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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21V 13/12 20060101AFI20240529BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240529BHJP
   G09F 13/04 20060101ALI20240529BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240529BHJP
【FI】
F21V13/12 300
F21S2/00 496
F21S2/00 493
G09F13/04 P
F21Y115:10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020104952
(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公開番号】P2021197324
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】520220238
【氏名又は名称】株式会社有電社
(74)【代理人】
【識別番号】100105968
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 芳人
(72)【発明者】
【氏名】川上 徹
(72)【発明者】
【氏名】江原 克典
(72)【発明者】
【氏名】篠井 むつみ
(72)【発明者】
【氏名】木下 晴喜
(72)【発明者】
【氏名】奥 和博
(72)【発明者】
【氏名】広田 修
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-102372(JP,A)
【文献】国際公開第2017/090675(WO,A1)
【文献】特開2001-034982(JP,A)
【文献】特開2015-198054(JP,A)
【文献】特表2018-532230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 13/12
F21S 2/00
G09F 13/04
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面光源、合成レンズ系、反射ミラーおよび反射プリズムシートからなる照明装置において、
前記合成レンズ系は、それぞれ直交するx軸、y軸およびz軸の3次元で構成され、
z軸上に前記合成レンズ系の光軸を有し、
前記面光源から出射した光束を凹面形状の入射面から取り込んでx方向の曲率半径がy方向の曲率半径より大きいトロイダル面形状の出射面から出射する第1のトロイダルレンズと、
前記第1のトロイダルレンズから出射した光束を入射面から取り込んでx方向の曲率半径がy方向の曲率半径より大きいトロイダル面形状の出射面から出射する第2のトロイダルレンズと、を具備し、
前記第1のトロイダルレンズに近い側から順に、前記合成レンズ系のy-z平面内の前側焦点Fyzおよび前記合成レンズ系のx-z平面内の前側焦点Fxzを有し、前側焦点Fxzと前記第1のトロイダルレンズの入射面との間で、かつ前記前側焦点Fyzの近傍を前記面光源の位置とし、
前記面光源と前記合成レンズ系とからなる照明光学系は、前記合成レンズ系の出射側のx-y平面に矩形状の照明エリアを有し、
さらに、
前記反射ミラーは、焦点距離f2を有し、前記第2のトロイダルレンズとの距離をほぼf2として、前記第2のトロイダルレンズから出射した光束をz軸と傾斜した方向へ反射させる手段を有し、
前記反射プリズムシートは、前記反射ミラーから反射した光束の光路を変更する手段を有する
ことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記面光源の出射面と前記第1のトロイダルレンズの入射面とのx-y平面への正射影を、x方向、y方向がそれぞれ長辺方向、短辺方向になる矩形状としたことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記照明光学系を複数具備したことを特徴とする請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記照明装置を液晶用バックライト装置としたことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ用のバックライト装置、あるいは照明型看板等に有利に適用される照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイは、テレビだけでなく、車載用の各種モニターや医療用モニターなど多くの応用分野へ拡大している。また、液晶ディスプレイは、液晶パネルの4K、8Kという高解像度化の進展に伴い、高解像の画素を利用した裸眼立体ディスプレイへの応用も進むものと考えられる。
【0003】
液晶ディスプレイに用いられる既存のバックライト装置は、どこから見ても均一な表示面となることに主眼を置いて開発されてきた。一方、観察者の居る所だけに画像光を出射して、それ以外に出射される無駄な画像光を減らして、省電力化を図るという考えが浸透してきたため、表示面からランバーシアンで画像光を出射するのを止めて、拡散フィルムと反射プリズムシートを活用して、表示面から水平方向近傍に出射される画像光をなるべく減らすような既存のバックライト装置が増えてきた。ただし、車載用のモニターでは、運転者だけが表示面を見られれば良いので、画像光は運転者の眼の近傍のみに出射されればよいことになり、既存のバックライト装置ではまだ無駄な画像光を無くせない。無駄な画像光を無くせるバックライト装置を既存のもので実現するためには、拡がり過ぎた画像光を、ブラックマスクやルーバーで吸収し、狭めた画像光だけを出射するようにしなければならない。したがって、既存のバックライト装置では、吸収される無駄な画像光を無くせないので、省電力化は難しい。
【0004】
そこで、本発明者らは、液晶ディスプレイ応用分野における液晶ディスプレイの表示面から出射される画像光の主光線方向の違いに関し体系的に検討した結果、図11に示すように既存のバックライト装置(図11(a))とは異なり、同じ明るさの光を同じ方向に揃えて出射できるいわゆる平行光バックライト装置(図11(b)~(d))が必要になることを明らかにした。この平行光バックライト装置が実現できれば、無駄な画像光を減らし、光利用効率を向上させることが可能となり、光源の使用電力を必要最小限にして、低消費電力化を図ることができ、裸眼立体ディスプレイへの展開も容易に図れることを見出した。その後、検討を重ねた結果、平行光バックライト装置に相当するものとして、特許文献1に記載のバックライト装置(以下、「特許文献1の装置」ともいう。)を発明した。
【0005】
特許文献1の装置は、発光ダイオードからなる発光源と、前記発光源から出射された光を整形して光束として出射させる光整形手段とを有する2次元光源と、焦点距離f1の第1集光光学系および前記焦点距離f1より大きい焦点距離f2の第2集光光学系とから形成される両側テレセントリック光学系と、さらに、光路変更手段と、を備え、前記光整形手段の前記発光源から出射された光が入射する側の端部における前記光束の光軸に対して直角な断面の面積が、前記光整形手段の前記光束が出射する側の端部における前記光束の光軸に対して直角な断面の面積より小さく、前記第1集光光学系が前記第2集光光学系に対して前記2次元光源の側に設けられたレンズ系であり、前記第2集光光学系は、反射ミラー系から構成され、前記第2集光光学系から出射する光束の出射方向が、前記第1集光光学系を通過した光束の光軸に対して傾斜し、さらに、前記光路変更手段は、前記第2集光光学系から出射した光束の光路を変更する反射プリズムシート(反射型プリズムシートともいう)からなる、ことを特徴としている。
【0006】
前記光整形手段は、入射側端面から入射した光をロッド内部で全反射させて出射側端面から出射させる光整形ロッドからなる。
【0007】
なお、特許文献1の装置は、前記第1集光光学系(レンズ系)の光軸方向をz軸方向とし、前記反射プリズムシートの厚み方向をz軸に直角のy軸方向とし、z軸方向とy軸方向とに直角の方向をx軸方向としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5830828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の装置によれば、光利用効率を向上させることにより、発光源とするLEDの使用電力を必要最小限にして、低消費電力化を図ることができる。しかし、特許文献1の装置では、光整形ロッドの入射面でロッドに取り込めない光が発生しており、光利用効率を下げている。
