(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】蓄電システム及び制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240529BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240529BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240529BHJP
H02J 3/16 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/34 B
H02J3/32
H02J3/16
(21)【出願番号】P 2023500178
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2021005870
(87)【国際公開番号】W WO2022176052
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】三ツ木 康晃
【審査官】山口 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-172567(JP,A)
【文献】国際公開第2020/084688(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 7/34
H02J 3/32
H02J 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力の放電及び充電が可能な複数の蓄電装置と、
前記複数の蓄電装置及び負荷に接続され、前記複数の蓄電装置に蓄積された直流電力を前記負荷に対応した電力に変換し、前記複数の蓄電装置に蓄積された直流電力を基に、前記負荷への電力の供給を行うとともに、前記負荷の電力を前記複数の蓄電装置に対応した直流電力に変換し、前記負荷側の電力を基に、前記複数の蓄電装置の充電を行う複数の電力変換装置と、
複数の前記電力変換装置の電力の変換動作を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
複数の前記電力変換装置から出力する有効電力の合計値、及び無効電力の合計値を決定する出力値決定部と、
前記有効電力の合計値及び前記無効電力の合計値を基に、複数の前記電力変換装置のうち、運転指令を送信する前記電力変換装置の台数を決定する台数決定部と、
複数の前記電力変換装置のうち、前記台数決定部で決定された台数の所定の前記電力変換装置を、前記運転指令を送信する前記電力変換装置として決定する変換装置決定部と、
前記変換装置決定部によって決定された前記電力変換装置に前記運転指令を送信するとともに、複数の前記電力変換装置のうちの前記運転指令を送信しない残りの前記電力変換装置に対して待機指令を送信する指令送信部と、
を有
し、
前記変換装置決定部は、複数の前記電力変換装置の優先度を表す優先度リストを有し、複数の前記電力変換装置のうち、前記優先度リストの優先度の高い順に、前記台数決定部で決定された台数の前記電力変換装置を、前記運転指令を送信する前記電力変換装置として決定し、
前記優先度リストは、複数の前記電力変換装置を識別するための装置番号と、前記装置番号の表す前記電力変換装置に接続された前記蓄電装置の充電量と、前記装置番号の表す前記電力変換装置に前記運転指令を送信する優先順位を表す優先度と、を関連付けて表し、
前記変換装置決定部は、前記複数の蓄電装置の充電量に応じて、前記優先度リストの複数の前記電力変換装置の優先度を決定し、
前記変換装置決定部は、定期的に前記複数の蓄電装置の充電量の情報を取得し、取得した前記充電量の情報を基に、前記優先度リストの充電量を更新し、更新後の充電量の並べ替えの処理を行うことにより、定期的に前記優先度リストの複数の前記電力変換装置の優先度を更新し、
前記変換装置決定部は、優先度の更新の周期毎に、優先度の高い側又は優先度の低い側から順番に、前記優先度リストにおいて隣接する2つの前記電力変換装置に対応する充電量を比較し、必要に応じて2つの前記電力変換装置の順番を入れ替える処理を、前記優先度リストの全ての充電量について1回ずつ行う蓄電システム。
【請求項2】
前記台数決定部は、複数の前記電力変換装置の1台当たりの有効電力の定格容量、及び複数の前記電力変換装置の1台当たりの無効電力の定格容量の情報を有し、前記出力値決定部によって決定された前記有効電力の合計値、前記無効電力の合計値、前記有効電力の定格容量、及び前記無効電力の定格容量を基に、前記運転指令を送信する前記電力変換装置の台数を決定する請求項1記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記変換装置決定部は、複数の前記電力変換装置の有効電力の出力方向が、前記負荷に電力を供給する放電方向である場合には、前記蓄電装置の充電量の高い前記電力変換装置の優先度を高くし、複数の前記電力変換装置の有効電力の出力方向が、前記負荷の電力を基に前記蓄電装置を充電する充電方向である場合には、前記蓄電装置の充電量の低い前記電力変換装置の優先度を高くする
請求項1記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記変換装置決定部は、複数の前記電力変換装置の有効電力の出力方向が、前記負荷に電力を供給する放電方向である場合には、前記蓄電装置の充電量の高い順に、前記装置番号及び前記充電量を並べ替え、複数の前記電力変換装置の有効電力の出力方向が、前記負荷の電力を基に前記蓄電装置を充電する充電方向である場合には、前記蓄電装置の充電量の低い順に、前記装置番号及び前記充電量を並べ替える
