IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日本ホイール工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ブレーキ装置 図1
  • 特許-ブレーキ装置 図2
  • 特許-ブレーキ装置 図3
  • 特許-ブレーキ装置 図4
  • 特許-ブレーキ装置 図5
  • 特許-ブレーキ装置 図6
  • 特許-ブレーキ装置 図7
  • 特許-ブレーキ装置 図8
  • 特許-ブレーキ装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/853 20060101AFI20240529BHJP
   F16D 55/38 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
F16D65/853
F16D55/38
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021000938
(22)【出願日】2021-01-06
(65)【公開番号】P2022106148
(43)【公開日】2022-07-19
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】591232657
【氏名又は名称】新日本ホイール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】寺田 光芳
(72)【発明者】
【氏名】沖田 育則
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 佳之
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-131527(JP,A)
【文献】特開2011-196477(JP,A)
【文献】特開2009-002405(JP,A)
【文献】特開昭53-034054(JP,A)
【文献】特開昭50-079653(JP,A)
【文献】米国特許第4205739(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/853
F16D 55/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの駆動力によって回転駆動する回転軸を制動するブレーキ装置であって、
前記エンジンの駆動力によって回転駆動する駆動軸に連結される平板環状の回転摩擦板およびこの回転摩擦板に対して回転不能な状態で対向配置される平板環状の固定摩擦板をそれぞれ収容するブレーキケースと、
前記回転摩擦板または前記固定摩擦板に対向配置されて前記回転摩擦板または前記固定摩擦板を押圧して前記回転摩擦板と前記固定摩擦板とを互いに密着させる環状のプレッシャープレートと、
前記プレッシャープレートに対して前記回転摩擦板または前記固定摩擦板から離隔させる力を付与する可撓性を有する板状体で構成されたリターン部材とを備え、
前記ブレーキケースは、
前記ブレーキケースの外表面に沿って前記ブレーキケースの内側面に前記回転摩擦板および前記固定摩擦板の径方向外側から前記プレッシャープレートの中心部側に潤滑油を導くための軸方向油路および径方向油路がそれぞれ形成されており、
前記リターン部材は、
前記プレッシャープレートを弾性的に押圧するプレート押圧部と、
前記径方向油路と前記回転摩擦板または前記固定摩擦板との間に設けられて前記径方向油路に導かれた前記潤滑油の前記回転摩擦板側または前記固定摩擦板側への流動を阻害する流動阻害部とを備えることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1に記載したブレーキ装置において、
前記リターン部材は、
前記流動阻害部の一部に前記径方向油路に導かれた前記潤滑油の一部を前記回転摩擦板側または前記固定摩擦板側に流通させる潤滑油流通部を備えることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項3】
請求項2に記載したブレーキ装置において、
前記リターン部材は、
前記潤滑油流通部における前記潤滑油を流通させる面積が前記流動阻害部が前記潤滑油の流動を阻害する面積よりも大きくなるように形成されていることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項4】
請求項2に記載したブレーキ装置において、
前記リターン部材は、
前記潤滑油流通部における前記潤滑油を流通させる面積が前記流動阻害部が前記潤滑油の流動を阻害する面積よりも小さくなるように形成されていることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載したブレーキ装置において、
前記流動阻害部は、
前記リターン部材の中心部から少なくとも3つの方向に放射状に延びて形成されていることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項6】
請求項5に記載したブレーキ装置において、
前記流動阻害部は、
前記リターン部材の中心部に対して先端部側の幅が狭く形成されていることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載したブレーキ装置において、
前記径方向油路は、
