(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】活性元素添加光ファイバ、共振器、及び、ファイバレーザ装置
(51)【国際特許分類】
H01S 3/067 20060101AFI20240529BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20240529BHJP
G02B 6/036 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
H01S3/067
G02B6/02 376B
G02B6/036
(21)【出願番号】P 2020058028
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2019065620
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019174772
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】西村 亮一
(72)【発明者】
【氏名】北原 倫太郎
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/142010(WO,A1)
【文献】特開2012-162433(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0036348(US,A1)
【文献】特開平03-127032(JP,A)
【文献】特開2018-060935(JP,A)
【文献】特開2014-122159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-3/30
G02B 6/02ー6/10
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアを備える活性元素添加光ファイバであって、
前記コアは、第1領域と、第2領域とを含み、
前記第1領域は中心軸から半径raまでの領域であり、当該第1領域には励起光により励起される活性元素が添加され、
前記第2領域は前記第1領域を隙間なく囲み前記コアの外周面までの領域であり、当該第2領域には前記活性元素が非添加とされ、
前記コアの半径をdとする場合において、0.1d<ra<dであり、
前記コアの径方向における中心軸からの距離をrとする場合、0.2d<r≦0.9dの領域において、0≦r≦0.9dの領域における屈折率の平均値よりも高い屈折率で、屈折率が極大となる極大値位置が少なくとも1カ所存在し、
0.1d≦r≦0.8raの領域における屈折率の平均値が1.1ra≦r≦0.9dの領域における屈折率の平均値よりも高い
ことを特徴とする活性元素添加光ファイバ。
【請求項2】
コアを備える活性元素添加光ファイバであって、
前記コアは、第1領域と、第2領域とを含み、
前記第1領域は中心軸から半径raまでの領域であり、当該第1領域には励起光により励起される活性元素が添加され、
前記第2領域は前記第1領域を隙間なく囲み前記コアの外周面までの領域であり、当該第2領域には前記活性元素が非添加とされ、
前記コアの半径をdとする場合において、0.1d<ra<dであり、
前記コアの径方向における中心軸からの距離をrとする場合、0.2d<r≦0.9dの領域において、0≦r≦0.9dの領域における屈折率の平均値よりも高い屈折率で、屈折率が極大となる極大値位置が少なくとも1カ所存在し、
0≦r≦0.1dの領域における屈折率の平均値がr=0.2dの領域における屈折率よりも高い
ことを特徴とする活性元素添加光ファイバ。
【請求項3】
前記コアを波長1030nmから1090nmのいずれかの波長の光が伝搬する場合、当該光は、少なくともLP01モードの光及びLP11モードの光を含む
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項4】
0≦r≦0.1dの領域における前記活性元素の濃度の平均値が、0.1d<r≦raの領域における前記活性元素の濃度の平均値よりも高い
ことを特徴とする請求項
1または
2に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項5】
0.1d≦r≦0.8raの領域における屈折率の平均値が1.1ra≦r≦0.9dの領域における屈折率の平均値よりも高い
ことを特徴とする請求項
2に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項6】
0.1d≦r≦0.8raの領域における屈折率の平均値が1.1ra≦r≦0.9dの領域における屈折率の平均値よりも低い
ことを特徴とする請求項
2に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項7】
0.1d≦r≦0.8raの領域における屈折率の平均値が1.1ra≦r≦0.9dの領域における屈折率の平均値と同等である
ことを特徴とする請求項
2に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項8】
ra≦0.75dである
ことを特徴とする請求項1から
7のいずれか1項に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項9】
ra≦0.7dである
ことを特徴とする請求項
8に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項10】
ra<0.7dである
ことを特徴とする請求項
9に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項11】
0.4d<raである
ことを特徴とする請求項1から
10のいずれか1項に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項12】
0.5d<raである
ことを特徴とする請求項
11に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項13】
前記活性元素はイッテルビウムである
ことを特徴とする請求項1から
12のいずれか1項に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項14】
0.338d≦r≦0.614dの領域において、前記極大値位置が少なくとも1カ所存在する
ことを特徴とする請求項
13に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項15】
0.595d≦ra≦0.716dである
ことを特徴とする請求項
13または
14に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項16】
1.1ra<r≦0.9dの領域の比屈折率差の標準偏差が0.004以下である
ことを特徴とする請求項1から
15のいずれか1項に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項17】
少なくとも1.1ra<r≦0.9dの領域は、ゲルマニウムのみが添加された石英から成る
ことを特徴とする請求項
16に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項18】
前記極大値位置が前記第1領域に位置し、
前記第1領域の少なくとも一部には、前記コアの屈折率を上昇させるアップドーパントがさらに添加され、
前記アップドーパントの濃度が前記極大値位置において最大である
ことを特徴とする請求項1から
17のいずれか1項に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項19】
前記極大値位置が前記第1領域に位置し、
前記第1領域の少なくとも一部には、前記コアの屈折率を低下させるダウンドーパントがさらに添加され、
前記ダウンドーパントの濃度が前記極大値位置において最小である
ことを特徴とする請求項1から
17のいずれか1項に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項20】
前記極大値位置が前記第1領域に位置し、
前記第1領域の少なくとも一部には、前記コアの屈折率を上昇させるアップドーパントと、前記コアの屈折率を低下させるダウンドーパントとがさらに添加され、
前記アップドーパントと前記ダウンドーパントとの濃度差が前記極大値位置において最大である
ことを特徴とする請求項1から
17のいずれか1項に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項21】