請求項1記載の蓄電システム。
【請求項5】
前記変換装置決定部は、前記有効電力の出力方向が前記放電方向である場合には、優先度の高い側又は優先度の低い側から順番に、前記優先度リストにおいて隣接する2つの前記電力変換装置に対応する充電量を比較し、充電量の高い前記電力変換装置の優先度が高くなるように、必要に応じて2つの前記電力変換装置の順番を入れ替える処理を、優先度の最も高い前記電力変換装置の充電量から優先度の最も低い前記電力変換装置の充電量まで、1回ずつ行うことにより、優先度の最も高い前記電力変換装置又は優先度の最も低い前記電力変換装置を確定させ、確定した前記電力変換装置を除く残りの前記電力変換装置について、同様の処理を繰り返すことにより、複数の前記電力変換装置の台数をNとする時に、(N×(N-1))/2回の前記比較の回数で、充電量の高い順に更新後の充電量を並べ替え、
前記変換装置決定部は、前記有効電力の出力方向が前記充電方向である場合には、優先度の高い側又は優先度の低い側から順番に、前記優先度リストにおいて隣接する2つの前記電力変換装置に対応する充電量を比較し、充電量の低い前記電力変換装置の優先度が高くなるように、必要に応じて2つの前記電力変換装置の順番を入れ替える処理を、優先度の最も高い前記電力変換装置の充電量から優先度の最も低い前記電力変換装置の充電量まで、1回ずつ行うことにより、優先度の最も高い前記電力変換装置又は優先度の最も低い前記電力変換装置を確定させ、確定した前記電力変換装置を除く残りの前記電力変換装置について、同様の処理を繰り返すことにより、(N×(N-1))/2回の前記比較の回数で、充電量の低い順に更新後の充電量を並べ替える
請求項4記載の蓄電システム。
【請求項6】
前記変換装置決定部は、隣接する2つの前記電力変換装置に対応する充電量を比較した際に、2つの充電量の差が所定値以上である場合に、2つの前記電力変換装置の順番を入れ替える
請求項5記載の蓄電システム。
【請求項7】
複数の蓄電装置及び負荷に接続され、前記複数の蓄電装置に蓄積された直流電力を前記負荷に対応した電力に変換し、前記複数の蓄電装置に蓄積された直流電力を基に、前記負荷への電力の供給を行うとともに、前記負荷の電力を前記複数の蓄電装置に対応した直流電力に変換し、前記負荷側の電力を基に、前記複数の蓄電装置の充電を行う複数の電力変換装置の電力の変換動作を制御する制御装置であって、
複数の前記電力変換装置から出力する有効電力の合計値、及び無効電力の合計値を決定する出力値決定部と、
前記有効電力の合計値及び前記無効電力の合計値を基に、複数の前記電力変換装置のうち、運転指令を送信する前記電力変換装置の台数を決定する台数決定部と、
複数の前記電力変換装置のうち、前記台数決定部で決定された台数の所定の前記電力変換装置を、前記運転指令を送信する前記電力変換装置として決定する変換装置決定部と、
前記変換装置決定部によって決定された前記電力変換装置に前記運転指令を送信するとともに、複数の前記電力変換装置のうちの前記運転指令を送信しない残りの前記電力変換装置に対して待機指令を送信する指令送信部と、
を備え
、
前記変換装置決定部は、複数の前記電力変換装置の優先度を表す優先度リストを有し、複数の前記電力変換装置のうち、前記優先度リストの優先度の高い順に、前記台数決定部で決定された台数の前記電力変換装置を、前記運転指令を送信する前記電力変換装置として決定し、
前記優先度リストは、複数の前記電力変換装置を識別するための装置番号と、前記装置番号の表す前記電力変換装置に接続された前記蓄電装置の充電量と、前記装置番号の表す前記電力変換装置に前記運転指令を送信する優先順位を表す優先度と、を関連付けて表し、
前記変換装置決定部は、前記複数の蓄電装置の充電量に応じて、前記優先度リストの複数の前記電力変換装置の優先度を決定し、
前記変換装置決定部は、定期的に前記複数の蓄電装置の充電量の情報を取得し、取得した前記充電量の情報を基に、前記優先度リストの充電量を更新し、更新後の充電量の並べ替えの処理を行うことにより、定期的に前記優先度リストの複数の前記電力変換装置の優先度を更新し、
前記変換装置決定部は、優先度の更新の周期毎に、優先度の高い側又は優先度の低い側から順番に、前記優先度リストにおいて隣接する2つの前記電力変換装置に対応する充電量を比較し、必要に応じて2つの前記電力変換装置の順番を入れ替える処理を、前記優先度リストの全ての充電量について1回ずつ行う制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓄電システム及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の蓄電装置と、複数の電力変換装置と、制御装置と、を備えた蓄電システムが知られている。複数の電力変換装置は、複数の蓄電装置のそれぞれに対応して設けられる。各電力変換装置は、各蓄電装置に接続されるとともに、共通の負荷に接続される。各電力変換装置は、各蓄電装置に蓄積された電力を基に、負荷への電力の供給を行うとともに、負荷側の電力を基に、各蓄積装置の充電を行う。制御装置は、複数の電力変換装置の電力の変換動作を制御する。
【0003】
