(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】ソフトセンサーを用いた養液再利用植物栽培システム
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20240529BHJP
【FI】
A01G31/00 601A
(21)【出願番号】P 2022142910
(22)【出願日】2022-09-08
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】10-2022-0066264
(32)【優先日】2022-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520445277
【氏名又は名称】シェルパ スペース インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ユン,チャ ムン
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-298732(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0122612(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
養液成分別に備えられた複数のコンポーネントタンクと、コンポーネントタンク別に備えられる制御バルブと、を含む養液機、
前記養液機から供給された原養液と外部から供給された原水とが
混合養液となるように混合される混合槽、
栽培ベッドから排出される廃養液を集めて貯蔵し、前記廃養液を前記混合槽から供給された前記混合養液と混合させた後、これを栽培ベッドに循環させ、pHセンサー、ECセンサー、温度センサー、濁度センサー、及び重さセンサーのうち少なくとも一つが設置される回収槽、
前記回収槽の混合養液を前記栽培ベッドに移送する灌漑ポンプ、及び、
作物の生長状態を判断する分析モジュールと、前記回収槽に貯蔵された廃養液の重さ、酸性度、電気伝導度、温度、及び濁度のうち少なくとも一つを予め構築された養分組成推定モデルに適用し、前記廃養液に含まれた各養分コンポーネントの組成を測定する測定モジュールと、測定された前記廃養液の組成と判断された前記作物の生長状態に基づいて前記廃養液に補充する各養分コンポーネントの量を算出する計算モジュールと、算出結果によって前記養液機のコンポーネントタンク別の制御バルブに制御信号を送信する通信モジュールと、を含むコントローラー、
を含むソフトセンサーを用いた養液再利用植物栽培システム。
【請求項2】
前記回収槽の前端又は後端に配置され、廃養液の不純物をろ過するフィルターが備えられる浄化槽がさらに含まれる、請求項1に記載のソフトセンサーを用いた養液再利用植物栽培システム。
【請求項3】
作物を撮影するカメラをさらに含み、
前記分析モジュールは、前記カメラの映像データを用いて前記作物の生長状態を判断する、請求項1に記載のソフトセンサーを用いた養液再利用植物栽培システム。
【請求項4】
前記作物の生長状態は、作物の成長段階及び作物の病虫害感染状態のうち少なくとも一つを含む、請求項3に記載のソフトセンサーを用いた養液再利用植物栽培システム。
【請求項5】
前記混合槽には、pHセンサー、ECセンサー、温度センサー、重さセンサー、及び濁度センサーのうち少なくとも一つが設置され、
前記混合槽内の原養液の重さ、酸性度、電気伝導度、温度、及び濁度のうち少なくとも一つを前記養分組成推定モデルに適用し、前記原養液に含まれた各養分コンポーネントの組成を測定し、測定された原養液の組成と前記コントローラーによって実際に供給された原養液の組成とを比較し、比較による差値を前記養分組成推定モデルに反映することによって前記
養分組成推定モデルをアップデートする補正モジュールが前記コントローラーにさらに含まれる、請求項1に記載のソフトセンサーを用いた養液再利用植物栽培システム。
【請求項6】
前記コントローラーは、
前記比較による差値が予め設定されたしきい値を超える場合、前記混合槽に設置されたpHセンサー、ECセンサー、温度センサー、及び重さセンサーのうち少なくとも一つが使用年限を徒過したと判断し、ユーザーにアラームを提供する警告モジュールをさらに含む、請求項5に記載のソフトセンサーを用いた養液再利用植物栽培システム。
【請求項7】
前記コントローラーは、
判断された前記作物の生長状態を予め構築された養分消耗モデルに代入し、消耗が予想される原養液の養分の種類及び消耗量を導出し、導出された予想値によって前記各コンポーネントタンクの制御バルブを制御することを特徴とする、請求項4に記載のソフトセンサーを用いた養液再利用植物栽培システム。
【請求項8】
養液成分別に備えられた複数のコンポーネントタンクと、コンポーネントタンク別に備えられる制御バルブと、を含む養液機、
前記養液機から供給された原養液と外部から供給された原水とが
混合養液となるように混合される混合槽、
栽培ベッドと、前記栽培ベッドから排出される廃養液を集めて貯蔵し、前記廃養液を前記混合槽から供給された前記混合養液と混合させた後、これを栽培ベッドに循環させ、pHセンサー、ECセンサー、温度センサー、及び重さセンサーのうち少なくとも一つが設置される回収槽と、前記混合槽の混合養液を前記栽培ベッドに移送する灌漑ポンプと、を含む複数の栽培装置、
前記混合槽と前記複数の栽培装置の各回収槽とを連結する配管ラインに設置される供給調節バルブを備えるバルブボックス、及び、
前記各栽培装置で栽培中の作物の生長状態を判断する分析モジュールと、前記各栽培装置の回収槽に貯蔵された廃養液の重さ、酸性度、電気伝導度、及び温度のうち少なくとも一つを予め構築された養分組成推定モデルに適用し、前記廃養液に含まれた各養分コンポーネントの組成を測定する測定モジュールと、測定された前記廃養液の組成と判断された前記作物の生長状態に基づいて前記廃養液に補充する各養分コンポーネントの量を算出する計算モジュールと、算出結果によって前記制御バルブ及び前記各栽培装置のバルブボックスに備えられた各供給調節バルブに制御信号を送信する通信モジュールと、を含む統合コントローラー、
を含むソフトセンサーを用いた養液再利用植物栽培システム。
【請求項9】
前記各栽培装置は、
前記回収槽の前端又は後端に配置され、廃養液の不純物をろ過するフィルターが備えられる浄化槽をさらに含む、請求項8に記載のソフトセンサーを用いた養液再利用植物栽培システム。
【請求項10】
前記各栽培装置は、
作物を撮影するカメラをさらに含み、
前記分析モジュールは、前記カメラの映像データを用いて前記作物の生長状態を判断する、請求項8に記載のソフトセンサーを用いた養液再利用植物栽培システム。
【請求項11】
前記作物の生長状態は、作物の成長段階及び作物の病虫害感染状態のうち少なくとも一つを含む、請求項10に記載のソフトセンサーを用いた養液再利用植物栽培システム。
【請求項12】
前記混合槽には、pHセンサー、ECセンサー、温度センサー、重さセンサー、及び濁度センサーのうち少なくとも一つが設置され、