前記コアの外周面を隙間なく囲むクラッドをさらに備え、
前記コアのうち0≦r≦0.1dの領域における前記クラッドに対する比屈折率差の平均値が前記極大値位置における比屈折率差の値以下であり、
前記コアの前記クラッドに対する比屈折率差の平均値が0.10%以上であり、
前記極大値位置が0.45d以上である
ことを特徴とする請求項1から
20のいずれか1項に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項22】
前記コアの外周面を隙間なく囲むクラッドをさらに備え、
前記コアのうち0.055d≦r≦0.1dの領域における前記クラッドに対する比屈折率差の平均値が前記極大値位置における比屈折率差の値以上であり、
前記コアの前記クラッドに対する比屈折率差の平均値が0%よりも大きく0.18%以下であり、
前記極大値位置が0.55d以下である
ことを特徴とする請求項1から
20のいずれか1項に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項23】
前記コアは、前記極大値位置から少なくとも前記コアの内側に向かうにつれて屈折率が徐々に低下する屈折率分布を有する
ことを特徴とする請求項1から
22のいずれか1項に記載の活性元素添加光ファイバ。
【請求項24】
請求項1から
23のいずれか1項に記載の活性元素添加光ファイバと、
前記活性元素添加光ファイバの一方側において、前記活性元素添加光ファイバの前記コアと光学的に結合し、励起された前記活性元素が放出する光の少なくとも一部の波長の光を反射する第1ミラーと、
前記活性元素添加光ファイバの他方側において、前記活性元素添加光ファイバの前記コアと光学的に結合し、前記第1ミラーが反射する光のうち少なくとも一部の波長の光を前記第1ミラーよりも低い反射率で反射する第2ミラーと、
を備える
ことを特徴とする共振器。
【請求項25】
請求項1から
23のいずれか1項に記載の活性元素添加光ファイバと、
前記活性元素を励起する光を出射する光源と、
を備える
ことを特徴とするファイバレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビーム品質の劣化を抑制し得る活性元素添加光ファイバ、共振器、及び、ファイバレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバレーザ装置は、集光性に優れ、パワー密度が高く、小さなビームスポットとなる光が得られることから、レーザ加工分野、医療分野等の様々な分野において用いられている。この様なファイバレーザ装置では、出射する光の高出力化がなされている。しかし、光ファイバ内における光のパワー密度が高くなると、誘導ラマン散乱に起因する光の波長変換が生じ易くなり、意図しない波長の光が出射する場合がある。この場合、被加工体等で反射する光が再びファイバレーザ装置に戻って増幅されることにより、設計上増幅されるべき波長の光の増幅が不安定となり、出力が不安定となる場合がある。
【0003】
光ファイバにおける誘導ラマン散乱を抑制する手段として、コアを伝搬する光の実効断面積を大きくすることが挙げられる。この実効断面積を大きくする方法の一つとして、コアの直径を大きくすることが挙げられる。従って、光ファイバにおける誘導ラマン散乱を抑制するために、例えば、光をフューモードで伝搬可能なコアを有する光ファイバが用いられる。
【0004】
ファイバレーザ装置では、集光性の観点等から出射する光のビーム品質が優れていることが好ましく、そのため上記のように光をフューモードで伝搬可能なコアを有する光ファイバを用いることにより光の実効断面積を大きくする場合であっても、基本モード以外のモードの光が励振されることを抑えたいという要請がある。なお、ビーム品質は、例えば、M2(エムスクエア)等で示される。そこで、下記特許文献1に記載の活性元素添加光ファイバのように、光をフューモードで伝搬可能なコアを有する活性元素添加光ファイバを用いつつ、高次モードの光の増幅を抑制することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、よりビーム品質の劣化を抑制し得る活性元素添加光ファイバが求められている。そこで、本発明は、ビーム品質の劣化を抑制し得る活性元素添加光ファイバ、共振器、及び、ファイバレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、コアを備える活性元素添加光ファイバであって、前記コアは、第1領域と、第2領域とを含み、前記第1領域は中心軸から半径raまでの領域であり、当該第1領域には励起光により励起される活性元素が添加され、前記第2領域は前記第1領域を隙間なく囲み前記コアの外周面までの領域であり、当該第2領域には前記活性元素が非添加とされ、前記コアの半径をdとする場合において、0.1d<ra<dであり、前記コアの径方向における中心軸からの距離をrとする場合、0.2d<r≦0.9dの領域において、0≦r≦0.9dの領域における屈折率の平均値よりも高い屈折率で、屈折率が極大となる極大値位置が少なくとも1カ所存在することを特徴とするものである。
【0008】
本発明者は、活性元素添加光ファイバについて以下のことを見出した。すなわち、上記範囲の第1領域に活性元素が添加され、上記範囲の第2領域に活性元素が非添加とされることで、コアを伝搬するLP01モードの光を増幅しつつ、高次モードの光の増幅が抑制され得る。その一方、0.2d<r≦0.9dの領域において、0≦r≦0.9dの領域における屈折率の平均値よりも高い屈折率で、屈折率が極大となる極大値位置が少なくとも1カ所存在することで、LP01モードの光が中心軸近傍に集中しすぎることを抑制して、LP01モードの光の実効断面積を大きくし得る。このため、誘導ラマン散乱が生じることを抑制し得る。従って、本発明の活性元素添加光ファイバによれば、ビーム品質の劣化が抑制され得る。
【0009】
また、0≦r≦0.1dの領域における前記活性元素の濃度の平均値が、0.1d<r≦raの領域における前記活性元素の濃度の平均値よりも高いことが好ましい。
【0010】
この場合、コアを伝搬するLP01モードの光がより増幅され得る。
【0011】
0.1d≦r≦0.8raの領域における屈折率の平均値が1.1ra≦r≦0.9dの領域における屈折率の平均値よりも高くてもよい。
【0012】
この場合、0.2d<r<0.9dの範囲における屈折率の極大値を大きくすることによって、コアを伝搬する光の実効断面積をより一層拡大することができる。
【0013】
また、0.1d≦r≦0.8raの領域における屈折率の平均値が1.1ra≦r≦0.9dの領域における屈折率の平均値よりも低くてもよい。
【0014】
この場合、r<0.1dの範囲における屈折率の極大値を大きくすることによって、コアを伝搬する光の実効断面積を小さくすることができる。
【0015】
また、0.1d≦r≦0.8raの領域における屈折率の平均値が1.1ra≦r≦0.9dの領域における屈折率の平均値と同等であってもよい。
【0016】
なお、0.1d≦r≦0.8raの領域における屈折率の平均値が1.1ra≦r≦0.9dの領域における屈折率の平均値と同等とは、0.1d≦r≦0.8raの領域における屈折率の平均値と1.1ra≦r≦0.9dの領域における屈折率の平均値との差が-0.0077%以上0.0089%以下である場合をいう。この場合、r<0.1dの範囲における屈折率の極大値が実効断面積を減少させる効果と、0.2d<r<0.9dの範囲における屈折率の極大値が実効断面積を拡大させる効果とが同等であれば、本発明に係る光ファイバと矩形状の屈折率分布を持つ光ファイバとを、光損失を抑制して接続することができる。
【0017】
また、ra≦0.75dであることがさらに好ましい。
【0018】
この場合、ra>0.75dの場合に比べてコアを伝搬する高次モードの光の増幅が顕著に抑制され得、ビーム品質の劣化を一層顕著に抑制することができる。
【0019】
また、ra≦0.7dであることがさらに好ましい。
【0020】
この場合、0.7d<ra≦0.75dの場合に比べてコアを伝搬する高次モードの光の増幅が顕著に抑制され得、ビーム品質の劣化を一層顕著に抑制することができる。
【0021】
また、ra<0.7dであることがさらに好ましい。
【0022】
この場合、ra≧0.7dの場合に比べてコアを伝搬する高次モードの光の増幅が顕著に抑制され得、ビーム品質の劣化を一層顕著に抑制することができる。
【0023】
また、0.4d<raであることが好ましい。
【0024】
この場合、ra≦0.4dの場合に比べて、光の増幅の効率をより高くすることができる。
【0025】
更に、0.5d<raであることがより好ましい。
