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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】超音波複合振動装置
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/02 20060101AFI20240529BHJP
   B06B 1/06 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
B06B1/02 K
B06B1/06 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020141848
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037621
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(73)【特許権者】
【識別番号】598131650
【氏名又は名称】株式会社アポロ技研
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】三浦 光
(72)【発明者】
【氏名】淺見 拓哉
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-525839(JP,A)
【文献】特開平08-331872(JP,A)
【文献】特開平08-294673(JP,A)
【文献】特開昭63-087184(JP,A)
【文献】特開2007-129181(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101259465(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0293044(US,A1)
【文献】特開平02-084082(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0136598(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/02
B06B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦振動を発生させる振動素子を含む振動子ユニットと、前記振動子ユニットに接続されて前記縦振動の伝搬方向に沿った軸芯に沿って延伸されると共に前記縦振動に対して共振する柱状のホーンとを備える超音波複合振動装置であって、
前記ホーンは、
前記軸芯を含む平面を対称面とする対称形状であると共に互いに締結されることなくスリットを間に挟んで対向配置される一対の振動片と、
前記軸芯に沿った方向の一端側が前記振動子ユニットと接続されると共に前記軸芯に沿った方向の他端側に前記振動片が接続された基部と
を有し、
前記振動片は、前記軸芯と直交する断面形状が前記対称面と平行な長辺と前記対称面と直交する短辺とを有する矩形状とされた板形状とされており、
一方の前記振動片の表裏面と他方の前記振動片の表裏面とが平行である
ことを特徴とする超音波複合振動装置。
【請求項2】
前記対称面と直交する方向の前記振動片の厚さ寸法は、前記対称面から前記基部の外壁面までの寸法よりも小さいことを特徴とする請求項記載の超音波複合振動装置。
【請求項3】
前記軸芯に沿った方向から見た前記振動片の幅寸法が、前記基部の幅寸法と一致することを特徴とする請求項または記載の超音波複合振動装置。
【請求項4】
前記振動片と前記基部との接続箇所にフィレットが設けられていることを特徴とする請求項1~いずれか一項に記載の超音波複合振動装置。
【請求項5】
前記振動片の前記基部と反対側の先端が自由端とされていることを特徴とする請求項1~いずれか一項に記載の超音波複合振動装置。
【請求項6】
前記基部における前記縦振動の節となる位置に合わせて前記基部の外壁面から突出するフランジが設けられていることを特徴とする請求項1~いずれか一項に記載の超音波複合振動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波複合振動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1や特許文献2には、超音波複合振動を用いた超音波応用加工、及び超音波複合振動を発生させるための振動源(超音波複合振動装置)が開示されている。特許文献1に開示された超音波複合振動装置は、ホーンに対して斜めスリットが設けられており、縦振動の一部を斜めスリットによってねじり振動に変換することで複合振動を発生させている。特許文献2に開示された超音波複合振動装置は、縦振動を発生させる縦振動子ユニットとねじり振動を発生させるねじり振動子ユニットとの2つの振動子ユニットを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-288351号公報
