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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】畜舎用簀の子
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/015 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
A01K1/015 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022508041
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 JP2020038207
(87)【国際公開番号】W WO2021186775
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2020050256
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年3月25日堤孝生農場(三重県志摩市砥部町)に販売
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年4月27日大渡農場(栃木県日光市大渡船場)に販売
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年5月24日株式会社ユーチカウェブサイトhttp://www.u-chika.com/stainless-sunoko.htmlで公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年6月1日月刊養豚情報第47巻、第6号、通巻第533号、第8頁、第48-51頁で公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年10月9日第1回国際畜産資材EXPO(幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区中瀬2-1))にて公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年11月7日第8回ものづくり総合技術展(高知ぢばさんセンター(高知県高知市布師田3992-2))にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】520098383
【氏名又は名称】株式会社ユーチカ
(74)【代理人】
【識別番号】100129207
【弁理士】
【氏名又は名称】中越 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】近森 毅
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-322414(JP,A)
【文献】国際公開第2004/068937(WO,A2)
【文献】実開昭55-151169(JP,U)
【文献】実開昭54-168375(JP,U)
【文献】米国特許第03230931(US,A)
【文献】米国特許第04135339(US,A)
【文献】仏国特許発明第01491909(FR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0098972(KR,A)
【文献】ステンレスすのこ「きれい」,2019年05月24日,インターネット<URL:http://www.u-chika.com/stainless-sunoko.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 1/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
畜舎内の排泄場所の床材として好適なステンレス製の畜舎用簀の子であって、
長尺の複数の簀の子板と、
前記複数の簀の子板を、該簀の子板の長手方向を平行にして横方向に並べて連結する1乃至複数の横架材と、
を少なくとも含んでなり、
前記簀の子板の長手方向の両側辺がそれぞれ山折りとなるように折曲されて側壁部が形成され、
前記簀の子板の平面部と前記側壁部とのなす角度が90°未満であり、
少なくとも一方の前記側壁部が、更に山折りとなるように折曲された後、谷折りとなるように折曲されて補強足部が形成されることを特徴とする畜舎用簀の子。
【請求項2】
畜舎内の排泄場所の床材として好適なステンレス製の畜舎用簀の子であって、
長尺の複数の簀の子板と、