前記回転摩擦板および前記固定摩擦板の上方から前記プレッシャープレートの中心部側に向かって延びる1つの溝状に形成されていることを特徴とするブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの駆動力によって回転駆動する回転軸を制動するブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、田植え機、フォークリフト、ゴルフカートまたは四輪バギー車などの自走式車両においては、エンジンの駆動力によって回転駆動する駆動輪を制動するためのブレーキ装置がある。例えば、下記特許文献1には、エンジンの駆動力によって回転駆動する後輪車軸とタイヤとの間に設けられて後輪車軸を制動するブレーキ装置が開示されている。この場合、ブレーキ装置は、潤滑油を介して互いに離隔した状態で対向配置された複数の摩擦板が互いに密着することで後輪車軸の回転駆動を制動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-108873号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に示されたブレーキ装置においては、ブレーキケースにおけるヒートシンクの反対側の内側側面に複数の環状の摩擦板が対向配置されているため、この側面を流れ落ちる潤滑油の一部が摩擦板側に流出してブレーキケースの側面に沿って流れ落ちることによる冷却効果が充分に発揮されないという問題がある。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、潤滑油の冷却効果を向上させることができるブレーキ装置を提供することにある。
【発明の概要】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、エンジンの駆動力によって回転駆動する回転軸を制動するブレーキ装置であって、エンジンの駆動力によって回転駆動する駆動軸に連結される平板環状の回転摩擦板およびこの回転摩擦板に対して回転不能な状態で対向配置される平板環状の固定摩擦板をそれぞれ収容するブレーキケースと、回転摩擦板または固定摩擦板に対向配置されて回転摩擦板または固定摩擦板を押圧して回転摩擦板と固定摩擦板とを互いに密着させる環状のプレッシャープレートと、プレッシャープレートに対して回転摩擦板または固定摩擦板から離隔させる力を付与する可撓性を有する板状体で構成されたリターン部材とを備え、ブレーキケースは、ブレーキケースの外表面に沿ってブレーキケースの内側面に回転摩擦板および固定摩擦板の径方向外側からプレッシャープレートの中心部側に潤滑油を導くための軸方向油路および径方向油路がそれぞれ形成されており、リターン部材は、プレッシャープレートを弾性的に押圧するプレート押圧部と、径方向油路と回転摩擦板または固定摩擦板との間に設けられて径方向油路に導かれた潤滑油の回転摩擦板側または固定摩擦板側への流動を阻害する流動阻害部とを備えることにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、ブレーキ装置は、リターン部材に形成された流動阻害部によってブレーキケースにおける径方向油路を流動する潤滑油の回転摩擦板側または固定摩擦板側への流動が阻害されるため、潤滑油が径方向油路外に流出することが抑えられることで潤滑油の冷却効果を向上させることができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記ブレーキ装置において、リターン部材は、流動阻害部の一部に径方向油路に導かれた潤滑油の一部を回転摩擦板側または固定摩擦板側に流通させる潤滑油流通部を備えることにある。
【0009】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ブレーキ装置は、リターン部材が流動阻害部の一部に径方向油路に導かれた潤滑油の一部を回転摩擦板側または固定摩擦板側に流通させる潤滑油流通部を備えているため、回転摩擦板および固定摩擦板の潤滑性能を確保することができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記ブレーキ装置において、リターン部材は、潤滑油流通部における潤滑油を流通させる面積が流動阻害部が潤滑油の流動を阻害する面積よりも大きくなるように形成されていることにある。
【0011】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ブレーキ装置は、潤滑油流通部における潤滑油を流通させる面積が流動阻害部が潤滑油の流動を阻害する面積よりも大きくなるように形成されているため、回転摩擦板および固定摩擦板の潤滑性能をより確実に確保することができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記ブレーキ装置において、リターン部材は、潤滑油流通部における潤滑油を流通させる面積が流動阻害部が潤滑油の流動を阻害する面積よりも小さくなるように形成されていることにある。
