報システムが構築された対象地域の複数の場所で同時に異常状態が発生した場合にも、これを区別可能なように、地域警報装置1ごとであって、発生した異常状態ごとに、異なる番号となるようにそれぞれの地域警報装置1において採番される。簡単には、乱数などを用いて、地域警報装置1ごとであって、発生した異常状態ごとに、異なる番号を採番することが考えられる。
【0039】
これにより、この実施の形態の地域警報システムの場合には、マルチホップ通信により警報送信データを中継するので、警報番号が同じ警報送信データを複数回受信する場合もある。しかし、警報番号が同じ警報送信データについては、例えば、最初に受信したものだけを有効データとして扱うようにすることによって、重複した警報処理及び中継処理を回避できる。なお、警報番号が異なる警報送信データを受信した場合には、そのそれぞれを警報処理及び中継処理の対象とすることができる。
【0040】
警報種別は、発生した異常状態の内容を示す情報であり、この実施の形態においては、「1:火災」、「2:出水」、「3:侵入」のいずれかを示すものとなる。警報レベルは、例えば、「1:発生」、「2:拡大」、「0:沈静化」といった異常状態のレベル(段階)を示す情報である。警報種別は、一例であり、種々のセンサを接続することによって、火災、出水、侵入以外の異常状態を検知可能にした場合には、それに応じた警報種別を設けることができる。また、警報レベルについても、更に細分化して管理することも可能である。
【0041】
発信元は、異常状態の発生を検知して、当該警報送信データを最初に形成して送信した、警報の起点となった地域警報装置1の識別情報(発生元機器ID)である。距離は、受信した警報送信データの受信信号強度から当該警報送信データを直前に送信した地域警報装置との距離を求め、求めた距離を加算していく値である。すなわち、当該距離は、異常状態の発生元の家屋と、当該警報送信データを受信した地域警報装置が設置されている家屋までのおおよその距離を示す情報である。
【0042】
従って、異常状態発生元の地域警報装置1の送信信号形成部104では、発生元データとしての警報送信データが形成される。この場合の警報送信データは、所定の同期ワード、中継回数が「0」、中継機器IDの1段目と発信元が「発生元機器ID」、警報情報が検知された異常状態に応じた情報、距離が「0」となるものである。なお、発生元データとしての警報送信データにおいて、中継機器IDの2段目~n段目は、初期値、例えば「0」とされる。また、警報情報は、発生した異常状態が火災である場合には、警報番号が採番された固有値となり、警報種別が「1:火災」、警報レベルが「1:発生」となる。このようにして、送信信号形成部104で形成された警報送信データが、送信部105において、無線送信される形式のデータに変換されて、所定の送信出力でアンテナ共用部106及びアンテナAT1、AT2、AT3、AT4を通じて送信(放射)される。
【0043】
なお、警報情報の警報レベルは、例えば、火災の場合、複数の火災センサから火災の発生が検知された場合には、「拡大」とする警報送信データを形成して送信できる。すなわち、警報番号が新たに採番された固有値となり、警報種別が「1:火災」、警報レベルが「2:拡大」となる警報送信データを形成して送信できる。また、出水センサを地面からの高さを変えて複数設置しており、地面からより高い位置に設置した出水センサにおいて出水が検知されたとする。この場合には、警報番号が新たに採番された固有値となり、警報種別が「2:出水」、警報レベルが「2:拡大」となる警報送信データを形成して送信できる。また、侵入の場合には、侵入を検知した赤外線センサとその他の赤外線センサを含め、複数回に渡って侵入を検知したとする。この場合には、警報番号が新たに採番された固有値となり、警報種別が「3:侵入」、警報レベルが「2:拡大」となる警報送信データを形成して送信できる。
【0044】
また、発生した異常状態が沈静化した場合には、異常状態が発生した家屋に設置されている地域警報装置1において、或いは、その近隣の地域警報装置1において、例えば、地域警報装置1にある沈静化ボタンを押下操作する。この場合には、警報送信データの警報情報の警報レベルが「沈静化」となる警報送信データが形成されて送信される。例えば、発生が検知された異常状態が「小火(ぼや)」であった場合で、直ぐに消し止められた場合には、地域警報装置1の沈静化ボタンを押下操作することにより、警報番号が新たに採番された固有値となり、警報種別が「1:火災」、警報レベルが「0:沈静化」となる警報送信データを形成して送信できる。発生した異常状態が、出水や空き巣などの侵入の場合にも、同様にして、警報レベルを「沈静化」とした警報送信データを形成して送信できる。
【0045】
