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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】空調システム、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/46 20180101AFI20240529BHJP
【FI】
F24F11/46
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2024023188
(22)【出願日】2024-02-19
【審査請求日】2024-02-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】長廣 剛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 義康
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-078254(JP,A)
【文献】特開2021-89080(JP,A)
【文献】特開2003-269767(JP,A)
【文献】特開2013-40693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接的にまたは間接的に連通している第1から第Nの空調空間にそれぞれ独立して空調を行うことができる第1から第Nの空調装置と、
前記第1から第Nの空調空間のそれぞれの人密度を取得する取得部と、
前記第1から第Nの空調空間の一部の空調空間を、空調空気を供給する供給空間に決定し、他の一部の空調空間を、還気を排気する排気空間に決定する決定部と、
前記第1から第Nの空調空間の一部の空調空間が供給空間となり、他の一部の空調空間が排気空間となるように前記第1から第Nの空調装置を制御する全体制御を行う場合に、前記決定部による決定結果に応じて、前記供給空間に空調空気が供給され、前記排気空間からの還気が排気されるように前記第1から第Nの空調装置を制御する全体制御部と、を備え、
Nは2以上の整数であり、
前記決定部は、人密度が所定の条件を満たすほど高い空調空間を供給空間に決定し、人密度が所定の条件を満たすほど低い空調空間を排気空間に決定する、空調システム。
【請求項2】
直接的にまたは間接的に連通している第1から第Nの空調空間にそれぞれ独立して空調を行うことができる第1から第Nの空調装置と、
前記第1から第Nの空調空間のそれぞれの人密度、及び当該人密度に応じた熱負荷を取得する取得部
前記第1から第Nの空調空間の一部の空調空間を、空調空気を供給する供給空間に決定し、他の一部の空調空間を、還気を排気する排気空間に決定する決定部と、
前記第1から第Nの空調空間の一部の空調空間が供給空間となり、他の一部の空調空間が排気空間となるように前記第1から第Nの空調装置を制御する全体制御を行う場合に、前記決定部による決定結果に応じて、前記供給空間に空調空気が供給され、前記排気空間からの還気が排気されるように前記第1から第Nの空調装置を制御する全体制御部と、を備え、
Nは2以上の整数であり、
前記決定部は、人密度が所定の条件を満たすほど低い空調空間以外の空調空間であって、熱負荷が所定の条件を満たすほど高い空調空間を供給空間に決定する、空調システム。
【請求項3】
直接的にまたは間接的に連通している第1から第Nの空調空間にそれぞれ独立して空調を行うことができる第1から第Nの空調装置と、
前記第1から第Nの空調空間のそれぞれの温度を取得する取得部
前記第1から第Nの空調空間の一部の空調空間を、空調空気を供給する供給空間に決定し、他の一部の空調空間を、還気を排気する排気空間に決定する決定部と、
前記第1から第Nの空調空間の一部の空調空間が供給空間となり、他の一部の空調空間が排気空間となるように前記第1から第Nの空調装置を制御する全体制御を行う場合に、前記決定部による決定結果に応じて、前記供給空間に空調空気が供給され、前記排気空間からの還気が排気されるように前記第1から第Nの空調装置を制御する全体制御部と、を備え、
Nは2以上の整数であり、
前記決定部は、前記第1から第Nの空調空間に冷房が行われる場合には、取得された温度が所定の条件を満たすほど高い空調空間を供給空間に決定し、取得された温度が所定の条件を満たすほど低い空調空間を排気空間に決定し、前記第1から第Nの空調空間に暖房が行われる場合には、取得された温度が所定の条件を満たすほど低い空調空間を供給空間に決定し、取得された温度が所定の条件を満たすほど高い空調空間を排気空間に決定する、空調システム。
【請求項4】
直接的にまたは間接的に連通している第1から第Nの空調空間にそれぞれ独立して空調を行うことができる第1から第Nの空調装置と、
前記第1から第Nの空調空間の一部の空調空間を、空調空気を供給する供給空間に決定し、他の一部の空調空間を、還気を排気する排気空間に決定する決定部と、
前記第1から第Nの空調空間の一部の空調空間が供給空間となり、他の一部の空調空間が排気空間となるように前記第1から第Nの空調装置を制御する全体制御を行う場合に、前記決定部による決定結果に応じて、前記供給空間に空調空気が供給され、前記排気空間からの還気が排気されるように前記第1から第Nの空調装置を制御する全体制御部と、を備え、
Nは2以上の整数であり、
前記決定部は、前記第1から第Nの空調空間に冷房が行われる場合には、目標温度がより低い空調空間を供給空間に決定し、目標温度がより高い空調空間を排気空間に決定し、前記第1から第Nの空調空間に暖房が行われる場合には、目標温度がより高い空調空間を供給空間に決定し、目標温度がより低い空調空間を排気空間に決定する、空調システム。
【請求項5】
直接的にまたは間接的に連通している第1から第Nの空調空間にそれぞれ独立して空調を行うことができる第1から第Nの空調装置と、
前記第1から第Nの空調空間の全体の熱負荷を予測する熱負荷予測部と、
前記第1から第Nの空調空間の一部の空調空間を、空調空気を供給する供給空間に決定し、他の一部の空調空間を、還気を排気する排気空間に決定する決定部と、
前記第1から第Nの空調空間の一部の空調空間が供給空間となり、他の一部の空調空間が排気空間となるように前記第1から第Nの空調装置を制御する全体制御を行う場合に、前記決定部による決定結果に応じて、前記供給空間に空調空気が供給され、前記排気空間からの還気が排気されるように前記第1から第Nの空調装置を制御する全体制御部と、を備え、
Nは2以上の整数であり、
前記決定部は、前記熱負荷予測部によって予測された熱負荷が大きいほど、より多くの空調空間を供給空間に決定する、空調システム。
【請求項6】
前記第1から第Nの空調空間には、水平方向に連通している複数の空調空間が含まれる、請求項1から請求項のいずれか記載の空調システム。
【請求項7】
前記全体制御部は、全体制御を行う条件が満たされた場合には、前記第1から第Nの空調装置に対して全体制御を行い、全体制御を行う条件が満たされない場合には、前記第1から第Nの空調装置にそれぞれ独立した空調を行わせる、請求項1から請求項のいずれか記載の空調システム。
【請求項8】
直接的にまたは間接的に連通している第1から第Nの空調空間にそれぞれ独立して空調を行うことができる第1から第Nの空調装置の制御方法であって、
Nは2以上の整数であり、
前記第1から第Nの空調空間のそれぞれの人密度を取得するステップと、
前記第1から第Nの空調空間の一部の空調空間を、空調空気を供給する供給空間に決定し、他の一部の空調空間を、還気を排気する排気空間に決定するステップと、
前記第1から第Nの空調空間の一部の空調空間が供給空間となり、他の一部の空調空間が排気空間となるように前記第1から第Nの空調装置を制御する全体制御を行う場合に、前記供給空間及び排気空間を決定するステップにおける決定結果に応じて、前記供給空間に空調空気が供給され、前記排気空間からの還気が排気されるように前記第1から第Nの空調装置を制御するステップと、を備え
前記供給空間及び排気空間を決定するステップでは、人密度が所定の条件を満たすほど高い空調空間を供給空間に決定し、人密度が所定の条件を満たすほど低い空調空間を排気空間に決定する、制御方法。
【請求項9】
直接的にまたは間接的に連通している第1から第Nの空調空間にそれぞれ独立して空調を行うことができる第1から第Nの空調装置の制御方法であって、
Nは2以上の整数であり、
前記第1から第Nの空調空間のそれぞれの人密度、及び当該人密度に応じた熱負荷を取得するステップと、
前記第1から第Nの空調空間の一部の空調空間を、空調空気を供給する供給空間に決定し、他の一部の空調空間を、還気を排気する排気空間に決定するステップと、
前記第1から第Nの空調空間の一部の空調空間が供給空間となり、他の一部の空調空間が排気空間となるように前記第1から第Nの空調装置を制御する全体制御を行う場合に、前記供給空間及び排気空間を決定するステップにおける決定結果に応じて、前記供給空間に空調空気が供給され、前記排気空間からの還気が排気されるように前記第1から第Nの空調装置を制御するステップと、を備え、
