(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】海苔原藻の鮮度維持システム
(51)【国際特許分類】
A23L 17/60 20160101AFI20240529BHJP
【FI】
A23L17/60 103C
(21)【出願番号】P 2023014293
(22)【出願日】2023-02-01
【審査請求日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2022017486
(32)【優先日】2022-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000149457
【氏名又は名称】株式会社オーツボ
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】松田 駿
(72)【発明者】
【氏名】米田 朋生
(72)【発明者】
【氏名】福島 夢
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-029074(JP,A)
【文献】特開2007-151500(JP,A)
【文献】特開2017-147940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 17/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥海苔の製造時において、海苔原藻の鮮度を維持するために用いられる海苔原藻の鮮度維持システムであって、
前記海苔原藻を海水と共に貯蔵し、かつ、攪拌する攪拌タンクと、
海水に所定の圧力で酸素を溶解させ、高濃度の溶存酸素を含んだ海水を得る気液混合装置と、
前記高濃度の溶存酸素を含んだ海水を前記攪拌タンクに投入する海水投入手段と、
を備え、
前記攪拌タンクは、前記海水が行き来可能に前記海苔原藻から分離される海水汲み上げ領域を有し、
前記攪拌タンク内には、前記海水汲み上げ領域から離れた位置に位置する、ステンレス製のパンチングメタルからなる筒状体の中に溶存酸素計が設置されていると共に、前記攪拌タンクの前記海水汲み上げ領域内に水位計が設置されており、
前記溶存酸素計で前記攪拌タンク内の溶存酸素濃度を計測すると共に、前記水位計で前記海水汲み上げ領域内の水位を検知し、前記攪拌タンク内の溶存酸素濃度と前記海水汲み上げ領域内の水位が所定の値である場合に、前記海水汲み上げ領域から前記気液混合装置への前記海水の汲み上げが開始され、
前記海水汲み上げ領域から汲み上げた前記海水に所定の圧力で酸素を溶解させて、前記高濃度の溶存酸素を含んだ海水を得、
前記高濃度の溶存酸素を含んだ海水を前記攪拌タンクの前記海水汲み上げ領域に投入するようにしたことを特徴とする海苔原藻の鮮度維持システム。
【請求項2】
前記気液混合装置は、海水を一時的に貯留しておくための一時貯留タンクと、高濃度酸素溶解装置と、を組み合わせて構成されている、請求項1に記載の海苔原藻の鮮度維持システム。
【請求項3】
前記海水汲み上げ領域は、前記海水が行き来可能に前記海苔原藻から分離される多孔質分離手段を1乃至複数備える、請求項1に記載の海苔原藻の鮮度維持システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥海苔の製造時において、海苔原藻の鮮度を維持するために用いられる海苔原藻の鮮度維持システムに関する。
【背景技術】
【0002】
乾燥海苔の製造は、次のような手順で行われる。まず、摘採した海苔原藻は、陸揚げされた後直ちに海水の入った攪拌タンクの中に移され、攪拌されながら貯蔵される。この海苔原藻は、細断されて洗浄された後、水と調合されて海苔原料となる。次いで、この海苔原料は、抄製→圧搾脱水→乾燥→剥離の各工程を経て、乾燥海苔となる。
【0003】
しかし、海苔原藻を長時間攪拌タンクの中で貯蔵すると、海苔原藻と共に貯蔵されている海水の酸素濃度が低下してしまう。そして、このため、海苔原藻の鮮度が低下し、ひいては、乾燥海苔の品質が低下してしまうという課題があった。
【0004】
そこで、従来、特殊な吸着剤で空気中の窒素と水蒸気を取り除き、濃度約90%の酸素を発生させる高濃度酸素発生器を用いて、攪拌タンクの底から高濃度酸素をバブリングすることにより、海苔原藻の鮮度を維持するようにした技術が提案されている(例えば、非特許文献1等を参照)。
また、酸素ボンベを用いて、攪拌タンクの底から酸素をバブリングすることにより、海苔原藻の鮮度を維持するようにした技術も知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】江藤酸素株式会社「ぷくぷくファイン」[online],[令和3年12月1日検索],インターネット〈URL;http://www.etosanso.co.jp/images/pdf/pukupuku.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、非特許文献1等で提案されている技術には、以下のような課題がある。
すなわち、ただ単に酸素(気体)をバブリングするだけでは、海水に溶解する効率(溶解効率)が悪い。このため、高濃度酸素発生器、酸素ボンベ等の使用本数が増加し、設備のコストアップを招いてしまうという課題がある。また、上記従来の技術では、十分に酸素を供給できていないため、時間と共に海苔の品質が低下し、乾燥海苔の商品価値の低下を招いてしまうという課題もある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、設備のコストアップを招くことなく海苔原藻の鮮度を確実に維持し、ひいては、乾燥海苔の品質(商品価値)の向上を図ることを可能にする海苔原藻の鮮度維持システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係る海苔原藻の鮮度維持システムの構成は、