従って、地域警報装置1の送信信号形成部104は、制御部101の制御の下、異なる警報レベルの警報送信データを段階的に形成して送信できる。すなわち、センサ2(1)、2(2)、…の検出出力の状況、沈静化ボタンが押下操作されたこと、直前に送信または受信した警報送信データの内容に応じて、警報レベル(段階)の異なる警報送信データを順次に形成して、送信できる。この実施の形態での警報レベルは、「発生」、「拡大」、「沈静化」の少なくとも3種類がある。このため、地域警報装置1は、自機において形成して送信したり、受信したりした警報送信データは、後述する警報情報メモリ110に記憶保持している。また、警報送信データを受信した地域警報装置1においては、受信した警報送信データの警報レベルに応じて警報処理を行える。つまり、異常状態の発生、拡大、沈静化の各状態を居住者に報知できる。
【0046】
また、地域警報装置1から警報送信データを送信する場合以外の時には、制御部101の制御により、アンテナ共用部106は、受信側に切り替えられている。このため、アンテナAT1、AT2、AT3、AT4を通じて受信した警報送信データは、アンテナ共用部106を通じて、アンテナごとに受信強度検出部107に供給される。受信強度検出部107は、アンテナごとに受信した警報受信送信データの信号強度を検出し、検出結果を制御部101に供給する。制御部101は、受信信号強度の一番高い警報送信データを受信部108に供給するように受信強度検出部107を制御する。受信部108は、制御部101の制御の下、供給された警報受信データを自機において、処理が可能な形式のデータに変換し、警報情報メモリ110に記録する。
【0047】
更に、制御部101は、アンテナごとの警報送信データの受信信号強度と、アンテナメモリ109の格納データに基づいて、当該警報送信データの到来方向と、直前の送信元である地域警報装置と自機との間の距離を求める。アンテナメモリ109は、当該地域警報装置1に接続されている4つのアンテナAT1、AT2、AT3、AT4ごとに、それらのアンテナがどの方向に設置されたものかを示す情報を管理する。
【0048】
地域警報装置1のアンテナ共用部106には、4つのアンテナ端子T01、T02、T03、T04が設けられている。この実施の形態では、南側に設けられたアンテナAT1が、アンテナ端子T01に接続され、西側に設けられたアンテナAT2が、アンテナ端子T02に接続されている。また、北側に設けられたアンテナTA3が、アンテナ端子T03に接続され、東側に設けられたアンテナAT4が、アンテナ端子T04に接続されている。
【0049】
この場合、アンテナメモリ109では、図3(B)に示すように、アンテナ端子T01に接続されたアンテナは、南側に設置されたものであり、アンテナ端子T02に接続されたアンテナは、西側に設置されたものであることを管理している。同様に、アンテナ端子T03に接続されたアンテナは、北側に設置されたものであり、アンテナ端子T04に接続されたアンテナは、東側に設置されたものであることを管理している。
【0050】
受信強度検出部107は、アンテナ端子T01~T04ごとに、受信した警報送信データの受信信号強度を検出し、アンテナ端子T01~T04ごとに、受信信号データの検出結果を制御部101に通知する。制御部101は、図3(B)に示すアンテナメモリ109の格納データを参照し、受信信号強度が一番高いアンテナ端子に対応する設置位置を、警報送信データの到来方向として特定する。例えば、アンテナ端子T01の警報送信データの受信信号強度が一番高い場合には、警報送信データの到来方向は、南側であると特定できる。
【0051】
更に、制御部101は、受信信号強度が一番高かった警報送信データに関し、当該電界強度に基づいて、当該警報送信データの直前の送信元の地域警報装置から自機までの距離を求める。上述したように、送信出力は、最大でも30m先までを送信範囲とするように調整されているので、0m~30mの範囲で、直前の送信元の地域警報装置から自機までの距離を求めることができる。当該距離は、受信信号強度を変数とする所定の計算式により求めることができる。また、簡単な方法としては、予め測定を行っておくことにより、受信信号強度と送信元までの距離とを対応付けたテーブルを作成しておく。このテーブルを受信信号強度に基づいて参照することにより、直前の送信元の地域警報装置から自機までの距離を求めることができる。
【0052】
この後、制御部101は、送信信号形成部104を制御し、受信して警報情報メモリ110に格納した警報送信データの中継回数、中継機器ID、距離を更新した中継用の警報送信データ(中継データ)を形成する。制御部101は、送信信号形成部104で形成した中継用の警報送信データ(中継データ)を、送信部105及びアンテナ共用部106を通じて、アンテナAT1、AT2、AT3、AT4を通じて送信する(中継する)。
【0053】
なお、受信対象となる警報送信データは、自機が発信元である警報送信データ以外のものである。自機から送信した警報送信データは、近隣の地域警報装置により中継処理されるため、自機から送信した警報送信データであって、他の地域警報装置により中継された警報送信データを自機において受信する場合もある。このため、受信した警報送信データの発信元が自機である警報送信データは、中継用の警報送信データであるため、処理対象とはせずに破棄する。
