IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 高田 和彦の特許一覧 ▶ 株式会社ROBOTIX JAPANの特許一覧

<>
  • 特許-清掃ドローン及び清掃システム 図1
  • 特許-清掃ドローン及び清掃システム 図2
  • 特許-清掃ドローン及び清掃システム 図3
  • 特許-清掃ドローン及び清掃システム 図4
  • 特許-清掃ドローン及び清掃システム 図5
  • 特許-清掃ドローン及び清掃システム 図6
  • 特許-清掃ドローン及び清掃システム 図7
  • 特許-清掃ドローン及び清掃システム 図8
  • 特許-清掃ドローン及び清掃システム 図9
  • 特許-清掃ドローン及び清掃システム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】清掃ドローン及び清掃システム
(51)【国際特許分類】
   B08B 1/32 20240101AFI20240529BHJP
   G05D 1/46 20240101ALI20240529BHJP
   H02S 40/10 20140101ALI20240529BHJP
   B64U 10/70 20230101ALI20240529BHJP
   B64U 101/29 20230101ALN20240529BHJP
【FI】
B08B1/32
G05D1/46
H02S40/10
B64U10/70
B64U101:29
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023071484
(22)【出願日】2023-04-25
【審査請求日】2023-06-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523147255
【氏名又は名称】高田 和彦
(73)【特許権者】
【識別番号】522426652
【氏名又は名称】株式会社ROBOTIX JAPAN
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(74)【代理人】
【識別番号】100225347
【弁理士】
【氏名又は名称】鬼澤 正徳
(72)【発明者】
【氏名】高田 和彦
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-209801(JP,A)
【文献】特許第7246662(JP,B1)
【文献】特開2021-133284(JP,A)
【文献】中国実用新案第216915420(CN,U)
【文献】韓国登録特許第10-2377859(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0247347(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/32
B08B 3/02
G05D 1/46
H02S 40/10
B64U 10/70
B64U 101/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
清掃対象に接触されると前記清掃対象を清掃する清掃部と、
前記清掃部に取り付けられ、かつ、前記清掃部を前記清掃対象へ向けて移動させる飛行部と、
を有する清掃ドローンであって、
前記清掃部の姿勢を調整する姿勢調整機構と、
前記飛行部を制御する制御部と、
前記清掃部が前記清掃対象に接触される前に、前記清掃対象の表面の傾斜角度を検出する傾斜角度検出部と、
前記清掃対象の角部の位置を検出する角部検出装置と、
を有し、
前記清掃部は、
前記清掃対象の表面に接触される清掃ローラと、
前記清掃対象の表面に接触されて前記清掃部を前記清掃対象の表面に沿って移動させるキャタピラーと、
前記清掃対象の表面に付着している異物を拭き取るワイプと、
を有し、
前記姿勢調整機構は、前記清掃部が前記清掃対象に接触される前に、前記清掃ローラの外周面及び前記キャタピラーのベルトが前記清掃対象に接触されるように、前記清掃部の姿勢を前記傾斜角度に基づいて調整し、
前記制御部は、前記清掃部が前記清掃対象に接触される前に、前記清掃対象の平面視で、前記飛行部を前記清掃対象の何れかの角部の内側に位置させ、かつ、前記飛行部を前記清掃対象の縁に沿って前進させるように、前記飛行部の向きを調整する、清掃ドローン。
【請求項2】
請求項1記載の清掃ドローンであって、
前記制御部は、前記清掃部が前記清掃対象に接触される前に前記飛行部の向きを調整するにあたり、前記飛行部が前進する向きで前記清掃ローラより後方に前記ワイプを位置させる、清掃ドローン。
【請求項3】
請求項記載の清掃ドローンであって、
前記飛行部は、本体部を有し、
前記本体部を重力の作用方向で真上から見た平面視で、前記清掃ローラと前記ワイプとが前記本体部の中心線に沿った方向に間隔をおいて配置され、
前記制御部は、前記清掃部が前記清掃対象に接触される前に前記飛行部の向きを調整するにあたり、前記中心線と前記清掃対象の縁とが平行になるように、前記飛行部の向きを調整する、清掃ドローン。
【請求項4】
請求項1記載の清掃ドローンであって、
前記清掃対象は、ソーラーパネルを含み
記制御部は、前記清掃部を前記ソーラーパネルの表面のうち前記角部の内側に着陸させる、清掃ドローン。
【請求項5】
清掃対象を清掃する複数の清掃ドローンと、
複数の前記清掃ドローンとの間で通信が可能であり、かつ、複数の前記清掃ドローンを制御するコンピュータと、
を有する清掃システムであって、
複数の前記清掃ドローンは、
前記清掃対象に接触されると前記清掃対象を清掃する清掃部と、
前記清掃部に取り付けられ、かつ、前記清掃部を前記清掃対象へ向けて移動させる飛行部と、
前記清掃部の姿勢を調整する姿勢調整機構と、
前記飛行部を制御する制御部と、
前記清掃部が前記清掃対象に接触される前に、前記清掃対象の表面の傾斜角度を検出する傾斜角度検出部と、
前記清掃対象の角部の位置を検出する角部検出装置と、
をそれぞれ有し、
前記コンピュータは、複数の前記清掃ドローンにより、同一の所在地に設置されている異なる前記清掃対象を別々に清掃させる補助情報を、複数の前記清掃ドローンへそれぞれ送信する管理部を有し、
