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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】気化装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 3/04 20060101AFI20240529BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20240529BHJP
   F17C 9/02 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
F28D3/04
B63B25/16 D
F17C9/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019092417
(22)【出願日】2019-05-15
(65)【公開番号】P2020186867
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-05-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183369
【氏名又は名称】住友精密工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】外池 嘉朗
(72)【発明者】
【氏名】岡 勝
(72)【発明者】
【氏名】池末 俊一
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】実公平06-007277(JP,Y2)
【文献】特許第6053389(JP,B2)
【文献】実開昭62-056990(JP,U)
【文献】特開2015-178880(JP,A)
【文献】実公昭58-024078(JP,Y2)
【文献】特開2017-150784(JP,A)
【文献】特開平08-112081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 1/00 - 13/00
B63B 25/16
F17C 1/00 - 13/12
F28F 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に配列した複数の伝熱管によって構成されると共に、各伝熱管の内部を流れる液化ガスを気化させる熱交換パネルと、
前記熱交換パネルに対し、前記第1方向に直交する第2方向に隣接して配設されかつ、熱媒体を前記熱交換パネルの外表面へ流すトラフと、を備え、
前記トラフは前記第1方向に延びると共に、前記トラフの、前記熱交換パネルに対向する側壁には、その高さ方向の中間位置に、前記第1方向に延びるスリットが形成され、
前記トラフは、前記トラフ内へ前記熱媒体を供給する供給口と、前記供給口と前記側壁との間に配設されたバッフル板と、を有し、
前記バッフル板は、前記側壁に対し前記第2方向に間隔を空けて配設されかつ、前記第1方向に延びており、
前記トラフは、前記側壁と前記バッフル板との間の空間を、前記第1方向に複数に隔てるガイド板であって、前記供給口から、前記側壁と前記バッフル板との間の空間へ流れる熱媒体を、前記ガイド板によって隔てられた複数の空間のそれぞれに分配させるガイド板を有し、
トラフ内にたまった前記熱媒体は、前記バッフル板を迂回するように、前記スリットよりも下方の位置を通って前記供給口から前記スリットへと流れると共に、前記スリットを通じて、前記熱交換パネルの外表面へ流れる気化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の気化装置において、
前記トラフは、前記トラフ内の空間を前記第1方向に複数に分ける仕切板を有している気化装置。
【請求項3】
請求項1に記載の気化装置において、
前記トラフは、前記トラフ内の空間を前記第1方向に複数に分ける仕切板を有し、
前記ガイド板は、前記仕切板よりも数が多い気化装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の気化装置において、
前記トラフは、トラフ本体と、前記トラフ本体に着脱可能に取り付けられかつ、前記側壁の一部を構成する制限板とを有し、
前記スリットは、前記トラフ本体と前記制限板との間に形成されている気化装置。
【請求項5】
請求項4に記載の気化装置において、
