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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】二酸化塩素溶液の生成方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 11/02 20060101AFI20240529BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20240529BHJP
   B01J 35/61 20240101ALI20240529BHJP
   C02F 1/461 20230101ALI20240529BHJP
   C25B 1/26 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
C01B11/02 F
B01J23/42 M
B01J35/61
C02F1/461 101Z
C25B1/26 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020126348
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023415
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】594109705
【氏名又は名称】アムテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174816
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 貴久
(74)【代理人】
【識別番号】100116056
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 信夫
(72)【発明者】
【氏名】藤田 友則
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0280673(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0305494(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0071627(US,A1)
【文献】特表平05-504170(JP,A)
【文献】特開2015-217334(JP,A)
【文献】特公昭46-025369(JP,B1)
【文献】特開2001-190956(JP,A)
【文献】特開昭56-126432(JP,A)
【文献】特開2007-099783(JP,A)
【文献】特開平01-009956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 11/00 - 11/24
B01J 21/00 - 38/74
C02F 1/461 - 1/467
C25B 1/00 - 9/77
C25B 13/00 - 15/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三室型電解槽を用いて二酸化塩素溶液を生成する二酸化塩素溶液の生成方法であって、
前記三室型電解槽は、
陽極を備えた陽極室と、
陰極を備えた陰極室と、
前記陽極室と前記陰極室との間に陽イオン交換樹脂が充填されたイオン交換室とを有し、
前記陽極室と前記陰極室と前記イオン交換室とはそれぞれ陽イオン交換膜によって区画されており、
前記イオン交換室に亜塩素酸塩溶液を供給する工程と、
前記陽極室及び前記陰極室に、水及び/又は電解質溶液を供給し電気分解を行うことで前記亜塩素酸塩溶液を酸性化し、酸性化亜塩素酸塩溶液を生成する工程と、
前記酸性化亜塩素酸塩溶液を触媒に接触させる工程とを含み、
前記触媒は、活性アルミナ担体に白金を0.01~0.17質量%担持させた白金アルミナ触媒であることを特徴とする二酸化塩素溶液の生成方法。
【請求項2】
前記活性アルミナ担体が、比表面積値50~300m/g、粒子径0.1~10mmであることを特徴とする請求項1に記載の二酸化塩素溶液の生成方法。
【請求項3】
前記亜塩素酸塩溶液の濃度が亜塩素酸イオン濃度として500~10000mg/Lであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の二酸化塩素溶液の生成方法。
【請求項4】
前記酸性化亜塩素酸塩溶液のpHが1.0~3.0であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の二酸化塩素溶液の生成方法。
【請求項5】
前記陽イオン交換樹脂の架橋度が16以上の強酸性陽イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の二酸化塩素溶液の生成方法。
【請求項6】