【0054】
図4は、地域警報装置1から送信される警報送信データの例について説明するための図である。警報送信データは、上述したように、異常状態が発生した家屋に設置されている地域警報装置が形成する発生元データと、地域警報装置が中継器として動作した場合に形成する中継データとがある。以下においては、発生元データの具体例と、これが中継された場合の2段目、3段目の中継データの具体例について説明する。
【0055】
なお、以下に説明する具体例では、同期ワードは「XXXX」であるものとする。また、発生した異常状態は火災であり、警報情報を構成する警報番号は、新たに採番された固有値である「01」とし、警報種別は「1:火災」、警報レベルは「1:発生」であるものとする。これらの情報は、発信元データと中継データとで変わることはないので、これらの情報の詳細な説明は省略する。
【0056】
図4(A)は、異常状態が発生した家屋に設置されている地域警報装置1(1)が形成する発生元データとしての警報送信データの例を示している。発生元データにおいては、中継機器IDの欄の1段目の格納エリアに、発生元の地域警報装置1(1)の機器IDが入力される。この例においては、説明を簡単にするため、発生元の地域警報装置1(1)の機器IDは「1」であるものとする。また、発生元の機器IDである「1」は、当該発生元データの発信元の欄にも入力される。この発信元の欄に入力された情報が、中継段階において変更されることはない。また、発生元データにおいては、中継回数、中継機器IDの欄の2段目~n段目、距離は、いずれも初期値の「0」のままとされる。
【0057】
図4(B)は、図4(A)に示した発信元データを受信した地域警報装置1(2)が形成する中継データ(2段目)としての警報送信データの例を示している。この例の中継データにおいては、まず、中継回数が1だけカウントアップされ、中継回数の値が「1」となる。また、中継機器IDの欄の2段目の格納エリアに、当該中継器として機能する地域警報装置1(2)の機器IDが入力される。この例においては、説明を簡単にするため、中継器として機能する地域警報装置1(2)の機器IDは「2」であるものとする。
【0058】
更に、図4(B)に示す中継データでは、地域警報装置1(2)の制御部101において求めた、受信した警報送信データ(発生元データ)の直前の送信元である地域警報装置1(1)から自機(地域警報装置1(2))までの距離が、距離の欄の値に加算される。この例において、地域警報装置1(2)の制御部101で求めた距離は、「30m」であり、受信した発生元データの距離の欄の値が「0m」であるので、図4(B)の中継データの距離の欄の値は、「30m」となっている。
【0059】
図4(C)は、図4(B)に示した中継データを受信した地域警報装置1(3)が形成する中継データ(3段目)としての警報送信データの例を示している。この例の中継データにおいては、まず、中継回数が1だけカウントアップされ、中継回数の値が「2」となる。また、中継機器IDの欄の3段目の格納エリアに、当該中継器として機能する地域警報装置1(3)の機器IDが入力される。この例においては、説明を簡単にするため、中継器として機能する地域警報装置1(3)の機器IDは「3」であるものとする。
【0060】
更に、図4(C)に示す中継データでは、地域警報装置1(3)の制御部101において求めた、受信した警報送信データ(中継データ)の直前の送信元である地域警報装置1(2)から自機(地域警報装置1(3))までの距離が、距離の欄の値に加算される。この例において、地域警報装置1(2)の制御部101で求めた距離は、「30m」であり、受信した中継データの距離の欄の値が「30m」であったので、図4(C)の中継データの距離の欄の値は、「60m」となっている。
【0061】
このように、この実施の形態の地域警報システムを構成する地域警報装置1は、警報送信データの中継が行われる毎に、中継回数、中継機器ID、距離が更新される。これにより、警報送信データを受信した地域警報装置1においては、対象地域内で異常状態が発生した場合に、どの程度離れた場所で、どのような異常状態が、どのようなレベル(段階)で発生しているのかを把握できる。また、東西南北のそれぞれの方角に設置されたアンテナAT1、AT2、AT3、AT4ごとに、警報送信データの受信信号強度を検知することにより、異常状態の発生している家屋の所在方向をも把握することができる。
【0062】
なお、ここでは、異常状態として火災が発生した場合を例にして説明したが、異常状態として、出水や侵入が発生した場合にも、警報送信データの警報情報の内容が変わるが、火災発生時の場合と同様にして、警報送信データを形成して送信できる。また、上述もしたように、警報送信データは、発生、拡大、沈静化というように、警報レベルの異なるものを順次に形成して送信できる。
【0063】