こうした蓄電システムは、例えば、電力系統の周波数の変動を抑制するために用いられる。各電力変換装置は、電力系統側を電圧源として電力系統に連系され、電力系統の周波数変動を抑制するように、電力系統への電力の供給、及び電力系統の電力による各蓄電装置の充電を行う。蓄電システムは、あるいは、電気機関車や電気自動車などの電動車両に用いられる。各電力変換装置は、電動車両のモータを負荷としてモータに接続され、モータへの電力の供給、及びモータの回生エネルギによる各蓄電装置の充電を行う。
【0004】
制御装置は、負荷で必要となる電力を基に、複数の電力変換装置のそれぞれの出力を決定し、決定した出力に基づいて複数の電力変換装置のそれぞれを動作させる。しかしながら、負荷で必要となる電力の大きさによらず、複数の電力変換装置の全てを動作させる制御方法では、複数の電力変換装置の動作にともなう電力の損失が大きくなってしまう。このため、蓄電システム及びこれに用いられる制御装置では、電力の損失を抑制できるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3890168号公報
【文献】特許第5924524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、電力の損失を抑制できる蓄電システム及び制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態によれば、直流電力の放電及び充電が可能な複数の蓄電装置と、前記複数の蓄電装置及び負荷に接続され、前記複数の蓄電装置に蓄積された直流電力を前記負荷に対応した電力に変換し、前記複数の蓄電装置に蓄積された直流電力を基に、前記負荷への電力の供給を行うとともに、前記負荷の電力を前記複数の蓄電装置に対応した直流電力に変換し、前記負荷側の電力を基に、前記複数の蓄電装置の充電を行う複数の電力変換装置と、複数の前記電力変換装置の電力の変換動作を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、複数の前記電力変換装置から出力する有効電力の合計値、及び無効電力の合計値を決定する出力値決定部と、前記有効電力の合計値及び前記無効電力の合計値を基に、複数の前記電力変換装置のうち、運転指令を送信する前記電力変換装置の台数を決定する台数決定部と、複数の前記電力変換装置のうち、前記台数決定部で決定された台数の所定の前記電力変換装置を、前記運転指令を送信する前記電力変換装置として決定する変換装置決定部と、前記変換装置決定部によって決定された前記電力変換装置に前記運転指令を送信するとともに、複数の前記電力変換装置のうちの前記運転指令を送信しない残りの前記電力変換装置に対して待機指令を送信する指令送信部と、を有し、前記変換装置決定部は、複数の前記電力変換装置の優先度を表す優先度リストを有し、複数の前記電力変換装置のうち、前記優先度リストの優先度の高い順に、前記台数決定部で決定された台数の前記電力変換装置を、前記運転指令を送信する前記電力変換装置として決定し、前記優先度リストは、複数の前記電力変換装置を識別するための装置番号と、前記装置番号の表す前記電力変換装置に接続された前記蓄電装置の充電量と、前記装置番号の表す前記電力変換装置に前記運転指令を送信する優先順位を表す優先度と、を関連付けて表し、前記変換装置決定部は、前記複数の蓄電装置の充電量に応じて、前記優先度リストの複数の前記電力変換装置の優先度を決定し、前記変換装置決定部は、定期的に前記複数の蓄電装置の充電量の情報を取得し、取得した前記充電量の情報を基に、前記優先度リストの充電量を更新し、更新後の充電量の並べ替えの処理を行うことにより、定期的に前記優先度リストの複数の前記電力変換装置の優先度を更新し、前記変換装置決定部は、優先度の更新の周期毎に、優先度の高い側又は優先度の低い側から順番に、前記優先度リストにおいて隣接する2つの前記電力変換装置に対応する充電量を比較し、必要に応じて2つの前記電力変換装置の順番を入れ替える処理を、前記優先度リストの全ての充電量について1回ずつ行う蓄電システムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、電力の損失を抑制できる蓄電システム及び制御装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る蓄電システムを模式的に表すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
【
図3】優先度リストの一例を模式的に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0011】
図1は、実施形態に係る蓄電システムを模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、蓄電システム2は、複数の蓄電装置4と、複数の電力変換装置6と、制御装置10と、を備える。複数の蓄電装置4は、直流電力を蓄積し、蓄積した直流電力の供給(放電)を行うことができるとともに、蓄積した直流電力よりも大きい直流電力の流入に応じて直流電力を再度蓄積する(充電)ことができる。複数の蓄電装置4は、例えば、蓄電池である。複数の蓄電装置4は、例えば、コンデンサなどでもよい。複数の蓄電装置4は、直流電力の放電及び充電が可能な任意の装置でよい。
【0012】
複数の電力変換装置6は、複数の蓄電装置4のそれぞれに対応して設けられる。複数の電力変換装置6の数は、例えば、複数の蓄電装置4の数と同じである。複数の電力変換装置6は、複数の蓄電装置4のそれぞれに接続される。但し、1台の電力変換装置6に対して複数台の蓄電装置4を接続してもよい。複数の電力変換装置6の数は、必ずしも複数の蓄電装置4の数と同じでなくてもよい。