前記複数の簀の子板を、該簀の子板の長手方向を平行にして横方向に並べて連結する1乃至複数の横架材と、
を少なくとも含んでなり、
前記簀の子板の長手方向の両側辺がそれぞれ山折りとなるように折曲されて側壁部が形成され、
前記簀の子板の平面部と前記側壁部とのなす角度が90°未満であり、
前記簀の子板の平面部の裏面側であって前記側壁部の下端縁より内側に、前記簀の子板の長手方向に沿って補強足部が突設されていることを特徴とする畜舎用簀の子。
【請求項3】
前記補強足部の先端部を覆って配設される保護カバーを備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の畜舎用簀の子。
【請求項4】
前記簀の子板の平面部及び前記側壁部に、複数の凸部及び/又は貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の畜舎用簀の子。
【請求項5】
前記横架材が、平面視で隣接する前記簀の子板間に露出する部分に切り欠き部を備えることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の畜舎用簀の子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンレス製の畜舎用簀の子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、畜舎用の簀の子として金属製やプラスチック製のものが種々市販されているが、コンクリート製の簀の子には家畜の爪が適度に削られるという利点があるため、コンクリート製の簀の子が広く普及しており、実用上も十分である。
【0003】
しかし、コンクリート製の簀の子は、その製造時に気泡が入るなどして仕上がりが悪くなったり、輸送時や敷設時に欠損が生じたり、欠損部で家畜が怪我をしたりといった種々の問題があった。
【0004】
そこで、超高強度コンクリート硬化体からなる畜舎用すのこが開示されている(特許文献1参照。)。特許文献1に開示された畜舎用すのこは、少なくとも、セメント、ポゾラン質微粉末、粒径2mm以下の細骨材、水、及び減水剤を含む配合物の硬化体からなることを特徴とする。
【0005】
特許文献1に係る配合物の硬化体は、200MPaを超える圧縮強度と20MPaを超える曲げ強度を発現するので、特許文献1に係る配合物の硬化体からなる畜舎用すのこは、保管、輸送、施工時に欠損を生じ難く、また、厚さを薄くして軽量化を図ることができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-320995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のコンクリート製の簀の子は、1単位が50~100kgと非常に重たいため、敷設作業に労力を要した。その点、特許文献1に開示された畜舎用すのこは、超高強度コンクリート硬化体からなるため、保管、輸送、施工時に欠損が生じ難く、強度を得るために厚くする必要が無いため、従来品に比べて軽量化を図ることができるものと思料する。
【0008】
しかし、従来品に比べて軽量化が図られるとはいえ、コンクリート製である以上、敷設作業には相当の労力を要するものと思料する。
【0009】
また、コンクリート製の簀の子を畜舎内の排泄場所に敷設した場合、簀の子上の排泄物をスムーズに下方へ落下させることが困難である。排泄物がスムーズに落下せず、簀の子の表面や隙間にこびり付いて乾燥してしまうと、洗浄作業を行っても除去することが非常に困難となり、飼育環境の悪化を招くこととなる。
【0010】
そこで本願発明者は、上記の問題点に鑑み、敷設作業の労力を大幅に軽減するとともに、衛生的で高耐久性を備えた畜舎用簀の子を提供するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に至ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明は畜舎内の排泄場所の床材として好適なステンレス製の畜舎用簀の子であって、長尺の複数の簀の子板と、前記複数の簀の子板を、該簀の子板の長手方向を平行にして横方向に並べて連結する1乃至複数の横架材と、を少なくとも含んでなり、前記簀の子板の長手方向の両側辺がそれぞれ山折りとなるように折曲されて側壁部が形成され、前記簀の子板の平面部と前記側壁部とのなす角度が90°未満であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の畜舎用簀の子において、少なくとも一方の前記側壁部が、更に山折りとなるように折曲された後、谷折りとなるように折曲されて補強足部が形成されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の畜舎用簀の子において、前記簀の子板の平面部の裏面側に、前記簀の子板の長手方向に沿って補強足部が突設されていることを特徴とする。
