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特許7495792ポジションセンサ及びポジション検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】ポジションセンサ及びポジション検出方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 9/02 20060101AFI20240529BHJP
   F02D 11/10 20060101ALI20240529BHJP
   B60K 26/02 20060101ALI20240529BHJP
   B62K 23/04 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
F02D9/02 341C
F02D9/02 351B
F02D11/10 Q
B60K26/02
B62K23/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020022978
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021127725
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000222934
【氏名又は名称】東洋電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】岸 昇示
(72)【発明者】
【氏名】吉田 聖哉
(72)【発明者】
【氏名】大谷 貴之
(72)【発明者】
【氏名】村田 敏一
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-042907(JP,A)
【文献】国際公開第2018/173254(WO,A1)
【文献】特開2012-117377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/00-11/10
B60K 25/00-28/16
B62K 23/04
G01B 7/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体と共に移動する磁石と、
前記磁石から生じる磁束を検出する磁気センサと、
前記磁石から生じる磁束を検出する、前記磁気センサとは異なる他の磁気センサと、
前記磁気センサによる第一検出値と前記他の磁気センサによる第二検出値とに基づいて、前記磁気センサの異常を検知する検知手段と、
を備え、
前記磁気センサは、前記移動体の位置に応じて予め設定された軌跡上の値をとる前記第一検出値を検出するよう設定されると共に、前記軌跡は、前記移動体の移動範囲内に設定された複数の区間ごとに、前記移動体の位置の変化に応じた前記第一検出値の変化率が異なるよう設定されており、
前記他の磁気センサは、前記移動体の位置に応じて予め設定された前記軌跡とは一致しない第二軌跡上の値をとる前記第二検出値を検出するよう設定されると共に、前記第二軌跡における前記移動体の位置の変化に応じた前記第二検出値の変化率は、前記区間ごとに、前記軌跡における前記第一検出値の変化率と予め設定された関係性を有するよう設定されており、
前記検知手段は、前記第一検出値と前記第二検出値との間の予め設定された関係性が変化した場合に、前記磁気センサの異常を検知する、
ポジションセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のポジションセンサであって、
前記第二軌跡は、前記区間ごとに、前記第二検出値の変化率が前記第一検出値の変化率と同一となるよう設定されている、
ポジションセンサ。
【請求項3】
請求項1に記載のポジションセンサであって、
前記第二軌跡は、前記軌跡と平行に設定されている、
ポジションセンサ。
【請求項4】
請求項1に記載のポジションセンサであって、
前記移動体は回転体であり、
前記磁気センサは、前記回転体の回転角度に応じて前記軌跡上の値をとる前記第一検出値を検出するよう設定されると共に、前記軌跡は、前記回転体の回転範囲内に設定された複数の区間ごとに、前記回転体の回転角度の変化に応じた前記第一検出値の変化率が異なるよう設定されており、
前記他の磁気センサは、前記回転体の回転角度に応じて前記第二軌跡をとる前記第二検出値を検出するよう設定されている、
ポジションセンサ。
【請求項5】
請求項4に記載のポジションセンサであって、
前記区間として、少なくとも、前記回転体の特定の回転位置を基準とした一方向の回転角度の範囲と、前記特定の回転位置を基準とした前記一方向と反対回転方向の回転角度の範囲と、が設定されており、
前記軌跡と前記第二軌跡とは、前記区間ごとに、前記第一検出値の変化率と前記第二検出値の変化率とが同一となるよう設定されている、
ポジションセンサ。
【請求項6】
請求項5に記載のポジションセンサであって、
前記軌跡と前記第二軌跡とは、前記区間ごとに、前記第一検出値の変化率と前記第二検出値の変化率とが変化する変化点を有するよう設定されている、
ポジションセンサ。
【請求項7】
請求項に記載のポジションセンサであって、
前記第一検出値と前記第二検出値とのいずれか一方に基づいて、前記区間ごとにおける前記回転体の回転角度を検出する検出手段を備えた、
ポジションセンサ。
【請求項8】
請求項4乃至のいずれかに記載のポジションセンサであって、
前記回転体は、車両のスロットルグリップである、
ポジションセンサ。
【請求項9】
移動体と共に移動する磁石から生じる磁束を検出する磁気センサと、前記磁石から生じる磁束を検出する前記磁気センサとは異なる他の磁気センサと、を備えたポジションセンサによるポジション検出方法であって、