【0026】
この場合、光の増幅の効率を更に高くすることができる。また、高次モードの増幅を抑制しつつ、基本モードを効率よく増幅し得る。
【0027】
また、0≦r≦0.1dの領域における屈折率の平均値がr=0.2dの領域における屈折率よりも高いことが好ましい。
【0028】
この場合、LP01モードの光の増幅の効率をより高くすることができる。
【0029】
また、前記活性元素はイッテルビウムであることとしても良い。
【0030】
また、前記活性元素がイッテルビウムである場合、0.338d<r≦0.614dの領域において、前記極大値位置が少なくとも1カ所存在することが好ましい。
【0031】
この場合、LP01モードの光がコアの中心に集中しすぎることをさらに抑制しつつ、LP01モードの光の第1領域からのはみだし量を抑制して、効率よくLP01モードの光を増幅し得る。また、極大値位置がこのような範囲に存在することで、活性元素添加光ファイバにおけるLP01モードの光の実効断面積を効果的に広げることができ、誘導ラマン散乱が生じることが抑制されてビーム品質の劣化が抑制され得る。
【0032】
また、前記活性元素がイッテルビウムである場合、0.595d≦ra≦0.716dであることが好ましい。
【0033】
コアの第1領域をこのような範囲とすることで、活性元素添加光ファイバにおけるLP01モードの光の実効断面積を効果的に広げることができ、誘導ラマン散乱が生じることが抑制されてビーム品質の劣化が抑制され得る。
【0034】
また、1.1ra<r≦0.9dの領域の比屈折率差の標準偏差が0.004以下であることが好ましい。
【0035】
コアの外周側における屈折率は、コアを伝搬する光のパワーの分布に影響しやすい。そこで、このような構成によれば、光のパワーが意図せず乱れることを抑制することができる。従って、ビーム品質の低下が一層抑制され得る。
【0036】
この場合、少なくとも1.1ra<r≦0.9dの領域は、ゲルマニウムのみが添加された石英から成ることが好ましい。
【0037】
1.1ra<r≦dの領域がゲルマニウムのみが添加された石英から成る場合、1.1ra<r≦0.9dの領域の比屈折率差の標準偏差を0.01以下にし易い。
【0038】
また、前記極大値位置が前記第1領域に位置し、前記第1領域の少なくとも一部には、前記コアの屈折率を上昇させるアップドーパントがさらに添加され、前記アップドーパントの濃度が前記極大値位置において最大であってもよい。
【0039】
このような構成によって、第1領域に極大値位置を形成することが可能である。
【0040】
また、前記極大値位置が前記第1領域に位置し、前記第1領域の少なくとも一部には、前記コアの屈折率を低下させるダウンドーパントがさらに添加され、前記ダウンドーパントの濃度が前記極大値位置において最小であってもよい。
【0041】
このような構成によって、第1領域に極大値位置を形成することが可能である。
【0042】
あるいは、前記極大値位置が前記第1領域に位置し、前記第1領域の少なくとも一部には、前記コアの屈折率を上昇させるアップドーパントと、前記コアの屈折率を低下させるダウンドーパントとがさらに添加され、前記アップドーパントと前記ダウンドーパントとの濃度差が前記極大値位置において最大であってもよい。
【0043】
このような構成によって、第1領域に極大値位置を形成することが可能である。
【0044】
また、この活性元素添加光ファイバは、前記コアの外周面を隙間なく囲むクラッドをさらに備え、前記コアのうち0≦r≦0.1dの領域における前記クラッドに対する比屈折率差の平均値が前記極大値位置における比屈折率差の値以下であり、前記コアの前記クラッドに対する比屈折率差の平均値が0.10%以上であり、前記極大値位置が0.45d以上であってもよい。
【0045】
なお、極大値位置は複数存在しても良い。ここで、極大値位置が複数存在する場合における「極大値位置における比屈折率差の値以下」とは、複数の極大値位置のうち最も大きな比屈折率差の値に対応する極大値位置における比屈折率差の値以下を意味する。また、光ファイバが、コアを隙間なく囲む内側クラッドと、当該内側クラッドを隙間なく囲む外側クラッドとを備える場合、内側クラッドは単にクラッドと呼ばれることがある。
【0046】
活性元素添加光ファイバを例えばこのように形成することで、上記実効断面積を大きくすることができる。
【0047】
あるいは、この活性元素添加光ファイバは、前記コアの外周面を隙間なく囲むクラッドをさらに備え、前記コアのうち0.055d≦r≦0.1dの領域における前記クラッドに対する比屈折率差の平均値が前記極大値位置における比屈折率差の値以上であり、前記コアの前記クラッドに対する比屈折率差の平均値が0%よりも大きく0.18%以下であり、前記極大値位置が0.55d以下であってもよい。
【0048】
なお、この場合にも、極大値位置は複数存在しても良い。ここで、極大値位置が複数存在する場合における「極大値位置における比屈折率差の値以上」とは、複数の極大値位置のうち最も大きな比屈折率差の値に対応する極大値位置における比屈折率差の値以上を意味する。
【0049】
活性元素添加光ファイバを例えばこのように形成することで、上記実効断面積を大きくし得る。
【0050】
また、前記コアは、前記極大値位置から少なくとも前記コアの内側に向かうにつれて屈折率が徐々に低下する屈折率分布を有してもよい。
【0051】
このような屈折率分布では、例えば、矩形状の屈折率分布や、矩形状の屈折率分布に対して極大値位置とその近傍が上に凸の形状に屈折率が突出する屈折率分布と比べ、極大値位置近傍の屈折率分布のうち端部近傍がコアの中心軸からより遠ざかりやすくなる。このように、極大値位置近傍の屈折率分布の端部近傍がコアの中心軸から遠ざかることによって、LP01モードの光がコア中心軸近傍に集中しすぎることが一層抑制され得、LP01モードの光の実効断面積がより一層大きくなり得る。したがって、誘導ラマン散乱が生じることを抑制し得、ビーム品質の劣化が抑制されて光が増幅され得る。
【0052】
また、上記課題を解決するため、本発明の共振器は、上記のいずれかの活性元素添加光ファイバと、前記活性元素添加光ファイバの一方側において、前記活性元素添加光ファイバの前記コアと光学的に結合し、励起された前記活性元素が放出する光の少なくとも一部の波長の光を反射する第1ミラーと、前記活性元素添加光ファイバの他方側において、前記活性元素添加光ファイバの前記コアと光学的に結合し、前記第1ミラーが反射する光のうち少なくとも一部の波長の光を前記第1ミラーよりも低い反射率で反射する第2ミラーと、を備えることを特徴とするものである。
【0053】
この共振器によれば、第1ミラーと第2ミラーとの間を行き来する光において、LP01モードの光を増幅しつつ、高次モードの光の増幅が抑制される。従って、ビーム品質の劣化が抑制された光を出射することができる。
【0054】
また、上記課題を解決するため、本発明のファイバレーザ装置は、上記のいずれかの活性元素添加光ファイバと、前記活性元素を励起する光を出射する光源と、を備えることを特徴とするものである。
【0055】
上記のようにこの活性元素添加光ファイバではビーム品質の劣化が抑制されて光が増幅され得るため、このファイバレーザ装置によれば、ビーム品質の劣化が抑制された光を出射することができる。
【発明の効果】
【0056】
以上のように、本発明によれば、ビーム品質の劣化を抑制し得る活性元素添加光ファイバ、共振器、及び、ファイバレーザ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】本発明の実施形態に係るファイバレーザ装置を示す図である。
【
図2】活性元素添加光ファイバの長手方向に垂直な断面の様子を示す図である。
【
図3】活性元素添加光ファイバのコアに添加される活性元素の濃度分布を示す図である。
【
図4】活性元素添加光ファイバのコアの屈折率分布の様子を示す図である。
【
図5】コアの半径と第1領域の半径との比と、活性元素添加光ファイバから出射する光のビーム品質との関係を示す図である。
【
図6】コアの半径と第1領域の半径との比と、活性元素添加光ファイバに入射する励起光から活性元素添加光ファイバから出射する光に変換される変換効率との関係を示す図である。
【
図7】ファイバレーザ装置の変形例を示す図である。
【
図8】クラッドの直径と破断確率との関係を示す図である。
【
図9】コアの第1領域に添加されるアルミニウムの濃度分布を示す図である。
【
図10】コアの第1領域に添加されるリンの濃度分布を示す図である。
【
図11】コアの第1領域に添加されるアルミニウムとリンとの濃度差分布の一例を示す図である。
【
図12】コアの第1領域に添加されるアルミニウムとリンとの濃度差分布の他の例を示す図である。
【