前記スリットの上下の幅は、前記制限板の取付位置を変えることによって調節される気化装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の気化装置において、
前記気化装置は、水上の浮体に設置される気化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、気化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、船舶等に搭載される液化ガスの気化装置が記載されている。この気化装置は、いわゆるオープンラック式気化装置である。オープンラック式気化装置は、熱交換パネルとトラフとを備えている。熱交換パネルは、複数の伝熱管を第1方向に配列することによって構成されている。熱交換パネルは、各伝熱管の内部で液化ガスを気化させる。熱交換パネルは、第1方向に直交する第2方向に、並設されている。トラフは、隣り合う熱交換パネルと熱交換パネルとの間で、第1方向に延びている。トラフは、熱媒体を熱交換パネルの外表面に供給する。トラフ内の熱媒体は、その水面の高さがトラフ上端の開口部の縁よりも高くなることにより、開口部からオーバーフローする。
【0003】
特許文献1に記載された気化装置は、揺動する場所に設置されている。トラフは、開口部の縁よりも高い仕切板を中央に有している。この構成により、トラフは、第2方向に傾いた場合でも、熱媒体が開口部からオーバーフローし、熱交換パネルへ熱媒体を供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6053389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された気化装置はまた、第1方向、つまりトラフの長手方向に傾いた場合にも、熱交換パネルの全体に熱媒体を供給することができるよう、トラフの内部は、第1方向に複数に仕切られている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された気化装置は、第1方向に大きく傾くと、トラフの第1方向の端部において、熱媒体がオーバーフローし難くなる、又は、オーバーフローしなくなる懸念がある。
【0007】
ここに開示する技術は、気化装置が長手方向に傾いた場合でも、トラフの全体から熱交換パネルへ熱媒体を供給することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示する技術は、気化装置に関する。
【0009】
この気化装置は、
第1方向に配列した複数の伝熱管によって構成されると共に、各伝熱管の内部を流れる液化ガスを気化させる熱交換パネルと、
前記熱交換パネルに対し、前記第1方向に直交する第2方向に隣接して配設されかつ、熱媒体を前記熱交換パネルの外表面へ流すトラフと、を備え、
前記トラフは前記第1方向に延びると共に、前記トラフの、前記熱交換パネルに対向する側壁には、その高さ方向の中間位置に、前記第1方向に延びるスリットが形成され、
トラフ内にたまった前記熱媒体は、前記スリットを通じて、前記熱交換パネルの外表面へ流れる。
【0010】
この構成の気化装置によると、トラフの側壁の高さ方向の中間位置に、第1方向に延びるスリットが形成されている。トラフ内の水面の高さがスリットよりも高い位置にあれば、トラス内にたまった熱媒体はスリットを通じて、熱交換パネルの外表面へ流れる。熱交換パネルへの熱媒体の供給量は、スリットの上下の幅に対応する。尚、「中間位置」は、側壁の上端と下端との間の任意の位置であり、スリットは、熱交換パネルへ熱媒体を安定的に供給することができるように、適宜の高さに設ければよい。
【0011】
気化装置が第1方向に傾くと、トラフの第1方向の一方の端部は上に移動し、他方の端部は下に移動する。上に移動したトラフの端部において、トラフの側壁の上端と水面の高さとの高低差は小さくなる。しかしながら、このトラフは、熱媒体をオーバーフローさせる構成ではない。このトラフは、側壁の高さ方向の中間位置に形成したスリットを通じて、熱媒体を熱交換パネルに供給する。気化装置が第1方向に傾いた場合に、トラフ内の水面の高さがスリットよりも高い位置にあれば、熱媒体がスリットを通じて熱交換パネルの外表面へ流れる。このとき、熱媒体の供給量は、スリットの上下の幅に対応する量である。従って、前記の構成の気化装置は、第1方向に傾いた場合でも、熱交換パネルの第1方向の全体に亘って、熱媒体を均等に又は略均等に供給することができる。
【0012】
前記トラフは、前記トラフ内へ前記熱媒体を供給する供給口と、前記供給口と前記側壁との間に配設されたバッフル板と、を有し、
