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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】蒸着セロハン貼合紙およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/12 20060101AFI20240529BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
B32B15/12
B65D65/40 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020071372
(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公開番号】P2021167089
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】391025350
【氏名又は名称】東京製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591173936
【氏名又は名称】旭日工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083183
【弁理士】
【氏名又は名称】西 良久
(72)【発明者】
【氏名】片山 伸也
(72)【発明者】
【氏名】廣野 淳
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 清音
(72)【発明者】
【氏名】望月 宣明
(72)【発明者】
【氏名】大石 貴浩
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-179840(JP,A)
【文献】特開平8-224846(JP,A)
【文献】実公昭47-28914(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 15/12
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙に、光沢をもつ金属蒸着層を一面に有する蒸着セロハンを貼合してなる蒸着セロハン貼合紙において、
セロハンの非金属蒸着面またはセロハンの非金属蒸着面および金属蒸着面形成側の面に防湿コート層を施してなり、原紙と前記蒸着セロハンとがウェットラミネートによる水系接着剤層にて貼合してなり、前記セロハンの非蒸着面側の防湿コート層の上にプライマーコート層を設けたことを特徴とする蒸着セロハン貼合紙であって、
前記水系接着剤層が、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル共重合体、もしくはそのいずれかを成分として含む樹脂エマルジョン接着剤からなり、且つ固形分濃度が30~60%であり、B型粘度計で700~2500mPa・sの粘度であり、エマルジョン塗布量が3~20g/m であること、および前記プライマーコート層がポリエステル、ポリウレタン、もしくはそれらの成分の少なくともどちらかを含有した樹脂であり、かつ溶液の固形分濃度が10~25%であり、粘度がザーンカップNO.3で11~30秒であり、溶液塗布量が2~15g/m
あり、水系接着剤による接着工程およびプライマーコート層工程における各乾燥炉の乾燥温度が50から130℃で、乾燥路の通過時間の合計を30秒以内としたことを特徴とする蒸着セロハン貼合紙。
【請求項2】
蒸着セロハン貼合紙が、原紙/水系接着剤層/金属蒸着層/防湿コート層/セロハン/防湿コート層/プライマーコート層を順次積層してなることを特徴とする請求項1に記載の蒸着セロハン貼合紙。
【請求項3】
蒸着セロハン貼合紙が、原紙/水系接着剤層/金属蒸着層/セロハン/防湿コート層/プライマーコート層を順次積層してなることを特徴とする請求項1に記載の蒸着セロハン貼合紙。
【請求項4】
水系接着剤層が、ノニオン又はカチオン性のイオン性を有し、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル共重合体、もしくはそのいずれかを成分として含む樹脂エマルジョン接着剤からなり、固形分濃度が30~60%であり、B型粘度計で700~2500mPa・sの粘度であり、エマルジョン塗布量が3~20g/mであることを特徴とする請求項1から3の記載のいずれかに記載の蒸着セロハン貼合紙。
【請求項5】
原紙に、光沢をもつ金属蒸着層を一面に有する蒸着セロハンを貼合してなる請求項1から4のいずれかに記載の蒸着セロハン貼合紙の製造方法において、
セロハンの非蒸着面またはセロハンの非蒸着面および蒸着面側に防湿コートを施してなり、原紙と蒸着セロハンの蒸着面とがウェットラミネートによる水系接着剤層にて貼合してなり、前記セロハンの非蒸着面側の防湿コート層の上にプライマーコート層を設ける工程中で、