前記磁気センサは、前記移動体の位置に応じて予め設定された軌跡上の値をとる第一検出値を検出するよう設定されると共に、前記軌跡は、前記移動体の移動範囲内に設定された複数の区間ごとに、前記移動体の位置の変化に応じた前記第一検出値の変化率が異なるよう設定されており、
前記他の磁気センサは、前記移動体の位置に応じて予め設定された前記軌跡とは一致しない第二軌跡上の値をとる第二検出値を検出するよう設定されると共に、前記第二軌跡における前記移動体の位置の変化に応じた前記第二検出値の変化率は、前記区間ごとに、前記軌跡における前記第一検出値の変化率と予め設定された関係性を有するよう設定されており、
検知手段が、前記第一検出値と前記第二検出値との間の予め設定された関係性が変化した場合に、前記磁気センサの異常を検知する、
ポジション検出方法。
【請求項10】
請求項に記載のポジション検出方法あって、
前記第二軌跡は、前記区間ごとに、前記第二検出値の変化率が前記磁気センサによる前記第一検出値の変化率と同一となるよう設定されている、
ポジション検出方法。
【請求項11】
請求項に記載のポジション検出方法であって、
前記第二軌跡は、前記軌跡と平行に設定されている、
ポジション検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体のポジションを検出するポジションセンサ及びポジション検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車では、運転者が主にスロットルグリップを回転させることで、アクセル開度を調整してアクセル操作を行う。そして、アクセル開度の検出は、スロットルグリップの回転角度を検出することで行われるが、近年では、スロットルグリップと共に回転する磁石から生じる磁束を磁気センサによって検出することで行われることが多々ある。
【0003】
ここで、特許文献1には、磁気センサを用いてアクセル開度を検出するアクセル開度検出装置の一例が開示されている。特許文献1に開示のアクセル開度検出装置は、ハンドルグリップの回転角度を検知する第一センサと第二センサとからなるアクセル開度センサを備えている。そして、かかるアクセル開度検出装置では、第一センサと第二センサからの出力に基づいて、ハンドルグリップの正転方向の角度と、逆転方向の角度と、中立位置と、を検出している。具体的に、アクセル開度検出装置では、第一センサの出力電圧の上昇開始開度と第二センサの出力電圧の上昇開始開度とを異ならせており、これにより、第一センサの出力電圧から正転方向における角度を検出し、第二センサの出力電圧から逆転方向における角度を検出している。このように、特許文献1のアクセル開度検出装置は、正転方向及び逆転方向といった、ハンドルグリップの複数の回転範囲において角度を検出可能な構成となっている。
【0004】
また、特許文献1のアクセル開度検出装置は、第一センサと第二センサからの出力に基づいて、センサの異常を検知する機能も備えている。具体的に、アクセル開度検出装置では、第一センサの出力電圧である第一電圧と第二センサの出力電圧である第二電圧との初期値やハンドルグリップの角度に応じた変化を表す勾配を異ならせて設定しており、第一電圧が第二電圧よりも低くなる場合に、センサに異常が発生したことを検知することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/173254号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1のアクセル開度検出装置では、センサに異常が発生したことを検知できない場合が生じうる。例えば、第一センサと第二センサとが同時に外部磁界の影響を受けた場合や、第二センサのみに異常が発生した場合には、第一電圧が第二電圧よりも低くなることとならず、センサの異常の発生を検知することができない。そして、上記アクセル開度検出装置の原理を、回転角度を検出するハンドルグリップに限らず、検出対象物となる移動体の複数の移動範囲においてそれぞれ位置を検出するよう構成されたポジションセンサに適用した場合にも、上述同様にセンサの異常の発生を検知することができない。
【0007】
このため、本発明の目的は、上述した課題である、移動体の複数の移動範囲において位置を検出可能なポジションセンサにおける異常の発生を検知できないこと、を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態であるポジションセンサは、
移動体と共に移動する磁石と、
前記磁石から生じる磁束を検出する磁気センサと、
前記磁気センサによる検出値に基づいて、当該磁気センサの異常を検知する検知手段と、
を備え、
前記磁気センサは、前記移動体の位置に応じて予め設定された軌跡上の値をとる前記検出値を検出するよう設定されると共に、前記軌跡は、前記移動体の移動範囲内に設定された複数の区間ごとに、前記移動体の位置の変化に応じた前記検出値の変化率が異なるよう設定されており、
前記検知手段は、前記検出値と、前記軌跡に対応する値である比較値と、の間の関係性に基づいて、前記磁気センサの異常を検知する、
という構成をとる。
【0009】
また、本発明の一形態であるポジション検出方法は、
移動体と共に移動する磁石から生じる磁束を検出する磁気センサを備えたポジションセンサによるポジション検出方法であって、
前記磁気センサは、前記移動体の位置に応じて予め設定された軌跡上の値をとる検出値を検出するよう設定されると共に、前記軌跡は、前記移動体の移動範囲内に設定された複数の区間ごとに、前記移動体の位置の変化に応じた前記検出値の変化率が異なるよう設定されており、
前記検出値と、前記軌跡に対応する値である比較値と、の間の関係性に基づいて、前記磁気センサの異常を検知する、