前記供給空間及び排気空間を決定するステップでは、人密度が所定の条件を満たすほど低い空調空間以外の空調空間であって、熱負荷が所定の条件を満たすほど高い空調空間を供給空間に決定する、制御方法。
【請求項10】
直接的にまたは間接的に連通している第1から第Nの空調空間にそれぞれ独立して空調を行うことができる第1から第Nの空調装置の制御方法であって、
Nは2以上の整数であり、
前記第1から第Nの空調空間のそれぞれの温度を取得するステップと、
前記第1から第Nの空調空間の一部の空調空間を、空調空気を供給する供給空間に決定し、他の一部の空調空間を、還気を排気する排気空間に決定するステップと、
前記第1から第Nの空調空間の一部の空調空間が供給空間となり、他の一部の空調空間が排気空間となるように前記第1から第Nの空調装置を制御する全体制御を行う場合に、前記供給空間及び排気空間を決定するステップにおける決定結果に応じて、前記供給空間に空調空気が供給され、前記排気空間からの還気が排気されるように前記第1から第Nの空調装置を制御するステップと、を備え、
前記供給空間及び排気空間を決定するステップでは、前記第1から第Nの空調空間に冷房が行われる場合には、取得された温度が所定の条件を満たすほど高い空調空間を供給空間に決定し、取得された温度が所定の条件を満たすほど低い空調空間を排気空間に決定し、前記第1から第Nの空調空間に暖房が行われる場合には、取得された温度が所定の条件を満たすほど低い空調空間を供給空間に決定し、取得された温度が所定の条件を満たすほど高い空調空間を排気空間に決定する、制御方法。
【請求項11】
直接的にまたは間接的に連通している第1から第Nの空調空間にそれぞれ独立して空調を行うことができる第1から第Nの空調装置の制御方法であって、
Nは2以上の整数であり、
前記第1から第Nの空調空間の一部の空調空間を、空調空気を供給する供給空間に決定し、他の一部の空調空間を、還気を排気する排気空間に決定するステップと、
前記第1から第Nの空調空間の一部の空調空間が供給空間となり、他の一部の空調空間が排気空間となるように前記第1から第Nの空調装置を制御する全体制御を行う場合に、前記供給空間及び排気空間を決定するステップにおける決定結果に応じて、前記供給空間に空調空気が供給され、前記排気空間からの還気が排気されるように前記第1から第Nの空調装置を制御するステップと、を備え、
前記供給空間及び排気空間を決定するステップでは、前記第1から第Nの空調空間に冷房が行われる場合には、目標温度がより低い空調空間を供給空間に決定し、目標温度がより高い空調空間を排気空間に決定し、前記第1から第Nの空調空間に暖房が行われる場合には、目標温度がより高い空調空間を供給空間に決定し、目標温度がより低い空調空間を排気空間に決定する、制御方法。
【請求項12】
直接的にまたは間接的に連通している第1から第Nの空調空間にそれぞれ独立して空調を行うことができる第1から第Nの空調装置の制御方法であって、
Nは2以上の整数であり、
前記第1から第Nの空調空間の全体の熱負荷を予測するステップと、
前記第1から第Nの空調空間の一部の空調空間を、空調空気を供給する供給空間に決定し、他の一部の空調空間を、還気を排気する排気空間に決定するステップと、
前記第1から第Nの空調空間の一部の空調空間が供給空間となり、他の一部の空調空間が排気空間となるように前記第1から第Nの空調装置を制御する全体制御を行う場合に、前記供給空間及び排気空間を決定するステップにおける決定結果に応じて、前記供給空間に空調空気が供給され、前記排気空間からの還気が排気されるように前記第1から第Nの空調装置を制御するステップと、を備え、
前記供給空間及び排気空間を決定するステップでは、前記熱負荷を予測するステップにおいて予測された熱負荷が大きいほど、より多くの空調空間を供給空間に決定する、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の空調装置を制御する空調システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調空間ごとに空調を行っていた。例えば、百貨店などの大規模空間は、互いに繋がっている複数の空調空間に分かれており、その空調空間ごとに独立して空調が行われることがあった。このように、互いに繋がっている複数の空調空間にそれぞれ独立して空調の制御を行う場合には、全体としてエネルギー効率の悪い空調が行われることがあった。極端な例としては、第1の空調空間では冷房が行われ、第1の空調空間に繋がっている隣の第2の空調空間では暖房が行われることもあった。
【0003】
なお、空調空間における仮想的に分割された複数のブロック間において空気を適切に移動させ、空調空気をより効率的に利用することによって、省エネルギー化を図ることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-115075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のようにブロック間で空気を移動させるためには、空気の移動のためのダクトや送風機を設ける必要があり、そのための初期コストが多大になるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、既存の空調装置を用いることによって、省エネルギー化を促進することができる空調システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様による空調システムは、直接的にまたは間接的に連通している第1から第Nの空調空間にそれぞれ独立して空調を行うことができる第1から第Nの空調装置と、第1から第Nの空調空間の一部の空調空間が、空調空気を供給する供給空間となり、他の一部の空調空間が、還気を排気する排気空間となるように第1から第Nの空調装置を制御する全体制御を行う場合に、供給空間に空調空気が供給され、排気空間からの還気が排気されるように第1から第Nの空調装置を制御する全体制御部と、を備え、Nは2以上の整数である、ものである。
【0008】
このような構成により、全体制御が行われる場合には、排気空間に対応する空調装置では、空調空気の空調空間への供給は行われないため、それに応じてエネルギーの消費量を低減することができる。その結果、全体して、省エネルギー化を促進することができる。また、このような省エネルギー化を、複数の空調空間にそれぞれ独立して空調を行うことができる既存の複数の空調装置を制御することによって行うことができるため、別途、ダクト等を設ける必要がなく、初期コストを低減しながらも、高効率な空調を実現することができるようになる。
【0009】
また、本発明の一態様による空調システムでは、第1から第Nの空調空間の一部の空調空間を供給空間に決定し、他の一部の空調空間を排気空間に決定する決定部をさらに備え、全体制御部は、全体制御を行う場合に、決定部による決定結果に応じて第1から第Nの空調装置を制御してもよい。
【0010】
このような構成により、例えば、複数の空調空間の状態等に応じて、リアルタイムで供給空間と排気空間を変更することができるようになる。
【0011】
また、本発明の一態様による空調システムでは、第1から第Nの空調空間のそれぞれの人密度を取得する取得部をさらに備え、決定部は、人密度が所定の条件を満たすほど高い空調空間を供給空間に決定し、人密度が所定の条件を満たすほど低い空調空間を排気空間に決定してもよい。
【0012】
このような構成により、人密度が高い空調空間に存在する人の快適性を損なわないように空調を行うことができる。
【0013】
また、本発明の一態様による空調システムでは、第1から第Nの空調空間のそれぞれの人密度、及び人密度に応じた熱負荷を取得する取得部をさらに備え、決定部は、人密度が所定の条件を満たすほど低い空調空間以外の空調空間であって、熱負荷が所定の条件を満たすほど高い空調空間を供給空間に決定してもよい。
【0014】
このような構成により、人密度及び熱負荷に応じた適切な供給空間の設定を行うことができる。
【0015】
また、本発明の一態様による空調システムでは、第1から第Nの空調空間のそれぞれの温度を取得する取得部をさらに備え、決定部は、第1から第Nの空調空間に冷房が行われる場合には、取得された温度が所定の条件を満たすほど高い空調空間を供給空間に決定し、取得された温度が所定の条件を満たすほど低い空調空間を排気空間に決定し、第1から第Nの空調空間に暖房が行われる場合には、取得された温度が所定の条件を満たすほど低い空調空間を供給空間に決定し、取得された温度が所定の条件を満たすほど高い空調空間を排気空間に決定してもよい。
【0016】
このような構成により、例えば、複数の空調空間が全体として近い温度になるように空調を行うことができる。
【0017】
また、本発明の一態様による空調システムでは、決定部は、第1から第Nの空調空間に冷房が行われる場合には、目標温度がより低い空調空間を供給空間に決定し、目標温度がより高い空調空間を排気空間に決定し、第1から第Nの空調空間に暖房が行われる場合には、目標温度がより高い空調空間を供給空間に決定し、目標温度がより低い空調空間を排気空間に決定してもよい。
