IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エアテックジャパンの特許一覧

<>
  • 特許-止水ジョイント 図1
  • 特許-止水ジョイント 図2
  • 特許-止水ジョイント 図3
  • 特許-止水ジョイント 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】止水ジョイント
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/04 20060101AFI20240529BHJP
   E04B 1/684 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
E04G5/04 D
E04B1/684 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021100181
(22)【出願日】2021-06-16
(65)【公開番号】P2022191750
(43)【公開日】2022-12-28
【審査請求日】2024-02-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】394009289
【氏名又は名称】株式会社エアテックジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】長屋 雄貴
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-24340(JP,A)
【文献】特開2018-119313(JP,A)
【文献】実開平6-85856(JP,U)
【文献】特開平3-194060(JP,A)
【文献】特開2016-223086(JP,A)
【文献】特開2021-110447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B1/684
2/56-2/70
2/88-2/96
E04G1/00-19/00
25/00-27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体の前面に前面パネルを離隔して配置し、前記躯体にアンカーを埋設したボルト固定孔と、該ボルト固定孔の前方の前記前面パネルに穿孔したパネル孔とを設けた建造物において、前記ボルト固定孔と前記パネル孔との間に掛け渡す金属ボルトから成る止水ジョイントであって、
前記金属ボルトは先端に前記アンカーの内ねじに螺合する外ねじを有し、前記金属ボルトの先端部には前記躯体のボルト固定孔に嵌合する合成ゴムから成る第1環状防水ゴムを挿通し、後端部には前記前面パネルのパネル孔に嵌合する合成ゴムから成る第2環状防水ゴムを挿通したことを特徴とする止水ジョイント。
【請求項2】
前記金属ボルトの後端面に、前記金属ボルトを回転する回転作用孔を有することを特徴とする請求項1に記載の止水ジョイント。
【請求項3】
前記金属ボルトの前記回転作用孔内に前記前面パネルのパネル孔を閉塞する表面部材を取り付けることを特徴とする請求項2に記載の止水ジョイント。
【請求項4】
前記表面部材の表面に前記前面パネルと同様の色彩、模様を付したことを特徴とする請求項3に記載の止水ジョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の躯体に設けたボルト固定孔及びその前面パネルに設けたパネル孔を防水するための止水ジョイントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビルやマンション等の建造物においては、建築性能を保守するためには、概ね10~15年毎に大規模修繕工事を行う必要がある。このとき、外装に対してクリーニングや塗装をすることがあり、周囲に工事用の仮設足場を周設したり、クレーンで作業員を乗せたゴンドラを吊り下げて作業をしなければならない。
【0003】
特許文献1には躯体にナット状の止具から成るボルト固定孔を形成し、足場用ボルトをボルト固定孔にねじ込むことにより固定し、この足場用ボルトを足掛かりとして足場を組むことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-24340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、建造物によっては躯体の前面に数cmの間隔をおいて、乾式タイルパネル等から成る前面パネルを取り付けていることがある。このような場合に、ボルト固定孔を利用して足場を組むことは可能であるが、足場用ボルトを取り外した後のボルト固定孔に対する防水処理が、前面パネルが邪魔して十分にできない。この防水処理を完全に実施しておかないと、次回の修繕工事時においてボルト固定孔内のナットが腐食等により劣化していることがあり、前回使用したボルト固定孔を利用できないことがある。
