(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】ガラス板の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 33/033 20060101AFI20240529BHJP
B26F 3/00 20060101ALI20240529BHJP
B28D 5/00 20060101ALI20240529BHJP
B28D 7/02 20060101ALI20240529BHJP
C03B 17/06 20060101ALI20240529BHJP
C03B 33/027 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
C03B33/033
B26F3/00 A
B28D5/00 Z
B28D7/02
C03B17/06
C03B33/027
(21)【出願番号】P 2020100218
(22)【出願日】2020-06-09
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】西堀 章
(72)【発明者】
【氏名】奥 隼人
(72)【発明者】
【氏名】岡田 貞治
(72)【発明者】
【氏名】堂谷 尚正
(72)【発明者】
【氏名】桐畑 洋平
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-114686(JP,A)
【文献】国際公開第03/040049(WO,A1)
【文献】特開2008-127228(JP,A)
【文献】特開2015-093827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 33/00-33/14
C03B 17/06
B28D 5/00、7/02
B26F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦姿勢で下方に搬送されるガラスリボンを切断することによりガラス板を形成する切断装置を備えるガラス板の製造装置において、
前記切断装置は、前記ガラスリボンを切断する切断機構と、前記切断機構を駆動する駆動部と、前記駆動部から発生する塵埃を回収する集塵装置と、を備え
、
前記駆動部は、ベルトと、前記ベルトを覆うカバー部材とを備え、
前記集塵装置は、前記カバー部材の内部を吸引するように、前記カバー部材に接続される接続部を備えることを特徴とするガラス板の製造装置。
【請求項2】
前記切断機構は、前記ガラスリボンにスクライブ線を形成するスクライブ機構を備え、
前記駆動部は、前記スクライブ機構を昇降させる請求項
1に記載のガラス板の製造装置。
【請求項3】
前記切断機構は、前記ガラスリボンにスクライブ線を形成するスクライブ機構を備え、
前記スクライブ機構は、前記ガラスリボンに前記スクライブ線を形成するカッタを備え、
前記駆動部は、前記カッタを前記ガラスリボンの幅方向に沿って移動させる請求項
1に記載のガラス板の製造装置。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか一項に記載の製造装置によってガラス板を製造する方法において、
前記ガラスリボンを前記切断装置によって切断する切断工程を備え、
前記切断工程は、前記駆動部から発生する前記塵埃を前記集塵装置によって回収する集塵工程を備えることを特徴とするガラス板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦姿勢で搬送されるガラスリボンを切断することにより、ガラス板を製造する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のパネルディスプレイ用のガラス基板、スマートフォン、タブレット型PC等のカバーガラスとして、ガラス板が広く使用されている。
【0003】
ガラス板の製造方法の一つとしては、オーバーフローダウンドロー法等に代表されるダウンドロー法によって連続成形されたガラスリボンを所定の長さ毎に切断することにより、ガラスリボンからガラス板を切り出す方法を挙げることができる。
【0004】
