(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】欠陥検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/89 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
G01N21/89 H
(21)【出願番号】P 2021018560
(22)【出願日】2021-02-08
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】502178001
【氏名又は名称】学校法人梅村学園
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】近藤 考司
(72)【発明者】
【氏名】青木 公也
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-163533(JP,A)
【文献】特開2007-271311(JP,A)
【文献】特開2014-016374(JP,A)
【文献】特開平04-279856(JP,A)
【文献】特開2012-154941(JP,A)
【文献】特開2015-225003(JP,A)
【文献】特開2013-113650(JP,A)
【文献】特開2010-101714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/00-G01N21/958
G01J 3/00-G01J 4/04
G01J 7/00-G01J 9/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を置いて平行に並ぶ複数の凹溝を有する検査対象物の欠陥を検査する欠陥検査装置において、
前記検査対象物における前記凹溝が形成された検査対象部分に向けて検出光を発する発光部と、
前記発光部と前記検査対象部分との間で、前記発光部から発せられる検出光を、同検出光の波面を前記凹溝の延設方向において延びる面にする態様で直線偏光させる偏光子と、
前記検出光が前記検査対象部分において反射した反射光を受光するとともに、該反射光の偏光状態を検出する偏光状態検出部と、
前記偏光状態に基づいて前記反射光の直線偏光度を求めるとともに、該直線偏光度に基づいて前記検査対象物における欠陥の有無を判定する判定部と、
を有することを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記偏光状態に基づいて前記反射光の偏光角を求めるとともに、該偏光角および前記直線偏光度に基づいて前記検査対象物における欠陥の有無を判定する
請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記偏光子は、前記検出光の波面が延びる方向と前記凹溝の延設方向とを一致させる態様で、当該検出光を直線偏光させるものである
請求項1または2に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記凹溝の内部形状は、同凹溝の幅方向の中心を通る中心面を対象面とする面対称の形状をなし、
前記偏光子は、前記検出光の波面を前記凹溝の並び方向に直交する面とする態様で、当該検出光を直線偏光させるものである
請求項1~3のいずれか一項に記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記発光部および前記偏光子は、前記検査対象部分における前記凹溝の並び方向の全体に前記検出光を照射するものであり、
前記偏光状態検出部は、前記検査対象部分における前記凹溝の並び方向の全体からの前記反射光を受光するものである
請求項1~4のいずれか一項に記載の欠陥検査装置。
【請求項6】
前記発光部および前記偏光子および前記偏光状態検出部を有する検出装置と検査対象物との相対位置を前記凹溝の延設方向において変更する位置変更部を有する
請求項5に記載の欠陥検査装置。
【請求項7】
前記検出光の前記検査対象部分への入射角は10度以下になっている
請求項1~6のいずれか一項に記載の欠陥検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平行に延びる複数の凹溝を有する検査対象物の欠陥検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型の燃料電池のセルは、イオン交換膜からなる電解質膜を一対の電極で挟む膜電極接合体と、膜電極接合体を挟む一対のセパレータとを備えている。セパレータは薄板状をなすとともに、間隔を置いて平行に延びる多数の凹溝を有している。上記セルの内部にはセパレータの凹溝の内面と膜電極接合体の外面とによって流体流路が区画形成されている。そして、それら流体流路にはガス(燃料ガスや酸化剤ガス)が供給される。