図13】コアの第1領域にアルミニウムが添加され、リンが添加されていない場合におけるアルミニウムの濃度分布の一例を示す図である。
【
図14】コアの第1領域にリンが添加され、アルミニウムが添加されていない場合におけるリンの濃度分布の一例を示す図である。
【
図15】コアの第1領域にホウ素が添加されている場合における濃度分布の一例を示す図である。
【
図16】比較例の活性元素添加光ファイバのコアの屈折率分布の一例を示す図である。
【
図17】本発明の活性元素添加光ファイバの実効断面積とステップ型光ファイバの実効断面積との差と、本発明の活性元素添加光ファイバのコアにおける極大値位置との関係の一例を示す図である。
【
図18】本発明の活性元素添加光ファイバの実効断面積とステップ型光ファイバの実効断面積との差と、本発明の活性元素添加光ファイバのコアにおける極大値位置との関係の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明に係る光ファイバ及びレーザ装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができる。なお、理解の容易のため、それぞれの図のスケールと、以下の説明に記載のスケールとが異なる場合がある。また、以下において、屈折率を使用して説明する箇所は比屈折率差を使用して説明してもよく、比屈折率差を使用して説明する箇所は屈折率差を使用して説明してもよい場合がある。
【0059】
図1は、本実施形態に係るレーザ装置を示す図である。
図1に示すように、本実施形態のファイバレーザ装置1は、共振器型のファイバレーザ装置とされ、活性元素添加光ファイバ10と、励起光源20と、第1光ファイバ30と、第1光ファイバ30に設けられる第1FBG35と、第2光ファイバ40と、第2光ファイバ40に設けられる第2FBG45と、光コンバイナ50と、第3光ファイバ60と、を主な構成として備える。
【0060】
<活性元素添加光ファイバの構成>
図2は、
図1に示す活性元素添加光ファイバ10の断面の様子を示す断面図である。
図2に示すように活性元素添加光ファイバ10は、コア11と、コア11の外周面を隙間なく囲む内側クラッド12と、内側クラッド12の外周面を被覆する外側クラッド13と、外側クラッド13を被覆する被覆層14とを主な構成として備える。内側クラッド12の屈折率はコア11の屈折率よりも低く、外側クラッド13の屈折率は内側クラッド12の屈折率よりも低くされている。つまり、活性元素添加光ファイバ10は、いわゆるダブルクラッド光ファイバである。
【0061】
コア11は、第1領域11aと第2領域11bとを有する。以下、コア11の半径をdとし、コア11の径方向における中心軸Cからの距離をrとして説明する。第1領域11aは、中心軸Cから半径raまでの領域とされる。つまり、第1領域11aは、0≦r≦raの領域とされる。ただし、第1領域11aの半径raは、コア11の半径dの10%より大きく75%以下である。つまり、0.1d<ra≦0.75dである。また、第2領域11bは、第1領域11aを囲み、第1領域11aの外周面からコア11の外周面までの領域とされる。つまり、第2領域11bは、第1領域11aを隙間なく囲みra<r≦dの領域とされる。
【0062】
コア11には、励起光源20から出射される励起光で励起される活性元素が一部に添加されている。
図3は、活性元素添加光ファイバ10のコア11に添加される活性元素の濃度分布を示す図である。
図3に示すように、第1領域11aは、上記活性元素が全体に渡って添加される石英ガラスから成り、第2領域11bは、上記活性元素が非添加の石英ガラスから成る。従って、活性元素が径方向の所定の領域に添加されているとすると、本実施形態では、第1領域11aが当該所定の領域となり、この所定の領域の半径がraとなる。
【0063】
なお、活性元素が添加されている領域とは、活性元素が0.5wt%以上添加されている領域を意味し、活性元素添加光ファイバの製造時における活性元素の拡散等により、活性元素が0.5wt%より低い濃度で検出される領域は、活性元素が添加されている領域と言えず、活性元素が非添加の領域である。従って、第1領域11aには、全体に渡って活性元素が0.5wt%以上添加されており、第2領域11bから活性元素が検出されたとしても、それはノイズや製造時誤差等であり、検出量は0.5wt%より低い量となる。
【0064】
第1領域11aの中心近傍における活性元素の濃度は、その周りの活性元素が添加される領域での当該活性元素の平均濃度よりも高くされる。この中心近傍は、
図3に示すように、コアの半径の10%の領域とされる。つまり、0≦r≦0.1dの領域における活性元素の濃度の平均値は、0.1d<r≦raの領域における前記活性元素の濃度の平均値よりも高い。
【0065】
本実施形態では、第1領域11aに添加される活性元素がイッテルビウム(Yb)とされ、第1領域11aには、フォトダークニングに対する耐性を高めるためにアルミニウム及びリンが更に添加されている。また、第2領域11bには、例えば屈折率を上昇させるゲルマニウム(Ge)等のドーパントが添加されている。
図4は、活性元素添加光ファイバ10のコア11の屈折率分布の様子を示す図である。このような添加物およびその濃度分布により、第1領域11a及び第2領域11bは
図4に示す屈折率分布とされる。
【0066】
なお、屈折率を調整するために、フッ素(F)やホウ素(B)等のドーパントが少なくとも一部に添加されても良い。また、本実施形態と異なるが、第1領域11aに添加される活性元素はイッテルビウム以外の活性元素であっても良い。このような活性元素としては、希土類元素として、イッテルビウムの他にツリウム(Tm)、セリウム(Ce)、ネオジウム(Nd)、ユーロピウム(Eu)、エルビウム(Er)等が挙げられ、さらに活性元素として、希土類元素の他にビスマス(Bi)等を挙げることができる。
【0067】
図4に示すように、コア11は、中心軸Cから内側クラッド12に対して比屈折率差が0.05%となるまでの領域であり、内側クラッド12に対して比屈折率差が0.05%となる部分の内側とされる。
図4には、比屈折率差が0.05%である位置、すなわちコア11の外周面の位置が破線で示されている。なお、このようにコア11の領域が定義される理由は、比屈折率差が0.05%未満の領域の形状が多少変わっても、活性元素添加光ファイバ10の光学特性に与える影響が殆どないためである。なお、コアの比屈折率差は、クラッドにおけるコアに隣接する領域に対するコアの比屈折率差を指す。
【0068】
本実施形態では、第2領域11bでは、第1領域11aとの境界から内周近傍まで屈折率が上昇し、内周近傍から外周近傍までの領域において、概ね一定の比屈折率差とされ、外周近傍の領域において内側クラッド12に向けて比屈折率差が低下している。本実施形態では、1.1ra<r≦0.9dの領域の比屈折率差の標準偏差が0.01以下とされ、少なくとも第2領域11bにおける1.1ra<r≦dの領域には、ゲルマニウムのみが添加されて、屈折率が調節されている。
【0069】
本実施形態では、0≦r≦0.1dの領域における屈折率の平均値は、0.1d<r≦raの領域における屈折率の平均値よりも高い。また、0≦r≦0.1dの領域における屈折率の平均値がr=0.2dの領域における屈折率よりも高い。
【0070】
また、0.2d<r≦0.9dの領域において、0≦r≦0.9dの領域における屈折率の平均値よりも高い屈折率で、屈折率が極大となる極大値位置が少なくとも1カ所存在する。より具体的には、極大値位置とは、0≦r≦0.9dの領域における屈折率の平均値γよりも高い屈折率を有する領域の径方向の長さγwが、活性元素添加光ファイバ10を伝搬する光の波長の1/10以上ある領域における屈折率の極大値の位置をいう。
図4に示すように、本実施形態では、このような極大値位置が2カ所存在し、また、屈折率が極小となる位置が2カ所存在する。それぞれの極大値位置は、第1領域11a内に存在し、第2領域11b内にはこのような極大値位置が存在しない。一方の極大値位置は、中心軸上に存在し、他方の極大値位置は、0.4d<r≦raの領域内に存在する。
図4に示す例では、他方の極大値位置は概ねr=0.5dとなる位置に存在する。本実施形態において、この他方の極大値位置近傍の屈折率分布は、当該極大値位置から少なくとも前記コアの内側に向かうにつれて屈折率が徐々に低下する屈折率分布になっている。当該屈折率分布は、極大値位置からコア11の中心軸側に向かって屈折率の単調減少が終わる一方の特異点を有しており、この一方の特異点は、コア11の中心軸から極大値位置の間に存在している。なお、この屈折率分布は、極大値位置からクラッド側に向かって屈折率の単調減少が終わる他方の特異点を有している。また、これらの極大値位置での屈折率は、標準偏差が0.01以下である1.1ra<r≦0.9dの領域における屈折率よりも高い。