特許文献1には、このような製造方法に使用される装置の一例が開示されている。ガラス板の製造装置は、成形後に下方に搬送されるガラスリボンに追従降下しつつ、ガラスリボンの一方の面にスクライブ線を形成するスクライブ機構と、ガラスリボンに追従降下しつつ、スクライブ線が形成された部分に曲げ応力を付与してガラスリボンを折割切断する折割機構と、を備えている。
【0005】
スクライブ機構は、ガラスリボンの一方の面に接触するホイールカッタを備える。ホイールカッタは、ベルト式の駆動部に連結されている。駆動部は、ホイールカッタが固定される無端帯状のベルトと、このベルトが巻き掛けられる駆動輪及び従動輪と、を備える。
【0006】
スクライブ機構は、ガラスリボンの搬送速度と同じ速度で下方に移動しつつ、駆動部によってホイールカッタをガラスリボンの幅方向に移動させることで、ガラスリボンの一方の面にスクライブ線を形成する。
【0007】
折割機構は、ガラスリボンにおいてスクライブ線が形成された部分に対して、ガラスリボンの他方の面に接触して折割切断の支点となる支点バーと、ガラスリボンの一部を支持する支持装置(折割アーム)と、を備える。
【0008】
折割機構は、支点バーをガラスリボンに接触させ、かつガラスリボンを支持装置によって支持した状態で、支点バーとガラスリボンとの接触位置を中心として支持装置の姿勢を変更することにより、ガラスリボンに曲げ応力を付与する。
【0009】
製造装置は、この曲げ応力の作用によって、スクライブ線を起点とする亀裂をガラスリボンの厚さ方向に進展させることで、支持装置によって支持されているガラスリボンの一部をガラス板として切り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の製造装置では、塵埃が発生する場合があった。塵埃がガラスリボンに付着すると、製造されるガラス板の品質を低下させることになる。切断時におけるガラスリボンが高温状態であることから、このガラスリボンに付着(溶着)した塵埃は、後に行われるガラス板の洗浄工程においても除去することが難しい。そのため、ガラス板の品質が低下する。
【0012】
本発明は上記の事情に鑑みて為されたものであり、ガラス板の品質低下を防止することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、縦姿勢で下方に搬送されるガラスリボンを切断することによりガラス板を形成する切断装置を備えるガラス板の製造装置において、前記切断装置は、前記ガラスリボンを切断する切断機構と、前記切断機構を駆動する駆動部と、前記駆動部から発生する塵埃を回収する集塵装置と、を備えることを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、切断機構によってガラスリボンを切断する際に、駆動部から発生する塵埃を集塵装置によって回収することで、塵埃がガラスリボンに付着することを防止できる。そのため、ガラス板の品質低下を抑制できる。
【0015】
上記構成の製造装置において、前記駆動部は、ベルトと、前記ベルトを覆うカバー部材とを備え、前記集塵装置は、前記カバー部材の内部を吸引するように、前記カバー部材に接続される接続部を備えてもよい。本発明では、カバー部材の内部でベルトから発生する塵埃を集塵装置の接続部によって回収することで、塵埃がガラスリボンに付着することを防止できる。
【0016】
上記構成の製造装置において、前記切断機構は、前記ガラスリボンにスクライブ線を形成するスクライブ機構を備え、前記駆動部は、前記スクライブ機構を昇降させてもよい。本発明では、スクライブ機構を昇降させる駆動部から発生する塵埃を集塵装置によって回収することで、塵埃がガラスリボンに付着することを防止できる。
【0017】
上記構成の製造装置において、前記切断機構は、前記ガラスリボンにスクライブ線を形成するスクライブ機構を備え、前記スクライブ機構は、前記ガラスリボンに前記スクライブ線を形成するカッタを備え、前記駆動部は、前記カッタを前記ガラスリボンの幅方向に沿って移動させてもよい。本発明では、カッタを駆動する駆動部から発生する塵埃を集塵装置によって回収することで、塵埃がガラスリボンに付着することを防止できる。
【0018】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、上記の製造装置によってガラス板を製造する方法において、前記ガラスリボンを前記切断装置によって切断する切断工程を備え、前記切断工程は、前記駆動部から発生する前記塵埃を前記集塵装置によって回収する集塵工程を備えることを特徴とする。