という構成をとる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以上のように構成されることにより、移動体の複数の移動範囲において位置を検出可能なポジションセンサにおける異常の発生を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態におけるスロットル装置の斜視図である。
図2図1に示すスロットル装置の一部破断斜視図である。
図3図2に示すグリップにおける磁石と基板との位置関係を模式的に示す図である。
図4図2に示すグリップにおける磁石と基板との位置関係を模式的に示す図である。
図5】第1の実施形態におけるポジションセンサの構成を示すブロック図である。
図6図5に示すポジションセンサを構成する磁気センサにて磁束を検出したときの検出値の一例を示す図である。
図7図5に開示したポジションセンサの動作を示すフローチャートである。
図8図5に示すポジションセンサを構成する磁気センサにて磁束を検出したときの検出値の他の例を示す図である。
図9図5に示すポジションセンサを構成する磁気センサにて磁束を検出したときの検出値の他の例を示す図である。
図10図5に示すポジションセンサを構成する磁気センサにて磁束を検出したときの検出値の他の例を示す図である。
図11図5に開示したポジションセンサの他の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の第1の実施形態を、図1乃至図10を参照して説明する。図1乃至図6は、ポジションセンサの構成を説明するための図であり、図7は、ポジションセンサの動作を説明するための図である。図8乃至図10は、ポジションセンサの他の構成を説明するための図である。
【0013】
[構成]
本実施形態におけるポジションセンサは、回転体の回転度合い、つまり回転方向の回転位置(ポジション)を検出するための装置である。特に、本実施形態におけるポジションセンサは、図1に示すように、自動二輪車のアクセル操作を行うためのスロットル装置100に搭載され、スロットルグリップ1の回転角度を検出するためのものである。そして、本実施形態におけるポジションセンサは、さらに、ポジションセンサ自体の異常の発生を検知する機能も有する。但し、本発明におけるポジションセンサは、必ずしもスロットル装置に搭載されることに限定されず、いかなる回転体の回転位置を検出するために用いられてもよい。また、本発明のポジションセンサは、回転体の回転位置を検出するために用いられることに限定されず、移動体の移動位置を検出するために用いられてもよい。
【0014】
まず、ポジションセンサが搭載されるスロットル装置100の主な機構について、図1乃至図4を参照して説明する。なお、図1は、本実施形態におけるスロットル装置100の斜視図である。図2は、図1に示すスロットル装置100の一部破断斜視図である。
【0015】
図1に示すスロットル装置100は、例えば、二輪車のハンドルの右側に取り付けられる。スロットル装置100の回転軸2には、回転体であるグリップ1が取り付けられる。グリップ1は、回転軸2を中心に、後述する第1位置と第2位置と第3位置との間で回転自在である。
【0016】
ここで、第1位置(特定の回転位置)とは、グリップ1が自然に戻っている位置であり、回転角度が略0度として設定されたスロットル全閉のグリップ位置である。二輪車のライダーである操作者がグリップ1を操作していないときには、グリップ位置は第1位置にあり、二輪車のエンジンはアイドリングしている状態にある。なお、本実施形態では、第1位置は、後述する図6に示すように、グリップ1の回転角度が0度前後の所定範囲に設定されており、例えば、-2.5度から+2度の間に設定されていることとする。
【0017】
また、第2位置とは、上記第1位置から二輪車のライダーである操作者が手前方向(第2位置方向:一方向)にグリップ1をこれ以上回動できない位置まで回転させた位置であり、回転角度が正の値であるスロットル全開のグリップ位置である。操作者がグリップ1を操作して、当該グリップ1を第1位置から第2位置に向かって回転させたときには、回転角度が大きくなるにつれて二輪車のエンジンの出力が大きくなり、特に、第2位置まで回転させたときには、二輪車のエンジンは最大出力に向けて上昇している状態にある。
【0018】
また、第3位置とは、上記第1位置から二輪車のライダーである操作者が進行方向(第3位置方向:一方向とは反対回転方向)にグリップ1をこれ以上回転できない位置まで回転させた位置であり、例えば、回転角度が-10度というように回転角度が負の値となるグリップ位置である。操作者がグリップ1を操作して、当該グリップ1を第1位置から第3位置に向かって回転させたときには、二輪車の所定の機能に対する操作が行われる。例えば、操作者がグリップ1を第1位置から第3位置に向かって回転させたときには、操作者が二輪車のクルーズ・コントロール機能をキャンセルする操作が行われることとなる。
【0019】
図2に示すように、スロットル装置100の内部には、リターンスプリング3、磁石10、基板20が設けられている。リターンスプリング3は、グリップ1に接続され、第1位置からスロット開方向(第2位置の方向)に回転しているグリップ1に戻りの付勢力を付与する。また、図示しないが、スロットル装置100の内部には、第1位置からスロットル開方向とは反対方向(第3位置の方向)に回転しているグリップ1に戻りの付勢力を付与する他のスプリングなどの機構も設けられている。これにより、操作者がグリップ1を第1位置から第2位置あるいは第3位置のいずれかの方向に回転させる操作を行い、その後、グリップ1から手を放し回転させる操作を止めたときには、リターンスプリング3等の付勢力によって、グリップ1は第1位置まで引き戻される。
【0020】