前記清掃部は、
前記清掃対象の表面に接触される清掃ローラと、
前記清掃対象の表面に接触されて前記清掃部を前記清掃対象の表面に沿って移動させるキャタピラーと、
前記清掃対象の表面に付着している異物を拭き取るワイプと、
を有し、
前記姿勢調整機構は、前記清掃部が前記清掃対象に接触される前に、前記清掃ローラの外周面及び前記キャタピラーのベルトが前記清掃対象に接触されるように、前記清掃部の姿勢を前記傾斜角度に基づいて調整し、
前記制御部は、前記清掃部が前記清掃対象に接触される前に、前記清掃対象の平面視で、前記飛行部を前記清掃対象の何れかの角部の内側に位置させ、かつ、前記飛行部を前記清掃対象の縁に沿って前進させるように、前記飛行部の向きを調整する、清掃システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、清掃対象を清掃するために用いられる清掃ドローン、及び清掃ドローンを管理する清掃システムに関する。
【背景技術】
【0002】
清掃対象、例えば、ソーラーパネルを清掃するために用いられる清掃ドローンの一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された清掃ドローンは、ドローンと、ドローンに取り付けられた清掃ユニットと、を有する。清掃ユニットは、タンクと、軸受部材と、上部フレームと、2本のショックアブソーバーと、補強フレームと、下部フレームと、散水ノズルと、電動縦回転ロータブラシとを備えている。軸受部材は、格納用ヒンジを介して上部フレームを回転可能に支持している。補強フレームは、ダンパーゴムとダンパーゴムとの間に延在する棒状のカーボンパイプである。下部フレームは、ダンパーゴム及び格納用ヒンジに連結されている。散水ノズル及び電動縦回転ロータブラシは、下部フレームに設けられている。
【0003】
特許文献1に記載されている清掃ドローンは、着陸時に電動縦回転ロータブラシがソーラーパネルへ押し付けられてダンパーゴムが変形し、電動縦回転ロータブラシがソーラーパネルに圧着される。さらに、ローンの着陸時において、上部フレームが格納用ヒンジを介して所定方向に回動し、電動縦回転ロータブラシが鉛直方向に関して着陸用のスキッドに収まるように配置される、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-133284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、特許文献1に記載されている清掃ドローンは、清掃部(電動縦回転ロータブラシ)が清掃対象(ソーラーパネル)へ押し付けられて、清掃部が移動するため、その反力を飛行部(本体フレーム)が受け、飛行部の姿勢が不安定になる、という課題を認識した。
【0006】
本開示の目的は、飛行部の姿勢が不安定になることを抑制できる清掃ドローン、及び清掃ドローンを管理する清掃システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、清掃対象に接触されると前記清掃対象を清掃する清掃部と、前記清掃部に取り付けられ、かつ、前記清掃部を前記清掃対象へ向けて移動させる飛行部と、を有する清掃ドローンであって、前記清掃部の姿勢を調整する姿勢調整機構と、前記飛行部を制御する制御部と、前記清掃部が前記清掃対象に接触される前に、前記清掃対象の表面の傾斜角度を検出する傾斜角度検出部と、を有し、前記姿勢調整機構は、前記清掃部が前記清掃対象に接触される前に、前記清掃部の姿勢を前記傾斜角度に基づいて調整する、清掃ドローンである。
【0008】
本開示の前記清掃部は、前記清掃対象の表面に接触される清掃ローラと、前記清掃対象の表面に接触されて前記清掃部を前記対象の表面に沿って移動させるキャタピラーと、を有し、前記姿勢調整機構は、前記清掃部が前記清掃対象へ向けて移動されると、前記清掃ローラの外周面及び前記キャタピラーのベルトが前記清掃対象に接触されるように、前記清掃部の姿勢を前記傾斜角度に基づいて調整する構成でもよい。
【0009】
本開示の前記姿勢調整機構は、前記飛行部に取り付けられた第1ブラケットと、前記第1ブラケットに取り付けられ、かつ、前記飛行部の平面視で、前記第1ブラケットに対し第1仮想線を中心として作動可能な接続具と、前記清掃部に取り付けられ、かつ、前記飛行部の平面視で、前記接続具に対し前記第1仮想線と交差する第2仮想線を中心として作動可能な第2ブラケットと、前記接続具を前記第1仮想線を中心として作動及び停止させる第1電動モータと、前記第2ブラケットを前記第2仮想線を中心として作動及び停止させる第2電動モータと、を有していてもよい。
【0010】
本開示の前記清掃部は、前記清掃対象に向けて洗浄液を噴射する噴射ノズルを有していてもよい。
【0011】
本開示の前記清掃対象は、ソーラーパネルを含み、前記ソーラーパネルの角部の位置を検出する角部検出装置が、更に設けられ、前記制御部は、前記清掃部を前記ソーラーパネルの表面のうち前記角部の内側に着陸させてもよい。
【0012】
本開示は、清掃対象を清掃する複数の清掃ドローンと、複数の前記清掃ドローンとの間で通信が可能であり、かつ、複数の前記清掃ドローンを制御するコンピュータと、を有する清掃システムであって、複数の前記清掃ドローンは、前記清掃対象に接触されると前記清掃対象を清掃する清掃部と、前記清掃部に取り付けられ、かつ、前記清掃部を前記清掃対象へ向けて移動させる飛行部と、前記清掃部の姿勢を調整する姿勢調整機構と、前記飛行部を制御する制御部と、前記清掃部が前記清掃対象に接触される前に、前記清掃対象の表面の傾斜角度を検出する傾斜角度検出部と、をそれぞれ有し、前記姿勢調整機構は、前記清掃部が前記清掃対象に接触される前に、前記清掃部の姿勢を前記傾斜角度に基づいて調整し、前記コンピュータは、複数の前記清掃ドローンにより、同一の所在地に設置されている異なる前記清掃対象を別々に清掃させる補助情報を、複数の前記清掃ドローンへそれぞれ送信する管理部を有する、清掃システムである。
【発明の効果】
【0013】
本開示の清掃ドローンによれば、清掃部が清掃対象に接触される前に、清掃対象の表面の傾斜角度を検出し、清掃部が清掃対象に接触される前に、清掃部の姿勢を傾斜角度に基づいて調整できる。したがって、清掃ドローンが清掃対象に接触する際に、飛行部が受ける反力を低減でき、飛行部の姿勢が不安定になることを抑制できる。