【0019】
かかる構成によれば、切断工程中において、集塵工程によって駆動部から発生する塵埃を回収することで、塵埃がガラスリボンに付着することを防止できる。そのため、ガラス板の品質低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ガラス板の品質低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】
図2のIII-III矢視線に係るスクライブ装置の背面図である。
【
図4】
図3のIV-IV矢視線に係るスクライブ駆動部の断面図である。
【
図5】
図3のV-V矢視線に係る昇降駆動部の断面図である。
【
図6】
図2のVI-VI矢視線に係るスクライブ装置の背面図である。
【
図7】ガラス板の製造方法における一工程を示す側面図である。
【
図8】ガラス板の製造方法における一工程を示す側面図である。
【
図9】ガラス板の製造方法における一工程を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
図1乃至
図9は、本発明に係るガラス板の製造装置及び製造方法の一実施形態を示す。
【0023】
ガラス板の製造装置は、縦姿勢で下方に向かって搬送されるガラスリボンを切断する切断装置を含む。
図1及び
図2に示すように、切断装置1は、ガラスリボンGRにスクライブ線SLを形成するスクライブ装置2と、ガラスリボンGRをスクライブ線SLに沿って折り割る折割装置3と、集塵装置4と、を備える。
【0024】
スクライブ装置2は、スクライブ機構5と、スクライブ機構5を駆動するスクライブ駆動部6と、スクライブ機構5を昇降させる昇降機構7a,7bと、昇降機構7a,7bをそれぞれ駆動する昇降駆動部8a,8bと、を備える。
【0025】
スクライブ機構5は、ガラスリボンGRの一方の面(以下「第一主面」という)GRaにスクライブ線SLを形成するホイールカッタ9と、ガラスリボンGRの他方の面(以下「第二主面」という)GRbを支持する支持部材としての支持バー10と、を備える。
【0026】
ホイールカッタ9は、周縁部に刃(エッジ)を備えた円盤状に形成されている。ホイールカッタ9は、スクライブ駆動部6によって、ガラスリボンGRの幅方向に沿って移動可能に構成される。これにより、ホイールカッタ9は、ガラスリボンGRの幅方向の一端部から他端部にわたり、スクライブ線SLを形成することができる。
【0027】
ホイールカッタ9は、ガラスリボンGRの第一主面GRaに対して接近・離反可能に構成される。ホイールカッタ9は、
図2において実線で示すようにガラスリボンGRから離れた待機位置と、二点鎖線で示すようにガラスリボンGRの第一主面GRaに接触する接触位置とに位置を変更することができる。
【0028】
支持バー10は、ガラスリボンGRの幅方向に沿って長尺状に構成される棒状部材又は板状部材により構成されるが、この形状に限定されるものではない。支持バー10は、ガラスリボンGRを介してホイールカッタ9と対向するように配置されている。支持バー10は、ガラスリボンGRの第二主面GRbに対して接近・離反可能に構成される。支持バー10は、
図2において実線で示すようにガラスリボンGRから離れた待機位置と、二点鎖線で示すようにガラスリボンGRの第二主面GRbに接触する接触位置とに位置を変更することができる。
【0029】
図1乃至
図4に示すように、スクライブ駆動部6は、ベルト式駆動部により構成される。スクライブ駆動部6は、ホイールカッタ9を移動可能に支持するベルト11と、ベルト11の内側に配されるプーリ12a,12bと、ベルト11及びプーリ12a,12bを覆うカバー部材13と、を備える。
【0030】
ベルト11は、樹脂等によって無端帯状に構成される。プーリ12a,12bは、ガラスリボンGRの幅方向に沿って離間される駆動プーリ12a及び従動プーリ12bを含む。駆動プーリ12aは、電動モータによって回転駆動される。ベルト11は、駆動プーリ12aによって駆動されることで、ホイールカッタ9をガラスリボンGRの幅方向に沿って移動させる。
【0031】