【0018】
このような構成により、複数の空調空間ごとの異なる目標温度に応じた空調を行うことができる。
【0019】
また、本発明の一態様による空調システムでは、第1から第Nの空調空間の全体の熱負荷を予測する熱負荷予測部を備え、決定部は、熱負荷予測部によって予測された熱負荷が大きいほど、より多くの空調空間を供給空間に決定してもよい。
【0020】
このような構成により、予測された熱負荷をカバーすることができる個数の空調装置を稼働させることができ、第1から第Nの空調空間の全体をより確実に所望の温度に調整することができるようになる。
【0021】
また、本発明の一態様による空調システムでは、第1から第Nの空調空間には、上下方向に連通している複数の空調空間が含まれ、第1から第Nの空調空間に冷房が行われる場合には、上方側に位置する空調空間が供給空間となり、下方側に位置する空調空間が排気空間となり、第1から第Nの空調空間に暖房が行われる場合には、下方側に位置する空調空間が供給空間となり、上方側に位置する空調空間が排気空間となってもよい。
【0022】
このような構成により、複数の空調空間に対して、空気の対流も利用して全体としての空調を行うことができるようになる。
【0023】
また、本発明の一態様による空調システムでは、第1から第Nの空調空間には、水平方向に連通している複数の空調空間が含まれてもよい。
【0024】
また、本発明の一態様による空調システムでは、全体制御部は、全体制御を行う条件が満たされた場合には、第1から第Nの空調装置に対して全体制御を行い、全体制御を行う条件が満たされない場合には、第1から第Nの空調装置にそれぞれ独立した空調を行わせてもよい。
【0025】
このような構成により、全体制御を行うことによって、省エネルギー化を促進することができると共に、全体制御の条件が満たされない場合には、独立した制御を行うことによって、各空調空間における快適性を維持することもできる。
【0026】
また、本発明の一態様による制御方法では、直接的にまたは間接的に連通している第1から第Nの空調空間にそれぞれ独立して空調を行うことができる第1から第Nの空調装置の制御方法であって、Nは2以上の整数であり、第1から第Nの空調空間の一部の空調空間が、空調空気を供給する供給空間となり、他の一部の空調空間が、還気を排気する排気空間となるように第1から第Nの空調装置を制御する全体制御を行う場合に、供給空間に空調空気が供給され、排気空間からの還気が排気されるように第1から第Nの空調装置を制御するステップを備えたものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様による空調システム等によれば、全体制御が行われる場合に、エネルギーの消費量を低減することができ、省エネルギー化を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施の形態による空調システムの構成を示す模式図
図2】同実施の形態における空調装置の構成を示す模式図
図3】同実施の形態による空調システムの動作を示すフローチャート
図4】同実施の形態における供給空間と排気空間との一例を示す図
図5】同実施の形態における複数の空調空間の他の一例を示す図
図6】本実施の形態による空調システムの構成の他の一例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明による空調システムについて、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による空調システムは、直接的にまたは間接的に連通している複数の空調空間にそれぞれ独立して空調を行うことができる複数の空調装置を制御することによって、一部の空調空間が、空調空気を供給する供給空間となり、他の一部の空調空間が、還気を排気する排気空間となるようにするものである。
【0030】
図1は、本実施の形態による空調システム1の構成を示す模式図である。空調システム1は、第1から第4の空調装置10-1~10-4と、取得部21と、決定部22と、全体制御部23とを備える。なお、第1から第4の空調装置10-1~10-4を特に区別しない場合には、空調装置10と呼ぶこともある。他の構成についても同様である。
【0031】
第1から第4の空調装置10-1~10-4は、直接的にまたは間接的に連通している第1から第4の空調空間3-1~3-4にそれぞれ独立して空調を行うことができる空調装置である。空調空間3は、空調システム1が空調を行う対象となる空間である。空調空間3は特に限定されないが、例えば、オフィスや、商業施設、店舗、駅、空港、地下街などであってもよい。一例として、直接的にまたは間接的に連通している複数の空調空間3は、百貨店などの1つのフロアであってもよい。なお、図1では、第1から第4の空調空間3-1~3-4を平面図によって示している。
【0032】
直接的にまたは間接的に連通している複数の空調空間3には、例えば、上下方向に連通している複数の空調空間3が含まれてもよく、図1で示されるように水平方向に連通している複数の空調空間3が含まれてもよい。なお、本実施の形態では、空調システム1が4個の空調空間3、すなわち第1から第4の空調空間3-1~3-4に対して空調を行う場合について主に説明するが、空調システム1が空調を行う対象となる空調空間3の個数は問わない。空調システム1が空調を行う対象となる空調空間3の個数は、例えば、2個であってもよく、3個であってもよく、4個以上であってもよい。
【0033】
複数の空調空間3が直接的に連通しているとは、例えば、複数の空調空間3が隣接しており、その隣接箇所において複数の空調空間3が、空間内の空気が流通可能なように繋がっていることであってもよい。なお、直接的に連通している複数の空調空間3の間に、例えば、壁や床などの間仕切りが存在してもよく、または、そうでなくてもよい。前者の場合には、図1で示されるように、間仕切りに設けられた開口部4を介して複数の空調空間3が連通していてもよく、後者の場合には、複数の空調空間3は、より大きい空間が仮想的に分割された空間であってもよい。一例として、図1における空調空間3-1と空調空間3-2とは直接的に連通している2個の空調空間である。
【0034】
複数の空調空間3が間接的に連通しているとは、例えば、他の空調空間3や、その他の空間(例えば、廊下、階段、吹き抜け、エスカレータ、空調を行わない空間など)を介して空間内の空気が流通可能なように複数の空調空間3が繋がっていることであってもよい。一例として、図1における空調空間3-1と空調空間3-4とは間接的に連通している2個の空調空間である。
【0035】
複数の空調装置10が独立してそれぞれ複数の空調空間3の空調を行うことができるとは、例えば、空調空間3ごとに異なる温度の空気を供給できることであってもよい。すなわち、複数の空調装置10は、それぞれ空調空間3への給気(SA)の温度を独立して設定できるものであってもよい。
【0036】
図2は、空調装置10の構成を示す模式図である。空調装置10は、一例として、送風機11、12と、コイル13と、還気(RA)用のダクト14aと、外気(OA)の導入用のダクト14bと、排気(EA)用のダクト14cと、ダクト14a~14cにそれぞれ設けられたダンパ15a~15cと、送風機11、12及びダンパ15a~15cを制御する制御部16とを備えてもよい。排気用のダクト14cの一端は、一例として、還気用のダクト14aにおけるダンパ15aと送風機12との間の位置においてダクト14aに連結されていてもよい。また、空調システム1は、必要に応じて、空調装置10によって温度の調整された空調空気の空調空間3への給気用のダクト31と、空調空間3からの還気用のダクト32とをさらに備えてもよい。
【0037】
送風機11は、コイル13によって温度や湿度の調整された空気を空調空間3に送る。送風機11は、還気及び外気の少なくとも一方を送風してもよい。還気と外気の割合は、例えば、ダンパ15a、15bの風量が調整されることによって変更されてもよい。
【0038】
送風機12は、空調空間3からの還気について、排気及び送風機11への送風の少なくとも一方を行う。排気と送風機11への送風の割合は、例えば、ダンパ15a、15cの風量が調整されることによって変更されてもよい。
【0039】
コイル13は、空気の温度を調整するための熱交換器である。コイル13には、例えば、ボイラーや冷凍機を有している熱源機器9から、冷水や温水が供給されてもよい。空調装置10によって冷房が行われる場合には、熱源機器9からコイル13に冷水が供給され、空調装置10によって暖房が行われる場合には、熱源機器9からコイル13に温水が供給されてもよい。コイル13は、例えば、空気の湿度の調整、すなわち除湿も行ってもよい。この場合には、コイル13を通過する空気の露点温度以下の温度の冷水がコイル13に供給されてもよい。例えば、複数の空調装置10に対して、1つの熱源機器9から冷水や温水が供給されてもよく、または、2以上の熱源機器9から冷水や温水が供給されてもよい。