【0013】
蓄電システム2は、例えば、複数の変圧器12、及び変圧器14をさらに備える。複数の変圧器12は、複数の電力変換装置6のそれぞれに対応して設けられる。複数の電力変換装置6は、複数の変圧器12に接続される。複数の変圧器12は、変圧器14に接続される。変圧器14は、電力系統PSに接続される。複数の電力変換装置6は、変圧器12、14などを介して負荷である電力系統PSと接続される。電力変換装置6と電力系統PSとの間には、遮断器やさらに多くの変圧器などが設けられていてもよい。電力変換装置6と電力系統PSとの間の構成は、電力変換装置6を電力系統PSに接続可能な任意の構成でよい。
【0014】
電力系統PS(負荷)の電力は、交流電力である。電力系統PSの電力は、例えば、三相交流電力である。但し、電力系統PS(負荷)の電力は、交流電力に限ることなく、直流電力などでもよい。
【0015】
複数の電力変換装置6は、複数の蓄電装置4に蓄積された直流電力を電力系統PSに対応した電力に変換するとともに、電力系統PSの電力を複数の蓄電装置4に対応した直流電力に変換する。複数の電力変換装置6は、例えば、複数のスイッチング素子を有し、複数のスイッチング素子のスイッチングにより、電力の変換を行う。
【0016】
複数の電力変換装置6は、複数の蓄電装置4に蓄積された直流電力を基に、電力系統PSへの電力の供給を行うとともに、電力系統PS側の電力を基に、複数の蓄電装置4の充電を行う。これにより、蓄電システム2は、例えば、電力系統PSの周波数変動を抑制する。
【0017】
蓄電システム2は、例えば、計測装置16をさらに備える。計測装置16は、例えば、複数の電力変換装置6と電力系統PSとの連系点の有効電力値、無効電力値、及び電圧値を検出し、検出した有効電力値、無効電力値、及び電圧値を制御装置10に入力する。
【0018】
制御装置10は、複数の電力変換装置6の電力の変換動作を制御する。制御装置10は、例えば、計測装置16から入力された連系点の有効電力値、無効電力値、及び電圧値を基に、電力系統PSの周波数変動を抑制するように、複数の電力変換装置6の動作を制御する。
【0019】
図2は、実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、制御装置10は、出力値決定部20と、台数決定部22と、変換装置決定部24と、指令送信部26と、を有する。
【0020】
出力値決定部20は、複数の電力変換装置6から出力する有効電力の合計値、及び無効電力の合計値を決定する。出力値決定部20は、例えば、計測装置16から入力された連系点の有効電力値、無効電力値、及び電圧値を基に、電力系統PSの周波数変動を抑制するために必要な有効電力及び無効電力を演算することにより、複数の電力変換装置6から出力する有効電力の合計値、及び無効電力の合計値を決定する。
【0021】
但し、有効電力の合計値、及び無効電力の合計値の決定方法は、上記に限定されるものではない。例えば、出力値決定部20は、上位のコントローラなどから入力される指令値を基に、有効電力の合計値、及び無効電力の合計値を決定してもよい。有効電力の合計値、及び無効電力の合計値の決定方法は、蓄電システム2のシステム構成などに応じた任意の方法でよい。
【0022】
台数決定部22は、複数の電力変換装置6のうち、運転指令を送信する電力変換装置6の台数を決定する。
【0023】
台数決定部22には、例えば、複数の電力変換装置6の1台当たりの有効電力の定格容量と、複数の電力変換装置6の1台当たりの無効電力の定格容量と、複数の電力変換装置6の有効電力の出力マージンと、複数の電力変換装置6の無効電力の出力マージンと、が、パラメータとして設定される。換言すれば、台数決定部22は、有効電力の定格容量、無効電力の定格容量、有効電力の出力マージン、及び無効電力の出力マージンの情報を予め有する。
【0024】
台数決定部22は、出力値決定部20によって決定された有効電力の合計値、無効電力の合計値、及び上記の各パラメータを基に、運転指令を送信する電力変換装置6の台数を決定する。
【0025】
台数決定部22は、次の(1)式により、有効電力の出力のために必要な電力変換装置6の台数D1を演算する。
【数1】
【0026】
(1)式において、Apは、出力値決定部20によって決定された有効電力の合計値である。S1は、複数の電力変換装置6の1台当たりの有効電力の定格容量である。B1は、複数の電力変換装置6の有効電力の出力マージンである。出力マージンB1としては、0~1(p.u.)の間の任意の値を設定する。また、roundは、切り上げの関数である。台数決定部22は、小数点以下を切り上げることにより、整数の台数D1を演算する。
【0027】
台数決定部22は、次の(2)式により、無効電力の出力のために必要な電力変換装置6の台数D2を演算する。
【数2】
【0028】
(2)式において、Aqは、出力値決定部20によって決定された無効電力の合計値である。S2は、複数の電力変換装置6の1台当たりの無効電力の定格容量である。B2は、複数の電力変換装置6の無効電力の出力マージンである。出力マージンB2としては、0~1(p.u.)の間の任意の値を設定する。roundは、(1)式と同様に、切り上げの関数である。台数決定部22は、小数点以下を切り上げることにより、整数の台数D2を演算する。
【0029】