(1)乾燥海苔の製造時において、海苔原藻の鮮度を維持するために用いられる海苔原藻の鮮度維持システムであって、
前記海苔原藻を海水と共に貯蔵し、かつ、攪拌する攪拌タンクと、
海水に所定の圧力で酸素を溶解させ、高濃度の溶存酸素を含んだ海水を得る気液混合装置と、
前記高濃度の溶存酸素を含んだ海水を前記攪拌タンクに投入する海水投入手段と、
を備え、
前記攪拌タンクは、前記海水が行き来可能に前記海苔原藻から分離される海水汲み上げ領域を有し、
前記攪拌タンク内には、前記海水汲み上げ領域から離れた位置に位置する、ステンレス製のパンチングメタルからなる筒状体の中に溶存酸素計が設置されていると共に、前記攪拌タンクの前記海水汲み上げ領域内に水位計が設置されており、
前記溶存酸素計で前記攪拌タンク内の溶存酸素濃度を計測すると共に、前記水位計で前記海水汲み上げ領域内の水位を検知し、前記攪拌タンク内の溶存酸素濃度と前記海水汲み上げ領域内の水位が所定の値である場合に、前記海水汲み上げ領域から前記気液混合装置への前記海水の汲み上げが開始され、
前記海水汲み上げ領域から汲み上げた前記海水に所定の圧力で酸素を溶解させて、前記高濃度の溶存酸素を含んだ海水を得、
前記高濃度の溶存酸素を含んだ海水を前記攪拌タンクの前記海水汲み上げ領域に投入するようにしたことを特徴とする。
【0009】
本発明の海苔原藻の鮮度維持システムの上記(1)の構成は、以下のような作用効果を奏する。
すなわち、上記(1)の構成によれば、海水に所定の圧力で酸素を溶解させ、高濃度の溶存酸素を含んだ海水を得る気液混合装置を備え、当該気液混合装置で得られた、高濃度の溶存酸素を含んだ海水を、攪拌タンクに投入するようにしているため、攪拌タンクに海苔原藻と共に貯蔵されている海水の酸素濃度が低下することを防止することができる。
したがって、上記(1)の構成によれば、設備のコストアップを招くことなく海苔原藻の鮮度を確実に維持し、ひいては、乾燥海苔の品質(商品価値)の向上を図ることを可能にする海苔原藻の鮮度維持システムを提供することができる。
また、上記(1)の構成によれば、攪拌タンク内の海水を循環させて利用するものであるため、海水の利用効率が良好なものとなる。また、攪拌タンクが、海水が行き来可能に海苔原藻から分離される海水汲み上げ領域を有するため、海水だけを汲み上げ、海苔原藻は汲み上げないようにすることができる。さらに、例えば、溶存酸素計を海水汲み上げ領域内に設置することにより、海苔原藻に邪魔されずに溶存酸素濃度の計測を行うことも可能となる。
また、上記(1)の構成によれば、以下のような作用効果も得られる。
すなわち、攪拌タンクの海水汲み上げ領域から気液混合装置に海水を汲み上げると、攪拌タンクの海水汲み上げ領域以外の領域と海水汲み上げ領域との間に水位差が生じ、海水汲み上げ領域以外の領域から海水汲み上げ領域に海水が移動する。また、気液混合装置から攪拌タンクの海水汲み上げ領域に高濃度の溶存酸素を含んだ海水を投入すると、この投入された高濃度の溶存酸素を含んだ海水の勢いや水位差によって、攪拌タンクの海水汲み上げ領域から海水汲み上げ領域以外の領域に海水が移動する。このため、海水汲み上げ領域内の海水量不足が発生することはなく、本鮮度維持システムが完全に停止してしまうような事態を避けることが可能となる。
【0010】
本発明の海苔原藻の鮮度維持システムの上記(1)の構成においては、以下の(2)乃至(3)のような構成にすることが好ましい。
【0011】
(2)上記(1)の構成において、前記気液混合装置は、海水を一時的に貯留しておくための一時貯留タンクと、高濃度酸素溶解装置と、を組み合わせて構成されている。
【0012】
上記(2)の好ましい構成によれば、以下のような作用効果が得られる。すなわち、高濃度酸素溶解装置に所定の圧力で酸素を入れ込んだ後、当該高濃度酸素溶解装置に一時貯留タンク内の海水を送り込む。これにより、酸素の中に海水を通すことで、酸素が海水に高濃度で溶解し、高濃度の溶存酸素を含んだ海水が得られる。この高濃度の溶存酸素を含んだ海水は、再び一時貯留タンクに送り込まれ、攪拌タンクに投入する海水として利用される。
【0013】
(3)上記(1)の構成において、前記海水汲み上げ領域は、前記海水が行き来可能に前記海苔原藻から分離される多孔質分離手段を1乃至複数備える。
【0014】
上記(3)の好ましい構成によれば、以下のような作用効果が得られる。
すなわち、攪拌タンクが有する海水が行き来可能に海苔原藻から分離される海水汲み上げ領域において、多孔質分離手段、たとえばパンチングメタルや金網など、を有するため、海水だけを汲み上げ、海苔原藻は汲み上げないようにし、前記海水から当該海苔原藻が段階的に分離され海水の利用効率をさらに良好なものとするができる。
【0017】
(4)上記(1)の構成において、前記海水汲み上げ領域は、前記海水が行き来可能に前記海苔原藻から分離される多孔質分離手段を1乃至複数備える。
【0018】
上記(4)の好ましい構成によれば、以下のような作用効果が得られる。
