(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】有効成分としてアントシアニン-負帯電多糖複合体を含む胃炎又は消化性潰瘍を予防、改善又は治療するための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7048 20060101AFI20240529BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240529BHJP
A61K 31/715 20060101ALI20240529BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20240529BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240529BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240529BHJP
【FI】
A61K31/7048
A61P1/04
A61K31/715
A61K47/69
A61K47/36
A23L33/10
(21)【出願番号】P 2021576645
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(86)【国際出願番号】 KR2020008343
(87)【国際公開番号】W WO2020263010
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】10-2019-0077417
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521559061
【氏名又は名称】ジェービーケーラボ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ボン クン
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0126587(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0009627(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-0905747(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0244038(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0010671(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胃炎又は消化性潰瘍の予防又は治療のための有効成分としてアントシアニン-アルギン酸複合体を含む、胃炎又は消化性潰瘍の予防又は治療のための医薬組成物。
【請求項2】
前記アントシアニンが、シアニジン-3-アラビノシド、シアニジン-3-グルコシド、シアニジン-3-ガラクトシド、及びデルフィニジン-3-グルコシドからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記複合体中のアントシアニンとアルギン酸の重量比が1:1~100である、請求項1
又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記消化性潰瘍が、十二指腸潰瘍、胃潰瘍、小腸潰瘍及び大腸潰瘍からなる群から選択される、請求項1~
3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記胃炎又は消化性潰瘍がアルコール性胃炎又はアルコール性消化性潰瘍である、請求項1~
3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
胃炎又は消化性潰瘍の予防又は改善のための有効成分としてアントシアニン-アルギン酸複合体を含む、胃炎又は消化性潰瘍の予防又は改善のための食品組成物。
【請求項7】
請求項
6に記載の食品組成物を含む、胃炎又は消化性潰瘍の予防又は改善のための健康機能性食品又は健康補助食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分としてアントシアニン-負帯電多糖複合体を含む胃炎又は消化性潰瘍を予防、改善、又は治療するための医薬組成物に関し、より具体的には、アントシアニン又は負帯電多糖のそれぞれと比較して相乗効果を示す、有効成分としてアントシアニン-負帯電多糖複合体を含む胃炎又は消化性潰瘍を予防、改善、又は治療する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
