(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】発泡体、積層体、成形体及び光表示部材
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20240529BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20240529BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240529BHJP
C08J 7/00 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
C08J9/04 101
B32B5/18
B32B27/32 Z
C08J7/00 305
C08J9/04 CES
(21)【出願番号】P 2020065656
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】松井 梨絵
(72)【発明者】
【氏名】三上 洋輝
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-048468(JP,A)
【文献】特開2001-294699(JP,A)
【文献】特開2014-070166(JP,A)
【文献】特開平01-190735(JP,A)
【文献】特開平04-053841(JP,A)
【文献】特開昭57-145130(JP,A)
【文献】特開2020-055917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00-44/60
B29C 67/20
B32B 1/00-43/00
C08J 7/00
C08J 9/00-9/42
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面のホール個数が、2個/100mm
2以下であり、かつ全光線透過率が20%以上であり、前記表面から深さ200μmまでのスキン層の架橋度が、前記スキン層の内層側に設けられたコア層の架橋度より低く、前記スキン層とコア層との架橋度の差が7質量%以上である発泡体
を備える、光表示部材。
【請求項2】
前記発泡体の厚みが、0.5mm以上5.0mm以下である、請求項1に記載の
光表示部材。
【請求項3】
前記発泡体がポリオレフィン系樹脂を含有するポリオレフィン系樹脂組成物を発泡してなるポリオレフィン系樹脂発泡体である、請求項1又は2に記載の
光表示部材。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びエチレン-酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる1種以上である、請求項3に記載の
光表示部材。
【請求項5】
前記発泡体が架橋体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の
光表示部材。
【請求項6】
前記スキン層の架橋度が、25質量%以上75質量%以下である、請求項1~5に記載の
光表示部材。
【請求項7】
前記発泡体の発泡倍率が、5~50倍である、請求項1~6のいずれか1項に記載の
光表示部材。
【請求項8】
前記発泡体と、前記発泡体の前記表面上に、印刷層、表皮層及び接着層の少なくともいずれかを備える積層体
を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の光表示部材。
【請求項9】
前記接着層は、前記印刷層と前記表皮層との間に設けられる、請求項8に記載の
光表示部材。
【請求項10】
前記積層体を成形してなる成形体
を備える、請求項8又は9に記載の光表示部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体、積層体、成形体及び光表示部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両内において、温度、時間、車速などの情報を、光により表示させる光表示部材は、その性能向上の観点から、近年盛んに開発が進められている。光表示部材は、情報を適切に表示するために、光透過性に優れることが必要であり、また車両内の内装の一部を構成するため、柔軟な触感を保ち、かつ意匠性に優れるなどの高級感が求められる。
【0003】
柔軟性を有する素材として、発泡体が知られている。発泡体は、柔軟性の他、緩衝性、断熱性などに優れるため様々な工業分野で使用されている。また、光透過性を向上させた発泡体についての開発もなされている。例えば、特許文献1には、独立気泡構造を有し、全光線透過率が15%以上であり、長さ方向(MD)や幅方向(TD)の収縮率、長さ方向(MD)の平均気泡径、厚み、見かけ密度、及び25%圧縮硬さを特定の範囲に調整した発泡体が提案されている。また、特許文献2には、平均気泡径が1.2mm以上であることを特徴とするアクリル系樹脂発泡体が提案されている。引用文献1及び2においては主に平均気泡径を調整することにより発泡体の光透過率を向上させている。
さらに特許文献3には、80%以上の全光線透過率を有する熱可塑性樹脂からなり、発泡倍率が5~100倍、平均気泡径が1~15mmであることを特徴とする断熱発泡体が提案されている。この特許文献3においては、メチルメタクリレート等の全光線透過率が高い樹脂を用いることにより発泡体の光透過率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-190375号公報
【文献】特開2013-203984号公報
【文献】特開平08-067757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光表示部材に使用される発泡体は、意匠性を向上させるために、表面に印刷が施されたり、表面に異なる部材の表皮層が接着等により設けられたりすることがある。このように、発泡体の表面に印刷及び接着等を行う場合、発泡体表面の平滑性が低いと、空気が介在してしまうことがあり、空気が介在することで表示性が低下する等の問題が生じる。
そこで、本発明は、透明性を確保しつつ、表面が高い平滑性を有する発泡体、積層体、成形体及び光表示部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、表面のホール個数及び全光線透過率が特定の関係を満たす発泡体が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[12]を要旨とする。
[1]表面のホール個数が、2個/100mm2以下であり、かつ全光線透過率が20%以上である、発泡体。
[2]厚みが、0.5mm以上5.0mm以下である、[1]に記載の発泡体。
[3]ポリオレフィン系樹脂を含有するポリオレフィン系樹脂組成物を発泡してなるポリオレフィン系樹脂発泡体である、[1]又は[2]に記載の発泡体。
[4]前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びエチレン-酢酸ビニル共重合体からなる群から選ばれる1種以上である、[3]に記載の発泡体。
[5]架橋体である、[1]~[4]のいずれかに記載の発泡体。
[6]前記表面から深さ200μmまでのスキン層の架橋度が、前記スキン層の内層側に設けられたコア層の架橋度より低い、[1]~[5]のいずれかに記載の発泡体。
[7]前記スキン層の架橋度が、25質量%以上75質量%以下である、[6]に記載の発泡体。
[8]発泡倍率が、5~50倍である、[1]~[7]のいずれかに記載の発泡体。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の発泡体と、前記発泡体の前記表面上に、印刷層、表皮層及び接着層の少なくともいずれかを備える積層体。
[10]前記接着層は、前記印刷層と前記表皮層との間に設けられる、[9]に記載の積層体。
[11][9]又は[10]に記載の積層体を成形してなる成形体。