すなわち、攪拌タンクが有する海水が行き来可能に海苔原藻から分離される海水汲み上げ領域において、多孔質分離手段、たとえばパンチングメタルや金網など、を有するため、海水だけを汲み上げ、海苔原藻は汲み上げないようにし、前記海水から当該海苔原藻が段階的に分離され海水の利用効率をさらに良好なものとするができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、設備のコストアップを招くことなく海苔原藻の鮮度を確実に維持し、ひいては、乾燥海苔の品質(商品価値)の向上を図ることを可能にする海苔原藻の鮮度維持システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1における海苔原藻の鮮度維持システムの構成を示す概略レイアウト図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態1における海苔原藻の鮮度維持システムの構成要素である攪拌タンク周りの様子を示す写真斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態1における海苔原藻の鮮度維持システムの構成要素である気液混合装置周りの様子を示す写真斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態1における海苔原藻の鮮度維持システムの構成要素である攪拌タンクの海水汲み上げ領域周りの様子を示す写真斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態2における海苔原藻の鮮度維持システムの構成を示す概略レイアウト図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態3における海苔原藻の鮮度維持システムの構成を示す概略レイアウト図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、好適な実施形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
[実施形態1]
(海苔原藻の鮮度維持システムの構成)
まず、本発明の実施形態1における海苔原藻の鮮度維持システムの構成について、
図1乃至
図4を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、本発明の実施形態1における海苔原藻の鮮度維持システムの構成を示す概略レイアウト図、
図2は、当該鮮度維持システムの構成要素である攪拌タンク周りの様子を示す写真斜視図、
図3は、当該鮮度維持システムの構成要素である気液混合装置周りの様子を示す写真斜視図、
図4は、当該鮮度維持システムの構成要素である攪拌タンクの海水汲み上げ領域周りの様子を示す写真斜視図である。
【0026】
図1乃至
図3に示す本実施形態の海苔原藻の鮮度維持システム(以下、単に「鮮度維持システム」ともいう)1は、乾燥海苔の製造時において、海苔原藻の鮮度を維持するために用いられる。
図1乃至
図3に示すように、鮮度維持システム1は、海苔原藻を海水と共に貯蔵し、かつ、攪拌する略直方体形状の攪拌タンク2と、海水に所定の圧力で酸素を溶解させ、高濃度の溶存酸素(Dissolved Oxygen(DO))を含んだ海水(以下単に「高DO濃度海水」ともいう)を得る気液混合装置3と、高DO濃度海水を攪拌タンク2に投入する海水投入手段4と、を備えている。ここで、「所定の圧力」は、例えば、約0.2MPaである。
【0027】
本実施形態の鮮度維持システム1のかかる構成は、以下のような作用効果を奏する。
すなわち、かかる構成によれば、海水に所定の圧力で酸素を溶解させ、高DO濃度海水を得る気液混合装置3を備え、当該気液混合装置3で得られた高DO濃度海水を、攪拌タンク2に投入するようにしているため、攪拌タンク2に海苔原藻と共に貯蔵されている海水の酸素濃度が低下することを防止することができる。
したがって、かかる構成によれば、設備のコストアップを招くことなく海苔原藻の鮮度を確実に維持し、ひいては、乾燥海苔の品質(商品価値)の向上を図ることを可能にする海苔原藻の鮮度維持システムを提供することができる。
【0028】
以下、さらに詳細に説明する。
図1,
図2,
図4に示すように、攪拌タンク2は、海苔原藻を海水と共に攪拌する攪拌翼2aと、攪拌翼2aを回転させる回転軸2bと、回転軸2bを回転駆動するモータ(図示せず)と、を有している。攪拌翼2aは、タービン翼、パドル翼、プロペラ翼等の適宜の形状とすることができる。また、攪拌タンク2は、その内部の四隅の一箇所に、海水が行き来可能に海苔原藻から分離される海水汲み上げ領域5を有している。また、攪拌タンク2内には溶存酸素計(DO計)12が設置されており、当該DO計12で攪拌タンク2内の溶存酸素濃度(DO濃度)を計測し、後述する水中ポンプ7及びゲートバルブ(開閉弁)9と連動させるようにされている。そして、攪拌タンク2内のDO濃度によって水中ポンプ7及びゲートバルブ(開閉弁)9の動作を制御するようにされている。また、攪拌タンク2の海水汲み上げ領域5内には水位計13が設置されており、当該水位計13で海水汲み上げ領域5内の水位を検知し、水中ポンプ7及び後述する水中ポンプ4aと連動させるようにされている。そして、攪拌タンク2の海水汲み上げ領域5内の水位によって水中ポンプ7,4aの動作を制御するようにされている。なお、水位計13としては、フロート式の水位計が用いられている。
【0029】
より具体的には、海水汲み上げ領域5は、少なくとも上端が開口した直角二等辺三角筒形状の水槽(三角コーナー)5aで囲まれている。水槽5aは、攪拌タンク2の入隅の二面(内面)に当接する2つの側面がステンレス製の板材からなり、攪拌タンク2の内面に当接しない他の1つの側面が多孔質板状のステンレス製のパンチングメタル6からなっている。このパンチングメタル6は、攪拌タンク2の内部から海水だけを汲み上げ、海苔原藻は汲み上げないようにするフィルタとして機能している。