【0003】
近年、燃料電池用のセパレータを検出対象物として、その欠陥(傷、異物の付着など)を検査する装置が求められている。欠陥検査装置としては、検査対象物を撮像した撮像画像を用いて欠陥検査を行うものが知られている(例えば特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載の装置は、検査対象物に検出光を照射する照明装置と、同検査対象物を撮像する撮像カメラとを有する。検査対象物に欠陥があると、その部分における反射光の輝度が欠陥の無い検査対象物とは異なる値になる。特許文献1の装置では、撮像カメラによる撮像画像から、そうした反射光の輝度の違いを把握することで、検査対象物における欠陥の有無が判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の装置において、検査対象物の凹溝の開口に向けて検出光を照射した場合、同検査対象物における凹溝の底面や、隣り合う凹溝に挟まれた部分の頂面は、検出光の入射角が小さくなるために反射光の輝度が大きくなり易い。そのため、この場合には上記底面や頂面は撮像画像において明るい部分になる。これに対し、凹溝の内側面は、照明装置から照射される検出光の入射角が大きくなるために反射光の輝度が小さくなり易く、撮像画像において比較的暗い部分になる。
【0007】
このことから、凹溝の底面や上記頂面の検査を適正に行うべく、底面や頂面が適度に明るくなるように照明装置から照射される検出光の強度を設定すると、凹溝の内側面が暗くなってしまい、同内側面の検査を適正に行うことができなくなるおそれがある。その一方で、凹溝の内側面の検査を適正に行うべく内側面が適度に明るくなるように検出光の強度を設定すると、同凹溝の底面や上記頂面が明るくなりすぎてしまう。そのため、この場合には凹溝の底面や上記頂面の検査を適正に行うことができなくなるおそれがある。
【0008】
ここで、適度の明るさで検査面を照らした状態で同検査面を撮像するとの欠陥検査を、「凹溝の底面および上記頂面」、「凹溝の一方の内壁面」、「凹溝の他方の内壁面」といった3つの検査面について各別に実行することも考えられる。これにより、各検査面についての欠陥検査を、検査対象の検査面を適度に明るく照らした状態で実行することが可能になるため、それぞれ高い精度で実行することが可能になる。ただし、この場合には、互いの検出光が干渉しないように、「凹溝の底面および上記頂面」の欠陥検査と、「凹溝の一方の内壁面」の欠陥検査と、「凹溝の他方の内壁面」の欠陥検査とを異なるタイミングでに実行する必要がある。そのため、検査対象物の全体の欠陥検査にかかる時間が長くなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための欠陥検査装置は、間隔を置いて平行に並ぶ複数の凹溝を有する検査対象物の欠陥を検査する欠陥検査装置において、前記検査対象物における前記凹溝が形成された検査対象部分に向けて検出光を発する発光部と、前記発光部と前記検査対象部分との間で、前記発光部から発せられる検出光を、同検出光の波面を前記凹溝の延設方向において延びる面にする態様で直線偏光させる偏光子と、前記検出光が前記検査対象部分において反射した反射光を受光するとともに、該反射光の偏光状態を検出する偏光状態検出部と、前記偏光状態に基づいて前記反射光の直線偏光度を求めるとともに、該直線偏光度に基づいて前記検査対象物における欠陥の有無を判定する判定部と、を有する。
【0010】
上記構成では、非偏光の検出光についての反射光の強度を判定パラメータとして欠陥検査を実行する比較例の装置とは異なり、直線偏光した検出光についての反射光の直線偏光度を判定パラメータとして欠陥検査が実行される。そのため、発光部から検査対象部分の各部に同一の光量の検出光を発した場合において、同検査対象部分の各部における判定パラメータ(詳しくは、直線偏光度)の差を上記比較例の装置の判定パラメータ(反射光の強度)の差と比較して小さくすることができる。詳しくは、凹溝の底面や隣り合う凹溝に挟まれた部分の頂面における反射光の直線偏光度と同凹溝の内側面における反射光の直線偏光度との差を、上記比較例の装置の各面における反射光の強度の差と比べて小さくすることができる。
【0011】