前記触媒の酸性化亜塩素酸塩との接触速度が、LHSV(液空間速度)で1~100hr-1であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の二酸化塩素溶液の生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気分解と触媒反応とを用いて亜塩素酸塩溶液から二酸化塩素溶液を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化塩素溶液は、酸化力・殺菌力に優れた物質であり、殺菌剤、漂白剤、および燻蒸消毒剤として商業的に広く利用されている。二酸化塩素溶液を生成する方法としては、亜塩素酸塩溶液を陽イオン交換樹脂と接触させて酸性化し、酸性化した亜塩素酸塩溶液を触媒と接触させて二酸化塩素溶液を生成する方法が知られている(特許文献1 参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2004-536761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法で二酸化塩素溶液を生成する場合、陽イオン交換樹脂の交換容量を超えると、陽イオン交換樹脂の再生処理等を行わなければならず、連続的に二酸化塩素溶液を生成できないという問題が生じていた。
【0005】
本発明は、かかる従来発明における課題に鑑みてされたものであり、連続的に長期間、二酸化塩素溶液を生成することができる二酸化塩素溶液の生成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも以下のような構成を備え、もしくは手順を実行する。
【0007】
本発明の一局面に係る二酸化塩素溶液の生成方法は、三室型電解槽を用いて二酸化塩素溶液を生成する二酸化塩素溶液の生成方法であって、前記三室型電解槽は、陽極を備えた陽極室と、陰極を備えた陰極室と、前記陽極室と前記陰極室との間に陽イオン交換樹脂が充填されたイオン交換室とを有し、前記陽極室と前記陰極室と前記イオン交換室とはそれぞれ陽イオン交換膜によって区画されており、前記イオン交換室に亜塩素酸塩溶液を供給する工程と、前記陽極室及び前記陰極室に、水及び/又は電解質溶液を供給し電気分解を行うことで前記亜塩素酸塩溶液を酸性化し、酸性化亜塩素酸塩溶液を生成する工程と、前記酸性化亜塩素酸塩溶液を触媒に接触させる工程とを含む、ことを特徴とする。
かかる構成により、連続的に長期間、二酸化塩素溶液を生成することができる。これは、三室型電解槽を使用することにより、陽イオン交換樹脂の再生処理が不要となるためである。
【0008】
また、好ましくは、前記触媒は、活性アルミナ担体に白金を0.01~0.25質量%担持させた白金アルミナ触媒であることを特徴とする。
かかる構成により、二酸化塩素の生成収率をより向上させることができる。
【0009】
また、好ましくは、前記活性アルミナ担体が、比表面積値50~300m/g、粒子径0.1~10mmであることを特徴とする。
かかる構成により、より安定して酸性化亜塩素酸塩溶液と触媒とを反応させることができる。
【0010】
また、好ましくは、前記亜塩素酸塩溶液の濃度が亜塩素酸イオンとして500~10000mg/Lであることを特徴とする。
かかる構成により、電流効率の低下又は二酸化塩素の収率の低下を防ぐことができる。亜塩素酸イオン濃度が500mg/Lより低いと亜塩素酸塩の酸性化処理において電流効率が悪くなる。10000mg/L以上では、酸性化した亜塩素酸塩溶液のpHが低くなり、触媒との接触前に亜塩素酸イオンの分解反応が進行して二酸化塩素の収率が低下する。
【0011】
また、好ましくは、前記酸性化亜塩素酸塩溶液のpHが1.0~3.0であることを特徴とする。
かかる構成により、触媒の寿命の低下又は二酸化塩素の収率の低下を防ぐことができる。pH値が1.0より低いと触媒の寿命が短くなり、pH値が3.0より高いと二酸化塩素の収率が低下する。
【0012】
また、好ましくは、前記陽イオン交換樹脂の架橋度が16以上の強酸性陽イオン交換樹脂であることを特徴とする。
かかる構成により、陽イオン交換樹脂の劣化を防ぐことができる。
【0013】
また、好ましくは、前記触媒の酸性化亜塩素酸塩との接触速度が、LHSV(液空間速度)で1~100hr-1であることを特徴とする。
かかる構成により、二酸化塩素の収率を高くすることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、陽イオン交換樹脂の再生処理が不要であるため、連続的に長期間、二酸化塩素溶液を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る三室型電解槽100を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る三室型電解槽100に触媒リアクター200が接続された様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、あくまで、本発明を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本発明を限定的に解釈させるものではない。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る三室型電解槽100を示す図であり、図2は、本発明の一実施形態に係る三室型電解槽100に触媒リアクター200が接続された様子を示す図である。図1に示すように、三室型電解槽100は、陽極111を備えた陽極室110、陰極121を備えた陰極室120、陽極室110と陰極室120との間に位置するイオン交換室140を有している。陽極室110と陰極室120とイオン交換室140とは、それぞれ陽イオン交換膜130によって区画され、イオン交換室140には陽イオン交換樹脂141が充填されている。また、図2に示すように、三室型電解槽100のイオン交換室140の出口側には、触媒を備えた触媒リアクター200が接続されている。