前記熱媒体は、前記バッフル板を迂回するように、前記スリットよりも下方の位置を通って前記供給口から前記スリットへと流れる。
【0013】
こうすることで、供給口からトラフ内へ供給された熱媒体は、バッフル板によって、スリットよりも下方の位置を通って、側壁とバッフル板との間の空間へと流れる。熱媒体がバッフル板を迂回する間に、熱媒体は第1方向に広がって流れる。熱媒体は、トラフ内で第1方向の全体に均等又は略均等に分配される。気化装置が水平の場合も、第1方向に傾いた場合も、トラフは、熱交換パネルの全体へ、熱媒体を均等又は略均等に流すことができる。
【0014】
前記バッフル板は、前記側壁に対し前記第2方向に間隔を空けて配設されかつ、前記第1方向に延びており、
前記トラフは、前記側壁と前記バッフル板との間の空間を、前記第1方向に複数に隔てるガイド板であって、前記供給口から、前記側壁と前記バッフル板との間の空間へ流れる熱媒体を、前記ガイド板によって隔てられた複数の空間のそれぞれに分配させるガイド板を有している。
【0015】
ここで、ガイド板は、当該ガイド板を挟んで隣り合う二つの空間同士を完全に分けてもよいし、二つの空間同士を完全には分けずに、一部が互いにつながるように二つの空間を隔ててもよい。
【0016】
スリットよりも下方の位置を通って、側壁とバッフル板との間の空間へと流れる熱媒体は、ガイド板によって隔てられた複数の空間のそれぞれに、均等又は略均等に分配される。トラフは、第1方向の全体に亘って均等又は略均等に、熱交換パネルへ熱媒体を供給することができる。
【0017】
また、気化装置が第1方向に傾いた場合に、ガイド板は、トラフ内で、熱媒体が第1方向へ流れることを妨げる。気化装置が第1方向に対して傾いた場合でも、トラフは、熱媒体を、熱交換パネルの第1方向の全体に亘って、均等又は略均等に流すことができる。
【0018】
前記トラフは、前記トラフ内の空間を前記第1方向に複数に分ける仕切板を有している、としてもよい。
【0019】
ここで、仕切板は、当該仕切板を挟んで隣り合う二つの空間同士を完全に分けることによって、仕切板を挟んだ空間と空間との間を熱媒体が第1方向に流れることを阻止するものとしてもよい。また、仕切板は、二つの空間同士を完全には分けずに、一部が互いにつながるように二つの空間を仕切ってもよい。
【0020】
トラフは、第1方向に長い。気化装置が第1方向に対して傾いた場合に、仕切板は、トラフ内で、熱媒体が第1方向へ流れることを阻止又は抑制する。熱媒体がトラフ内で第1方向の一方に偏ることが抑制される。仕切板によって複数に分けられたトラフは、熱交換パネルの第1方向の全体に亘って均等又は略均等に、熱媒体を供給することができる。
【0021】
前記ガイド板は、前記仕切板よりも数が多い、としてもよい。
【0022】
つまり、仕切板がトラフ内を複数の空間に分割し、ガイド板は、その複数の空間のそれぞれを、複数の空間にさらに隔ててもよい。トラフ内にガイド板と仕切板との両方を設けることにより、気化装置が第1方向に対して傾いた場合でも、熱媒体は、熱交換パネルの第1方向の全体に亘って、均等又は略均等に供給される。
【0023】
記トラフは、トラフ本体と、前記トラフ本体に着脱可能に取り付けられかつ、前記側壁の一部を構成する制限板とを有し、
前記スリットは、前記トラフ本体と前記制限板との間に形成されている、としてもよい
【0024】
熱媒体が海水である場合、海水中のゴミや貝殻等がスリットの一部を塞いでしまう場合がある。制限板をトラフ本体から取り外すことによって、ゴミ等を、容易に取り除くことができる。気化装置のメンテナンスが容易になる。
【0025】
前記スリットの上下の幅は、前記制限板の取付位置を変えることによって調節される、としてもよい。
【0026】
スリットの上下の幅の大きさを変えると、トラフから熱交換パネルへ熱媒体の供給量を調節することができる。また、熱媒体としての海水中にゴミ等が多く含まれる場合がある。気化装置の使用環境に応じてスリットの上下の幅を広くすると、ゴミ等がスリットを塞ぐことが抑制される。
【0027】
前記気化装置は、水上の浮体に設置される、としてもよい。
【0028】
前述したように、この気化装置は、長手方向に傾いた場合でも、トラフの全体から熱交換パネルへ熱媒体を供給することができるため、水上の浮体(船舶、及び、係留されたフロート等を含む)に設置される気化装置として好適である。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、前記の気化装置は、気化装置が傾いた場合でもトラフの全体から熱交換パネルへ熱媒体を流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、気化装置の全体構成を概略的に例示する斜視図である。
