IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ネクサンの特許一覧

<>
  • 特許-可撓性真空断熱ライン 図1
  • 特許-可撓性真空断熱ライン 図2
  • 特許-可撓性真空断熱ライン 図3
  • 特許-可撓性真空断熱ライン 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】可撓性真空断熱ライン
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/153 20060101AFI20240529BHJP
   F16L 59/065 20060101ALI20240529BHJP
   F16L 11/18 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
F16L59/153
F16L59/065
F16L11/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019225688
(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公開番号】P2020101280
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】18306734.7
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501044725
【氏名又は名称】ネクサン
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】エルラー ユルゲン
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-138585(JP,A)
【文献】米国特許第03240234(US,A)
【文献】特開2000-146083(JP,A)
【文献】特開平03-194298(JP,A)
【文献】米国特許第04984605(US,A)
【文献】国際公開第2013/120459(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/153
F16L 59/065
F16L 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空の中間空間(103)によって互いから分離される内側コルゲートホース及び外側コルゲートホース(101、102)を有する真空断熱ライン(100)であって、前記コルゲートホース(101、102)の1つは、軸方向に引張抵抗性及び圧縮抵抗性がある補強ホース(201、300)で覆われ、前記補強ホース(300)は、互いに対して移動可能な相互接続されるプラスチック要素(301)から構成されることを特徴とする、真空断熱ライン。
【請求項2】
前記コルゲートホース(101、102)は、周方向に波形であり且つ可撓性があるよう設計されることを特徴とする、請求項1に記載のライン。
【請求項3】
前記補強ホース(201、300)は可撓性であるよう設計されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のライン。
【請求項4】
前記内側コルゲートホース及び外側コルゲートホース(101、102)は、それらの端部において真空気密で互いに溶接されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のライン。
【請求項5】
前記内側コルゲートホース及び外側コルゲートホース(101、102)のどちらか一方は前記補強ホース(201、300)で覆われるのに対して、他方のコルゲートホースはメッシュ(108、109)で覆われることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のライン。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のライン(200)を有する低温流体用の充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内側コルゲートホース及び外側コルゲートホースを有する真空断熱ラインに関する。本発明は、また、真空断熱ラインを有する充填ステーションにも関する。
【背景技術】
【0002】
過冷却(低温)媒体を輸送するための真空断熱ラインは、通常、金属製の内側コルゲートホース及び外側コルゲートホースを備えている。内側コルゲートホース及び外側コルゲートホース間の中間空間は、ラインを介した低温媒体の輸送中に、低温媒体が可能な限り熱を吸収しないように、極めて良好な断熱を達成するために真空にされる。加えて、内側コルゲートホースは、一般に、超断熱材により覆われており、スペーサによって外側コルゲートホース内の中央に保持されている。
【0003】