台数決定部22は、有効電力の出力のために必要な電力変換装置6の台数D1、及び無効電力の出力のために必要な電力変換装置6の台数D2を演算した後、台数D1、D2のうちの大きい方を、運転指令を送信する電力変換装置6の台数として決定する。
【0030】
なお、台数D1、D2の演算方法は、必ずしも上記に限定されるものではない。台数決定部22は、例えば、D1=Ap/(S1×B1)、D2=Aq/(S2×B2)として台数D1、D2を演算してもよい。この場合には、電力変換装置6を定格容量で運転させる場合に、出力マージンB1、B2が、1(p.u.)に設定され、電力変換装置6の出力を定格容量よりも抑えたい場合に、出力マージンB1、B2が、1(p.u.)よりも小さい任意の値に設定される。
【0031】
出力マージンB1、B2は、必ずしも設定しなくてもよい。台数決定部22は、例えば、D1=Ap/S1、D2=Aq/S2として台数D1、D2を演算してもよい。台数決定部22による台数の決定方法は、少なくとも出力値決定部20によって決定された有効電力の合計値、及び無効電力の合計値を基にした任意の決定方法でよい。
【0032】
変換装置決定部24は、複数の電力変換装置6のうち、台数決定部22で決定された台数の所定の電力変換装置6を、運転指令を送信する電力変換装置6として決定する。変換装置決定部24は、例えば、複数の電力変換装置6の優先度を表す優先度リスト30を有する。変換装置決定部24は、複数の電力変換装置6のうち、優先度リスト30の優先度の高い順に、台数決定部22で決定された台数の電力変換装置6を、運転指令を送信する電力変換装置6として決定する。
【0033】
例えば、台数決定部22が、運転指令を送信する電力変換装置6の台数を2台と決定した場合、変換装置決定部24は、優先度リスト30の優先度の高い2台の電力変換装置6を、運転指令を送信する電力変換装置6として決定する。
【0034】
変換装置決定部24は、運転指令を送信する電力変換装置6を決定した後、決定した電力変換装置6の情報を指令送信部26に入力する。
【0035】
指令送信部26は、変換装置決定部24から入力された情報を基に、変換装置決定部24によって決定された電力変換装置6に運転指令を送信する。指令送信部26は、例えば、出力値決定部20で決定された有効電力の合計値及び無効電力の合計値を、台数決定部22で決定された台数で割ることにより、1台当たりの電力変換装置6の有効電力及び無効電力を決定し、決定した有効電力及び無効電力を出力させるように、決定された電力変換装置6に運転指令を送信する。
【0036】
また、指令送信部26は、複数の電力変換装置6のうちの運転指令を送信しない残りの電力変換装置6に対して待機指令を送信する。待機指令は、電力変換装置6の動作を停止させる指令である。待機指令は、例えば、電力変換装置6の複数のスイッチング素子をオフ状態とする指令である。待機指令は、ゲートブロック指令などと呼ばれる場合もある。
【0037】
また、例えば、電力変換装置6と蓄電装置4との間、及び電力変換装置6と変圧器12(複数の電力変換装置6の分岐点)との間に、遮断器などが設けられている場合には、指令送信部26は、待機指令を送信する場合、待機指令を送信する電力変換装置6に対応する遮断器を投入した状態のままとする。換言すれば、指令送信部26は、待機指令を送信する場合には、電力変換装置6を蓄電装置4及び電力系統PSと接続した状態のままとし、待機指令の送信により、電力変換装置6の動作のみを停止させる。待機指令は、例えば、電力変換装置6をすぐに動作させられるようにしつつ、電力変換装置6の動作を停止させる指令である。
【0038】
制御装置10は、例えば、100msなどの所定の制御周期毎に動作する。制御装置10は、例えば、制御周期毎に、出力値決定部20で複数の電力変換装置6から出力する有効電力の合計値、及び無効電力の合計値を決定し、台数決定部22で運転指令を送信する電力変換装置6の台数を決定し、変換装置決定部24で運転指令を送信する電力変換装置6を決定し、指令送信部26から複数の電力変換装置6に運転指令又は待機指令を送信する。これにより、制御装置10は、所定の制御周期毎に複数の電力変換装置6の動作を制御する。
【0039】
図3は、優先度リストの一例を模式的に表す説明図である。
図3に表したように、優先度リスト30は、装置番号と、充電量(SOC:State Of Charge)と、優先度と、を関連付けて表す。優先度リスト30は、例えば、装置番号と、充電量と、優先度と、を関連付けたテーブルデータである。
【0040】
装置番号は、複数の電力変換装置6を識別するために、複数の電力変換装置6のそれぞれに割り当てられた固有の番号である。充電量は、装置番号の表す電力変換装置6に接続された蓄電装置4の充電量を表す。優先度は、装置番号の表す電力変換装置6に運転指令を送信する優先順位を表す。
【0041】
このように、優先度リスト30は、例えば、複数の電力変換装置6のそれぞれに対応する装置番号及び充電量を優先度の高い順に並べたテーブルデータである。
【0042】
変換装置決定部24は、例えば、複数の蓄電装置4の充電量に応じて、優先度リスト30の複数の電力変換装置6の優先度を決定する。この場合、変換装置決定部24は、複数の電力変換装置6の有効電力の出力する方向に応じて、複数の電力変換装置6の優先度を変化させる。
【0043】
変換装置決定部24は、複数の電力変換装置6の有効電力の出力方向が、電力系統PSに電力を供給する放電方向である場合には、蓄電装置4の充電量の高い電力変換装置6の優先度を高くする。そして、変換装置決定部24は、複数の電力変換装置6の有効電力の出力方向が、電力系統PSの電力を基に蓄電装置4を充電する充電方向である場合には、蓄電装置4の充電量の低い電力変換装置6の優先度を高くする。これにより、複数の蓄電装置4の充電量の低下や過充電を抑制することができる。