[12][1]~[8]のいずれかに記載の発泡体、又は[9]又は[10]に記載の積層体を備える、光表示部材。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、透明性を確保しつつ、表面が高い平滑性を有する発泡体、積層体、成形体及び光表示部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本発明の積層体の一実施形態の断面図である。
【
図3】本発明の積層体の別の一実施形態の断面図である。
【
図4】本発明の積層体の別の一実施形態の断面図である。
【
図5】本発明の積層体の別の一実施形態の断面図である。
【
図6】本発明の積層体の別の一実施形態の断面図である。
【
図7】本発明の積層体の別の一実施形態の断面図である。
【
図8】本発明の実施例の印刷ピンホール数の評価に使用するサンプルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[発泡体]
本発明の発泡体は、表面のホール個数が、2個/100mm2以下であり、全光線透過率が20%以上である。
本発明においては、後述するように、架橋度、発泡倍率、樹脂成分、樹脂に配合される配合物などを適宜調整することで、発泡体の表面におけるホール個数を制限し、かつ、全光線透過率に優れる発泡体を得ることができる。
【0010】
<ホール個数>
本発明の発泡体は、表面のホール個数が2個/100mm
2以下である。表面のホール個数が3個/100mm
2超であると、平滑性が低下し、当該面に印刷層及び接着層等を設けた場合に、空気が介在するなどして、表示性が低下してしまう。平滑性を高くし、表面での表示性を向上させる観点から、表面のホール個数は、1個/100mm
2以下であることが好ましく、0個/100mm
2であることがさらに好ましい。本発明の発泡体は、一方の表面のホール個数が上記範囲内であってもよく、両表面のホール個数が上記範囲内であってもよい。
本明細書において、「ホール」とは、発泡体表面に存在する直径0.1mm以上0.2mm未満のピンホール、又は、直径0.2mm以上深さ0.5mm以上のクレーター状の凹みのことをいう。
図1(a)に示すように、ホールとしてのピンホール1は、直径が小さいものであり、印刷及び接着等を行った場合でもインクや接着剤が侵入することなく、発泡体表面に小穴を形成する。ピンホール1のアスペクト比(深さ/直径)の範囲は、5~50の範囲であることが好ましく、10~40の範囲であればより好ましい。
図1(b)に示すように、ホールとしての凹み2は、深さが所定値以上あることで、印刷及び接着等を行った場合でもインクや接着剤で埋まることがなく、空気が介在してしまう。
なお、ホール個数は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0011】
<全光線透過率>
本発明の発泡体は、全光線透過率が20%以上である。全光線透過率が20%未満であると、発泡体の光透過性が不十分であり、発泡体を介して必要な情報を視認することが難しくなり、光表示部材として使用することが困難となる。十分な光透過性を有し、自動車内装用の光表示部材や、スマートフォン等の電子機器に好適に用いるために、全光線透過率は、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、60%以上であることがよりさらに好ましい。全光線透過率は、高ければ高いほどよいが、例えば95%以下である。
なお、全光線透過率は実施例に記載の方法で測定することができる。
【0012】
<厚み>
本発明の発泡体の厚みは、0.5mm以上5.0mm以下であることが好ましく、0.7mm以上4.5mm以下がより好ましく、1.5mm以上4.0mm以下がさらに好ましい。発泡体の厚みが上記下限値以上であると機械強度を維持しつつ光透過性を向上させることができる。一方、上記上限値以下であると、光透過性を維持しつつスマートフォン等の小型電子機器に使用可能になる。
【0013】
<架橋度(ゲル分率)>
本発明の発泡体は、樹脂組成物を架橋し、かつ発泡してなるものであることが好ましい。
本発明の発泡体は、表面から深さ200μmまでのスキン層の架橋度(ゲル分率)が、スキン層の内層側に設けられたコア層の架橋度より低いことが好ましい。本明細書において、発泡体の両表面から200μm深さまでをスキン層という。そして、本明細書において、コア層とは、表層のスキン層より内部の発泡層をいう。スキン層の架橋度が、コア層の架橋度より低いことで、内部のコア層で異常なく良好に発泡し、スキン層の表面のホール個数を上記範囲とすることができる。
本発明の発泡体は、コア層よりも架橋度が低いスキン層が、発泡体の両面に設けられてもよいし、片面のみに設けられてもよく、その架橋度が低いスキン層表面のホール数が上記のとおり、所定値以下となるとよい。
なお、架橋度は後述する測定方法により測定することができる。
【0014】
コア層よりも架橋度が低いスキン層の架橋度は、25質量%以上75質量%以下であることが好ましく、30質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。スキン層の架橋度が上記下限値以上であると、十分な機械強度が得られる。また、架橋度がこれら上記上限値以下であると、表面に形成されるホールの個数を低減させることができ、柔軟性を確保することができる。
【0015】
コア層の架橋度は、30質量%以上75質量%以下であることが好ましく、40質量%以上65質量%以下であることがより好ましい。コア層の架橋度が上記下限値以上であると、スキン層の表面に形成されるホールの個数低減に寄与し、十分な架橋が形成されるため発泡体の機械強度が高くなりやすい。また、架橋度がこれら上記上限値以下であると、発泡体の柔軟性等を確保しやすくなる。
【0016】
スキン層の架橋度とコア層の架橋度の差は、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましく、9質量%以上であることがさらに好ましい。スキン層の架橋度とコア層の架橋度の差が上記下限値以上であることで、スキン層の表面のホール個数を上記範囲とすることができる。
【0017】
<発泡倍率>
本発明の発泡体の発泡倍率は、5~50倍が好ましく、10~45倍がより好ましく、15~40倍がさらに好ましく、20~35倍がよりさらに好ましい。発泡倍率が前記下限値以上であると光透過性を向上させつつ、発泡体が適度に発泡されることで柔軟性、衝撃吸収性が良好となる。また、発泡倍率が高くなると光透過性も向上する傾向にあるが、表面にホールができやすくなり、表面における情報及び意匠等の表示性が低下してしまう
ため上記上限値以下とすることが好ましい。本発明においては発泡倍率を調整しつつ、架橋度を調整することで、全光線透過率及びホール個数を上記した所望の範囲内に調整できる。
【0018】
<25%圧縮強度>
発泡体の25%圧縮強度は、30~200kPaが好ましく、35~175kPaがより好ましく、40~150kPaがさらに好ましい。25%圧縮強度が上記上限値以下であると、発泡体の柔軟性が向上し、設置対象物への追従性等が良好になる。一方、25%圧縮強度が上記下限値以上であると、機械強度、衝撃吸収性などが良好となる。
なお、25%圧縮強度は、JIS K6767に準拠した測定方法で測定した値である。
【0019】
<ポリオレフィン系樹脂発泡体>
本発明の発泡体は、発泡性樹脂組成物を発泡させることにより形成される。発泡性樹脂に使用される樹脂は、発泡体に使用される公知の樹脂等を使用すればよいが、具体的にはポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、エラストマー等が挙げられる。本発明で使用する発泡性樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂を含有することが好ましい。つまり、本発明の発泡体は、ポリオレフィン系樹脂組成物を発泡してなるポリオレフィン系樹脂発泡体であることが好ましい。以下、ポリオレフィン系樹脂組成物を使用する場合についてより詳細に説明する。
【0020】