【0010】
さらに、特許文献1の装置は、焦点距離f1のレンズ系を物体側、焦点距離f2(f2>f1)の反射ミラー系を像側とする両側テレセントリック光学系を形成する構成としたことから、例えば100インチを超えるような大画面に適用するためにレンズ系と反射ミラー系の相互間隔を拡げた場合、画面全体を均一に照明するには、反射ミラー系のy方向寸法を大きくする必要があり、必然的に、バックライト装置の厚み方向サイズを大きくしなければならず、そのため、大画面への適用を図る際に、装置の薄型化が困難であることが分かった。
【0011】
また、特許文献1の装置は、照明型看板、ポスターや絵画用照明、および面均一輝度の一般の照明などに応用することも可能であるが、照明対象面が大面積である場合、大面積の照明対象面への応用を図る際に、上記と同様の理由で、装置の薄型化が困難である。
【0012】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、前記整形ロッドの代わりにトロイダルレンズからなる合成レンズ系を用いることで、光利用効率をさらに向上させることを課題とし、光源の使用電力を必要最小限にして、低消費電力化を図ることができ、かつ、大画面の液晶ディスプレイ、または、観察対象面が大である照明型看板、ポスターや絵画用照明、および面均一輝度の一般の照明への適用を図る際に、装置の薄型化が容易に達成できる、照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、上記目的を達成するために、本発明に係る照明装置は、以下の要旨構成を有する。
[1] 面光源、合成レンズ系、反射ミラーおよび反射プリズムシートからなる照明装置において、
前記合成レンズ系は、それぞれ直交するx軸、y軸およびz軸の3次元で構成され、
z軸上に前記合成レンズ系の光軸を有し、
前記面光源から出射した光束を凹面形状の入射面から取り込んでx方向の曲率半径がy方向の曲率半径より大きいトロイダル面形状の出射面から出射する第1のトロイダルレンズと、
前記第1のトロイダルレンズから出射した光束を入射面から取り込んでx方向の曲率半径がy方向の曲率半径より大きいトロイダル面形状の出射面から出射する第2のトロイダルレンズと、を具備し、
前記第1のトロイダルレンズに近い側から順に、y-z平面内の前側焦点Fyzおよびx-z平面内の前側焦点Fxzを有し、前側焦点Fxzと前記第1のトロイダルレンズの入射面との間で、かつ前記前側焦点Fyzの近傍を前記面光源の位置とし、
前記面光源と前記合成レンズ系とからなる照明光学系は、前記合成レンズ系の出射側のx-y平面に矩形状の照明エリアを有し、
さらに、
前記反射ミラーは、焦点距離f2を有し、前記第2のトロイダルレンズとの距離をほぼf2として、前記第2のトロイダルレンズから出射した光束をz軸と傾斜した方向へ反射させる手段を有し、
前記反射プリズムシートは、前記反射ミラーから反射した光束の光路を変更する手段を有する
ことを特徴とする照明装置。
[2] [1]において、前記面光源の出射面と前記第1のトロイダルレンズの入射面とのx-y平面への正射影を、x方向、y方向がそれぞれ長辺方向、短辺方向になる矩形状としたことを特徴とする照明装置。
[3] [1]または[2]において、前記照明光学系を複数具備したことを特徴とする照明装置。
[4] [1]~[3]のいずれか一つにおいて、前記照明装置を液晶用バックライト装置としたことを特徴とする照明装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、トロイダルレンズの活用により光利用効率をさらに向上させ、光源の使用電力を必要最小限にして、低消費電力化を図ることができ、かつ、大画面の液晶ディスプレイ、または、観察対象面が大である照明型看板、ポスターや絵画用照明、および面均一輝度の一般の照明への適用を図る際に、装置の薄型化が容易に達成できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の一例を示す模式図である。
図2】矩形状の照明エリアを示す模式図である。