図2図2は、トラフの構成を例示する斜視図である。
図3図3は、トラフの平面図である。
図4図4は、トラフの側面図である。
図5図5は、トラフの一部破断の断面図である。
図6図6は、制限板の取付構造を例示する図である。
図7図7は、気化装置が第1方向に傾いた状態を例示する側面図である。
図8図8は、気化装置が第2方向に傾いた状態を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、気化装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ここで説明する気化装置は例示である。図1は、気化装置の全体構成を概略的に示している。気化装置は、いわゆるオープンラック式気化装置(Open Rack Vaporizer:ORV)1である。ORV1は、水上の浮体に設置される。ORV1は、例えば液化ガス運搬船に搭載される。ORV1は、運搬している液化ガスを、熱媒体としての海水と熱交換させることによって、気体ガスにする。ORV1はまた、FSRU(Floating Storage and Regasification Unit)や、FPSO(Floating Production, Storage and Offloading)に設置してもよい。
【0032】
ORV1は、複数の熱交換パネル2を備えている。図例では、熱交換パネル2は5枚である。尚、熱交換パネル2の枚数は、適宜の数にすればよい。各熱交換パネル2は、詳細な図示は省略するが、複数の伝熱管が、第1方向に配列されると共に、隣り合う伝熱管同士を互いに接合することによって構成されている。5枚の熱交換パネル2は、第1方向に直交する第2方向に、並んでいる。ここで、第1方向は、ORV1を搭載する船の船首と船尾とつなぐ方向に対応する。第2方向は、船の左舷と右舷とをつなぐ方向に対応する。
【0033】
各熱交換パネル2の下側には、下部ヘッダタンク21が配設されている。下部ヘッダタンク21は、一枚の熱交換パネル2に対して1本、設けられている。下部ヘッダタンク21は、第1方向に延びている。各伝熱管の下端は、下部ヘッダタンク21に接続されている。下部ヘッダタンク21は、液化ガスを各伝熱管へ分配する。第2方向に並んだ下部ヘッダタンク21の端は、第2方向に延びる入口マニホールド22に接続されている。入口マニホールド22は、各下部ヘッダタンク21へ液化ガスを分配する。
【0034】
液化ガスは、入口マニホールド22及び下部ヘッダタンク21を通じて各伝熱管に供給され、伝熱管内を下から上に流れる途中で気化する。
【0035】
各熱交換パネル2の上側には、上部ヘッダタンク23が配設されている。上部ヘッダタンク23は、一枚の熱交換パネル2に対して1本、設けられている。上部ヘッダタンク23は、第1方向に延びている。各伝熱管の上端は、上部ヘッダタンク23に接続されている。上部ヘッダタンク23は、気体ガスを各伝熱管から集合させる。第2方向に並んだ上部ヘッダタンク23の端は、第2方向に延びる出口マニホールド24に接続されている。出口マニホールド24は、各上部ヘッダタンク23から来たガスを集めて送り出す。
【0036】
尚、液化ガスは、上部ヘッダタンク23を通じて各伝熱管に供給し、伝熱管内を上から下に流れる途中で気化するようにしてもよい。
【0037】
各熱交換パネル2に対し、第2方向の両側には、トラフ3が配設されている。トラフ3は、海水をためると共に、ためた海水を熱交換パネル2の外表面へ流す。トラフ3は、熱交換パネル2の上部付近で、第1方向に延びている。
【0038】
図2は、トラフ3の全体構成を例示する斜視図である。図3は、トラフ3の平面図であり、図4は、トラフ3の側面図である。図5は、トラフ3の破断断面図である。尚、図5には、熱交換パネル2を二枚だけ図示し、二枚の熱交換パネル2に対応する三つのトラフ3を図示している。図5の左端のトラフ3は、図1において最も左奥に配設される、ORV1の端のトラフ3に相当し、図5の右端のトラフ3は、図1において最も右手前に配設される、ORV1の端のトラフ3に相当する。隣り合う熱交換パネル2と熱交換パネル2との間に配設されたトラフ3は、端に配設されたトラフ3を、二つ背中合わせにしたような断面形状を有している。
【0039】
トラフ3は、トラフ本体4と、トラフ本体4に取り付けられる制限板5とを有している。トラフ本体4は、底壁41と、二つの側壁42と、二つの端壁43とを有している。トラフ本体4は、上向きに開放されている。