コルゲートホースは軸方向に可撓性があるため、内側パイプを通って輸送される低温媒体の圧力がラインの伸長を引き起こす。かかる伸長は、ラインの制御されない動きにつながる可能性があり、それはライン又はラインに当接する物体に損傷を与える可能性があるため、基本的に望ましくない。過度の伸長を防ぐために、内側及び/又は外側のコルゲートホースをメッシュで覆うことが公知である。メッシュは張力に強く、ラインの伸長を制限する。しかし、メッシュは引張力のみを吸収できるが、圧縮力は吸収できず、これは、真空断熱ラインの製造中に、内側コルゲートホースと外側コルゲートホースとの間の中間空間が真空にされると、ラインは初期状態で短くなるという影響がある。動作中に媒体が圧力下でラインを介して輸送されると、真空断熱ラインは再度伸長するが、これはメッシュがその最大長に達するまで、そこで生じる張力を初期状態で吸収しないためである。
【0004】
メッシュを備えた真空断熱ラインの場合、媒体が圧力下でラインを介して輸送される場合、長さの拡大は制限されるが、長さの拡大は完全には抑制されない。ここで、メッシュが内側コルゲートホース上に配置されているか、外側コルゲートホース上に配置されているかは重要ではない。内側コルゲートホース及び外側コルゲートホースの両方がメッシュで覆われていたとしても、説明する特性は基本的に変わらない。
【0005】
これから進めて、本発明は、導入部分で述べた問題のうちの1つ以上を克服するか、又は少なくとも軽減するための真空断熱ラインを作成する目的に基づいている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、第1の態様によって、真空の中間空間によって互いから分離される内側コルゲートホース及び外側コルゲートホースを有する真空断熱ラインを提案する。コルゲートホースの1つは、軸方向に引張抵抗性及び/又は圧縮抵抗性がある補強ホースで覆われている。
【0007】
有利な実施形態において、補強ホースは巻回ホースとして設計されている。別の有利な実施形態において、補強ホースは、互いに対して移動可能な相互接続されるプラスチック要素から構成される。巻回ホースと同様に、相互接続されるプラスチック要素から構成される補強ホースは、軸方向に引張抵抗性及び/又は圧縮抵抗性がある。プラスチック製の補強ホースは、例えば、爆発の危険性が増大するために火花の形成を防ぐ必要がある場合はどこでも有利である。
【0008】
補強ホース又は巻回ホースにより、ラインの機械的特性は改善され、例えば、巻回ホースは、外部からの機械的荷重又は損傷からラインを保護する。巻回ホースは、同時に、過度の曲げに対してコルゲートホースを保護するための手段として機能する。同じ利点は、巻回ホースと同様に相互接続されるプラスチック要素で構成された補強ホースでも実現され、利点は、2つの実施形態の場合において僅かに異なる程度で達成されてもよい。
【0009】
全ての実施形態は、真空断熱ラインが、媒体の輸送中に内部で圧力が印加される場合に、その長さが著しく変化しないという事実を共通して有している。特に、巻回ホースにより、ラインに圧力が印加される場合のラインの伸長は完全に防ぐことができる。
【0010】
コルゲートホースは、有利には、周方向に波形であり且つ可撓性があるように設計されている。
【0011】
補強ホースはまた、可撓性があるよう設計されていると好都合である。補強ホースの可撓性は、真空断熱ライン全体が可撓性を維持し、それぞれの使用場所において簡単に引き回すことができることを保証する。
【0012】
例示的な一実施形態において、巻回ホースは相互接続される金属ストリップから構成される。かかる巻回ホースは、機械的に安定しており、安価に作製できる。
【0013】
内側及び外側のコルゲートホースは、それらの端部において真空気密で互いに溶接されることが便宜上可能である。
【0014】
ラインの更なる例示的な実施形態において、内側又は外側コルゲートホースのどちらか一方は補強ホースで覆われるのに対して、他方のコルゲートホースはメッシュで覆われる。この例示的な実施形態において、従来の方法では、外側コルゲートホースに補強ホースが巻回されているが、これは、横方向圧縮負荷支持能力に対する優れた機械的保護がこのようにして同時に達成されるためである。しかし、補強ホースは基本的に内側コルゲートホース上に配置されてもよい。両変形例は、圧力下で媒体を輸送する場合にそれらの長さが大幅に変化しないという共通の特性を有している。
【0015】
第2の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様によるラインを有する低温流体用の充填装置を提案する。充填装置は、低温流体を輸送する目的でラインに圧力が印加されている場合に、ラインの伸長に起因する問題を回避する。
【0016】
本発明を、実施形態に基づく実施例により、また、添付図面を参照して、以下でより詳細に検討する。全ての図は単なる略図であり、縮尺通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、従来の真空断熱ラインの異なる状態を示す。