水槽(三角コーナー)5aは、攪拌タンク2に着脱可能に取り付けられており、攪拌タンク2から取り外すことによって、パンチングメタル6に詰まった海苔原藻を容易に除去できるようにされている。
なお、パンチングメタル6の孔径は、海苔原藻が通過することを防止できるサイズであればよく、特定のサイズに限定されるものではない。現状の孔径は約1.0mmである。
【0030】
DO計12は、海水汲み上げ領域5から離れた位置に設置されている。DO計12を攪拌タンク2の海水汲み上げ領域5内に設置すると、海水汲み上げ領域5内への高DO濃度海水の投入時に、当該高DO濃度海水のDO濃度を計測してしまい、攪拌タンク2内のDO濃度を正確に計測できないからである。なお、海苔原藻に邪魔されずにDO濃度の計測を行うことができるように、DO計12は、ステンレス製のパンチングメタルなどからなる筒状体12aの中に設置されている。
【0031】
攪拌タンク2の海水汲み上げ領域5の下部には水中ポンプ7が設置されており、この水中ポンプ7には海水汲み上げホース8の一端が接続されている。そして、海水汲み上げホース8の他端部は、後述するバッファ水槽3a内に配置されている。
海水汲み上げホース8の途中には、ゲートバルブ(開閉弁)9及び流量計10が攪拌タンク2側からバッファ水槽3aに向けてこの順番で設けられている。そして、ゲートバルブ9が開かれることでバッファ水槽3aへの海水の汲み上げが開始され、ゲートバルブ9が閉じられることでバッファ水槽3aへの海水の汲み上げが停止される。攪拌タンク2からバッファ水槽3aに汲み上げられる海水の流量は、流量計10によって計測される。
【0032】
高濃度の溶存酸素を含んだ海水(高DO濃度海水)を得るための気液混合装置3は、一時貯留タンクとしてのバッファ水槽3aと高濃度酸素溶解装置3bとを組み合わせて構成されている。ここでは、高濃度酸素溶解装置3bとして、株式会社大栄製作所製の酸素ファイター(登録商標)が用いられている。
バッファ水槽3aは、攪拌タンク2の海水汲み上げ領域5から汲み上げた海水を一時的に貯留しておくためのものである。
バッファ水槽3a内には水位計14が設置されており、当該水位計14でバッファ水槽3a内の水位を検知し、水中ポンプ7、ゲートバルブ9、後述する水中ポンプ4a及び気液混合装置3と連動させるようにされている。そして、バッファ水槽3a内の水位によって水中ポンプ7、ゲートバルブ9、水中ポンプ4a及び気液混合装置3の動作を制御するようにされている。なお、水位計14としては、フロートレス電極棒方式の水位計が用いられている。
【0033】
高濃度の溶存酸素を含んだ海水(高DO濃度海水)は、以下のようにして得られる。
すなわち、高濃度酸素溶解装置(酸素ファイター)3bに所定の圧力(例えば、約0.2MPa)で酸素を入れ込んだ後、当該高濃度酸素溶解装置(酸素ファイター)3bにバッファ水槽3a内の海水を送り込む。これにより、酸素の中に海水を通すことで、酸素が海水に高濃度で溶解し、高DO濃度海水が得られる。この高DO濃度海水は、再びバッファ水槽3aに送り込まれる。
【0034】
バッファ水槽3a内の高DO濃度海水は、上記のように、海水投入手段4によって攪拌タンク2に投入される。
海水投入手段4は、バッファ水槽3aの下部に設置された水中ポンプ4aと、一端が水中ポンプ4aに接続された海水投入ホース4bと、により構成されている。海水投入ホース4bの他端部は、攪拌タンク2の海水汲み上げ領域5の底部に配置されている。すなわち、バッファ水槽3a内の高DO濃度海水は、攪拌タンク2の海水汲み上げ領域5に投入される。
海水投入ホース4bの途中には、逆止弁4c及び三方弁11がバッファ水槽3a側から攪拌タンク2に向けてこの順番で設けられている。逆止弁4cは、海水投入ホース4bの他端の投入口から海水投入ホース4bの一端の導入口への高DO濃度海水の逆流を抑止するためのものである。また、三方弁11は、流入する高DO濃度海水を2本の海水投入ホース(1本の海水投入ホース4bの他端部は、攪拌タンク2の海水汲み上げ領域5の底部に配置され、他の1本の海水投入ホースの他端部は、他の攪拌タンク内に配置されている)のうち、いずれか一方の海水投入ホースに流出させ、又は両方の海水投入ホースに分流するためのものである。
【0035】
(海苔原藻の鮮度維持システムの動作)
次に、本実施形態における海苔原藻の鮮度維持システム1の動作について説明する。
【0036】
摘採した海苔原藻は、陸揚げされた後直ちに海水の入った攪拌タンク2の中に移され、攪拌されながら貯蔵される(このときの攪拌タンク2内のDO濃度は、約7.5mg/L(初期濃度)である)。
海苔原藻を長時間攪拌タンク2の中で貯蔵すると、海苔原藻と共に貯蔵されている海水の酸素濃度が低下してしまう。そして、このため、海苔原藻の鮮度が低下する虞がある。
【0037】
本鮮度維持システム1においては、以下のようにして海苔原藻の鮮度が維持される。
まず、攪拌タンク2内に設置されているDO計12が計測するDO濃度が7.5mg/Lよりも小さい所定の閾値以下になり、かつ、攪拌タンク2の海水汲み上げ領域5内に設置されている水位計13が検知する水位が所定の水位である場合に、水中ポンプ7の動作が開始されるとともに、ゲートバルブ9が開かれる。そして、これにより、攪拌タンク2の海水汲み上げ領域5からバッファ水槽3aへの海水の汲み上げが開始される。
【0038】
次いで、バッファ水槽3a内に設置されている水位計14が検知する水位が所定の水位になると、水中ポンプ7の動作が停止されるともに、ゲートバルブ9が閉じられる。