これにより、警報送信データの送受信が行われ、当該地域警報システムにおいて警報処理が行われた場合であって、警報情報の警報レベルが「沈静化」である警報送信データを形成して送信したり、或いは、受信したりしたとする。この場合には、地域警報装置1の制御部101の制御により、警報情報メモリ110の初期化を行うなどの所定の警報終了処理を行い、次の警報に対応可能な状態に準備が整えられる。
【0064】
[警報の報知態様の例]
火災、出水、侵入等の異常状態が発生した家屋に設置された地域警報装置1において、警報処理を行う場合には、迅速な避難等の必要がある。このため、地域警報装置1の制御部101は、表示制御部121を制御して、警報表示を行うと共に、音声出力部123に警報音データや警報メッセージデータを供給し、警報音や警報メッセージをスピーカから大音量で放音する。
【0065】
一方、発生元データや中継データである警報送信データを受信した地域警報装置1では、単に異常状態が発生しただけでは、誤って異常状態が発生している家屋のある方向に避難してしまう可能性がある。そこで、この実施の形態の地域警報装置1では、上述もしたように、警報送信データの到来方向を特定して、異常状態の発生している家屋のある方向や異常状態が発生している当該家屋までの距離についても報知できるようにしている。
【0066】
図5は、実施の形態の地域警報装置1の正面外観の例と異常状態の報知態様の例を説明するための図である。図5(A)は、LEDを用いた避難方向を指示する場合の例を説明するためのものであり、地域警報装置1の正面外観、即ち、使用者と対向するフロントパネル面上の構成を示している。この例の地域警報装置1のフロントパネル面には、表示部122の表示画面122Gが観視可能に設けられており、表示画面122Gの周囲には、8つのLED71~78が設けられている。また、表示画面122Gの下側には、ドアホン機能を利用するための上述した通話ボタンB1とモニタボタンB2とが設けられている。なお、上述した沈静化ボタンなどは、フロントパネル面上ではなく、地域警報装置1の側面の誤操作がされ難い部分に設けられている。
【0067】
図5(A)に示すように、この例においては、表示画面122Gの上側にLED71が、右側にLED72、73、74が、下側にLED75が、左側にLED76、77、78が設けられている。これらLED71~78の表示色によって、危険な方向と安全な方向とを通知する。ここでは、地域警報装置1において、各アンテナAT1、AT2、AT3、AT4で受信した警報送信データの受信信号強度から、南側に設置されているアンテナAT1で受信した警報送信データの受信信号強度が一番高かったとする。
【0068】
また、上述したように、当該地域警報装置1では、アンテナAT1で受信した警報送信データの受信信号強度に基づいて、当該警報送信データの送信元から自機までの距離を求める。この求めた距離と、当該警報送信データの距離欄の情報と、警報情報欄の情報により、自機からXXm(メートル)先で火災が発生したことを把握したとする。
【0069】
この場合、当該地域警報装置1では、制御部101が、表示制御部121を制御し、図5(A)に示したように、表示部122の表示画面122Gに、「南方向XXm先で、火災が発生しました。」との警報メッセージと方向を示す東西南北の文字と表示する。更に、制御部101は、LED制御部128を制御し、LED部127のLED71を赤色で点灯し、LED72、78は、オレンジ色で点灯する。その他のLED73~77は、緑色で点灯する。
【0070】
これにより、赤色またはオレンジ色で点灯されたLED71、72、78に対応する南方向が危険な方向で、東方向、西方向、北方向が安全な方向であると使用者に通知できる。使用者は、視覚を通じて、直観的に危険な方向と安全な方向とを認識できる。同時に、制御部101は、音声出力部123を制御し、アラーム音や警告メッセージをスピーカ124から放音する。もちろん、アラーム音を放音しながら、警告メッセージを放音することもできる。この場合、スピーカ124から放音される音声は、大音量で放音される。
【0071】
なお、ここでは、LEDの点灯色によって、危険な方向と安全な方向を示すようにしたが、これに限るものではない。例えば、危険な方向に対応するLEDは点滅させ、安全な方向に対応するLEDは点灯したまま、或いは消灯したままとし、危険な方向と安全な方向を示すようにしてもよい。また、危険な方向に対応するLEDは消灯したままとし、安全な方向に対応するLEDは点灯したままとするようにして、危険な方向と安全な方向を示すようにしてもよい。点灯色、点灯、消灯、点滅を使い分けて、危険な方向と安全な方向を示すようにすることができる。
【0072】
もちろん、危険な方向と安全な方向とは、LEDによって示す場合に限らない。例えば、図5(B)に示すように、表示画面の周囲にLEDを設けない場合には、表示画面122Gの中央に自宅の位置を示すと共に、方向を示す東西南北の文字と表示する。更に、自宅の位置を基準にして、南方向が危険で、北方向が安全であることを示す表示情報を表示して、危険な方向と安全な方向を示すこともできる。もちろん、この場合にも、音声による警報を行うことが好ましい。