磁石10は、グリップ1に連結され、当該グリップ1と一体的に回転する。このとき、磁石10は、リターンスプリング3の外周に沿うように回転する。磁石10は、弧を描くセグメント(C)型である。そして、磁石10の長手方向の両端がN極およびS極に磁化されている。
【0021】
基板20は、複数の磁気センサを備えており、磁石10と対峙させて固定している。磁気センサとしては、ホール素子、磁気抵抗素子、磁気インピーダンス素子、超電導量子干渉素子があるが、本実施形態では、磁気センサとしてホール素子を用いている。
【0022】
図3は、図2に示すグリップ1の第1位置における磁石と基板との位置関係を模式的に示す図である。図4は、図2に示すグリップ1の第2位置における磁石と基板との位置関係を模式的に示す図である。
【0023】
図3および図4に示すように、磁石10はマグネットホルダー4に収容されている。マグネットホルダー4は、グリップ1(図2参照)の一端にその回転軸2と同軸に取り付けられる。マグネットホルダー4は、グリップ1が回転すると、図3の矢印に示す方向に連動して回転する。
【0024】
基板20は、スロットル装置100(図2参照)のハウジング(図示せず)内に固定して取り付けられる。したがって、磁石10は、固定されている基板20の表面を沿うように回転する。また、基板20には、2つのホールIC21,22が取り付けられている。基板20の磁石10側の面には、第一のホールIC21(図3,4では図示せず)が設けられ、基板20の磁石10側の面とは反対側の面には、第二のホールIC22が設けられる。
【0025】
図3に示すように、グリップ1がスロットル全閉の第1位置にあるときには、2つのホールIC21,22は、磁石10の一方の磁極(例えば、N極)の端部の手前付近側と対峙する。また、図4に示すように、グリップ1がスロットル全開の第2位置にあるときには、磁石10は図3の位置から回転しているので、2つのホールIC21,22は磁石10の他方の磁極(例えば、S極)側と対峙する。また、図示しないが、グリップ1がスロットル全閉からさらに進行方向側に回転された第3位置にあるときには、磁石10は図3の位置から図4の位置とは反対側にさらに回転しているので、2つのホールIC21,22は磁石10の一方の磁極(例えば、N極)の端部側と対峙する。
【0026】
そして、図示しないが、2つのホールIC21,22には、それぞれホール素子が設けられる。このため、2つのホール素子は、磁石10に対峙するように基板20に固定されている。ここで、2つのホール素子は、基板20の表裏両面に分けて設けられる。そして、ホール素子は、グリップ1がスロットル全閉の第1位置にある状態で外部磁界(たとえば強磁界)が作用したときに、2つのホール素子それぞれが受ける磁束密度に差を持たせるように配置されている。具体的には、2つのホール素子は、磁石10から受ける磁界の大きさが異なるように、その磁界の磁力線の方向および磁力線の方向と交差する方向の2方向に相互にオフセットして配置している。このように配置すると、一方のホール素子は、他方のホール素子よりも外部磁界の影響を受けやすくなる。すると、2つのホール素子に外部磁界が作用すると、各ホール素子の出力が大きく変動する。
【0027】
ここで、2つのホール素子を磁界の磁力線の方向にオフセットするとは、2つのホール素子の位置を基板20の面上で変えることである。また、2つのホール素子を磁力線の方向と交差する方向にオフセットするとは、2つのホール素子の表面と裏面に分けて配置し、基板150の厚みを用いてホール素子の位置を変えることである。
【0028】
次に、上述したスロットル装置100に搭載されるポジションセンサの構成を、図5のブロック図を参照して説明する。ポジションセンサは、上述した磁石10と、それぞれホール素子が設けられた2つのホールICからなる第一センサ21及び第二センサ22を備えた基板20と、により構成される。基板20は、自動二輪車である車両側に搭載されたECU(Engine Control Unit:エンジンコントロールユニット)30に接続されており、電源の供給を受けている。そして、基板20は、上述したように第一センサ21及び第二センサ22を備えており、当該第一センサ21及び第二センサ22による検出値である電圧値をそれぞれ増幅する増幅器23,24を備えている。また、基板20は、ECU30と信号線を介して接続されており、第一センサ21及び第二センサ22にて検出し、増幅器23,24にて増幅した電圧値Va、Vbを、ECU30に入力可能なよう構成されている。
【0029】
ここで、各増幅器23,24は、第一センサ21による検出値(第一検出値)と、第二センサ22による検出値(第二検出値)と、の間の関係性が、予め設定された関係となるよう各検出値を増幅するよう構成されている。つまり、第一センサ21及び第二センサ22にて検出される検出値は、各増幅器23,24の機能により、磁石10の回転角度に応じて、予め設定された関係性を有する値となるよう設定されている。例えば、第一センサ21と第二センサ22との各検出値は、磁石10の回転角度が同一の値である場合には、同一の値となるよう設定されている。つまり、第一センサ21と第二センサ22との検出値は、各増幅器23,24の機能により、図6の符号L1,L2に示すように、磁石10の回転角度に応じて予め設定された同一の軌跡上の値を取るよう設定されている。但し、第一センサ21と第二センサ22との検出値の軌跡L1,L2は、完全に同一であることに限定されず、予め設定された範囲内で差があってもよく、略同一であってもよい。
【0030】