【0040】
空調空間3に供給される供給空気の風量は、例えば、送風機11によって調整されてもよく、供給空気の通過するダクト31に設けられた可変風量装置(VAV:Variable Air Volume)によって調整されてもよい。送風機11によって風量を調整する場合には、空調装置10において、風量を調整できる送風機11、例えば、インバータ制御される送風機11や、DCモータを用いた送風機11が用いられてもよい。
【0041】
ダンパ15a~15cは、例えば、モータダンパであり、制御部16によって風量を調整できてもよい。例えば、ダンパ15a、15cの風量が調整されることによって、還気のうち、排気される割合を変更することができる。また、例えば、ダンパ15a、15bの風量が調整されることによって、外気の風量を変更することができる。
【0042】
制御部16は、送風機11、12や、ダンパ15a~15cを制御してもよい。例えば、空調装置10において独立した制御が行われる場合には、制御部16は、例えば、空調空間3の空気の温度が空調装置10において設定された目標温度となるように送風機11、12等を制御してもよい。また、空調システム1において全体制御が行われる場合には、制御部16は、全体制御部23からの指示等に応じて送風機11、12等を制御してもよい。
【0043】
取得部21は、第1から第4の空調空間3-1~3-4のそれぞれの人密度を取得する。取得部21は、例えば、空調空間3の人数を取得し、その取得した人数を用いて空調空間3の人密度を算出してもよい。また、取得部21は、例えば、他の装置によって取得された空調空間3ごとの人密度を、その装置から受け取ってもよい。この場合には、取得部21は、例えば、インターネットやイントラネット、LANなどの通信回線を介して人密度を取得してもよい。
【0044】
空調空間3の人数を取得する場合には、取得部21は、例えば、カメラ5-1~5-4による撮影画像を用いて、空調空間3に存在する人の人数を取得してもよい。なお、図1では、1個の空調空間3に1個のカメラ5が配置されている場合について示しているが、例えば、1個の空調空間3の人数は、複数のカメラ5の撮影画像を用いて取得されてもよい。また、取得部21は、その他の方法によって空調空間3ごとの人数を取得してもよい。一例として、取得部21は、スマートフォンなどの携帯端末から送信される無線信号に含まれるMAC(Media Access Control)アドレスを用いて、空調空間3ごとの人数を取得してもよい。
【0045】
取得部21は、例えば、空調空間3ごとに取得した人数を用いて、空調空間3ごとの人密度を取得してもよい。取得部21は、例えば、空調空間3ごとの面積を保持しており、それを用いて、空調空間3の人数を、その空調空間3の面積で除算することによって、その空調空間3の人密度を算出してもよい。
【0046】
決定部22は、第1から第4の空調空間3-1~3-4の一部の空調空間3を供給空間に決定し、他の一部の空調空間3を排気空間に決定してもよい。決定部22は、例えば、空調システム1において全体制御が行われる場合に、この決定を行ってもよい。決定部22は、例えば、すべての空調空間3のそれぞれを、供給空間と排気空間との一方に決定してもよい。この場合には、供給空間に決定されず、かつ、排気空間に決定されない空調空間3は存在しないことになる。この場合には、決定部22は、例えば、供給空間の決定のみを行ってもよい。供給空間に決定されなかった空調空間3は、結果として、排気空間に決定されたことになるからである。また、決定部22は、例えば、排気空間の決定のみを行ってもよい。排気空間に決定されなかった空調空間3は、結果として、供給空間に決定されたことになるからである。本実施の形態では、各空調空間3が供給空間か排気空間に決定される場合について主に説明する。すなわち、本実施の形態では、4個の空調空間3のうち、一部の空調空間3が供給空間に決定され、残りの空調空間3である供給空間以外の空調空間3が排気空間に決定される場合について主に説明する。
【0047】
一方、決定部22は、例えば、すべての空調空間3のうち、一部の空調空間3を、供給空間にも排気空間にも決定しなくてもよい。この場合には、供給空間に決定されず、かつ、排気空間に決定されない空調空間3が存在することになる。決定部22は、供給空間でもなく、排気空間でもない空調空間3が、供給空間と排気空間との間に位置するように供給空間と排気空間との決定を行うことが好適である。そうでなければ、供給空間でもなく、排気空間でもない空調空間3に空調空気が移動しないことになるからである。決定部22は、例えば、複数の空調空間3の連通関係を保持しており、その連通関係を用いて、そのような供給空間と排気空間との決定を行ってもよい。なお、空調空間3が、供給空間と排気空間との間に位置するとは、例えば、その空調空間3を、供給空間から排気空間に移動する空調空気が通過することであってもよい。また、決定部22による決定結果において、供給空間に決定された空調空間3と、排気空間に決定された空調空間3との両方が存在することが好適である。すなわち、供給空間が存在しない決定結果や、排気空間が存在しない決定結果にはならないことが好適である。
【0048】
決定部22は、一例として、人密度が所定の条件を満たすほど高い空調空間3を供給空間に決定し、人密度が所定の条件を満たすほど低い空調空間3を排気空間に決定してもよい。人密度としては、取得部21によって取得された人密度が用いられてもよい。人密度が、所定の条件を満たすほど高いとは、例えば、人密度が、あらかじめ決められた第1の閾値より高いことであってもよい。人密度が、所定の条件を満たすほど低いとは、例えば、人密度が、第1の閾値より低いことであってもよい。なお、すべての空調空間3が供給空間か排気空間に決定される場合には、第1の閾値に等しい人密度の空調空間3は、例えば、供給空間に決定されてもよく、または、排気空間に決定されてもよい。
【0049】
また、すべての空調空間3の人密度が第1の閾値より高い場合、すべての空調空間3の人密度が第1の閾値より低い場合、または、供給空間や排気空間の個数が決まっている場合などには、例えば、人密度が高い順にN-1個以下の空調空間3が供給空間に決定され、人密度が低い順にN-1個以下の空調空間3が排気空間に決定されてもよい。このように、人密度が所定の条件を満たすほど高い、または低いとは、例えば、他の空調空間3と比較して人密度が高い、または低いことであってもよい。ただし、供給空間の個数と、排気空間の個数の合計は、N以下であるとする。ここで、空調空間3の個数をN個としており、Nは2以上の整数であるとする。すべての空調空間3の人密度が第1の閾値より高い場合には、例えば、N-1個の空調空間3が供給空間に決定され、1個の空調空間3が排気空間に決定されてもよい。また、すべての空調空間3の人密度が第1の閾値より低い場合には、例えば、1個の空調空間3が供給空間に決定され、N-1個の空調空間3が排気空間に決定されてもよい。
【0050】
なお、決定部22による供給空間や排気空間の決定は、繰り返して行われてもよい。決定部22による決定が繰り返されることによって、複数の空調空間3の最新の状況に応じた適切な全体制御を実現することができるようになる。例えば、人密度の高い空調空間3が変化する場合にも、その変化に応じた全体制御を実現できるようになる。
【0051】
全体制御部23は、第1から第4の空調空間3-1~3-4の一部の空調空間3が、空調空気を供給する供給空間となり、他の一部の空調空間3が、還気を排気する排気空間となるように第1から第4の空調装置10-1~10-4を制御する全体制御を行う場合に、供給空間に空調空気が供給され、排気空間からの還気が排気されるように第1から第4の空調装置10-1~10-4を制御する。排気空間からの還気が排気されるとは、例えば、還気のすべてが排気されることであってもよい。全体制御部23は、例えば、ある空調装置10の制御部16に制御に関する指示を送信することによって、その空調装置10に対する制御を行ってもよい。なお、複数の空調空間3に、供給空間ではなく、排気空間でもない空調空間3が含まれることもある。したがって、全体制御部23が、供給空間に空調空気が供給され、排気空間からの還気が排気されるように第1から第4の空調装置10-1~10-4を制御するとは、例えば、供給空間ではなく、排気空間でもない空調空間3の空調を行う空調装置10について何も制御を行わない、すなわちその空調装置10を動作させないことを含んでいる。
【0052】
全体制御部23は、例えば、ある空調空間3が供給空間となる場合には、その空調空間3に空調を行う空調装置10について、ダンパ15bを開けさせると共に送風機11を動作させ、ダクト14bを介して導入された外気に対して、コイル13によって温度を調整させ、その温度の調整された空調空気がダクト31を介して空調空間3に供給されるように制御してもよい。この場合には、例えば、ダンパ15a、15cは閉じられると共に、送風機12は停止されていてもよい。