【0071】
この活性元素添加光ファイバ10は、フューモードファイバであり、コア11を少なくとも波長1070nmの光が伝搬する場合に、当該光は、基本モードであるLP01モードの光の他に少なくともLP11モードの光が伝搬することができる。従って、活性元素添加光ファイバ10がシングルモードファイバである場合と比べて、光の実効断面積を大きくすることができる。なお、本実施形態の活性元素添加光ファイバ10は、波長1030nmから1090nmのいずれかの波長の光が伝搬する場合であっても、基本モードであるLP01モードの光の他に少なくともLP11モードの光が伝搬することができる。
【0072】
ここで、第1領域11aの半径raについて説明する。
【0073】
図5は、コア11の半径dと第1領域の半径raとの比と、活性元素添加光ファイバ10から出射する光のビーム品質(M
2)との関係を示す図である。より具体的には、
図5は、半径dと半径raとの比ra/dを変えたときにコア11を伝搬する光のモードが増幅される程度を数値シミュレーションによって見積もり、それをビーム品質(M
2)に換算した図である。
図5に示すように、コア11の半径dと活性元素が全体に渡って添加される第1領域11aの半径raとの比ra/dが0.7を超えると、すなわち、ra>0.7dの場合、ビーム品質が僅かに劣化し始めることが分かる。別言すれば、ra≦0.7dであれば、ビーム品質の劣化が抑制され得る。また、ra/dが0.7よりも小さい場合、すなわち、ra<0.7dである場合、M
2が概ね1に収束し、ビーム品質の劣化がより抑制されることが分かる。一方、上記比ra/dが0.75を超えると高次モードの増幅が大きくなり、ビーム品質が急激に劣化することが分かる。つまり、上記のように、活性元素添加光ファイバ10のコア11において、ra/dが0.75以下であることで、すなわち、第1領域11aの半径raが0<ra≦0.75dであることで、活性元素添加光ファイバ10において高次モードの増幅が抑制され、出射する光のビーム品質の劣化が抑制される。このように、第1領域11aの半径raが0<ra≦0.75dであれば、活性元素添加光ファイバ10において高次モードの増幅が抑制され、出射する光のビーム品質の劣化が抑制される。また、0<ra≦0.7dであれば、活性元素添加光ファイバ10において高次モードの増幅がより抑制され、出射する光のビーム品質の劣化がより抑制される。
【0074】
なお、第1領域11aの半径raが0.1dよりも大きい場合、液浸法などの既存の製法を用いて活性元素添加光ファイバを容易に製造し得る。
【0075】
図6は、コア11の半径dと第1領域11aの半径raとの比と、活性元素添加光ファイバ10に入射する励起光から活性元素添加光ファイバ10から出射する光に変換される変換効率との関係を示す図である。変換効率は、「活性元素添加光ファイバ10から出射する光のパワー/活性元素添加光ファイバ10に入射する励起光のパワー」で示される。
図6に示すように、コア11の半径dと第1領域11aの半径raとの比(ra/d)が0.4であると、最大の変換効率の概ね90%となり、また、ra/dが0.4よりも大きくなると、すなわち、0.4d<raであると、変換効率の最大値に対する比率が90%よりも大きくなる。なお、上述のように、ra/dが0.75以下である場合、出射する光のビーム品質の劣化が抑制される。つまり、ra/dが0.75以下であれば、ra/dを0.4よりも大きくすることで、変換効率の低下を抑制しつつ、ビーム品質の良いレーザを作ることができる。従って、変換効率がコア11の半径dと第1領域11aの半径raとの比が0.4より大きいことが好ましい。つまり、0.4d<raであることが、光の増幅の効率を高くすることができる観点から好ましい。さらに、コア11の半径dと第1領域11aの半径raとの比が0.5であると、最大の変換効率の概ね97%となる。従って、変換効率がコア11の半径dと第1領域11aの半径raとの比が0.5より大きいことが更に好ましい。つまり、0.5d<raであることが、光の増幅の効率を更に高くすることができる観点から好ましい。また、0.5d<raであれば、高次モードの増幅を抑制しつつ、基本モードを効率よく増幅し得る。
【0076】
<活性元素添加光ファイバ以外の構成>
第1光ファイバ30は、コアの構成が活性元素添加光ファイバ10のコア11の構成と異なるダブルクラッド光ファイバとされる。第1光ファイバ30は、活性元素添加光ファイバ10の一方に端部に接続される。従って、活性元素添加光ファイバ10のコア11と第1光ファイバ30のコアとが光学的に結合され、活性元素添加光ファイバ10の内側クラッド12と第1光ファイバ30の内側クラッドとが光学的に結合される。
【0077】
第1光ファイバ30のコアは、活性元素が添加されていない点において、活性元素添加光ファイバ10のコア11と主に異なる。第1光ファイバ30は、フューモードファイバとされ、活性元素添加光ファイバ10のコア11が伝搬する光と同様の光を伝搬する。従って、活性元素添加光ファイバ10のコア11を伝搬する各LPモードの光は、そのまま第1光ファイバ30のコアを伝搬することができる。なお、第1光ファイバ30のコアの定義は活性元素添加光ファイバ10のコア11の定義と同様とされる。
【0078】
上記のように第1光ファイバ30には第1FBG35が設けられている。こうして、第1FBG35は活性元素添加光ファイバ10の一方側に配置され、活性元素添加光ファイバ10のコア11と光学的に結合する。第1FBG35は、コアにおける第1FBG35以外の部分よりも屈折率が高い高屈折率部と、コアにおける第1FBG35以外の部分と同様の屈折率である低屈折率部とが、コアの長手方向に沿って周期的に繰り返されている。この高屈折率部の繰り返しパターンは、例えば高屈折率部となる部位に紫外線が照射されて形成される。この様にして形成される第1FBG35は、活性元素添加光ファイバ10のコア11に添加されている活性元素が励起状態とされたときに放出する光のうち所定波長を含む光を反射する第1ミラーとして構成されている。例えば、本実施形態のように活性元素添加光ファイバ10のコア11に添加される活性元素がイッテルビウムである場合、上記所定波長は、例えば、1030nmから1090nmとされ、1070nm等が挙げられる。また、第1FBG35の反射率は、後述の第2FBG45の反射率よりも高く、上記所定波長を含む光を例えば99%以上で反射する。
【0079】
第2光ファイバ40は、外側クラッドを有さない点において、第1光ファイバ30と異なり、第2光ファイバ40の他の構成は第1光ファイバ30の外側クラッド以外の構成と同様とされる。従って、第2光ファイバ40は、コアをクラッドが囲み、当該クラッドが被覆層で被覆される構成である。第2光ファイバ40は、活性元素添加光ファイバ10の他方に端部に接続される。従って、活性元素添加光ファイバ10のコア11と第2光ファイバ40のコアとが光学的に結合され、活性元素添加光ファイバ10の内側クラッド12と第2光ファイバ40のクラッドとが光学的に結合される。従って、活性元素添加光ファイバ10のコア11を伝搬するフューモードの光は、フューモードのまま第2光ファイバ40のコアを伝搬する。なお、
図1に示すファイバレーザ装置1の構成の場合、活性元素添加光ファイバ10の内側クラッド12と第2光ファイバ40のクラッドとが光学的に結合されなくても良い。
【0080】
第2光ファイバ40のコアには、上記のように第2FBG45が設けられている。こうして、第2FBG45は活性元素添加光ファイバ10の他方側に配置され、活性元素添加光ファイバ10のコア11と光学的に結合する。第2FBG45は、第1FBG35と同様に高屈折率部と低屈折率部とが周期的に繰り返されて形成されている。第2FBG45は、第1FBG35が反射する所定波長を含む光を第1FBG35よりも低い反射率で反射する第2ミラーとして構成されている。第2FBG45は、第1FBG35が反射する光が入射する場合に、この光を例えば10%程度の反射率で反射する。こうして、第1FBG35と活性元素添加光ファイバ10と第2FBG45とで、共振器が形成されている。また、本実施形態では第2光ファイバ40の活性元素添加光ファイバ10側と反対側の他端には特に何も接続されていないが、第2光ファイバ40のコアよりも大径のガラスロッド等が接続されても良い。
【0081】
励起光源20は、複数のレーザダイオード21から構成される。本実施形態では、レーザダイオード21は、例えば、GaAs系半導体を材料としたファブリペロー型半導体レーザであり中心波長が915nmの励起光を出射する。また、励起光源20のそれぞれのレーザダイオード21は光ファイバ25に接続されており、レーザダイオード21から出射する励起光は光ファイバ25を例えばマルチモード光として伝搬する。