カバー部材13は、中空の直方体形状に構成されるが、この形状に限定されるものではない。カバー部材13は、ベルト11及びプーリ12a,12bを囲繞する複数の壁部により構成される。カバー部材13は、集塵装置4に接続される開口部13aを有する。
【0032】
昇降機構7a,7bは、ホイールカッタ9及びスクライブ駆動部6を昇降させる第一昇降機構7aと、支持バー10を昇降させる第二昇降機構7bとを含む。各昇降機構7a,7bは、例えばボールネジ機構により構成されるが、この構成に限定されず、昇降動作可能な各種のアクチュエータにより構成され得る。
【0033】
図3及び
図5に示すように、第一昇降機構7aは、一対の第一ネジ部材14a及び第二ネジ部材14bと、各ネジ部材14a,14bに係合する一対の第一ナット部材15a及び第二ナット部材15bと、を含む。
【0034】
各ネジ部材14a,14bの下端部は、スクライブ駆動部6におけるカバー部材13の上部に固定されている。各ナット部材15a,15bは、支持構造体によって回転可能に支持されている。ナット部材15a,15bは、昇降駆動部8aによって回転駆動されることで、ネジ部材14a,14bを昇降させる。
【0035】
図6に示すように、第二昇降機構7bは、一対の第一ネジ部材16a及び第二ネジ部材16bと、各ネジ部材16a,16bに係合する一対の第一ナット部材17a及び第二ナット部材17bと、を含む。
【0036】
各ネジ部材16a,16bの下端部は、支持バー10に連結されている。ナット部材17a,17bは、昇降駆動部8bによって回転駆動されることで、ネジ部材16a,16bを昇降させる。
【0037】
昇降駆動部8a,8bは、第一昇降機構7aを駆動する第一昇降駆動部8aと、第二昇降機構7bを駆動する第二昇降駆動部8bとを含む。
【0038】
図1乃至
図3及び
図5に示すように、第一昇降駆動部8aは、第一昇降機構7aのナット部材15a,15bに巻き掛けられるベルト18a,18bと、ベルト18a,18bを駆動する駆動プーリ19と、駆動プーリ19を回転駆動する電動モータ20と、ベルト18a,18b及び駆動プーリ19を覆うカバー部材21と、を備える。
【0039】
ベルト18a,18bは、樹脂等によって無端帯状に構成される。ベルト18a,18bは、第一ナット部材15aを駆動する第一ベルト18aと、第二ナット部材15bを駆動する第二ベルト18bとを含む。第一ベルト18aは、第一ナット部材15a及び駆動プーリ19に巻き掛けられている。第二ベルト18bは、第二ナット部材15b及び駆動プーリ19に巻き掛けられている。
【0040】
駆動プーリ19は、第一ベルト18aの内側及び第二ベルト18bの内側に配置されている。電動モータ20は、例えばサーボモータにより構成されるが、この構成に限定されず、他の各種モータにより構成されてもよい。電動モータ20の軸部は、駆動プーリ19に連結されている。駆動プーリ19は、電動モータ20によって正逆回転可能に構成されている。
【0041】
カバー部材21は、中空の直方体形状に構成されるが、この形状に限定されるものではない。カバー部材21は、ベルト18a,18b及び駆動プーリ19を囲繞する複数の壁部により構成される。カバー部材21は、ベルト18a,18b、駆動プーリ19の他、第一昇降機構7aのネジ部材14a,14bの一部及びナット部材15a,15bを収容している。カバー部材21は、集塵装置4に接続される開口部21aを有する。カバー部材21の内部には、ナット部材15a,15bを回転可能に支持する支持構造体が配置されている。
【0042】
第二昇降駆動部8bは、第一昇降駆動部8aと同じ構成を有する。
図6に示すように、第二昇降駆動部8bは、第二昇降機構7bのナット部材17a,17bに巻き掛けられる無端帯状で樹脂製の第一ベルト22a及び第二ベルト22bと、各ベルト22a,22bを駆動する駆動プーリ23と、駆動プーリ23を回転駆動する電動モータ24と、ベルト22a,22b及び駆動プーリ23を覆うカバー部材25と、を備える。
【0043】
第二昇降駆動部8bのカバー部材25は、中空の直方体形状に構成されるが、この形状に限定されるものではない。カバー部材25は、ベルト22a,22b及び駆動プーリ23を囲繞する複数の壁部により構成される。カバー部材25は、ベルト22a,22b、駆動プーリ23の他、第二昇降機構7bのネジ部材16a,16bの一部及びナット部材17a,17bを収容している。カバー部材25は、集塵装置4に接続される開口部25aを有する。カバー部材25の内部には、ナット部材17a,17bを回転可能に支持する支持構造体が配置されている。