次いで、気液混合装置3の動作が開始される。すると、高濃度酸素溶解装置(酸素ファイター)3bに所定の圧力(例えば、約0.2MPa)で酸素が入れ込まれ、その後、当該高濃度酸素溶解装置3bにバッファ水槽3a内の海水が送り込まれる。そして、これにより、酸素の中に海水を通すことで、酸素が海水に高濃度で溶解し、高DO濃度海水が得られる。この高DO濃度海水は、再びバッファ水槽3aに送り込まれる。バッファ水槽3a内に設置されている水位計14が検知する水位が所定の水位になると、水中ポンプ7の動作が停止する。なお、気液混合装置3の動作停止は、タイマー制御によって行われる。
【0039】
次いで、水中ポンプ4aの動作が開始される。すると、バッファ水槽3a内の高DO濃度海水が攪拌タンク2の海水汲み上げ領域5に投入される。そして、バッファ水槽3a内に設置されている水位計14が検知する水位が所定の水位になると、水中ポンプ4aの動作が停止する。これにより、攪拌タンク2内のDO濃度が初期濃度の約7.5mg/Lで落ち着き、海苔原藻の鮮度が維持される。
【0040】
(検証実験)
次に、本実施形態の効果を検証するために行った検証実験について説明する。
本検証実験においては、攪拌タンクを2基用意し、一方の攪拌タンクには高DO濃度海水を得る気液混合装置3を付設し(攪拌タンクA)、もう一方の攪拌タンクには気液混合装置を付設しなかった(攪拌タンクB)。
攪拌タンクA,Bに高DO濃度海水をそれぞれ約6m3ずつ入れた。そして、海苔原藻を入れた後、運転を開始し、1時間ごとに攪拌タンクA,B内のDO濃度を計測した。
なお、海苔原藻を入れる前の攪拌タンクA,B内のDO濃度は、20mg/L以上であった。
【0041】
検証実験の結果、気液混合装置を付設していない攪拌タンクB内のDO濃度は、海苔原藻を入れてから約3時間後に2.0mg/L以下まで低下することが確認された。
これに対し、気液混合装置3を付設した攪拌タンクA内のDO濃度は、海苔原藻を入れてから約3時間経過しても約7.5mg/L(海水のDO濃度と同等)で推移することが確認された。
【0042】
また、気液混合装置を付設していない攪拌タンクBを用いた場合には、同時に摘採した海苔原藻であっても、攪拌タンクでの貯蔵時間が長くなるにつれて鮮度が低下し、ひいては、乾燥海苔の品質(商品価値)が低下してしまうことが確認された。
これに対し、気液混合装置3を付設した攪拌タンクAを用いた場合には、攪拌タンクでの貯蔵時間が長くなっても、海苔原藻の鮮度が維持され、海苔抄き始め・抄き終わりの品質のばらつきはなく、乾燥海苔の品質(商品価値)の向上が図れることが確認された。
【0043】
また、本実施形態においては、上記のように、攪拌タンク2の海水汲み上げ領域5から海水を汲み上げ、高DO濃度海水を攪拌タンク2の同じ海水汲み上げ領域5に投入するようにされているため、以下のような作用効果も得られる。
すなわち、攪拌タンク2の海水汲み上げ領域5からバッファ水槽3aに海水を汲み上げると、攪拌タンク2の海水汲み上げ領域5以外の領域と海水汲み上げ領域5との間に水位差が生じ、海水汲み上げ領域5以外の領域からパンチングメタル6を通って海水汲み上げ領域5に海水が移動する。
また、バッファ水槽3aから攪拌タンク2の海水汲み上げ領域5に高DO濃度海水を投入すると、この投入された高DO濃度海水の勢いや水位差によって、攪拌タンク2の海水汲み上げ領域5からパンチングメタル6を通って海水汲み上げ領域5以外の領域に海水が移動する。
このため、海水汲み上げ領域5内の海水量不足が発生することはなく、鮮度維持システム1が完全に停止してしまうような事態を避けることが可能となる。
【0044】
これに対し、高DO濃度海水を攪拌タンク2の海水汲み上げ領域5以外の領域に投入するようにすると、攪拌タンク2の海水汲み上げ領域5以外の領域から海水汲み上げ領域5に移動する海水の量が不足し(水中ポンプ7の吸い込み量≫海水汲み上げ領域5に移動する海水の量)、海水汲み上げ領域5に海水が一定量溜まるまで鮮度維持システム1が完全に停止してしまう。
【0045】
なお、海水汲み上げ領域5への高DO濃度海水の投入が開始されると、攪拌タンク2内のDO濃度は一旦約7.5mg/Lから20mg/L以上に上昇するが、攪拌翼2aによる攪拌によって、上昇開始から5秒程度でDO濃度の低下が始まり、初期濃度の約7.5mg/Lで落ち着くことが確認された。
【0046】
なお、本実施形態においては、高DO濃度海水を得るための気液混合装置3が、一時貯留タンクとしてのバッファ水槽3aと、高濃度酸素溶解装置3bとしての株式会社大栄製作所製の酸素ファイター(登録商標)と、を組み合わせて構成されている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。高DO濃度海水を得ることができれば、高濃度酸素溶解装置として酸素ファイター(登録商標)以外の装置を用いてもよい。
【0047】
また、本実施形態においては、海水汲み上げ領域5が、少なくとも上端が開口した直角二等辺三角筒形状の水槽(三角コーナー)5aで囲まれており、当該水槽(三角コーナー)5aが攪拌タンク2に着脱可能に取り付けられている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。海水汲み上げ領域は、例えば、攪拌タンク2の内部の四隅の一箇所に多孔質板状のステンレス製のパンチングメタルを固着することによって形成するようにしてもよい。
【0048】
また、本実施形態においては、鮮度維持システム1の動作が自動的に制御される場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。例えば、DO計12を見て、作業者が制御するようにしてもよい。
【0049】
[実施形態2]
(海苔原藻の鮮度維持システムの構成)