【0082】
それぞれの光ファイバ25は、光コンバイナ50において、第1光ファイバ30の一端に接続されている。具体的には、それぞれの光ファイバ25のコアが第1光ファイバ30の内側クラッドと光学的に結合するように、それぞれの光ファイバ25のコアと第1光ファイバ30の内側クラッドとが接続されている。従って、それぞれのレーザダイオード21が出射する励起光は、光ファイバ25を介して第1光ファイバ30の内側クラッドに入射して、第1光ファイバ30の内側クラッドから活性元素添加光ファイバ10の内側クラッド12に入射する。
【0083】
第3光ファイバ60は、コア及びクラッドを有する光ファイバとされる。第3光ファイバ60のコアは、光コンバイナ50において第1光ファイバ30のコアに接続されている。従って、第1光ファイバ30のコアを光コンバイナ50に向かって伝搬する光は、第3光ファイバ60のコアに入射する。また、第3光ファイバ60の第1光ファイバ30と接続される側と反対側には、光を熱に変換する終端部65が設けられている。
【0084】
次に、ファイバレーザ装置1の動作について説明する。
【0085】
まず、励起光源20のそれぞれのレーザダイオード21から励起光が出射される。この励起光は光ファイバ25から、第1光ファイバ30の内側クラッドを介して、活性元素添加光ファイバ10の内側クラッド12に入射して、当該内側クラッド12を主に伝搬する。内側クラッド12を伝搬する励起光は、コア11を通過する際にコア11に添加されている活性元素を励起する。励起状態とされた活性元素は、所定波長を含む波長帯域の自然放出光を放出する。この自然放出光を起点として、第1FBG35及び第2FBG45で共通して反射される所定波長を含む光が、第1FBG35と第2FBG45との間を共振する。共振する光が活性元素添加光ファイバ10のコア11を伝搬するときに、励起状態の活性元素が誘導放出を起こして、共振する光が増幅される。共振する光のうち、一部の光は第2FBG45を透過して、第2光ファイバ40から出射する。そして、第1FBG35と活性元素添加光ファイバ10と第2FBG45とを含む共振器内における利得と損失が等しくなったところでレーザ発振状態となり、第2光ファイバ40から一定のパワーの光が出射する。
【0086】
なお、活性元素添加光ファイバ10側から第1光ファイバ30に伝搬し第1FBG35を透過する光の大部分は、終端部65で熱に変換されて消滅する。
【0087】
ところで、上記のように活性元素添加光ファイバ10、第1光ファイバ30及び第2光ファイバ40はそれぞれLP11モードの光を伝搬可能なフューモードファイバとされる。従って、第1光ファイバ30と活性元素添加光ファイバ10との接続点、及び、第2光ファイバ40と活性元素添加光ファイバ10との接続点やその他の位置において、LP11モードの光が励振され得る。しかし、活性元素添加光ファイバ10では、LP01モードの光が増幅され、高次モードの光の増幅が抑制される。このため、第2光ファイバ40から出射する光は、LP11モードの光の増幅が抑制された光とされ得る。従って、本実施形態のファイバレーザ装置1によれば、ビーム品質の劣化が抑制された光が出射され得る。
【0088】
以上説明したように、本実施形態の活性元素添加光ファイバ10では、活性元素が全体に渡って添加される第1領域11aの半径raが0.1d<ra≦0.75dであり、第2領域11bは活性元素が非添加とされる。さらに、0≦r≦0.1dの領域における活性元素の濃度の平均値が、0.1d<r≦raの領域における前記活性元素の濃度の平均値よりも高く、0.2d<r≦0.9dの領域において、0≦r≦0.9dの領域における屈折率の平均値よりも高い屈折率で、極大値位置が少なくとも1カ所存在する。
【0089】
上記半径の第1領域11aに活性元素が添加され、第2領域11bに活性元素が非添加とされることで、コア11を伝搬する基本モードの光を増幅しつつ、高次モードの光の増幅が抑制され得る。また、0≦r≦0.1dの領域における活性元素の濃度の平均値が、0.1d<r≦raの領域における活性元素の濃度の平均値よりも高いことで、コアを伝搬するLP01モードの光がより増幅され得る。その一方、0.2d<r≦0.9dの領域において、0≦r≦0.9dの領域における屈折率の平均値よりも高い屈折率で、極大値位置が少なくとも1カ所存在することで、LP01モードの光が中心軸近傍に集中しすぎることを抑制して、LP01モードの光の実効断面積を大きくし得る。このため、誘導ラマン散乱が生じることを抑制し得る。従って、本実施形態の活性元素添加光ファイバによれば、ビーム品質の劣化が抑制されて光を増幅することができる。
【0090】
また、上述のように、上記他方の極大値位置近傍の屈折率分布は、当該極大値位置から少なくとも前記コアの内側に向かうにつれて屈折率が徐々に低下する屈折率分布になっている。このような屈折率分布では、例えば、矩形状の屈折率分布に対して極大値位置とその近傍が上に凸の形状に屈折率が突出する屈折率分布の場合と比べて、屈折率が傾斜する分だけ極大値位置は中心軸から遠ざかり易くなる。このように、極大値位置が中心軸から遠ざかることで、LP01モードの光がコア中心軸近傍に集中しすぎることが一層抑制され得、LP01モードの光の実効断面積がより一層大きくなり得る。したがって、誘導ラマン散乱が生じることを抑制し得、ビーム品質の劣化が抑制されて光が増幅され得る。
【0091】
従って、この活性元素添加光ファイバを有する共振器、及びファイバレーザ装置1によれば、ビーム品質の劣化が抑制された光を出射することができる。
【0092】
また、本実施形態の活性元素添加光ファイバ10では、0≦r≦0.1dの領域における屈折率の平均値がr=0.2dの領域における屈折率よりも高い。このため、LP01モードの光の増幅の効率をより高くすることができる。ただし、r=0.2dの領域における屈折率が、0≦r≦0.1dの領域における屈折率の平均値以上であってもよい。
【0093】
また、本実施形態の活性元素添加光ファイバ10では、0.4d<r≦raの領域において、極大値位置が少なくとも1カ所存在する。このため、LP01モードの光がコア11の中心に集中しすぎることを抑制しつつ、LP01モードの光が第1領域11aからはみ出すことを抑制して、効率よくLP01モードの光を増幅し得る。なお、このような範囲に極大値位置が存在しなくてもよい。
【0094】
また、本実施形態の活性元素添加光ファイバ10では、1.1ra<r≦0.9dの領域の比屈折率差の標準偏差が0.01以下である。一般的に、コアの外周側における屈折率は、コアを伝搬する光のパワーの分布に影響しやすい。このため、このような構成によれば、光のパワーが意図せず乱れることを抑制することができる。なお、1.1ra<r≦0.9dの領域の比屈折率差の標準偏差が0.01以下でなくともよい。
【0095】
また、本実施形態の活性元素添加光ファイバ10では、1.1ra<r≦dの領域は、ゲルマニウムのみが添加された石英から成る。従って、1.1ra<r≦0.9dの領域の比屈折率差の標準偏差を0.01以下にし易い。ただし、第2領域11bに活性元素が添加されない限りにおいて、1.1ra<r≦dの領域にゲルマニウム以外のドーパントが添加されてもよい。
【0096】
以上、本発明について実施形態を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されて解釈されるものではなく、本発明の目的を達成する範囲において適宜構成を変更することができる。
【0097】
例えば、上記実施形態の活性元素添加光ファイバ10のLP02モードの光の理論カットオフ波長は1760nmよりも短いことが好ましい。LP02モードの光の理論カットオフ波長をこのようにすることで、例えば、活性元素添加光ファイバ10を直径120mmで曲げて活性元素添加光ファイバ10に1070nmの光を伝搬させる場合に、この直径120mmに曲げられた活性元素添加光ファイバ10の部位において、LP02モードのカットオフ波長を1070nmより短くすることができ、LP01モードの光を伝搬させつつもLP02モードの光を漏洩させることができる。
図7は、ファイバレーザ装置1の変形例を示す図である。具体的には、このように活性元素添加光ファイバ10を直径120mmで曲げた部位を有するファイバレーザ装置を示す図である。なお、
図7の説明において、上記実施形態で説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