【0053】
全体制御部23は、例えば、ある空調空間3が排気空間となる場合には、その空調空間3に空調を行う空調装置10について、ダンパ15aを閉じてダンパ15cを開けさせると共に送風機12を動作させ、ダクト14a、14cを介して還気を排気させるように制御してもよい。この場合には、例えば、ダンパ15bは閉じられると共に、送風機11は停止されていてもよい。なお、全体制御部23は、一例として、供給空間における給気の風量の合計と、排気空間における排気の風量の合計とが同じになるように複数の空調装置10における送風量を調整してもよい。
【0054】
全体制御部23は、例えば、全体制御を行う条件が満たされた場合には、第1から第4の空調装置10-1~10-4に対して全体制御を行い、全体制御を行う条件が満たされない場合には、第1から第4の空調装置10-1~10-4にそれぞれ独立した空調を行わせてもよい。後者の場合に行われる空調装置10の制御を、独立制御と呼ぶこともある。一例として、全体制御部23は、取得部21によって取得された空調空間3ごとの人密度において、第1の閾値より高い人密度の空調空間3と、第1の閾値より低い人密度の空調空間3とが存在する場合、または、第1の閾値より高い人密度の空調空間3が存在しない場合に、全体制御を行うと判断し、すべての空調空間3の人密度が第1の閾値より高い場合に、空調装置10に独立制御を行わせると判断してもよい。一例として、全体制御部23は、決定部22によって供給空間と排気空間とが決定された場合に、全体制御を行う条件が満たされたと判断して全体制御を行い、決定部22によって供給空間と排気空間とが決定されなかった場合に、全体制御を行う条件が満たされなかったと判断して独立制御を行うように各空調装置10に指示してもよい。
【0055】
全体制御を行う場合に、全体制御部23は、決定部22による決定結果に応じて第1から第4の空調装置10-1~10-4を制御してもよい。すなわち、全体制御部23は、決定部22によって供給空間に決定された空調空間3の空調を行う空調装置10について、空調空気の空調空間3への供給を行うように制御し、決定部22によって排気空間に決定された空調空間3の空調を行う空調装置10について、還気の排気を行うように制御してもよい。なお、独立制御を行う場合には、全体制御部23は、各空調装置10に独立した空調を行うように指示してもよい。その指示を受け取った各空調装置10は、空調空間3に対する独立した空調を行ってもよい。
【0056】
次に、空調システム1の動作について図3のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)全体制御部23は、全体制御を行うかどうかの判断を行うかどうかについて判断する。そして、判断を行う場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、判断を行うと判断するまでステップS101の処理を繰り返す。なお、全体制御部23は、例えば、全体制御を行うかどうかの判断を行うと定期的に、または不定期に判断してもよい。
【0057】
(ステップS102)取得部21は、空調空間3ごとの人密度を取得する。取得された人密度は、例えば、図示しない記録媒体に蓄積されてもよい。
【0058】
(ステップS103)全体制御部23は、取得部21によって取得された空調空間3ごとの人密度を用いて、全体制御を行うかどうかを判断する。そして、全体制御を行う場合には、ステップS104に進み、そうでない場合には、ステップS106に進む。全体制御部23は、例えば、取得部21によって取得された空調空間3ごとの人密度において、あらかじめ決められた閾値を超える人密度の空調空間3と、そうでない空調空間3とが存在する場合、または、閾値を超える人密度の空調空間3が存在しない場合に、全体制御を行うと判断し、そうでない場合に、全体制御を行わないと判断してもよい。
【0059】
(ステップS104)決定部22は、取得された人密度を用いて、複数の空調空間3の一部を供給空間に決定し、それ以外を排気空間に決定する。決定部22は、例えば、人密度が閾値を超える空調空間3を供給空間に決定し、それ以外の空調空間3を排気空間に決定してもよい。
【0060】
(ステップS105)全体制御部23は、ステップS104の決定結果に応じて、複数の空調装置10を制御する。すなわち、全体制御部23は、供給空間に決定された空調空間3に空調を行う空調装置10について、空調空気を空調空間3に供給するように制御し、排気空間に決定された空調空間3に空調を行う空調装置10について、空調空間3からの還気を排気するように制御してもよい。そして、ステップS101に戻る。なお、ステップS105における複数の空調装置10の制御は、次の異なる制御(ステップS105またはステップS106)が行われるまで継続されてもよい。
【0061】
(ステップS106)全体制御部23は、各空調装置10に空調空間3に独立して空調を行うように指示する。この指示に応じて、各空調装置10は、空調空間3に独立して空調を行ってもよい。そして、ステップS101に戻る。なお、ステップS106における複数の空調装置10による空調は、次の異なる制御(ステップS105)が行われるまで継続されてもよい。
【0062】
なお、図3のフローチャートにおける処理の順序は一例であり、同様の結果を得られるのであれば、各ステップの順序を変更してもよい。また、図3のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了してもよい。
【0063】
次に、本実施の形態による空調システム1の動作について、具体例を用いて説明する。この具体例では、複数の空調装置10によって複数の空調空間3に冷房が行われているものとする。
【0064】
全体制御を行うかどうかの判断を行うと判断した際に、まず、全体制御部23は、複数の空調空間3ごとの人密度を取得する旨の指示を取得部21に渡す(ステップS101)。その指示を受け取ると、取得部21は、カメラ5から各空調空間3の画像を取得し、その画像を用いて各空調空間3に存在する人の人数をカウントし、そのカウントした人数を、各空調空間3の面積で除算することによって、空調空間3ごとの人密度を算出して決定部22と全体制御部23とに渡す(ステップS102)。
【0065】
空調空間3ごとの人密度を受け取ると、全体制御部23は、各人密度を、あらかじめ決められた閾値と比較する。本具体例では、空調空間3-1、3-4の人密度が閾値を超えており、空調空間3-2、3-3の人密度が閾値以下であったとする。すると、全体制御部23は、閾値を超える人密度の空調空間3と、そうでない空調空間3とが存在するため、全体制御を行うと判断し、決定部22に供給空間と排気空間とを決定するように指示する(ステップS103)。その指示を受け取ると、決定部22は、閾値を超える人密度の空調空間3-1、3-4を供給空間に決定し、閾値以下の人密度の空調空間3-2、3-3を排気空間に決定して、その決定結果を全体制御部23に渡す(ステップS104)。
【0066】
その決定結果を受け取ると、全体制御部23は、その決定結果に応じて第1から第4の空調装置10-1~10-4を制御する(ステップS105)。すなわち、図4で示されるように、冷水によって冷やされた空気が第1及び第4の空調装置10-1、10-4からそれぞれ第1及び第4の空調空間3-1、3-4に供給され、第2及び第3の空調空間3-2、3-3の空気がそれぞれ第2及び第3の空調装置10-2、10-3によって排気される。なお、図4で示されるように、空調空間3-1に供給された冷たい空調空気は、開口部4を介して第2及び第3の空調空間3-2、3-3に流入する。また、第4の空調空間3-4に供給された冷たい空調空気も、開口部4を介して第2及び第3の空調空間3-2、3-3に流入する。その結果、第1から第4の空調空間3-1~3-4のすべてに対して冷房が行われることになる。
【0067】
なお、第2及び第3の空調空間3-2、3-3には、直接、空調空気の供給は行われないが、第1及び第4の空調空間3-1、3-4から空調空気が供給されると共に、第2及び第3の空調空間3-2、3-3の人密度は閾値以下であるため、第2及び第3の空調空間3-2、3-3に存在する人の快適性が損なわれることはないと考えられる。また、第1及び第4の空調空間3-1、3-4の人密度は閾値を超えているが、第1及び第4の空調空間3-1、3-4には直接、空調空気が供給されるため、第1及び第4の空調空間3-1、3-4に存在する人の快適性も維持されると考えられる。また、第2及び第3の空調空間3-2、3-3には第2及び第3の空調装置10-2、10-3から空調空気が供給されないため、それに応じてエネルギー消費を削減することができ、省エネルギー化を促進することができる。
【0068】