【0044】
複数の蓄電装置4の充電量は、複数の電力変換装置6の動作に応じて変化する。このため、変換装置決定部24は、上記のように複数の蓄電装置4の充電量に応じて複数の電力変換装置6の優先度を決定する場合、定期的に複数の電力変換装置6の優先度の更新を行う。変換装置決定部24は、例えば、制御装置10の制御周期毎に複数の電力変換装置6の優先度の更新を行う。但し、優先度を更新する周期は、必ずしも制御周期と同じでなくてもよい。
【0045】
変換装置決定部24は、優先度の更新において、まず、複数の蓄電装置4の充電量の情報を取得する。換言すれば、変換装置決定部24は、定期的に複数の蓄電装置4の充電量の情報を取得する。変換装置決定部24は、例えば、制御周期毎に複数の蓄電装置4の充電量の情報を取得する。複数の蓄電装置4の充電量の情報は、装置番号と関連付けて取得される。これにより、変換装置決定部24において、複数の電力変換装置6のそれぞれに対応する複数の蓄電装置4の充電量を認識することができる。
【0046】
変換装置決定部24は、例えば、複数の蓄電装置4や複数の電力変換装置6などから複数の蓄電装置4の充電量の情報を取得する。複数の蓄電装置4の充電量の情報は、例えば、上位のコントローラなどから取得してもよい。
【0047】
変換装置決定部24は、複数の蓄電装置4の充電量の情報を取得した後、取得した充電量の情報を基に、優先度リスト30の充電量を更新する。これにより、優先度リスト30の充電量の値が、複数の蓄電装置4の現在の充電量の値に更新される。
【0048】
変換装置決定部24は、充電量を更新した後、出力値決定部20によって決定された複数の電力変換装置6から出力する有効電力の合計値を基に、複数の電力変換装置6の有効電力の出力する方向が、複数の蓄電装置4から放電する方向か、複数の蓄電装置4を充電する方向かを判断する。例えば、放電方向を正、充電方向を負とする場合に、変換装置決定部24は、複数の電力変換装置6から出力する有効電力の合計値の符号を基に、放電方向か充電方向かを判断する。
【0049】
変換装置決定部24は、有効電力の出力方向が放電方向であると判断した場合には、蓄電装置4の充電量の高い電力変換装置6の優先度を高くする。そして、変換装置決定部24は、有効電力の出力方向が充電方向であると判断した場合には、蓄電装置4の充電量の低い電力変換装置6の優先度を高くする。なお、有効電力の出力方向の判断は、充電量の更新の前に行ってもよい。
【0050】
変換装置決定部24は、充電量の更新、及び有効電力の出力方向の判断を行った後、更新後の充電量の並べ替えの処理を行う。
【0051】
変換装置決定部24は、有効電力の出力方向が放電方向であると判断した場合には、蓄電装置4の充電量の高い順に、装置番号及び充電量を並べ替える。これにより、優先度リスト30の充電量の値が、複数の蓄電装置4の現在の充電量の値に更新された後、蓄電装置4の充電量の高い電力変換装置6の優先度が高くなるように、複数の電力変換装置6の優先度を更新することができる。
【0052】
また、変換装置決定部24は、有効電力の出力方向が充電方向であると判断した場合には、蓄電装置4の充電量の低い順に、装置番号及び充電量を並べ替える。これにより、優先度リスト30の充電量の値が、複数の蓄電装置4の現在の充電量の値に更新された後、蓄電装置4の充電量の低い電力変換装置6の優先度が高くなるように、複数の電力変換装置6の優先度を更新することができる。
【0053】
変換装置決定部24は、例えば、優先度リスト30において隣接する2つの電力変換装置6に対応する充電量を比較することにより、並べ替えの処理を行う。
【0054】
変換装置決定部24は、有効電力の出力方向が放電方向である場合には、優先度の高い側から順番に、優先度リスト30において隣接する2つの電力変換装置6に対応する充電量を比較し、充電量の高い電力変換装置6の優先度が高くなるように、必要に応じて2つの電力変換装置6の順番を入れ替える。
【0055】
この際、変換装置決定部24は、例えば、隣接する2つの電力変換装置6に対応する充電量の比較に不感帯を設ける。変換装置決定部24は、2つの充電量の差が所定値以上である場合に、2つの電力変換装置6の順番を入れ替える。
【0056】
変換装置決定部24は、例えば、優先度の最も高い電力変換装置6と2番目に高い電力変換装置6とを比較し、2番目に高い電力変換装置6に対応する充電量が、優先度の最も高い電力変換装置6に対応する充電量よりも所定値以上高い場合に、2つの電力変換装置6の順番を入れ替える。すなわち、2番目であった電力変換装置6の優先度が最も高くなり、最も高かった電力変換装置6の優先度が2番目となる。
【0057】
所定値は、例えば、充電量の最大値の2%~3%程度に設定される。これにより、2つの電力変換装置6の順番が、頻繁に入れ替わってしまうことを抑制することができる。例えば、運転指令を送信する電力変換装置6と待機指令を送信する電力変換装置6とが頻繁に入れ替わり、電力変換装置6の動作に遅れが生じてしまうことなどを抑制することができる。但し、不感帯は、必ずしも設けなくてもよい。
【0058】