このとき、磁石10の回転角度の範囲内に複数の区間が設定されており、区間毎に、第一センサ21と第二センサ22との各検出値の磁石10の回転角度の変化に応じた変化率が異なるよう設定されている。例えば、本実施形態では、図6に示すように、磁石10の回転角度の区間として、-10度から-5度の第一区間(D2より小さい区間)、-5から+2度の第二区間(D2以上でありD1より小さい区間)、+2度以上の第三区間(D1以上の区間)、が設定されていることとする。なお、第二区間は、上述したグリップの第1位置を含むと共に第3位置側にも位置する区間である。そして、第一区間では、検出値の変化率は0、つまり、一定値であり、第二区間では、回転角度が大きくなるにつれて検出値が大きくなる変化率aに設定されており、第三区間では、回転角度が大きくなるにつれて検出値が大きくなる変化率bに設定されている。このとき、第三区間の変化率bつまりその傾きbは、第二区間の変化率aつまりその傾きaよりも大きく設定されている。このように、第一センサ21と第二センサ22との各検出値の軌跡L1,L2は、設定された区間ごとに、磁石10の回転角度の変化に伴う検出値の変化率が異なるよう設定されている。
【0031】
また、基板20は、電子回路にて構成された異常検知回路25(検知手段)を備えている。異常検知回路25は、第一センサ21及び第二センサ22による検出値である電圧値を用いて、第一センサ21又は第二センサ22に異常が生じたことを検知する機能を有する。具体的に、異常検知回路25は、第一センサ21及び第二センサ22にて検出した検出値を、基板20に搭載された増幅器23,24と同様に増幅した値となるよう電圧値Va,Vbに変換し、かかる電圧値Va,Vb間の関係性の変化の有無を調べる。ここでは、電圧値Va,Vb間の関係性としては、図6に示すように、両者が同一の軌跡、つまり、同一の値をとる、という関係性が設定されているため、異常検知回路25は、かかる関係性を満たすか否かを調べる。そして、異常検知回路25は、電圧値Va,Vbが異なる値であり、同一の値を取るという関係性が満たされない、つまり、予め設定された関係性が変化した場合には、第一センサ21又は第二センサ22に異常が生じたことを検知する。なお、異常とは、例えば、一方のセンサの故障であったり、外部磁界の発生、である。特に、本実施形態では、上述したように、第一センサ21と第二センサ22にオフセットを設けて配置しているため、磁石10からの磁束とは異なる外部磁界が生じた場合には、各検出値が大きく変動することとなる。このため、外部磁界の発生も検知することができる。
【0032】
なお、異常検知回路25は、第一センサ21及び第二センサ22による検出値の軌跡L1,L2は略同一であるため、電圧値Va,Vbが異なる値であっても、予め設定された略同一と判断できる範囲内の差であれば、異常発生を検知しない。つまり、異常検知回路25は、電圧値Va,Vbが異なる値であって、その差が予め設定された範囲内ではない場合には、異常発生を検知する。
【0033】
そして、異常検知回路25は、異常発生の検知の有無に応じて、第一センサ21及び第二センサ22にて検出したときの電圧値Va,Vbの出力制御を行う。例えば、異常検知回路25は、異常発生を検知しない場合には、ECU30に対する電圧値Va,Vbの出力に関与しない。その結果、基板20からは、第一センサ21及び第二センサ22にて検出したときの電圧値Va,VbがECU30に対して出力され、ECU30によって電圧値に応じたスロットル開度が検出され、検出されたスロットル開度に対応するスロットル制御が行われることとなる。つまり、ECU30は、グリップ1つまり磁石10の回転角度を検出する検出手段として機能する。なお、本実施形態では、第一センサ21及び第二センサ22にて検出したときの電圧値Va,Vbが同一の値であるため、ECU30は、いずれか一方の電圧値、例えば、第一センサ21にて検出した電圧値Vaを用いて、スロットル開度を検出してスロットル制御を行ってもよい。
【0034】
このとき、ECU30は、グリップ1が上述した第1位置よりも第2位置側に位置し、図6に示すように回転角度が+2度以上に相当する電圧値V1である場合には、回転角度が大きくなるにつれて二輪車のエンジンの出力が大きくなるよう制御する。また、ECU30は、グリップが上述した第1位置に位置し、図6に示すように回転角度が-2.5度から+2度に相当する電圧値V2からV3の間である場合には、アイドリング制御を行う。また、ECU30は、グリップが上述した第1位置よりも第3位置側に位置し、図6に示すように-2.5度以下に相当する電圧値V3以下である場合には、クルーズ・コントロール機能をキャンセルする制御を行う。なお、第一センサ21にて検出した電圧値がV1である場合、つまり、上述した第三区間に位置する場合には、検出値の変化率bが他の区間と比較して大きく設定されている。このため、検出値に対する分解能が高く、グリップ1の回転角度に応じてより精度よくエンジン出力を制御することができる。
【0035】
一方で、異常検知回路25は、異常発生を検知した場合には、例えば、増幅器23,24に対して異常信号を出力する。これにより、増幅器23,24では、第一センサ21及び第二センサ22にて検出したときの電圧値Va,VbをLOWレベルに設定して、ECU30に対して出力する。これにより、ECU30では、スロットル制御が停止されるなど、異常検知時に設定された制御が実行されることとなる。なお、異常検知回路25は、異常発生を検知した場合には、ECU30や他の装置に対して、直接、異常信号を出力してもよく、異常を通知する他の処理を行ってもよい。
【0036】
[動作]
次に、上述したポジションセンサの動作を、主に図7のフローチャートを参照して説明する。まず、第一センサ21及び第二センサ22は、スロットルグリップ1の回転に連動して回転する磁石10から生じる磁束の向きを常に検出し、その検出値を異常検知回路25に出力する。異常検知回路25は、第一センサ21及び第二センサ22にて検出した検出値を、基板20に搭載された増幅器23,24と同様に増幅した値となるよう電圧値Va、Vbに変換し、かかる電圧値Va,Vbを入力する(ステップS1)。
【0037】