前記混合槽内の原養液の重さ、酸性度、電気伝導度、温度、及び濁度のうち少なくとも一つを前記養分組成推定モデルに適用し、前記原養液に含まれた各養分コンポーネントの組成を測定し、測定された原養液の組成と前記
統合コントローラーによって実際に供給された原養液の組成とを比較し、比較による差値を前記養分組成推定モデルに反映することによって前記
養分組成推定モデルをアップデートする補正モジュールが前記統合コントローラーにさらに含まれる、請求項8に記載のソフトセンサーを用いた養液再利用植物栽培システム。
【請求項13】
前記統合コントローラーは、
前記比較による差値が予め設定されたしきい値を超える場合
、前記各栽培装置の混合槽に設置されたpHセンサー、ECセンサー、温度センサー、及び重さセンサーのうち少なくとも一つが使用年限を徒過したと判断し、ユーザーにアラームを提供する警告モジュールをさらに含む、請求項12に記載のソフトセンサーを用いた養液再利用植物栽培システム。
【請求項14】
前記統合コントローラーは、
判断された前記
栽培ベッド別
の作物の生長状態を予め構築された養分消耗モデルに代入し、消耗が予想される原養液の養分の種類及び消耗量を導出し、導出された予想値によって前記各コンポーネントタンクの制御バルブを制御することを特徴とする、請求項11に記載のソフトセンサーを用いた養液再利用植物栽培システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトセンサーを用いた養液再利用植物栽培システムに関し、栽培養液を再循環して供給し、廃養液に補充しなければならない栄養成分別組成を、高価な高性能分析機ではなく、pH、EC、温度、濁度、及び重さの測定値と予め構築された推定モデルを用いる、いわゆる、ソフトセンサーを通じてリアルタイムで測定することによって、要求水準の正確度を充足しながらも養液消費を最小化するソフトセンサーを用いた養液再利用植物栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
養液機の場合、作物に必要な栄養分を含有する適当な濃度の栄養液を供給できるように調節する装置であって、この装置を用いた養液栽培は、植物の成長に必要な養分が全て含有された培養液を供給し、各種作物を栽培するための科学的な営農技術である。
【0003】
養液栽培は、土壌に関係なく植物を栽培することができ、培地によって、固形培地栽培と、湛液・薄膜水耕栽培とに区別される。養液栽培は、各種作物の病虫害防止が可能であり、無農薬清浄栽培で無公害植物を製造できる進歩された営農方式であると言える。
【0004】
養液栽培のための養液供給システムは、栽培作物の生育に適するように養液の濃度を予め設定した後、濃縮養液を供給しながら水と混合させ、設定された養液の濃度を調節する。
【0005】
従来の養液供給制御装置は、養液の供給を機械装置を通じて具現するものであって、一部の供給区域のみを異ならせたり、供給時間のみを統制したり、又は供給量を調節する操作機能を有する一方で、養液の供給を細密に調節しにくいという問題を有する。特に、作物の生育時に必要な元素は、作物の種類及び時期別に異なる供給量でなければならないが、これを考慮しない状態で養液を供給するという問題を有する。
【0006】
先行技術文献(韓国公開特許第10-2020-0122612号公報)は、センサーによってセンシングされた作物の生育状態情報及び温室内部の環境情報に基づいて養液機の制御設定値を変更する技術を開示している。しかし、先行技術の場合、作物が実際に吸収した栄養素を考慮せずに、単純に初期情報に基づいて養液を供給するので、養液の要求水準の正確度が低いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0122612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、作物の生長のために供給された養液を再循環させて供給し、廃養液で測定されたpH、EC、温度、及び重さのうち少なくとも一つに基づいて作物が吸収した特定の栄養成分を補充・供給することによって生育環境を維持させ、また、作物の生長状態によって必要な栄養成分をさらに供給することによって作物の円滑な生育が可能な、ソフトセンサーを用いた養液再利用植物栽培システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施例に係るソフトセンサーを用いた養液再利用植物栽培システムは、養液成分別に備えられた複数のコンポーネントタンク(component tanks)と、コンポーネントタンク別に備えられる制御バルブ(control valves)とを含む養液機(nutrient solution provider);前記養液機から供給された原養液(original solution)と外部から供給された原水(water)とが混合される混合槽(mixing reservoir);栽培ベッドから排出される廃養液を集めて貯蔵し、前記廃養液を前記混合槽から供給された前記混合養液と混合させた後、これを栽培ベッドに循環させ、pHセンサー、ECセンサー、温度センサー、濁度センサー、及び重さセンサーのうち少なくとも一つが設置される回収槽(collecting reservoir);前記回収槽の混合養液を前記栽培ベッドに移送する灌漑ポンプ(irrigation pump);及び作物の生長状態を判断する分析モジュール(analyzing module)と、前記回収槽に貯蔵された廃養液の重さ、酸性度(pH)、電気伝導度(EC)、温度(Temp.)、及び濁度のうち少なくとも一つを予め構築された養分組成推定モデルに適用し、前記廃養液に含まれた各養分コンポーネントの組成を測定する測定モジュール(soft measuring module)と、前記測定された廃養液の組成及び前記判断された作物の生長状態に基づいて前記廃養液に補充する各養分コンポーネントの量を算出する計算モジュール(computing module)と、前記算出結果によって前記養液機のコンポーネントタンク別制御バルブに制御信号を送信する通信モジュール(communication module)とを含むコントローラー(controller);を含むことができる。
【0010】
前記回収槽の前端又は後端に配置され、廃養液の不純物をろ過するフィルター(filter)が備えられる浄化槽(purifying reservoir)をさらに含むことができる。
【0011】
作物を撮影するカメラ(camera)をさらに含み、前記分析モジュールは、前記カメラの映像データを用いて前記作物の生長状態を判断することができる。
【0012】
前記作物の生長状態は、作物の成長段階及び作物の病虫害感染状態のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0013】