一方、すべての空調空間3の人密度が閾値を超えている場合には、第1から第4の空調空間3-1~3-4のそれぞれについて、第1から第4の空調装置10-1~10-4による空調がそれぞれ独立して行われてもよい(ステップS106)。その結果、第1から第4の空調空間3-1~3-4の人密度は閾値を超えているが、第1から第4の空調空間3-1~3-4には直接、空調空気が供給されるため、第1から第4の空調空間3-1~3-4に存在する人の快適性は維持されると考えられる。
【0069】
以上のように、本実施の形態による空調システム1によれば、全体制御が行われる場合には、複数の空調空間3は連通しており、供給空間に対して空調空気が供給されると共に、排気空間からは空気が排出されるため、供給空間の快適な空気が排気空間にも移動することになり、供給空間及び排気空間の両方に快適な空気を提供することができるようになる。また、全体制御が行われる場合には、排気空間に対応する空調装置10では、空調空気の空調空間3への供給は行われないため、それに応じてエネルギーの消費量を削減することができる。その結果、全体して、省エネルギー化を促進することができる。また、このような省エネルギー化を、複数の空調空間3にそれぞれ独立して空調を行うことができる既存の複数の空調装置10を制御することによって実現することができるため、別途、ダクト等を設ける必要がなく、初期コストを低減しながらも、高効率な空調を実現することができる。
【0070】
また、決定部22による決定結果に応じて全体制御を行うことにより、複数の空調空間3の状態等に応じて、リアルタイムで供給空間と排気空間を変更することができるようになる。例えば、混雑している空調空間3が時間の経過に応じて変わったとしても、その変化に応じて、供給空間を変更することができ、その結果として、複数の空調空間3の全体としての快適性を維持することができるようになる。
【0071】
また、取得部21によって取得された人密度を用いて全体制御を行うことによって、人密度が高い空調空間3に存在する人の快適性を損なわないように空調を行うことができると共に、人密度の低い空調空間3に空調空気の供給を行わないことによって、エネルギーの消費量を削減することもできる。
【0072】
なお、本実施の形態では、取得部21によって各空調空間3の人密度が取得される場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。取得部21は、人密度に代えて、空調空間3の温度を取得してもよい。この場合には、取得部21は、例えば、第1から第4の空調空間3-1~3-4のそれぞれの温度を取得するものであってもよい。より具体的には、取得部21は、各空調空間3に配置された温度センサによって、各空調空間3の温度をそれぞれ測定してもよく、各空調空間3に配置された温度センサによって測定された温度を、温度センサから受け取ってもよい。後者の場合には、取得部21は、例えば、インターネットやイントラネット、LANなどの通信回線を介して温度を取得してもよい。
【0073】
各空調空間3における温度の測定は、例えば、1個の温度センサを用いて行われてもよく、複数の温度センサを用いて行われてもよい。後者の場合には、1個の空調空間3の温度は、複数の温度センサによってそれぞれ測定された温度の代表値であってもよい。代表値は、例えば、平均値、中央値、最大値、最小値等であってもよい。
【0074】
取得部21によって空調空間3の温度が取得された場合には、全体制御部23は、例えば、次のようにして全体制御を行うかどうかについて判断してもよい。全体制御部23は、例えば、複数の空調空間3に冷房が行われる場合には、あらかじめ決められた第2の閾値より高い温度の空調空間3と、第2の閾値より低い温度の空調空間3とが存在するとき、またはすべての空調空間3の温度が第2の閾値より低いときに、全体制御を行うと判断し、そうでないときに、独立制御を行うと判断してもよい。
【0075】
全体制御が行われる場合であって、複数の空調空間3に冷房が行われる場合には、決定部22は、例えば、取得された温度が所定の条件を満たすほど高い空調空間3を供給空間に決定し、取得された温度が所定の条件を満たすほど低い空調空間3を排気空間に決定してもよい。温度が所定の条件を満たすほど高いとは、例えば、温度が第2の閾値より高いことであってもよく、または、他の空調空間3より温度が高いことであってもよい。また、温度が所定の条件を満たすほど低いとは、例えば、温度が第2の閾値より低いことであってもよく、または、他の空調空間3より温度が低いことであってもよい。決定部22は、例えば、すべての空調空間3の温度が第2の閾値より低い場合に、取得された温度が最も高い空調空間3を供給空間に決定し、それ以外の空調空間3を排気空間に決定してもよい。
【0076】
なお、取得された温度が第2の閾値より高い空調空間3を供給空間に決定し、取得された温度が第2の閾値より低い空調空間3を排気空間に決定する場合であって、すべての空調空間3が供給空間か排気空間に決定される場合には、第2の閾値に等しい温度の空調空間3は、例えば、供給空間に決定されてもよく、または、排気空間に決定されてもよい。
【0077】
また、全体制御部23は、例えば、複数の空調空間3に暖房が行われる場合には、あらかじめ決められた第3の閾値より低い温度の空調空間3と、第3の閾値より高い温度の空調空間3とが存在するとき、またはすべての空調空間3の温度が第3の閾値より高いときに、全体制御を行うと判断し、そうでないときに、独立制御を行うと判断してもよい。
【0078】
全体制御が行われる場合であって、複数の空調空間3に暖房が行われる場合には、決定部22は、例えば、取得された温度が所定の条件を満たすほど低い空調空間3を供給空間に決定し、取得された温度が所定の条件を満たすほど高い空調空間3を排気空間に決定してもよい。温度が所定の条件を満たすほど低いとは、例えば、温度が第3の閾値より低いことであってもよく、または、他の空調空間3より温度が低いことであってもよい。また、温度が所定の条件を満たすほど高いとは、例えば、温度が第3の閾値より高いことであってもよく、または、他の空調空間3より温度が高いことであってもよい。決定部22は、例えば、すべての空調空間3の温度が第3の閾値より高い場合に、取得された温度が最も低い空調空間3を供給空間に決定し、それ以外の空調空間3を排気空間に決定してもよい。
【0079】
なお、取得された温度が第3の閾値より低い空調空間3を供給空間に決定し、取得された温度が第3の閾値より高い空調空間3を排気空間に決定する場合であって、すべての空調空間3が供給空間か排気空間に決定される場合には、第3の閾値に等しい温度の空調空間3は、例えば、供給空間に決定されてもよく、または、排気空間に決定されてもよい。
【0080】
また、本実施の形態では、取得部21によって各空調空間3の現在の人密度が取得される場合について主に説明したが、取得部21によって各空調空間3の将来の人密度が取得されてもよい。この場合には、取得部21は、例えば、空調装置10に関する制御が行われる時点の各空調空間3の人密度を事前に取得してもよい。そして、決定部22は、その取得部21によって取得された将来の人密度を用いて、供給空間や排気空間の決定を行ってもよい。なお、将来の人密度の取得、すなわち人密度の予測については、例えば、特開2020-115075号公報を参照されたい。
【0081】
また、本実施の形態では、全体制御部23が、供給空間ではなく、排気空間でもない空調空間3については、空調装置10の制御を行わない場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。全体制御部23は、例えば、供給空間ではなく、排気空間でもない空調空間3について、空気を循環させる制御を行ってもよい。この場合には、供給空間ではなく、排気空間でもない空調空間3の制御部16は、例えば、送風機11、12を動作させて還気が空調空間3に給気されるようにしてもよい。すなわち、還気の排気や外気の導入が行われることなく、空調空間3の空気が循環されてもよい。その際には、ダンパ15aは開いており、ダンパ15b、15cは閉じていてもよい。
【0082】
また、本実施の形態において、取得部21は、例えば、複数の空調空間3のそれぞれの人密度を取得すると共に、複数の空調空間3のそれぞれについて、取得した人密度に応じた熱負荷を取得してもよい。取得部21によって取得されるある空調空間3の熱負荷は、例えば、冷房が行われる場合には、その空調空間3の人密度が高いほど、より高くなり、その空調空間3の人密度が低いほど、より低くなってもよい。また、取得部21によって取得されるある空調空間3の熱負荷は、例えば、暖房が行われる場合には、その空調空間3の人密度が高いほど、より低くなり、その空調空間3の人密度が低いほど、より高くなってもよい。取得部21は、一例として、ある空調空間3について取得した人密度を所定の関数に代入した結果を、その空調空間の熱負荷としてもよい。所定の関数は、例えば、増加関数や減少関数などであってもよい。また、取得部21は、人密度以外の要素、例えば、外気温なども考慮して熱負荷を取得してもよい。
【0083】