〔ポリオレフィン系樹脂〕
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体から選ばれる1種以上が好ましい。これら樹脂は、いずれか1種を単独使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の発泡体はポリオレフィン系樹脂を主成分であることが好ましく、具体的にポリオレフィン系樹脂の含有量は、ポリオレフィン系樹脂組成物に含まれる樹脂成分全量基準で、65質量%以上であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂の含有量が65質量%以上となることで、発泡体の機械強度、柔軟性などを確保しやすくなる。また、後述するように、1種のポリオレフィン系樹脂を主成分樹脂にしやすくなる。これら観点から、ポリオレフィン系樹脂の含有量は、発泡体樹脂組成物に含まれる樹脂成分全量基準で、好ましくは70~100質量%であり、より好ましくは75~100質量%である。なお、以下では、ポリオレフィン系樹脂組成物に含まれる樹脂成分全量基準を単に「樹脂成分全量基準」という。
【0021】
≪ポリエチレン樹脂≫
ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂(0.93g/cm3以下、LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(0.930g/cm3より大きく0.942g/cm3未満、MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(0.942g/cm3以上、HDPE)が挙げられる。また、低密度ポリエチレン樹脂の好適な具体例としては、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)が挙げられる。
【0022】
これらの中では、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂が好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂がより好ましい。
なお、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の密度は、好ましくは0.90g/cm3以上であり、より好ましくは0.91g/cm3以上0.93g/cm3以下である。また、高密度ポリエチレン樹脂の密度は、好ましくは0.98g/cm3以下であり、より好ましくは0.95g/cm3以上0.97g/cm3以下である。高密度ポリエチレン樹脂や直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の密度をこれら範囲内とすることで、発泡体の柔軟性を損なうことなく、圧縮強度等を低くしやすくなる。
【0023】
ポリエチレン樹脂は、エチレンのホモポリマーでもよいが、エチレンを主成分(全モノマーの好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上)とした、エチレンと少量のα-オレフィンの共重合体等でもよい。α-オレフィンとしては、好ましくは炭素数3~12、より好ましくは炭素数4~10のものが挙げられ、具体的には、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン等が挙げられる。なお、共重合体において、これらのα-オレフィンは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ポリエチレン樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
≪ポリプロピレン樹脂≫
ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンの単独重合体であるホモポリプロピレンでもよいし、プロピレンを主成分(全モノマーの好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上)とした、プロピレンと少量のエチレン及びプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
プロピレンと、エチレン及びプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体としては、ブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、ランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)、ランダムブロック共重合体等が挙げられる。
プロピレン以外のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン等の炭素数4~10程度のα-オレフィン等が挙げられるが、これらの中でも、成形性及び耐熱性の観点から、エチレンが好ましい。なお、共重合体において、これらのα-オレフィンは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ポリプロピレン樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明においては、チーグラー・ナッタ化合物、メタロセン化合物、酸化クロム化合物等の重合触媒で重合されたポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、又はこれらの混合物のいずれを用いてもよい。例えば、メタロセン化合物の重合触媒により得られた、ポリエチレン樹脂、特に直鎖状低密度ポリエチレンを用いることにより、柔軟性が高く、高い衝撃吸収性を有する発泡体を得やすくなる。
【0026】
≪エチレン-酢酸ビニル共重合体≫
ポリオレフィン系樹脂として使用するエチレン-酢酸ビニル共重合体は、例えば、エチレン由来の構成単位を50質量%以上含有するエチレン-酢酸ビニル共重合体が挙げられる。エチレン-酢酸ビニル共重合体はポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂との相溶性が高いため、エチレン-酢酸ビニル共重合体と、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂から選ばれる1種以上とを併用することにより発泡体の光透過性が向上する。
エチレン-酢酸ビニル共重合体の密度は、好ましくは0.92g/cm3以上、より好ましくは0.93g/cm3以上、更に好ましくは0.94g/cm3以上であり、そして、好ましくは0.97g/cm3以下、より好ましくは0.96g/cm3以下である。エチレン-酢酸ビニル共重合体の密度をこれら範囲内とすることで、発泡体の柔軟性を損なうことなく、圧縮強度等を低くしやすくなる。
【0027】
本発明において、ポリオレフィン系樹脂組成物は、上記したポリオレフィン樹脂のうちいずれか1種を主成分樹脂として使用することが好ましい。ここで、主成分樹脂とは、ポリオレフィン樹脂のうちいずれか1種の樹脂が樹脂成分全量基準で65質量%以上含有されることを意味し、したがって、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、又はエチレン-酢酸ビニル共重合体のいずれか1種を65質量%以上含有することが好ましい。
一般的に、樹脂は、2種以上をブレンドすると、その樹脂同士は完全に混合せずに、混合に起因して曇りが生じるが、本発明では、特定の1種の樹脂(すなわち、単一樹脂成分)を主成分樹脂として使用することで、ブレンドに起因した曇りが生じにくくなり発泡体の光透過性が高められる。
【0028】
主成分樹脂とする樹脂は、上記した樹脂の中でも、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂のいずれかが好ましく、ポリプロピレン樹脂がより好ましい。発泡体は、主成分樹脂をポリプロピレン樹脂とすることで、耐熱性に優れ、自動車内装材用に好適に使用できる。