【0013】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ブレーキ装置は、潤滑油流通部における潤滑油を流通させる面積が流動阻害部が潤滑油の流動を阻害する面積よりも小さくなるように形成されているため、回転摩擦板および固定摩擦板の潤滑性能を確保しつつ潤滑油の径方向油路外への流出を抑えて潤滑油の冷却効果を向上させることができる。また、ブレーキ装置は、潤滑油流通部における潤滑油を流通させる面積が小さく形成されているため、回転摩擦板側または固定摩擦板側に流出する潤滑油の圧力を高めてより遠くの回転摩擦板または固定摩擦板に効果的に潤滑油を供給することもできる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記ブレーキ装置において、流動阻害部は、リターン部材の中心部から少なくとも3つの方向に放射状に延びて形成されていることにある。
【0015】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ブレーキ装置は、流動阻害部がリターン部材の中心部から少なくとも3つの方向に放射状に延びて形成されているため、互いに隣接する流動阻害部間に潤滑油流通部を形成し易くすることができる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、前記ブレーキ装置において、流動阻害部は、リターン部材の中心部に対して先端部側の幅が狭く形成されていることにある。
【0017】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ブレーキ装置は、流動阻害部がリターン部材の中心部に対して先端部側の幅が狭く形成されているため、流動阻害部の剛性を確保しつつ流動阻害部を径方向外側に長く形成することができる。
【0018】
また、本発明の他の特徴は、前記ブレーキ装置において、径方向油路は、回転摩擦板および固定摩擦板の上方からプレッシャープレートの中心部側に向かって延びる1つの溝状に形成されていることにある。
【0019】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、ブレーキ装置は、径方向油路が回転摩擦板および固定摩擦板の上方からプレッシャープレートの中心部側に向かって延びる1つの溝状に形成されているため、潤滑油の流動経路を規定して潤滑油が径方向油路外、特に、回転摩擦板および固定摩擦板側に流出することを抑えることができる。また、径方向油路を流動する潤滑油の圧力を高めて迅速な冷却ができるとともに、潤滑油流通部を設けた場合にはより遠くの回転摩擦板または固定摩擦板に効果的に潤滑油を供給することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係るブレーキ装置を搭載した自走式車両の全体構成の概略を模式的に示した平面図である。
図2図1に示すブレーキ装置の内部構成の概略を示す側面断面図である。
図3図2に示す側面断面図に潤滑油の流れを示した説明図である。
図4図2に示すブレーキ装置におけるブレーキケースの外観構成を正面から見た正面図である。
図5図4に示すブレーキケースの内部構成を背面から見た背面図である。
図6図5に示すブレーキケースに対してプレッシャープレートおよびリターン部材を組み付けた状態で示す背面図である。
図7図2に示すブレーキ装置におけるリターン部材の外観構成を正面から見た正面図である。
図8】本発明の変形例に係るリターン部材の外観構成を正面から見た正面図である。
図9】本発明の他の変形例に係るリターン部材の外観構成を正面から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るブレーキ装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るブレーキ装置200を備えた自走式車両100の全体構成の概略を模式的に示す平面図である。また、図2は、図1に示すブレーキ装置200の内部構成の概略を示す側面断面図である。このブレーキ装置200は、例えば、田植え機からなる自走式車両100に搭載されて自走式車両100の停車状態を維持するパーキングブレーキである。
【0022】
まず、ブレーキ装置200が搭載される自走式車両100について簡単に説明しておく。自走式車両100は、人を載せて田植え作業を行う自力走行可能な車両であり、車台101を備えている。車台101は、自走式車両100の車体を支える部品であり、鋼材を枠状に形成して構成されている。この車台101には、図示しないサスペンション機構を介して前輪102および後輪103がそれぞれ設けられている。
【0023】
前輪102および後輪103は、車台101を路上または水田内で移動可能に支持する車輪であり、互いに対向配置された2つのタイヤでそれぞれ構成されている。これらのうち、前輪102は、自走式車両100の走行方向を操舵可能な車輪であり、ステアリング機構104を介して運転者が操作するハンドル105が連結されている。
【0024】
また、車台101は、エンジン106、動力伝達ユニット107および植付けユニット112をそれぞれ支持している。エンジン106は、燃料を燃焼させることにより回転駆動力を発生させる機械装置であり、レシプロエンジンによって構成されている。このエンジン106における図示しないクランク軸には、歯車伝達機構を介して動力伝達ユニット107が連結されている。
【0025】
動力伝達ユニット107は、エンジン106から出力される回転駆動力を伝達または遮断するとともに同エンジン106の回転数を変速する機械装置群であり、ミッションケース108内に変速装置およびブレーキ装置などを備えて構成されている。この場合、ブレーキ装置には、走行状態の自走式車両100を制動する主ブレーキ装置と、駐停車状態を維持するためのパーキングブレーキとしてのブレーキ装置200とがある。また、ミッションケース108内には、このブレーキ装置200を取り付けるためのブレーキ取付部120が形成されている。