韓国人は、食生活に起因して胃炎及び消化性潰瘍等の多くの消化器系の疾患を患う。これらの疾患は、初期治療後の再発率が高い。消化性潰瘍は、消化管の粘膜の一部に円形、楕円形、又は線状の潰瘍が発生する疾患である。この疾患は、消化力の強い胃液が接触する領域、すなわち下部食道、胃前庭、十二指腸近位部、メッケル憩室、及び胃縫合によく起こる。この疾患は胃及び十二指腸で最も頻繁に発生するため、胃潰瘍及び十二指腸潰瘍はどちらも一般に消化性潰瘍と呼ばれる。病理学的には、胃及び腸の粘膜に潰瘍が存在する場合、それはびらん又は急性表在性潰瘍と呼ばれる。表在性潰瘍が粘膜筋板に到達し、粘膜下層を通過して筋層に到達すると、潰瘍と呼ばれる。潰瘍がひどくなると、損傷部分が漿膜に達し、胃液が腹腔内に漏れ、激しい痛みを引き起こし、外科手術が必要になることさえある。消化性潰瘍は臨床症状なしに自然治癒する場合があるが、ほとんどの潰瘍患者は胸焼け又はげっぷ(sour belching)等の不快感を訴える。消化性潰瘍は、攻撃因子の活動亢進又は防御因子の弱体化による恒常性の崩壊によって引き起こされる(非特許文献1)。攻撃因子としては、胃腺の壁細胞から分泌される塩酸(HCl)、及び主細胞から分泌される消化酵素であるペプシンが挙げられる。特に、塩酸が主な攻撃因子として認識されている。最近、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)と呼ばれる細菌の感染が、攻撃因子の中で重要な原因として指摘されている(非特許文献2)。継続的なアルコール摂取が胃炎及び消化性潰瘍を引き起こすこともよく知られている。一方、防御因子としては、粘膜層、消化管粘膜表面を囲むムチン、粘膜内の血流、及び粘膜を構成する成分であるプロスタグランジン(PG)が挙げられる。
【0003】
胃炎及び胃潰瘍の治療法としては、過剰な胃液を中和する制酸剤、酸分泌を減らす抗コリン作用薬、胃酸放出を阻害するヒスタミン拮抗薬、及び消化液に対する胃内膜の抵抗性を高めて回復を助ける胃粘膜保護剤が挙げられる。最近では、ヘリコバクター・ピロリを除去するために、上記の薬物と抗生物質との組合せを処方する薬物療法がある。
【0004】
しかしながら、これらの薬物を使用すると再発率が高く、長期間服用しなければならないという問題がある。実際、上記の薬物を約6週間服用すると潰瘍は治ると報告されているが、ほとんどの患者は約1年後に再発する。さらに、ラニチジン、シメチジン、及びファモチジンは、胃潰瘍の治療のために長期間服用すると胃腫瘍を引き起こす可能性があるという報告があり、オメプラゾールの長期使用は神経内分泌細胞腫瘍を引き起こすという報告がある。そのため、人体に安全な胃炎及び胃潰瘍の治療剤を開発することが急務となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Shay et al., In Gastroenterology, (Buchus, H.L & Sanunders, W. B. Co.): 420, 1963
【文献】Scan J. Gastroenterol., 26(suppl):6, 1991
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明者らは、胃炎及び消化性潰瘍のための天然物ベースの治療薬を開発するために集中的な研究を繰り返した。その結果、本発明者らは、アントシアニン-負帯電多糖複合体が、各物質に比べて消化性潰瘍に対して顕著に向上した予防又は治療効果を示すことを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明の目的は、胃炎又は消化性潰瘍の予防又は治療のための有効成分としてアントシアニン-負帯電多糖複合体を含む医薬組成物を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、胃炎又は消化性潰瘍の予防又は改善のための有効成分としてアントシアニン-負帯電多糖複合体を含む食品組成物を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、食品組成物を含む健康機能性食品又は健康補助食品を提供することである。
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、胃炎又は消化性潰瘍の予防又は治療のための有効成分としてアントシアニン-負帯電多糖複合体を含む医薬組成物を提供する。
【0011】
本発明はまた、胃炎又は消化性潰瘍の予防又は改善のための有効成分としてアントシアニン-負帯電多糖複合体を含む食品組成物を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、食品組成物を含む健康機能性食品又は健康補助食品を提供する。
【0013】
本発明はまた、胃炎又は消化性潰瘍の予防又は治療のための有効成分としてアントシアニン-アニオン性多糖複合体を含む医薬組成物を治療有効量、ヒトを含む哺乳動物に投与する工程を含む、胃炎又は消化性潰瘍を予防又は治療する方法を提供する。
【0014】
本発明はまた、胃炎又は消化性潰瘍用の製剤の製造のための、胃炎又は消化性潰瘍の予防又は治療のための有効成分としてアントシアニン-アニオン性多糖複合体を含む医薬組成物の使用を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、胃炎又は消化性潰瘍の治療のための、胃炎又は消化性潰瘍の予防又は治療のための有効成分としてアントシアニン-アニオン性多糖複合体を含む医薬組成物の使用を提供する。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