そして、異常検知回路25は、電圧値Va,Vb間の関係性の変化を調べる。具体的に、異常検知回路25は、電圧値Va,Vbが同一の軌跡上の値をとる、つまり、値が略一致する、という関係性を満たすか否かを調べる(ステップS2)。このとき、電圧値Va,Vbが略同一の値である場合には(ステップS2でYes)、異常検知回路25は異常発生を検知しない。この場合、基板20からは、第一センサ21及び第二センサ22にて検出した検出値が増幅器23,24に増幅された電圧値Va,Vbが、ECU30に対して出力される。
【0038】
続いて、ECU30では、車速や所定の車両信号など他のユニットから車両関連データが入力されるが(ステップS3)、これらのデータに基づいてアクセルポジションセンサ出力異常であるか否かを判断する(ステップS4)。そして、ECU30は、アクセルポジションセンサ出力異常ではないと判断すると(ステップS4でNo)、出力通常制御を行う(ステップS5)。例えば、ECU30は、出力通常制御として、基板20から出力された電圧値Va,Vbの一方の値に応じたスロットル開度を検出し、かかるスロットル開度に対応するスロットル制御を行う。
【0039】
一方で、異常検知回路25は、電圧値Va,Vbが略同一の値ではない、というように予め設定された関係性を満たさない場合(ステップS2でNo)には、異常発生を検知する。この場合、異常検知回路25は、例えば、増幅器23,24に対して異常信号を出力することで、当該増幅器23,24からECU30に異常信号が伝達され、ECU30は出力異常制御を行う(ステップS6)。例えば、ECU30は、スロットル制御を停止するなど、異常発生を検知した時に設定された出力異常制御を行う。
【0040】
以上のように、本実施形態では、まず、磁気センサである第一センサ21及び第二センサ22から検出される磁石10の回転角度に応じた検出値は、その軌跡が予め設定されており、かつ、磁石10が回転する範囲の複数の区間ごとに変化率が異なるよう設定されている。このため、磁気センサによる検出値から、磁石10が回転する複数の区間のそれぞれにおける位置を、区間毎に適した精度で検出することができる。また、第一センサ21の検出値と第二センサ22の検出値との間に予め関係性が設定されており、検出された各検出値を比較してかかる関係性が満たされているか否かを調べることで、磁気センサに異常が生じたか否かを検知することができる。その結果、磁石10つまりグリップ1の全ての回転範囲において異常の発生を検知することができる。
【0041】
[変形例]
ここで、上記では、各増幅器23,24の機能により、第一センサ21による検出値と、第二センサ22による検出値と、の間の関係性として、磁石10の回転角度が同一の値である場合には両検出値が略同一の値となる、つまり、図6に示すように両検出値が同一の軌跡L1,L2上の値を取る、という関係性が設定されている場合を例示したが、他の関係性を有するよう設定されていてもよい。例えば、図8に示すように、各増幅器23,24の機能により、第一センサ21による検出値と、第二センサ22による検出値と、の間の関係性として、相互に平行となる軌跡L1,L2上の値を取る、という関係性が設定されていてもよい。換言すると、各軌跡L1,L2は、一致しないものの、上述した各区間において、各検出値の変化率が同一に設定されている。具体的に、図8の例では、まず、第一センサ21の検出値の軌跡L1は、上述した図6の例と同一である。そして、第二センサ22の検出値の軌跡L2は、第一センサ21の軌跡L1に対して全体的に値が低く設定されており、磁石10の回転角度が同一の値である場合には、第一センサ21の検出値と第二センサの検出値との差が一定となるよう設定されている。但し、第一センサ21と第二センサ22との検出値の軌跡L1,L2は、完全に並行であることに限定されず、略平行であってもよい。つまり、磁石10の同一の回転角度における第一センサ21と第二センサ22との検出値の差が、予め設定された範囲内の差であってもよい。
【0042】
そして、上述した図8に示す軌跡L1,L2である場合には、異常検知回路25は、第一センサ21及び第二センサ22による検出値である電圧値の差が、予め設定された一定値(あるいは、所定範囲の値)であるか否かを調べ、一定値ではない(あるいは、所定範囲に収まっていない)場合には、異常発生を検知する。なお、異常発生を検知しない場合には、いずれか一方のセンサの検出値に基づいて、磁石10の回転角度を検出してもよい。
【0043】
また、各増幅器23,24の機能により、第一センサ21による検出値と、第二センサ22による検出値と、の間の関係性は、図9に示すような関係性であってもよい。具体的に、図9の例では、まず、第一センサ21の検出値の軌跡L1は、上述した図6の例と同一である。そして、第二センサ22の検出値の軌跡L2は、第一センサ21の軌跡L1に対して全体的に値が低く設定されており、磁石10の回転角度が同一の値である場合には、第一センサ21の検出値に対して第二センサの検出値が1/2となるよう設定されている。つまり、軌跡L1,L2のうち傾きが正の値である第二区間と第三区間では、第一センサ21の検出値の変化率に対して第二センサの検出値の変化率が1/2となるよう設定されている。但し、第一センサ21と第二センサ22との検出値の軌跡L1,L2は、第一センサ21の検出値に対して第二センサ22の検出値が完全に1/2となるよう設定されていることに限定されず、略1/2であってもよい。
【0044】
そして、上述した図9に示す軌跡L1,L2である場合には、異常検知回路25は、第一センサ21による検出値である電圧値に対して第二センサ22による検出値である電圧値が略1/2となっているか否かを調べ、1/2ではない場合には、異常発生を検知する。なお、異常発生を検知しない場合には、いずれか一方のセンサの検出値に基づいて、磁石10の回転角度を検出してもよい。
【0045】