これにより、発光部から検査対象部分の各部に同一の光量の検出光を発した状態で、凹溝の底面や上記頂面に対応する上記直線偏光度と、同凹溝の内側面に対応する上記直線偏光度とを、共に欠陥検査に適した適当な範囲の値にすることが可能になる。そのため、検査対象物の欠陥検査の実行に際して、発光部による検出光の照射態様を検査対象面(底面や、頂面、内側面)に応じて変更する必要がなくなる。したがって、検査対象物の欠陥検査を、高精度且つ短時間で実行することができる。
【0012】
上記欠陥検査装置において、前記判定部は、前記偏光状態に基づいて前記反射光の偏光角を求めるとともに、該偏光角および前記直線偏光度に基づいて前記検査対象物における欠陥の有無を判定することが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、複数の判定パラメータを用いて欠陥検査を実行することができるため、より多くの種類の欠陥を検査することができるようになる。
上記欠陥検査装置において、前記偏光子は、前記検出光の波面が延びる方向と前記凹溝の延設方向とを一致させる態様で、当該検出光を直線偏光させるものであることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、検出光の波面が延びる方向と凹溝の並び方向とを一致させる態様で検出光が直線偏光される装置と比較して、検査対象物に欠陥が有る場合と無い場合とでの判定パラメータの差を大きくすることができる。そのため、検査対象物の欠陥検査を精度良く実行することができる。
【0015】
上記欠陥検査装置において、前記凹溝の内部形状は、同凹溝の幅方向の中心を通る中心面を対象面とする面対称の形状をなし、前記偏光子は、前記検出光の波面を前記凹溝の並び方向に直交する面とする態様で、当該検出光を直線偏光させるものであることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、一対の内側面において検出光を略同一の条件で反射させることができるため、それら内側面についての欠陥検査を共に精度良く実行することができる。
上記欠陥検査装置において、前記発光部および前記偏光子は、前記検査対象部分における前記凹溝の並び方向の全体に前記検出光を照射するものであり、前記偏光状態検出部は、前記検査対象部分における前記凹溝の並び方向の全体からの前記反射光を受光するものであることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、発光部および偏光子および偏光状態検出部と検査対象物との相対位置を、少なくとも凹溝の並び方向においては変更することなく、同検査対象物の全体の欠陥検査を実行することができる。そのため、上記相対位置を凹溝の並び方向において変更しつつ検査対象物の欠陥検査を行う装置と比較して、欠陥検査装置を簡素な構造にすることができる。
【0018】
上記欠陥検査装置において、前記発光部および前記偏光子および前記偏光状態検出部を有する検出装置と検査対象物との相対位置を前記凹溝の延設方向において変更する位置変更部を有することが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、上記相対位置を凹溝の延設方向において変更するとともに変更状態検出部による上記偏光状態の検出を実行するといった作業を繰り返すことにより、検査対象部分の全体における上記偏光状態の検出を行うことができる。
【0020】
上記欠陥検査装置において、前記検出光の前記検査対象部分への入射角は10度以下になっていることが好ましい。
偏光状態検出部によって検出される偏光状態をもとに直線偏光度を木目細かく算出するうえでは、検出光におけるP偏光の反射率とS偏光の反射率とが共に高いことが好ましく、それら反射率の差が小さいことが好ましい。検査対象部分に対する検出光の入射角が小さい小角度領域では、同検出光におけるP偏光(検出光の波面と平行)の反射率とS偏光(検出光の波面に垂直)の反射率とが略同一になる。そして、上記入射角が小角度領域を外れて大きくなると、P偏光の反射率が小さくなる。しかも、上記入射角が小角度領域を外れて大きくなると、S偏光の反射率が徐々に大きくなるため、P偏光の反射率とS偏光の反射率との差が大きくなる。
【0021】
上記構成によれば、上記入射角を小角度領域、すなわちP偏光の反射率が比較的大きくなる角度領域であって、且つP偏光の反射率とS偏光の反射率とが略同一になる角度領域の値にすることができる。これにより、直線偏光度を木目細かく算出することができるため、検査対象物の欠陥検査を精度良く実行することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、平行に延びる凹溝を有する検査対象物の欠陥検査を高精度且つ短時間で実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施形態の欠陥検査装置の概略構成を示す略図。