図2図2は、本発明による真空断熱ラインを示す。
図3図3は、相互接続されるプラスチック要素で構成されるホースを示す。
図4図4は、コルゲートホース上でのメッシュの固定を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図中、同一又は類似の要素は、同一又は類似の参照符号で示す。
【0019】
図1のaは、中間空間103によって互いに分離される内側コルゲートホース101及び外側コルゲートホース102を有するライン100を断面で示している。内側コルゲートホース101は、超断熱材で覆われており、スペーサによって外側コルゲートホース102内の中央に保持されている。明確にするため、図1のaには超断熱材及びスペーサを図示していない。コルゲートホース101、102は、周方向に波形を付けており、従って、それらの長手方向範囲に対して横方向に可撓性を有し、軸方向に伸張可能である。
【0020】
それぞれの端部において、コルゲートホース101、102は、中間空間103の真空引きに必要な小型フランジ106を除いて、真空気密で互いに溶接されている。コルゲートホース101、102は、鋼線製の引張抵抗メッシュ108、109で覆われ、内側コルゲートホース及び外側コルゲートホース101、102のそれぞれの端部においてそれらに固定されている。メッシュは、通常、リング401(図4)と共にコルゲートホースの円筒形端部コネクタ402(図4)に溶接されている。他の例示的な実施形態において、前記メッシュは、例えば、締付リング(図示せず)により固定されてもよい。他の例示的な実施形態において、内側コルゲートホース101のみ又は外側コルゲートホース102のみがメッシュ108又は109で覆われる。この場合、メッシュは、単一のメッシュのみが作用する力を吸収できるように設計されている。
【0021】
使用状況に応じて、ライン100を接続点又は追加的なラインに接続するための接続フランジがライン100の両端に溶接される。必要に応じて、継手がライン100の一方又は両方の端部に取り付けられる。これは、例えば、QCDC継手(「クイック接続/切断カプラ」)又はジョンストン継手であってもよい。コルゲートホース101、102は耐錆鋼から製造される。接続フランジ又は継手は図に示していない。
【0022】
図1のaは、中間空間103がまだ真空にされていない場合の組み立てられたラインを示している。この状態において、コルゲートホース101、102及びメッシュ108、109は緩和状態にある。ライン100はこの状態で長さLを有している。
【0023】
ラインの作製を完了するため、中間空間103は真空断熱材を作製するために真空にされる。この目的のために、装置は、小型フランジ106が位置するライン100のその端部に取り付けられる。装置は、第1に、中間空間103を真空にする真空ポンプを接続することを可能にする。第2に、装置は、閉鎖プラグ107(図1のb)を小型フランジ106にねじ込み式に取り付けることを可能にし、閉鎖プラグは、特にポンプがまだ接続され、動作している間に、真空気密に中間空間103を閉鎖する。次いで、小型フランジ106は、中間空間103内の圧力が所定値まで降下すると閉鎖される。
【0024】
中間空間103のポンプ排気中に、既にライン100は、図1のbに示すように、大気圧の影響下で長さLまで軸方向に短くなる。径方向において、コルゲートホース101、102は圧力下で略安定しており、従って径方向に変形しない。ここで、メッシュ108、109は圧壊し、顕著な対抗力は生じない。
【0025】
図1のcは、動作中のライン100を示し、前記ラインは、内側コルゲートホース101の内部空間111内において圧力下で媒体を輸送している。ここで、ライン100は軸方向に長さLまで拡大し、これはメッシュ108、109によって許容される最大長さ拡大によって制限される。
【0026】
例えば、タンク充填プロセスが終了したために、ライン100内部の圧力が再び低下した場合、ラインは再度長さLまで短くなる(図1のb)。2つの状態間の長さの差は、ΔL=L-Lとなる。
【0027】
ライン100の可撓性は、とりわけ、波形の間隔及びコルゲートホース101、102の波形深さに依存する。ライン100の特定の例示的な一実施形態は、実際には以下の値を有している。
【0028】
=10m;L=9.6m及びL=10.1m。従って、コルゲートホース101、102間の中間空間の真空引きは4%のライン短縮をもたらす。また、長さの増加はライン100の内圧にも依存することにも留意されたい。
【0029】
ライン100の直径は、例えば、0.1m~0.2mであってもよい。
【0030】
2つの固定点間での媒体の輸送に対して、実際には複数のラインが互いに接続されているのが一般的である。例えば、多数のN本のラインが互いに接続されている場合、ライン全体の全長はN×Lであり、動作中に全長はN×Lに増加する。従って、2つの状態間の長さの変化はN×ΔLであり、導入部で説明した問題を引き起こす可能性がある。
【0031】