図7のファイバレーザ装置1では、活性元素添加光ファイバ10のLP02モードの光の理論カットオフ波長は1760nmよりも短く、活性元素添加光ファイバ10が直径120mmで曲げられた屈曲部15を有する点で上記実施形態のファイバレーザ装置と異なる。この屈曲部15を波長1760nmの光が伝搬することでLP02モードの光を漏洩させることができる。従って、活性元素添加光ファイバ10が屈曲部15を有することで、LP01モードの光を伝搬させつつも、偶モードの高次モードの光の伝搬を抑制することができる。
【0098】
ところで、活性元素添加光ファイバ10を直径120mmで曲げると、活性元素添加光ファイバ10が破断する懸念がある。そこで、この場合には活性元素添加光ファイバ10の石英ガラスから成るクラッドの直径が所定の大きさ以内にされることが好ましい。この石英ガラスから成るクラッドは、外側クラッド13が樹脂から成る場合には、内側クラッド12であり、外側クラッド13が石英ガラスから成る場合には、内側クラッド12及び外側クラッド13である。
図8は、クラッドの直径と破断確率との関係を示す図である。この破断確率は、石英ガラスから成るクラッドを有する光ファイバを直径120mmで1周巻き、光ファイバの長さが1%伸びる荷重を印加する場合において、8万時間後における光ファイバの破断確率である。
図8より、クラッドの直径が430μm以下であれば、8万時間後における光ファイバの破断確率を10
-6以下に抑えることができる。従って、外側クラッド13が樹脂から成る場合には、内側クラッド12の直径が430μm以下とされることが好ましく、外側クラッド13が石英ガラスから成る場合には、外側クラッド13の直径が430μm以下とされることが好ましい。
【0099】
また、上記実施形態では、ファイバレーザ装置として、共振器型のファイバレーザ装置を例に説明したが、本発明の活性元素添加光ファイバ10が用いられるファイバレーザ装置は、例えば、活性元素添加光ファイバ10に励起光及び種光が入射するMO-PA(Master Oscillator - Power Amplifier)型であっても良い。
【0100】
また、上記実施形態では、中心軸Cから内側クラッド12に対して比屈折率差が0.05%となるまでの領域をコア11としたが、コアとする領域は、光ファイバの中心軸から内側クラッドに対して比屈折率差が0%よりも大きい領域であれば、比屈折率差が0.05%となるまでの領域でなくてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、0≦r≦0.1dの領域における活性元素の濃度の平均値は、0.1d<r≦raの領域における前記活性元素の濃度の平均値よりも高い例を説明したが、0≦r≦0.1dの領域における活性元素の濃度の平均値は、0.1d<r≦raの領域における前記活性元素の濃度の平均値よりも高くなくてもよい。0≦r≦0.1dの領域における活性元素の濃度の平均値が0.1d<r≦raの領域における前記活性元素の濃度の平均値よりも高くない場合でも、ビーム品質の劣化を抑制し得る活性元素添加光ファイバになり得る。
【0102】
また、0.1d≦r≦0.8raの領域における屈折率の平均値が1.1ra≦r≦0.9dの領域における屈折率の平均値よりも高くてもよい。この場合、0.2d<r<0.9dの範囲における屈折率の極大値を大きくすることによって、コアを伝搬する光の実効断面積をより一層拡大することができる。
【0103】
また、0.1d≦r≦0.8raの領域における屈折率の平均値が1.1ra≦r≦0.9dの領域における屈折率の平均値よりも低くてもよい。この場合、光ファイバ中を伝搬する光の電界分布の広がりを抑制し得、コアを伝搬する光の実効断面積を小さくし得る。このため、LP01モードとLP11モードとの伝搬定数差を大きくすることができ、ビーム品質の劣化を抑制し得る。
【0104】
また、0.1d≦r≦0.8raの領域における屈折率の平均値が1.1ra≦r≦0.9dの領域における屈折率の平均値と同等であってもよい。この場合、r<0.1dの範囲における屈折率の極大値が実効断面積を減少させる効果と、0.2d<r<0.9dの範囲における屈折率の極大値が実効断面積を拡大させる効果とが同等であれば、本発明に係る光ファイバと矩形状の屈折率分布を持つ光ファイバとを、光損失を抑制して接続することができる。
【0105】
また、上記極大値位置をコアに添加される活性元素以外の元素によって形成してもよい。以下、この点について説明する。
【0106】
例えば、コアの第1領域の少なくとも一部に活性元素とともにアルミニウム及びリンを添加してもよい。アルミニウム又はリンを活性元素とともにコアに添加することによって、フォトダークニングを抑制し得る。また、アルミニウムとリンとを共添加する場合において、アルミニウムの濃度がリンの濃度よりも高い場合はアルミニウムが屈折率を上昇させるアップドーパントとして作用し、リンが屈折率を減少させるダウンドーパントとして作用する。一方、リンの濃度がアルミニウムの濃度よりも高い場合は、リンがアップドーパントして作用し、アルミニウムがダウンドーパントとして作用する。そのため、アルミニウムとリンとを濃度差を付けて共添加することによって、コアの屈折率が過度に上昇することを抑制しつつ、フォトダークニングを抑制し得る。このように第1領域にアップドーパントとダウンドーパントとをさらに添加する場合、例えば、
図9に示す濃度分布でアルミニウムを添加し、
図10に示す濃度分布でリンを添加してもよい。この場合、
図11に示すようなアルミニウムとリンとの濃度差の分布が形成され、濃度差が最大となる0.5d付近に極大値位置が形成される。また、
図12のようなアルミニウムとリンとの濃度差の分布によっても、0.5d付近に極大値位置が形成される。なお、第1領域に添加されるアップドーパント及びダウンドーパントのそれぞれの濃度分布を調整することによって、第1領域のうち0.5d付近とは異なる位置に極大値位置を形成することが可能である。
【0107】
また、コアの第1領域に活性元素とともにアップドーパントを添加してもよい。例えば、第1領域の少なくとも一部にアルミニウムをアップドーパントとしてさらに添加してもよい。例えば、
図13に示す例では、
図11に示す0.5d付近の極大値位置においてアルミニウムの濃度が最大となるようにアルミニウムが添加される。このような濃度分布でアップドーパントであるアルミニウムを添加すれば、0.5d付近において屈折率がより上昇し、0.5d付近において極大値位置を形成することが容易となる。また、
図14に示す例では、
図4に示す0.5d付近の極大値位置においてリンの濃度が最大となるようにリンが添加される。このような濃度分布でアップドーパントであるリンを添加すれば、0.5d付近において屈折率がより上昇し、0.5d付近において極大値位置を形成することが容易となる。なお、第1領域に添加されるアップドーパントの濃度分布を調整することによって、第1領域のうち0.5d付近とは異なる位置に極大値位置を形成することが可能である。
【0108】
また、コアの第1領域の少なくとも一部に活性元素とともにダウンドーパントを添加してもよい。例えば、第1領域にホウ素をダウンドーパントとしてさらに添加してもよい。例えば、
図15に示す例では、
図11に示す0.5d付近の極大値位置においてホウ素の濃度が最小となるようにホウ素が添加される。このような濃度分布でダウンドーパントであるホウ素を添加すれば、0.5d付近における屈折率の低下が抑制され、0.5d付近において極大値位置を形成することが容易となる。なお、第1領域に添加されるダウンドーパントの濃度分布を調整することによって、第1領域のうち0.5d付近とは異なる位置に極大値位置を形成することが可能である。
【0109】
なお、アップドーパントは上記に限定されず、例えばゲルマニウムであってもよい。また、ダウンドーパントは上記に限定されず、例えばフッ素であってもよい。
【0110】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0111】
(実施例1~33)
図2に示す活性元素添加光ファイバを実施例1~33として準備した。これらの活性元素添加光ファイバにおいて、第1領域11aにイッテルビウムを全体に渡って添加し、第2領域11bには活性元素を非添加とした。また、第1領域には、アルミニウムとリンとホウ素とを添加して屈折率を調整した。実施例1~30の活性元素添加光ファイバの次の値を表1に示す。A:0≦r≦0.1dの領域におけるイッテルビウムの濃度の平均値(wt%)、B:0.1d<r≦raの領域における前記活性元素の濃度の平均値(wt%)、C:0≦r≦0.1dの領域における内側クラッド12に対する比屈折率差の平均値(%)、D:r=0.2dの領域における内側クラッド12に対する比屈折率差(%)、E:0.2d<r≦0.9dの領域における極大値位置でのクラッドに対する比屈折率差(%)、F:d=1とする場合の極大値位置、G:d=1とする場合の第1領域11aの半径ra、H:0≦r≦0.9dの領域における内側クラッド12に対する比屈折率差の平均値(%)、I:1.1ra<r≦0.9dの領域における内側クラッド12に対する比屈折率差の分布の標準偏差。なお、実施例4の活性元素添加光ファイバの比屈折率分布は