【0014】
更に、本発明の畜舎用簀の子において、前記補強足部の先端部を覆って配設される保護カバーを備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の畜舎用簀の子において、前記簀の子板の平面部及び前記側壁部に、複数の凸部及び/又は貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0016】
更にまた、本発明の畜舎用簀の子において、前記横架材が、平面視で隣接する前記簀の子板間に露出する部分に切り欠き部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の畜舎用簀の子によると、ステンレス製の簀の子板を連結してなるため、従来のコンクリート製の簀の子と比較して大幅な軽量化を図ることができ、敷設作業の労力を大幅に軽減することができるとともに、衛生的で高耐久性を備えた畜舎用簀の子を提供することができる。
【0018】
また、本発明の畜舎用簀の子に係る簀の子板において、簀の子板の長手方向の両側辺をそれぞれ山折りとなるように折曲して側壁部を形成するとともに、簀の子板の平面部と側壁部とのなす角を90°未満とすることによって、排泄物が隣接する簀の子板同士の隙間から下方へ落下する際、側壁部に付着し難くなり、隣接する簀の子板同士の隙間に排泄物がこびり付いたり、堆積したりすることがなく、排泄物をスムーズに下方へ落下させることができる。更に、簀の子板の平面部から連続する側壁部が形成されていることによって、簀の子板の裏面側に排泄物が付着することを容易に防止することができる。
【0019】
また、本発明の畜舎用簀の子に係る簀の子板において、少なくとも一方の側壁部が、更に山折りとなるように折曲された後、谷折りとなるように折曲されて補強足部が形成されることによって、簀の子板の板厚を厚くすることなく必要な強度を確保することができるため、簀の子板の板厚を可能な限り薄くすることができ、簀の子板自体の軽量化、ひいては本発明の畜舎用簀の子の軽量化を図ることができる。
【0020】
或いは、本発明の畜舎用簀の子に係る簀の子板において、簀の子板の平面部の裏面側に、簀の子板の長手方向に沿って補強足部が突設されることによっても簀の子板の板厚を厚くすることなく必要な強度を確保することができ、簀の子板自体の軽量化、ひいては本発明の畜舎用簀の子の軽量化を図ることができる。
【0021】
また、本発明の畜舎用簀の子に係る簀の子板において、補強足部の先端部を覆って配設される保護カバーを備えることによって、補強足部の先端部を保護することができるとともに、本発明の畜舎用簀の子を設置する際、設置場所の床面などを補強足部の先端部で損傷することを容易に防止できる。
【0022】
更に、本発明の畜舎用簀の子に係る簀の子板において、簀の子板の平面部及び側壁部に、複数の凸部が形成されることによって、滑り止め効果が発揮される。また、複数の貫通孔が形成されることによって、滑り止め効果が発揮されるとともに、この貫通孔を介して平面部に落下した排泄物をよりスムーズに落下させることができ、平面部上を更に衛生的に保つことが可能となる。
【0023】
また更に、本発明の畜舎用簀の子に係る横架材が、平面視で隣接する簀の子板間に露出する部分に切り欠き部を備えることによって、少なくとも隣接する簀の子板間に露出する横架材の幅をできる限り狭くすることができ、排泄物を更にスムーズに下方へ落下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る畜舎用簀の子の斜視図である。
図2図1に示した畜舎用簀の子の平面図である。
図3図1に示した畜舎用簀の子の底面図である。
図4図1に示した畜舎用簀の子の右側面図である。
図5図1に示した畜舎用簀の子の正面図である。
図6図2におけるA―A断面図である。
図7図1に示した畜舎用簀の子を横方向に連結する態様を示す斜視図である。
図8】(a)は図7に示した連結態様に係る連結前の状態を示す断面図、(b)は連結後の状態を示す断面図である。
図9】本発明の畜舎用簀の子に係る簀の子板の他の実施形態を示す断面図である。
図10】本発明の他の実施形態に係る畜舎用簀の子の断面図である。
図11】本発明の他の実施形態に係る畜舎用簀の子の一部断面図である。
図12図1に示した畜舎用簀の子を縦方向に連結する態様を示す斜視図である。