より具体的に説明すると、ポリプロピレン樹脂を主成分樹脂として使用する場合には、そのポリプロピレン樹脂を、樹脂成分全量基準で65質量%以上含有させるとよく、好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上、最も好ましくは100質量%含有させる。
また、好ましくはポリプロピレン樹脂のうちでも特定の1種の樹脂を、樹脂成分全量基準で65質量%以上含有させる。例えば、ブロックポリプロピレンを65質量%以上としたり、ランダムポリプロピレンを65質量%以上としたりするとよく、この場合も、これら特定の1種の樹脂は、好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上、最も好ましくは100質量%含有させる。
【0029】
同様に、ポリエチレン樹脂を主成分樹脂として使用する場合には、そのポリエチレン樹脂を、樹脂成分全量基準で65質量%以上含有させるとよく、好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上含有させる。
また、好ましくはポリエチレン樹脂のうちでも特定の1種の樹脂を、樹脂成分全量基準で65質量%以上含有させる。例えば、LDPEを65質量%以上としたりするとよく、この場合も、これら特定の1種の樹脂は、好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上である。
【0030】
また、ポリプロピレン樹脂を主成分樹脂として使用する場合、ポリオレフィン系樹脂として、ポリプロピレン樹脂を単独使用してもよいが、ポリプロピレン樹脂に加えて、ポリエチレン樹脂及びエチレン-酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1種を併用してもよい。ポリプロピレン樹脂を単独使用すると、他のポリオレフィン樹脂と相溶させる必要がなくなるので、樹脂同士の混合に起因する透明性の低下が防止される。また、ポリプロピレン樹脂と、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリエチレン樹脂から選ばれる少なくとも1種とを併用することにより相溶性が良好となり、透明性が良好に維持される。さらに、架橋度や発泡倍率を調整しやすくなるため、発泡体の全光線透過率を調整しやすくなる。
この場合、樹脂成分全量基準で、ポリプロピレン樹脂の含有量が65~95質量%であり、ポリエチレン樹脂及びエチレン-酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1種が5~35質量%であることが好ましい。また、前者が75~95質量%、後者が5~25質量%がより好ましく、前者が85~95質量%、後者が5~15質量%がさらに好ましい。
また、併用する樹脂は、ポリエチレン樹脂又はエチレン-酢酸ビニル共重合体のいずれかであることが好ましいが、エチレン-酢酸ビニル共重合体であることがより好ましい。
また、ポリプロピレン樹脂を主成分樹脂として使用する場合、後述するようにエラストマーをさらに使用してもよい。この場合のエラストマーの含有量は後述するとおりである。
【0031】
一方で、ポリエチレン樹脂を主成分樹脂として使用する場合も、ポリオレフィン系樹脂として、ポリエチレン樹脂に加えて、ポリプロピレン樹脂及びエチレン-酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1種を併用してもよいが、ポリエチレン樹脂を単独使用することが好ましい。ただし、ポリエチレン樹脂を単独使用する場合には、後述するエラストマーをさらに使用することが好ましく、その際のエラストマーの含有量は後述するとおりである。
【0032】
発泡体を構成する樹脂は、ポリオレフィン系樹脂のみで構成されてもよいが、ポリオレフィン系樹脂とエラストマーとが混合されたものであってもよい。ポリオレフィン系樹脂組成物がエラストマーを含むことで、ポリオレフィン系樹脂の結晶化度を下げることができ、発泡体の全光線透過率が向上する。すなわち、本発明では、エラストマーは、いわゆる透明化剤としての機能を果たすものを使用するとよい。
また、エラストマーを使用することで、発泡体の柔軟性や衝撃吸収性を向上させることができる。
【0033】
エラストマーとしては、ポリオレフィン系樹脂と相溶性が良いエラストマーが使用され、具体的には、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、スチレンゴム等が挙げられる。
また、エラストマーとしては、熱可塑性エラストマーも挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
エラストマーは、上記成分を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。発泡体の全光線透過率を上記範囲内に調整しやすくする観点から、スチレンゴム、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーが好ましく、中でもスチレンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマーがより好ましい。
【0034】
スチレンゴムとしては、スチレンと共役ジエン化合物のランダム共重合体などの各種重合体が挙げられ、その水素添加物であってもよい。具体的には、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、又はその水素添加物(HSBR)などが挙げられる。
【0035】
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、ブレンド型、動的架橋型が挙げられ、より具体的には、ハードセグメントにポリプロピレンやポリエチレン等の熱可塑性結晶性ポリオレフィンを使用し、ソフトセグメントに完全加硫又は部分加硫したゴムを使用した熱可塑性エラストマーが挙げられる。ソフトセグメント成分は、プチルゴム、ハロブチルゴム、EPDM、EPM、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、NBR、天然ゴム等が挙げられ、好ましくはEPDMを使用する。
また、オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、ブロックコポリマータイプも挙げられる。ブロックコポリマータイプとしては、結晶性ブロックと、ソフトセグメントブロックとを有するものが挙げられ、より具体的には、結晶性オレフィンブロック-エチレン・ブチレン共重合体-結晶性オレフィンブロックコポリマー(CEBC)が例示される。CEBCにおいて、結晶性オレフィンブロックは、結晶性エチレンブロックであることが好ましく、そのようなCEBCの市販品としては、JSR株式会社製の「DYNARON 6200P」等が挙げられる。
【0036】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレンの重合体又は共重合体ブロックと、共役ジエン化合物の重合体又は共重合体ブロックとを有するブロックコポリマーなどが挙げられる。共役ジエン化合物としては、イソプレン、ブタジエンなどが挙げられる。
本発明に用いるスチレン系熱可塑性エラストマーは、水素添加していても、していなくてもよい。水素添加する場合、水素添加は公知の方法で行うことができる。
【0037】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、通常ブロック共重合体であり、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン/ブチレンブロック共重合体(SEB)、スチレン-エチレン/プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-エチレン/ブチレン-結晶性オレフィンブロック共重合体(SEBC)などが挙げられる。