胃炎又は消化性潰瘍の予防又は治療のための有効成分としてアントシアニン-負帯電多糖複合体を含む医薬組成物
本発明は、胃炎又は消化性潰瘍の予防又は治療のための有効成分としてアントシアニン-負帯電多糖複合体を含む医薬組成物を提供する。
【0018】
アロニア(アロニア・メラノカルパ:Aronia melanocarpa)はバラ科に属するベリーの一種で、北東アメリカ及び東ヨーロッパに自生している。暗赤色を有するアロニアは、近年世界中で広く栽培されており、園芸種として、アロニアは2品種の交雑種として栽培されている。特に、アロニアは自然界の植物の中でアントシアニンが最も高い群に属することが知られている。アロニアには、シアニジン-3-ガラクトシド、シアニジン-3-グルコシド、シアニジン-3-アラビノシド、及びデルフィニジン-3-グルコシド等の多くの種類のアントシアニンが含まれていることが知られており、多量のフェノールも含まれていることが知られている。このアロニアは、学術調査を通じて優れた抗酸化効果、抗炎症効果、及び免疫増強効果を有することが確認されており、糖尿病及び様々な心血管疾患、並びに化粧品に関連するアロニアの効能について多くの研究が行われている。
【0019】
本発明において、「アントシアニン」は、植物に存在する水溶性色素グリコシドであり、細胞液の酸濃度、色素化合物の化学構造、及び様々な金属イオンとの結合状態に応じて紫、赤、及び青等の色を示す天然の植物色素を指す。最近、アントシアニンは様々な生理学的活性を有することが知られており、例えば、老化防止活性、抗菌活性、変異原性抑制活性、コレステロール低下活性、視力向上効果、血管保護機能、及び抗潰瘍機能が認められている。
【0020】
本発明において、上記アントシアニンは、植物から単離され得る。植物としては、アントシアニンを産生する任意の植物を挙げることができ、例えば、黒米、ブラックビーン、カシス、チョークベリー、黒チョークベリー、クランベリー、アロニア、クワ、チェリー、ラズベリー、ブルーベリー、ブラックベリー、ナス、アサイー、野生ブドウ又はブドウ、好ましくはアロニアであり得る。
【0021】
本発明において、上記アントシアニンは、ペオニジン、シアニジン-3-アラビノシド、シアニジン-3-(キシロシルグルコース)-5-ガラクトース、シアニジエン-3-キシロシド、シアニジン-3-グルコシド、シアニジン-3-ガラクトシド、シアニジン-3-(クマロイル-キシロシルグルコース)-5-ガラクトース、デルフィニジン-3-グルコシド、デルフィニジン-3-ルチノシド、ペオニジン-3-アラビノシド、ペオニジン-3-ガラクトシド、ペツニジン-3-グルコシド、シアニジン、デルフィニジン、マルビジン、ペラルゴニジン、ペオニジン、シアニジン-3,5-ジグルコシド、シアニジン-3-ルチノシド、ペラルゴニジン-3-グルコシド、ペオニジン-3-グルコシド、マルビジン-3-グルコシド、及びマルビジン-3,5-ジグルコシドからなる群から選択される少なくとも1つとすることができる。好ましくは、上記アントシアニンは、シアニジン-3-ガラクトシド、シアニジン-3-グルコシド、シアニジン-3-アラビノシド、シアニジン-3-キシロシドとすることができる。
【0022】
本発明において、上記負帯電多糖は、それが生体適合性を有する限り特に限定されず、1つ以上の負に帯電した官能基を含み得る。「多糖」という用語は、2つ以上の単糖分子のポリマーを指し、単糖は同じであっても又は異なってもよい。本発明の多糖は、架橋されてもよく、又は架橋されなくてもよい。
【0023】
本発明の複合体は、負帯電多糖自体を使用することによって、又は負に帯電した官能基を全く含まないか又は少量しか含まない一般的な多糖に化学修飾を導入して負に帯電した官能基を付与することによって形成され得る。負に帯電した官能基は、例えば、1つ又は2つ以上のカルボキシル基又は硫酸基であり得る。
【0024】
特定の例において、上記負帯電多糖は、ヒアルロン酸、o-硫酸化ヒアルロン酸(o-硫酸化HA)、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラチン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、アルギン酸、フコイダン、カラギーナン、それらの混合物、及びそれらの複合体からなる群から選択することができ、好ましくはアルギン酸であるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0025】
負帯電多糖は、食品及び飲料によく使われる物質であり、人体に無害であるだけでなく、中性溶液中で強い負電荷を帯びているため、正に帯電したアントシアニンと効果的にイオン結合して複合体を形成することができる。
【0026】
多糖は特に限定されないが、約1000~1000000の範囲、好ましくは約10000~300000の範囲、より好ましくは20000~50000の範囲の重量平均分子量を有し得る。
【0027】