【
図3】セパレータの
図2の3-3線に沿った断面図。
【
図4】照明装置および偏光カメラの配置態様を示す側面図。
【
図5】偏光子によって直線偏光された検出光を概念的に示す略図。
【
図6】欠陥検査処理の実行手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、欠陥検査装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の欠陥検査装置は、検査対象物としての燃料電池用のセパレータ10を搬送する搬送部21を有している。搬送部21はベルトコンベアによって構成されている。セパレータ10の検査に際しては、セパレータ10が搬送部21の上に置かれる。そして、セパレータ10は、その状態で搬送部21によって搬送されるようになっている。
【0025】
図2に示すように、セパレータ10は、金属製の薄板状部材にプレス加工によって起伏が付与されたものである。セパレータ10は、略長方形の板状をなしている。セパレータ10の長手方向(
図2の左右方向)における両端部分にはそれぞれ、短手方向(
図2の上下方向)に並ぶ3つの貫通孔11が設けられている。貫通孔11のうちの2つは冷却水が通過する冷却水流路の一部を構成し、他の2つは燃料ガス(例えば、水素ガス)が通過する燃料ガス流路の一部を構成し、残りの2つは酸化剤ガス(例えば、酸素ガス)が通過する酸化剤ガス流路の一部を構成する。
【0026】
セパレータ10の長手方向における中央部分には、多数の凹溝12を有する凹溝部13が設けられている。凹溝12は、凹溝部13の長手方向における一方側の端部13Aと他方側の端部13Bとを繋ぐ態様で延びている。
【0027】
図3に示すように、凹溝部13は、基本的には、凹溝12と突条14とが交互に並ぶ態様の起伏を有する形状をなしている。これら凹溝12および突条14には、燃料電池セルの内部に冷却水流路や、燃料ガス流路、酸化剤ガス流路を構成する役割がある。
【0028】
図2および
図3に示すように、凹溝部13の長手方向における中央部分C(
図2中に破線で示す)では、凹溝12がセパレータの長手方向において延びている。また、凹溝部13の中央部分Cでは、凹溝12が等間隔で平行に延びている。本実施形態では、こうした凹溝部13の中央部分Cが、セパレータ10の検査対象部分になっている。
【0029】
凹溝部13の中央部分Cは、詳しくは、次のように構成されている。
図3に示すように、凹溝部13の中央部分Cは、断面形状がクランク状をなしている。凹溝12の底壁は、長手方向および短手方向に延在する略平板状をなしている。また突条14の頂壁は、長手方向および短手方向に延在する略平板状をなしている。凹溝12の底壁と突条14の頂壁との間の部分である斜壁部15は、斜め方向に延びている。この斜壁部15は、凹溝12の断面形状が底壁に向かうに連れて先細のテーパ形状をなす態様であり、且つ突条14の断面形状が頂壁に向かうに連れて先細のテーパ形状をなす態様で延びている。凹溝12の底壁および突条14の頂壁はそれぞれ、等間隔で平行に、セパレータ10の長手方向において延びている。
【0030】
図1および
図4に示すように、本実施形態の欠陥検査装置は、セパレータ10を照らす照明装置22と、セパレータ10において反射した反射光を検出する偏光カメラ23とを有している。照明装置22および偏光カメラ23は、搬送部21の上方に、移動不能な状態で固定されている。本実施形態では、偏光カメラ23が偏光状態検出部に相当する。
【0031】
照明装置22は、有底の四角筒状をなすケース24を有している。ケース24は斜め下方に向けて開口する態様で配置されている。ケース24の内部には複数の発光素子(LED)からなる発光部25が設けられている。照明装置22では、ケース24内の発光部25が、搬送部21によって搬送されるセパレータ10(詳しくは、検査対象部分である中央部分C)に向けて検出光を発するようになっている。
【0032】
照明装置22は、偏光フィルムからなる偏光子26を有している。偏光子26はケース24の開口部分の全体を覆う態様で設けられている。偏光子26は、発光部25とセパレータ10との間で、発光部25から発せられる検出光を直線偏光させるものである。
図5に、偏光子26によって直線偏光された検出光を概念的に示す。
図5に示すように、本実施形態では、検出光の波面Sの延びる方向とセパレータ10の凹溝12の延設方向とが同一になる態様で、偏光子26によって検出光が直線偏光される。
【0033】
ここで、
図3に示すように、セパレータ10の凹溝12の内部形状は、同凹溝12の幅方向の中心を通る中心面を対象面とする面対称の形状をなしている。