なお、図6,8,9に示す例では、第一センサ21と第二センサ22との検出値の軌跡L1,L2は、磁石10の回転角度の変化に伴う検出値の変化率が、2つの変化点、つまり、第一区間と第二区間の間の変化点と第二区間と第三区間の間の変化点、で変化するよう設定されているが、かかる変化点は2点であることに限定されない。例えば、軌跡L1,L2における変化点の数は、1点であってもよく、3点以上であってもよい。一例として、図10に示す例では、第一センサ21と第二センサ22との検出値の軌跡L1,L2がほぼ同一であり、変化率の変化点が3点である場合を示している。具体的に、図10の例では、図6の場合と同様に、第一区間と第二区間の間の変化点と第二区間と第三区間の間の変化点に加えて、第二区間内である磁石10の回転角度が-2.5度の箇所に新たに変化率の変化点を設けるよう設定されている。なお、図8,9に示したように、第一センサ21と第二センサ22との検出値の軌跡L1,L2がほぼ同一ではない場合においても、軌跡L1,L2における変化点の数は、1点であってもよく、3点以上であってもよい。
【0046】
なお、本実施形態では、各増幅器23,24の機能により設定される、第一センサ21による検出値と、第二センサ22による検出値と、の間の関係性は、上述した関係性であることに限定されず、いかなる関係性であってもよい。そして、異常検知回路25は、各センサ21,22の検出値を比較し、予め設定された関係性を満たしていない場合に、異常発生を検知することとなる。
【0047】
また、本実施形態では、第一センサ21による検出値と第二センサ22による検出値とを比較して、これらの間に設定された関係性を満たすか否かを調べることとしているが、磁石10に対する磁束は第一センサ21のみで検出して、かかる検出値から異常発生を検知してもよい。例えば、磁石10に対する磁束を第一センサ21のみで検出し、その検出値が磁石10の角度に応じて予め設定された軌跡をとるよう設定されていることとする。そして、異常検知回路25は、第一センサ21による検出値と、予め設定された比較値と、の関係性を調べ、かかる関係性に基づいて異常発生を検知してもよい。一例として、比較値は、エンコーダ、フォトカプラなど、磁石10の角度に応じた値を検出する他のセンサによる検出値であってもよい。そして、磁気センサである第一センサ21による検出値と、他のセンサによる検出値と、が予め設定された関係性を満たすか否かを調べることで、異常発生を検知することができる。
【0048】
なお、図5に示す増幅器23,24、異常検知回路25の機能は、図11の符号23’,24’,25’に示すように、ECU30に設ける構成としてもよい。また、上記では、異常検知回路25は、第一センサ21の検出値と第二センサ22の検出値とを増幅器23,24で増幅した値となる電圧値Va,Vbに変換して、かかる電圧値Va,Vb間の関係性の変化の有無を調べることとしているが、増幅器23,24で増幅した電圧値Va,Vbを用いて、これらの関係性の変化の有無を調べ、異常発生を検知してもよい。
【0049】
また、上記では、スロットルグリップ1といった回転体の回転角度を検出するポジションセンサにおいて磁気センサ等の異常発生を検知する構成を例示したが、回転方向の位置を検出するポジションセンサに限らず、あらゆる移動方向に移動する移動体の位置(ポジション)を検出するポジションセンサにも適用可能である。例えば、磁石10の回転方向を直線方向に置き換えることで、直線方向に移動する移動体のポジションを検出する場合にも、その移動位置を検出すると共に、異常発生を検知することができる。
【0050】
<付記>
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうる。以下、本発明におけるポジションセンサ、ポジション検出方法の概略を説明する。但し、本発明は、以下の構成に限定されない。
【0051】
(付記1)
移動体と共に移動する磁石と、
前記磁石から生じる磁束を検出する磁気センサと、
前記磁気センサによる検出値に基づいて、当該磁気センサの異常を検知する検知手段と、
を備え、
前記磁気センサは、前記移動体の位置に応じて予め設定された軌跡上の値をとる前記検出値を検出するよう設定されると共に、前記軌跡は、前記移動体の移動範囲内に設定された複数の区間ごとに、前記移動体の位置の変化に応じた前記検出値の変化率が異なるよう設定されており、
前記検知手段は、前記検出値と、前記軌跡に対応する値である比較値と、の間の関係性に基づいて、前記磁気センサの異常を検知する、
ポジションセンサ。
【0052】
上記発明によると、まず、磁気センサから検出される移動体の位置に応じた検出値は、その軌跡が予め設定されており、かつ、移動体が移動する複数の区間ごとに変化率が異なるよう設定されている。このため、磁気センサによる検出値から、移動体が移動する複数の区間のそれぞれにおける位置を、区間毎に適した精度で検出することができる。また、磁気センサの検出値と、当該検出値が取り得る軌跡に対応する比較値と、の間の関係性に基づいて磁気センサの異常を検知するため、移動体の全ての移動範囲において異常を検知することができる。
【0053】
(付記2)
付記1に記載のポジションセンサであって、
前記検知手段は、前記検出値と、前記比較値と、の間の予め設定された関係性が変化した場合に、前記磁気センサの異常を検知する、
ポジションセンサ。
【0054】
(付記3)
付記1に記載のポジションセンサであって、
前記磁石から生じる磁束を検出する、前記磁気センサとは異なる他の磁気センサを備え、
前記他の磁気センサは、前記移動体の位置に応じて予め設定された第二軌跡上の値をとる第二検出値を検出するよう設定されると共に、前記第二軌跡は、前記区間ごとに、前記軌跡と予め設定された関係性を有するよう設定されており、