図3】照明光学系を複数具備した実施形態の一例を示す模式図である。
図4】実施例1の光学シミュレーションによる光線追跡図である。
図5】実施例1の光学シミュレーションによる反射ミラー直前の照明エリア(照明距離=273mm)の2次元強度図である。
図6】実施例1の光学シミュレーションによる反射プリズムシートからの2次反射光束の2次元強度図である。
図7】実施例2の光学シミュレーションによる照明エリア(照明距離=1m)に照射される光の2次元強度図である。
図8】実施例2の光学シミュレーションによる照明エリア(照明距離=10m)に照射される光の2次元強度図である。
図9】実施例2の光学シミュレーションによる照明エリア(照明距離=100m)に照射される光の2次元強度図である。
図10】実施例2の光学シミュレーションによる照明エリア(照明距離=1m)に照射される光の2次元強度図である。
図11】平行光バックライト装置(b)~(d)と既存のバックライト装置(a)を出射される画像光の主光線方向の違いを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付し、重複した説明を適宜省略する。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0017】
図1は、本発明の実施形態の一例を模式的に示しており、(a)はy-z断面図、(b)はx-z断面図である。
【0018】
図1の照明装置は、面光源1、合成レンズ系5、反射ミラー8および反射プリズムシート9からなる。
【0019】
面光源1は、点光源や線光源と比べて後述の照明エリアを形成しやすいため採用され、例えばLEDチップからなる。
【0020】
合成レンズ系5は、それぞれ直交するx軸、y軸およびz軸の3次元で構成され、z軸上に合成レンズ系2の光軸を有する。
【0021】
上記に加え、合成レンズ系5は、面光源1から出射した光束を凹面形状の入射面から取り込んでトロイダル面形状の出射面から出射する第1のトロイダルレンズ2および該第1のトロイダルレンズ2から出射する光束を入射面から取り込んでトロイダル面形状の出射面から出射する第2のトロイダルレンズ3を具備する。
【0022】
第1のトロイダルレンズ2と、第2のトロイダルレンズ3とは、それぞれのトロイダル面の曲率半径を、「x方向の曲率半径>y方向の曲率半径」とした。
【0023】
そのため、合成レンズ系5のy-z平面内の前側焦点Fyzは、x-z平面内の前側焦点Fxzと比べて第1のトロイダルレンズ2に近い位置にある。そこで本発明では、前側焦点Fxzと第1のトロイダルレンズ2との間でかつ前側焦点Fyzの近傍を前記面光源1の位置としている。
【0024】
なお、図1において、合成レンズ系5は、y-z平面内、x-z平面内にそれぞれ前側主点Myz、Mxzを有し、かつ前側主点Myzから前側焦点Fyzまでの距離であるy-z平面内の焦点距離fyzおよび前側主点Mxzから前側焦点Fxzまでの距離であるx-z平面内の焦点距離fxzを有する。
【0025】
ここで、前側焦点Fyzの近傍とは、前側焦点Fyzを中心とする、半径がfyzの20%の円内でかつz軸上の領域を意味する。
【0026】
また、第1のトロイダルレンズ2の入射面の凹面形状は、円筒内周面形状(図1参照)とすることで、面光源1から出射された光束の取り込み率を約96%とすることができ、さらに、メニスカスレンズ面形状(図示せず)とすることで、面光源1から出射された光束の取り込み率をほとんど100%とすることができる。
【0027】
なお、第2のトロイダルレンズ3の入射面の形状は、平面形状(図1参照)でもよく、凹面形状(図示せず)でもよい。
【0028】
上述のように、前側焦点Fyzが前側焦点Fxzと比べて第1のトロイダルレンズ2に近い位置になる合成レンズ5とし、前側焦点Fxzと第1のトロイダルレンズ2の間でかつ前側焦点Fyzの近傍を面光源1の位置としたことで、面光源1と合成レンズ系5との一式(以下、照明光学系7ともいう)においては、出射側の光束の拡がりがy-z平面内では小さくなって平行光束に近づいた光束が得られ、一方、x-z平面内ではy-z平面内の光束よりも拡がりの大きい光束が得られる。したがって、図2に示すように、照明光学系7は合成レンズ系5の出射側のx-y平面に、x方向を長辺方向とし、y方向を短辺方向とする矩形状の照明エリアを有する。ここで、照明エリアとは、看者の肉眼で背景と識別できる領域のことである。この領域は、照度の違いで決定される。