また、決定部22は、取得部21によって取得された人密度及び熱負荷が所定の条件を満たすほど高い空調空間3を供給空間に決定し、取得部21によって取得された人密度及び熱負荷が所定の条件を満たすほど低い空調空間3を排気空間に決定してもよい。人密度及び熱負荷が、所定の条件を満たすほど高いとは、例えば、人密度が第4の閾値より高く、かつ、熱負荷が第5の閾値より高いことであってもよい。人密度及び熱負荷が、所定の条件を満たすほど低いとは、例えば、人密度が第4の閾値より低く、かつ、熱負荷が第5の閾値より低いことであってもよい。なお、第4の閾値と等しい人密度は、例えば、所定の条件を満たすほど高いと判断されてもよく、所定の条件を満たすほど低いと判断されてもよい。また、第5の閾値と等しい熱負荷は、例えば、所定の条件を満たすほど高いと判断されてもよく、所定の条件を満たすほど低いと判断されてもよい。
【0084】
また、人密度及び熱負荷が所定の条件を満たすほど高いかどうかは、例えば、人密度及び熱負荷を引数とする関数を用いて判断されてもよい。その関数は、一例として、人密度の増加関数であり、かつ、熱負荷の増加関数であってもよい。この場合には、関数に人密度及び熱負荷を代入した結果が第6の閾値より大きい場合に、人密度及び熱負荷が所定の条件を満たすほど高いと判断され、関数に人密度及び熱負荷を代入した結果が第6の閾値より小さい場合に、人密度及び熱負荷が所定の条件を満たすほど低いと判断されてもよい。なお、関数に人密度及び熱負荷を代入した結果が第6の閾値と等しい場合には、人密度及び熱負荷が所定の条件を満たすほど高いと判断されてもよく、低いと判断されてもよい。また、例えば、関数の値の高い順にN-1個以下の空調空間3が供給空間に決定され、関数の値が低い順にN-1個以下の空調空間3が排気空間に決定されてもよい。Nは、空調空間3の個数であり、供給空間の個数と、排気空間の個数の合計は、N以下であるとする。このように供給空間及び排気空間が決定されることによって、例えば、冷房が行われる場合には、人密度の高い空調空間3が供給空間となり、暖房が行われる場合には、人密度が中程度の空調空間3が供給空間となるようにすることができる。
【0085】
また、本実施の形態において、取得部21によって複数の空調空間3のそれぞれの人密度、及びその人密度に応じた熱負荷が取得される場合には、決定部22は、取得部21によって取得された人密度が所定の条件を満たすほど低い空調空間3以外の空調空間3であって、取得部21によって取得された熱負荷が所定の条件を満たすほど高い空調空間3を供給空間に決定してもよい。人密度が所定の条件を満たすほど低い空調空間3は、例えば、人密度が第7の閾値より低い空調空間3であってもよい。この場合には、決定部22は、人密度が所定の条件を満たすほど低い空調空間3を供給空間に決定しないことになる。人密度が所定の条件を満たすほど低い空調空間3は、一例として、実質的に人がいないと判断することができる空調空間3であってもよい。そのような空調空間3には、空調を行う必要がないため、供給空間に決定されなくてもよい。また、熱負荷が所定の条件を満たすほど高い空調空間3は、例えば、熱負荷が第8の閾値より高い空調空間3であってもよく、熱負荷が高い順に特定された所定個数の空調空間3であってもよい。所定個数は、例えば、あらかじめ決められていてもよく、後述するように、複数の空調空間3の熱負荷に応じて決定されてもよい。
【0086】
人密度が所定の条件を満たすほど低い空調空間3以外の空調空間3であって、熱負荷が所定の条件を満たすほど高い空調空間3が供給空間に決定されることによって、例えば、冷房が行われる場合には、人密度の高い空調空間3が供給空間に決定されてもよく、暖房が行われる場合には、人密度が低すぎることもなく、また高すぎることもない空調空間3が供給空間に決定されてもよい。また、この場合には、排気空間の決定方法は問わない。一例として、決定部22は、供給空間でもなく、排気空間でもない空調空間3が、供給空間と排気空間との間に位置するように排気空間を決定してもよい。
【0087】
また、本実施の形態において、決定部22は、複数の空調空間3の熱負荷に応じて、供給空間の個数を決定してもよい。この場合には、図6で示されるように、空調システム1は、熱負荷予測部24をさらに備えていてもよい。熱負荷予測部24は、例えば、複数の空調空間3の全体の熱負荷を予測する。複数の空調空間3は、例えば、すべての空調空間3であり、図6では、第1から第4の空調空間3-1~3-4であってもよい。また、熱負荷予測部24は、全体制御部23による制御が行われる時期の複数の空調空間3の熱負荷を予測することが好適である。熱負荷の予測については後述する。
【0088】
決定部22は、熱負荷予測部24によって予測された熱負荷が大きいほど、より多くの空調空間3を供給空間に決定し、熱負荷予測部24によって予測された熱負荷が小さいほど、より少ない空調空間3を供給空間に決定してもよい。すなわち、予測された熱負荷が大きいほど、より多くの空調空間3が供給空間となり、予測された熱負荷が小さいほど、より少ない空調空間3が供給空間となってもよい。この場合には、一例として、排気空間の個数は、供給空間の個数と同じになってもよく、または、そうでなくてもよい。一例として、空調装置10ごとの能力を保持している場合には、決定部22は、予測された熱負荷をカバーすることができる1以上の空調装置10を特定し、その特定した空調装置10に対応する空調空間3を供給空間に決定してもよい。
【0089】
次に、熱負荷の予測について説明する。例えば、ある時点の複数の空調空間3の熱負荷と、その時点の外気の温度との複数の組があらかじめ用意されている場合には、熱負荷予測部24は、外気の予測温度を取得し、複数の組を用いて、その外気の予測温度に対応する熱負荷を特定することによって、予測した熱負荷を取得することができる。同様のことを、学習モデルを用いて行うこともできる。この場合には、ある時点の情報である訓練用入力情報と、その時点の複数の空調空間3の熱負荷である訓練用出力情報との複数の組を用いて学習モデルが学習されてもよい。学習モデルは、例えば、ニューラルネットワークであってもよく、SVMなどであってもよい。訓練用入力情報には、例えば、気象情報が含まれていてもよく、時期情報が含まれていてもよく、イベント情報が含まれていてもよい。
【0090】
気象情報は、ある時点の気象に関する情報であり、例えば、外気の温度を含んでいてもよく、外気の湿度を含んでいてもよく、外気の比エンタルピーを含んでいてもよく、天気を示す情報を含んでいてもよく、降水量を含んでいてもよく、風速を含んでいてもよく、日照時間を含んでいてもよく、気象に関連するその他の情報を含んでいてもよい。気象情報は、通常、複数の空調空間3の近傍の気象に関する情報であることが好適である。
【0091】
時期情報は、ある時点を含む時期に関する情報であり、例えば、月曜、火曜などの曜日を含んでいてもよく、1月、2月などの月を含んでいてもよく、春夏秋冬などの季節を含んでいてもよく、平日か休日かを示す情報を含んでいてもよく、早朝、朝の通勤時間帯、ランチタイム、夕方の通勤時間帯などの時間帯を含んでいてもよく、時期に関するその他の情報を含んでいてもよい。
【0092】
イベント情報は、イベントに関する情報であり、例えば、複数の空調空間3内におけるイベントに関する情報を含んでいてもよく、複数の空調空間3に隣接する空間、または複数の空調空間3の近くの空間におけるイベントに関する情報を含んでいてもよく、イベントに関するその他の情報を含んでいてもよい。イベントに関する情報は、例えば、イベントの有無を示す情報を含んでいてもよく、大規模、中規模などのイベントの規模を示す情報を含んでいてもよく、セール、実演などのイベントの種類を示す情報を含んでいてもよい。
【0093】
熱負荷予測部24は、学習済みの学習モデルを用いて熱負荷を予測する場合には、予測したい時点の入力情報を取得し、その取得した入力情報を学習モデルに入力し、その入力に応じて学習モデルから出力された熱負荷を取得してもよい。その出力された熱負荷が、予測結果となる。予測したい時点は、例えば、現在から数時間程度先の時点であってもよい。なお、入力情報は、入力用訓練情報と同様の種類の情報を含むことが好適である。熱負荷予測部24は、例えば、予測したい時点の気象情報を、気象情報を提供するサーバ等から取得してもよい。また、熱負荷予測部24は、例えば、予測したい時点の時期情報を、図示しないカレンダー部などから取得してもよい。また、熱負荷予測部24は、例えば、予測したい時点のイベント情報を、イベント報を提供するサーバ等から取得してもよい。
【0094】
このように、予測された熱負荷に応じて供給空間の個数が決定されることにより、予測された熱負荷をカバーすることができる個数の空調装置10による空調を行うことができ、複数の空調空間3をより確実に所望の温度に調整することができるようになる。また、予測された熱負荷に応じて稼働させる空調装置10の個数を決めることができるため、複数の空調空間3の熱負荷に対して過剰な個数の空調装置10を稼働させることを回避することもできる。
【0095】