変換装置決定部24は、上記の処理を優先度の高い側から順番に順次行う。変換装置決定部24は、例えば、優先度の最も高い電力変換装置6と2番目に高い電力変換装置6とを比較した後、2番目に高い電力変換装置6と3番目に高い電力変換装置6とを比較し、これを順次行う。これにより、変換装置決定部24は、有効電力の出力方向が放電方向である場合には、充電量の高い順に更新後の充電量を並べ替える。なお、上記と反対に、有効電力の出力方向が放電方向である場合に、優先度の低い側から順番に、優先度リスト30において隣接する2つの電力変換装置6に対応する充電量を比較してもよい。
【0059】
変換装置決定部24は、有効電力の出力方向が充電方向である場合には、優先度の高い側から順番に、優先度リスト30において隣接する2つの電力変換装置6に対応する充電量を比較し、充電量の低い電力変換装置6の優先度が高くなるように、必要に応じて2つの電力変換装置6の順番を入れ替える。これにより、変換装置決定部24は、有効電力の出力方向が充電方向である場合には、充電量の低い順に更新後の充電量を並べ替える。なお、上記と反対に、有効電力の出力方向が充電方向である場合に、優先度の低い側から順番に、優先度リスト30において隣接する2つの電力変換装置6に対応する充電量を比較してもよい。
【0060】
変換装置決定部24は、複数の電力変換装置6の台数をNとする時に、上記の充電量の比較の処理を、例えば、(N×(N-1))/2回行う。Nは、より詳しくは、複数の電力変換装置6のうちで、動作可能な電力変換装置6の台数である。
【0061】
隣接する2つの充電量を比較する場合、優先度リスト30の全ての充電量を1回ずつ比較するのに必要な比較の回数は、N-1回である。例えば、複数の電力変換装置6の台数が5台である場合、優先度リスト30の全ての充電量を1回ずつ比較するのに必要な比較の回数は、優先度の1番目と2番目、2番目と3番目、3番目と4番目、及び4番目と5番目の合計4回である。これにより、優先度の最も高い電力変換装置6の充電量から優先度の最も低い電力変換装置6の充電量まで、1回ずつ比較を行うことができる。
【0062】
このように、比較をN-1回行うことにより、優先度の最も高い電力変換装置6又は優先度の最も低い電力変換装置6を確定させることができる。例えば、優先度の高い側から順番に充電量を比較し、充電量の高い電力変換装置6の優先度が高くなるように、必要に応じて2つの電力変換装置6の順番を入れ替えた場合には、N-1回の比較により、優先度の最も低い電力変換装置6を確定させることができる。反対に、優先度の低い側から順番に充電量を比較し、充電量の高い電力変換装置6の優先度が高くなるように、必要に応じて2つの電力変換装置6の順番を入れ替えた場合には、N-1回の比較により、優先度の最も高い電力変換装置6を確定させることができる。
【0063】
変換装置決定部24は、続いて比較を行う場合、確定した電力変換装置6を除く残りの電力変換装置6について、同様の処理を繰り返す。
【0064】
例えば、複数の電力変換装置6の台数が5台である場合、優先度の1番目と2番目、2番目と3番目、3番目と4番目、及び4番目と5番目の比較により、5番目の電力変換装置6を確定させた後、優先度の1番目と2番目、2番目と3番目、及び3番目と4番目の比較により、4番目の電力変換装置6を確定させ、優先度の1番目と2番目、及び2番目と3番目の比較により、3番目の電力変換装置6を確定させ、優先度の1番目と2番目の比較により、1番目と2番目の電力変換装置6を確定させる。これにより、1番目から5番目まで充電量に応じた順序に電力変換装置6を並べ替えることができる。この場合、比較の回数は、10回(4回+3回+2回+1回)であり、(5×(5-1))/2=10と一致する。
【0065】
上記のように並べ替えを行うことにより、上記の式から求められる回数で、N台の電力変換装置6を充電量に応じた順序に適切に並べ替えることができる。これにより、例えば、(N-1)回の演算をN回繰り返す場合などと比べて、比較の演算の回数を少なくすることができる。比較的少ない演算の回数で、N台の電力変換装置6を充電量に応じた順序に適切に並べ替えることができる。
【0066】
変換装置決定部24は、定期的に充電量の比較の処理を(N×(N-1))/2回行うことにより、有効電力の出力方向が放電方向である場合には、充電量の高い順に更新後の充電量を並べ替え、有効電力の出力方向が充電方向である場合には、充電量の低い順に更新後の充電量を並べ替える。
【0067】
例えば、制御装置10の制御周期毎に優先度の更新を行う場合には、変換装置決定部24は、上記のように、更新後の充電量の並べ替えの処理を行った後、複数の電力変換装置6のうち、優先度リスト30の優先度の高い順に、台数決定部22で決定された台数の電力変換装置6を、運転指令を送信する電力変換装置6として決定し、決定した電力変換装置6の情報を指令送信部26に入力する。
【0068】
優先度の更新の周期は、制御周期よりも長く設定してもよい。例えば、制御周期の2回に1回の頻度や3回に1回の頻度などで優先度の更新を行ってもよい。
【0069】
上記の例では、変換装置決定部24は、優先度の更新の周期毎に、蓄電装置4の充電量の高い順、又は蓄電装置4の充電量の低い順に、全ての装置番号及び充電量を並べ替えている。但し、更新後の充電量の並べ替えの処理は、上記に限定されるものではない。
【0070】
変換装置決定部24は、例えば、優先度の更新の周期毎に、優先度の高い側又は優先度の低い側から順番に、優先度リスト30において隣接する2つの電力変換装置6に対応する充電量を比較し、必要に応じて2つの電力変換装置6の順番を入れ替える処理を、優先度リスト30の全ての充電量について1回ずつ行ってもよい。
【0071】