【0006】
本発明の目的は、前述の課題を解消し、躯体表面に前面パネルを配して建造物において、足場用ボルトを取り外した後の、ボルト固定孔等に対する防水対策を容易にかつ確実に実施し得る止水ジョイントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するための本発明に係る止水ジョイントは、躯体の前面に前面パネルを離隔して配置し、前記躯体にアンカーを埋設したボルト固定孔と、該ボルト固定孔の前方の前記前面パネルに穿孔したパネル孔とを設けた建造物において、前記ボルト固定孔と前記パネル孔との間に掛け渡す金属ボルトから成る止水ジョイントであって、前記金属ボルトは先端に前記アンカーの内ねじに螺合する外ねじを有し、前記金属ボルトの先端部には前記躯体のボルト固定孔に嵌合する合成ゴムから成る第1環状防水ゴムを挿通し、後端部には前記前面パネルのパネル孔に嵌合する合成ゴムから成る第2環状防水ゴムを挿通したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る止水ジョイントによれば、工事後の躯体のボルト固定孔、及び前面パネルのパネル孔への浸水を防止すると共に、ボルト固定孔に埋め込んだアンカー3の使用可能状態を維持して、次回の工事時において、ボルト固定孔、パネル孔を容易に利用することできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】躯体のボルト固定孔と前面パネルのパネル孔の説明図である。
図2】ボルト固定孔等に足場用ボルトを取り付けた状態の断面図である。
図3】止水ジョイントと付属の表装部材の斜視図である。
図4】止水ジョイント、表装部材を使用した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は躯体Bに足場用ボルトを固定するためのボルト固定孔1を形成し、躯体Bの前面に離隔して配置した前面パネルPにパネル孔2を穿孔した状態の説明図である。なお、前面パネルPは躯体Bに対して、取付金具により固定されている。
【0011】
補修工事に際して、前面パネルPの外側からドリルにより、前面パネルPに例えば径24mmのパネル孔2を穿孔し、更にその奥の躯体Bに例えば径18mmの有底のボルト固定孔1を穿孔する。前面パネルPのパネル孔2の大きさは、作業上の観点から、躯体Bのボルト固定孔1よりも大きくされる。
【0012】
ボルト固定孔1には、金属体から成り、内ねじ3aを有する円筒状のアンカー3が挿入されている。このアンカー3の外周面には、ボルト固定孔1から抜け難くするためのローレット溝が刻設され、アンカー3の先端には長手方向に数本のスリット3bが形成されている。更に、スリット3b側のアンカー3には、先端の径を大きくしたテーパ形状を有する金属製の円錐部材4が嵌合されている。
【0013】
先端に円錐部材4を仮嵌合したアンカー3を、ボルト固定孔1内に打設具等を用いて打ち込むと、アンカー3内に円錐部材4が嵌まり込んでゆくことにより、スリット3bによってアンカー3の先端の径が拡がり、アンカー3がボルト固定孔1内に密着して固定される。なお、後述の環状防水ゴムを嵌合するために、アンカー3はボルト固定孔1の入口部よりも10mm以上に深く挿入することが好ましい。また、アンカー3の周囲に接着剤を充填しておくと、アンカー3は更にボルト固定孔1内に強固に固定されることになる。
【0014】
足場組立時には、図2に示すように、このボルト固定孔1に、例えば径が12mm、長さが40cm程度で、先端に外ねじ5aを刻設した足場用ボルト5を前面パネルPのパネル孔2を介して挿入し、先端の外ねじ5aをアンカー3の内ねじ3aに螺合すると、足場用ボルト5は躯体Bに対して強固に固定されることになる。
【0015】
このようにして、多数個の足場用ボルト5を躯体Bの下方から、上方に向けて順次に取り付けてゆき、前面パネルPの外側の足場用ボルト5間に通路として足場板を掛け渡すと、作業員による作業が可能となる。
【0016】
修繕工事等が終了し、足場用ボルト5を抜き取った後の躯体Bのボルト固定孔1、前面パネルPのパネル孔2には、防水対策等を施しておく必要がある。これを怠ると、美観も悪く、土砂等が詰まったり、腐蝕が生じたりして、次回の補修工事に際してボルト固定孔1等を再利用できなくなる。