本発明の負帯電多糖では、アントシアニンのカプセル化速度は、多糖の負電荷の種類及び数を使用してアントシアニンとのイオン結合比を調整することによって制御することができる。したがって、負電荷を有する多糖である限り、目的に応じて様々な分子量を有する1種以上の多糖を使用することができる。複合体中のアントシアニンと負帯電多糖との重量比は、1:1~100、好ましくは1:5~100、より好ましくは1:5~80、最も好ましくは1:10~50であり得る。上記の範囲内で、本発明の多糖から形成される複合体は、アントシアニンの安定性及び生理学的活性を増強するという点で有利な効果を示し得る。
【0028】
アントシアニンは低pHで高い安定性を有し、特にpH3以下で最も高い安定性及び最も高い抗酸化活性を有することが知られている。さらに、アントシアニンはpH3以下で正電荷を帯びているため、生体適合性を有する負帯電多糖とのイオン結合を介して複合体を形成することにより、構造的に安定させることができる。アントシアニン-負帯電多糖ナノ複合体は、酸化安定性及び貯蔵安定性に優れているため、医薬品又は食品に適用した場合の処理条件及び貯蔵特性を向上させることができる。さらに、上記複合体を使用すると、安定性が向上するため、in vivoでの吸収を高めることができ、これは薬の開発に非常に役立つ可能性がある。
【0029】
本発明において、複合体は、アントシアニンと負帯電多糖との複合体を形成することにより、10nm~1000μmの範囲のサイズを有し得て、アントシアニンは、多糖によってカプセル化され得るが、必ずしもそれに限定されない。本発明によるアントシアニン-負帯電多糖複合体は、使用の目的又は分野に応じて、懸濁液又は粉末であり得る。
【0030】
場合によっては、アントシアニン-負帯電多糖複合体は、生体適合性又は生分解性の担体を更に含むことができる。この場合、アントシアニン-負帯電多糖複合体は担体中にあるか又はその一部であり、担体はリポソーム、ミセル又は重合小胞であり得る。
【0031】
本発明の複合体の最も好ましい形態では、負帯電多糖はアルギン酸であり得て、重量平均分子量は20000~50000の範囲である。
【0032】
本発明において、アントシアニン-負帯電多糖複合体を調製する方法は特に限定されず、該複合体は、好ましくは、
(i)酸性の環境でアントシアニン-アニオン性多糖複合体を形成する工程、及び/又は、
(ii)上記で形成された複合体を回収する工程、
を含む方法によって調製することができる。
【0033】
別の実施の形態において、アントシアニン-負帯電多糖複合体を調製する方法は、
(iii)中性又は酸性の環境でアントシアニン-負帯電多糖複合体を形成する工程を含むことができる。
【0034】
アントシアニン-負帯電多糖複合体を形成する場合、溶媒は特に限定されないが、食用のものの方が優れている。負帯電多糖とアントシアニンとを適切な比率で調製した後、2つの溶液を均等に撹拌し、複合体が完全に形成されるまで待つ。
【0035】
上記(i)の方法によって形成された複合体は、剤形に応じて、経口製剤の場合と同様に酸性環境を維持し得るが、注射剤として使用する場合は、方法(ii)によってpHを中性にすることが好ましい。
【0036】
(i)及び(iii)の方法を使用することの違いは、複合体を形成する多糖がどのような種類の官能基を持っているかによって異なる。例えば、(i)及び(iii)の方法はどちらも、pKa値が低いために硫酸基を有する多糖に使用することができるが、カルボキシル基を有する多糖には、(iii)の方法を使用するのが適切である。カルボキシル基を有する多糖に(i)の方法を使用することができるが、(ii)のプロセスのみにてアントシアニンと安定して複合体が形成されなければならない。
【0037】
本発明において、上記胃炎は、急性胃炎と慢性胃炎の両方を含み、発生の原因は特に限定されないが、ヘリコバクター・ピロリ感染、NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)摂取、アルコール摂取、ストレス等によって引き起こされる可能性があり、好ましくはNSAID摂取又はアルコール摂取によって引き起こされる可能性があり、より好ましくはアルコール摂取によって引き起こされる可能性がある。
【0038】
一方、本発明において胃炎は食道炎も含み得ることが当業者には明らかであろう。
【0039】
本発明において、消化性潰瘍は、十二指腸潰瘍、胃潰瘍、小腸潰瘍、及び大腸潰瘍からなる群から選択され得て、好ましくは十二指腸潰瘍又は胃潰瘍であり得る。
【0040】
一方、本明細書において、「有効成分として含む」とは、アントシアニン-負帯電多糖複合体の有効性又は活性を達成するのに十分な量を含むことを意味する。本発明の一実施の形態において、本発明の組成物中のアントシアニン-負帯電多糖複合体は、例えば、0.001mg/kg以上、好ましくは0.1mg/kg以上、より好ましくは10mg/kg以上、更により好ましくは100mg/kg以上、より好ましくは250mg/kg以上、そして最も好ましくは0.1g/kg以上である。アントシアニン-負帯電多糖複合体は天然物であり、過剰投与しても副作用がないため、本発明の組成物に含まれるアントシアニン-負帯電多糖複合体の量の上限は、当業者が適切な範囲で選択することができる。
【0041】
本発明の医薬組成物を、有効成分に加えて、薬学的に適切で生理学的に許容可能なアジュバントを使用して調製することができる。アジュバントとして、賦形剤、崩壊剤、甘味料、結合剤、コーティング剤、膨張剤、滑沢剤、スリップ調整剤、又は香味料を使用することができる。