従って、図2に示す本発明によるライン200の例示的な実施形態において、外側コルゲートホース102上の少なくともメッシュが、軸方向に引張抵抗性及び圧縮抵抗性の両方がある巻回ホース201で置き換えられる場合がある。
【0032】
図2の拡大詳細図は、一方が他方の内側に被嵌される折り畳まれた金属ストリップ202から作製される巻回ホース201の詳細を示している。折り重なりの長さは、金属ストリップ202が軸方向で互いに対して変位できないように寸法決めされている。このようにして、巻回ホースは軸方向に引張抵抗性及び圧縮抵抗性がある。巻回ホース201は、いずれの場合も径方向に圧縮抵抗性がある。内側コルゲートホース101はメッシュ108で覆われている。
【0033】
巻回ホース201は、金属、例えば、高級鋼、アルミニウム、又はアルミニウム合金から作製される。巻回ホースの軸方向引張抵抗性及び圧縮抵抗性が確保されている限り、金属及びプラスチックの材料組み合わせが基本的に用いられてもよい。従って、巻回ホース201で覆われたライン200は、図1のa~cに関連して説明した全ての状況において常に同じ長さLを維持する。言い換えると、ライン200の長さの変化は、異なる動作状況において発生しない。従って、長さの変更に関連する全ての潜在的な危険も最初から防止される。
【0034】
外側コルゲートホース102上の巻回ホース201は外部からの影響に対する極めて良好な機械的保護を同時に形成するが、これは、巻回ホース201もとりわけ極めて良好な横方向圧縮負荷支持能力を有するためである。
【0035】
その形態により、巻回ホース201は過度に曲がることもできない。従って、それは同時に、過度の曲げに対してコルゲートホース101、102を保護するための手段としても機能する。
【0036】
別の例示的な実施形態において、金属で構成される巻回ホースの代わりに、プラスチックで構成される対応する設計要素を用いてもよく、これらの要素は、その設計により巻回ホースの機能を果たす。
【0037】
他の例示的な実施形態において、内側コルゲートホースを覆うメッシュ108も、巻きホースに置き換えられる。
【0038】
しかし、全ての例示的な実施形態において、内側コルゲートホース及び外側コルゲートホース101、102の両方を巻回ホースで置き換えることはできず、何故なら、巻回ホースは中間空間103内を真空に制限するために必要な密封作用を持たないためである。
【0039】
図3は、互いにねじ留めされるプラスチック要素から構成される補強ホース300を示している。プラスチック要素は互いにねじ留めされるハーフシェル301を形成する。図3は、ハーフシェル301の平面図である。ハーフシェル301は、略S字形であり、一端に外向きの突出部302を有し、反対側の端に内向きの突出部303を有している。ハーフシェルは、突出部302、303が互いに係合するように、一方を他方の内側に配置している。各ハーフシェル301は、円形断面を有する環状体が形成されるように、固定点304a~304cにおいて第2のハーフシェル301にねじ留めされる。補強ホース300は、このようにして、多数の互いにねじ留めされるハーフシェル301から形成される。補強ホース300は、その長手方向に対して横方向に可撓性があるように設計されている。この目的のために、ある程度の遊びSが突出部302、303と中央ウェブ306との間に存在し、その遊びの程度は図3において矢印よって示されている。遊びの程度Sは補強ホース300にある程度の可撓性を与えるために必要である。しかし、遊びの程度Sは、補強ホース300も軸方向に伸長するという効果も有している。しかし、前記伸長は遊びの程度Sによって制限され、遊びの程度Sの対応する寸法によって設定することができる。
【0040】
ハーフシェル301の端部が球形である場合、冷却液ホース又は連接ホースにおける状況と同様に、基本的に望ましくない軸方向の動きは大幅に低減される。
【0041】
ホース300は、また、ライン100の過度の曲げに対して保護することに役立つ。
【0042】
図4は、一例として、外側コルゲートホース102上のメッシュ109の固定を示している。内側コルゲートホース上のメッシュ108の固定は、同様の方法で実現される。
【0043】
外側コルゲートホース102は、図4の上部において一点鎖線IV-IVより上の断面に示している。メッシュ109及びコルゲートホース102の平面図は、図4の下部において一点鎖線IV-IVより下に示している。メッシュ109は、それぞれの場合において、コルゲートホース102の円筒形端部コネクタ402上で1つのリング401と共に溶接されている。
【符号の説明】
【0044】
100 ライン
101 内側コルゲートホース
102 外側コルゲートホース
103 中間空間
106 小型フランジ
107 閉鎖プラグ
108 メッシュ
109 メッシュ
200 ライン
201 巻回ホース
202 金属ストリップ
300 ホース
301 ハーフシェル
302 突出部
303 突出部
304a~304c 固定点
306 中央ウェブ
401 リング
402 端部コネクタ
図1
図2
図3
図4