前記混合槽には、pHセンサー、ECセンサー、温度センサー、重さセンサー、及び濁度センサーのうち少なくとも一つが設置され、前記混合槽内の原養液の重さ、酸性度、電気伝導度、温度、及び濁度のうち少なくとも一つを前記養分組成推定モデルに適用し、前記原養液に含まれた各養分コンポーネントの組成を測定し、測定された原養液の組成と前記コントローラーによって実際に供給された原養液の組成とを比較し、比較による差値を前記養分組成推定モデルに反映することによって前記推定モデルをアップデートする補正モジュール(adjusting module)を前記コントローラーにさらに含むことができる。
【0014】
前記コントローラーは、前記比較による差値が予め設定されたしきい値を超える場合、前記混合槽に設置されたpHセンサー、ECセンサー、温度センサー、及び重さセンサーのうち少なくとも一つが使用年限を徒過したと判断し、ユーザーにアラームを提供する警告モジュール(alerting module)をさらに含むことができる。
【0015】
本発明の他の実施例に係るシステムは、養液成分別に備えられた複数のコンポーネントタンクと、コンポーネントタンク別に備えられる制御バルブとを含む養液機;前記養液機から供給された原養液と外部から供給された原水とが混合される混合槽;栽培ベッドと、前記栽培ベッドから排出される廃養液を集めて貯蔵し、前記廃養液を前記混合槽から供給された前記混合養液と混合させた後、これを栽培ベッドに循環させ、pHセンサー、ECセンサー、温度センサー、及び重さセンサーのうち少なくとも一つが設置される回収槽と、前記混合槽の混合養液を前記栽培ベッドに移送する灌漑ポンプとを含む複数の栽培装置(growth devices);前記混合槽と前記複数の栽培装置の各回収槽とを連結する配管ラインに設置される供給調節バルブを備えるバルブボックス(valve box);及び前記各栽培装置で栽培中の作物の生長状態を判断する分析モジュールと、前記各栽培装置の回収槽に貯蔵された廃養液の重さ、酸性度、電気伝導度、及び温度のうち少なくとも一つを予め構築された養分組成推定モデルに適用し、前記廃養液に含まれた各養分コンポーネントの組成を測定する測定モジュールと、前記測定された廃養液の組成と前記判断された作物の生長状態に基づいて前記廃養液に補充する各養分コンポーネントの量を算出する計算モジュールと、前記算出結果によって前記制御バルブ及び前記各栽培装置のバルブボックスに備えられた各供給調節バルブに制御信号を送信する通信モジュールとを含む統合コントローラー(integrated controller);を含むことができる。
【0016】
前記各栽培装置は、前記回収槽の前端又は後端に配置され、廃養液の不純物をろ過するフィルターが備えられる浄化槽をさらに含むことができる。
【0017】
前記各栽培装置は、作物を撮影するカメラをさらに含み、前記分析モジュールは、前記カメラの映像データを用いて前記作物の生長状態を判断することができる。
【0018】
前記作物の生長状態は、作物の成長段階及び作物の病虫害感染状態のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0019】
前記混合槽には、pHセンサー、ECセンサー、温度センサー、重さセンサー、及び濁度センサーのうち少なくとも一つが設置され、前記混合槽内の原養液の重さ、酸性度、電気伝導度、温度、及び濁度のうち少なくとも一つを前記養分組成推定モデルに適用し、前記原養液に含まれた各養分コンポーネントの組成を測定し、測定された原養液の組成と前記コントローラーによって実際に供給された原養液の組成とを比較し、比較による差値を前記養分組成推定モデルに反映することによって前記推定モデルをアップデートする補正モジュールを前記統合コントローラーにさらに含むことができる。
【0020】
前記統合コントローラーは、前記比較による差値が予め設定されたしきい値を超える場合、前記混合槽に設置されたpHセンサー、ECセンサー、温度センサー、及び重さセンサーのうち少なくとも一つが使用年限を徒過したと判断し、ユーザーにアラームを提供する警告モジュールをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施例によると、作物の生長のために供給された養液を再循環させて供給し、廃養液で測定されたpH、EC、温度、及び重さのうち少なくとも一つに基づいて作物が吸収した特定の栄養成分を補充・供給することによって生育環境を維持させ、また、作物の生長状態によって必要な栄養成分をさらに供給することによって作物の円滑な生育が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施例1に係るソフトセンサーを用いた養液再利用植物栽培システムの模式図である。
【
図2】
図1に例示したコントローラーの構成を具体化したブロック図である。
【
図3】本発明の実施例2に係るソフトセンサーを用いた養液再利用植物栽培システムの模式図である。
【
図4】
図3に例示した統合コントローラーの構成を具体化したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のいくつかの実施例を図面を用いて詳細に説明する。ただし、これは、本発明を特定の実施例に対して限定しようとするものではなく、本発明の技術的思想を含む全ての変形(transformations)、均等物(equivalents)及び代替物(substitutions)は、本発明の範囲に含まれるものと理解しなければならない。
【0024】
本明細書において、単数の表現は、文脈上、明らかに異なる意味を有さない限り、複数の表現を含む。
【0025】
本明細書において、一つの構成が一つのサブ構成を「備える(have)」又は「含む(comprise)」と記載した場合、特に反対の記載がない限り、他の構成を除外するのではなく、他の構成をさらに含み得ることを意味する。
【0026】
本明細書において、「…ユニット(Unit)」、「…モジュール(Module)」及び「コンポーネント(Component)」という用語は、少なくとも一つの機能や動作を処理する単位を意味し、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアの結合で具現される場合もある。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明の実施例1に係るソフトセンサーを用いた養液再利用植物栽培システムの模式図である。
【0028】
実施例1は、作物の生長のために供給された養液を再循環させて供給し、廃養液で測定されたpH、EC、温度、及び重さのうち少なくとも一つに基づいて作物が吸収した特定の栄養成分を補充・供給することによって生育環境を維持させ、また、作物の生長状態によって必要な栄養成分をさらに供給することによって作物の円滑な生育が可能な技術に関する。
【0029】
実施例1の植物栽培システムは、養液機100、混合槽200、回収槽320及びコントローラー400を含む。そして、システムは、カメラC及び補正モジュール(図示せず)をさらに含むことができる。
【0030】
養液機100は、養液成分別に備えられた複数のコンポーネントタンク110と、コンポーネントタンク110別に備えられる制御バルブV1とを含む。
【0031】