【0042】
医薬組成物は、好ましくは、投与のための上記の有効成分に加えて、1つ以上の薬学的に許容可能な担体を含むことにより、医薬組成物として製剤化され得る。
【0043】
薬学的に許容可能な担体は、当該技術分野において一般的に用いられるものであり、この例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロール、メチルセルロース、微結晶性セルロール、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。さらに、本発明の医薬組成物は、希釈剤又は賦形剤、例えば充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤及び界面活性剤、並びに他の薬学的に許容可能な添加物を更に含むことができる。
【0044】
医薬組成物の配合剤は、顆粒、粉末、錠剤、コーティングされた錠剤、カプセル剤、坐剤、溶液、シロップ剤、ジュース、懸濁液、エマルション、液滴又は注射用溶液であり得る。例えば、錠剤又はカプセル剤の形態の配合剤の場合、有効成分は、エタノール、グリセロール、水等の経口で非毒性の薬学的に許容可能な不活性担体と組み合わせることができる。さらに、所望又は必要に応じて、適切な結合剤、滑沢剤、崩壊剤、及び発色剤も混合物に含めることができる。適切な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然糖(グルコース又はベータラクトース等)、トウモロコシ甘味料、天然及び合成のガム(アカシア、トラガント又はオレイン酸ナトリウム等)、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガム等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0045】
液体溶液として製剤化された組成物では、薬学的に許容可能な担体は無菌で生体適合性であり、生理食塩水、無菌水、リンゲル液、緩衝生理食塩水、アルブミン注射液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール、及び1つ以上のこれらの成分を混合することによって使用され得る。必要に応じて、酸化防止剤、緩衝液、及び静菌剤等の他の従来の添加物を加えることができる。さらに、本発明の組成物は、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び滑沢剤と混合することにより、注射用の水溶液、懸濁液及びエマルション、丸剤、カプセル剤、顆粒又は錠剤を含む異なる形態で製剤化され得る。
【0046】
組成物を、Remington's Pharmaceutical Science, Mack Publishing Company, Easton PAに示されている方法に従うことにより、成分に応じて適切な形態で更に調製することができる。
【0047】
本発明の医薬組成物は、経口又は非経口投与が可能であり、非経口投与の場合、静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、経皮投与等により投与され得るが、経口投与が好ましい。
【0048】
本発明において、「経口投与」という用語は、口を通して病的症状を緩和するための薬物を注入する方法である。本発明において、「非経口投与」という用語は、経口投与を除いて、チューブを使用する皮下、筋肉内、静脈内、又は腹腔内の投与の方法を指す。
【0049】
本発明の医薬組成物を、ラット、マウス、家畜、及びヒト等の哺乳動物に経口投与することができる。
【0050】
非経口投与用配合剤の場合、従来の方法により、滅菌水溶液、液体、非水溶液、懸濁液、エマルション、点眼薬、眼軟膏、シロップ剤、坐剤、エアロゾル等の外用製剤、及び滅菌注射液を調製することができ、好ましくはクリーム、ゲル、パッチ、スプレー、軟膏、絆創膏、ローション、塗布剤、ペースト又はパップ剤等の皮膚外部医薬組成物を調製することができるが、必ずしもこれらに限定されない。局所投与用の組成物は、臨床処方に応じて、無水又は水性であり得る。非水溶液及び懸濁液は、1つ以上の活性化合物に加えて、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステル等を含むことができる。坐剤は、1つ以上の活性化合物に加えて、ウィテップゾール、マクロゴール、tween 61、カカオバター、ラウリンバター、グリセロゼラチン等を含むことができる。
【0051】
本発明の医薬組成物の適切な投与量は、製剤化方法、投与方法、年齢、体重、性別、病状、食物、投与時間、投与経路、排泄速度、及び患者の反応感受性等の要因に応じて変化する。所望の治療又は予防のための有効な投与量は、通常の熟練した医師によって容易に決定され、処方され得る。本発明の好ましい実施の形態によれば、本発明の医薬組成物の1日用量は、0.001g/kg~10g/kgである。
【0052】