【0026】
そして、動力伝達ユニット107は、前輪102側および後輪103側にそれぞれ出力軸110が延びており、この出力軸110の前方端に前輪102が連結されているとともに後方端に後輪103が連結されている。また、この出力軸110には、後方端側に植付け変速部111が連結されている。植付け変速部111は、エンジン106の回転駆動力を減速して植付けユニット112に伝達するための機械装置である。植付けユニット112は、複数のマット苗を保持するとともにこれらのマット苗から苗を一株ごと掴み取って水田内に植え付ける機械装置である。
【0027】
ブレーキ取付部120は、ブレーキ装置200が取り付けられる部分であり、ミッションケース108の外表面の一部に開口した状態で形成されている。より具体的には、ブレーキ取付部120は、主として、出力軸歯車収容部121、摩擦板受け部123、入出力軸収容部124、供給油路125および帰還油路126がそれぞれ形成されている。
【0028】
出力軸歯車収容部121は、出力軸110に設けられた出力軸歯車110aおよび潤滑油122をそれぞれ収容する空洞の部分であり、出力軸歯車110aを収容可能な大きさの円筒状に形成されている。ここで、出力軸歯車110aは、ブレーキ装置200から制動力を受ける部品であり、出力軸110の軸上に径方向に広がって形成された傘歯車(「ベベルギア」ともいう)で構成されている。
【0029】
潤滑油122は、図3に示すように、出力軸歯車収容部121内および後述するブレーキケース210内を循環してそれぞれ冷却するとともに粉塵などの異物を除去して各部品を円滑に作動させるための油である。この潤滑油122は、出力軸歯車110aおよび固定摩擦板205の各下部を浸漬させる量でブレーキケース210および出力軸歯車収容部121の各底部に貯留されている。なお、図3は、潤滑油122の流れの様子を明確にするために図2に示したブレーキ装置200の断面図から符号の記載を省略している。また、図3においては、潤滑油122の流れの様子を破線矢印で示している。
【0030】
摩擦板受け部123は、後述する固定摩擦板205が押し付けられる部分であり、出力軸110の軸方向に対して直交する方向に延びる円筒状に形成されている。この摩擦板受け部123の内部は、後述する入出力軸201を収容する円筒状の入出力軸収容部124が形成されており、前記出力軸歯車収容部121に連通している。
【0031】
供給油路125は、出力軸歯車収容部121に貯留されている潤滑油122を軸方向油路215に導くための通路であり、摩擦板受け部123の上方の位置に入出力軸201の軸方向に延びて形成されている。この供給油路125は、本実施形態においては摩擦板受け部123の上方の位置に1つだけ設けられているが、2つ以上設けられていてもよい。
【0032】
帰還油路126は、ブレーキケース内の潤滑油122を出力軸歯車収容部121内に戻すための通路であり、摩擦板受け部123の下方の位置に入出力軸201の軸方向に延びて形成されている。この帰還油路126は、本実施形態においては摩擦板受け部123の下方の位置に図1の紙面に直交する方向に2つ並んで設けられているが、少なくとも1つ以上設けられていればよい。
【0033】
なお、この自走式車両100における車台101には、上記した構成以外に燃料タンク(図示せず)および運転者が着座するシート(図示せず)などがそれぞれ設けられているが、これらについては本発明に直接関わらないため説明を省略する。
【0034】
(ブレーキ装置200の構成)
ブレーキ装置200は、入出力軸201を備えている。入出力軸201は、動力伝達ユニット107を介して伝達されるエンジン106の駆動力によって回転駆動する鋼製の軸状部品であり、ミッションケース108内にベアリング202aおよびベアリング202bをそれぞれ介して回転自在な状態で支持されている。この入出力軸201は、一方(図示右側)の端部には入出力歯車203が形成されているとともに、他方の(図示左側)の端部にスプラインが形成されており回転摩擦板204が入出力軸201の軸線方向に沿ってスライド変位可能な状態で噛合っている。
【0035】
入出力歯車203は、出力軸110に設けられた傘歯車(「ベベルギア」ともいう)で構成された出力軸歯車110aに対して直交する方向に噛み合う傘歯車である。したがって、入出力軸201は、入出力歯車203と出力軸歯車110aとの噛み合いによって常に出力軸110と一体的に回転駆動する。
【0036】
回転摩擦板204は、常に入出力軸201と一体的に回転駆動する部品であり、鋼板を環状の円板体に形成して構成されている。この回転摩擦板204は、中心部に形成されて回転摩擦板204を環状に形成する貫通孔の内周部にスプラインが形成されており、このスプラインを介して入出力軸201にスプライン嵌合して軸線方向に沿って摺動自在な状態で複数枚保持されている。本実施形態においては、回転摩擦板204は、入出力軸201に3つ保持されている。これら3つの回転摩擦板204には、それぞれ対向した状態で固定摩擦板205が配置されている。
【0037】