図5に示すように、本実施形態では、偏光子26により、検出光の波面Sを凹溝12の並び方向に直交する面、すなわち凹溝12の延設方向および上下方向に延在する面とする態様で、検出光が直線偏光されるようになっている。
【0034】
図4に示すように、本実施形態では、照明装置22から発せられる検出光についてのセパレータ10に対する上記延設方向の入射角θが10度以下(具体的には、7度)になるように、照明装置22が配置されている。また、
図1に示すように、照明装置22は前記搬送部21の幅方向において延びる細長い形状をなしている。照明装置22は、セパレータ10の中央部分Cにおける前記凹溝12の並びる方向の全体に検出光を照射するようになっている。
【0035】
図1および
図4に示すように、偏光カメラ23は、セパレータ10によって反射した反射光を受光する受光部27を有している。偏光カメラ23は、照明装置22から発せられてセパレータ10の中央部分Cにおいて正反射した反射光(具体的には、反射角θが7度の反射光)を上記受光部27によって受光することの可能な態様で設けられている。
【0036】
偏光カメラ23の受光部27を構成する各画素部は、セパレータ10の中央部分Cからの反射光を受光するとともに、同反射光についての偏光状態(後述する偏光輝度I0,I45,I90,I135)を検出するものである。偏光カメラ23の各画素部は、第1検出部、第2検出部、第3検出部、および第4検出部といった4つの検出部を有している。
【0037】
第1検出部は、反射光の0度(波面が検出光の波面Sと同一になる角度)成分を通過させる偏光子と、同偏光子を通過した反射光の輝度を検出する検出素子とを有する。この第1検出部により、反射光の0度偏光成分の輝度(以下、偏光輝度I0)が検出される。
【0038】
第2検出部は、反射光の45度(検出光の波面Sから45度ずれた波面になる角度)成分を通過させる偏光子と、同偏光子を通過した反射光の輝度を検出する検出素子とを有する。この第2検出部により、反射光の45度偏光成分の輝度(以下、偏光輝度I45)が検出される。
【0039】
第3検出部は、反射光の90度(検出光の波面Sから90度ずれた波面になる角度)成分を通過させる偏光子と、同偏光子を通過した反射光の輝度を検出する検出素子とを有する。この第3検出部により、反射光の90度偏光成分の輝度(以下、偏光輝度I90)が検出される。
【0040】
第4検出部は、反射光の135度(検出光の波面Sから135度ずれた波面になる角度)成分を通過させる偏光子と、同偏光子を通過した反射光の輝度を検出する検出素子とを有する。この第4検出部により、反射光の135度偏光成分の輝度(以下、偏光輝度I135)が検出される。
【0041】
偏光カメラ23の各画素部は、右下に第1検出部が配置され、右上に第2検出部が配置され、左上に第3検出部が配置され、左下に第4検出部が配置されるといったように、4つの検出部が並ぶ構造をなしている。偏光カメラ23は、こうした画素部が、短手方向および長手方向において並ぶように配置された構造の、いわゆるエリアカメラである。なお本実施形態では、短手方向に並ぶ一列の画素部によって検出された値(偏光輝度I0,I45,I90,I135)のみが用いられる。
【0042】
偏光カメラ23は、セパレータ10の中央部分Cにおける前記凹溝12の並び方向の全体からの反射光を受光して検出するようになっている。
図1に示すように、本実施形態の欠陥検査装置は、制御装置28(本実施形態では、パーソナルコンピュータ)を有している。制御装置28には、偏光カメラ23の検出信号、詳しくは各画素部によって検出される偏光輝度I0,I45,I90,I135が入力されている。制御装置28には、セパレータ10の欠陥の有無を検査するためのプログラムが予め記憶されている。本実施形態では、偏光カメラ23によって検出した反射光の偏光状態(偏光輝度I0,I45,I90,I135)に基づいて制御装置28による演算処理(画像処理)を実行するとともに、その演算結果をもとにセパレータ10の欠陥を検査するといったように、欠陥検査処理が実行される。本実施形態では、制御装置28が判定部に相当する。以下、本実施形態の欠陥検査処理について、詳しく説明する。
【0043】
図6は、上記欠陥検査処理の実行手順を示している。
図6のフローチャートに示される一連の処理は、所定周期毎の処理として、制御装置28により実行される。
図6に示すように、この処理では先ず、偏光カメラ23により、セパレータ10の中央部分Cの各部についての偏光状態(偏光輝度I0,I45,I90,I135)が検出される(ステップS11)。
【0044】
偏光カメラ23(
図1)によって反射光の偏光状態を検出する領域は、凹溝12の延設方向と直交する方向、すなわちセパレータ10の短手方向に延びる形状をなしている。欠陥検査処理(