すなわち、変換装置決定部24は、優先度の更新の周期毎に、上記の例のN-1回の回数の比較を行うことにより、優先度の最も高い電力変換装置6又は優先度の最も低い電力変換装置6を確定させてもよい。なお、変換装置決定部24は、この場合においても、隣接する2つの電力変換装置6に対応する充電量の比較に不感帯を設けてもよい。
【0072】
上記の例のように、優先度の更新の周期毎に、全ての装置番号及び充電量を並べ替える場合には、有効電力の出力方向が変化した場合に、運転指令を送信する電力変換装置6と待機指令を送信する電力変換装置6とが大きく入れ替わってしまう可能性がある。
【0073】
例えば、複数の電力変換装置6の台数が10台で、10台の電力変換装置6のうち、5台の電力変換装置6に運転指令を送信し、残りの5台の電力変換装置6に待機指令を送信している状態で、有効電力の出力方向が変化した場合に、運転状態の電力変換装置6と待機状態の電力変換装置6とが一度に入れ替わってしまう可能性がある。この場合、複数の電力変換装置6の動作に遅れなどが生じてしまう可能性が生じる。
【0074】
これに対して、優先度の更新の周期毎に、N-1回の回数の比較を行った場合には、有効電力の出力方向が変化した場合にも、運転指令を送信する電力変換装置6と待機指令を送信する電力変換装置6とが大きく入れ替わってしまうことを抑制することができる。
【0075】
例えば、複数の電力変換装置6の台数が10台で、10台の電力変換装置6のうち、5台の電力変換装置6に運転指令を送信し、残りの5台の電力変換装置6に待機指令を送信している状態で、有効電力の出力方向が変化した場合に、優先度の更新の周期毎に、運転指令を送信する電力変換装置6と待機指令を送信する電力変換装置6とを、充電量の高い順又は充電量の低い順に1台ずつ入れ替えることができる。これにより、複数の電力変換装置6の動作に遅れなどが生じてしまうことを抑制することができる。
【0076】
変換装置決定部24は、例えば、優先度の更新の周期毎に、2×(N-1)回の回数の比較を行ってもよい。この場合には、有効電力の出力方向が変化した場合に、優先度の更新の周期毎に、運転指令を送信する電力変換装置6と待機指令を送信する電力変換装置6とを、充電量の高い順又は充電量の低い順に2台ずつ入れ替えることができる。変換装置決定部24による比較の回数は、N-1回と(N×(N-1))/2回との間の任意の回数に設定すればよい。
【0077】
なお、複数の電力変換装置6の優先度は、必ずしも複数の蓄電装置4の充電量によって決定しなくてもよい。優先度リスト30は、装置番号と、優先度と、を関連付けて表すものでもよい。例えば、蓄電システム2において、複数の蓄電装置4の容量や複数の電力変換装置6の容量が異なる場合がある。この場合には、複数の蓄電装置4の容量や複数の電力変換装置6の容量に応じて、複数の電力変換装置6の優先度を決定してもよい。例えば、複数の蓄電装置4の容量や複数の電力変換装置6の容量の高い順に、複数の電力変換装置6の優先度を決定してもよい。
【0078】
また、変換装置決定部24による運転指令を送信する電力変換装置6の決定方法は、優先度リスト30の優先度の高い順に決定する方法に限定されるものではない。変換装置決定部24は、例えば、上位のコントローラなどの外部の機器から入力される制御信号に基づいて、運転指令を送信する電力変換装置6を決定してもよい。
【0079】
以上、説明したように、本実施形態に係る蓄電システム2では、制御装置10が、複数の電力変換装置6から出力する有効電力の合計値及び無効電力の合計値を基に、複数の電力変換装置6のうち、運転指令を送信する電力変換装置6の台数を決定し、決定された所定の台数の電力変換装置6に運転指令を送信するとともに、残りの電力変換装置6に対して待機指令を送信する。
【0080】
これにより、本実施形態に係る蓄電システム2及び制御装置10では、電力系統PS(負荷)で必要となる電力の大きさによらず、複数の電力変換装置6の全てを動作させる制御方法と比べて、複数の電力変換装置6の動作にともなう電力の損失を抑制することができる。
【0081】
なお、上記実施形態では、電力系統PSを負荷とし、蓄電システム2を電力系統PSに適用した例を示している。蓄電システム2は、電力系統PSに限ることなく、例えば、電気機関車や電気自動車などの電動車両に適用してもよい。例えば、電動車両のモータを負荷として複数の電力変換装置6をモータに接続し、モータへの電力の供給、及びモータの回生エネルギによる複数の蓄電装置4の充電を行う場合に、上記の蓄電システム2を適用してもよい。蓄電システム2を適用する負荷は、電力系統PSや電動車両に限ることなく、負荷への電力の供給、及び負荷側の電力による複数の蓄電装置4の充電を行うことができる任意の負荷でよい。
【0082】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、蓄電システム2及び制御装置10に含まれる各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0083】
その他、本発明の実施の形態として上述した蓄電システム2及び制御装置10を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての蓄電システム及び制御装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0084】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。