次に、本発明の実施形態2における海苔原藻の鮮度維持システムの構成について、
図5を参照しながら説明する。
【0050】
図5は、本発明の実施形態2における海苔原藻の鮮度維持システムの構成を示す概略レイアウト図である。
【0051】
図5に示す本実施形態の海苔原藻の鮮度維持システム15は、乾燥海苔の製造時において、海苔原藻の鮮度を維持するために用いられる。
この鮮度維持システム15においては、攪拌タンク内の海水とは別の海水を高DO濃度海水製造タンクに送水し、高DO濃度海水製造タンクと高濃度酸素溶解装置とを組み合わせて構成される気液混合装置によって高DO濃度海水を得るようにされている。その他の構成は、上記実施形態1の鮮度維持システム1とほぼ同じである。このため、上記実施形態1の鮮度維持システム1と同じ構成要素には同じ参照符号を付し、それらの詳細な説明は省略する。
【0052】
図5に示すように、鮮度維持システム15は、海苔原藻を海水と共に貯蔵し、かつ、攪拌する略直方体形状の攪拌タンク2と、海水に所定の圧力で酸素を溶解させ、高DO濃度海水を得る気液混合装置16と、高DO濃度海水を攪拌タンク2に投入する海水投入手段17と、を備えている。ここで、「所定の圧力」は、例えば、約0.2MPaである。
【0053】
本実施形態の鮮度維持システム15のかかる構成による作用効果は、上記実施形態1の鮮度維持システム1の構成による作用効果と同じであるため、ここではその説明を省略する。
【0054】
以下、さらに詳細に説明する。
図5に示すように、攪拌タンク2には、その内部の四隅の一箇所に、海水が行き来可能に海苔原藻から分離される水槽(三角コーナー)18が設けられている(
図4を参照)。水槽18内にはDO計12が設置されており、当該DO計12で攪拌タンク2内のDO濃度を計測し、気液混合装置16と連動させるようにされている。そして、攪拌タンク2内のDO濃度によって気液混合装置16の動作を制御するようにされている。さらに、水槽18内には水位計13が設置されており、当該水位計13で水槽18内の水位を検知し、後述する水中ポンプ17a及びゲートバルブ(開閉弁)17dと連動させるようにされている。そして、水槽18内の水位によって水中ポンプ17a及びゲートバルブ(開閉弁)17dの動作を制御するようにされている。
【0055】
より具体的には、水槽18は、少なくとも上端が開口した直角二等辺三角筒形状をなしており、攪拌タンク2の入隅の二面(内面)に当接する2つの側面がステンレス製の板材からなり、攪拌タンク2の内面に当接しない他の1つの側面が多孔質板状のステンレス製のパンチングメタル19からなっている。
水槽18は、攪拌タンク2に着脱可能に取り付けられており、攪拌タンク2から取り外すことによって、パンチングメタル19に詰まった海苔原藻を容易に除去できるようにされている。
【0056】
DO計12は、上記のように、水槽18内に設置されている。DO計12を水槽18内に設置することにより、海苔原藻に邪魔されずにDO濃度の計測を行うことができる。
【0057】
本実施形態の鮮度維持システム15は、攪拌タンク2内の海水とは別の海水を貯蔵しておくための海水タンク20をさらに備えており、海水タンク20内に貯蔵された海水を用いて高DO濃度海水が得られる。
【0058】
高濃度の溶存酸素を含んだ海水(高DO濃度海水)を得るための気液混合装置16は、一時貯留タンクとしての高DO濃度海水製造タンク16aと高濃度酸素溶解装置16bとを組み合わせて構成されている。ここでは、高濃度酸素溶解装置16bとして、株式会社大栄製作所製の酸素ファイター(登録商標)が用いられている。
高DO濃度海水製造タンク16aは、海水タンク20から送水される海水を一時的に貯留しておくためのものである。
高DO濃度海水製造タンク16a内には水位計14が設置されており、当該水位計14で高DO濃度海水製造タンク16a内の水位を検知し、後述する水中ポンプ17a、ゲートバルブ17d及び気液混合装置16と連動させるようにされている。そして、高DO濃度海水製造タンク16a内の水位によって、水中ポンプ17a、ゲートバルブ17d及び気液混合装置16の動作を制御するようにされている。
【0059】
高濃度の溶存酸素を含んだ海水(高DO濃度海水)は、以下のようにして得られる。
すなわち、高濃度酸素溶解装置(酸素ファイター)16bに所定の圧力(例えば、約0.2MPa)で酸素を入れ込んだ後、当該高濃度酸素溶解装置(酸素ファイター)16bに高DO濃度海水製造タンク16a内の海水を送り込む。これにより、酸素の中に海水を通すことで、酸素が海水に高濃度で溶解し、高DO濃度海水が得られる。この高DO濃度海水は、再び高DO濃度海水製造タンク16aに送り込まれる。
【0060】
高DO濃度海水製造タンク16a内の高DO濃度海水は、上記のように、海水投入手段17によって攪拌タンク2に投入される。
海水投入手段17は、高DO濃度海水製造タンク16aの下部に設置された水中ポンプ17aと、一端が水中ポンプ17aに接続された海水投入ホース17bと、海水投入ホース17bの他端に接続された塩ビパイプ17cと、により構成されている。塩ビパイプ17cは、攪拌翼2aの邪魔にならないよう攪拌タンク2の内面に沿って設けられている。そして、塩ビパイプ17cの先端部は、攪拌タンク2の水槽18の外側の底部に配置されている。
海水投入ホース17bの途中には、逆止弁4c、三方弁11、ゲートバルブ(開閉弁)17d及び流量計17eが高DO濃度海水製造タンク16a側から攪拌タンク2に向けてこの順番で設けられている。そして、ゲートバルブ17dが開かれることで攪拌タンク2への高DO濃度海水の投入が開始され、ゲートバルブ17dが閉じられることで攪拌タンク2への高DO濃度海水の投入が停止される。高DO濃度海水製造タンク16aから攪拌タンク2に投入される高DO濃度海水の流量は、流量計17eによって計測される。