【0040】
底壁41は、第1方向に延びている。側壁42は、底壁41の第2方向の縁につながっている。各側壁42は、第1方向に延びている。二つの側壁42は、第2方向に向かい合って配設されている。各側壁42は、熱交換パネル2に対向している。端壁43は、底壁41の第1方向の端につながっている。端壁43は、向かい合った二つの側壁42を互いにつないでいる。端壁43の高さは、側壁42の高さよりも高い。
【0041】
側壁42の上端には、エッジ部421が設けられている。エッジ部421は、側壁42の上部を、第2方向の外方へ折り返すことによって構成されている。エッジ部421は、斜め下向きに傾いている。エッジ部421は、第1方向に延びる側壁42の全体に亘って連続している。トラフ3内の海水は、熱交換パネル2へ向かってエッジ部421に沿って流れる。
【0042】
制限板5は、側壁42の上方に位置し、それによって、トラフ3の側部の一部分を構成している。制限板5は、第1方向に延びている。制限板5の第1方向の両端部は、折り曲げられている。制限板5の両端部はそれぞれ、端壁43に固定されている。制限板5は、端壁43に対しボルト51によって取り付けられている。制限板5は、トラフ本体4に対して着脱可能である。
【0043】
制限板5と側壁42との間には、隙間が設けられている。これによって、トラフ3の側壁には、その高さ方向の中間位置に、第1方向に延びるスリット52が形成されている。スリット52は、より詳細には、制限板5の上端から側壁42の下端までを全高としたトラフ3の側壁の、中央位置よりも上に位置している。尚、スリット52の高さ位置は、図例に限らず、適宜の位置にすることができる。また、スリット52は、トラフ3の、第1方向の端から端まで連続している。
【0044】
図6に示すように、制限板5を取り付けるためのボルト孔53は、上下方向に長い。制限板5は、トラフ本体4に対する取付位置を、上下方向に変更することが可能である。図6の左図に示すように、制限板5を下に取り付けるとスリット52の上下の幅W1が狭くなり、右図に示すように、制限板5を上に取り付けるとスリット52の上下の幅W2が広くなる。
【0045】
トラフ3内には、隔壁61が配設されている。隔壁61は、第2方向の中央位置で、第1方向に延びている。隔壁61は、底壁41に接している。隔壁61の高さは、端壁43の高さよりも高い。隔壁61は、トラフ3内を、第2方向に二つに分けている。詳細は後述するが、隔壁61は、気化装置1が第2方向に傾いた場合に、トラフ3の両側の熱交換パネル2へ、海水を安定的に供給することを可能にする。
【0046】
尚、図5に示すように、第2方向の端に配設されたトラフ3、つまり、図5の左端のトラフ3及び右端のトラフ3では、一方の側壁42が、端壁43の高さよりも高く構成されている。端壁43の高さよりも高い側壁42が、隔壁61と同様の機能を果たす。
【0047】
トラフ3内には、複数の仕切板62が配設されている。複数の仕切板62は、隔壁61によって分けられたトラフ3内の二つの空間のそれぞれにおいて、第1方向に等間隔で配設されている。各仕切板62は、底壁41、側壁42及び隔壁61のそれぞれに接している。各仕切板62の上端は、端壁43の上端と同じ、又は、ほぼ同じ高さに位置している。図例では、隔壁61によって分けられたトラフ3内の二つの空間のそれぞれにおいて、4枚の仕切板62が、トラフ3内を、第1方向に五つの空間に分けている。尚、仕切板62による第1方向の分割数は、五つに限らない。トラフ3内は、第1方向に適宜の数に分ければよい。また、トラフ3内は、第1方向に分けなくてもよい。仕切板62は省略することも可能である。
【0048】
トラフ3は、トラフ3内に海水を供給する供給口71を有している。供給口71は、隔壁61及び仕切板62によって分けられた合計10個の空間それぞれに、個別に設けられている。より詳細に、供給口71は、トラフ3内に配設された分配管72に設けられている。分配管72は、両端が閉じた管によって構成されている。分配管72は、隔壁61よって分けられた二つの空間のそれぞれにおいて、第1方向に延びて配設されている。分配管72は、仕切板62を貫通している。分配管72の所定の位置に設けられた供給口71は、第1方向に分けられた各空間内に位置している。供給口71は、分配管72の下部に形成されかつ、下向きに開口している。
【0049】
各分配管72には、詳細な図示は省略するが、供給管73が接続されている(図1も参照)。供給管73を通じて各分配管72に供給された海水は、各供給口71を通じて、トラフ3内に噴出する。