【0014】
本開示の清掃ドローンによれば、姿勢調整機構は、清掃ローラの外周面及びキャタピラーのベルトが清掃対象に接触されるように、清掃部の姿勢を傾斜角度に基づいて調整する。したがって、清掃ドローンが清掃対象に接触する際に、飛行部が受ける反力を、一層確実に低減できる。
【0015】
本開示の清掃ドローンによれば、接続具を第1ブラケットに対し第1仮想線を中心として作動させること、または、第2ブラケットを第2仮想線を中心として作動させること、のうち、少なくとも一方を行うことにより、清掃部の姿勢を調整できる。
【0016】
本開示の清掃ドローンによれば、噴射ノズルが、清掃対象に向けて洗浄液を噴射する。したがって、清掃対象の汚れを除去し易くなる。
【0017】
本開示の清掃ドローンによれば、ソーラーパネルの角部の位置を検出し、清掃部をソーラーパネルの表面のうち角部の内側に着陸させることができる。
【0018】
本開示の清掃システムによれば、清掃部が清掃対象に接触される前に、清掃対象の表面の傾斜角度を検出し、かつ、清掃部が清掃対象に接触される前に、清掃部の姿勢を傾斜角度に基づいて調整できる。したがって、清掃ドローンが清掃対象上に接触する際に、飛行部が受ける反力を低減でき、飛行部の姿勢が不安定になることを抑制できる。また、コンピュータは、複数の清掃ドローンにより、同一の所在地に設置されている異なる清掃対象を別々に清掃させる。したがって、複数の清掃対象を効率よく清掃できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の清掃ドローンを含む清掃システムの構成を示すブロック図である。
図2】ソーラーパネルの設置場所の上空に清掃ドローンが居る状態の模式的な斜視図である。
図3】清掃ドローンの正面図である。
図4】清掃ドローンの側面図である。
図5】清掃ドローンの平面図である。
図6】清掃ドローンがソーラーパネルに着陸する前に、2軸ジンバルを制御した状態の正面図である。
図7】清掃ドローンの移動軌跡を示す斜視図である。
図8】清掃ドローンがソーラーパネルに着陸した状態の正面図である。
図9】清掃ドローンがソーラーパネルの表面を清掃している状態の側面図である。
図10】清掃ドローンで行われる制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(概要)
図1に示す清掃システム10は、清掃対象を掃除するためのシステムである。清掃システム10は、基地コンピュータ12、サーバ13及び清掃ドローン14を有する。基地コンピュータ12とサーバ13とが、通信ネットワークを介して双方向通信が可能であり、サーバ13と清掃ドローン14との間で無線による双方向通信が可能である。基地コンピュータ12から清掃対象、例えば、ソーラーパネル11を清掃する清掃情報が出力される。サーバ13は、基地コンピュータ12から清掃情報を取得すると、清掃ドローン14を、基地から図2に示すようなソーラーパネル11の設置場所へ発進させる。ソーラーパネル11は、地上に設置されていてもよいし、建築物の屋根、または、建築物の屋上、等に設置されていてもよい。
【0021】
(基地コンピュータ)
図1に示すように、基地コンピュータ12は、基地75に設けられており、基地75の担当者により操作される。また、基地75には清掃ドローン14が待機している。基地コンピュータ12は、スーパーコンピュータ、ワークステーション、メインフレーム、サーバ、タブレット端末、スマートフォン等のうちの何れであってもよい。基地コンピュータ12は、入力部15、表示部16、制御部17、記憶部18及び通信部19を有する。入力部15は、基地75の担当者により操作される。入力部15は、キーボード、マウス、タッチパネル等により構成されている。
【0022】
担当者は、入力部15を操作することにより、清掃対象情報を入力できる。清掃情報は、清掃ドローン14で清掃するべき清掃対象に関する情報である。清掃対象情報は、例えば、清掃対象であるソーラーパネル11の設置場所(所在地)、設置場所に存在するソーラーパネル11の総数、及びソーラーパネル11の総面積、ソーラーパネル11を清掃する年月日及び時刻、ソーラーパネル11の清掃開始から終了までの所要時間の目標値、等を含む。
【0023】
表示部16は、例えば、液晶モニタ、有機EL(Electro Luminescence)モニタなどで構成されている。表示部16は、入力部15から入力される情報、サーバから送信される情報を表示することができる。表示部16により表示される情報は、文書、画像、映像、等を含む。表示部16は、例えば、清掃ドローン14から送信された映像を表示することができる。担当者は、表示部16を目視することができる。
【0024】
制御部17は、入力ポート、出力ポート、中央演算処理回路を有する。制御部17は、指令処理部20及び情報取得部21を構成する。指令処理部20は、入力部15から入力される情報を処理及び判断することにより、かつ、サーバ13へ送信する情報を生成する。情報取得部21は、サーバ13から送信される情報を処理及び判断する。また、制御部17は、表示部16で表示する情報を制御する。記憶部18には、制御部17で行われる各種の処理及び判断に用いられる情報、データが記憶され、かつ、制御部17で起動されるアプリケーション及びプログラムが格納されている。また、制御部17で行われる各種の処理及び判断結果は、記憶部18へ記憶される。通信部19は、制御部17により制御されて、サーバ13との間で相互に信号の送信及び受信を行う。
【0025】
(サーバ)
サーバ13は、基地コンピュータ12から送信される清掃指令に応じて、複数の清掃ドローン14を管理及び制御するコンピュータである。また、サーバ13は、清掃ドローン14から取得した情報を、基地コンピュータ12へ送る機能を有する。サーバ13は、管理部22、記憶部23、通信部24を有する。管理部22は、入力ポート、出力ポート、中央演算処理回路を有する。管理部22は、複数の清掃ドローン14を制御及び管理する機能を有する。管理部22は、入力情報処理部25及び出力情報生成部26を構成する。入力情報処理部25は、基地コンピュータ12及び清掃ドローン14から取得する情報を処理及び判断する。