【0017】
図3はこのために用いる止水ジョイント10と付属の表装部材21の斜視図であり、補修工事後のボルト固定孔1、パネル孔2を閉塞するための用具である。止水ジョイント10は例えば直径12mm、長さ100mm程度の好ましくはステンレス製の金属ボルトから成り、図1に示すアンカー3の内ねじ3aに螺合する外ねじ11が全長に渡って刻設されている。また、止水ジョイント10の後端面には、六角レンチを嵌合する六角孔12から成る回転作用孔が形成されている。
【0018】
止水ジョイント10の先端の外ねじ11の内側に、合成ゴム等から成る円環状の第1環状防水ゴム13が挿通され、止水ジョイント10の後端には同様な円環状の第2環状防水ゴム14が挿通されている。第1環状防水ゴム13の外径は躯体Bのボルト固定孔1の径18mmに相当し、第2環状防水ゴム14の外径は前面パネルPのパネル孔2の径24mmに相当し、第1環状防水ゴム13の外径は第2環状防水ゴム14の外径よりも小さくされている。
【0019】
また付属部品として、表装部材21が使用され、この表装部材21は施工後の前面パネルPのパネル孔2を覆うものであり、止水ジョイント10を取り付けた後に、その後部部の六角孔12に固定して使用する。表装部材21の円形の外面21aの内側に、スリットを設けるなどの径方向に弾発性を有し、六角孔12に挿入する挿込ピン21bが、前方に向けて突出されている。表装部材21の外面21aは、前面パネルPのパネル孔2に入り込むために、パネル孔2と同径とされており、外面21aの色や模様は前面パネルPと同様にされている。
【0020】
この止水ジョイント10の使用に際しては、止水ジョイント10を前面パネルPの表面からアンカー3の内ねじ3aに至る長さに、先端を切断するなどして調整しておく。止水ジョイント10の先端側に第1環状防水ゴム13、後端側に第2環状防水ゴム14を挿着する。この場合に、止水ジョイント10には全長に渡り外ねじ11が刻設されているので、第1、第2環状防水ゴム13、14は止水ジョイント10上を移動することはない。
【0021】
次に、止水ジョイント10の先端に、緩み防止、防水のために合成樹脂製の図示しないシールテープを巻き付け、更に第1環状防水ゴム13の先端側に止水パテ15を塗布し、図4に示すように、止水ジョイント10の先端を、第1環状防水ゴム13と共に、前面パネルPのパネル孔2を介してボルト固定孔1内に送り込む。
【0022】
この状態において、止水ジョイント10の後端部の六角孔12に六角レンチを嵌合して止水ジョイント10を回転すると、外ねじ11はシールテープと共にアンカー3の内ねじ3aに螺合してゆき、シールテープ、止水パテ15、第1環状防水ゴム13により、ボルト固定孔1の入口部は密封される。このとき、止水ジョイント10の螺合に従って、後端の第2環状防水ゴム14がパネル孔2内に挿入され、パネル孔2は第2環状防水ゴム14により雨水等の浸入が防止される状態となる。
【0023】
続いて、パネル孔2内に位置する止水ジョイント10の後端面の六角孔12に、表装部材21の挿込ピン21bを挿入し、外面21aを前面パネルPと同一面とする。挿込ピン21bは径方向に弾発性を有するので、パネル孔2から容易に脱落することはない。
【0024】
表装部材21の外面21aの色等を前面パネルPと同一としておけば、パネル孔2は、間近で観察しない限り見分けがつかず、建造物の美観を損なうこともない。なお、表装部材21の外面21aの径をパネル孔2よりも大きくして、パネル孔2の周囲をも覆うようにすることもできる。
【0025】
足場を必要とする次回の大規模修繕工事では、ボルト固定孔1とパネル孔2との間に掛け渡した状態の止水ジョイント10、表装部材21を取り外して、足場用ボルト5をボルト固定孔1に固定して、足場を構設することができる。
【0026】
このように、本発明に係る止水ジョイント10は、躯体Bの前面に前面パネルPを離隔して配置し、躯体Bにアンカー3を埋設したボルト固定孔1と、このボルト固定孔1の前方の前面パネルPに穿孔したパネル孔2とを設けた建造物に使用するものであり、工事後の躯体Bのボルト固定孔1、及び前面パネルPのパネル孔2への浸水を防止すると共に、建造物の壁面に埋め込んだアンカー3の使用可能状態を維持して、次回の工事時において、ボルト固定孔1、パネル孔2を利用することできる。
【符号の説明】
【0027】
1 ボルト固定孔
2 パネル孔
3 アンカー
3a 内ねじ
4 円錐部材
5 足場用ボルト
10 止水ジョイント
11 外ねじ
13、14 環状防水ゴム
21 表装部材
22 挿入スリーブ
B 躯体
P 前面パネル
図1
図2
図3
図4