【0044】
図1及び
図2に示すように、折割装置3は、ガラスリボンGRを割断する折割機構26と、この折割機構26を昇降させる折割昇降機構27とを備える。
【0045】
折割機構26は、ガラスリボンGRの折割に係る支点を形成する支点バー28と、ガラスリボンGRの一部を支持するとともに、ガラスリボンGRに曲げ応力を付与すべく姿勢変更可能に構成される支持装置29a,29bと、を備える。
【0046】
支点バー28は、ガラスリボンGRの幅方向に沿って長尺状に構成される棒状部材又は板状部材により構成されるが、この形状に限定されるものではない。支点バー28は、スクライブ機構5の下方位置に配される。
【0047】
支点バー28は、ガラスリボンGRに対して、接近・離反可能に構成されている。支点バー28は、
図2において実線で示すようにガラスリボンGRから離れて待機する待機位置と、二点鎖線で示すようにガラスリボンGRの第二主面GRbに接触する接触位置とに位置を変更することができる。支点バー28は、上下方向に移動可能に構成される。支点バー28は、ガラスリボンGRの下降速度と同じ速度で下方に移動することができる。
【0048】
支持装置29a,29bは、支点バー28の下方位置に配される。
図1に示すように、支持装置29a,29bは、ガラスリボンGRの幅方向の一端部を支持する第一支持装置29aと、ガラスリボンGRの幅方向の他端部を支持する第二支持装置29bとを含む。第一支持装置29a及び第二支持装置29bは、ガラスリボンGRの幅方向において相互に対向するように配置されている。
【0049】
図1及び
図2に示すように、各支持装置29a,29bは、上下方向に沿って所定の間隔をおいて配される複数のチャック30と、各チャック30を支持するフレーム31とを備える。
【0050】
フレーム31は、ガラスリボンGRに曲げ応力を付与するために、所定の揺動動作(回動動作)を行うように構成されている。フレーム31は、この揺動動作を行うための揺動機構に連結されている。揺動機構は、この揺動機構を駆動する駆動部(揺動駆動部)に連結されている。
【0051】
折割昇降機構27は、フレーム31を支持する支持部材27aと、支持部材27aを昇降可能に支持する支柱27bとを備える。支柱27bには、支持部材27aを昇降させるモータその他の駆動部(折割昇降駆動部)が設けられている。折割昇降機構27は、ガラスリボンGRの下方への移動速度と同じ速度でフレーム31を下方に移動させることができる。
【0052】
図1乃至
図6に示すように、集塵装置4は、スクライブ駆動部6に接続される第一接続部32と、昇降駆動部8a,8bに接続される第二接続部33と、ガラスリボンGRの切断時に発生するガラス粉を吸引する吸引部34と、吸引部34に接続される第三接続部35と、第一接続部32乃至第三接続部35に接続される集塵機36と、を備える。
【0053】
第一接続部32は、
図1乃至
図4に示すように、可撓性を有するホースにより構成される。第一接続部32は、スクライブ駆動部6におけるカバー部材13の開口部13aに連通するように、当該カバー部材13に固定されている。第一接続部32は、カバー部材13の内部空間に発生する摩耗粉等の塵埃を吸引するように構成される。特に、摩耗粉は、ベルト11とプーリ12a,12bとの接触部位で発生しやすいため、第一接続部32は、プーリ12a,12bの近くに配置される。
【0054】
第二接続部33は、
図1乃至
図3及び
図5に示すように、可撓性を有するホースにより構成される。第二接続部33は、昇降駆動部8a,8bのカバー部材21,25に形成される各開口部21a,25aに連通するように、カバー部材21,25に固定されている。第二接続部33は、カバー部材21,25の内部空間に発生する摩耗粉等の塵埃を吸引するように構成される。特に、摩耗粉は、ベルト18a,18b,22a,22bと駆動プーリ19,23との接触部位や、ベルト18a,18b,22a,22b、ネジ部材14a,14b,16a,16b及びナット部材15a,15b,17a,17bの接触部位で発生しやすいため、第二接続部33は、駆動プーリ19,23や、ネジ部材14a,14b,16a,16b、ナット部材15a,15b,17a,17bの近くに配置される。