【0026】
また、出力情報生成部26は、基地コンピュータ12へ送る情報、及び清掃ドローン14へ送る清掃情報及び補助情報を生成する。補助情報は、例えば、清掃ドローン14がソーラーパネル11の清掃を開始後に、同じ所在地に設置されている複数のソーラーパネル11のうち、未清掃のソーラーパネル11と、清掃済のソーラーパネル11とを区別する情報を含む。また、補助情報は、複数の清掃ドローン14により、同一の所在地に設置されている異なるソーラーパネル11を別々に清掃させる指令を含む。管理部22は、各種の処理及び判断結果を、記憶部23へ記憶することができる。記憶部23には、管理部22で行われる各種の処理及び判断に用いられる情報、データが記憶され、かつ、各種の処理及び判断のために起動される、アプリケーション及びプログラム等が格納されている。
【0027】
記憶部23には、例えば、清掃対象の一例であるソーラーパネル11の所在地を含む地図データが記憶されている。さらに、記憶部23には、基地75と、ソーラーパネル11の所在地との間を清掃ドローン14が往復する場合の所要時間が記憶されている。また、記憶部23には、清掃対象の一例であるソーラーパネル11の総面積及び目標所要時間に対する清掃ドローン14の必要数を定めた情報が記憶されている。通信部24は、管理部22により制御されて、基地コンピュータ12及び清掃ドローン14との間で、相互に信号の送信及び受信を行う。
【0028】
(清掃ドローン)
図3図4及び図5のように、清掃ドローン14は、飛行部27、清掃部28及び2軸ジンバル29を有する。飛行部27は、清掃ドローン14が、地上から空中への上昇、空中での飛行、空中で停止、空中での降下、空中から地上への着陸等の動作を行うための駆動機構である。飛行部27は、本体部30、複数のアーム31、複数のプロペラ32、プロテクタ33、飛行用電動モータ34、電源35、アンテナ(通信部)36、制御部37、記憶部38、距離センサ39、位置検出部40、ジャイロセンサ63、障害物検出センサ73等を有する。本体部30は、箱形状のケーシングであり、本体部30の内部に、図1に示す電源35、制御部37、記憶部38等が収容されている。
【0029】
飛行用電動モータ34は、複数のアーム31にそれぞれ取り付けられており、飛行用電動モータ34は、一例としてブラシレスモータである。プロペラ32は、飛行用電動モータ34の回転軸にそれぞれ取り付けられている。図1に示す電源35は、充電及び放電を行うことのできる二次電池である。電源35は、一例としてリチウム・イオン電池、ニッケル・カドミウム電池が用いられる。飛行用電動モータ34は、電源35から電力が供給されて回転軸が回転する。アンテナ36は、例えば、本体部30の外面に設けられており、アンテナ36とサーバ13との間で双方向通信が可能である。また、制御部37と清掃部28とが、相互に通信可能に接続されている。プロテクタ33は、本体部30に取り付けられており、プロテクタ33はプロペラ32の周囲を囲むように設けられている。プロテクタ33は、プロペラ32が周囲の物体に接触することを阻止する要素である。
【0030】
図1に示す距離センサ39は、複数設けられている。距離センサ39は、例えば、レーザー光線を地上へ向けて照射し、反射したレーザー光線を受光することにより、清掃ドローン14と、清掃ドローン14より下に位置する地上との距離を測定して信号を出力する。地上は、地表、建築物の屋根、建築物の屋上、地表に設けられたソーラーパネル11、建築物に設けられたソーラーパネル11、等の何れであってもよい。距離センサ39は、例えば、各アーム31にそれぞれ設けられている。
【0031】
位置検出部40は、例えば、GPS(Global Positioning System)により構成されており、図2に示すような4基以上の人工衛星74からの信号を受信することで、地図データにおける清掃ドローン14の位置情報、つまり、現在位置を検出するシステムである。図2では、便宜上、人工衛星74が1基のみ示されている。ジャイロセンサ63は、角速度センサ及び加速度センサを含む。ジャイロセンサ63は、飛行部27の回転、振動、傾き等を検出して信号を出力する。障害物検出センサ73は、清掃ドローン14の周囲の障害物を検出して信号を出力する。
【0032】
制御部37は、アンテナ36、距離センサ39、位置検出部40、ジャイロセンサ63、障害物検出センサ73、記憶部38に接続されている。制御部37は、入力ポート、出力ポート及び中央演算処理回路をする。制御部37は、アンテナ36がサーバから受信する信号、距離センサ39から出力される信号、ジャイロセンサ63から出力される信号、位置検出部40により検出される清掃ドローン14の現在位置、障害物検出センサ73により検出される障害物、記憶部38に記憶されている情報、データに基づいて、各種の処理及び判断を行い、その処理結果、及び判断結果に基づいて、飛行用電動モータ34及び2軸ジンバル29を制御し、かつ、清掃部28へ送信する信号を生成する。
【0033】
制御部37は、例えば、位置検出部40による清掃ドローン14の位置の検出結果、距離センサ39の信号から判断される地上からの清掃ドローン14の高さ、等に基づいて、飛行用電動モータ34をそれぞれ制御する。したがって、清掃ドローン14の上昇、下降、空中での停止、空中での飛行、飛行中の向き、方向変換、旋回、右折、左折、等を行うことができる。
【0034】
また、制御部37は、ジャイロセンサ63から出力される信号を処理し、その処理結果に基づいて、複数の飛行用電動モータ34の回転速度、及び回転方向をそれぞれ制御することにより、飛行部27の姿勢、例えば、水平度を保持することができる。さらに、制御部37は、複数の距離センサ39の信号を処理することにより、地表の傾斜角度、例えば、図6に示すソーラーパネル11の表面41の傾斜角度θ1を判断できる。傾斜角度θ1は、水平な仮想線B1と表面41との間の鋭角側の角度で表すことができる。制御部37は、複数の距離センサ39で検出される距離の差から傾斜角度θ1を判断できる。制御部37は、傾斜角度θ1の判断結果に基づいて、2軸ジンバル29及び清掃部28を制御することができる。制御部37が、傾斜角度θ1の判断結果に基づいて行う制御は、後述する。
【0035】