コンポーネントタンク110は、栽培ベッド310に供給される養液成分の種類の個数に比例して備えられる。例えば、栽培ベッド310に供給される養液成分がカリウム、リン、カルシウム、マグネシウム、鉄分、窒素である場合、コンポーネントタンク110は合計6個で構成され得る。コンポーネントタンク110の個数は、前記のように6個に限定しなく、栽培ベッド310に供給される養液成分によって変動し得る。
【0032】
コンポーネントタンク110のそれぞれには、コンポーネントタンク110に貯蔵された原養液の供給量及び供給有無を決定する制御バルブV1が備えられる。制御バルブV1は、コントローラー400によって操作され、コンポーネントタンク110から混合槽200に供給される養液の流量及び供給有無を決定する。例えば、養液機100に複数のコンポーネントタンク110が備えられた場合にも、制御バルブV1によって選択されたコンポーネントタンク110に貯蔵された養液のみが混合槽200に供給される。
【0033】
混合槽200は、養液機100のコンポーネントタンク110から供給された養液と、外部から供給された原水とを混合させた混合養液を栽培ベッド310に供給する。具体的には、混合槽200は、混合養液を回収槽320を介して栽培ベッド310に供給する。
【0034】
原水は、原水貯蔵槽1に貯蔵される。原水貯蔵槽1は、雨水管に連結され、雨水を貯蔵することもできる。
【0035】
混合槽200は、養液機100のコンポーネントタンク110から供給された養液の成分によって外部から異なる量の原水を受けることもできる。混合槽200は、養液機100のコンポーネントタンク110から供給された養液の総量によって外部から異なる量の原水を受けることもできる。
【0036】
混合槽200と回収槽320が連結された配管ラインには、混合槽200から回収槽320に混合養液を供給するためのポンプ201が備えられ得る。回収槽320と混合槽200が連結された配管ラインには、回収槽320への混合養液の供給を決定する調節バルブ(図示せず)が備えられてもよい。その調節バルブは、コントローラー400によって制御され得る。
【0037】
回収槽320は、栽培ベッド310から排出された廃養液を受けて貯蔵する。回収槽320は、貯蔵された廃養液を混合槽200から供給された混合養液と混合させた後、これを栽培ベッド310に循環させる。
【0038】
回収槽320は、循環配管(recycling pipe)321を介して栽培ベッド310から廃養液を受け、灌漑配管(irrigating pipe)322を介して栽培ベッド310の廃養液と回収槽320の混合養液とを混合させた後、これを栽培ベッド310に供給する。循環配管321には、栽培ベッド310から排出される廃養液を回収槽320に供給する回収ポンプ(図示せず)が備えられ得る。灌漑配管322には、回収槽320の混合養液を栽培ベッド310に供給するための灌漑ポンプ(図示せず)が備えられ得る。
【0039】
例えば、混合槽200から回収槽320に供給される混合養液は、栽培ベッド310から排出された廃養液の養分組成によって変わり得る。また、混合槽200から回収槽320に供給される混合養液は、栽培ベッド310で生長している作物の生長状態によって変わり得る。参考までに、混合槽200の混合養液は養液機100から供給される。
【0040】
回収槽320には、各センサー330、すなわち、pHセンサー、ECセンサー、温度センサー、濁度センサー、及び重さセンサーのうち少なくとも一つが設置される。
【0041】
pHセンサーは、栽培ベッド310から回収槽320に排出された廃養液のpH濃度の変化を測定し、ECセンサーは、廃養液の電気伝導度の変化を測定し、温度センサーは、回収槽320から栽培ベッド310に供給される混合養液の温度を測定し、濁度センサーは、廃養液の濁度を測定する。重さセンサーは、回収槽320に貯蔵された混合養液の重さ又は廃養液の重さを測定する。
【0042】
前記各センサー330の測定値はコントローラー400に提供される。
【0043】
コントローラー400は、各センサー330の測定値に基づいて栽培ベッド310に補充しなければならないコンポーネントタンク110の養液の量を決定する。コントローラー400は、決定された量の養液を栽培ベッド310に供給させるために選択されたコンポーネントタンク110の制御バルブV1を調節する。また、コントローラー400は、作物の生長状態に基づいて栽培ベッド310に補充しなければならないコンポーネントタンク110の養液の量を決定することもできる。
【0044】
参考までに、コントローラー400によって選択されたコンポーネントタンク110の養液は、まず、回収槽320に供給され、回収槽320で廃養液と混合された後、栽培ベッド310に供給される。
【0045】
図2は、
図1に例示したコントローラー400の構成を示したブロック図である。
【0046】
図1及び
図2を参照すると、コントローラー400は、分析モジュール410、測定モジュール420、計算モジュール430及び通信モジュール440を含み、補正モジュール(図示せず)及び警告モジュール(図示せず)をさらに含むことができる。
【0047】
分析モジュール410は、栽培ベッド310に植えられた作物の生長状態を判断する。
【0048】
例えば、分析モジュール410は、栽培ベッド310と隣接した位置に設置されたカメラCを通じて栽培ベッド310の作物を撮影した映像データを受信する。
【0049】
分析モジュール410は、作物の映像を分析し、作物が成長した高さ及び幅、作物の葉/実/花の個数、作物の葉/実/花のうち少なくとも一つの大きさ、及び作物の色相のうち少なくとも一つを予め構築された生育DB 411のデータと比較し、作物の生長状態を判断する。
【0050】
分析モジュール410は、作物の映像を分析し、作物の成長段階及び作物の病虫害感染状態のうち少なくとも一つを判断する。例えば、分析モジュール410は、映像分析アルゴリズムを用いて病虫害の種類及び進行度を判断したり、又は予め構築された生育DB 411に格納された正常状態の作物映像データと比較して病虫害の種類及び進行度を判断することができる。病虫害の種類及び進行度を判断する方式は、必ずしもこれに限定しない。
【0051】
測定モジュール420は、回収槽320の各センサー330から測定された回収槽320の廃養液の重さ、酸性度、電気伝導度、温度、及び濁度のうち少なくとも一つを養分組成DB 421に構築された養分組成推定モデルに適用し、回収槽320の廃養液に含まれた各養分コンポーネントの組成を測定する。
【0052】
例えば、測定モジュール420は、廃養液で測定された各センサー330の測定値を養分組成推定モデルと比較し、廃養液で不足した養分コンポーネントの種類を把握することができる。
【0053】
一例として、廃養液でpH濃度の変化がないか少ない場合、作物がNイオンをほとんど吸収しないと見なすことができる。測定モジュール420は、このようなpHの濃度変化を通じて廃養液に不足した養分コンポーネントの種類を把握することができる。
【0054】