【0018】
上述した三室型電解槽100を用いて二酸化塩素溶液を生成する二酸化塩素溶液の生成方法について、具体的に説明する。三室型電解槽100のイオン交換室140の入口側より亜塩素酸塩溶液(一例として亜塩素酸ナトリウム溶液を記載)を供給するとともに、陽極室110及び陰極室120にはそれぞれ水を供給して電圧を印加する。陽極111及び陰極121では、以下に示す水の電気分解が起こる。
陽極:2HO→4H+4e+O
陰極:4HO+4e→4OH+2H
【0019】
陽極111で生成された水素イオンは、陽イオン交換膜130を通り陽極室110からイオン交換室140に移動する。イオン交換室140に供給された亜塩素酸ナトリウム溶液は、ナトリウムイオンの一部または全てがここで水素イオンに置換され、亜塩素酸(HClO)溶液、つまり、酸性化亜塩素酸塩溶液となる。
NaClO+H→HClO+Na
【0020】
ナトリウムイオンは、陽イオン交換膜130を通りイオン交換室140から陰極室120に移動した後、陰極121で生成された水酸基と結合して水酸化ナトリウムとなる。
【0021】
イオン交換室140の充填された陽イオン交換樹脂141は、亜塩素酸塩溶液の金属イオンと水素イオンの置換効率を向上させるとともに、導電性向上にも寄与する。
【0022】
イオン交換室出口側より排出された酸性化亜塩素酸塩溶液は、次いで触媒リアクター200に供給され、白金アルミナ触媒との接触により二酸化塩素溶液に転化される。なお、触媒反応による二酸化塩素の生成は次式により進行するものと考えられる。
【化1】
【0023】
酸性化亜塩素酸塩溶液は、徐々に分解が進み塩素酸塩などの副生が生じるため、可及的速やかに触媒と接触・反応させることが望ましい。亜塩素酸塩溶液の酸性化処理から触媒との接触・反応までの時間は、30分間以内が好ましく、10分間以内がより好ましい。
【0024】
本発明で用いる三室型電解槽100の電極としては、陽極111及び陰極121にチタン基材上に白金をメッキした白金被覆材料を使用しているが、これに限定されるものではない。例えば、陽極111の材料には、黒鉛、黒鉛フェルト、多層黒鉛布、黒鉛織布、炭素等を使用しても構わない。また、陰極121の材料には、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル・クロム合金等を使用しても構わない。なお、陽極111及び陰極121にチタン基材上に白金をメッキした白金被覆材料を使用することで、水素の発生効率を向上できる。
【0025】
電極の形状としては、比表面積の大きいエキスパンドメタル、パンチングメタル、網等を使用することが好ましい。ただし、これ以外の形状の電極を使用しても構わない。
【0026】
陽イオン交換膜130としては、耐酸化性に優れるフッ素系陽イオン交換膜を使用している。例えば、ケマーズ社のNAFION(登録商標)112、115、117、旭硝子株式会社のフレミオン(登録商標)、旭化成株式会社のACIPLEX(登録商標)などを用いることができる。
【0027】
陽イオン交換樹脂141は、スチレン‐ジビニルベンゼン共重合体の強酸性陽イオン交換樹脂を使用している。陽イオン交換樹脂141は、耐酸化性に優れるジビニルベンゼン架橋度の高いものが好ましく、架橋度としては、架橋度10以上が好ましく、16以上がより好ましい。なお、これに限らず、スチレン‐ジビニルベンゼン共重合体の弱酸性陽イオン交換樹脂などを使用しても構わない。
【0028】
市販されている陽イオン交換樹脂として、例えば、三菱ケミカル社のダイヤイオンSK110、SK116、PK220、PK228を用いることが出来る。
【0029】
本発明では、陽極室110および陰極室120に水を流通させているが、導電性を上げる目的で電解質溶液を流通させてもよい。陽極室110に使用する電解質溶液としては、無機酸溶液および有機酸溶液が挙げられ、この中で硫酸溶液および塩酸溶液が好ましい。陰極室120に使用する電解質溶液としては、苛性アルカリ溶液が好ましく、特に、水酸化ナトリウム溶液および水酸化カリウム溶液が好ましい。なお、陰極室120では電解過程で苛性アルカリが生成されるため、電解質溶液は電解開始時のみ流通させればよい。電解質溶液を流通させる代わりに、陽極室110および陰極室120に陽イオン交換樹脂141を充填して水を流通させてもよい。
【0030】
本発明で用いる亜塩素酸塩溶液としては、亜塩素酸ナトリウムを使用しているが、亜塩素酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を使用しても構わない。この中では、亜塩素酸のアルカリ金塩が好ましく、亜塩素酸ナトリウムがより好ましい。