【0073】
従来の対象地域をカバーする警報システムの場合には、異常状態の発生は報知できたが、異常状態が発生している家屋の方向や、当該家屋までの距離については報知できなかった。しかし、この発明の地域警報装置1を用いて構成する地域警報システムの場合には、警報送信データをマルチホップ通信により、異常状態の発生元から対象地域の隅々にまで、異常情痴の発生の事実を送信する方式を採用する。これにより、各地域警報装置1においては、異常状態の発生元の方向と、異常状態の発生元までのおおよその距離を把握することができるので、迅速に安全な方向に避難、退避することが可能になる。
【0074】
図6は、地域警報装置1が用いられて構成される地域警報システムで行われる警報の送信方向の例について説明するための図である。図6において、小さな四角形は、家屋(家屋が存在する敷地)に対応し、4つから6つの家屋を囲む大きな四角形が、道路によって分けられた区画(ブロック)に対応している。図6に示すように、位置Pの家屋において火災が発生したとする。この位置Pの家屋に設置されている地域警報装置1を起点(発生元)として、警報送信データが形成されて送信され、周囲の各家屋に設置された他の地域警報装置1が中継器として機能して、警報送信データが拡散される。
【0075】
この地域警報システムの場合、各地域警報装置1は、四方に設置されたアンテナAT1、AT2、AT3、AT4を通じて全方位に警報送信データを中継するので、自機が送信した警報送信データが戻ってくる場合もある。しかし、詳しくは後述するように、発信元、警報番号、中継回数を考慮し、処理対象とすべき警報送信データを適切に選択することによって、火災の発生元の方向と、発生元までの距離を適切に把握できる。
【0076】
これにより、図6に示した例の場合には、各家屋に矢印を付して示した方向から到来した警報送信データを処理対象として選択し、中継処理が行われるようにされる。このように、火災の発生元の家屋がある位置Pから離れる方向に、放射上に警報送信データを拡散することが可能になり、異常状態の発生元の方向と、異常状態の発生元までのおおよその距離を把握することができる。
【0077】
[地域警報システムの動作]
図7は、実施の形態の地域警報装置1が用いられて構成される地域警報システムの動作を説明するためのシーケンス図である。ここでは、説明を簡単にするため、地域警報装置1(1)が設置された家屋で火災が発生し、その他の地域警報装置1(2)、…が中継器として機能する場合を例にして説明する。なお、地域警報装置1(3)、1(4)、…等の装置においては、地域警報装置1(2)と同様の処理を行うことになるため、図7においては省略している。
【0078】
図7の左上側に示すように、地域警報装置1(1)において、火災の発生が検知されたとする(ステップS1)。この場合、地域警報装置1(1)の制御部101は、送信信号形成部104を制御し、電文作成処理を実行し(ステップS2)、図4(A)を用いて説明した態様で警報送信データ(発生元データ)を形成する。この後、制御部101は、送信部105及びアンテナ共用部106を制御し、形成した電文である警報送信データ(発信元データ)を、送信範囲が半径30m程度の所定の送信出力で、アンテナAT1、AT2、AT3、AT4を通じて送信する(ステップS3)。更に、制御部101は、表示制御部121及び音声出力部123を制御して、居住者に対して当該家屋で火災が発生していることを報知する処理を開始する(ステップS4)。
【0079】
一方、火災発生元の地域警報装置1(1)からの電文である警報送信データ(発生元データ)は、地域警報装置1(1)の近隣の地域警報装置1(2)、…で受信される(ステップS5)。警報送信データを受信した地域警報装置1(2)では、制御部101の制御の下、詳しくは後述する中継文作成処理が実行される(ステップS6)。この後、制御部101は、送信すべき中継文である警報送信データ(中継データ)が存在するか否かを判別し(ステップS7)、存在しない場合には、警報送信データの中継(送信)は行われない(電文非送信)。
【0080】
ステップS7の判別処理において、送信すべき中継文である警報送信データ(中継データ)が存在すると判別したとする。この場合、制御部101は、送信部105及びアンテナ共用部106を制御し、作成した中継文である警報送信データ(中継データ)を、送信範囲が半径30m程度の所定の送信出力で、アンテナAT1、AT2、AT3、AT4を通じて送信する(ステップS8)。更に、制御部101は、表示制御部121及び音声出力部123を制御して、居住者に対して近隣において火災が発生していることを報知する処理を開始する(ステップS9)。ステップS9の報知処理は、図5(A)、(B)を用いた態様で警報を報知するなど、火災発生元の所在方向や火災発生元までの距離を報知するなどの処理が行われる。
【0081】