他の一例として、測定モジュール420は、廃養液の濁度が高く測定される場合、濁度値を養分組成推定モデルに適用し、濁度の原因を把握する。濁度の原因が苔であれば、計算モジュール430では、苔を除去するための環境を造成できる養液が回収槽320に補充されるように各養分コンポーネントの量を算出する。
【0055】
計算モジュール430は、測定モジュール420で測定された回収槽320の廃養液に含まれた各養分コンポーネントの組成に基づいて回収槽320から栽培ベッド310に循環される廃養液に補充する各養分コンポーネントの量を算出する。
【0056】
例えば、栽培ベッド310に植えられた作物でカリウムの吸収が多く、回収槽320に貯蔵された廃養液にカリウムが不足する場合、計算モジュール430は、養液機100から回収槽320に補充するカリウム(養分コンポーネント)の供給量を算出する。
【0057】
また、計算モジュール430は、分析モジュール410で判断された作物の生長状態に基づいて回収槽320から栽培ベッド310に循環される廃養液に補充する各養分コンポーネントの量を算出することもできる
【0058】
例えば、栽培ベッド310に植えられた作物に病虫害(生長状態)が感染し、特定の養分コンポーネント(例えば、カルシウム)がさらに必要である場合、計算モジュール430は、病虫害の進行程度又は病虫害の種類によって養液機100から回収槽320に補充するカルシウム(養分コンポーネント)の供給量を算出する。
【0059】
通信モジュール440は、計算モジュール430で算出された結果によって養液機100のコンポーネントタンク110別の制御バルブV1を制御するための信号を養液機100の制御バルブV1に送信する。
【0060】
例えば、計算モジュール430が養液機100で回収槽320に補充するカリウム(養分コンポーネント)の供給量を算出すると、通信モジュール440は、カリウムが貯蔵されたコンポーネントタンク110から混合槽200に供給される養液の流量を調節するための制御信号を制御バルブV1に送信する。
【0061】
他の例を挙げると、測定モジュール420で廃養液の濁度が高く測定される場合、濁度値を養分組成推定モデルに適用することによって濁度の原因を把握し、濁度の原因が苔であれば、計算モジュール430では、苔を除去するための環境を造成できる養液(例えば、リン(P))が回収槽320に補充される量を算出する。そして、通信モジュール440は、リン(P)が貯蔵されたコンポーネントタンク110から混合槽200に供給される養液の流量を調節するための制御信号を制御バルブV1に送信する。
【0062】
更に他の例を挙げると、測定モジュール420で測定された廃養液の温度が生育環境温度のしきい値を超えたり、しきい値未満に低下すると、コントローラー400は、回収槽320に設置された温度調節機(図示せず)を通じて回収槽320内部の温度を調節することができる。
【0063】
一方、回収槽320の前端又は後端には、廃養液の不純物をろ過するフィルターが備えられる浄化槽がさらに含まれ得る。浄化槽は、フィルターなどの物理的方式を通じて廃養液を浄化させることもできるが、化学的方式を通じて廃養液を浄化させることもできる。
【0064】
他の一方で、混合槽200には、pHセンサー、ECセンサー、温度センサー、重さセンサー、及び濁度センサーのうち少なくとも一つが設置され得る。コントローラー400は、補正モジュール及び警告モジュールをさらに含むことができる。
【0065】
補正モジュールは、混合槽200に設置された各センサーの測定値、すなわち、混合槽200内の原養液の重さ、酸性度、電気伝導度、温度、及び濁度のうち少なくとも一つを養分組成推定モデルに適用し、原養液に含まれた各養分コンポーネントの組成を測定する。
【0066】
補正モジュールは、測定された原養液の組成と前記コントローラー400によって実際に供給された原養液の組成とを比較し、比較による差値を養分組成推定モデルに反映することによって推定モデルをアップデートする。養分組成推定モデルは、補正モジュールによって持続的にアップデートされるので、実験室で構築された推定モデルと実際の栽培現場での環境との差によって発生する差値を補正し、各センサー330の測定誤差を補正することができる。
【0067】
例えば、補正モジュールは、pHセンサー、ECセンサー、温度センサー、重さセンサー、及び濁度センサーのうち少なくとも一つのセンサーの測定値に、センサーの劣化現象によって誤差が生じる場合、該当のセンサーの誤差を補正する。
【0068】
警告モジュール(図示せず)は、補正モジュールで比較された混合槽200に供給された原養液の組成と実際に供給された原養液の組成との差値が予め設定されたしきい値を超える場合、混合槽200に設置されたpHセンサー、ECセンサー、温度センサー、及び重さセンサーのうち少なくとも一つが使用年限を徒過したと判断し、ユーザーにアラームを提供する。
【0069】
コントローラー400は、養分組成DB 421に予め構築された養分消耗モデルに基づいて栽培ベッド310の作物の生長状態(又は成長段階)によって養液機100から混合槽200に最初に供給される原養液の種類及び供給量を決定することもできる。
【0070】
養分消耗モデルには、作物の生長状態(又は成長段階)、すなわち、作物が成長した高さ及び幅、作物の葉/実/花の個数、作物の葉/実/花のうち少なくとも一つの大きさ、作物の色相によって必要な養分の種類及び養分別に必要な供給量が予め格納される。
【0071】
コントローラー400は、栽培ベッド310に植えられた作物の成長段階をカメラCの撮影映像分析結果に基づいて判断し、判断された成長段階及び栽培ベッド310の栽培規模を養分消耗モデルに代入する。そして、養分消耗モデルの結果値によって、養液機100に備えられた複数のコンポーネントタンク110の制御バルブV1を制御することによって、養液機100から混合槽200に最初に供給される原養液の養分の種類及び供給量を調節する。
【0072】
混合槽200に原養液を最初に供給するとき、特別な基準なしで供給したときに比べて、作物の生長状態によって最適であると予想される原養液の組成及び分量を提供することによって、廃養液の再利用に加えて、最初から原養液の消費量を最小化及び最適化できるようになる。
【実施例2】
【0073】
図3は、本発明の実施例2に係るソフトセンサーを用いた養液再利用植物栽培システムの模式図である。
【0074】
実施例2は、少量多品種の栽培環境を満足させるための栽培システムであって、一つの養液機500で互いに異なる品種のための複数の栽培装置700a、700b、700c、700dに互いに異なる組成の養液を供給する。
【0075】
このとき、各栽培装置700a、700b、700c、700d別の廃養液のpH、EC、温度、濁度、及び重さのうち少なくとも一つに基づいて栄養成分の組成を測定し、各栽培装置の品種別に不足した栄養成分のみを選択的に補充する。
【0076】
実施例2の植物栽培システムは、養液機500、混合槽600、回収槽720a、720b、720c、720d及び統合コントローラー900を含む。そして、システムは、カメラC及び補正モジュールをさらに含むことができる。