固定摩擦板205は、回転摩擦板204に対して離隔した状態から押し付けられることによって回転摩擦板204の回転を制動するための部品であり、鋼板を環状の円板体に形成して構成されている。より具体的には、固定摩擦板205は、中心部に形成されて固定摩擦板205を環状に形成する貫通孔の外側の環状の板面に図示しない摩擦材が貼り付けられているとともに、外周部に径方向外側に向かって放射状に張り出した状態で平面視で方形状の突起205aが放射状に形成されて構成されている。なお、摩擦材は、固定摩擦板205に代えて回転摩擦板204に設けられていてもよいものである。
【0038】
この固定摩擦板205は、各回転摩擦板204に隣接配置されるとともに、突起205aがブレーキケース210の嵌合溝に嵌合することによって入出力軸201の軸線方向に沿ってスライド変位可能かつ回転摩擦板204に対して相対回転不能な状態でブレーキケース210に保持されている。本実施形態においては、固定摩擦板205は、ブレーキケース210内に4つ保持されている。
【0039】
これら4つの固定摩擦板205のうちの外側に配置された2つの固定摩擦板205のうちの一方(図示右側)は、ミッションケース108の摩擦板受け部123に対向配置されている。また、2つの固定摩擦板205のうちの他方(図示左側)には、プレッシャープレート206が設けられている。
【0040】
プレッシャープレート206は、固定摩擦板205を押圧して固定摩擦板205と回転摩擦板204とを互いに密着させて入出力軸201に制動力を作用させるための部品であり、金属材料を平板環状に形成して構成されている。より具体的には、プレッシャープレート206は、主として、プレート貫通孔206aおよび押圧部206bを備えて構成されている。
【0041】
プレート貫通孔206aは、プレッシャープレート206の中心部にプレッシャープレート206を軸方向に貫通する貫通孔であり、同軸方向に潤滑油122を流通させることができる。押圧部206bは、固定摩擦板205の環状の板面を押圧する部分であり、プレート貫通孔206aの外側に環状に形成されている。この押圧部206bは、一方(図示右側)の端面が固定摩擦板205に面するとともに、他方(図示左側)の端面が摩擦板収容部の側壁に面している。
【0042】
この場合、プレッシャープレート206における前記一方の端面の側壁は、環状部分の内側部分が中心部に向かって下り傾斜となる傾斜面206cが形成されており、この傾斜面206cに後述するリターン部材220が押し付けられている。また、プレッシャープレート206における前記他方の端面の側壁には、プレッシャープレート206の周方向に沿って深さが徐々に浅くなる6つの涙滴状のカム溝206dが形成されており、このカム溝206d内に球状のカムボール207が転動自在な状態で嵌合している。
【0043】
さらに、押圧部206bの外周部の一部には、径方向外側に張り出した状態で突出片206eが形成されている。突出片206eは、ブレーキ作動機構208の作動片208cが掛けられる部分であり、凹状に凹んで形成されている。このプレッシャープレート206は、リターン部材220によってブレーキケース210に弾性的に押し付けられている。
【0044】
ブレーキ作動機構208は、自走式車両100の運転者によるパーキングブレーキ操作に応じてプレッシャープレート206を回動させるための部品群であり、主として、作動レバー208a、作動軸208bおよび作動片208cを備えて構成されている。作動レバー208aは、自走式車両100の運転者によって操作される図示しないブレーキレバーに図示しないワイヤが連結されて作動軸208bを回動させる。
【0045】
作動軸208bは、作動片208cを回動させるための軸状の部品であり、ブレーキケース210を貫通してミッションケース108に回転摺動自在な状態で嵌合している。この作動軸208bは、運転者の操作力による作動レバー208aの回動によって一方の方向に回動するとともに、トーションバネの弾性力による作動レバー208aの回動によって反対方向に回動する。
【0046】
ブレーキケース210は、図4ないし図6にそれぞれ示すように、入出力軸201の一部、回転摩擦板204、固定摩擦板205およびプレッシャープレート206、作動軸208b、作動片208cおよびリターン部材220を潤滑油122とともに収容してブレーキ装置200の外表面を構成する部品であり、金属材をカップ状に形成して構成されている。より具体的には、ブレーキケース210は、主として、収容部211、嵌合溝212、リターン部材支持部213、軸方向油路215、径方向油路216およびヒートシンク217がそれぞれ形成されて構成されている。
【0047】
収容部211は、入出力軸201の一部、回転摩擦板204、固定摩擦板205およびプレッシャープレート206、作動軸208b、作動片208cおよびリターン部材220を潤滑油122とともに収容する部分であり、凹状に窪んで形成されている。この収容部211には、固定摩擦板205の突起205aに嵌合する嵌合溝212が放射状に形成されている。
【0048】
リターン部材支持部213は、リターン部材220が取り付けられてリターン部材220を支持するための部分であり、ブレーキケース210の側壁214の内側面に柱状に突出して形成されている。この場合、リターン部材支持部213は、入出力軸201、回転摩擦板204、固定摩擦板205およびプレッシャープレート206の回転中心軸上に形成されている。また、リターン部材支持部213は、プレッシャープレート206のプレート貫通孔206a内まで突出して形成されている。
【0049】