ソーラーパネル11を平面視すると、ソーラーパネル11の外周形状は四角形、例えば、長方形または正方形である。ソーラーパネル11は、図7のように、上縁64及び下縁65と、2つの側縁66,80と、4つの角部70,71,76,77と、を有する。表面41は、上縁64及び下縁65、2つの側縁66,80により囲まれた領域である。上縁64と下縁65とは平行であり、かつ、2つの側縁66,80は平行である。また、上縁64は、鉛直方向で下縁65より上に位置する。
【0036】
また、角部70は、上縁64と側縁66との接続箇所である。角部71は、上縁64と側縁80との接続箇所である。角部76は、下縁65と側縁66との接続箇所である。角部77は、下縁65と側縁80との接続箇所である。ソーラーパネル11の平面視で、角部70、71,76,77は、それぞれ異なる位置にある。角部70,71は同じ高さに位置し、角部76,77は同じ高さに位置する。制御部37は、カメラ59が撮影する映像を処理して、ソーラーパネル11の形状、例えば、上縁64,側縁66、側縁66,80、角部70,71、76,77を認識できる。なお、角部70,71は、同じ高さに位置するものとする。
【0037】
図1に示す記憶部38には、制御部37が処理及び判断を行うための情報及びプログラム、2軸ジンバル29を制御するための情報及びプログラム、清掃部28へ送信する信号を生成するためのプログラム及び情報、清掃部28から受信する信号を処理するためのプログラム及び情報が記憶されている。
【0038】
(2軸ジンバル)
図3及び図4に示す2軸ジンバル29は、飛行部27に対する清掃部28の姿勢を調整する機構である。図5のように、清掃ドローン14を平面視すると、2軸ジンバル29は、本体部30の略中央に配置されている。清掃ドローン14の平面視とは、重力の作用方向で清掃ドローン14を真上から見ることを意味する。2軸ジンバル29は、飛行部27と清掃部28とを接続する機構であり、2軸ジンバル29は、飛行部27に対する清掃部28の姿勢を調整する機能を備えている。飛行部27に対する清掃部28の姿勢を調整することにより、ソーラーパネル11の表面41に対する清掃部28の姿勢を調整できる。
【0039】
2軸ジンバル29は、本体部30の下面に固定された第1ブラケット42と、清掃部28に固定された第2ブラケット43と、第1ブラケット42と第2ブラケット43とを接続する接続具44と、第1電動モータ45及び第2電動モータ46と、を有する。第1ブラケット42、第2ブラケット43及び接続具44は、何れも金属製である。第1ブラケット42と接続具44とが、第1支持軸47により連結されている。接続具44は、第1ブラケット42に対し、第1支持軸47の中心である仮想線Q1を中心とする所定角度の範囲内で作動(回転)及び停止が可能である。第1電動モータ45は、接続具44を作動及び停止させるアクチュエータである。
【0040】
第2ブラケット43と接続具44とが、第2支持軸48により連結されている。第2ブラケット43は、接続具44に対し、第2支持軸48を中心とする所定角度の範囲内で作動及び停止が可能である。第1支持軸47は、本体部30と第2支持軸48との間に設けられている。清掃ドローン14を平面視すると、第1支持軸47と第2支持軸48とは、90度の角度で交差するように配置されている。
【0041】
第2電動モータ46は、第2支持軸48の中心である仮想線Q2を中心として、第2ブラケット43を作動(回転)及び停止させるアクチュエータである。第1電動モータ45及び第2電動モータ46は、電源35の電力で回転される。制御部37は、第1電動モータ45及び第2電動モータ46の停止、回転、回転速度、回転方向をそれぞれ別々に制御する。図3及び図4に示す清掃ドローン14を真上から平面視すると、図5のように、仮想線Q1と仮想線Q2とは、略90度の角度で交差するような位置関係にある。
【0042】
(清掃部)
清掃部28は、ソーラーパネル11の表面41を清掃する機構である。清掃部28は、飛行部27に対し2軸ジンバル29を介して取り付けられている。清掃部28は、接続フレーム49、本体部50、洗浄液タンク51、噴射ノズル52、清掃ローラ53、キャタピラー(登録商標)54、清掃ローラ駆動部55、キャタピラー駆動部56、電源78、制御部58、カメラ59、記憶部60、ワイプ61等を有する。接続フレーム49は金属製であり、接続フレーム49に第2ブラケット43が固定されている。また、接続フレーム49に本体部50が取り付けられている。
【0043】
洗浄液タンク51は、本体部50の上に設けられており、洗浄液タンク51内に洗浄液が貯留される。洗浄液は、水でもよいし、界面活性剤その他の成分を含む水であってもよい。噴射ノズル52は、例えば、接続フレーム49に設けられている。噴射ノズル52は、洗浄液タンク51内の洗浄液を清掃ローラ53の前方へ噴射する。
【0044】
キャタピラー駆動部56は、本体部50の下面に取り付けられている。キャタピラー駆動部56に支持フレーム57が取り付けられ、清掃ローラ53が支持フレーム57に取り付けられている。清掃ローラ53は、ソーラーパネル11の表面41を清掃する要素であり、清掃ローラ53は、接続フレーム49により回転可能に支持されている。清掃ローラ53は、例えば、合成樹脂製の毛を有するブラシを円柱形状のローラの外周面に設けたものである。
【0045】
清掃ローラ駆動部55は、接続フレーム49に取り付けられている。清掃ローラ駆動部55は、清掃ローラ53を回転させる電動モータ79を有する。電動モータ79は、電源78から電力が供給されると回転する。清掃ローラ53の周速度は、キャタピラー54の周速度を超えている。キャタピラー54(無限軌道)は、清掃部28をソーラーパネル11の表面41に沿って移動させるための機構である。キャタピラー54は、起動輪、転輪、遊動輪(誘導輪)を囲むように巻かれたベルト67を有する。キャタピラー54は、キャタピラー駆動部56の両側にそれぞれ設けられており、2つのキャタピラー54のベルト67は、それぞれ単独で回転、停止、回転方向の切り替えが行われる。
【0046】