本発明の医薬組成物は、単位用量の形態の又は複数用量の容器内で、薬学的に許容可能な担体及び/又は賦形剤を使用することによって当業者によって実施され得る方法によって製剤化され得る。配合剤は、油又は水溶性媒体中の溶液、懸濁液又はエマルション、抽出物、粉末、顆粒、錠剤又はカプセル剤の形態であり得る。このとき、分散剤又は安定剤を追加で含めることができる。
【0053】
胃炎又は消化性潰瘍の予防又は改善のための有効成分としてアントシアニン-負帯電多糖複合体を含む食品組成物
本発明はまた、胃炎又は消化性潰瘍の予防又は改善のための有効成分としてアントシアニン-負帯電多糖複合体を含む食品組成物を提供する。
【0054】
本発明において、「改善」という用語は、本発明の組成物を被験体に投与する又は摂取させることによって悪液質の悪い状態を好転させる任意の作用を指す。
【0055】
本発明による食品組成物は、医薬組成物と同じ方法で配合し、機能性食品として使用するか、又は様々な食品に添加することができる。例えば、本発明の組成物を、飲料、アルコール飲料、スナック、ダイエットバー、乳製品、肉、チョコレート、ピザ、ラーメン(ramyuns)、その他の麺類、ガム、アイスクリーム、二日酔い治療薬(ドリンク、低粘度のゲル、丸剤、錠剤、カプセル剤等)、ビタミン複合体、健康サプリメント等に添加することができる。
【0056】
本発明の食品組成物は、有効成分としてのアントシアニン-負帯電多糖複合体だけでなく、食品製造中に一般的に添加される成分、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、香辛料及び香味料も含むことができる。上記の炭水化物は、グルコース及びフルクトース等の単糖類;マルトース、スクロース及びオリゴ糖等の二糖類;デキストリン及びシクロデキストリン等の多糖類;並びにキシリトール、ソルビトール及びエリスリトール等のグルコースアルコールの1つであり得る。それ以外に、天然甘味料(タウマチン、ステビア抽出物、例えばレバウジオシドA、グリチルリチン等)及び合成甘味料(サッカリン、アスパルテーム等)を甘味料として含めることができる。例えば、本発明の食品組成物がドリンク又は飲料として調製される場合、本発明のアントシアニン-負帯電多糖複合体に加えて、クエン酸、高フルクトースコーンシロップ、砂糖、グルコース、酢酸、リンゴ酸、果汁、及び様々な植物抽出物を追加で含めることができる。
【0057】
本発明は、有効成分としてアントシアニン-負帯電多糖複合体を含む食品組成物を含む、健康機能性食品又は健康補助食品を提供する。上記健康機能性食品又は健康補助食品は、健康機能性食品法に従って人体に有用な原料又は成分を使用して製造及び加工された食品を指す。「機能性」という用語は、人体の構造及び機能のための栄養素の調節又は生理学的効果等の健康目的のための有用な効果を得るための摂取を指す。本発明において、健康機能性食品とは、飲料、茶、香辛料、ガム、スナック等の食品素材にアントシアニン-負帯電多糖複合体を添加して調製されるか、又はカプセル剤、粉末、懸濁液等の中にアントシアニン-アニオン性多糖複合体を含ませることにより調製される食品である。上記の食品を摂取した場合、特定の健康効果がもたらされ、一般的な薬とは異なり、食品を原料として使用することで、薬を長期間服用した場合に発生する可能性のある副作用はなくなる。このようにして得られた本発明の健康機能性食品又は健康補助食品は、日常的に摂取できるため非常に有用である。かかる健康機能性食品又は健康補助食品に添加されるアントシアニン-負帯電多糖複合体の量は、対象となる健康機能性食品の種類によって異なり、一律に定義することはできないが、食品本来の味を損なわない範囲で添加することができる。具体的には、添加される複合体の量は、通常、対象食品に対して0.01重量%~50重量%、好ましくは0.1重量%~20重量%の範囲である。さらに、丸剤、顆粒、錠剤又はカプセル剤の形態の健康機能性食品又は健康補助食品の場合、上記複合体は通常、0.1重量%~100重量%、好ましくは0.5重量%~80重量%の量で添加される。本発明の一実施の形態において、本発明の健康機能性食品又は健康補助食品は、丸剤、錠剤、カプセル剤又は飲料の形態であり得る。
【0058】
本発明の食品組成物は、従来の食品添加物を含むことができる。「食品添加物」として適切かどうかは、別段の指定がない限り、食品医薬品安全処によって承認された食品添加物コードの一般規則及び一般試験方法に従い、関連品目の仕様及び基準に従って判断される。
【0059】
「食品添加物コード」に列挙されている品目としては、例えば、ケトン、グリシン、クエン酸カリウム、ニコチン酸、及び桂皮酸等の化学化合物;柿色素、甘草エキス、結晶セルロース、コウリャン色素、及びグアーガム等の天然添加物;並びにL-グルタミン酸ナトリウム製剤、麺用アルカリ添加物、防腐剤、及びタール着色配合剤等の混合製剤が挙げられる。
【0060】
さらに、本発明の食品組成物は、胃炎又は消化性潰瘍を予防及び/又は改善する目的で、錠剤、カプセル剤、粉末、顆粒、液体、及び丸剤の形態で製造及び加工することができる。
【0061】