上記したスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、ブロック共重合体が好ましく、中でもSEBCがより好ましい。このようなエラストマーをポリオレフィン系樹脂と併用し、更に発泡倍率を調整することにより発泡体の光透過性を向上させることが可能になる。
【0038】
なお、スチレン系熱可塑性エラストマーの市販品としては、商品名「DYNARON 1320P」(スチレン含有量10質量%)、株式会社JSR製、商品名「DYNARON 8600P」(スチレン含有量15質量%)、商品名「DYNARON 4600P」(スチレン含有量20質量%)などが挙げられる。
【0039】
本発明において、ポリオレフィン系樹脂組成物は、上記したポリオレフィン樹脂のうちポリプロピレン樹脂を含有することが好ましい。ポリプロピレン樹脂を使用することで、耐熱性、機械強度が良好となり、発泡体や後述する積層体を成形して各種の成形体を得る際の成形性などを向上させやすい。ポリプロピレン樹脂の含有量は、ポリオレフィン系樹脂組成物に含まれる樹脂成分全量基準で、40質量%以上95質量%以下であることが好ましく、50質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、55質量%以上85質量%以下であることがさらに好ましい。ポリプロピレン樹脂の含有量が上記範囲内であることで、発泡体の機械強度を確保し、成形性を向上させることができる。
また、ポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂とその他のポリオレフィン系樹脂及びエラストマーから選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。その他のポリオレフィン系樹脂及びエラストマーの含有量は、ポリオレフィン系樹脂組成物に含まれる樹脂成分全量基準で、5質量%以上60質量%以下であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上45質量%以下であることがさらに好ましい。
【0040】
<造核剤>
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は造核剤を含有してもよい。本発明に用いる造核剤としては、結晶核生成過程の進行速度を向上させる効果があるものであれば特に制限はない。ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂に造核剤を添加することにより、生じる結晶の大きさを小さくすることができるため発泡体の透明性が向上する。
本発明において用いる造核剤としては、結晶核生成過程の進行速度を向上させる効果があるものとして、重合体の分子鎖の吸着過程を経て分子鎖配向を助長する効果のある物質が挙げられる。
より具体的には、高融点ポリマー、有機カルボン酸若しくはその金属塩、脂肪族アルコール族、ジベンジリデンソルビトール若しくはその誘導体、ロジン酸部分金属塩、アミド化合物、無機微粒子、有機リン酸化合物若しくはその金属塩、イミド類、キナクリドン類、キノン類、芳香族スルホン酸塩若しくはその金属塩、糖類、及びこれらの混合物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
高融点ポリマーとしては、ポリ3-メチルペンテン-1、ポリ3-メチルブテン-1等のポリオレフィン、ポリビニルシクロヘキサン、ポリビニルシクロペンタン等のポリビニルシクロアルカン、シンジオタクチックポリスチレン、及びポリアルケニルシラン等が挙げられる。
有機カルボン酸及びその金属塩としては、安息香酸、p-t-ブチル安息香酸、アジピン酸、チオフェネカルボン酸、ピロールカルボン酸、安息香酸アルミニウム塩、p-t-ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナトリウム、チオフェネカルボン酸ナトリウム、及びピロールカルボン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0042】
ジベンジリデンソルビトール及びその誘導体としては、ジベンジリデンソルビトール、1,3:2,4-ビス(o-3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4-ビス(o-2,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4-ビス(o-4-エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4-ビス(o-4-クロロベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4-ジベンジリデンソルビトール等が挙げられる。ジベンジリデンソルビトール及びその誘導体の市販品としては、新日本理化株式会社製のゲルオールMDやゲルオールMD-R(商品名)等が挙げられる。
ロジン酸部分金属塩としては、荒川化学工業株式会社製のパインクリスタルKM1600、パインクリスタルKM1500、パインクリスタルKM1300(商品名)等が挙げられる。
アミド化合物としては、アジピン酸ジアニリド、及びスペリン酸ジアニリド等が挙げられる。
【0043】
無機微粒子としては、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、グラファィト、アルミニウム粉末、アルミナ、シリカ、ケイ藻土、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉末、軽石バルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、硫化モリブデンなどが挙げられる。
【0044】
有機リン酸金属塩としては、下記一般式(1)で示される有機リン酸金属塩が臭いの発生が少なく好ましい。
【0045】
【0046】
(式中、R1は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示し、R2及びR3はそれぞれ水素原子、炭素数1~12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示す。Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム及び亜鉛から選ばれる1種を示す。Mがアルカリ金属のときmは0を、nは1をそれぞれ示し、Mがアルカリ土類金属又は亜鉛のときnは1又は2を示し、nが1のときmは1を、nが2のときmは0を示し、Mがアルミニウムのときmは1を、nは2をそれぞれ示す。)
有機リン酸金属塩の市販品としては、アデカスタブNA-11やアデカスタブNA-21(株式会社ADEKA)が挙げられる。
【0047】
造核剤の中では、オレフィン系への相溶性と透明性の観点から糖類系が好ましい。糖類系としては、ソルビトール系、ノニトール系、キシリトール系等が挙げられ、これらから選ばれる1種以上を造核剤として使用することがより好ましい。
【0048】
本発明において造核剤を用いる場合、ポリオレフィン系樹脂組成物中の造核剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.5~10質量部が好ましく、1.5~8質量部がより好ましく、2~7質量部がより更に好ましい。造核剤の含有量が前記下限値以上であると発泡体の透明性が向上する。一方、造核剤の含有量が前記上限値以下であると製造コストを抑えつつ発泡体の透明性を向上させることができる。
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、造核剤及びエラストマーの両方を有してもよいが、いずれか一方を有することが好ましい。いずれか一方を有することで、効果的に光透過性を向上させることができる。
【0049】
<発泡剤>
本発明の発泡体は、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂、及び発泡剤などを含むポリオレフィン系樹脂組成物を発泡することで得られる。発泡剤としては、熱分解型発泡剤が好ましい。