【文献】特開昭63-44970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された超音波複合振動装置によれば、振動変換器である斜めスリットを用いることにより、単一の駆動周波数で容易に縦振動とねじり振動を得られる。しかしながら、単一の駆動周波数であるため、超音波複合振動装置の全体に対して波長の異なる縦振動とねじり振動が伝搬する。そのため、縦振動の節位置とねじり振動の節位置とが一致せず、超音波複合振動装置の固定が困難であった。
【0005】
一方、特許文献2に開示された超音波複合振動装置は、各振動子ユニットを各振動の波長が一致する周波数で駆動することが可能であるため、各振動変位の節位置が一致させることができ、固定が容易である。しかしながら、特許文献2に開示された超音波複合振動装置では、2つの振動子ユニットを用いる必要があるため、装置の大型化を招くこととなる。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、単一の振動子ユニットによって複合振動を発生させる超音波複合振動装置において、外部への固定を容易とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、縦振動を発生させる振動素子を含む振動子ユニットと、上記振動子ユニットに接続されて上記縦振動の伝搬方向に沿った軸芯に沿って延伸されると共に上記縦振動に対して共振する柱状のホーンとを備える超音波複合振動装置であって、上記ホーンが、上記軸芯を含む平面を対称面とする対称形状であると共に互いに締結されることなくスリットを間に挟んで対向配置される一対の振動片と、上記軸芯に沿った方向の一端側が上記振動子ユニットと接続されると共に上記軸芯に沿った方向の他端側に上記振動片が接続された基部とを有するという構成を採用する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記振動片が、上記軸芯と直交する断面形状が上記対称面と平行な長辺と上記対称面と直交する短辺とを有する矩形状とされた板形状とされているという構成を採用する。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記対称面と直交する方向の上記振動片の厚さ寸法は、上記対称面から上記基部の外壁面までの寸法よりも小さいという構成を採用する。
【0011】
第4の発明は、上記第2または第3の発明において、上記軸芯に沿った方向から見た上記振動片の幅寸法が、上記基部の幅寸法と一致するという構成を採用する。
【0012】
第5の発明は、上記第1~第4いずれかの発明において、上記振動片と上記基部との接続箇所にフィレットが設けられているという構成を採用する。
【0013】
第6の発明は、上記第1~第5いずれかの発明において、上記振動片の上記基部と反対側の先端が自由端とされているという構成を採用する。
【0014】
第7の発明は、上記第1~第6いずれかの発明において、上記基部における上記縦振動の節となる位置に合わせて上記基部の外壁面から突出するフランジが設けられているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、振動子ユニットによって発生された縦振動が振動片に伝達されると、振動片がたわむことによってたわみ振動が発生する。つまり、本発明においては、縦振動の一部が振動片によってたわみ振動に変換される。このため、本発明によれば、単一の振動素子によって複合振動を発生させることが可能となる。
【0016】
さらに、本発明においては、スリットを間に挟むように対向配置された一対の振動片を備えており、これらの振動片がホーンの軸芯を含む平面を対称面とする対称形状とされている。このため、一対の振動片が接続された基部においては、一方の振動片で発生されたたわみ振動と、他方の振動片で発生されたたわみ振動とが打ち消し合い、たわみ振動によって振動することを防止できる。この結果、基部は、振動素子で発生された縦振動のみによって振動され、この縦振動の節位置では振動による変位が生じない。
【0017】