キャタピラー駆動部56は、電動モータ62を有し、電動モータ62が、2つのキャタピラー54のベルト67をそれぞれ別々に作動及び停止させる。電動モータ62は、電源78から電力が供給されて回転する。キャタピラー54が作動されると、清掃部28が前進及び後退できる。また、2つのキャタピラー54のベルト67の回転方向をそれぞれ制御することにより、清掃部28の右折、左折、方向変換、旋回、等を行える。
【0047】
ワイプ61は、例えば、キャタピラー駆動部56に取り付けられている。ワイプ61は、ソーラーパネル11の表面41に付着している異物、例えば、水滴を拭き取る要素である。清掃ドローン14を平面視すると、清掃ローラ53とワイプ61との間に、本体部50が配置されている。
【0048】
電源78は、本体部50内に設けられている。電源78は、充電及び放電を行うことのできる二次電池である。電源78は、一例としてリチウム・イオン電池、ニッケル・カドミウム電池が用いられる。電源78の電力は、清掃ローラ駆動部55及びキャタピラー駆動部56へそれぞれ供給される。カメラ59は、例えば、接続フレーム49に取り付けられている。カメラ59は、清掃ドローン14の周囲の映像を撮影して信号を出力する。
【0049】
清掃ドローン14が空中で飛行中、または、空中で静止中、または、地上で静止中において、カメラ59は、清掃ドローン14の周囲及び地上の映像を撮影できる。カメラ59は、例えば、ソーラーパネル11の表面41の外周形状、ソーラーパネル11の表面41の汚れ状態、等の映像を撮影できる。カメラ59で撮影された映像は、記憶部60に記憶され、かつ、制御部58へ送られる。
【0050】
制御部58は、本体部50内に設けられている。制御部58は、入力ポート、出力ポート及び中央演算処理回路を有し、制御部58は、制御部37とつながっている。制御部58は、飛行部27の制御部37から受信する信号、記憶部60に記憶されている情報及びプログラムに基づいて、各種の処理及び判断を行い、その処理結果、及び判断結果に基づいて清掃ローラ駆動部55及びキャタピラー駆動部56を制御する。また、制御部58はカメラ59の信号を処理し、その処理結果を飛行部27の制御部37へ送信する。記憶部60には、制御部58の処理及び判断に用いられるプログラム及び情報が記憶されている。
【0051】
(使用例)
清掃システム10の稼働例は、次の通りである。基地コンピュータ12は、清掃対象情報をサーバ13へ送信する。サーバ13の管理部22は、基地コンピュータ12から取得した清掃対象情報に基づいて、基地75から発進させる清掃ドローン14の数を決定する。管理部22は、例えば、清掃対象であるソーラーパネル11の総数、及びソーラーパネル11の総面積、ソーラーパネル11の清掃開始から終了までの所要時間の目標値、等に基づいて、基地75から発進させる清掃ドローン14の数を決定する。清掃ドローン14の制御部37は、サーバ13の管理部22から、清掃対象情報の一部、例えば、ソーラーパネル11の所在地、所在地を含む地図データ等を取得する。管理部22は、基地75から清掃ドローン14を発進させる。
【0052】
清掃ドローン14が飛行中、図5に示す4つのプロペラ32のうち、本体部30を隔てて対角に位置するプロペラ32は、時計回りに回転され、本体部30を隔てて対角に位置するプロペラ32は、反時計回りに回転される。清掃ドローン14が飛行中、図3及び図4のように、清掃部28は、重力の作用方向で飛行部27の下に位置する。
【0053】
清掃ドローン14の制御部37は、位置検出部40により検出される清掃ドローン14の現在位置に基づいて、清掃ドローン14を、清掃対象、つまり、複数のソーラーパネル11が設置されている所在地へ到達させる。制御部37は、清掃ドローン14を、複数のソーラーパネル11のうち、未清掃である1基のソーラーパネル11の上空に位置させる。制御部37は、飛行部27の水平度を保持する制御を行っている。制御部37は、サーバ13から取得した情報に基づいて、ソーラーパネル11が未清掃であるか清掃済みであるかを判断できる。
【0054】
清掃ドローン14が、何れかのソーラーパネル11の上空に位置された時点において、接続具44は、第1ブラケット42に対して初期位置で停止されている。このため、清掃ローラ53の回転中心である仮想線B2は、水平線A1と平行である。つまり、清掃ローラ53の接地部69も、水平線A1と平行である。接地部69は、清掃ローラ53のうち、仮想線B2に沿った方向の部位である。また、第2ブラケット43は、接続具44に対して初期位置に停止されている。このため、キャタピラー54のベルト67の接地部68は、水平線A1と平行である。
【0055】
制御部37は、清掃ドローン14を下降させる前に、清掃部28の姿勢をソーラーパネル11の表面41に適した状態に調整する。例えば、制御部37は、清掃ドローン14を降させる前に第1制御、第2制御及び第3制御を行う。第1制御の一例は、ソーラーパネル11の平面視で、清掃ドローン14をソーラーパネル11の何れかの角部の内側に位置させ、かつ、飛行部27を上縁64及び下縁65に沿って前進させるように、飛行部27を第1の向きD1に調整することである。飛行部27が第1の向きD1で前進すると、清掃ローラ53より後方にワイプ61が位置する。第2制御の一例は、本体部30の中心線C1と、ソーラーパネル11の上縁64とが平行になるように、飛行部27の向きを調整することである。
【0056】
制御部37が行う第3制御の一例は、ソーラーパネル11の表面41の傾斜角度θ1を判断し、かつ、傾斜角度θ1の判断結果に基づいて、第1支持軸47を中心とする接続具44の停止位置を調整することである。第3制御は、ソーラーパネル11の平面視で、ソーラーパネル11の表面41と、清掃ローラ53の仮想線B2とを平行にすることを目的として行う。
【0057】
制御部37は、第1制御、第2制御及び第3制御を行った後、清掃ドローン14を下降させ、例えば、図8のように、清掃ドローン14をソーラーパネル11の表面41へ着陸させる。制御部37は、清掃ドローン14が表面41へ着陸したか否かを、カメラ59の映像、及び複数の距離センサ39が検出する距離、等から判断できる。すると、清掃ローラ53の接地部69が、表面41へ接触され、かつ、ベルト67の接地部68が表面41へ接触される。
【0058】