【0061】
本実施形態においては、上記のように、高DO濃度海水を攪拌タンク2の水槽18の外側の底部に投入するようにされている。かかる構成によれば、以下のような作用効果が得られる。
すなわち、水槽18内に高DO濃度海水を投入すると、海苔原藻が障害となって、高DO濃度海水がパンチングメタル19を通って攪拌タンク2の水槽18以外の領域に流出しにくくなる虞がある。
これに対し、高DO濃度海水を攪拌タンク2内の水槽18の外側の底部に投入するようにすれば、高DO濃度海水が攪拌タンク2の全体に拡散しやすくなり、海苔原藻の鮮度を確実に維持することが可能となる。
【0062】
(海苔原藻の鮮度維持システムの動作)
次に、本実施形態における海苔原藻の鮮度維持システム15の動作について説明する。
【0063】
摘採した海苔原藻は、陸揚げされた後直ちに海水の入った攪拌タンク2の中に移され、攪拌されながら貯蔵される(このときの攪拌タンク2内のDO濃度は、約7.5mg/L(初期濃度)である)。
海苔原藻を長時間攪拌タンク2の中で貯蔵すると、海苔原藻と共に貯蔵されている海水の酸素濃度が低下してしまう。そして、このため、海苔原藻の鮮度が低下する虞がある。
【0064】
本鮮度維持システム15においては、以下のようにして海苔原藻の鮮度が維持される。
まず、攪拌タンク2の水槽18内に設置されているDO計12が計測するDO濃度が7.5mg/Lよりも小さい所定の閾値以下になると、気液混合装置16の動作が開始される。すると、高濃度酸素溶解装置(酸素ファイター)16bに所定の圧力(例えば、約0.2MPa)で酸素が入れ込まれ、その後、当該高濃度酸素溶解装置16bに高DO濃度海水製造タンク16a内の海水が送り込まれる。そして、これにより、酸素の中に海水を通すことで、酸素が海水に高濃度で溶解し、高DO濃度海水が得られる。この高DO濃度海水は、再び高DO濃度海水製造タンク16aに送り込まれる。高DO濃度海水製造タンク16a内に設置されている水位計14が検知する水位が所定の水位になると、水中ポンプ17aの動作が停止する。なお、気液混合装置16の動作停止は、タイマー制御によって行われる。
【0065】
次いで、水中ポンプ17aの動作が開始され、かつ、ゲートバルブ17dが開かれる。すると、高DO濃度海水製造タンク16a内の高DO濃度海水が攪拌タンク2の水槽18の外側の底部に投入される。そして、高DO濃度海水製造タンク16a内に設置されている水位計14が検知する水位が所定の水位になると、水中ポンプ17aの動作が停止し、かつ、ゲートバルブ17dが閉じられる。これにより、攪拌タンク2内のDO濃度が初期濃度の約7.5mg/Lで落ち着き、海苔原藻の鮮度が維持される。
【0066】
本実施形態の鮮度維持システム15についても、上記実施形態1と同様の、効果を検証するための検証実験を行った。検証実験の結果は、上記実施形態1の場合と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0067】
なお、本実施形態においては、高DO濃度海水を得るための気液混合装置16が、一時貯留タンクとしての高DO濃度海水製造タンク16aと、高濃度酸素溶解装置16bとしての株式会社大栄製作所製の酸素ファイター(登録商標)と、を組み合わせて構成されている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。高DO濃度海水を得ることができれば、高濃度酸素溶解装置として酸素ファイター(登録商標)以外の装置を用いてもよい。
【0068】
また、本実施形態においては、水槽18が、少なくとも上端が開口した直角二等辺三角筒形状をなしており(三角コーナー)、攪拌タンク2に着脱可能に取り付けられている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。水槽は、例えば、攪拌タンク2の内部の四隅の一箇所に多孔質板状のステンレス製のパンチングメタルを固着することによって形成するようにしてもよい。
【0069】
また、本実施形態においては、鮮度維持システム15の動作が自動的に制御される場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。例えば、DO計12を見て、作業者が制御するようにしてもよい。
【0070】
[実施形態3]
(海苔原藻の鮮度維持システムの構成)
次に、本発明の実施形態3における海苔原藻の鮮度維持システムの構成について、
図6を参照しながら説明する。
【0071】
図6は、本発明の実施形態3における海苔原藻の鮮度維持システムの構成を示す概略レイアウト図である。
【0072】
図6に示す本実施形態の海苔原藻の鮮度維持システム21は、乾燥海苔の製造時において、海苔原藻の鮮度を維持するために用いられる。
この鮮度維持システム21においては、海水汲み上げ領域5として攪拌タンク2内の海水が行き来可能に当該海苔原藻から分離する1乃至複数の多孔質分離手段22(22a、22b)と、海水投入手段23として、前記高DO濃度海水を拡散投入する攪拌タンク2の底部に設けた散水管23eとをさらに備え、より効率的に前記高DO濃度海水を攪拌タンク2内に供給できるようにされている。
その他の構成は、上記実施形態1の鮮度維持システム1とほぼ同じである。このため、上記実施形態1の鮮度維持システム1と同じ構成要素には同じ参照符号を付し、それらの詳細な説明は省略する。
【0073】