軸方向油路215は、供給油路125から導かれた潤滑油122を径方向油路216に導くための通路であり、回転摩擦板204、固定摩擦板205およびプレッシャープレート206の各上方の位置に入出力軸201の軸方向に延びて形成されている。この軸方向油路215は、本実施形態においては、供給油路125に対応して1つだけ設けられているが、供給油路125と同数または異数で設けることもできる。
【0050】
径方向油路216は、軸方向油路215から導かれた潤滑油122を下方に導くための通路であり、プレッシャープレート206に対向するブレーキケース210の側壁214の内側面に上方から下方に向かって延びる溝状に形成されている。この場合、径方向油路216は、軸方向油路215から側壁214の中心部に形成されたリターン部材支持部213まで下方に延びる部分が1つの溝で形成されるとともに、リターン部材支持部213から帰還油路126までが2つの溝に枝分かれして前記2つの帰還油路126にそれぞれ繋がって形成されている。
【0051】
ヒートシンク217は、径方向油路216を流れる潤滑油122の冷却効率を向上させるための部分であり、側壁214の外側面に凸状に張り出す複数の突起によって襞状に形成されている。
【0052】
リターン部材220は、図7に示すように、プレッシャープレート206に対して固定摩擦板205から離隔させる力を付与するとともに径方向油路216を流通する潤滑油122のプレート貫通孔206a側への流通を阻害するための部品であり、プレート貫通孔206aの少なくとも一部を塞ぐように構成されている。リターン部材220は、バネ鋼などの金属材料を3つの方向に放射状に延びる板状に形成して構成されており、主として、流動阻害部221、潤滑油流通部222およびプレート押圧部223をそれぞれ備えている。
【0053】
流動阻害部221は、プレート貫通孔206aの一部を塞ぐとともにプレート押圧部223を弾性的に支持する部分であり、リターン部材220の中心部から3つの方向に互いに等角度で延びて形成されている。これにより、3つの流動阻害部221の各周方向の間には、3つの潤滑油流通部222がそれぞれ形成される。また、3つの流動阻害部221は、先端部に向かって幅が短くなるように形成されている。
【0054】
潤滑油流通部222は、径方向油路216を流通する潤滑油122の一部のプレート貫通孔206a側への流通を許容する部品であり、3つの流動阻害部221の各間を切り欠いて形成されている。この場合、本実施形態においては、潤滑油流通部222における潤滑油122を流通させる面積は、流動阻害部221が潤滑油122の流動を阻害する面積よりも大きくなるように形成されている。
【0055】
プレート押圧部223は、プレッシャープレート206を押圧する部分であり、3つの流動阻害部221の各先端部に形成されている。この場合、プレート押圧部223は、プレッシャープレート206における傾斜面206cを押圧している。すなわち、それぞれ流動阻害部221とプレート押圧部223とで構成される3つの突出片は、プレッシャープレート206の中心軸から傾斜面206cに対向する長さに形成されている。
【0056】
このリターン部材220は、中心部に貫通孔224が形成されており、この貫通孔224を介してリターン部材支持部213の先端部にボルト225を介して取り付けられている。この場合、リターン部材220は、3つのプレート押圧部223がプレッシャープレート206における傾斜面206cを押圧することで3つの流動阻害部221が撓んだ状態で設置される。これにより、回転摩擦板204と固定摩擦板205とは、互いに離隔した状態となる。
【0057】
(ブレーキ装置200の作動)
次に、上記のように構成したブレーキ装置200の作動について説明する。このブレーキ装置200は、前記したように自走式車両100のミッションケース108内に配置されて自走式車両100のパーキング時における制動に用いられる。
【0058】
自走式車両100は、エンジン106の回転駆動力を動力伝達ユニット107を介して出力軸110に伝達されるとともに、出力軸110に伝達された回転駆動力が前輪102および後輪103にそれぞれ伝達されて前輪102および後輪103がそれぞれ回転駆動する。これにより、自走式車両100は、エンジン106の回転駆動力によって自走する。また、自走式車両100は、エンジン106の回転駆動力が植付け変速部111を介して植付けユニット112に伝達されて植付けユニット112が作動する。
【0059】
このような自走式車両100の走行時においては、ブレーキ装置200は使用されることはない。このブレーキ装置200の不使用時においては、ブレーキ装置200は、エンジン106の回転駆動力が出力軸歯車110aおよび入出力軸201を介して回転摩擦板204に伝達されて回転摩擦板204が回転駆動する。この場合、ブレーキ装置200は、プレッシャープレート206がリターン部材220による押圧力によって固定摩擦板205から離隔しているため、固定摩擦板205が回転摩擦板204に密着することがなく回転摩擦板204の回転駆動が許容される。
【0060】
また、ブレーキ装置200は、図3図5および図6にそれぞれに示すように、出力軸歯車収容部121内に貯留されている潤滑油122が出力軸歯車110aの回転駆動によって供給油路125に導かれる。供給油路125に導かれた潤滑油122は、軸方向油路215に導かれて一部が回転摩擦板204と固定摩擦板205との間を介して下方に落下するとともに他の一部が径方向油路216に導かれて径方向油路216内を下方に落下する。