図4に示す通りであり、この活性元素添加光ファイバのコアに添加されるイッテルビウムの濃度分布は
図3に示す通りである。また、それぞれの活性元素添加光ファイバは、LP02モードの理論カットオフ波長が1760nmよりも短い光ファイバであった。
【表1】
【0112】
(比較例1~33)
図16は、比較例の活性元素添加光ファイバのコアの屈折率分布の一例を示す図である。それぞれの比較例では、0≦r≦0.9dの領域でのクラッドに対する比屈折率差が一定であり、r=0.9dから外周側に向かって徐々に当該比屈折率差が下がるものとし、r=dの領域において、クラッドに対する比屈折率差が0.05%になるようにした。このことは、0≦r≦0.9dの領域において、活性元素が一定の濃度で添加され、r=0.9dから外周側に向かって徐々に活性元素の濃度が下がることを意味する。それぞれの比較例の0≦r≦0.9dの領域でのクラッドに対する比屈折率差が、対応する実施例のH:0≦r≦0.9dの領域における内側クラッド12に対する比屈折率差の平均値と同じになるようにした。従って、例えば、比較例1の0≦r≦0.9dの領域でのクラッドに対する比屈折率差は、実施例1のHと同じ値で0.141(%)である。このような条件で、以下のシミュレーションを行った。
【0113】
次に、実施例1~33の活性元素添加光ファイバ及び比較例1~33の活性元素添加光ファイバのそれぞれのコアに波長1070nmの光を伝搬させる場合のLP01モードの光の実効断面積(μm
2)をシミュレーションにより求めた。この結果を表2に示す。
【表2】
【0114】
表2に示す通り、実施例1~33の活性元素添加光ファイバにおけるLP01モードの光の実効断面積は、対応する比較例1~33の活性元素添加光ファイバにおけるLP01モードの光の実効断面積よりも大きい結果となった。これは、実施例1~33の活性元素添加光ファイバでは、0.2d<r≦0.9dの領域において、0≦r≦0.9dの領域における比屈折率差の平均値よりも高い比屈折率差で、極大値位置が少なくとも1カ所存在するためと考えられる。
【0115】
また、実施例1~33の活性元素添加光ファイバ及び比較例1~33の活性元素添加光ファイバのそれぞれのコアに波長1070nmの光を伝搬させる場合に当該活性元素添加光ファイバから出射する光のビーム品質(M
2)をシミュレーションにより求めた。この結果を表3に示す。
【表3】
【0116】
表3に示す通り、実施例1~33の活性元素添加光ファイバから出射する光のビーム品質の値は、対応する比較例1~33の活性元素添加光ファイバから出射する光のビーム品質の値よりも小さい値となった。すなわち、実施例1~30の活性元素添加光ファイバによれば、対応する比較例1~30の活性元素添加光ファイバに比べてビーム品質の劣化が抑制される結果となった。
【0117】
なお、表1~3に示す活性元素がイッテルビウムである実施例1~33において、0≦r≦0.1dの領域におけるイッテルビウムの濃度の平均値は1.31wt%以上2.86wt%であった。また、0.1d<r≦raの領域におけるイッテルビウムの濃度の平均値は1.00wt%以上2.25wt%であった。また、0≦r≦0.1dの領域におけるクラッドに対するコアの比屈折率差の平均値は0.125%以上0.195%以下であった。また、r=0.2dの領域におけるクラッドに対するコアの比屈折率差は0.091%以上0.138%以下であった。また、0.2d<r≦0.9dの領域における極大値位置でのクラッドに対する比屈折率差は0.11%以上0.19%以下であった。また、0≦r≦0.9dの領域におけるクラッドに対する比屈折率差の平均値は0.104%以上0.156%以下であった。また、1.1ra<r≦0.9dの領域の比屈折率差の標準偏差は0.004以下であった。
【0118】
次に、上記のように屈折率が極大となる極大値位置がコアに存在する活性元素添加光ファイバの当該コアを伝搬する光の実効断面積と、コアのクラッドに対する比屈折率差が一定である
図16に示すようなステップ型の屈折率分布を有する活性元素添加光ファイバのコアを伝搬する光の実効断面積との関係についてシミュレーションにより調べた。
【0119】
具体的には、ステップ型の活性元素添加光ファイバのうち1つの活性元素添加光ファイバの比屈折率差と、極大値を有する複数の活性元素添加光ファイバのうち1つの活性元素添加光ファイバの比屈折率差の平均値とが同じである、ステップ型の活性元素添加光ファイバと極大値を有する活性元素添加光ファイバの組を上記シミュレーションの対象とした。つまり、共通の平均値を有する光ファイバ組をシミュレーションの対象とした。なお、複数の光ファイバ組のそれぞれにおける共通の平均値は、光ファイバ組ごとに相違する。
【0120】
上記シミュレーションでは、上記組を構成するステップ型の活性元素添加光ファイバ及び極大値を有する活性元素添加光ファイバのそれぞれの実効断面積を算出し、これら実効断面積の差を求めた。具体的には、コアの中心軸からの距離rが0.055d以上0.1d以下の領域における上記平均値が上記極大値位置における比屈折率差の値以上になるように形成された極大値を有する活性元素添加光ファイバを用いて実効断面積の差を求めるシミュレーション1と、上記距離rが0以上0.1d以下の領域における上記平均値が上記極大値位置における比屈折率差の値以下になるように形成された極大値を有する活性元素添加光ファイバを用いて実効断面積の差を求めるシミュレーション2とを行った。
【0121】
シミュレーション1の結果を
図17に、シミュレーション2の結果を
図18にそれぞれ示す。なお、
図17及び
図18は、極大値を有する活性元素添加光ファイバのコアの比屈折率差の平均値Δがそれぞれ0.10%、0.14%、及び0.18%である場合の極大値位置と実効断面積の差との関係を示している。なお、上述のように、極大値を有する活性元素添加光ファイバのコアの比屈折率差の平均値Δは、当該極大値を有する活性元素添加光ファイバとともに上記光ファイバ組を構成するステップ型光ファイバのコアの比屈折率差に等しい。
【0122】
図17に示すように、0.055d以上0.1d以下の領域における比屈折率差の平均値が上記極大値以上である極大値を有する活性元素添加光ファイバを用いたシミュレーション1によれば、コアの比屈折率差の平均値が0%よりも大きく0.18%以下である場合、極大値位置が0.55d以下であることによって、上記光ファイバ組を構成する同じ比屈折率差を持つステップ型光ファイバの場合に比べて、実効断面積が大きくなることが分かった。つまり、このような極大値を有する活性元素添加光ファイバによれば、実効断面積が大きくなるため、誘導ラマン散乱が一層抑制され得る。なお、コアの比屈折率差の平均値が0%よりも大きく0.18%以下である場合とは、コアの屈折率が光が導波し得る程度に高い屈折率である場合であり、例えば、コアの比屈折率差の平均値が0.05%以上0.18%以下であってもよい。
【0123】
また、
図18に示すように、0以上0.1d以下の領域における比屈折率差の平均値が上記極大値以下である極大値を有する活性元素添加光ファイバを用いたシミュレーション2によれば、コアの比屈折率差の平均値が0.10%以上である場合、極大値位置が0.45d以上であることによって、上記光ファイバ組を構成する同じ比屈折率差を持つステップ型光ファイバの場合に比べて、実効断面積が大きくなることが分かった。つまり、このような極大値を有する活性元素添加光ファイバによれば、実効断面積が大きくなるため、誘導ラマン散乱が一層抑制され得る。なお、このシミュレーション2において、実効断面積が大きくなる効果を奏する比屈折率差の平均値の上限は、極大値位置が0.45d以上であれば特に限定されないが、例えば、比屈折率差の平均値の上限を0.18%に設定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0124】
以上説明したように、本発明によれば、ビーム品質の劣化を抑制し得る活性元素添加光ファイバ、共振器、及び、ファイバレーザ装置が提供され、加工用のレーザ装置等においての利用が期待される。
【符号の説明】
【0125】
1・・・ファイバレーザ装置
10・・・活性元素添加光ファイバ
11・・・コア
11a・・・第1領域
11b・・・第2領域
12・・・内側クラッド
13・・・外側クラッド
15・・・屈曲部
20・・・励起光源
30・・・第1光ファイバ
35・・・第1FBG
40・・・第2光ファイバ
45・・・第2FBG
60・・・第3光ファイバ