図13】(a)は図12に示した連結態様に係る連結前の状態を示す断面図、(b)は連結後の状態を示す断面図である。
図14】本発明の他の実施形態に係る畜舎用簀の子の底面図である。
図15】本発明の他の実施形態に係る簀の子板の斜視図であって、(a)は折曲前の状態、(b)は折曲後の状態である。
図16図15に示した簀の子板で構成された本発明の他の実施形態に係る畜舎用簀の子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の畜舎用簀の子の実施形態について、図面に基づいて詳述する。図1は本発明の一実施形態に係る畜舎用簀の子10の斜視図、図2図1に示した本実施形態の畜舎用簀の子10の平面図、図3は畜舎用簀の子10の底面図、図4は畜舎用簀の子10の右側面図、図5は畜舎用簀の子10の正面図、図6は畜舎用簀の子10の断面図である。これらの図に示すように、本実施形態の畜舎用簀の子10は、畜舎内の排泄場所の床材として好適なステンレス製であって、少なくとも長尺の複数の簀の子板12と、これら複数の簀の子板12を横方向に並べて連結する1乃至複数の横架材14と、含んでなる。
【0026】
本実施形態の畜舎用簀の子10に係る簀の子板12及び横架材14は、ステンレス製である。これら簀の子板12及び横架材14をステンレス製とすることによって、従来のコンクリート製の簀の子と比較して大幅な軽量化が図られ、敷設作業の労力を大幅に軽減することができる。
【0027】
また、本実施形態の畜舎用簀の子10を、特に畜舎内の排泄場所の床材として使用する場合、簀の子板12及び横架材14をステンレス製とすることによって、排泄物が簀の子板12及び横架材14の表面にこびり付き難く、洗浄作業も容易であるため、飼育環境を衛生的に保つことが容易となる。
【0028】
そして、本実施形態の畜舎用簀の子10に係る簀の子板12は、その長手方向の両側辺がそれぞれ山折りとなるように折曲されて側壁部16が形成され、簀の子板12の平面部15と側壁部16とのなす角αの角度が90°未満であることを特徴とする(図6参照)。
【0029】
このように、簀の子板12の長手方向の両側辺をそれぞれ山折りとなるように折曲して側壁部16を形成するとともに、簀の子板12の平面部15と側壁部16とのなす角αを90°未満とすることによって、排泄物が隣接する簀の子板12同士の隙間から下方へ落下する際、側壁部16に付着し難くなり、隣接する簀の子板12同士の隙間に排泄物がこびり付いたり、堆積したりすることがなく、排泄物をスムーズに下方へ落下させることができる。
【0030】
また、簀の子板12の平面部15から連続する側壁部16を形成することによって、簀の子板12の裏面17側に排泄物が付着することを容易に防止できる。
【0031】
ここで、本実施形態の畜舎用簀の子10に係る簀の子板12においては、一方の側壁部16がその長手方向に沿って更に山折りとなるように折曲された後、谷折りとなるように折曲されることによって、補強足部20が形成されている。
【0032】
このように、少なくとも一方の側壁部16を、その長手方向に沿って更に山折りした後、谷折りとなるように折曲して補強足部20を形成することによって、簀の子板12の強度を容易に増すことができる。一般的な簀の子板は平板状であるため、強度を増すためには材質に拘わらず簀の子板の板厚を厚くする必要がある。板厚を厚くすると簀の子板自体の重量の増大を招き、敷設作業に労力を要することとなる。
【0033】
しかし、本実施形態に係る簀の子板12のように、少なくとも一方の側壁部16を、その長手方向に沿って更に山折りして折曲部19を形成した後、谷折りとなるように折曲して補強足部20を形成することによって、簀の子板12の板厚を厚くすることなく必要な強度を確保することができる。従って、簀の子板12の板厚を可能な限り薄くすることができ、簀の子板12自体の軽量化、ひいては本実施形態の畜舎用簀の子10の軽量化を図ることができる。
【0034】
なお、本実施形態に係る簀の子板12では、一方の側壁部16をその長手方向に沿って更に山折りして折曲部19を形成した後、谷折りとなるように折曲して補強足部20を形成しているが、この折曲部19を形成するにあたって、側壁部16と折曲部19とのなす角βの角度は90°以下とすることが特に好ましい。側壁部16をその長手方向に沿って更に山折りして折曲部19を形成する際、側壁部16と折曲部19とのなす角βの角度を90°以下とすることによって、折曲部19は水平方向よりも若干斜め上方に向かって形成されることとなる。従って、側壁部16表面を伝って落下してくる排泄物は側壁部16の下端縁から下方へ落下し、折曲部19を伝って補強足部20に付着することを容易に防止できる。