【0061】
この場合、プレッシャープレート206のプレート貫通孔206aに対向する位置に流れた落ちた潤滑油122は、プレート貫通孔206aの一部がリターン部材220の流動阻害部221によって塞がれているため、プレート貫通孔206a側に流出し難くなっている。すなわち、径方向油路216内を流通する潤滑油122は、一部がリターン部材220の潤滑油流通部222を介して入出力軸201側に流れるとともに、他の一部が帰還油路126側に流れる。
【0062】
この場合、帰還油路126側に流れる潤滑油122は、リターン部材220を設けない場合に比べてヒートシンク217を含む側壁214による冷却効果が向上する。一方、リターン部材220を貫通して入出力軸収容部124内に流入した潤滑油122は、軸方向油路215から落下してきた潤滑油122と混ざってこれらの一部が回転摩擦板204と固定摩擦板205との間を介して下方に落下して帰還油路126に流れるとともに他の一部が入出力軸収容部124を介して出力軸歯車収容部121内に帰還する。これにより、入出力軸201、回転摩擦板204および固定摩擦板205がそれぞれ潤滑、洗浄または冷却される。なお、図5および図6においても、図3と同様に、潤滑油122の流れの様子を破線矢印で示している。
【0063】
径方向油路216および入出力軸収容部124からそれぞれ落下してきた潤滑油122は、帰還油路126内で混ざって出力軸歯車収容部121内に帰還する。この場合、入出力軸収容部124から落下してきた潤滑油122は、径方向油路216から落下してきた潤滑油122によって冷却される。出力軸歯車収容部121内に帰還した潤滑油122は、出力軸歯車110aの回転駆動によって撹拌されつつ再び供給油路125に導かれる。
【0064】
次に、自走式車両100は、走行を終えて長時間停車状態となる場合には、運転者によるパーキングブレーキ操作によってブレーキ作動機構208が作動する。具体的には、ブレーキ作動機構208は、運転者によるパーキングブレーキ操作によって作動片208cが作動軸208bを回動中心軸として回動する。これにより、プレッシャープレート206は、側壁214に対して相対的に回動する。この場合、プレッシャープレート206には、側壁214との間でカムボール207を保持するカム溝206dの深さが回動方向に沿って深さが浅くなるように形成されているため、プレッシャープレート206は側壁214に対して離隔して固定摩擦板205に接近して押圧する。
【0065】
これにより、固定摩擦板205と回転摩擦板204とが互いに密着することで回転摩擦板204の回転駆動が制動されて入出力軸201および出力軸歯車110aをそれぞれ介して出力軸110の回転駆動を制動する。この出力軸110の制動過程においても、ブレーキ装置200は、径方向油路216内を流動する潤滑油122の一部をリターン部材220を介して入出力軸収容部124内に流動させるとともに他の一部を入出力軸収容部124内に流動させることなく帰還油路126に流動させることができる。
【0066】
この場合、出力軸110が制動された直後においても、ブレーキ装置200は、径方向油路216内を流動する潤滑油122の一部をリターン部材220を介して入出力軸収容部124内に流動させるとともに他の一部を入出力軸収容部124内に流動させることなく帰還油路126に流動させることができる。
【0067】
また、運転者がパーキングブレーキを解除する操作を行った場合には、ブレーキ作動機構208は、作動片208cが作動軸208bを回動中心軸として逆転する。これにより、プレッシャープレート206は、側壁214に対して相対的に回動して側壁214に接近することで固定摩擦板205と回転摩擦板204とが互いに離隔する。この結果、ブレーキ装置200は、回転摩擦板204の制動状態が解除されることで出力軸110の回転駆動が再開するため、出力軸歯車収容部121内の潤滑油122が再び供給油路125を介して収容部211内に導かれる。
【0068】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、ブレーキ装置200は、リターン部材220に形成された流動阻害部221によってブレーキケース210における径方向油路216を流動する潤滑油122の回転摩擦板204側および固定摩擦板205側への流動が阻害されるため、潤滑油122が径方向油路216外に流出することが抑えられることで潤滑油122の冷却効果を向上させることができる。
【0069】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0070】
例えば、上記実施形態においては、潤滑油流通部222は、3つの流動阻害部221の間に平面視で扇状に切り欠いて形成した。しかし、潤滑油流通部222は、潤滑油122を流通可能な切欠きまたは貫通孔で構成されていればよい。したがって、潤滑油流通部222は、例えば、図8に示すように、3つの流動阻害部221の間に平面視で扇状の貫通孔で構成することもできる。また、潤滑油流通部222は、平板円環状に形成された流動阻害部221に少なくとも1つの貫通孔で構成することもできる。
【0071】
また、上記実施形態においては、流動阻害部221およびプレート押圧部223は、径方向内側部分から径方向外側に向かって幅が狭くなるように形成した。これにより、ブレーキ装置200は、流動阻害部221の剛性を確保しつつ流動阻害部221を径方向外側に長く形成することができる。しかし、流動阻害部221およびプレート押圧部223は、径方向内側部分から径方向外側に向かって同じ幅、または径方向内側部分から径方向外側に向かって幅を広く形成することもできる。