制御部37は、清掃ドローン14が表面41へ着陸した後、制御信号を清掃部28の制御部58へ送信する。すると、制御部58は、ソーラーパネル11の表面41を清掃するための制御を行う。制御部58は、まず、キャタピラー駆動部56を制御することにより、清掃部28を上縁64に沿い、かつ、側縁66へ向けて前進させる。また、制御部58は、噴射ノズル52を制御することにより、表面41のうち、清掃ローラ53より前方に位置する領域へ洗浄液を噴射させる。さらに、制御部58は、清掃ローラ駆動部55を制御することにより、清掃ローラ53を回転させる。したがって、表面41の汚れが清掃ローラ53により清掃される。
【0059】
さらに、制御部58は、清掃ローラ53が側縁66へ接近すると、キャタピラー駆動部56を制御することにより、清掃部28の方向変換を行う。また、制御部37は、清掃部28が方向変換されることに同期して、飛行用電動モータ34を制御し、飛行部27を方向変換させる。
【0060】
さらに、制御部37は、清掃部28の方向変換を行う過程において、第4制御を行う。第4制御は、図9に示すように、表面41の傾斜角度θ1に基づいて、2軸ジンバル29の第1電動モータ45及び第2電動モータ46を制御することである。具体的に説明すると、第4制御は、接続具44を第1支持軸47を中心として作動させ、かつ、第2ブラケット43を第2支持軸48を中心として作動させる。制御部37が、第4制御を実行すると、清掃部28が方向変換される過程で、キャタピラー54の接地部68及び清掃ローラ53の接地部69が、ソーラーパネル11の表面41に常に接触された状態を保持できる。
【0061】
制御部58は、清掃部28の方向変換が終了すると、清掃部28を側縁66へ向けて移動させ、かつ、上縁64に沿って移動させるように、キャタピラー駆動部56を制御する。以後、制御部37,58が上記制御を繰り返すことにより、清掃ドローン14は、表面41を清掃しながら蛇行形状の軌跡E1で移動し、かつ、清掃ドローン14は、上縁64から下縁65へ近づく。そして、制御部58は、1基のソーラーパネル11の表面41の清掃が完了すると、制御部58は、キャタピラー駆動部56及び清掃ローラ駆動部55を停止させる。制御部58は、カメラ59の映像を処理して、1基のソーラーパネル11の表面41の清掃が完了したかどうかを判断できる。また、制御部58は、1基のソーラーパネル11の表面41の清掃が完了したことを、制御部37へ送信する。
【0062】
なお、清掃ドローン14によりソーラーパネル11の表面41を清掃する場合、制御部37は、第1制御として、飛行部27を側縁66,80に沿って前進させるように、飛行部27を第1の向きD1に調整してもよい。この場合、制御部37が行う第2制御は、ソーラーパネル11の平面視で、ソーラーパネル11の上縁64及び下縁65と、清掃ローラ53の仮想線B2とを、平行にすることである。さらに、制御部37が行う第3制御は、ソーラーパネル11の平面視で、ソーラーパネル11の表面41と、ベルト67の接地部68とを、平行にする処理である。そして、制御部37は、清掃ドローン14を側縁66,80に沿って移動させる制御と、清掃ドローン14を上縁64及び下縁65付近で方向変換させる制御とを行い、清掃ドローン14を蛇行形状の移動軌跡で移動させ、1基のソーラーパネル11の表面の清掃を完了させる。
【0063】
このように、制御部37は、清掃ローラ53によりソーラーパネル11の表面41を清掃中、接続具44を第1ブラケット42に対して作動及び停止させる制御、第2ブラケット43を接続具44に対して作動及び停止させる制御のうち、少なくとも何れか一方を行う。したがって、清掃ローラ53の接地部69を、常に表面41に線接触させることができ、かつ、ベルト67の接地部68を、常に表面41に面接触させることができる。
【0064】
制御部58は、清掃部28により1基のソーラーパネル11の表面41の清掃が完了したことを検出すると、その事実をサーバ13へ送信し、かつ、清掃ドローン14を上昇させる。また、カメラ59は、清掃が完了したソーラーパネル11の表面41の映像を撮影し、制御部58は、その映像を制御部37へ送信する。制御部37は、清掃が完了したソーラーパネル11の表面41の映像、及び清掃が完了したソーラーパネル11の位置情報を、サーバ13へ送信する。
【0065】
その後、制御部37は、清掃ドローン14を、未清掃である1基のソーラーパネル11の上へ移動させ、前述と同様の制御を行い、1基のソーラーパネル11の表面41を清掃部28により清掃する。このようにして、複数の清掃ドローン14が、それぞれソーラーパネル11の表面41を清掃する作業を行い、その所在地にある全部のソーラーパネル11の清掃が完了すると、複数の清掃ドローン14は、ソーラーパネル11の設置場所から基地75へ戻る。
【0066】
(制御例)
図10は、清掃ドローン14の制御部37が、サーバ13から清掃指令を受けて行う制御の一例を示すフローチャートである。制御部37は、清掃ドローン14を未清掃のソーラーパネル11の上に移動させる。制御部37は、清掃ドローン14が、ソーラーパネル11へ着陸する前に、ステップS11で傾斜角度θ1を検出する。制御部37は、清掃ドローン14が、ソーラーパネル11へ着陸する前に、ステップS12で2軸ジンバル29を傾斜角度θ1に合わせて調整する。
【0067】
制御部37は、清掃ドローン14がソーラーパネル11へ着陸後、ステップS13において、清掃部28による清掃を開始させる。また、制御部37は、清掃部28による清掃中、2軸ジンバル29を傾斜角度θ1に合わせて調整する。
【0068】
制御部37は、ステップS14において、清掃中のソーラーパネル11の清掃が完了したか否かを判断する。制御部37は、ステップS14でNoと判断すると、ステップS13に進む。制御部37は、ステップS14でYesと判断すると、ステップS15において、所定のソーラーパネル11の清掃を完了したことを、サーバ13へ送信し、かつ、清掃ドローン14をソーラーパネル11から離陸させ、図10の制御例を終了する。
【0069】
(本開示の効果)
本開示の清掃ドローン14によれば、飛行部27が降下されて清掃部28がソーラーパネル11に接触される前に、表面41の傾斜角度θ1を検出し、飛行部27が降下されて清掃部28が表面41に接触される前に、清掃部28の姿勢を傾斜角度θ1に基づいて調整できる。したがって、清掃ドローン14がソーラーパネル11上に着陸する際に、飛行部27が受ける反力を低減でき、飛行部27の姿勢が不安定になることを抑制できる。また、ソーラーパネル11の表面41に傷が付くことを抑制できる。