【0077】
養液機500は、作物の生育のための養液を栽培装置700a、700b、700c、700dのそれぞれに供給し、統合コントローラー900で要請する特定成分の養液を補充・供給する。養液機500から補充・供給された養液は、回収槽720a、720b、720c、720dを介して栽培ベッド710a、710b、710c、710dに供給される。
【0078】
養液機500は、養液成分別に備えられた複数のコンポーネントタンク510と、コンポーネントタンク510別に備えられる制御バルブとを含む。
【0079】
コンポーネントタンク510は、栽培ベッド710a、710b、710c、710dに供給される養液成分の種類の個数に比例して備えられる。例えば、栽培ベッド710a、710b、710c、710dに供給される養液成分がカリウム、リン、カルシウム、マグネシウム、鉄分、窒素である場合、コンポーネントタンク510は合計6個で構成され得る。コンポーネントタンク510の個数は、前記のように6個に限定しなく、栽培ベッド710a、710b、710c、710dに供給される養液成分によって変動し得る。
【0080】
コンポーネントタンク510のそれぞれには、コンポーネントタンク510に貯蔵された原養液の供給量及び供給有無を決定する制御バルブが備えられる。制御バルブは、統合コントローラー900によって操作され、コンポーネントタンク510から混合槽600に供給される養液の流量及び供給有無を決定する。例えば、養液機500に複数のコンポーネントタンク510が備えられた場合にも、制御バルブによって選択されたコンポーネントタンク510に貯蔵された養液のみが混合槽600に供給される。
【0081】
混合槽600は、養液機500のコンポーネントタンク510から供給された養液と、外部から供給された原水とを混合させた混合養液を複数の栽培装置700a、700b、700c、700dのそれぞれに供給する。具体的には、混合槽600は、混合養液を栽培装置700a、700b、700c、700dのそれぞれに備えられた回収槽720a、720b、720c、720dに供給する。
【0082】
原水は、原水貯蔵槽1に貯蔵される。原水貯蔵槽1は、雨水管と連結され、雨水を貯蔵することもできる。
【0083】
混合槽600は、養液機500のコンポーネントタンク510から供給された養液の成分によって外部から異なる量の原水を受けることもできる。混合槽600は、養液機500のコンポーネントタンク510から供給された養液の総量によって外部から異なる量の原水を受けることもできる。
【0084】
混合槽600と栽培装置700a、700b、700c、700dのそれぞれの回収槽720a、720b、720c、720dが連結された配管ラインには、混合槽600から栽培装置700a、700b、700c、700dのそれぞれの回収槽720a、720b、720c、720dに混合養液を供給するためのポンプ601が備えられ得る。
【0085】
栽培装置700a、700b、700c、700dは、複数個で備えられ、それぞれ混合槽600と連結される。栽培装置700a、700b、700c、700dのそれぞれは、混合槽600から栽培ベッド710a、710b、710c、710dから排出された廃養液に補充する養分コンポーネント(養液)を受ける。
【0086】
複数の栽培装置700a、700b、700c、700dは、全て同一に具現され得るので、一つの栽培装置700a、700b、700c、700dを代表として説明する。
【0087】
栽培装置700a、700b、700c、700dは、栽培ベッド710a、710b、710c、710d及び回収槽720a、720b、720c、720dを含む。
【0088】
栽培ベッド710a、710b、710c、710dは、作物を育てるためのものであって、栽培装置700a、700b、700c、700dごとに栽培ベッド710a、710b、710c、710dが備えられる。それぞれの栽培ベッド710a、710b、710c、710dには、互いに異なる作物が植えられてもよく、互いに異なる成長段階の作物が植えられてもよい。
【0089】
回収槽720a、720b、720c、720dは、栽培ベッド710a、710b、710c、710dから排出された廃養液を受けて貯蔵する。回収槽720a、720b、720c、720dは、貯蔵された廃養液を混合槽600から受けた混合養液と混合させた後、これを栽培ベッド710a、710b、710c、710dに循環させる。
【0090】
回収槽720a、720b、720c、720dは、循環配管を介して廃養液を受け、灌漑配管を介して栽培ベッド710a、710b、710c、710dの廃養液と回収槽720a、720b、720c、720dの混合養液とを混合させた後、これを栽培ベッド710a、710b、710c、710dに供給する。循環配管には、栽培ベッド710a、710b、710c、710dから排出される廃養液を回収槽720a、720b、720c、720dに供給する回収ポンプ(図示せず)が備えられ得る。灌漑配管には、回収槽720a、720b、720c、720dの混合養液を栽培ベッド710a、710b、710c、710dに供給するための灌漑ポンプ(図示せず)が備えられ得る。
【0091】
例えば、混合槽600から回収槽720a、720b、720c、720dに供給される混合養液は、栽培ベッド710a、710b、710c、710dから排出された廃養液の養分組成によって変わり得る。また、混合槽600から回収槽720a、720b、720c、720dに供給される混合養液は、栽培ベッド710a、710b、710c、710dで生長している作物の生長状態によって変わり得る。
【0092】
回収槽720a、720b、720c、720dのそれぞれには、各センサー730a、730b、730c、730d、例えば、pHセンサー、ECセンサー、温度センサー、濁度センサー、及び重さセンサーのうち少なくとも一つが設置される。
【0093】
pHセンサーは、栽培ベッド710a、710b、710c、710dから回収槽720a、720b、720c、720dに排出された廃養液のpH濃度の変化を測定し、ECセンサーは、廃養液の電気伝導度の変化を測定し、温度センサーは、回収槽720a、720b、720c、720dから栽培ベッド710a、710b、710c、710dに供給される混合養液の温度を測定し、濁度センサーは、廃養液の濁度を測定する。重さセンサーは、回収槽720a、720b、720c、720dに貯蔵された混合養液の重さ又は廃養液の重さを測定する。
【0094】
前記各センサー730a、730b、730c、730dの測定値は統合コントローラー900に提供される。
【0095】