例えば、錠剤形態の健康機能性食品は、本発明によるアントシアニン-負帯電多糖複合体を有効成分として含む医薬組成物、賦形剤、結合剤、崩壊剤、及び他の添加物の混合物を従来の方法で造粒し、続いて滑沢剤を添加して圧縮成形することにより調製され得る。或いは、混合物を直接圧縮成形することもできる。さらに、錠剤形態の健康機能性食品は、調味料等を含むことができ、必要に応じて適切なコーティング剤でコーティングされ得る。
【0062】
カプセル剤形態の健康機能性食品のうち、ハードカプセルは、従来のハードカプセルに、本発明によるアントシアニン-負帯電多糖複合体を有効成分として含む医薬組成物と、賦形剤(その顆粒又はそのコーティングされた顆粒)との混合物を充填することによって調製することができる。ソフトカプセルは、ゼラチン等のカプセルベースに、本発明による食品組成物と賦形剤等の添加物との混合物を充填することによって調製することができる。ソフトカプセルは、必要に応じて、グリセリン又はソルビトール等の可塑剤、着色剤、防腐剤等を含むことができる。
【0063】
丸剤形態の健康機能性食品は、本発明によるアントシアニン-負帯電多糖複合体を有効成分として含む医薬組成物、賦形剤、結合剤、崩壊剤等の混合物を適切な方法を用いて成形することにより調製することができる。必要に応じて、丸剤をスクロース若しくは他の適切なコーティング剤でコーティングすることができ、又はデンプン、タルク若しくは適切な材料でコーティングすることができる。
【0064】
顆粒形態の健康機能性食品は、本発明によるアントシアニン-負帯電多糖複合体を有効成分として含む医薬組成物、賦形剤、結合剤、崩壊剤等の混合物を適切な方法を用いて造粒することにより調製することができ、必要に応じて香味料、調味料等を含むことができる。12番(1680μm)、14番(1410μm)、及び45番(350μm)の篩を使用して粒度試験を行った場合、健康機能性食品顆粒の総量は12番篩を通過し、健康機能性食品顆粒の総量の5.0%以下は14番篩に残り、健康機能性食品顆粒の総量の15.0%以下が45番篩を通過した。
【0065】
賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、調味料、香味料等の用語の定義は、当該技術分野で知られている文書に記載されており、同じ又は類似の機能を有するものを含む(The Korean Pharmacopoeia, Moonsung Publishing Co., Korean Association of Pharmacy Education, 5th edition, p33-48, 1989)。
【0066】
本明細書において、食品は特に限定されるものではなく、広い意味で、ほぼ全ての健康機能性食品を含めることができる。
【0067】
胃炎又は消化性潰瘍を予防又は治療する方法
本発明は、胃炎又は消化性潰瘍の予防又は治療のための有効成分としてアントシアニン-アニオン性多糖複合体を含む医薬組成物を治療有効量、ヒトを含む哺乳動物に投与する工程を含む、胃炎又は消化性潰瘍を予防又は治療する方法を提供する。
【0068】
本明細書において、「治療有効量」という用語は、胃炎又は消化性潰瘍を予防又は治療するのに有効な量、例えば、治療される被験体に投与される有効成分としてアントシアニン-アニオン性多糖複合体を含む胃炎又は消化性潰瘍を予防又は治療するための医薬組成物の量である。治療有効量としては、胃炎又は消化性潰瘍の発生又は再発を予防する量、症状を緩和する量、直接的又は間接的な病理学的結果を抑制する量、転移を防ぐ量、進行速度を低下させる量、状態を緩和又は一時的に改善する量、並びに予後を好転する有効成分としてアントシアニン-アニオン性多糖複合体を含む胃炎又は消化性潰瘍を予防又は治療するための医薬組成物の量が挙げられる。すなわち、治療有効量は、胃炎又は消化性潰瘍の症状を、有効成分としてアントシアニン-アニオン性多糖複合体を含む胃炎又は消化性潰瘍を予防又は治療するための医薬組成物によって好転させる又は治癒する全ての量を含むと解釈され得る。
【0069】
胃炎又は消化性潰瘍を予防又は治療する方法は、有効成分としてアントシアニン-アニオン性多糖複合体を含む胃炎又は消化性潰瘍を予防又は治療するための医薬組成物を投与することにより、症状の発症前に疾患自体を制御するだけでなく、症状を抑制又は回避することも含む。疾患の管理において、特定の有効成分の予防的又は治療的用量は、疾患の性質及び重症度、並びに有効成分が投与される経路に応じて変化し得る。用量及び投薬の頻度は、個々の患者の年齢、体重及び反応に応じて変化し得る。適切な投与計画は、これらの要因を考慮に入れて当業者によって容易に選択され得る。さらに、本発明の予防的又は治療的方法は、胃炎又は消化性潰瘍の予防又は治療に有用な治療有効量の追加の活性剤を、有効成分としてアントシアニン-アニオン性多糖複合体を含む胃炎又は消化性潰瘍を予防又は治療するための医薬組成物と共に投与することを更に含むことができる。追加の活性剤は、有効成分としてアントシアニン-アニオン性多糖複合体を含む胃炎又は消化性潰瘍を予防又は治療するための医薬組成物との相乗効果又は相加効果を示すことができる。
【0070】
ヒトを含む哺乳動物としては、ヒト、サル、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、及びラット等の哺乳動物が挙げられる。
【0071】
胃炎又は消化性潰瘍の予防又は治療のための医薬組成物の使用