図6に示すように、鮮度維持システム21は、海苔原藻を海水と共に貯蔵し、かつ、攪拌する略直方体形状の攪拌タンク2と、前記海水が行き来可能に前記海苔原藻から分離される海水汲み上げ領域5と、海水に所定の圧力で酸素を溶解させ、高DO濃度海水を得る気液混合装置3と、高DO濃度海水を攪拌タンク2に投入する海水投入手段23と、を備えている。ここで、「所定の圧力」は、例えば、約0.2MPaである。
【0074】
本実施形態の鮮度維持システム21のかかる構成による作用効果は、上記実施形態1の鮮度維持システム1の構成による作用効果に加え、段階的に海水と海苔原藻を分離することにより循環する海水の流量の調整がより容易となり、より効果的にDO濃度を上昇させることにより効率的に前記海苔原藻を鮮度維持することができる海苔原藻の鮮度維持システムを提供することができる。
【0075】
以下、さらに詳細に説明する。
図6に示すように、実施形態1に加え、攪拌タンク2内に、海水が行き来可能に海苔原藻から段階的に分離される海水汲み上げ領域5として多孔質分離手段22の水槽(円筒型パンチングメタル)22aを備え、さらに回転軸2bおよびDO計12と干渉せず円筒型パンチングメタル22aの鉛直上方を除く攪拌タンク2より高い位置に多孔質分離手段22の海苔原藻分離装置22bを備える。
【0076】
より具体的には、多孔質分離手段22の円筒型パンチングメタル22aは、少なくとも側面が多孔質板状のステンレス製の円筒型パンチングメタルからなっており、攪拌タンク2内のDO計12および攪拌翼2aに干渉しない位置に着脱可能に設けられる。前記円筒型パンチングメタルの孔径は4.0mm以上であり、前記孔径以上の海苔原藻を少なくとも分離することができる。
水槽22aにより前記海苔原藻を少なくとも分離した海水は、海水汲み上げ領域5内の水中ポンプ7により海水汲み上げホース8aを介して海苔原藻分離装置22bに汲み上げられる。
【0077】
さらに、海苔原藻分離装置22bに汲み上げられた海水は、海苔原藻分離装置22bによって円筒型パンチングメタル22aで分離できなかった海苔原藻が分離される。ここで、海苔原藻分離装置22bは、前記円筒型パンチングメタルの孔径より細かい、例えば孔径1.0mm以下の金網などで構成される。海苔原藻分離装置22bにより分離された海水は、海水汲み上げホース8bを介して気液混合装置3のバッファ水槽3aに汲み上げられる。また、海苔原藻分離装置22bにより分離された海苔原藻は、円筒型パンチングメタル22aの鉛直上方を除く攪拌タンク2に排出される。
【0078】
なお、本実施形態では、多孔質分離手段22として、円筒型パンチングメタル22aで孔径4.0mm以上の海苔原藻を、海苔原藻分離装置22bで孔径4.0mm未満の海苔原藻を、海水より段階的に分解する場合を説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されず、例えば、さらに細かい海苔原藻を段階的に分離できる1つ乃至複数の海苔原藻分離装置を追加してより効果的に海水と海苔原藻を分離してよい。
【0079】
また、本実施形態は、
図6に示すように、気液混合装置3により作成された高DO濃度海水を攪拌タンク2内に供給する海水投入手段23として、攪拌翼2aと海水汲み上げ領域5に干渉しない攪拌タンク2内の底部に散水管23eをさらに備える。
【0080】
より具体的には、多孔質分離手段22により海苔原藻より分離され、バッファ水槽3aに汲み上げられた前記海水は、気液混合装置3の高濃度酸素溶解装置3bにより高DO濃度海水となる。作成された前記高DO濃度海水は、高濃度酸素溶解装置3bから、逆止弁23b、三方弁11、ゲートバルブ23c、流量計23d、を介した海水投入ホース23aに接続された散水管23eから攪拌タンク2内に投入される。ここで、散水管23eは、1つ乃至複数の散水孔を有する、例えば塩化ビニルパイプなどで構成され、気液混合装置3により作成された前記高DO濃度海水を効率的に攪拌タンク2内に供給する。
る。
【0081】
なお、本実施形態では、ポンプ機能を備えた高濃度酸素溶解装置(酸素ファイター)3bから海水投入ホース23aを介して前記高DO濃度海水を攪拌タンク2に投入する場合を説明したが、上記実施形態2の海水投入手段17と同様に、気液混合装置16により作成された高DO濃度海水を有するバッファ水槽16aより、前記高DO濃度海水を攪拌タンク2に投入してもよい。
【0082】
攪拌タンク2に供給する前記高DO濃度海水の流量を、バッファ水槽3aに汲み上げる流量と平衡となる範囲に調整した本実施形態の検証実験の結果、海苔原藻が30~50%混合された攪拌タンク2内の海水1000L中のDO濃度(約0.53mg/L)を約30分間で38.6mg/Lに上昇させることができることが確認された。
【0083】
以上により、本実施形態の鮮度維持システム21のかかる構成によれば、さらに効率的に前記海苔原藻を鮮度維持することが可能となる。
【符号の説明】
【0084】
1,15,21 海苔原藻の鮮度維持システム
2 攪拌タンク
2a 攪拌翼
2b 回転軸
3,16 気液混合装置
3a バッファ水槽
3b,16b, 高濃度酸素溶解装置(酸素ファイター)
4,17, 海水投入手段
4a,7,17a, 水中ポンプ
4b,17b,23a 海水投入ホース
4c,23b 逆止弁
5 海水汲み上げ領域
5a,18 水槽(三角コーナー)
6,19 パンチングメタル
8,8a,8b 海水汲み上げホース
9,17d,23c ゲートバルブ(開閉弁)
10,17e,23d 流量計
11 三方弁
12 溶存酸素計(DO計)
13,14 水位計
16a 高DO濃度海水製造タンク
17c 塩ビパイプ
20 海水タンク
22 多孔質分離手段
22a 円筒型パンチングメタル(水槽)
22b 海苔原藻分離装置
23e 散水管