このように、本発明によれば、単一の振動子ユニットによって複合振動を発生させることができると共に、ホーンの基部にて振動しない箇所を設けることが可能となる。したがって、本発明によれば、単一の振動子ユニットによって複合振動を発生させる超音波複合振動装置において、外部への固定を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態における超音波複合振動装置の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態における超音波複合振動装置の側面図である。
図3図2のA-A断面図である。
図4】縦振動の周波数が60.60kHzの場合の超音波複合振動装置の振動分布の結果である。
図5図4に示す振動分布の結果に超音波複合振動装置を重ねた図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る超音波複合振動装置の一実施形態について説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態における超音波複合振動装置1の斜視図である。また、図2は、本発明の一実施形態における超音波複合振動装置1の側面図である。本実施形態の超音波複合振動装置1は、2つの振動モード(縦振動とたわみ振動)が複合された超音波振動を発生させるものである。これらの図に示すように、本実施形態の超音波複合振動装置1は、振動子ユニット2と、ホーン3とを備えている。
【0021】
本実施形態の超音波複合振動装置1は、図1に示すように、軸芯Lに沿って延びる略棒状の形状とされている。なお、以下、軸芯Lに沿った方向を軸芯方向と称する。振動子ユニット2とホーン3とは、軸芯方向に配列されており、不図示のボルトによって固定されている。
【0022】
振動子ユニット2は、給電されることによって縦振動を発生させる圧電素子2a(振動素子)と、圧電素子2aを挟持するブロック2bとを備えている。圧電素子2aを間に挟み込むようにして2つブロック2bが配置されている。これら2つのブロック2bと圧電素子2aとは、不図示のボルトによって締結されている。振動子ユニット2は、軸芯Lを中心とする円柱状の形状とされており、軸芯方向に沿って配列された圧電素子2aと2つのブロック2bとを有している。このような振動子ユニット2は、圧電素子2aによって軸芯方向に沿って伝搬される縦振動を発生させる。
【0023】
本実施形態において、このような振動子ユニット2は、圧電素子2aがブロック2bによって挟持されたランジュバン型振動素子とされている。なお、圧電素子2aに換えて、磁歪素子、電歪素子などを用いることも可能である。
【0024】
ホーン3は、振動子ユニット2に接続されて縦振動の伝搬方向に沿った軸芯Lに沿って延伸されると共に縦振動に対して共振する柱状の部材である。このホーン3は、振動子ユニット2から伝達される縦振動に対して共振する部材であり、例えばジュラルミンによって形成されている。ホーン3は、基部3aと、一対の振動片3bと、フィレット3cと、フランジ3dとを備えている。
【0025】
例えば図1に示すように、基部3aは、断面が正方形の四角柱形状とされており、基部3aの軸芯が超音波複合振動装置1の軸芯Lと重なるように配置されている。なお、基部3aは、必ずしも四角柱形状である必要はなく、断面が円形の円柱形状や断面が四角以外の多角形状の角柱形状であっても良い。この基部3aの軸芯方向における一端側が振動子ユニット2と接続され、軸芯方向における他端側に振動片3bが接続されている。
【0026】
一対の振動片3bは、根本端が振動子ユニット2と接続された基部3aの先端に接続されている。図3は、図2のA-A断面図である。図2図3に示すように、本実施形態において、各々の振動片3bは、表裏面が平面とされた板形状とされており、スリットSを間に挟んで対向配置されている。一方の振動片3bの表裏面と他方の振動片3bの表裏面とが平行となるように、各々の振動片3bは配置されている。
【0027】
また、一方の振動片3bの長さ寸法D1(軸芯方向における長さ寸法)と、他方の振動片3bの長さ寸法D1とは一致されている。また、一方の振動片3bの幅寸法D2(軸芯方向と直交し表裏面と平行な方向の長さ寸法)と、他方の振動片3bの幅寸法D2とは一致されている。また、一方の振動片3bの厚さ寸法D3(表裏面と直交する方向(後述する対称面Mと直交する方向)の長さ寸法)と、他方の振動片3bの厚さ寸法D3とは一致されている。
【0028】
このように、本実施形態の超音波複合振動装置1においては、軸芯Lを含む1つの平面を対称面Mとした場合に、この対称面Mに対して一方の振動片3bと他方の振動片3bとが対称な形状とされている。つまり、一方の振動片3bと他方の振動片3bとは、軸芯Lを含む平面を対称面とする対称形状とされている。
【0029】