【0029】
図2には、図形の矩形状率の定義を示した。すなわち、
図形の矩形状率=(図形の面積/図形に外接する矩形の面積)×100(%)
とした。この定義において、「外接する矩形」とは、外接する矩形のうち最小の矩形を意味する。そして、図形が照明エリアであるときの矩形状率(すなわち照明エリアの矩形状率)が、図形が楕円であるときのそれ(すなわち楕円の矩形状率=78%)よりも大である場合、その照明エリアを「矩形状の照明エリア」という。
【0030】
この矩形状の照明エリア内では、照度のばらつきが、中央値±40%以内と、均一な明るさが得られる。しかし、面光源1が前側焦点Fyzの近傍を外れると、矩形状の照明エリアを得ることが困難になる。
【0031】
前記矩形状の照明エリアの長辺と短辺の比は、合成レンズ系5のトロイダル面のy方向とx方向の曲率半径の比によって設定できる。なお、面光源1を起点とした出射側のz方向距離を、照明距離ともいう。
【0032】
さらに、反射ミラー8は、焦点距離f2を有し、第2のトロイダルレンズ3との距離をほぼf2として、第2のトロイダルレンズ3から出射した光束(以下、1次光束ともいう。)をz軸と傾斜した方向へ反射させる手段として反射基板8B上に形成した凹面形状の反射面8Aを有する。ここで、ほぼf2とは、f2±20%以内であることを意味する。
【0033】
焦点距離f2を有する凹面形状の反射面8A(以下、単に、反射面8Aともいう。)と第2のトロイダルレンズ3との距離をほぼf2とすることにより、反射面8Aの光軸がz軸上にある場合、1次光束は以下のように振る舞う。
【0034】
すなわち、1次光束はx-z平面内では反射面8Aの焦点付近から出射し拡散して反射面8Aに入射するから、反射面8Aからの反射光束は平行光束に近くなり、一方、1次光束はy-z平面内では、x-z平面内よりも、より平行光束に近い状態で反射面8Aに入射するから、反射面8Aからの反射光束(以下、1次反射光束ともいう。)は反射面8Aの焦点付近に集光する。
【0035】
そこで、反射面8Aの光軸をz軸から傾斜(図1ではy-z平面内で時計回りに角度θだけ回転)させることで、1次反射光束の主光線がz軸と角度2θだけ傾斜する方向に傾斜し、反射プリズムシート9に入射することができる。
【0036】
また、反射プリズムシート9は、1次反射光束の光路を変更する手段として、シート基板9B上に形成した複数のプリズム状の突条9Aを有する。プリズム状の突条9Aの側面は1次反射光束を反射し、2次反射光束とするよう構成されている。シート基板9Bを、x-z平面と平行に設置し(図1参照)、反射プリズム状の突状9Aの高さ、頂角、配列間隔を反射面8Aの角度θに応じた適宜の値に設定することにより、2次反射光束の光路をz方向の下向きの光路とすることができる。
【0037】
したがって、図1の実施形態では、照明光学系7から出射した光束(1次光束)が矩形状の照明エリアを形成して、反射ミラー8の反射面8Aと重なり合うようにし、1次光束を反射面8Aで反射させて斜め(左上)方向に向かう1次反射光束として反射プリズムシート9に入射し、反射させてy方向下向きの2次反射光束として照明対象面(図示せず)に入射させることができる。このとき、1次光束から1次反射光束への転換時、および1次反射光束から2次反射光束への転換時の光の損失はそれぞれ約5%程度以下に抑えることができる。そのため、照明対象面が矩形状とされる通常の場合において、広範囲のサイズおよび縦横比に対応して、光利用効率を高め、かつ照明対象面の輝度均一性を高めることができる。
【0038】
また、上述の実施形態において、前述の照明エリアの矩形状率(図2参照)をより高める観点から、面光源1の出射面と第1のトロイダルレンズ2の入射面とのx-y平面への正射影を、x方向、y方向がそれぞれ長辺方向、短辺方向になる矩形状とすることが好ましく、図1の例ではそのようにした。
【0039】
また、上述の実施形態において、面光源1と合成レンズ系5とからなる照明光学系7を複数具備した実施形態として、明るさを増大させることもできる。これの一例を図3に示す。図3は、照明光学系7をx方向に3つ具備した例である。なお、図3では、反射ミラーと反射プリズムシートは図示せずとした。
【0040】