図6)のステップS11では、搬送部21によるセパレータ10の搬送に合わせて、予め定められたタイミングで偏光カメラ23による偏光状態の検出が実行されるとともに、その検出データが制御装置28に記憶される。これにより、セパレータ10の中央部分Cの全体について、搬送方向における前側の部分から順に、偏光カメラ23による検出が実行されてその検出データが制御装置28に記憶されるようになる。なお本実施形態では、搬送部21が、発光部25および偏光子26および偏光カメラ23を有する検出装置とセパレータ10との相対位置を前記凹溝12の延設方向において変更する位置変更部に相当する。
【0045】
そして、偏光カメラ23によって検出された偏光輝度I0,I45,I90,I135に基づいて、セパレータ10の中央部分Cの各部についての直線偏光度DOLPおよび偏光角αが算出される(ステップS12)。直線偏光度DOLPおよび偏光角αは以下のように算出される。
【0046】
先ず、偏光カメラ23における同一の画素部によって検出された偏光輝度I0,I45,I90,I135に基づいて、以下の関係式(1)~(3)から、ストークスパラメータS0,S1,S2が算出される。
【0047】
S0=(I0+I45+I90+I135)/2 …(1)
S1=I0-I90 …(2)
S2=I45-I135 …(3)
その後、ストークスパラメータS0,S1,S2に基づいて、以下の関係式(4)および(5)から、直線偏光度DOLPおよび偏光角αが算出される。なお、関係式(5)における「arctan」はアークタンジェントである。
【0048】
直線偏光度DOLP=√(S1の二乗+S2の二乗)/S0 …(4)
偏光角α=arctan(S2/S1) …(5)
その後、セパレータ10の中央部分Cの全体について、その各部における直線偏光度DOLPおよび偏光角αの分布を示す画像データDTが作成される(ステップS13)。
【0049】
具体的には、セパレータ10の中央部分Cの各部における直線偏光度DOLPを青色(B)で表した画像データが作成される。この画像データでは、直線偏光度DOLPが100%に近い値であるほど、すなわち検出光の波面Sと同一の波面となる偏光成分が多いときほど薄い色が定められる。また、セパレータ10の中央部分Cの各部における偏光角αを緑色(G)で表した画像データが作成される。この画像データでは、偏光角αが0度に近い値であるほど、すなわち検出光の偏光角からの反射光の偏光角αのずれ量が小さいときほど薄い色が定められる。そして、セパレータ10の各部における直線偏光度DOLPを青色(B)で表した画像データと、偏光角αを緑色(G)で表した画像データとを重ね合わせることで検査用の画像データDTが作成される。本実施形態では、一つの検査用の画像データDTにおいて、青色(B)と緑色(G)との中間色により、セパレータ10の中央部分Cの各部における直線偏光度DOLPと偏光角αとが表される。
【0050】
その後、上記検査用の画像データDTをもとにセパレータ10の欠陥の有無が判定される(ステップS14)。具体的には、上記検査用の画像データDTと欠陥の無い正常なセパレータに対応する画像データとが比較されるとともに、その比較結果をもとにセパレータ10における欠陥の有無が判定される。
【0051】
以下、本実施形態の欠陥検査装置による作用効果について説明する。
(1)本実施形態では、非偏光の検出光についての反射光の強度を判定パラメータとして欠陥検査を実行する比較例の装置とは異なり、直線偏光した検出光についての反射光の直線偏光度DOLPおよび偏光角αを判定パラメータとして欠陥検査が実行される。そのため、発光部25からセパレータ10の各部に同一の光量の検出光を発した場合において、同セパレータ10の各部における判定パラメータ(詳しくは、直線偏光度DOLPや偏光角α)の差を、上記比較例の装置と比較して小さくすることができる。詳しくは、凹溝12の底面や突条14の頂面における反射光の直線偏光度DOLP,偏光角αと同凹溝12の内側面における反射光の直線偏光度DOLP,偏光角αとの差を、上記比較例の装置の各面における反射光の強度の差と比べて小さくすることができる。
【0052】
これにより、発光部25からセパレータ10の各部に同一の光量の検出光を発した状態で、凹溝12の底面や突条14の頂面に対応する直線偏光度DOLP,偏光角αと、同凹溝12の内側面に対応する直線偏光度DOLP,偏光角αとを、共に欠陥検査に適した適当な範囲の値にすることができる。そのため、セパレータ10の欠陥検査の実行に際して、発光部25による検出光の照射態様を検査対象面(具体的には、凹溝12の底面、突条14の頂面、凹溝12の内側面)に応じて変更する必要がなくなる。したがって、セパレータ10の欠陥検査を、高い精度を維持しながら、短い時間で実行することができる。