この後、地域警報装置1(1)が設置された家屋において発生した火災が沈静化し、延焼の可能性がなくなったことを、発生元の居住者が確認したとする(ステップS10)。この場合には、地域警報装置1(1)が作動すれば地域警報装置1(1)において、沈静化ボタンが押下操作されることになる。これに応じて、地域警報装置1(1)の制御部101は、送信信号形成部104を制御し、警報レベルを「0:沈静化」とする電文である警報送信データ(発生元データ)を形成する処理を実行する(ステップS11)。
【0082】
この後、制御部101は、送信部105及びアンテナ共用部106を制御し、ステップS11で形成した電文である警報送信データを、送信範囲が半径30m程度の所定の送信出力で、アンテナAT1、AT2、AT3、AT4を通じて送信する(ステップS12)。更に、制御部101は、表示制御部121及び音声出力部123を制御して、警報処理を終了させ(ステップS13)、警報情報メモリ110をクリアするなどの所定の終了処理を行って(ステップS14)、次の異常状態の発生に備えることになる。なお、ステップS10~ステップS14の処理は、発生元の地域警報装置1(1)が損傷を受けるなど機能できない時には、例えば近隣の他の地域警報装置など、発生元の地域警報装置1(1)とは異なる地域警報装置で行うようにしてもよい。
【0083】
一方、火災発生元の地域警報装置1(1)からの電文である警報レベルが「0:沈静化」とする警報送信データ(発生元データ)は、地域警報装置1(1)の近隣の地域警報装置1(2)、…で受信される(ステップS15)。警報送信データを受信した地域警報装置1(2)では、制御部101の制御の下、詳しくは後述する中継文作成処理が実行される(ステップS16)。この後、制御部101は、送信すべき中継文である警報送信データ(中継データ)が存在するか否かを判別し(ステップS17)、存在しない場合には、警報送信データの中継(送信)は行われない(電文非送信)。
【0084】
ステップS17の判別処理において、送信すべき中継文である警報送信データ(中継データ)が存在すると判別したとする。この場合、制御部101は、送信部105及びアンテナ共用部106を制御し、作成した中継文である警報送信データ(中継データ)を、送信範囲が半径30m程度の所定の送信出力で、アンテナAT1、AT2、AT3、AT4を通じて送信する(ステップS18)。更に、制御部101は、表示制御部121及び音声出力部123を制御して、警報処理を終了させ(ステップS19)、警報情報メモリ110をクリアするなどの所定の終了処理を行って(ステップS20)、次の異常状態の発生に備えることになる。
【0085】
図8は、警報送信データを受信した地域警報装置において行われる中継文作成処理について説明するためのフローチャートである。図8に示す処理は、図7を用いて説明した一連の処理のステップS6、ステップS16等において行われる処理である。なお、発生元の地域警報装置1(1)においては、発生元である点から、図8に示す処理を行わないように制御することも可能である。しかし、他の場所で異常状態が発生することもあるため、発生元の地域警報装置1(1)においても、警報送信データを受信した場合には、図8に示す処理を行うようにしてもよい。ここでは、地域警報装置1(2)で実行される場合として説明するが、図8に示す処理は、他の地域警報装置において、警報送信データを受信した場合には同様に実行される。
【0086】
警報送信データを受信した地域警報装置1(2)は、制御部101が機能し、受信した警報送信データの発信元欄を参照し、当該警報送信データは、自端末が発信元か、他端末が発信元かを判別する(ステップS101)。このステップS101の判別処理は、発信元の地域警報装置において、自端末から送信した警報送信データ(発生元データ)を処理しないようにするためのものである。ステップS101の判別処理において、受信した警報送信データが、自端末を発信元とするものである場合には、これを中継するなどの処理は必要ないため、何もすることなくこの図8に示す処理を終了することになる。この場合、中継文、即ち、警報送信データ(中継データ)は形成されないので、図7を用いて説明したように、電文非送信となる。
【0087】
ステップS101の判別処理において、受信した警報送信データは、他端末が発信元であると判別した場合、制御部101は、当該警報送信データの警報レベルの欄を参照し、異常状態の発生と沈静化のいずれを通知するものかを判別する(ステップS102)。ステップS102の判別処理において、当該警報送信データが、異常状態の沈静化を通知するものであると判別したとする。この場合、制御部101は、当該警報送信データの警報番号を確認し、既に中継するようにした警報情報メモリ110の格納データの中に、同じ警報番号で警報レベルが「0:沈静化」の中継データが有るか否かを判別する(ステップS103)。
【0088】