【0050】
供給口71と側壁42との間には、バッフル板81が介設されている。バッフル板81は、トラフ3内の海水の流れを制限する。具体的に、バッフル板81は、側壁42に対し第2方向に所定の間隔を空けて、側壁42と平行に配設されている。バッフル板81の下端は、トラフ3の底壁41から離れている。バッフル板81の下端は、スリット52よりも下方に位置している。図5に矢印で示すように、海水は、バッフル板81を迂回するように流れる。より具体的に、海水は、スリット52よりも下方の位置を通って、供給口71から、側壁42とバッフル板81との間の空間内へと流れる。
【0051】
側壁42とバッフル板81との間の空間内には、ガイド板82が配設されている。ガイド板82は、側壁42とバッフル板81との間の空間を、第1方向に複数に隔てる。図例では、仕切板62によって分けられた各空間において、4つのガイド板82が第1方向に等間隔を空けて配設されている。当該空間は、ガイド板82によって五つに隔てられている。ガイド板82は、仕切板62よりも数が多い。
【0052】
各ガイド板82は、バッフル板81に固定されていると共に、制限板5に固定されている。バッフル板81は、ガイド板82を介して、制限板5に固定されている。
【0053】
ガイド板82の下端は、図例では、バッフル板81の下端と同じ位置に設定されている。ガイド板82は、トラフ3の底壁41の近くでは、ガイド板82を挟んで隣り合う二つの空間を隔てていない。尚、図示は省略するが、ガイド板82の下端は、トラフ3の底壁41に当たっていてもよい。
【0054】
前述したように、海水は、バッフル板81を迂回するように、スリット52よりも下方の位置を通って供給口71から、側壁42とバッフル板81との間の空間へと流れる。ガイド板82は、側壁42とバッフル板81との間の空間において、海水をガイド板82によって隔てられた各空間に均等又は略均等に分配する。
【0055】
ガイド板82の上端は、バッフル板81の上端と制限板5の上端とをつなぐように、斜めに傾いている。尚、図例とは異なり、ガイド板82の上端を真っ直ぐ水平に形成してもよい。
【0056】
制限板5、バッフル板81及びガイド板82は互いに固定されることで一体化している。第1方向に長い制限板5及びバッフル板81の剛性が高まる。
【0057】
また、制限板5は、トラフ本体4に対して着脱可能に取り付けられている。制限板5をトラフ本体4から取り外すと、制限板5、バッフル板81及びガイド板82をトラフ本体4から取り外すことができる(図4及び図5の一点鎖線参照)。後述するように、トラフ3内にたまった海水は、スリット52を通じて流れるが、海水に含まれるゴミや貝殻等によってスリット52が塞がってしまう場合がある。制限板5、バッフル板81及びガイド板82をトラフ本体4から取り外すことによって、作業者は、スリット52に溜まったゴミ等を容易に取り除くことができる。制限板5、バッフル板81及びガイド板82の取り外し構成は、トラフ3のメンテナンス性能を向上させる。
【0058】
前述した構成のトラフ3は、トラフ3内にたまった海水を、側壁42の中間位置に設けたスリット52を通じて、熱交換パネル2の外表面へ供給する。海水は、図5に例示するように、エッジ部421に沿って、熱交換パネル2の外表面に向かって流れる。スリット52は、第1方向に、同じ幅で延びている。トラフ3は、熱交換パネル2の第1方向の全体に亘って、海水を均等又は略均等に供給することができる。
【0059】
ORV1は、この構成例では船に搭載されているため、風や波の影響を受けて、船がピッチング方向に揺れると、ORV1は第1方向に傾き、船がローリング方向に揺れると、ORV1は第2方向に傾く。図7に例示するように、ORV1が第1方向に傾くことに伴いトラフ3が第1方向に傾くと(図7のθ参照)、トラフ3の第1方向の一方の端部は上へ移動し、他方の端部は下へ移動する。
【0060】
従来のトラフは、海水を側壁の上端から溢れさせるため、トラフ3が第1方向に傾くことによって、側壁の上端が水面に対して相対的に上方へ移動すると、側壁の上端と水面の高さとの高低差が小さくなるため、海水が溢れなくなる、又は、溢れにくくなる。
【0061】
これに対し、前述した構成のトラフ3は、側壁42の中間位置に設けたスリット52を通じて、熱交換パネル2の外表面へ海水を供給する。トラフ3が第1方向に傾いても、図7に二点鎖線で例示するように、トラフ3内の水面WLの高さがスリット52よりも高い位置にあれば、スリット52の上下の幅に対応する量の海水を、第1方向の全体に亘って熱交換パネル2へ供給することができる。ORV1の一部に海水が供給されなくなる事態を避けることができ、ORV1は、液化ガスを良好に気化させることができる。