【0055】
図2に示すように、吸引部34は、ガラスリボンGRを介して支点バー28と対向するように配置されている。吸引部34は、ガラスリボンGRに対して接近・離反可能に構成されている。吸引部34は、
図2において実線で示すようにガラスリボンGRから離れた待機位置と、二点鎖線で示すようにガラスリボンGRの第一主面GRaの近傍に位置する吸引位置と、に位置を変更できる。
【0056】
吸引部34は、上下方向に移動可能に構成されている。吸引部34は、ガラスリボンGRの下降速度と同じ速度で下方に移動することができる。第三接続部35は、可撓性を有するホースにより構成される。第三接続部35は、吸引部34が吸引したガラス粉を集塵機36に送るように、当該吸引部34の一部に固定されている。
【0057】
集塵機36は、各接続部32,33,35に負圧を生じさせる吸引装置により構成される。集塵機36は、第一接続部32および第二接続部33によって吸引された各昇降駆動部8a,8b内の塵埃を回収する。集塵機36は、吸引部34によって吸引されたガラス粉を、第三接続部35を通じて回収する。
【0058】
以下、上記構成の製造装置(切断装置1)を使用してガラス板を製造する方法について説明する。本方法は、ガラスリボンGRの一部を折り割ることによりガラス板を切り出す切断工程を備える。
【0059】
切断工程では、切断装置1の上方で成形され、下方に搬送される縦姿勢のガラスリボンGRの一部を切断装置1によって切断する。切断工程は、ガラスリボンGRにスクライブ線SLを形成するスクライブ工程と、ガラスリボンGRに曲げ応力を付与する曲げ応力付与工程と、集塵装置4による集塵工程と、を備える。
【0060】
スクライブ工程では、ガラスリボンGRの中途部に、スクライブ装置2によって幅方向に沿うスクライブ線SLを形成する。スクライブ装置2のスクライブ機構5は、ガラスリボンGRの下降速度と同じ速度で下降しつつ、ガラスリボンGRの第一主面GRaにスクライブ線SLを形成する。
【0061】
また、スクライブ工程において、折割装置3は、折割機構26の支持装置29a,29bによってガラスリボンGRの一部を支持させた状態で、この折割機構26をガラスリボンGRの下降速度と同じ速度で下降させる。
【0062】
図7に示すように、スクライブ機構5は、ホイールカッタ9及び支持バー10を待機位置から接触位置へと移動させる。スクライブ機構5は、支持バー10をガラスリボンGRの第二主面GRbに接触させた状態で、ホイールカッタ9を、ガラスリボンGRの幅方向における一端部から他端部に向かって移動させる。
【0063】
これにより、ガラスリボンGRの第一主面GRaに、幅方向に沿う直線状のスクライブ線SLが形成される。スクライブ線SLが形成されると、スクライブ機構5は、ホイールカッタ9及び支持バー10を待機位置へと移動させる。
【0064】
図8に示すように、曲げ応力付与工程において、折割装置3は、折割機構26の下方への移動を維持しつつ、待機位置にある支点バー28を接触位置へと移動させる。これにより、支点バー28は、ガラスリボンGRにおいてスクライブ線SLが形成された位置に対応する第二主面GRbの一部に接触する。折割機構26は、支点バー28と支持装置29a,29bをガラスリボンGRの下降速度と同じ速度で下降させる。
【0065】
図8に示すように、曲げ応力付与工程において、集塵装置4は、吸引部34をガラスリボンGRとの下降速度と同じ速度で下降させながら、当該吸引部34を待機位置から吸引位置へと移動させる。これにより、吸引部34は、スクライブ線SLの近傍に位置する。吸引部34は、吸引位置を維持しつつ、ガラスリボンGRとともに下方に移動する。
【0066】
図9に示すように、折割機構26は、その下降中に、支持装置29a,29bのチャック30によるガラスリボンGRの支持を維持した状態で、フレーム31を揺動(回動)させる。この場合において、フレーム31は、支点バー28とガラスリボンGRとの接触位置を中心(支点)として、所定の角度を為すように揺動する。これにより、支持装置29a,29bは、垂直姿勢から折割姿勢(傾斜姿勢)へと姿勢を変更する。
【0067】