前記検知手段は、前記磁気センサによる前記検出値である第一検出値と前記他の磁気センサによる前記第二検出値との間の関係性に基づいて、前記磁気センサの異常を検知する、
ポジションセンサ。
【0055】
(付記4)
付記3に記載のポジションセンサであって、
前記第二軌跡は、前記区間ごとに、前記第二検出値の変化率が前記第一検出値の変化率と略同一となるよう設定されており、
前記検知手段は、前記第一検出値と前記第二検出値との間の関係性に基づいて、前記磁気センサの異常を検知する、
ポジションセンサ。
【0056】
(付記5)
付記4に記載のポジションセンサであって、
前記第二軌跡は、前記軌跡と同一又は平行に設定されており、
前記検知手段は、前記第一検出値と前記第二検出値との間の予め設定された関係性が変化した場合に、前記磁気センサの異常を検知する、
ポジションセンサ。
【0057】
(付記6)
付記1に記載のポジションセンサであって、
前記移動体は回転体であり、
前記磁気センサは、前記回転体の回転角度に応じて前記軌跡上の値をとる前記検出値を検出するよう設定されると共に、前記軌跡は、前記回転体の回転範囲内に設定された複数の区間ごとに、前記回転体の回転角度の変化に応じた前記検出値の変化率が異なるよう設定されている、
ポジションセンサ。
【0058】
(付記7)
付記6に記載のポジションセンサであって、
前記磁石から生じる磁束を検出する、前記磁気センサとは異なる他の磁気センサを備え、
前記他の磁気センサは、前記回転体の回転角度に応じて予め設定された第二軌跡をとる第二検出値を検出するよう設定されると共に、前記第二軌跡は、前記区間ごとに、前記軌跡と予め設定された関係性を有するよう設定されており、
前記検知手段は、前記磁気センサによる前記検出値である第一検出値と、前記他の磁気センサによる前記第二検出値と、の間の関係性に基づいて、前記磁気センサの異常を検知する、
ポジションセンサ。
【0059】
(付記8)
付記7に記載のポジションセンサであって、
前記区間として、少なくとも、前記回転体の特定の回転位置を基準とした一方向の回転角度の範囲と、前記特定の回転位置を基準とした前記一方向と反対回転方向の回転角度の範囲と、が設定されており、
前記軌跡と前記第二軌跡とは、前記区間ごとに、前記第一検出値の変化率と前記第二検出値の変化率とが略同一となるよう設定されており、
前記検知手段は、前記第一検出値と前記第二検出値との間の関係性に基づいて、前記磁気センサの異常を検知する、
ポジションセンサ。
【0060】
(付記9)
付記8に記載のポジションセンサであって、
前記軌跡と前記第二軌跡とは、前記区間ごとに、前記第一検出値の変化率と前記第二検出値の変化率とが変化する変化点を有するよう設定されている、
ポジションセンサ。
【0061】
(付記10)
付記8に記載のポジションセンサであって、
前記第二軌跡は、前記軌跡と同一又は平行に設定されており、
前記検知手段は、前記第一検出値と前記第二検出値との間の予め設定された関係性が変化した場合に、前記磁気センサの異常を検知する、
ポジションセンサ。
【0062】
(付記11)
付記10に記載のポジションセンサであって、
前記第一検出値と前記第二検出値とのいずれか一方に基づいて、前記区間ごとにおける前記回転体の回転角度を検出する検出手段を備えた、
ポジションセンサ。
【0063】
(付記12)
付記6乃至11のいずれかに記載のポジションセンサであって、
前記回転体は、車両のスロットルグリップである、
ポジションセンサ。
【0064】
(付記13)
移動体と共に移動する磁石から生じる磁束を検出する磁気センサを備えたポジションセンサによるポジション検出方法であって、
前記磁気センサは、前記移動体の位置に応じて予め設定された軌跡上の値をとる検出値を検出するよう設定されると共に、前記軌跡は、前記移動体の移動範囲内に設定された複数の区間ごとに、前記移動体の位置の変化に応じた前記検出値の変化率が異なるよう設定されており、
前記検出値と、前記軌跡に対応する値である比較値と、の間の関係性に基づいて、前記磁気センサの異常を検知する、
ポジション検出方法。
【0065】
(付記14)
付記13に記載のポジション検出方法であって、
前記ポジションセンサは、前記磁石から生じる磁束を検出する、前記磁気センサとは異なる他の磁気センサを備え、
前記他の磁気センサは、前記移動体の位置に応じて予め設定された第二軌跡上の値をとる第二検出値を検出するよう設定されると共に、前記第二軌跡は、前記区間ごとに、前記軌跡と予め設定された関係性を有するよう設定されており、
前記磁気センサによる前記検出値である第一検出値と前記他の磁気センサによる前記第二検出値との間の関係性に基づいて、前記磁気センサの異常を検知する、
ポジション検出方法。
【0066】
(付記15)
付記14に記載のポジション検出方法あって、
前記第二軌跡は、前記区間ごとに、前記第二検出値の変化率が前記第一検出値の変化率と略同一となるよう設定されており、
前記第一検出値と前記第二検出値との間の関係性に基づいて、前記磁気センサの異常を検知する、
ポジション検出方法。
【0067】
(付記16)
付記15に記載のポジション検出方法であって、
前記第二軌跡は、前記第一軌跡と同一又は平行に設定されており、
前記第一検出値と前記第二検出値との間の予め設定された関係性が変化した場合に、前記磁気センサの異常を検知する、
ポジション検出方法。
【0068】
以上、上記実施形態等を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 スロットルグリップ
2 回転軸
3 リターンスプリング
4 マグネットホルダー
10 磁石
20 基板
21 第一センサ(ホールIC)
22 第二センサ(ホールIC)
23,24 増幅器
25 異常検知回路
30 ECU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11