熱分解型発泡剤としては、有機発泡剤、無機発泡剤が使用可能である。有機発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。
無機発泡剤としては、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
これらの中では、微細な気泡を得る観点、及び経済性、安全面の観点から、アゾ化合物が好ましく、アゾジカルボンアミドがより好ましい。
熱分解型発泡剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
ポリオレフィン系樹脂組成物における発泡剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、1~30質量部が好ましく、2~25質量部がより好ましく、2~20質量部がさらに好ましい。発泡剤の配合量を1質量部以上にすることで、発泡性シートは適度に発泡され、適度な柔軟性と衝撃吸収性を発泡体に付与することが可能になる。また、発泡剤の配合量を30質量部以下にすることで、発泡体が必要以上に発泡することが防止され、発泡体の機械強度等を良好にすることができる。
【0051】
<添加剤>
ポリオレフィン系樹脂組成物は、架橋助剤、分解温度調整剤、及び酸化防止剤等の成分を含んでいてもよい。
架橋助剤としては、多官能モノマーを使用することができる。架橋助剤をポリオレフィン系樹脂に添加することによって、後述する工程(2)において照射する電離性放射線量を低減して、電離性放射線の照射に伴う樹脂分子の切断、劣化を防止する。
架橋助剤としては具体的には、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート等の1分子中に3個の官能基を持つ化合物や、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に2個の官能基を持つ化合物、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、エチルビニルベンゼン、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等が挙げられる。
これらの架橋助剤は、単独で又は2以上を組み合わせて使用する。
【0052】
架橋助剤の添加量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.5~10質量部が好ましく、1.0~8質量部がより好ましく、1.5~5質量部が更に好ましい。該添加量を0.5質量部以上とすることにより発泡体が所望する架橋度を安定して得ることが可能となり、10質量部以下とすることにより発泡体の架橋度の制御が容易となる。
【0053】
ポリオレフィン系樹脂組成物には、分解温度調整剤が配合されていてもよい。分解温度調整剤は、熱分解型発泡剤の分解温度を低くしたり、分解速度を速めたり調節するものとして配合されるものであり、具体的な化合物としては、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、尿素等が挙げられる。分解温度調整剤は、発泡体の表面状態等を調整するために、例えばポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.01~5質量部配合される。
【0054】
ポリオレフィン系樹脂組成物には、酸化防止剤が配合されていてもよい。酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等のフェノール系酸化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネート等のイオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤は、例えばポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.01~5質量部配合される。
ポリオレフィン系樹脂組成物には、これら以外にも、熱安定剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、充填材等の発泡体に一般的に使用する添加剤が配合されてもよい。
【0055】
[発泡体の製造方法]
本発明の発泡体の製造方法に特に制限はないが、例えばポリオレフィン系樹脂発泡体の場合には、少なくともポリオレフィン系樹脂及び熱分解型発泡剤を含むポリオレフィン系樹脂組成物からなる発泡性シートを加熱して熱分解型発泡剤を発泡させることで製造できる。その製造方法は、より具体的には、以下の工程(1)~(3)を含むことが好ましい。
工程(1):少なくとも樹脂及び熱分解型発泡剤を含むポリオレフィン系樹脂組成物からなる発泡性シートを成形する工程
工程(2):発泡性シートの両方の面側から電離性放射線を照射して発泡性シートを架橋させる工程
工程(3):架橋させた発泡性シートを加熱し、熱分解型発泡剤を発泡させて、発泡体を得る工程
【0056】
工程(1)において、発泡性シートを成形する方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂及び添加剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機からポリオレフィン系樹脂組成物をシート状に押出すことによって成形すればよい。また、発泡体は、ポリオレフィン系樹脂組成物をプレス等することにより成形してよい。
発泡性シートの成形温度(すなわち、押出し時の温度、又はプレス時の温度)は、50℃以上250℃以下が好ましく、80℃以上180℃以下がより好ましい。
【0057】
工程(2)においてポリオレフィン系樹脂組成物を架橋する方法としては、発泡性シートに電子線、α線、β線、γ線等の電離性放射線を照射する方法を用いる。電離性放射線を表裏の2面から、照射するシートの厚みの半分以上を透過するような同じ電圧と同じ線量をかけることで、コア層に二重に放射線を照射することになり、スキン層の架橋度をコア層の架橋度よりも低くできる。さらに、電離性放射線を表裏の2面からコア層に線量が届くような電圧と線量を2回以上かけることでも発現する。上記電離放射線の照射量は、得られる発泡体の架橋度が上記した所望の範囲となるように調整すればよいが、1~12Mradであることが好ましく、1.5~8Mradであることがより好ましい。
【0058】
工程(3)において、ポリオレフィン系樹脂組成物を加熱し熱分解型発泡剤を発泡させるときの加熱温度は、熱分解型発泡剤の発泡温度以上であればよいが、好ましくは200~300℃、より好ましくは220~280℃である。
【0059】
また、本製造方法において、発泡体は、MD又はTDのいずれか一方又は両方に延伸させてもよい。発泡体の延伸は、発泡性シートを発泡させて発泡体を得た後に行ってもよいし、発泡性シートを発泡させつつ行ってもよい。なお、発泡性シートを発泡させて発泡体を得た後、発泡体を延伸する場合には、発泡体を冷却することなく発泡時の溶融状態を維持したまま続けて発泡体を延伸してもよく、発泡体を冷却した後、再度、発泡体を加熱して溶融又は軟化状態とした上で発泡体を延伸してもよい。発泡体は延伸することで薄厚にしやすくなる。また、延伸時に発泡体は、例えば100~280℃、好ましくは150~260℃に加熱すればよい。本発明では、発泡体を延伸することで、発泡体の気泡径がMD又はTDの一方又は両方に沿って大きくなり、光透過性が高くなりやすくなる。
【0060】
ただし、本製造方法は、上記に限定されずに、上記以外の方法により、発泡体を得てもよい。例えば、電離性放射線を照射する代わりに、ポリオレフィン系樹脂組成物に予め有機過酸化物を配合しておき、発泡性シートを加熱して有機過酸化物を分解させる方法等により架橋を行ってもよい。
【0061】
[発泡体の使用方法]