このような本実施形態の超音波複合振動装置1において、各々の振動片3bは、板形状とされており、図3に示すように軸芯Lと直交する断面形状が対称面Mと平行な長辺と対称面Mと直交する短辺とを有する矩形状とされている。
【0030】
また、図3に示すように、各々の振動片3bの幅寸法D2は、基部3aの幅寸法D5と一致している。つまり、軸芯方向から見た振動片の幅寸法D2が、基部3aの幅寸法D5と一致している。
【0031】
また、対称面Mと直交する方向の厚さ寸法D3は、軸芯方向から見て対称面Mから基部3aの外壁面までの寸法D4よりも小さい。また、各々の振動片3bの外側面(対称面Mと反対側の面)は、基部3aの外壁面よりも軸芯L側に配置されている。このため、ホーン3の先端部分には、ホーン3の径方向外側から対称面Mに向けて窪む凹部が設けられている。
【0032】
また、本実施形態においては、図2に示すように、振動片3bの基部3aと反対側の先端が自由端とされている。このように振動片3bの基部3aと反対側の先端が自由端とされることによって振動片3bを対称面Mと直交する方向に大きく変位させることが可能となる。
【0033】
このような各々の振動片3bは、互いに締結されておらず、振動子ユニット2から縦振動が付与されると、対称面Mと直交する方向に変位するように振動する。これによって、各々の振動片3bは、縦振動の一部をたわみ振動に変換する。このような振動片3bは、振動子ユニット2から伝搬される縦振動によって軸芯方向に変位すると共に、上記たわみ振動によって対称面Mと直交する方向に変位する。この結果、振動片3bが、縦振動とたわみ振動とが複合された超音波振動にて振動する。
【0034】
フィレット3cは、振動片3bと基部3aとの接続箇所に対して設けられており、振動片3bと基部3aとの接続箇所を補強する。このようなフィレット3cは、ホーン3の径方向外側から対称面Mに向けて窪む凹部に配置されている。このようなフィレット3cによって、振動片3bがたわみ振動することによって振動片3bと基部3aとの接続箇所に生じる応力を緩和することができる。
【0035】
フランジ3dは、基部3aの外壁面から突出して設けられている。本実施形態の超音波複合振動装置1においては、2つのフランジ3dが設けられている。これらのフランジ3dは、基部3aにおける縦振動の節となる位置に合わせて設置されている。
【0036】
このようにホーン3は、軸芯Lを含む平面を対称面とする対称形状であると共に互いに締結されることなくスリットSを間に挟んで対向配置される一対の振動片3bと、軸芯Lに沿った方向の一端側が振動子ユニット2と接続されると共に軸芯Lに沿った方向の他端側に振動片3bが接続された基部3aとを有している。
【0037】
このような本実施形態の超音波複合振動装置1にて振動子ユニット2の圧電素子2aに給電されると、圧電素子2aが振動することによって、軸芯方向に伝搬される縦振動が発生する。圧電素子2aによって発生された縦振動が振動片3bに伝達されると、振動片3bがたわむことによってたわみ振動が発生する。つまり、本実施形態の超音波複合振動装置1においては、縦振動の一部が振動片3bによってたわみ振動に変換される。このため、単一の振動子ユニット2によって複合振動を発生させることが可能となる。
【0038】
さらに、本実施形態の超音波複合振動装置1においては、スリットSを間に挟むように対向配置された一対の振動片3bを備えており、これらの振動片3bがホーン3の軸芯(すなわち超音波複合振動装置1の軸芯L)を含む平面を対称面とする対称形状とされている。このような本実施形態の超音波複合振動装置1では、一方の振動片3bと他方の振動片3bとでは、たわみ振動の位相が反転する。振動片3bで発生されたたわみ振動は、基部3aにも伝搬される。ただし、一方の振動片3bと他方の振動片3bとでたわみ振動の位相が反転するため、基部3aにおいてはたわみ振動が打ち消される。
【0039】
このように、一対の振動片3bが接続された基部3aにおいては、一方の振動片3bで発生されたたわみ振動と、他方の振動片3bで発生されたたわみ振動とが打ち消し合い、たわみ振動によって振動することを防止できる。この結果、基部3aは、振動子ユニット2で発生された縦振動のみによって振動され、この縦振動の節位置では振動による変位が生じない。
【0040】
このように、本実施形態の超音波複合振動装置1によれば、単一の振動子ユニット2によって複合振動を発生させることができると共に、ホーン3の基部3aにて振動しない箇所を設けることが可能となる。したがって、本実施形態の超音波複合振動装置1によれば、外部への固定を容易に行うことが可能となる。
【0041】
また、本実施形態の超音波複合振動装置1においては、振動片3bが、軸芯Lと直交する断面形状が対称面Mと平行な長辺と対称面Mと直交する短辺とを有する矩形状とされた板形状とされている。このため、振動片3bの形状が単純となり、振動片3bの成形が容易となる。