また、本実施の形態において、取得部21によって取得された人密度が所定の閾値より低い空調空間3については、必ずしも空調空気が供給されなくてもよい。所定の閾値は、一例として、人密度が所定の閾値より低い空調空間3に実質的に人がいないと判断することができる値に設定されてもよい。この場合には、決定部22は、例えば、人密度が所定の閾値より低い空調空間3を供給空間に決定しないことが好適である。また、決定部22は、例えば、人密度が所定の閾値より低い空調空間3が供給空間と排気空間との間に位置するように供給空間や排気空間の決定を行わなくてもよい。
【0096】
また、本実施の形態では、決定部22が取得部21による取得結果を用いて供給空間と排気空間との決定を行う場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。決定部22は、取得部21による取得結果を用いないで供給空間等の決定を行ってもよい。この場合には、空調システム1は、取得部21を備えていなくてもよい。また、決定部22は、一例として、複数の空調空間3に冷房が行われる場合には、目標温度がより低い空調空間3を供給空間に決定し、目標温度がより高い空調空間3を排気空間に決定し、複数の空調空間3に暖房が行われる場合には、目標温度がより高い空調空間3を供給空間に決定し、目標温度がより低い空調空間3を排気空間に決定してもよい。この場合には、空調空間3ごとに目標温度が設定されてもよい。決定部22は、例えば、複数の空調装置10からそれぞれ目標温度を取得してもよい。なお、目標温度に応じて決定部22による決定が行われる場合には、例えば、全体制御部23は、目標温度の最大値と最小値との差の絶対値が、あらかじめ決められた正の実数である閾値より大きいときに、全体制御を行うと判断し、そうでないときに、独立制御を行うと判断してもよい。
【0097】
また、本実施の形態では、全体制御部23が、決定部22による決定結果に応じて全体制御を行う場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。全体制御に決定部22による決定結果が用いられない場合には、空調システム1は、決定部22を備えていなくてもよい。空調システム1が決定部22を備えていない場合には、全体制御部23は、例えば、全体制御を行う際に、複数の空調空間3を、あらかじめ決められたように供給空間と排気空間とに設定してもよい。一例として、複数の空調空間3に冷房が行われる場合であって、その複数の空調空間3に上下方向に連通している空調空間3が含まれている場合には、上方側に位置する空調空間3が供給空間となり、下方側に位置する空調空間3が排気空間となってもよい。また、一例として、複数の空調空間3に暖房が行われる場合であって、その複数の空調空間3に上下方向に連通している空調空間3が含まれている場合には、下方側に位置する空調空間3が供給空間となり、上方側に位置する空調空間3が排気空間となってもよい。
【0098】
図5は、上下方向に連通している複数の空調空間3の一例を示す正面図である。図5で示される複数の空調空間3に冷房が行われる場合には、例えば、第3及び第4の空調空間3-3、3-4が供給空間となり、第1及び第2の空調空間3-1、3-2が排気空間となってもよい。また、他の一例として、第4の空調空間3-4が供給空間となり、第1の空調空間3-1が排気空間となってもよい。また、図5で示される複数の空調空間3に暖房が行われる場合には、例えば、第1及び第2の空調空間3-1、3-2が供給空間となり、第3及び第4の空調空間3-3、3-4が排気空間となってもよい。また、他の一例として、第1の空調空間3-1が供給空間となり、第4の空調空間3-4が排気空間となってもよい。このように供給空間及び排気空間が設定されることにより、空調空間3の間の空気の上下方向の移動を、対流によって促進することができるようになる。なお、この場合であっても、供給空間に空調空気が供給され、排気空間から空気が排気されるため、それらに応じて供給空間から排気空間への空調空気の流れを作ることができる。そのため、空調空間3の間の空気の移動を対流のみに依存させる場合と比較して、快適な空気を供給空間から排気空間により早期に移動させることができるようになる。なお、図5において、開口部4は、例えば、階段や、吹き抜け、エスカレータ等の空間であってもよい。
【0099】
また、他の一例として、重要度の高い空調空間3、例えば、百貨店において高級な商品を販売する空調空間3が供給空間となり、重要度の低い空調空間3が排気空間となってもよい。重要度の低い空調空間3は、例えば、重要度の高い空調空間3以外の空調空間3であってもよく、その他の空調空間3であってもよい。このようにすることで、重要度の高い空調空間3の快適性を保証することができると共に、全体しての消費エネルギーを削減することもできる。
【0100】
また、他の一例として、外部への出入り口のある空調空間3が供給空間となり、外部への出入り口のない空調空間3が排気空間となってもよい。外部への出入り口のある空調空間3を排気空間とすると、出入り口を介して外部からの空気が空調空間3に流入することになるからである。
【0101】
さらに、他の一例として、熱負荷の高い空調空間3が供給空間となり、熱負荷の高くない空調空間3が排気空間となってもよい。熱負荷の高い空調空間3は、例えば、冷房が行われる場合には、多くの電子機器が配置されている空調空間3であってもよい。
【0102】
このように、決定部22による決定が行われない場合には、各空調空間3について、冷房時及び暖房時に供給空間となるのか、排気空間になるのかがあらかじめ設定されており、全体制御部23は、全体制御を行う際に、その設定に応じて各空調装置10を制御してもよい。
【0103】
また、本実施の形態では、全体制御部23が全体制御を行うかどうかを判断する場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。複数の空調空間3を、あらかじめ決められたように供給空間と排気空間とに設定する場合には、空調システム1において、その設定に応じた全体制御のみが行われてもよい。
【0104】
また、本実施の形態では、既存の複数の空調装置10を用いて空調システム1を実現する場合について主に説明したが、新たに複数の空調装置10を導入する場合にも、本実施の形態による空調システム1のように複数の空調装置10を制御してもよいことは言うまでもない。
【0105】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、または、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0106】
また、上記実施の形態において、空調システム1に含まれる2以上の構成要素が通信デバイスや入力デバイス等を有する場合に、2以上の構成要素が物理的に単一のデバイスを有してもよく、または、別々のデバイスを有してもよい。
【0107】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、または、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、ソフトウェアにより実現可能な構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。また、そのプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。また、そのプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、または分散処理を行ってもよい。
【0108】
また、以上の実施の形態は、本発明を具体的に実施するための例示であって、本発明の技術的範囲を制限するものではない。本発明の技術的範囲は、実施の形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲の文言上の範囲及び均等の意味の範囲内での変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0109】
1 空調システム
3 空調空間
10 空調装置
21 取得部
22 決定部
23 全体制御部
【要約】
【課題】既存の空調装置を用いることによって、省エネルギー化を促進することができる空調システムを提供する。
【解決手段】空調システム1は、直接的にまたは間接的に連通している第1から第4の空調空間3-1~3-4にそれぞれ独立して空調を行うことができる第1から第4の空調装置10-1~10-4と、第1から第4の空調空間3-1~3-4の一部の空調空間が、空調空気を供給する供給空間となり、他の一部の空調空間が、還気を排気する排気空間となるように第1から第4の空調装置10-1~10-4を制御する全体制御を行う場合に、供給空間に空調空気が供給され、排気空間からの還気が排気されるように第1から第4の空調装置10-1~10-4を制御する全体制御部23と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6