【0053】
(2)本実施形態では、セパレータ10の欠陥検査に用いる判定パラメータとして、反射光の直線偏光度DOLPを採用することに加えて、同反射光の偏光角αが採用されている。そのため、反射光の直線偏光度DOLPのみを判定パラメータとして採用する場合と比較して、より多くの種類の欠陥を検査することができる。
【0054】
(3)本実施形態の装置では、検出光の波面Sが延びる方向と前記凹溝12の延設方向とを一致させる態様で、偏光子26によって検出光が直線偏光される。ここで仮に、検出光の波面が延びる方向と前記凹溝12の並び方向とを一致させる態様で、偏光子によって検出光が直線偏光される装置を比較例の装置とする。この場合に、発明者等による各種の実験やシミュレーションの結果から、次の内容が確認された。すなわち、本実施形態の装置では、上記比較例の装置と比較して、欠陥検査処理において作成される検査用の画像データDTにおける明度のコントラストが大きくなることが確認された。本実施形態の装置では、そうした画像データDTをもとにセパレータ10の欠陥の有無が判定される。そのため、この画像データDTにおける明度のコントラストが大きいほど、欠陥の有無についての高い判定精度が得られるようになると云える。この点をふまえて本実施形態では、偏光子26により、検出光の波面Sが延びる方向と前記凹溝12の延設方向とを一致させる態様で検出光を直線偏光させるようにしている。そのため、比較例の装置と比較して、セパレータ10の欠陥検査を精度良く実行することができる。
【0055】
(4)セパレータ10の凹溝12の内部形状は、同凹溝12の幅方向の中心を通る中心面を対象面とする面対称の形状をなしている。そして、偏光子26は、検出光の波面Sを凹溝12の並び方向に直交する面とする態様で、同検出光を直線偏光させるようになっている。これにより、凹溝12における一対の内側面において検出光を略同一の条件で反射させることができるようになる。そのため、それら内側面についての欠陥検査を、略同一の条件のもとで実行して、共に精度良く実行することができる。
【0056】
(5)本実施形態の装置では、発光部25および偏光子26を有する照明装置22が、セパレータ10の中央部分Cにおける凹溝12の並び方向の全体に検出光を照射する態様で設けられている。また、偏光カメラ23が、セパレータ10の中央部分Cにおける凹溝12の並び方向の全体からの反射光を受光する態様で設けられている。そのため、照明装置22および偏光カメラ23とセパレータ10との相対位置を同セパレータ10の凹溝12の並び方向においては変更することなく、同セパレータ10の全体の欠陥検査を実行することができる。したがって、照明装置22および偏光カメラ23とセパレータ10との相対位置を凹溝12の並び方向において変更しつつ同セパレータ10の欠陥検査を行う装置と比較して、欠陥検査装置を簡素な構造にすることができる。
【0057】
(6)本実施形態では、搬送部21によってセパレータ10を搬送することによって、照明装置22および偏光カメラ23を有する検出装置と同セパレータ10との相対位置が凹溝12の延設方向において変更される。そのため、上記相対位置を凹溝12の延設方向において変更するとともに偏光カメラ23による反射光の偏光状態の検出を実行するといった作業を繰り返すことにより、セパレータ10の中央部分Cの全体における反射光の偏光状態の検出を行うことができる。
【0058】
(7)本実施形態では、照明装置22から発せられる検出光のセパレータ10への入射角θが「7度」になるように、同照明装置22が配置されている。
ここで、偏光カメラ23によって検出される偏光状態をもとに直線偏光度DOLPや偏光角αを木目細かく算出するうえでは、検出光におけるP偏光(検出光の波面Sと平行)の反射率とS偏光(検出光の波面Sに垂直)の反射率とが共に高いことが好ましい。また、偏光カメラ23によって検出される偏光状態をもとに反射光の直線偏光度DOLPや偏光角αを木目細かく算出するうえでは、P偏光の反射率とS偏光の反射率との差が小さいことが好ましい。
【0059】
セパレータ10の中央部分Cに対する検出光の入射角θが小さい小角度領域では、同検出光におけるP偏光の反射率とS偏光の反射率とが略同一になる。そして、上記入射角θが小角度領域を外れて大きくなると、P偏光の反射率が小さくなる。しかも、上記入射角が小角度領域を外れて大きくなると、S偏光の反射率が徐々に大きくなるため、P偏光の反射率とS偏光の反射率との差が大きくなる。発明者等による各種の実験やシミュレーションの結果から、検出光のセパレータ10への入射角θを10度以下に設定することで、上記P偏光の反射率とS偏光の反射率とが共に適度に高くなるとともに、それら反射率の差が適度に小さくなることが確認された。