【0042】
また、本実施形態の超音波複合振動装置1においては、対称面Mと直交する方向の振動片3bの厚さ寸法が、対称面Mから基部3aの外壁面までの寸法よりも小さい。このため、振動片3bが薄い板状となり、たわみ振動を効率的に発生させることが可能となる。
【0043】
また、本実施形態の超音波複合振動装置1においては、軸芯Lに沿った方向から見た振動片3bの幅寸法D2が、基部3aの幅寸法D5と一致している。このため、例えば、基部3aの幅寸法D5及び振動片3bの幅寸法D2と一致する幅寸法のブロック体から基部3a及び振動片3bを削り出しにて形成する場合に、ブロック体の削る部位を小さくすることが可能となる。
【0044】
また、本実施形態の超音波複合振動装置1においては、振動片3bと基部3aとの接続箇所にフィレット3cが設けられている。このため、振動片3bと基部3aとの接続箇所に生じる応力を緩和することができる。
【0045】
また、本実施形態の超音波複合振動装置1においては、振動片3bの基部3aと反対側の先端が自由端とされている。このため、振動片3bのたわみ振動の振幅を大きくすることが可能となる。
【0046】
また、本実施形態の超音波複合振動装置1においては、基部3aにおける縦振動の節となる位置に合わせて基部3aの外壁面から突出するフランジ3dが設けられている。このため、外部部材をフランジ3dに固定することによって、確実かつ簡易に外部部材を基部3aの振動の節位置に接続することが可能となる。
【0047】
以下、上記実施形態の超音波複合振動装置1の実施例について、図4及び図5を参照して説明する。
【0048】
本実施例では、振動子ユニット2として、直径が15mmであり、60kHz用ボルト締めランジュバン型縦振動子(HEC-1560P4B、本多電子製)を用いた。また、ホーン3は、A2017(ジュラルミン)によって形成し、振動子ユニット2に対してねじにて結合した。ホーン3は、軸芯方向にて先端から20mmまでの位置に0.2mmのスリットSが設けられている。また、ホーン3は、基部3aは断面の一辺を15mmとした。つまり、本実施例では、上記実施形態における振動片3bの幅寸法D2及び基部3aの幅寸法D5が15mmとされている。振動片3bの厚さ寸法D3は3.7mmとした。スリットSに対し面対称な形状の振動片3bを上記寸法とすることで、たわみ振動を誘起しやすくした。
【0049】
また、ホーン3のフランジ3dは厚さ寸法(軸芯方向の長さ寸法)を1.0mm、基部3aから突出寸法を5.0mmとし、ホーン3の根本から軸芯方向に19.5mm変位した位置に設けた。また、超音波複合振動装置1の軸芯方向における全長は119mmとした。振動子ユニット2の軸芯方向における全長は39mm、ホーン3の軸芯方向における全長は80mmとした。また、図2に示すように、軸芯方向(縦振動の変位方向)はz方向、たわみ振動の変位方向はx方向、z方向及びx方向と直交する方向をy方向と定義した。
【0050】
本実施例では、COMSOL Multiphysics 5.5を用いた有限要素法による検討を行い、振動片3bで縦振動とたわみ振動の複合振動が得られ、また一対の振動片3bを面対称形状とすることでたわみ振動の伝搬を打ち消すことができるか検討を行った。検討は、固有値解析にて行った。圧電素子2aはPZTによって形成し、振動子ユニット2とホーン3とを接続するねじ等は鉄合金とした。また、フランジ3dは、両側から3mmまでの範囲においてx、y、zの各方向の変位を0とする固定拘束とした。
【0051】
図4は、付与される縦振動の周波数が60.60kHzの場合の超音波複合振動装置1のx、y、z方向の振動分布の結果である。また、図5は、図4に示す振動分布の結果に超音波複合振動装置1を重ねた図である。なお、図4及び図5の横軸は、軸芯方向における位置(軸芯方向位置)を示しており、超音波複合振動装置1の振動子ユニット2のホーン3と反対側の端部位置を0としている。また、図4及び図5の縦軸は、縦振動の最大値で規格化した各振動変位の値を示している。なお、図4及び図5に示す振動分布の結果は、スリットSを避け、軸芯L付近の部位の振動結果に基づいている。
【0052】
縦振動(z方向変位)に着目すると、超音波複合振動装置1の軸芯方向にて3箇所にて縦振動による変位が生じていない部位(節位置)が確認された。A2017で形成されたホーン3における60kHzの縦振動の波長が約80mmであることを踏まえると、実施例における振動モードは、超音波複合振動装置1の全長に縦振動が1.5波長含まれるモードと考えられる。なお、超音波複合振動装置1の全長は、縦振動が1波長含まれる長さとしても良い。なお、縦振動の振動変位の最大値は、超音波複合振動装置1の先端部(すなわち振動片3b)で得られているが、これは振動片3bの厚さ寸法D3を基部3aの寸法(図3に示す寸法D4)に対して小さくしたために、縦振動の拡大が生じたためである。