このように、支持装置29a,29b(フレーム31)が姿勢を変更することにより、ガラスリボンGRにおいてスクライブ線SLが形成されている部位に曲げ応力が付与される。この曲げ応力の作用により、スクライブ線SLを起点とする亀裂がガラスリボンGRの厚さ方向に進展する。これにより、支持装置29a,29bに支持されていたガラスリボンGRの一部がガラス板GSとして切り出される。
【0068】
集塵工程では、集塵装置4は集塵機36を常に動作させ、第一接続部32及び第二接続部33を介してスクライブ駆動部6内及び昇降駆動部8a,8b内の空気を吸引する。これにより、集塵機36は、ベルト11,18a,18b,22a,22bから発生する摩耗粉等の塵埃を回収する。また、集塵装置4は、ガラスリボンGRからガラス板GSが切り出された際に発生するガラス粉を、吸引部34、第三接続部35を通じて集塵機36により回収する。
【0069】
以上説明した本実施形態に係るガラス板GSの製造装置及び製造方法によれば、集塵工程において、ガラスリボンGRの切断に係るスクライブ機構5、昇降機構7a,7b等の切断機構を駆動するスクライブ駆動部6及び昇降駆動部8a,8b内の空気を集塵装置4によって吸引することで、各駆動部6,8a,8bのベルト11,18a,18b,22a,22bから発生した摩耗粉等の塵埃を除去することができる。これにより、塵埃がガラスリボンGRに付着することによるガラス板GSの品質低下を防止することができる。
【0070】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0071】
上記の実施形態では、支持バー10を備えるスクライブ装置2を例示したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。スクライブ装置2のスクライブ機構5は、支持バー10に代えて円柱状の支持ローラを備えてもよい。
【0072】
この場合、スクライブ機構5は、支持ローラとホイールカッタ9との両者でガラスリボンGRを第一主面GRa及び第二主面GRbの両側から挟んだ状態で、両者が同期してガラスリボンGRの幅方向に沿って移動するように構成され得る。この場合において、スクライブ装置2は、支持ローラを移動させるベルト式の駆動部を備えてもよい。この駆動部は、ホイールカッタ9に係るスクライブ駆動部6と同じ構成であってもよい。集塵装置4は、支持ローラに係るスクライブ駆動部に接続される接続部を備えてもよい。この接続部は、第一接続部32と同じ構成であってもよい。
【0073】
上記の実施形態では、スクライブ装置2のスクライブ駆動部6及び昇降駆動部8a,8bから発生する塵埃を集塵装置4によって回収する例を示したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。本発明に係る切断機構には、スクライブ機構5、昇降機構7a,7bのみならず、折割機構26や揺動機構も含まれる。集塵装置4による集塵の対象となる駆動部には、折割装置3の折割機構26を駆動する折割昇降駆動部や揺動機構を駆動する揺動駆動部も含まれる。集塵装置4は、これらの駆動部に接続される接続部を備えてもよい。
【0074】
上記の実施形態では、集塵の対象物として、ベルト11,18a,18b,22a,22bから発生する摩耗粉等を例示したが、本発明はこの構成に限定されない。集塵装置4は、例えば潤滑油等から発生するオイル汚れ等からなる塵埃を回収することができる。
【0075】
上記の実施形態では、スクライブ線SLを形成するための部材としてホイールカッタ9を例示したが、本発明はこの構成に限定されない。スクライブ線SLを形成する部材としては、ガラスリボンGRの第一主面GRa上を移動することでスクライブ線SLを形成できるものであれば他の物を使用してもよい。一例を挙げると、スクライブ線形成部材として針状の刃等を使用してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 切断装置
4 集塵装置
5 スクライブ機構
6 スクライブ駆動部
7a 第一昇降機構
7b 第二昇降機構
8a 第一昇降駆動部
8b 第二昇降駆動部
9 ホイールカッタ
11 ベルト
13 カバー部材
18a 第一ベルト
18b 第二ベルト
21 カバー部材
22a 第一ベルト
22b 第二ベルト
25 カバー部材
26 折割機構
32 第一接続部
33 第二接続部
GR ガラスリボン
GS ガラス板