【0035】
また、本発明の畜舎用簀の子に係る簀の子板の態様は上記の実施形態に限定されない。例えば、図9(a)に示す簀の子板12aのように、両方の側壁部16のそれぞれの長手方向に沿って、更に山折りして折曲部19を形成した後、谷折りとなるように折曲して補強足部20が形成されてもよい。この簀の子板12aにおいても、側壁部16と折曲部19とのなす角βの角度を90°以下とすることによって、折曲部19は水平方向よりも若干斜め上方に向かって形成されるため、側壁部16表面を伝って落下してくる排泄物を側壁部16の下端縁から下方へ落下させることができ、折曲部19を伝って補強足部20に付着することを容易に防止できる。
【0036】
また、本発明の畜舎用簀の子に係る簀の子板において、補強足部は必ずしも側壁部と連続して設ける必要はない。例えば、図9(b)に示す簀の子板12bのように、平面部15の長手方向の両側辺がそれぞれ山折りとなるように折曲されて側壁部16が形成されるとともに、平面部15の裏面17側に、簀の子板12bの長手方向(平面部15の長手方向)に沿って正面視逆U字状の補強足部20aが配設された態様であってもよい。
【0037】
更にまた、図9(c)に示す簀の子板12cのように、簀の子板12bと同様の側壁部16を備えた平面部15の裏面17側に、簀の子板12cの長手方向(平面部15の長手方向)に沿って正面視Z字状の補強足部20b及び/又は正面視S字状の補強足部20cが配設された態様であってもよい。
【0038】
また、図9(d)及び図9(e)に示す簀の子板12d、12eのように、簀の子板12b、12cと同様の側壁部16を備えた平面部15の裏面17側に、簀の子板12d、12eの長手方向(平面部15の長手方向)に沿って正面視U字状の補強足部20dが配設された態様であってもよい。
【0039】
これら図9に示した実施形態に係る簀の子板12a~12eのように、補強足部は側壁部16から連続して形成されてもよく(例えば、補強足部20)、或いは側壁部16とは別に配設されてもよい(例えば、補強足部20a~20d)。何れの態様であっても、平面部15及び側壁部16の板厚を厚くすることなく必要な強度を確保することができ、簀の子板12自体の軽量化を図ることができる。また、簀の子板12b~12eにおいて、折曲部19は形成されていないが、補強足部20a~20dは側壁部16の下端縁より内側に配設されているため、側壁部16表面を伝って落下してくる排泄物は側壁部16の下端縁から下方へ落下させることができ、補強足部20a~20dに付着することを容易に防止できる。
【0040】
そして、本発明の畜舎用簀の子は、上記の各実施形態に係る簀の子板12、12a~12eを、その長手方向を平行にして横方向に並べて横架材で連結してなる。図2及び図6に示すように、本実施形態の畜舎用簀の子10は、4本の簀の子板12を横方向に並べて、2本の横架材14で連結されている。簀の子板12と横架材14との連結態様は特に限定されないが、例えば横架材14に対して、各簀の子板12をボルト21とナット22で容易に連結固定することができる。なお、各簀の子板12と横架材14とは溶接固定されてもよいが、ボルト21とナット22で着脱自在に固定することによって、損傷が生じた簀の子板12のみを交換することも可能となる。
【0041】
本実施形態の畜舎用簀の子10は4本の簀の子板12と2本の横架材14で構成されているが、本発明の畜舎用簀の子を構成する簀の子板及び横架材の必要数は特に限定されず、所望の畜舎用簀の子のサイズに応じて、例えば簀の子板12を3本以下にしたり、或いは5本以上にしたりすることも可能である。また、簀の子板12の長さが短い場合は横架材14を1本にしたり、長い場合は3本以上にしたりすることが可能である。
【0042】
また、本実施形態の畜舎用簀の子10では、横架材14を、各簀の子板12が備える補強足部20を横方向に貫通させた状態で配設し、平面部15の上方から挿通したボルト21とナット22で横架材14に固定している。図9(a)~(d)に示した実施形態に係る簀の子板12a~12dにおいても、横架材14を、各簀の子板12a~12dが備える補強足部20、20a~20dを横方向に貫通させた状態で配設し、各簀の子板12a~12dに係る平面部15の上方から挿通したボルト21とナット22で横架材14に固定している。なお、横架材14の配設態様も特に限定されず、例えば、図9(e)に示した実施形態の簀の子板12eは、この簀の子板12eが備える補強足部20dを横架材14上に載置した状態でボルト21とナット22で横架材14に固定している。
【0043】