【0053】
また、図4及び図5には示されていないが、固有値解析の結果、軸芯方向位置110mm付近のスリットSがある部分において、スリットSの上側(一方の振動片3b)ではx方向の変位、スリットSの下側(他方の振動片3b)では-x方向の変位が生じていることがわかった。これより、スリットSを形成して面対称構造とすることで発生するたわみ振動の位相を反転させることができることがわかった。つまり、一方の振動片3bと他方の振動片3bとでたわみ振動の位相を反転させることができることがわかった。
【0054】
また、図4及び図5に示されているように、縦振動であるz方向の振動変位は、先端部で最大値となっていることがわかった。次に、たわみ振動であるx方向の振動変位は、軸芯方向位置が99~119mmの範囲でのみで分布しており、軸芯方向位置が0~99mmの範囲ではほぼ0となっていることがわかった。これより、ホーン3を面対称構造とすることで先端部、すなわち振動片3bのみでたわみ振動が発生し、それ以外の部分ではたわみ振動が打ち消されることがわかった。なお、x方向に直交するy方向の振動変位はすべての範囲でほぼ0であった。
【0055】
以上のように、本実施例の超音波複合振動装置1によれば、先端部である振動片3bで縦-たわみ振動(複合振動)が得られ、また先端部以外ではたわみ振動が打ち消されることがわかった。このため、図5に示すように、基部3aの縦振動の節位置に合わせてフランジ3dを設けることによってフランジ3dが振動することを防止することができる。したがって、超音波複合振動装置1によれば、固定が容易でかつ小型な単一の振動子ユニット2による超音波複合振動源となる。
【0056】
なお、基部3aにてたわみ振動が打ち消されることからわかるように、一方の振動片3bと他方の振動片3bとの両方に接続された部位ではたわみ振動が打ち消される。このため、超音波複合振動装置1に刃等のツールを取り付けて超音波振動工具として用いる場合には、ツールは、一方の振動片3bと他方の振動片3bとのいずれか一方のみに接続される。これによって、ツールが縦振動とたわみ振動とが複合された振動モードで振動することとなる。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0058】
例えば、上記実施形態においては、スリットSの軸芯方向の長さ寸法が、振動片3bの長さ寸法と一致した構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、スリットSの軸芯方向の長さ寸法は、変更可能であり、基部3aの内部まで到達する長さとすることも可能である。
【0059】
また、上記実施形態においては、軸芯方向におけるスリットSの底部にて、振動片3bと基部3aの先端面とが直角に屈曲して接続された構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、スリットSの底部が湾曲した形状とすることも可能である。
【0060】
また、上記実施形態においては、振動片3bの先端が自由端とされた構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、一方の振動片3bと他方の振動片3bとの先端が他の部位に接続された構成を採用することも可能である。このような場合であっても、2つの振動片3b同士が締結されることなくたわみ振動することを可能とすることで、複合振動を得ることが可能となる。
【0061】
また、上記実施形態においては、軸芯方向にて基部3aの断面積が一定とされた構成(すなわち基部3aの太さが一定の構成)を採用した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば振動片3bに向けて基部3aの断面積が徐々に減少する構成を採用することも可能である。
【0062】
また、上記実施形態においては、振動片3bが、表裏面が平面状の板状である構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、表裏面の一方あるいは他方が湾曲面であったり、段差を有していたりしても良い。
【符号の説明】
【0063】
1……超音波複合振動装置、2……振動子ユニット、2a……圧電素子(振動素子)、2b……ブロック、3……ホーン、3a……基部、3b……振動片、3c……フィレット、3d……フランジ、L……軸芯、M……対称面、S……スリット
図1
図2
図3
図4
図5