【0031】
イオン交換室140入口側より供給する亜塩素酸塩溶液の濃度は、亜塩素酸イオンとして500~10000mg/Lが好ましく、1500~7000mg/Lがより好ましい。亜塩素酸イオン濃度が500mg/Lより低いと亜塩素酸塩の酸性化処理において電流効率が悪くなり、10000mg/L以上では、酸性化した亜塩素酸塩溶液のpHが低くなりすぎるため、触媒との接触前に亜塩素酸イオンの分解反応が進行して二酸化塩素の収率が低下したり、触媒寿命を低下させる場合がある。
【0032】
また亜塩素酸塩溶液は、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、硝酸等の無機酸及びその塩、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸等の有機酸及びその塩、ポリアクリル酸系ポリマー及びその塩、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸及びその塩、トリポリリン酸及びその塩等のキレート剤が挙げられる。
【0033】
酸性化亜塩素酸塩溶液のpH値は1.0~3.0が好ましく、1.5~2.5がより好ましい。pH値が1.0より低いと触媒の寿命が短くなる場合があり、pH値が3.0より高いと二酸化塩素の収率が低下する場合がある。
【0034】
亜塩素酸塩溶液の陽イオンと水素イオンの置換率は、70%以上が好ましく80%以上がより好ましい。水素イオンへの置換率が70%未満の場合、二酸化塩素の収率が低下する場合がある。
【0035】
亜塩素酸塩溶液の希釈・調整用水及び陽極室110、陰極室120への供給する水は、例えば水道水、RO水、イオン交換水、軟水を用いることができる。
【0036】
触媒は、酸性化亜塩素酸塩溶液を酸化して二酸化塩素を生成する目的で使用される。本発明の触媒には、活性アルミナ担体に白金を担持させた白金アルミナ触媒(Pt/Al)を用いる。活性アルミナ担体上の白金は、白金原子および白金酸化物のいずれでもよいが、これらの混合物がより好ましい。白金酸化物としては、白金酸化数+2、+4が好ましい。
【0037】
白金の担持量は、0.01~0.50質量%が好ましく、0.01~0.25質量%がより好ましい。担持量が0.01質量%未満では二酸化塩素の生成速度が遅く、0.25質量%より高いと副生物の生成量が増加し二酸化塩素の収率が低下する。
【0038】
本発明に使用される活性アルミナ担体の性状は、比表面積値は50~300m/gであることが好ましい。また粒子径は0.1~10mmが好ましく、0.3~7mmがより好ましい。
【0039】
活性アルミナ担体は紛体であってもよいが成型担体であることが好ましい。成型担体であれば触媒を固定床として利用でき、所定の条件の下で反応物を流通させることで生成物が得られ、生成物からの触媒の分離も必要無く、産業上有利な触媒であると言える。このような成型担体の形状については、球状担体であることが好ましいが、用途によってペレット状、ハニカム状等の形状にしても構わない。
【0040】
上記成型担体の中でも、内部に空隙を有するものが好ましい。このような成型担体が触媒化されることで空隙を形成する担体の表面に白金が担持される。一方、反応する基質はこの触媒化された担体の空隙に入り込み反応して反応物を生成する。このような空隙は細孔容積として表される。本発明にこのような成型担体を使用する場合、その細孔容積は0.3~0.7mL/gであることが好ましい。
【0041】
本発明に用いる活性アルミナ担体は、チタニア、シリカなど一般的に触媒の担体として使用し得る他の成分を含有していてもよい。
【0042】
本発明の触媒は、他の触媒成分や助触媒成分が添加されていてもよい。他の触媒成分としてはパラジウムやロジウム等の金属が挙げられ、助触媒成分としては、金、銅、鉄、ビスマス、バナジウム、クロム等の遷移金属が挙げられる。
【0043】
本発明の触媒の調製方法としては、白金前駆体を含む溶液にアルミナ担体を含浸または噴霧し、乾燥、焼成することによって調製することができる。
【0044】
活性アルミナ担体に担持する白金前駆体としては、塩化白金酸、塩化白金酸ナトリウム、塩化白金酸カリウム、塩化白金酸アンモニウム、ヘキサヒドロオクソ白金酸、ジニトロジアンミン白金硝酸、ヘキサアンミン白金クロライド、ヘキサアンミン白金水酸塩、ヘキサアンミン白金硝酸塩、テトラアンミン白金クロライド、テトラアンミン白金水酸塩、テトラアンミン白金硝酸塩、白金ブラック、ヘキサヒドロキソ白金酸エタノールアンモニウム、白金アセチルアセトナートから選択された少なくとも一種類以上を用いることができる。
【0045】
活性アルミナ担体には、白金を活性アルミナ担体の外殻側に偏在担持させてもよい。白金を活性アルミナ担体の表面側に偏在担持させた触媒は、触媒反応において最も反応が促進する触媒表面に活性種を集中することで、触媒中の活性種を有効に利用することが可能になり、白金などの高価な貴金属を効率的に使用することができる。
【0046】