【0072】
また、上記実施形態においては、リターン部材220は、潤滑油流通部222における潤滑油122を流通させる面積が流動阻害部221が潤滑油122の流動を阻害する面積よりも大きくなるように形成されている。これにより、ブレーキ装置200は、回転摩擦板204および固定摩擦板205の潤滑性能をより確実に確保することができる。
【0073】
しかし、リターン部材220は、潤滑油流通部222における潤滑油122を流通させる面積が流動阻害部221が潤滑油122の流動を阻害する面積よりも小さくなるように形成することもできる。これによれば、ブレーキ装置200は、回転摩擦板204および固定摩擦板205の潤滑性能を確保しつつ潤滑油122の径方向油路216外への流出を抑えて潤滑油122の冷却効果を向上させることができる。また、ブレーキ装置200は、回転摩擦板204側または固定摩擦板205側に流出する潤滑油122の圧力を高めてより遠くの回転摩擦板204または固定摩擦板205に効果的に潤滑油122を供給することもできる。なお、リターン部材220は、潤滑油流通部222における潤滑油122を流通させる面積と流動阻害部221が潤滑油122の流動を阻害する面積とを同じ大きさに形成することもできる。
【0074】
また、上記実施形態においては、リターン部材220は、潤滑油流通部222を備えて構成した。しかし、リターン部材220は、少なくとも流動阻害部221およびプレート押圧部223をそれぞれ備えて構成されていればよい。したがって、リターン部材220は、例えば、図9に示すように、流動阻害部221およびプレート押圧部223をそれぞれ有した平板円環状に形成して構成することもできる。これによれば、リターン部材220は、径方向油路216内の潤滑油122が入出力軸収容部124側に流入することを完全に阻止することができ、潤滑油122の冷却効果を向上させることができる。
【0075】
また、上記実施形態においては、径方向油路216は、軸方向油路215の下流端から下方にプレッシャープレート206の中心部側に向かって延びる1つの溝状に形成されるとともに、同中心部から2つに枝分かれした2つの溝状に形成した。これにより、ブレーキ装置200は、潤滑油122の流動経路を規定して潤滑油122が径方向油路216外、特に、入出力軸収容部124側に流出することを抑えることができる。また、径方向油路216を流動する潤滑油122の圧力を高めて迅速な冷却ができるとともに、潤滑油流通部222を設けた場合にはより遠くの回転摩擦板204または固定摩擦板205に効果的に潤滑油122を供給することもできる。
【0076】
しかし、径方向油路216は、軸方向油路215の下流端から下方に向かって潤滑油122を導くよう形成されていればよい。したがって、径方向油路216は、プレッシャープレート206の中心部側に向かって延びる2つ以上の溝で構成することができるとともに、同中心部から下方に向かって1つ以上の溝で構成することができる。
【0077】
また、上記実施形態においては、ブレーキ装置200は、プレッシャープレート206が固定摩擦板205を押圧して固定摩擦板205と回転摩擦板204とを互いに密着させるように構成した。しかし、ブレーキ装置200は、固定摩擦板205および回転摩擦板204の配置を入れ替えてプレッシャープレート206が回転摩擦板204を押圧して回転摩擦板204と固定摩擦板205とを互いに密着させるように構成することもできる。
【0078】
また、上記実施形態においては、ブレーキ装置200は、田植え機からなる自走式車両100に搭載した。しかし、ブレーキ装置200は、エンジン106の駆動力によって駆動輪を回転駆動させて自走する自走式車両100に広く適用できるものである。したがって、ブレーキ装置200は、田植え機以外の自走式車両100、例えば、耕運機などの他の農業車両、四輪バギー車またはゴルフ場内を走行するゴルフカートなどに搭載して使用することができる。
【符号の説明】
【0079】
100…自走式車両、101…車台、102…前輪、103…後輪、104…ステアリング機構、105…ハンドル、106…エンジン、107…動力伝達ユニット、108…ミッションケース、110…出力軸、110a…出力軸歯車、111…植付け変速部、112…植付けユニット、
120…ブレーキ取付部、121…出力軸歯車収容部、122…潤滑油、123…摩擦板受け部、124…入出力軸収容部、125…供給油路、126…帰還油路、
200…ブレーキ装置、201…入出力軸、202a,202b…ベアリング、203…入出力歯車、204…回転摩擦板、205…固定摩擦板、205a…突起、206…プレッシャープレート、206a…プレート貫通孔、206b…押圧部、206c…傾斜面、206d…カム溝、206e…突出片、207…カムボール、208…ブレーキ作動機構、208a…作動レバー、208b…作動軸、208c…作動片、
210…ブレーキケース、211…収容部、212…嵌合溝、213…リターン部材支持部、214…側壁、215…軸方向油路、216…径方向油路、217…ヒートシンク、
220…リターン部材、221…流動阻害部、222…潤滑油流通部、223…プレート押圧部、224…貫通孔、225…ボルト。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9