本発明は、胃炎又は消化性潰瘍用の製剤の製造のための、胃炎又は消化性潰瘍の予防又は治療のための有効成分としてアントシアニン-アニオン性多糖複合体を含む医薬組成物の使用を提供する。
【0072】
本発明は、胃炎又は消化性潰瘍の治療のための、胃炎又は消化性潰瘍の予防又は治療のための有効成分としてアントシアニン-アニオン性多糖複合体を含む医薬組成物の使用を提供する。
【0073】
胃炎又は消化性潰瘍用の製剤を製造するための本発明の胃炎又は消化性潰瘍の予防又は治療のための有効成分としてアントシアニン-アニオン性多糖複合体を含む医薬組成物を、許容可能な担体等と混合することができ、更に他のアゴニストを含むことができる。
【0074】
本発明の医薬組成物、食品組成物、予防方法又は治療方法、及び使用において言及されたものは、それらが互いに矛盾しない限り、等しく適用される。
【発明の効果】
【0075】
本発明により提供される有効成分としてアントシアニン-負帯電多糖複合体を含む組成物は、胃炎又は消化性潰瘍の病変を緩和する顕著に優れた効果を示し、したがって、胃炎又は消化性潰瘍を予防、改善又は治療する組成物の開発に非常に効果的に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1】本発明のアントシアニン-負帯電多糖複合体の効果を示すグラフである(Omp:オメプラゾール、CANC:アントシアニン-負帯電多糖複合体、mpk:重量1kg当たりのmg)。
【
図2】本発明のアントシアニン-負帯電多糖複合体、及び本発明のアントシアニン単独でそれぞれ処理した場合の効果を示す一連のグラフである(CANC:アントシアニン-負帯電多糖複合体、ABF:吸着/溶出された本発明のアントシアニン、mpk:重量1kg当たりのmg)。
【発明を実施するための形態】
【0077】
これより、本発明を以下の実施例によって詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は、本発明の例示のためであるにすぎず、本発明の内容は実施例に限定されるものではない。
【0078】
実施例1:アントシアニン-負帯電多糖複合材料の調製
アントシアニンは、アロニアの生果実を潰し、その果汁をポリフェノール吸着樹脂に吸着させ、エチルアルコール水溶液で溶出し、それを粉砕することにより得た。上記で調製したアントシアニン粉末20mgをリン酸緩衝液(pH3、PB3)5mlに40℃で溶解し、アルギン酸(負帯電多糖)200mgを脱イオン水(D.I水)10mlに室温で溶解した。アントシアニン-負帯電多糖複合体(CANC)を、アントシアニン溶液をアルギン酸溶液(1:1、体積/体積)に加え、続いて室温で48時間撹拌することによって調製した。
【0079】
実施例2:HCL-エタノール誘発胃虚血性炎症動物モデルにおけるアントシアニン-負帯電多糖複合体の効果
Sparague Dawleyラット(雄性、4週齢)を購入し、試験に使用した。動物を、7日を超えて十分に飼育した。実験室環境では、照明時間を12時間維持し、温度を22±2℃に維持し、相対湿度を50±5%に維持した。
【0080】
1)各試験物質の経口投与前に動物を36時間絶食させ、飲料水は自由に摂取させた。
【0081】
2)実験群を、対照群(Ctrl、水)、オメプラゾール投与群(オメプラゾール、Omp、20mpk(重量1kg当たりのmg))、アルギン酸投与群(アルギン酸塩、52.92mpk)、アントシアニン投与群(ABF、1.27mpk、2.54mpk及び5.08mpk)、及びアントシアニン-アルギン酸複合体投与群(CANC、1.27mpk、2.54mpk及び5.08mpk)に分けた。
【0082】
3)各群に対する試験物質を各動物に経口投与(2μl/g、b.w.)し、薬物投与の1時間後に0.3M HCl/エタノールを経口投与(1ml/ラット)した。薬物投与の進行と同時に飲料水を禁止した。
【0083】
4)0.3M HCl/エタノール投与の1時間後、動物を二酸化炭素で屠殺し、胃を摘出し、2%ホルマリン溶液で10分間固定し、胃の損傷領域を撮影し、Image Jソフトウェアを使用して損傷の長さ(mm)を測定した。測定値を潰瘍係数(mm)として記録した。
【0084】
結果を
図1に示す。
図1に示すように、アントシアニン-アルギン酸複合体は、各物質を単独で投与した群と比較して、有意に向上した胃炎改善効果を示した。
【0085】
図に示すように、アントシアニン-アルギン酸複合体は、実施例1で単離されたアントシアニン(ABF)を単独で投与した群と比較して、統計的に有意な改善効果を示した(左パネル:アントシアニン-負帯電多糖複合体投与群、右パネル:アントシアニン投与群)。これらの結果によって、アントシアニンと負帯電多糖を複合体の形態で組み合わせて投与することによって相乗効果が生じることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明により提供される有効成分としてアントシアニン-負帯電多糖複合体を含む組成物は、胃炎又は消化性潰瘍の病変を緩和する顕著に優れた効果を示し、したがって、胃炎又は消化性潰瘍を予防、改善又は治療する組成物の開発に非常に効果的に使用され得ることから、産業上の利用可能性は非常に高い。