【0070】
本開示の清掃ドローン14によれば、制御部37は、清掃ローラ53の接地部69が表面41に線接触され、かつ、キャタピラー54のベルト67の接地部68が表面41に面接触されるように、清掃部28の姿勢を傾斜角度θ1に基づいて調整できる。したがって、清掃部28が表面41へ着陸した後に、清掃部28の姿勢を調整せずに済む。
【0071】
本開示の清掃ドローン14によれば、接続具44を第1ブラケット42に対し仮想線Q1を中心として作動させること、または、第2ブラケット43を仮想線Q2を中心として作動させること、のうち少なくとも一方を行うことにより、清掃部28の姿勢を調整できる。本開示の清掃ドローン14によれば、噴射ノズル52が、ソーラーパネル11の表面41に向けて洗浄液を噴射する。したがって、ソーラーパネル11の表面41の汚れを除去し易くなる。
【0072】
本開示の清掃ドローン14によれば、ソーラーパネル11の角部70,71の位置を検出し、清掃部28をソーラーパネル11の表面41のうち角部70,71の内側に着陸させることができる。本開示の清掃ドローン14によれば、飛行部27が降下されて清掃部28がソーラーパネル11の表面41に接触される前に、ソーラーパネル11の表面41の傾斜角度θ1を検出し、飛行部27が降下されて清掃部28がソーラーパネル11の表面41に接触される前に、清掃部28の姿勢を傾斜角度θ1に基づいて調整できる。したがって、清掃ドローン14がソーラーパネル11上に着陸する際に、飛行部27が受ける反力を低減でき、飛行部27の姿勢が不安定になることを抑制できる。
【0073】
さらに、清掃ドローン14は、未清掃のソーラーパネル11と、清掃済のソーラーパネル11とを区別できるため、同じソーラーパネル11を、同じ清掃ドローン14、または、異なる清掃ドローン14が、重複して清掃することを防止できる。また、サーバ13は、複数の清掃ドローン14により、同一の所在地に設置されている異なるソーラーパネル11を別々に清掃させる。したがって、複数のソーラーパネル11を効率よく清掃できる。
【0074】
(補足説明)
本実施形態に開示されている技術事項の意味の一例は、次の通りである。ソーラーパネルは、清掃対象の一例である。清掃システム10は、清掃システムの一例である。サーバ13は、コンピュータの一例である。清掃ドローン14は、清掃ドローンの一例である。清掃部28は、清掃部の一例である。飛行部27は、飛行部の一例である。2軸ジンバル29及び制御部37は、姿勢調整機構の一例である。制御部37及び飛行用電動モータ34は、制御部の一例である。距離センサ39及び制御部37は、傾斜角度検出部の一例である。清掃ローラ53は、清掃ローラの一例である。キャタピラー54は、キャタピラーの一例である。
【0075】
ベルト67は、ベルトの一例である。第1ブラケット42は、第1ブラケットの一例である。仮想線Q1は、第1仮想線の一例である。接続具44は、接続具の一例である。仮想線Q2は、第2仮想線の一例である。第2ブラケット43は、第2ブラケットの一例である。第1電動モータ45は、第1電動モータの一例である。第2電動モータ46は、第2電動モータの一例である。噴射ノズル52は、噴射ノズルの一例である。カメラ59及び制御部37は、角部検出装置の一例である。管理部22は、管理部の一例である。図5に示す飛行部27は、飛行部の平面視の一例である。
【0076】
本開示における清掃ドローンの清掃対象は、傾斜して配置されるソーラーパネルの他、建築物の上部に傾斜して設けられる平坦な屋根、建築物に傾斜して設けられる窓ガラス、等を含む。清掃対象の表面の傾斜角度は、水平か仮想線に対する傾斜角度に代えて、鉛直線に対する傾斜角度、建築物の屋根に対する傾斜角度、建築物の壁面に対する傾斜角度、等であってもよい。
【0077】
また、清掃ドローンを管理及び制御するコンピュータは、サーバに限らず、ワークステーション、スーパーコンピュータ、メインフレーム等を含む。清掃ドローンを管理及び制御するコンピュータは、実施例に開示されているサーバの機能、及び基地コンピュータの機能の両方を有していてもよい。さらに、清掃ドローンを管理及び制御するコンピュータは、携帯型端末、例えば、タブレット端末、スマートフォンであってもよい。
【0078】
さらに、ソーラーパネルの角部の位置を検出する角部検出装置としてのカメラは、飛行部に設けられていてもよい。また、制御部37及び制御部58は、統合されていてもよい。さらに、記憶部38と記憶部60とが統合されていてもよい。さらに、電源35と電源78とが統合されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本開示は、清掃対象の表面を清掃するための清掃ドローン及び清掃システムとして利用可能である。
【符号の説明】
【0080】
10…清掃システム、13…サーバ、14…清掃ドローン、22…管理部、27…飛行部、28…清掃部、29…2軸ジンバル、37…制御部、34…飛行用電動モータ、39…距離センサ、42…第1ブラケット、43…第2ブラケット、44…接続具、45…第1電動モータ、46…第2電動モータ、52…噴射ノズル、53…清掃ローラ、54…キャタピラー、59…カメラ、67…ベルト、Q1…仮想線、Q2…仮想線
【要約】      (修正有)
【課題】飛行部の姿勢が不安定になることを抑制できる清掃ドローンを提供する。
【解決手段】清掃対象に接触すると清掃対象を清掃する清掃部28と、清掃部28に取り付けられ、かつ、清掃部28を清掃対象へ向けて移動させる飛行部27と、を有する清掃ドローン14であって、清掃部28の姿勢を調整する2軸ジンバル29と、飛行部27を制御する制御部と、清掃部28が清掃対象に接触される前に、清掃対象の表面の傾斜角度を検出する距離センサ及び制御部と、を有し、2軸ジンバル29は、清掃部28が清掃対象に接触する前に、清掃部28の姿勢を傾斜角度に基づいて調整する清掃ドローン14を構成した。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10