上述の実施形態に係る照明装置によれば、トロイダルレンズの活用により光利用効率をさらに向上させ、光源の使用電力を必要最小限にして、低消費電力化を図ることができ、かつ、大画面の液晶ディスプレイ、または、観察対象面が大である照明型看板、ポスターや絵画用照明、および面均一輝度の一般の照明への適用を図る際に、装置の薄型化が容易に達成できる。
【0041】
また、上述の実施形態に係る照明装置を液晶用バックライト装置とすることで、特許文献1の装置と比べて、薄型でかつ光利用効率および輝度均一性の高い液晶用バックライト装置を得ることができる。例えば100インチサイズの液晶用バックライト装置を本発明の照明装置で構成した場合、特許文献1の装置と比べて装置の厚みを約40%削減できる。
【実施例
【0042】
以下、実施例を挙げて本発明の実施形態をより詳しく説明する。
[実施例1] 実施例1として、図1の実施形態において、照明装置の諸元を以下のとおりとした。
(イ)面光源1は、LEDチップからなるものとし、出射面を横4mm×縦1mmの矩形平面とした。なお、ここで、横はx方向、縦はy方向を意味する(以下同じ)。
(ロ)第1のトロイダルレンズ2は、材質をガラス(S-LAH53)とし、レンズのx-y平面図形を横8mm×縦3.2mmの矩形とし、光軸上のレンズ厚みを2.3mmとし、入射面の曲率半径を横10mm×縦無限大とし、出射面の曲率半径を横5.5mm×縦2mmとした。
(ハ)第2のトロイダルレンズ3は、材質をガラス(SK5)とし、レンズのx-y平面図形を横54mm×縦24mmの矩形とし、光軸上のレンズ厚みを15mmとし、入射面の曲率半径を横無限大×縦無限大、出射面の曲率半径を横42mm×縦21mmとした。
(ニ)第1,第2のトロイダルレンズ2,3の間隔は光軸上で17.3mmとした。
(ホ)合成レンズ系5の前側焦点Fyz,Fxzの位置は、近軸理論では第1のトロイダルレンズ2の入射面から前側に、Fyzが0.656mm、Fxzが7.368mm離間した位置となるので、面光源1の出射面の位置を0.4mmとした。
(へ)反射ミラー8は、反射面8Aの焦点距離f2を238mmとし、第2トロイダルレンズ3との間隔をf2(=238mm)とし、x方向サイズを230mm、y方向サイズを30mm(ただし、傾斜前で傾斜の角度θが0°のとき)とし、傾斜の角度θを約3°とした。
【0043】
このとき、面光源1から反射面8A位置まで照明距離は、約273mmである。
(ト)反射プリズムシート9は、シート基板9Bのプリズム状の突条9A側の面がx-z平面と平行で、z軸の上方に9.5mm離間して第2トロイダルレンズ3と反射ミラー8との間を覆うように配置し、斜め右下方からの1次反射光束が反射してz軸方向の下向きの光路を進む2次反射光束となるように、プリズム状の突条9Aの高さ、頂角および配列間隔を設計した。
【0044】
実施例1の照明装置について、光学シミュレーションを行なった。図4は、実施例1の光学シミュレーションによる光線追跡図、図5は反射ミラー直前の照明エリア(照明距離=273mm)の2次元強度図、図6は、2次反射光束の2次元強度図である。なお、図6の2次反射光束の2次元強度は、反射プリズムシート9のシート基板面から14.5mm直下のものである。
【0045】
図4図5の光学シミュレーションの光線出力データによると、反射ミラー直前の照明エリアの光利用効率は約96%であった。
【0046】
図5では、反射ミラー直前の照明エリアは矩形状(長辺約200mm×短辺約24mm、矩形状率約99%)であり、照度のばらつきは、光学シミュレーションにおけるインコヒーレント放射照度によれば、約0.01~約0.02W/cm2(約0.015W/cm2±33%)となり、±40%以内を実現しており、均一な明るさであった。なお、黒背景中の光点のインコヒーレント放射照度が5×10-8W/cm2程度以上であれば、その光点は視認できる。
【0047】
なお、図5図6および後述の図7図10において、「照度」とは、インコヒーレント放射照度(光エネルギー分布のこと)を指す。
【0048】
また、図6では、2次反射光束の照明エリアは矩形状(長辺約238mm×短辺約200mm、矩形状率約96%)であり、照度が、約1.0×10-3~約1.8×10-3W/cm2(約1.4×10-3W/cm2±29%)になる、均一な明るさであった。