本発明の発泡体は、各種電子機器、自動車内装材などに好適に用いることができ、自動車内装材に使用することがより好ましい。電子機器としては、スマートフォン等の携帯電話、ゲーム機器、電子手帳、タブレット端末、ノート型パーソナルコンピューターなどが挙げられる。
発泡体は、各種電子機器の内部において、例えばシール材や衝撃吸収材として使用できる。本発明の発泡体は、光透過性に優れるため、発泡体シート越しに貼り合わせ位置などを確認することができるので、各種電子部品などに高い位置精度で貼り合わせることが可能になる。
さらに、発泡体は、後述する通り、積層体にして光表示部材として使用することも好ましい。
【0062】
[積層体]
本発明の積層体は、上記の発泡体と、発泡体の表面上に、印刷層、表皮層及び接着層の少なくともいずれかを備える。本発明の積層体は、印刷層及び表皮層をそれぞれ単体に備えてもよく、印刷層及び表皮層の両方を備えてもよい。このような積層体は、電子機器、自動車内装のいずれでも使用可能であるが、自動車内装用に好適に使用される。
【0063】
本発明の積層体の一実施態様の断面図を
図2に示す。
図2に示す積層体10aは、表皮層11と発泡体12とを備えた積層体10aであり、発泡体12の一方の表面上に表皮層11が積層されている。積層体10aを、例えば自動車の内装材などに使用する場合は、表皮層11は例えば、樹脂シートなどであり、これを発泡体12に積層することで、使用者(運転手など)に高級感を与えることができる。なお、表皮層11が積層される、発泡体の一方の表面は、上記のとおりホール個数が2個/100mm
2以下となる表面であり、以下に説明において単に「一方の表面」と述べた場合には同じ意味である。一方で、「他方の表面」と述べた場合には、その表面は、ホール個数が2個/100mm
2以下となる表面であってもよいし、ホール個数が2個/100mm
2以下とならなくてもよい。
表皮層11は、
図2に示したように、発泡体12の一方の表面上に直接積層してもよく、
図3に示すように、接着層13を介して積層してもよい。
【0064】
本発明の積層体の別の一実施形態を
図4に示す。
図4に示す積層体10bは、発泡体12に、印刷層14を備え、発泡体12の一方の表面上に印刷層14が積層されている。積層体10bは、例えば発泡体12側から光を照射することにより、印刷層14の印刷のパターンに応じた形状を一方の表面側から感知することができるようになり、使用者(運転手など)に情報等を与えることができる。
印刷層14は、
図4に示したように、発泡体12の一方の表面上に直接印刷することにより形成してもよく、例えば、印刷層14が印刷フィルムの場合には、
図5に示すように接着層13を介して積層してもよい。
【0065】
本発明の積層体の別の一実施形態を
図6に示す。
図6に示す積層体10cは、発泡体12に、表皮層11と接着層13と印刷層14とを備える。発泡体12の一方の表面上には、印刷層14、接着層13及び表皮層12がこの順に積層されている。積層体10cは、表皮層12及び印刷層14の両方を備えることで、意匠性を向上させることができ、使用者(運転手など)に高級感を与えることができる。
【0066】
本発明の積層体の別の一実施形態を
図7に示す。
図7に示す積層体10dは、発泡体12に、表皮層11と接着層13と印刷層14とを備える。発泡体12の一方の表面上には、印刷層14を備え、他方の表面上には、接着層13及び表皮層11がこの順に積層されている。積層体10dの構成とする場合には、両表面のホール個数が少なく、両表面に架橋度がコア層よりも低くなるスキン層が設けられることが好ましい。積層体10dは、表皮層12及び印刷層14の両方を備えることで、意匠性を向上させることができ、使用者(運転手など)に高級感を与えることができる。
【0067】
(印刷層)
本発明の印刷層は、例えば発泡体の一方の表面側に備えられ、光が透過することにより、印刷のパターンに応じた形状を、例えば一方の表面側から感知することができるようになる。印刷層は、例えば、一方の表面に直接印刷することにより形成することができる。また、印刷層は、ポリオレフィンフィルム、PETフィルムなどのポリエステルフィルム等の基材フィルムに印刷を施した印刷フィルムを、発泡体の一方の表面に貼付することにより設けてもよい。印刷層を形成させる方法としては、インクジェット法やスクリーン印刷など公知の方法を適宜用いることができる。印刷層の厚みは、好ましくは1~25μmであり、より好ましくは2~10μmである。フィルム状の印刷層の厚みは、好ましくは4~50μmであり、より好ましくは12~25μmである。
【0068】
なお、積層体に印刷層を設けない場合でも、発泡体の一方の面又は他方の面側から照射する光を一定の文字情報を表示させるように照射することにより、発泡体の他方の面又は一方の面側から文字情報を視認することが可能である。
【0069】
(表皮層)
本発明の表皮層は、例えば一方の表面側に備えられ、自動車内装材では表皮材とも呼ばれるものである。表皮層は、具体的には、ポリ塩化ビニルシート、ポリ塩化ビニルとABS樹脂との混合樹脂、熱可塑性エラストマーシートなどで例示される樹脂シート、天然繊維や人造繊維を用いた織物、編物、不織布、人工皮革や合成皮革等のレザー等が挙げられる。表皮層には、上記したように適宜幾何学模様の凹凸などを施してもよい。これら中では、樹脂シートが好ましく、樹脂シートは光透過性を有することがより好ましい。光透過性を有する樹脂シートを使用することで、上記した光源からの光により、表皮層上に各種の情報を表示させることができる。また、積層体全体に、光透過性を付与することが可能になる。
意匠性を高める観点から、表皮層の表面にシボ模様が形成されていてもよい。また、本革、石、木等から転写した凹凸を付したシリコーンスタンパ等を用いて、表皮層の表面に皮目や木目模様などが施さていてもよい。
また、傷つきを防止する観点から、表皮層の表面に、各種コーティングが施されていてもよい。
【0070】
表皮層の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1~5mm、好ましくは0.2~2mmであり、より好ましくは0.2~1mmである。表皮層の厚みをこれら範囲内とすることで、表皮層の機械強度などを良好にしつつ、高い光透過性なども確保できる。また、表皮層の厚みを0.2mm以上とすることで、発泡体など内部が透けて見えることを防止することができる。
【0071】
表皮層の全光線透過率は、特に限定されないが、0.02~30%であることが好ましい。表皮層の全光線透過率が0.02%以上であると、積層体全体の全光線透過率を一定以上に調整しやすくなる。表皮層の全光線透過率が30%以下であると、表皮層側から、積層体を構成する内部層が透けて見えることを防止しやすくなる。表皮層の全光線透過率は、好ましくは0.05~25%であり、より好ましくは0.1~10%である。
表皮層は、全光線透過率を所望の値に調整する観点から、カーボンブラック、二酸化チタン、パール粒子、アルミ粉等の金属粉などの顔料を含むものであってもよい。
【0072】
表皮層を貼り合わせる方法としては、例えば、押出ラミネート法、接着剤を塗布した後貼り合わせる接着ラミネート法、熱ラミネート法(熱融着法)、ホットメルト法、高周波ウェルダー法等が挙げられるが、如何なる方法でも両者が接着されればよい。
【0073】
(接着層)
本発明の接着層は、接着剤層、粘着剤層及び両面粘着テープの少なくともいずれかであるとよい。粘着剤層を構成する粘着剤は、常温で圧力を加えるだけで接着する感圧系接着剤である。粘着剤としては、公知の粘着剤が使用可能であり、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤及びゴム系粘着剤等が挙げられる。接着剤層を構成する接着剤としては、2つの層を接着させることが可能な接着性を有するものであれば特に限定されず、ホットメルト接着剤、熱硬化性接着剤、紫外線硬化性接着剤及び湿気硬化型接着剤等が挙げられる。
両面粘着テープは、両面粘着テープは、基材と基材の両面に設けられる粘着剤層とを備える。粘着剤層は、上記した粘着剤により構成される層である。
両面粘着テープの基材としては、両面粘着テープの基材として使用される公知のものを使用することができ、例えば、樹脂フィルム、不織布等が挙げられる。