統合コントローラー900は、各センサー730a、730b、730c、730dの測定値に基づいて複数の栽培装置700a、700b、700c、700dのそれぞれに備えられた栽培ベッド710a、710b、710c、710dに補充しなければならないコンポーネントタンク510の養液の量を決定する。統合コントローラー900は、決定された量の養液を各栽培ベッド710a、710b、710c、710dに供給させるために選択されたコンポーネントタンク510の制御バルブを調節する。また、統合コントローラー900は、作物の生長状態に基づいて各栽培ベッド710a、710b、710c、710dに補充しなければならないコンポーネントタンク510の養液の量を決定することもできる。参考までに、統合コントローラー900によって選択されたコンポーネントタンク510の養液は、まず、回収槽720a、720b、720c、720dに供給され、回収槽720a、720b、720c、720dで廃養液と混合された後、各栽培ベッド710a、710b、710c、710dに供給される。
【0096】
バルブボックス800は、混合槽600と複数の栽培装置700a、700b、700c、700dの各回収槽720a、720b、720c、720dとを連結する配管ラインに設置される供給調節バルブ801a、801b、801c、801dを備える。バルブボックス800の供給調節バルブ801a、801b、801c、801dは、統合コントローラー900によって選択されたコンポーネントタンク510の養液が混合槽600を介して少なくとも一つの栽培ベッド710a、710b、710c、710dに選択的に供給されるように動作する。具体的には、供給調節バルブ801a、801b、801c、801dは、混合養液が混合槽600から栽培装置700a、700b、700c、700dの各回収槽720a、720b、720c、720dに選択的に供給されるようにする。このとき、混合槽600の混合養液が第1回収槽720aに供給されるときは、第1回収槽720aに連結された第1供給調節バルブ801aのみが開放され、残りの供給調節バルブ801b、801c、801dは全て閉鎖される。
【0097】
図4は、
図3に例示した統合コントローラー900の構成を示したブロック図である。
【0098】
図3及び
図4を参照すると、統合コントローラー900は、分析モジュール910、測定モジュール920、計算モジュール930及び通信モジュール940を含み、補正モジュール(図示せず)及び警告モジュール(図示せず)をさらに含むことができる。
【0099】
分析モジュール910は、各栽培装置700a、700b、700c、700dで栽培中の栽培ベッド710a、710b、710c、710dに植えられた作物の生長状態を判断する。
【0100】
例えば、分析モジュール910は、各栽培ベッド710a、710b、710c、710dと隣接した位置に設置されたカメラCを通じて栽培ベッド710a、710b、710c、710dの作物を撮影した映像データを受信する。
【0101】
分析モジュール910は、作物の映像を分析し、作物が成長した高さ及び幅、作物の葉/実/花の個数、作物の葉/実/花のうち少なくとも一つの大きさ、及び作物の色相のうち少なくとも一つを予め構築された生育DBのデータと比較して作物の生長状態を判断する。
【0102】
分析モジュール910は、作物の映像を分析し、作物の成長段階及び作物の病虫害感染状態のうち少なくとも一つを判断する。例えば、分析モジュール910は、映像分析アルゴリズムを用いて病虫害の種類及び進行度を判断したり、又は予め構築された生育DBに格納された正常状態の作物映像データと比較して病虫害の種類及び進行度を判断することができる。病虫害の種類及び進行度を判断する方式は、必ずしもこれに限定しない。
【0103】
測定モジュール920は、各栽培装置700a、700b、700c、700dの回収槽720a、720b、720c、720dの各センサー730a、730b、730c、730dから測定された廃養液の重さ、酸性度、電気伝導度、温度、及び濁度のうち少なくとも一つを養分組成DBに構築された養分組成推定モデルに適用し、前記廃養液に含まれた各養分コンポーネントの組成を測定する。
【0104】
例えば、測定モジュール920は、廃養液で各センサー730a、730b、730c、730dの測定値を養分組成推定モデルと比較し、廃養液で不足する養分コンポーネントの種類を把握することができる。
【0105】
一例として、測定モジュール920は、廃養液でpH濃度の変化がないか少ない場合、作物がNイオンを吸収しないものであってもよく、このようなpHの濃度変化を通じて廃養液に不足する養分コンポーネントの種類を把握することができる。
【0106】
他の一例として、測定モジュール920は、廃養液の濁度が高く測定される場合、濁度値を養分組成推定モデルに適用し、濁度の原因を把握する。濁度の原因が苔であれば、計算モジュール930では、苔を除去するための環境を造成できる養液が回収槽720a、720b、720c、720dに補充されるように各養分コンポーネントの量を算出する。
【0107】
計算モジュール930は、測定モジュール920で測定された各回収槽720a、720b、720c、720dの廃養液に含まれた各養分コンポーネントの組成に基づいて回収槽720a、720b、720c、720dから栽培ベッド710a、710b、710c、710dに循環される廃養液に補充する各養分コンポーネントの量を算出する。
【0108】
例えば、栽培装置700a、700b、700c、700dのそれぞれの栽培ベッド710a、710b、710c、710dに植えられた作物でカリウムの吸収が多く、回収槽720a、720b、720c、720dに貯蔵された廃養液にカリウムが不足する場合、計算モジュール930は、養液機500から回収槽720a、720b、720c、720dに補充するカリウム(養分コンポーネント)の供給量を算出する。
【0109】
また、計算モジュール930は、分析モジュール910で判断された作物の生長状態に基づいて各回収槽720a、720b、720c、720dから栽培ベッド710a、710b、710c、710dに循環される廃養液に補充する各養分コンポーネントの量を算出する。
【0110】
例えば、栽培ベッド710a、710b、710c、710dに植えられた作物に病虫害(生長状態)が感染し、特定の養分コンポーネント(例えば、カルシウム)がさらに必要である場合、計算モジュール930は、病虫害の進行程度又は病虫害の種類によって養液機500から回収槽720a、720b、720c、720dに補充するカルシウム(養分コンポーネント)の供給量を算出する。
【0111】
通信モジュール940は、計算モジュール930で算出された結果によって養液機500のコンポーネントタンク510別の制御バルブを制御するための信号を養液機500の制御バルブに送信する。例えば、計算モジュール930が養液機500から回収槽720a、720b、720c、720dに補充するカリウム(養分コンポーネント)の供給量を算出すると、通信モジュール940は、カリウムが貯蔵されたコンポーネントタンク510から混合槽600に供給される養液の流量を調節するための制御信号を制御バルブに送信する。
【0112】
他の例を挙げると、測定モジュール920で廃養液の濁度が高く測定される場合、濁度値を養分組成推定モデルに適用することによって濁度の原因を把握し、濁度の原因が苔であれば、計算モジュール930では、苔を除去するための環境を造成できる養液(例えば、リン(P))が回収槽720a、720b、720c、720dに補充される量を算出する。そして、通信モジュール940は、リン(P)が貯蔵されたコンポーネントタンク510から混合槽600に供給される養液の流量を調節するための制御信号を制御バルブに送信する。