本発明では、市販されている白金アルミナ触媒を使用してもよく、こうした触媒としては、例えば、エヌ・イーケムキャット社のNM-103、AlfaAesar社のMFCD0001179が挙げられる。
【0047】
触媒への酸性化亜塩素酸塩の接触速度は、LHSV(Liquid Hourly Space Velocity:液空間速度)で1~100hr-1が好ましく、1~50hr-1がより好ましい。LHSVがこの範囲を超えると、二酸化塩素収率が低下する場合がある。なお、LHSVは、触媒リアクター内を通過する1時間当りの酸性化亜塩素酸塩の体積を触媒体積(担体を含む)で除した値を表す。
【0048】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
<亜塩素酸溶液の酸性化処理実験>
実施例1
図2に示す三室型電解槽100(構成は下記の通り)を用い、イオン交換室140に亜塩素酸ナトリウム溶液(NaClO)、陽極室110に0.01M硫酸、陰極室120に水を所定流量で連続的に流通させ、定電流にて電解を行った。
三室型電解槽100のイオン交換室出口側より排出される亜塩素酸ナトリウム溶液を採取・分析した。
【0050】
<三室型電解槽構成>
・イオン交換室、陽極室、陰極室:内寸100×50×20mm
・陽極、陰極:白金コートチタン電極、寸法90×40×0.5mm 電極間距離:60mm
・イオン交換樹脂:UBK-16(三菱ケミカル社)、100mL
・陽イオン交換膜:Nafion(登録商標)117(ケマーズ社)、有効膜面積50cm
【0051】
亜塩素酸ナトリウム溶液の亜塩素酸イオン(ClO )濃度およびナトリウムイオン濃度をイオンクロマトグラフィにて分析した。また、亜塩素酸ナトリウム溶液のナトリウムイオンと水素イオンの置換率(脱Na率)を次式により求めた。
【数1】
【0052】
比較例1
イオン交換室140に陽イオン交換樹脂141を充填しない条件で、実施例1と同様の実験を行った。
【0053】
三室型電解槽100を用いた亜塩素酸ナトリウム溶液の酸性化処理実験結果を表1に示す。三室型電解槽100に陽イオン交換樹脂141を充填した実施例1では、亜塩素酸ナトリウム溶液の脱Na率は83%を示し、また電解電圧は8Vと低値を示した。一方、陽イオン交換樹脂なしの比較例1では、実施例に比べ電解電圧は著しく高く、また脱Na率は、目標水準の70%を大幅に下回る結果となった。
【0054】
<表1>
【0055】
<触媒反応による二酸化塩素溶液の生成実験>
実施例2~6
図2に示すように、三室型電解槽100のイオン交換室出口に触媒リアクター200を接続し、触媒リアクター200内に下記白金アルミナ触媒(白金担持量:0.01~0.25質量%)を30mL充填した。亜塩素酸ナトリウム溶液を三室型電解槽100および触媒リアクター200に所定流量で通液し、触媒リアクター200からの排出液の二酸化塩素溶液濃度を測定した。
【0056】
<白金アルミナ触媒の調整>
球状の活性アルミナAl(粒径φ2-4mm、細孔容積0.51mL、比表面積160m/g)を所定濃度に調製したジニトロジアンミン白金水溶液に含浸し、金属白金換算で0.01質量%、0.11質量%、0.17質量%、0.25質量%、0.50質量%となるよう吸着させた。これを100℃で20分間乾燥させた後、450℃の大気中で5時間焼成して白金アルミナ触媒を得た。
【0057】
<二酸化塩素濃度の測定方法>
上水試験方法「(社)日本水道協会発行」に記載のヨウ素滴定法により、二酸化塩素濃度を測定した。また次式より二酸化塩素収率を求めた。
【数2】
【0058】
比較例2
白金アルミナ触媒を白金担持量0.50質量%に変更し、実施例と同様の実験を行った。
【0059】
触媒反応による二酸化塩素溶液の生成実験結果を表2に示す。白金担持量0.01~0.25質量%の白金アルミナ触媒を用いた実施例2~6では、二酸化塩素収率は72.1~88.1%と高値を示したが、白金担持量0.50質量%の触媒を用いた比較例2では、二酸化塩素収率は61.0%と低い結果となった。
また、本実施例により、触媒の白金担持量が少なくなると酸性化亜塩素酸塩との反応速度(LHSV)が低下すること、また亜塩素酸塩溶液の濃度は二酸化塩素収率にほとんど影響しないことが確認された。
【0060】
<表2>
*ClO収率が最大となる流量
【0061】
<電解槽/触媒の耐久性評価>
実施例4と同条件で、長期間連続して二酸化塩素溶液の生成実験を行った。結果を表3示す。本発明は、1000時間の連続運転後においても、二酸化塩素の生成収率が安定していることが確認された。
【0062】
<表3>
【0063】
本実施形態では、三室型電解槽を使用して説明してきたが、これに限らず、二室型電解槽等に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る二酸化塩素溶液の生成方法は、連続的に長期間、二酸化塩素を生成できるため、二酸化塩素溶液の生成方法として有用である。
【符号の説明】
【0065】
100 三室型電解槽
110 陽極室
111 陽極
120 陰極室
121 陰極
130 陽イオン交換膜
140 イオン交換室
141 陽イオン交換樹脂
200 触媒リアクター

図1
図2