ステップS103の判別処理において、受信した警報送信データの警報番号と同じ警報番号で、警報レベルが「0:沈静化」である中継データが存在する(重複有り)と判別したとする。この場合は、既に、発生した異常状態の通知の後に、当該異常状態の沈静化の通知がなされていることになり、再度の沈静化の通知を行う必要はないので、何もすることなくこの図8に示す処理を終了することになる。この場合、中継文、即ち、警報送信データ(中継データ)は形成されないので、図7を用いて説明したように、電文非送信となる。
【0089】
ステップS103の判別処理において、受信した警報送信データの警報番号と同じ警報番号で、警報レベルが「0:沈静化」である中継データは存在しない(重複無し)と判別したとする。この場合は、発生した異常状態が沈静化したことを通知する必要があるので、中継文の作成処理を行う(ステップS104)。ステップS104では、制御部101が、送信信号形成部104を制御し、図4(B)、(C)に示した態様であって、警報レベルが「0:沈静化」とする中継文である警報送信データ(中継データ)を形成する。
【0090】
この後、制御部101は、形成した中継文(警報送信データ(中継データ))を警報情報メモリ110に格納し(ステップS105)、この図8に示す処理を終了する。このようにして、警報種別が「0:沈静化」である中継文については、例えば、図7のステップS18に示したように、必ず中継されることになる。
【0091】
一方、ステップS102の判別処理において、当該警報送信データが、異常状態の発生を通知するものであると判別したとする。この場合、制御部101は、当該警報送信データの警報番号を確認し、既に中継するようにした警報情報メモリ110の格納データの中に、同じ警報番号で警報レベルが「1:発生」又は「2:拡大」の中継データが有るか否かを判別する(ステップS106)。
【0092】
ステップS106の判別処理において、既に中継するようにした警報情報メモリ110の格納データの中に、同じ警報番号で警報レベルが「1:発生」又は「2:拡大」の中継データはない(重複無し)と判別したとする。この場合は、異常状態の発生、拡大したことを通知する必要があるので、中継文の作成処理を行う(ステップS104)。ステップS104では、制御部101が、送信信号形成部104を制御し、図4(B)、(C)に示した態様であって、警報レベルが「1:発生」、「2:拡大」とする中継文である警報送信データ(中継データ)を形成する。
【0093】
この後、制御部101は、形成した中継文(警報送信データ(中継データ))を警報情報メモリ110に格納し(ステップS105)、この図8に示す処理を終了する。このようにして、警報種別が「1:発生」、「2::拡大」である中継文については、例えば、図7のステップS8に示したように、必ず中継されることになる。
【0094】
ステップS106の判別処理において、既に中継するようにした警報情報メモリ110の格納データの中に、同じ警報番号で警報レベルが「1:発生」又は「2:拡大」の中継データがある(重複有り)と判別したとする。この場合、制御部101は、更に、今回受信した警報送信データの中継回数と、同じ警報番号の送信済みの警報送信データの中継回数とを比較し、その大小関係を判別する(ステップS107)。ステップS107の判別処理において、今回受信した警報送信データの中継回数の方が、同じ警報番号の送信済みの警報送信データの中継回数よりも多いと判断したとする。この場合には、遠回りに到達したことになるので、何もすることなくこの図8に示す処理を終了することになる。この場合、中継文、即ち、警報送信データ(中継データ)は形成されないので、図7を用いて説明したように、電文非送信となる。
【0095】
ステップS107の判別処理において、今回受信した警報送信データの中継回数の方が、同じ警報番号の送信済みの警報送信データの中継回数よりも少ないと判断したとする。この場合には、中継回数の少ない警報送信データに基づいて、発生元までの距離を算出した方がより正しい距離を求めることができる。そこで、この場合には、既に中継した警報送信データであっても、再度、中継文の作成処理を行って、中継回数や距離を求め直した中継文を作成する(ステップS104)。
【0096】
この後、制御部101は、形成した中継文(警報送信データ(中継データ))を警報情報メモリ110に格納し(ステップS105)、この図8に示す処理を終了する。このようにして、作成された警報送信データは、例えば、図7のステップS8に示したように、必ず中継されることになる。この場合、警報番号が同じである警報送信データが、複数回に渡って送信されることになるが、発生元の方向や発生元までの距離をより正しく報知できる点において有効である。
【0097】
[実施の形態の効果]
上述した実施の形態の地域警報装置によれば、対象地域に存在する家屋などの対象施設ごとに、当該地域警報装置を設置することにより、当該対象地域に地域警報システムを簡単に構築することができる。当該地域警報システムにおいては、災害などの異常状態の発生を検知した場合に、影響を受ける可能性のある地域(エリア)の住民に対して、適切に、かつ、迅速に警報を発することができる。