【0060】
本実施形態によれば、上記入射角θを小角度領域、すなわちP偏光の反射率が比較的大きくなる角度領域であって、且つP偏光の反射率とS偏光の反射率とが略同一になる角度領域の値である「7度」にすることができる。これにより、反射光の直線偏光度DOLPや偏光角αを木目細かく算出することができるため、それら直線偏光度DOLPおよび偏光角αに基づくセパレータ10の欠陥検査を精度良く実行することができる。
【0061】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0062】
・偏光カメラ23として、前記第1検出部~第4検出部がそれぞれ凹溝12の並び方向において1列で並ぶ態様であって、且つ、第1検出部~第4検出部が4列で並ぶ態様で設けられた、いわゆるラインカメラを採用してもよい。
【0063】
・照明装置22から発せられる検出光のセパレータ10への入射角θは、任意に変更することができる。なお、上記入射角θは、反射光の直線偏光度DOLPや偏光角αを木目細かく算出するためには、10度以下に設定することが望ましい。上記構成では、入射角θの変更に合わせて、偏光カメラ23の位置を、検出光がセパレータ10において正反射した反射波を受光部27によって受光可能な位置であって、且つ、照明装置22と偏光カメラ23とが重ならない位置に変更すればよい。
【0064】
・搬送部21によるセパレータ10の搬送態様は任意に設定することができる。例えば、一定速度でセパレータ10を搬送するようにしてもよい。その他、反射光の偏光状態の検出のために検出位置で一時停止させるとともに検出完了後において次の検出位置まで移動させるといったように、間欠的にセパレータ10を搬送することも可能である。
【0065】
・照明装置22および偏光カメラ23とセパレータ10との相対位置を変更するために、搬送部21によってセパレータ10を移動させることに代えて、検査台に固定されたセパレータ10に対して照明装置22および偏光カメラ23を移動させるようにしてもよい。こうした構成によっても、セパレータ10の中央部分Cの全体についての偏光状態の検出を実行することができる。
【0066】
・セパレータ10における検出光の照射範囲や、偏光カメラ23によって反射光を受光する受光範囲を、セパレータ10の中央部分Cにおける凹溝12の並び方向の全体にしなくてもよく、同並び方向の一部にしてもよい。同構成によっても、照明装置22および偏光カメラ23とセパレータ10との相対位置を凹溝12の並び方向に変更しつつ同偏光カメラ23による反射光の検出を行うことで、セパレータ10の中央部分Cの全体についての偏光状態の検出を実行することができる。
【0067】
・偏光子によって直線偏光された検出光の波面Sが、上記凹溝12の並び方向に直交する面に対して同並び方向に若干傾いた面になる態様で、同偏光子による検出光の直線偏光を行うようにしてもよい。
【0068】
・偏光子によって直線偏光された検出光の波面Sの延びる方向が、上記凹溝12の延設方向に対して若干傾いた角度の面になる態様で、同偏光子による検出光の直線偏光を行うようにしてもよい。偏光子によって直線偏光された検出光の波面Sを凹溝12の延設方向において延びる面にする態様、詳しくは、検出光における電場の振動方向と凹溝12の延設方向とのなす角度が45度未満になる態様で、同偏光子によって検出光を直線偏光することが可能である。
【0069】
・欠陥判定処理(
図6)におけるセパレータ10の欠陥の有無の判定を、偏光角αを判定パラメータとして用いることなく、直線偏光度DOLPを判定パラメータとして用いて実行するようにしてもよい。
【0070】
・上記実施形態にかかる欠陥検査装置は、間隔を置いて平行に並ぶ複数の凹溝を有するセパレータであれば、任意の構造のセパレータに適用することができる。そうしたセパレータとしては、例えば7つ以上の貫通孔11を有するセパレータや、3つ以上の貫通孔11が冷却水流路の一部や、燃料ガス流路の一部、酸化剤ガス流路の一部を構成する構造のセパレータなどを挙げることができる。また、間隔をおいて平行に並ぶ複数の凹溝を有する物(検査対象物)であれば、燃料電池用のセパレータに限らず、上記実施形態にかかる欠陥検査装置を適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
10…セパレータ
12…凹溝
13…凹溝部
14…突条
15…斜壁部
21…搬送部
22…照明装置
23…偏光カメラ
25…発光部
26…偏光子
27…受光部
28…制御装置