[実施例2] 実施例2として、照明光学系7のみの照明エリアの形状と明るさの、照明距離に対する依存性を調べるために、図1の実施形態において、照明光学系7の諸元を実施例1と同じとし、照明距離が1m、10m、100mの場合について照明エリアの形状および明るさを光学シミュレーションにより求めた。その結果を図7図9にそれぞれ示す。
【0049】
図7(照明距離=1m)では、照明エリアは矩形状(長辺約890mm×短辺約140mm、矩形状率約98%)であり、照度が、約4.0×10-4~約8.2×10-4W/cm2(約6.1×10-4W/cm2±34%)になる、均一な明るさであった。
【0050】
図8(照明距離=10m)では、照明エリアは矩形状(長辺約6.0m×短辺約1.3m、矩形状率約96%)であり、照度が、約4.4×10-6~約9.8×10-6W/cm2(約7.1×10-6W/cm2±38%)になる、均一な明るさであった。
【0051】
図9(照明距離=100m)では、照明エリアは矩形状(長辺約88m×短辺約12m、矩形状率約93%)であり、照度が、約6.5×10-8~約9.9×10-8W/cm2(約8.2×10-8W/cm2±21%)になる、均一な明るさであった。
【0052】
このように、照明光学系7は、照明距離が大きくなっても均一な明るさの矩形状の照明エリアを現出させる。よって、照明光学系7は、自動車や電車等の乗り物の前照灯に適用することで、夜間で前方の障害物がより早くかつより確実に発見されることにつながり、運転の安全性向上に寄与しうる。
[実施例3] 実施例3として、実施例1において、照明距離を1mに変更し、反射ミラー8について、反射面8Aの焦点距離f2を965mm、第2トロイダルレンズ3との間隔をf2(=965mm)、x方向サイズを890mm、y方向サイズを150mm(ただし、傾斜前で傾斜の角度θが0°のとき)、傾斜の角度θを約4°と、それぞれ変更した。また、反射プリズムシート9について、z軸からの上方の離間距離を75mmに変更した。
【0053】
実施例3の照明装置について、光学シミュレーションにより、z軸の直下75mmの位置での2次反射光束の照明エリアの形状および明るさを調べた結果、形状は矩形状(長辺約965mm×短辺約890mm、矩形状率約96%)、明るさは反射ミラー8直前のそれ(図7)の約10分の1のレベルで均一な明るさであった(ただし、図示せず)。
[実施例4] 実施例4として、図3の実施形態(照明光学系7を3つ用いる形態)において、照明光学系7の諸元を実施例1と同じとし、照明距離を1mとした場合の照明エリアの形状および明るさを光学シミュレーションにより求めた。その結果を図10に示す。なお、この光学シミュレーションでは、反射ミラー8および反射プリズムシート9は無視した。
【0054】
図10(照明距離=1m)では、照明エリアは矩形状(長辺約890mm×短辺約180mm、矩形状率約94%)であり、照度が、約1.1×10-3~約2.5×10-3W/cm2(約1.8×10-3W/cm2±39%)になる、均一な明るさであった。
【0055】
すなわち、照明光学系7を3つ用いた場合(図10)は、1つ用いた場合(図7)と比べ、照明距離1mでの照明エリアの明るさが約3倍になる。
[実施例5] 実施例5として、実施例4において、反射ミラー8について、反射面8Aの焦点距離f2を965mm、第2トロイダルレンズ3との間隔をf2(=965mm)、x方向サイズを890mm、y方向サイズを190mm(ただし、傾斜前で傾斜の角度θが0°のとき)、傾斜の角度θを約5°とした。また、反射プリズムシート9について、z軸からの上方の離間距離を95mmとした。
【0056】
実施例5の照明装置について、光学シミュレーションにより、z軸の直下95mmの位置での2次反射光束の照明エリアの形状および明るさを調べた結果、形状は矩形状(長辺約965mm×短辺約890mm、矩形状率約96%)、明るさは反射ミラー8直前のそれ(図10)の約10分の1のレベルで均一な明るさであった(ただし、図示せず)。
【符号の説明】
【0057】
1 面光源
2 第1のトロイダルレンズ
3 第2のトロイダルレンズ
5 合成レンズ系
7 照明光学系
8 反射ミラー
8A 凹面形状の反射面
8B 反射基板
9 反射プリズムシート
9A 反射プリズム状の突条
9B シート基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11