【0098】
特に、異常状態が発生した家屋などの対象施設までの距離や異常状態が発生した家屋などの対象施設のある方向を把握して報知できる。このため、避難の切迫度を客観的に把握することができる。また、異常状態が発生した対象施設のある危険な方向に避難してしまうということも防止できる。
【0099】
[変形例等]
なお、上述した実施の形態では、地域警報装置1の送信出力は、例えば、半径30mの範囲を送受信領域とするものとして説明した。しかし、これに限るものではない。家屋等の対象施設間の接近の度合いなどに応じて、適宜の送信出力とすることができる。例えば、農村部や山間部などの近隣の対象施設との距離が数百メートル程度離れている場合には、送信出力を数百メートルとするなど、適宜の調整が可能である。
【0100】
また、警報送信データに異常状態の発生元の名称や住所を付加して、これを通知することも可能である。また、機器IDと地域警報装置の設置場所の名称や住所を対応付けたテーブルを、各地域警報装置に設けておくことにより、地域警報装置において、異常状態の発生元の名称や住所を特定し、これを報知するように構成することも可能である。
【0101】
また、上述した実施の形態では、1台の地域警報装置には、東西南北に1つずつの4つのアンテナを設けるものとして説明したが、これに限るものではない。少なくとも、東西に1本ずつ、南北に1本ずつというように、異なる方位に2本のアンテナを設けるようにすれば、警報送信データのおおよその到来方向を特定できる。もちろん、4本よりも多くの適宜の数のアンテナを異なる方位に設けるようにしてももちろんよい。
【0102】
また、対象施設は、戸建ての家屋だけでなく、アパートやマンションなどの集合住宅やオフィスビルなどであってももちろんよい。この場合には、その建物に1つの地域警報装置を設ければよいが、アンテナは好適な通信ができるように、建物の外部に複数設けるようにすればよい。
【0103】
また、冠水が発生する道路の脇や道路を掘り下げて交差する道路の下をくぐる形になっているいわゆるアンダーパス部分などに出水センサを設け、この出水センサの近傍に当該出水センサが接続された地域警報装置を設置しておく。これにより、冠水した道路の状況を周囲に拡散し、冠水した道路を使用せずに避難できる方向を指示することが可能になる。
【0104】
また、異常状態は、火災、出水、侵入に限るものではなく、種々のセンサによって検出可能な異常状態の発生を報知するようにできる。例えば、危険斜面に発生した土砂崩れや崩落などを振動センサや圧力センサなどを用いて検知するようにし、土砂崩れや崩落など検知した場合にこれを報知することもできる。
【0105】
[その他]
上述した実施の形態の説明からも分かるように、請求項の受信手段の機能は、実施の形態のアンテナAT1、AT2、AT3、AT4やアンテナ共用部106と協働して受信部108が実現する。また、請求項の距離取得手段の機能は、実施の形態の受信強度検出部107と制御部101が協働して実現する。また、請求項の第1の形成手段の機能は、送信信号形成部104と制御部101が協働して実現する。また、請求項の送信手段の機能は、実施の形態のアンテナAT1、AT2、AT3、AT4やアンテナ共用部106と協働して送信部105が実現する。また、請求項の第1の警報処理手段の機能は、制御部101、表示制御部121及び表示部122、音声出力部123及びスピーカ124が協働して実現する。
【0106】
また、請求項の受付手段の機能は、実施の形態のセンサI/F103が実現している。また、請求項の第2の形成手段の機能は、送信信号形成部104と制御部101が協働して実現する。また、請求項の第2の送信手段の機能は、実施の形態のアンテナAT1、AT2、AT3、AT4やアンテナ共用部106と協働して送信部105が実現する。また、請求項の第2の警報手段の機能は、制御部101、表示制御部121及び表示部122、音声出力部123及びスピーカ124が協働して実現する。また、請求項の受信信号強度検出手段の機能は、実施の形態の受信強度検出部107が実現している。また、請求項の判別手段の機能は、制御部101とアンテナメモリ109が協働して実現している。
【符号の説明】
【0107】
H1~H6…家屋、1、1(1)~1(6)…地域警報装置、101…制御部、102…操作部、103…センサI/F、104…送信信号形成部、105…送信部、106…アンテナ共用部、107…受信強度検出部、108…受信部、109…アンテナメモリ、110…警報情報メモリ、T1、AT2、AT3、AT4…アンテナ、121…表示制御部、122…表示部、123…音声出力部、124…スピーカ、125…マイクロホン、126…音声入力部、127…LED部、128…LED制御部、129…I/F部、130…屋外装置、2(1)、2(2)…センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8