【0062】
ここで、船に搭載されたORV1は、例えば船の停泊中に稼働する。停泊中の船は、ピッチング方向の揺動角度が比較的小さい。トラフ3が第1方向に傾く角度θは、例えば数°程度である。また、前述したように、トラフ3は、仕切板62によって、第1方向に複数に分かれている。これにより、トラフ3が第1方向に傾いた場合でも、仕切板62によって分割された各空間での水面の高さがスリット52よりも低い位置になることは抑制される。トラフ3は、第1方向の全体に亘って、海水を、熱交換パネル2へ流すことができる。
【0063】
また、側壁42とバッフル板81との間に、複数のガイド板82を設けているため、トラフ3が第1方向に傾いた場合に、側壁42とバッフル板81との間の空間において、海水が第1方向に流れることがガイド板82によって阻害される。トラフ3は、熱交換パネル2の第1方向の全体に亘って均等又は略均等に、海水を供給することができる。
【0064】
また、バッフル板81がトラフ3内で海水の流れを制限することにより、供給口71からトラフ3内へ供給された海水を、トラフ3内で第1方向に均等又は略均等に分配することができる。トラフ3内で海水の偏りが抑制される結果、トラフ3が水平の場合も、傾いている場合も、海水は、スリット52を通じて、熱交換パネル2の第1方向に亘って、均等又は略均等に流れる。
【0065】
側壁42とバッフル板81との間のガイド板82は、トラフ3が第1方向に傾いた場合に海水の移動を阻止する以外にも、バッフル板81を迂回して側壁42とバッフル板81との間の空間へと流れる海水を、第1方向に均等又は略均等に分配することにも寄与する。
【0066】
また、第1方向に長いトラフ3を第1方向に複数に仕切る仕切板62と、仕切板62によって仕切られた空間内を、さらに複数に隔てるガイド板82と、をトラフ3に設けることにより、トラフ3が水平の場合も、第1方向に傾いた場合も、海水を、熱交換パネル2の第1方向の全体に亘って、均等又は略均等に供給することができる。
【0067】
また、制限板5の取付位置を変更することによりスリット52の上下の幅の大きさを変えると、トラフ3から熱交換パネル2への海水の供給量を、容易に調節することができる。
【0068】
また、スリット52の上下の幅を広くすると、海水に含まれるゴミ等がスリット52を塞いでしまうことを抑制することができる。ORV1の使用環境に応じてスリット52の上下の幅を変更することにより、ORV1を安定的に稼働することができる。
【0069】
さらに、トラフ3が、高さの高い隔壁61によって第2方向に二つに分かれているため、図8に示すように、ORV1が第2方向に傾いたときに、トラフ3の両側の熱交換パネル2へ海水を供給することができる。停泊中の船のローリング角度は、ピッチング角度よりも大きくなりやすいが、前記の構成のトラフ3は、船が比較的大きな角度でローリングしても、トラフ3の両側の熱交換パネル2への海水の供給を継続することができる。
【0070】
尚、図示は省略するが、第2方向の端に位置するトラフ3は、高さの高い側壁42によって、ORV1が第2方向に傾いたときに、トラフ3の側方の熱交換パネル2へ海水を供給することができる。高さの高い側壁42は、隔壁61と同じ機能を発揮する。
【0071】
尚、気化装置1の構成は、前述したORV1の構成に限らない。例えば、隔壁61及び/又は仕切板62によって分かれたトラフ3内の各空間に海水を供給する機構としては、前述した分配管72をトラフ3内に設ける以外の構成であってもよい。例えば、トラフ3内の各空間に、供給管を個別に接続してもよい。
【0072】
また、ガイド板82の数は、前述した構成例に限らない。ガイド板82は適宜の数とすればよい。また、ガイド板82は省略してもよい。
【0073】
さらに、バッフル板81は、省略することも可能である。
【0074】
スリット52は、トラフ3の第1方向の端から端まで連続していなくてもよい。スリットは、第1方向に複数に分割されていてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 ORV(気化装置)
2 熱交換パネル
3 トラフ
4 トラフ本体
42 側壁
5 制限板
52 スリット
62 仕切板
71 供給口
81 バッフル板
82 ガイド板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8