更に、図10に示した実施形態に係る畜舎用簀の子10aは、図9(a)に示した簀の子板12aを複数連結して構成されているが、横架材14上に補強足部20を載置した状態で複数の簀の子板12aを横方向に並べ、各簀の子板12aがボルト21とナット22で横架材14に固定されている。
【0044】
また更に、本実施形態の畜舎用簀の子10や畜舎用簀の子10aにおける長手方向の両端部には、各簀の子板12、12aの長手方向の端部を覆って掛け渡される端部カバー18がそれぞれ配設されている。端部カバー18はボルト23とナット24で各簀の子板12、12aに固定されている。本実施形態の畜舎用簀の子10、10aにおいて、その長手方向の両端部に端部カバー18をそれぞれ配設することによって、各簀の子板12、12aの端部を補強することができ、端部の損傷を容易に防止することができる。また、各簀の子板12、12aの端部で家畜や作業者が負傷したり、各簀の子板12、12aの端部から裏面17側に排泄物が付着したりすることを容易に防止できる。
【0045】
また、本発明の畜舎用簀の子に係る簀の子板の平面部及び側壁部には、複数の凸部及び/又は貫通孔が形成されていることが好ましい。例えば、図1に示した本実施形態の畜舎用簀の子10の各簀の子板12に係る平面部15及び側壁部16には、四角形状の凸部13が全面にわたって形成されている。平面部15に形成された凸部13は、ステンレス製の平面部15表面における滑り止め効果を有し、側壁部16に形成された凸部13は、簀の子板12、12間の隙間における滑り止め効果を有する。
【0046】
本実施形態の畜舎用簀の子10では、各簀の子板12に係る平面部15及び側壁部16に複数の凸部13のみを形成したが、凸部13の代わりに複数の貫通孔が形成されてもよく、凸部13とともに貫通孔が形成されてもよい。貫通孔を形成することによって、滑り止め効果が発揮されるとともに、この貫通孔を介して平面部15上に落下した排泄物をよりスムーズに落下させることができ、平面部15上を更に衛生的に保つことが可能となる。
【0047】
なお、凸部13や貫通孔の形状や形成数は特に限定されず、任意に設定することができる。また、貫通孔を形成する場合は、貫通孔の周縁部を下方にわん曲させて形成することがより好ましい。貫通孔の周縁部を下方にわん曲させることによって、平面部15上から貫通孔を介して排泄物をスムーズに落下させることができるとともに、平面部15の裏面17側に排泄物が付着することを容易に防止できる。
【0048】
以上、本発明の畜舎用簀の子の種々の実施形態について詳述したが、本発明の畜舎用簀の子は、複数の畜舎用簀の子を連結して使用することが可能である。例えば、図7及び図8に示すように、本実施形態の畜舎用簀の子10を横方向に並べ、隣接する横架材14同士を連結具25で連結することによって一体化することが可能である。複数の畜舎用簀の子10を連結具25で一体化することによって、畜舎用簀の子10の耐荷重が増大するとともに、広範囲に敷き詰めた複数の畜舎用簀の子10が容易に動くことがなく、畜舎用簀の子10上を家畜や作業者が歩行する際、安定した足場を提供することができる。
【0049】
なお、本実施形態の畜舎用簀の子10を連結する態様は特に限定されない。例えば、一方の横架材14に連結具25の一端側をボルト26とナット27で固定し、隣接する畜舎用簀の子10に係る横架材14に連結具25の他端側を差し込むことによって容易に連結できる。より強固に連結する場合は、連結具25の他端側を隣接する畜舎用簀の子10に係る横架材14に差し込んだ後、連結具25の他端側を横架材14にボルト26とナット27で固定してもよい。
【0050】
また、本発明の畜舎用簀の子は、複数の畜舎用簀の子を縦方向(長手方向)に連結して使用することも可能である。例えば、図12及び図13に示すように、本実施形態の畜舎用簀の子10を縦方向(簀の子板12の長手方向)に並べ、隣接する端部カバー18同士を連結することによって一体化することが可能である。複数の畜舎用簀の子10を縦方向に連結して一体化することによっても上記と同様の効果が得られ、縦方向及び横方向に連結することによって、更なる耐荷重の増大効果が得られるとともに、衛生的な広範な足場を提供することができる。
【0051】
なお、畜舎用簀の子10を縦方向に連結する態様も特に限定されない。例えば、端部カバー18に連結孔32を予め形成しておき、図13(b)に示すように、隣接する畜舎用簀の子10に係る端部カバー18同士を当接させた状態で連結孔32にボルト33を挿通し、ナット34で固定することによって、容易に連結できる。
【0052】