接着層は、粘着剤層単独により構成されることが好ましい。接着層が粘着剤により構成されることで、簡単な構成で2つの層(例えば、発泡体と表皮層、印刷層と表皮層など)を接着することができる。
【0074】
(積層体の製造)
積層体は、例えば、本発明の発泡体と、発泡体の少なくとも一方の面に設けられた印刷層、表皮層及び接着層の少なくともいずれかを積層することにより製造することができる。具体的な層構成については、前述したとおりである。また、積層体は、適宜接着層を使用して、発泡体と印刷層、発泡体と表皮層、印刷層と表皮層等を接着させて積層体としてもよい。
【0075】
[成形体]
本発明においては、上記積層体は、公知の方法で成形されて、所望の形状を有する成形体として使用すればよい。成形方法としては、真空成形、圧縮成形及びスタンピング成形等が挙げられるが、これらの中では真空成形が好ましい。また、真空成形には、雄引き真空成形、雌引き真空成形があるが、そのいずれでもよい。
【0076】
(光表示部材)
本発明の発泡体又は積層体は、光表示部材として好適に使用できる。光表示部材は、所望の形状に成形された成形体であってもよい。光表示部材の構成としては、特に限定されず、例えば、発泡体及び積層体の一方の面側に発光ダイオード(LED)等の光源を配置する構成とすることが好ましい。光表示部材は、発泡体及び積層体の一方の面側の光源から発泡体に向けて光を照射することにより発泡体を光が透過し、発泡体の他方の面側にその光源からの光により、各種の情報(車速など)を表示させるものである。
【0077】
また、光表示部材の構成としては、例えば、発泡体及び積層体の一方の面側に情報表示部品を配置する構成とすることが好ましい。情報表示部品としては、例えば、ディスプレイ、配列されたLEDなどが挙げられる。配列されたLEDとは特定の情報を表示するために、複数のLEDが特定形状に配置されたものである。光表示部材は、発泡体及び積層体の一方の面側の情報表示部品から発泡体に向けて光を照射することにより発泡体を光が透過し、発泡体及び積層体の他方の面側にその情報表示部品からの光により、各種の情報を表示させるものである。
なお、積層体が、例えば
図2、3、6、7に示すように表皮層が設けられる態様において、光源又は情報表示部品は、表皮層11が設けられる面とは反対の面側(すなわち、発泡体の他方の表面側;
図2,3、6,7では下側)に設けられるとよい。また、
図4、5に示すように、表皮層11がなく印刷層14が設けられる態様においては、光源は、発泡体の印刷層14が設けられる面(すなわち、発泡体の一方の表面側;
図4,5では上側)に設けられてもよいし、発泡体の印刷層14が設けられる面とは他方の面側(すなわち、発泡体の他方の表面側;
図4,5では下側)に設けられてもよい。
光表示部材は、センサー素子を有していてもよく、例えば、情報表示部品がタッチパネルなどのセンサー素子を有するディスプレイであってもよい。
光表示部材は、自動車等の車両用として好適に使用され、温度、時間、車速、危険、安全、予告等の必要な情報を表示させたり、意匠性や照明のための部材として使用したりすることが好ましい。
【実施例】
【0078】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0079】
[測定方法]
本明細書における各物性の測定方法は、次の通りである。
【0080】
<厚み>
発泡体の厚みは、それぞれダイヤルゲージで計測した。
【0081】
<発泡倍率>
発泡倍率は、発泡前の発泡性シートの密度を、発泡後の発泡体の密度(見掛け密度)で除することで算出した。
【0082】
<架橋度(ゲル分率)>
発泡体シートからスキン層部とコア層部のそれぞれ約100mgの試験片を採取し、試験片の重量A(mg)を精秤した。次に、この試験片を120℃のキシレン30cm3中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の重量B(mg)を精秤した。得られた値から、下記式により架橋度(質量%)を算出した。
架橋度(質量%)=(B/A)×100
【0083】
<全光線透過率>
発泡体の全光線透過率は、表1に記載の厚みに調整した発泡体についてASTM D1003に準拠して、ヘーズメーターを用いて測定した。
【0084】
<25%圧縮強度>
25%圧縮強度は、発泡体シートをJIS K6767:1999に準拠して測定した。
【0085】
<ホール個数>
スキン層の表面のホール個数の測定については、以下のとおり行った。
発泡体表面100×100mm角に存在する直径0.1mm以上0.2mm未満のピンホール、又は、直径0.2mm以上深さ0.5mm以上のクレーター状の凹みの個数をルーペを用いてカウントした。
【0086】
<印刷ピンホール数>
印刷ピンホール数の測定については、以下のとおり行った。
図8に示すように、A4サイズ(210mm×297mm)の発泡体に、白抜きの「SEKISUI」の文字印刷を、十条ケミカル株式会社製「PASインキ800-1シリーズ 890黒」を1回スクリーン印刷し、印刷後の黒印刷部における50μm以上のピンホールを目視にてカウントした。
【0087】
<成形性>
各実施例、比較例で得られた発泡体を表面温度160℃の条件で真空成形機により成形し、直径80mm、高さ56mmの有底円筒のカップ状の成形体に成形した。成形体を目視で観察し、その成形性を以下の3段階で評価した。
○:全面均等
△:破れはないがスケあり
×:破損、しわ、溶融あり
【0088】
[使用原料]
実施例及び比較例で用いた材料は以下のとおりである。
【0089】
<ポリオレフィン系樹脂>
・PP(1):住友化学株式会社製「ノーブレン AD571」(密度:0.900g/cm3、メルトフローレイト:0.6g/10min)
・LLDPE(1):ダウケミカル社製「ダウレックス2045G」(密度:0.920g/cm3、メルトフローレイト:1.0g/10min)
【0090】
<配合物>
・発泡剤:栄和化成株式会社「ACK3-TA」(アゾジカルボンアミド)
・架橋助剤:共栄社化学「ライトエステル1.9-ND」(1,9-ノナンジオールジメタクリレート)
・架橋助剤:株式会社ADEKA製「CDA-1」(2-ヒドロキシ-N-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イルベンズアミド)
・酸化防止剤:BASFジャパン「イルガノックス1010」(フェノール系酸化防止剤)
【0091】
〔実施例1〕
ポリプロピレン樹脂(PP(1))80質量部と、ポリエチレン樹脂(LLDPE(1))20質量部と、発泡剤10質量部と、架橋助剤4.3質量部と、酸化防止剤1質量部とを溶融混練後、プレスすることにより厚さ0.3mmの発泡性シートを得た。得られた発泡性シートの表裏の2面に加速電圧800keVにて電子線を2.0Mrad照射させて、発泡性シートを架橋させた。次に架橋した発泡性シートを250℃に加熱することによって発泡させて、発泡倍率15倍、厚み2.0mm、スキン層架橋度56質量%、コア層架橋度63質量%の発泡体を得た。
得られた発泡体の評価結果を表1に示す。
【0092】
〔実施例2,4、比較例1〕
発泡性樹脂組成物の配合を表1に示すように変更すると共に、表1のスキン層架橋度及びコア層架橋度になるように電子線照射量を調整したこと以外は実施例1と同様に実施した。得られた発泡体の評価結果を表1に示す。
【0093】
〔実施例3,5、比較例2~3〕
発泡性樹脂組成物の配合を表1に示すように変更すると共に、表1のスキン層架橋度及びコア層架橋度になるように電子線照射量を調整し、得られた発泡性シートの表裏の2面に2回の電子線照射を行ったこと以外は実施例1と同様に実施した。得られた発泡体の評価結果を表1に示す。
【0094】
【0095】
上記の結果より明らかなように、本発明の発泡体は、光透過性が優れ、かつ表面が高い平滑性を有することが分かる。
【符号の説明】
【0096】
1 ピンホール
2 凹み
10a,10b,10c,10d 積層体
11 表皮層
12 発泡体
13 接着層
14 印刷層