【0113】
通信モジュール940は、前記養液機500のコンポーネントタンク510から混合槽600に供給された養液が複数の栽培装置700a、700b、700c、700dから選択された栽培装置700a、700b、700c、700dの回収槽720a、720b、720c、720dに供給されるように、バルブボックス800の供給調節バルブ801a、801b、801c、801dを制御するための信号を供給調節バルブ801a、801b、801c、801dに送信する
【0114】
参考までに、測定モジュール920で測定された廃養液の温度が生育環境温度のしきい値を超えたり、しきい値未満に低下すると、統合コントローラー900は、回収槽720a、720b、720c、720dに設置された温度調節機(図示せず)を通じて回収槽720a、720b、720c、720d内部の温度を調節することもできる。
【0115】
一方、複数の栽培装置700a、700b、700c、700dのそれぞれの回収槽720a、720b、720c、720dの前端又は後端には、廃養液の不純物をろ過するフィルターが備えられる浄化槽がさらに含まれてもよい。浄化槽は、フィルターなどの物理的方式を通じて廃養液を浄化させることもできるが、化学的方式を通じて廃養液を浄化させることもできる。
【0116】
他の一方で、混合槽600には、pHセンサー、ECセンサー、温度センサー、重さセンサー、及び濁度センサーのうち少なくとも一つが設置され得る。統合コントローラー900は、補正モジュール(図示せず)及び警告モジュール(図示せず)をさらに含むことができる。
【0117】
補正モジュールは、混合槽600に設置された各センサーの測定値、すなわち、混合槽600内の原養液の重さ、酸性度、電気伝導度、温度、及び濁度のうち少なくとも一つを養分組成推定モデルに適用し、原養液に含まれた各養分コンポーネントの組成を測定する。
【0118】
補正モジュールは、測定された原養液の組成と前記統合コントローラー900によって実際に供給された原養液の組成とを比較し、比較による差値を養分組成推定モデルに反映することによって推定モデルをアップデートする。養分組成推定モデルは、補正モジュールによって持続的にアップデートされるので、実験室で構築された推定モデルと実際の栽培現場での環境との差によって発生する差値を補正し、各センサーの測定誤差を補正することができる。
【0119】
例えば、補正モジュールは、pHセンサー、ECセンサー、温度センサー、重さセンサー、及び濁度センサーのうち少なくとも一つのセンサー測定値に、センサーの劣化現象によって誤差が生じる場合、該当のセンサーの誤差を補正する。
【0120】
警告モジュールは、補正モジュールで比較された混合槽600に供給された原養液の組成と実際に供給された原養液の組成との差値が予め設定されたしきい値を超える場合、混合槽600に設置されたpHセンサー、ECセンサー、温度センサー、及び重さセンサーのうち少なくとも一つが使用年限を徒過したと判断し、ユーザーにアラームを提供する。
【0121】
統合コントローラー900は、養分組成DB 921に予め構築された養分消耗モデルに基づいて栽培ベッド710a、710b、710c、710d別の作物の生長状態(又は成長段階)によって養液機500から混合槽600に最初に供給される原養液の種類及び供給量を決定することもできる。
【0122】
養分消耗モデルには、作物の生長状態(又は成長段階)、すなわち、作物が成長した高さ及び幅、作物の葉/実/花のうち少なくとも一つの個数、作物の葉/実/花のうち少なくとも一つの大きさ、作物の色相によって必要な養分の種類及び養分別に必要な供給量が予め格納される。
【0123】
統合コントローラー900は、栽培ベッド710a、710b、710c710dに植えられた作物の成長段階をカメラCの撮影映像分析結果に基づいて判断し、判断された成長段階及び栽培ベッド710a、710b、710c、710dの栽培規模を養分消耗モデルに代入する。そして、養分消耗モデルの結果値によって養液機500に備えられた複数のコンポーネントタンク510の制御バルブV1を制御することによって、養液機500から混合槽600に最初に供給される原養液の養分の種類及び供給量を調節する。
【0124】
混合槽600に原養液を最初に供給するとき、特別な基準なしで供給したときに比べて品種別作物の生長状態によって最適であると予想される原養液の組成及び分量を提供することによって、廃養液の再利用に加えて、最初から原養液の消費量を最小化及び最適化できるようになる。
【0125】
以上では、本発明に関するいくつかの実施例を参照して説明したが、該当の技術分野で通常の知識を有する者であれば、下記の特許請求の範囲に記載の本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更可能であることを理解できるだろう。
【0126】
特に、実施例1及び実施例2のコントローラーは、カメラにオンデバイスとして装着されてもよく、したがって、実施例1及び実施例2でコントローラーを含むカメラは、エッジコンピューティング(edge computing)デバイスとして動作することもできる。
【0127】
また、上述した装置又はシステムの部分的機能は、これを具現するための各命令語のプログラムが類型的に具現されることによって、コンピューターで判読可能な記録媒体に含まれて提供されてもよい。コンピューターで判読可能な記録媒体は、プログラム命令、データファイル、データ構造などを単独で又は組み合わせて含むことができる。前記コンピューターで判読可能な記録媒体の例には、ハードディスク、プロッピーディスク、磁気テープなどの磁気媒体(magnetic media)と、CD-ROM、DVDなどの光記録媒体(optical media)と、フロプティカルディスク(floptical disk)などの磁気-光媒体(magneto-optical media)と、ROM、RAM、フラッシュメモリ、USBメモリなどのプログラム命令を格納して行うように特別に構成されたハードウェア装置とが含まれる。
【0128】
本発明は、KETEPのR&D課題(project)遂行過程で導出された。
-課題固有番号:1415174708
-課題番号:20212020800050
-部処名:産業通商資源部
-研究管理専門機関:韓国エネルギー技術評価院
-研究事業名:エネルギー需要管理核心技術開発
-研究課題名:多重分散発展基盤の屋上温室型スマートグリーンビル融複合システム開発及び実証
-寄与率:1/1
-課題遂行機関名:(株)シェルパスペース
-研究期間:2020.5.1~2022.12.31
【符号の説明】
【0129】
100 養液機
110 コンポーネントタンク
200 混合槽
310 栽培ベッド
320 回収槽
321 循環配管
322 灌漑配管
330 各センサー
400 コントローラー