また更に、本発明の畜舎用簀の子に係る簀の子板において、補強足部の先端部を覆って配設される保護カバーを備えることがより好ましい。例えば、図1図3図5などに示した本発明の一実施形態に係る畜舎用簀の子10では、連結された複数の簀の子板12が備える各補強足部20の長手方向の両端部において、各補強足部20の先端部を覆って保護カバー28が配設されている。このように、各補強足部20の先端部を覆って配設される保護カバー28を備えることによって、各補強足部20の長手方向の両端部において、補強足部20の先端部を保護することができるとともに、本実施形態に係る畜舎用簀の子10を設置する際、設置場所の床面などを補強足部の先端部で損傷することを容易に防止できる。
【0053】
ここで、図1図8及び図10に示した実施形態に係る畜舎用簀の子10、10aでは、連結された複数の簀の子板12または複数の簀の子板12aが備える各補強足部20の長手方向の両端部において、各補強足部20の先端部をまとめて一本の保護カバー28で覆った状態で配設している。しかし、図9(a)~(c)に示すように、本発明の畜舎用簀の子を構成する簀の子板12a~12cにおいて、一つの簀の子板12a~12cに係る補強足部20の先端部を、保護カバー28でそれぞれ覆って配設する態様であってもよい。
【0054】
また、図11に示すように、本発明の一実施形態に係る畜舎用簀の子10を構成する複数の簀の子板12において、簀の子板12毎に、簀の子板12に係る補強足部20の先端部を覆って保護カバー28が配設されてもよい。図11に示した実施形態では、補強足部20が一方のみに形成されているため、保護カバー28の一方の端部は補強足部20の先端部を覆って補強足部20に連結され、保護カバー28の他方の端部は簀の子板12の裏面17側に当接させた状態で配設している。
【0055】
なお、補強足部20への保護カバー28の取付態様は特に限定されないが、補強足部20と保護カバー28とをボルト29とナット30で固定する態様が簡便である。
【0056】
以上に例示した本発明の実施形態に係る畜舎用簀の子は、本発明の技術的思想を実質的に限定するものと解してはならない。例えば、図14に示した本発明の一実施形態の畜舎用簀の子10に係る横架材14aは、平面視で、少なくとも隣接する簀の子板12、12間に露出する部分に切り欠き部35を備える。本実施形態に係る横架材14aのように切り欠き部35を備えることによって、隣接する簀の子板12、12間に露出する横架材14aの幅をできる限り狭くすることができるため、隣接する簀の子板12、12間から落下する排泄物を更にスムーズに下方へ落下させることができる。なお、切り欠き部35が形成される位置は隣接する簀の子板12、12間に限定されるものではなく、横架材14aの両端部にも切り欠き部35が形成されることが好ましい。横架材14aの両端部は、図7及び図8に示すように、畜舎用簀の子10を横方向に連結する際、平面視で隣接する畜舎用簀の子10、10間に露出する部分となるため、横架材14aの両端部も切り欠き部35を備えることによって、隣接する畜舎用簀の子10、10間から落下する排泄物も更にスムーズに下方へ落下させることができる。
【0057】
また更に、図15及び図16には、本発明の他の実施形態に係る簀の子板12f、及びこの簀の子板12fを連結して構成される畜舎用簀の子10bを示す。図15(a)に示した折曲前の簀の子板12fのように、側壁部16を形成するために山折りする位置の長手方向に沿って、この山折りする位置の長手方向に対して直角方向に線状の凹み36を形成することが好ましい。山折りする位置の長手方向に沿って線状の凹み36を形成することによって、図15(b)に示した簀の子板12fを形成するための折曲加工が非常に容易となり、折曲加工をするための機械への負荷も軽減される。なお、線状の凹み36を形成する態様は特に限定されず、図示したような隣接する凸部13、13間に複数個ずつ形成してもよく、山折りする位置に凸部13が無い場合は、山折りする位置の長手方向の全長にわたって形成してもよい。本発明はその要旨を逸脱しない範囲で、当業者の創意と工夫により、適宜に改良、変更又は追加をしながら実施できる。
【符号の説明】
【0058】
10、10a:畜舎用簀の子
12、12a~12f:簀の子板
13:凸部
14、14a:横架材
15:平面部
16:側壁部
17:裏面
18:端部カバー
19:折曲部
20、20a~20d:補強足部
21、23、26、29、33:ボルト
22、24、27、30、34:ナット
25:連結具
28:保護カバー
32:連結孔
35:切り欠き部
36:線状の凹み
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
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