水系接着剤による接着工程およびプライマーコート工程における各乾燥炉の乾燥温度が50~130℃で、乾燥炉の通過時間の合計を30秒以内としたこと
を特徴とする蒸着セロハン貼合紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージやカタログ、パンフレット、書籍、ファンシー用品、トレーディングカード、文具などに使用される、強光沢感を有する包装用紙、印刷用紙、加工用紙などの意匠紙に関するものであり、より詳しくは、アルミニウムなどの光沢をもつ金属を蒸着したセロハンを原紙と貼合してなる蒸着セロハン貼合紙において、蒸着セロハンの蒸着面を原紙側にして貼合した貼合紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の強光沢感を有する意匠紙においては、従来、原紙にアルミニウム蒸着したPETフィルムが貼合された蒸着PET貼合紙が使用されてきた。
PETフィルムは強度や加工性に優れ、その蒸着フィルムは光沢度も高く、接着性も良好なことから広く使用されている。しかしながら、昨今では、環境への配慮から、このPETフィルム部分を環境に配慮した素材に変更することが望まれている。
その一つの方策として、ポリビニルアルコールフィルムにアルミニウムを蒸着したフィルムを原紙と貼合した蒸着PVA貼合紙が提案されている(特許文献1)。該特許では、ポリビニルアルコールは水に溶けるので、廃棄処理が容易で、再生可能であって環境にやさしい素材となる効果を奏するというものである。
しかしながら、ポリビニルアルコールは、フィルム状態では熱水には可溶であるが、常温の水には溶解しにくく、産業的な再生工程では、PETフィルムなどと同様に、パルプ繊維を取り除いた残渣として分離され、焼却処分されることとなる。又、ポリビニルアルコールは石油由来の原料であり、焼却した場合は炭酸ガスを放出し、環境面では温室効果ガスを増大させることになってしまう。
これに対し、本発明者等は、天然物由来原料であるセロハンに着目した。セロハンは、植物由来のセルロースを基にして生産されており、将来的な石油資源の枯渇対策において有効な素材であるとされる。又、回収した紙製品を再生し、パルプ繊維を分離する工程の残渣として焼却したとしても、発生する炭酸ガスはもともと植物原料のセルロースから発生するため、原料面ではカーボンニュートラルに近づけることができる。
しかしながら蒸着セロハンは、他の蒸着PETフィルムなどと比べて、蒸着層と基材セロハンの密着強度が低調で、原紙と蒸着面とを接着剤で貼合した場合に、容易にセロハンのみが剥離してしまう場合があるという問題もあった。
この場合、パッケージなどを成型した際に罫線部分でセロハンの剥離がおこるとパッケージそのものの強度低下をおこしてしまい、また、サック貼り部分で剥離が発生すると、パッケージ形態を保てなくなってしまう場合もあった。さらには、その前の工程である裁断時や打抜き工程で剥離が発生すると、その後の加工ができなくなってしまうという問題があった。
一方、原紙と非蒸着面とを接着剤で貼合した場合においては、上記のような剥離は発生しないことになるが、やはり蒸着層の密着が低調なために、蒸着面の上にプライマーコートを行っても、十分な耐磨性が得られずに擦れ傷が発生することがあったり、蒸着層と原紙裏面とのブロッキングで、蒸着層取られが発生する場合があるという問題があった。又、非蒸着面に防湿コートが施されたセロハンを用いると、接着剤と防湿コート間の接着が低調であったり、防湿コート層とセロハンとの界面で?れが発生してしまうこともあった。
一般的な蒸着フィルムを貼合した貼合紙においては、蒸着フィルムの蒸着面を原紙側にするか、反対面にするかは、ユーザーの趣向により決定される。意匠的により強い光沢感を求める場合は蒸着面を原紙と反対面とし、擦れ傷などを目立ちにくくしたい場合は蒸着面を原紙側とする構成を選択する。
他にも、蒸着防湿コートセロハンにおいては、原紙との接着工程やその後のプライマーコート工程などにおいて、乾燥炉で加熱されると虹発色を呈し、本来の金属光沢を変質させてしまう場合があった。逆にプライマーコート工程で熱量が不足したりすると、プライマーコート面の曇りが発生し、金属光沢の輝度感を損ねてしまう場合があり、更にはプライマーコート層と防湿コート層の密着が低下し、後加工の印刷適性や糊貼り適性を損なうおそれがあるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-101418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、環境に配慮した部材を用いた強光沢の意匠紙の開発であり、原紙と蒸着セロハンと蒸着面を紙側にして接着剤で貼合した構成の場合において、セロハンの欠点である湿度による強度低下や寸法不安定化を抑止し、金属蒸着の輝度感の変質と光沢感の低下を防止すると共に、後加工の印刷適性や糊貼り適性を有し、セロハンの接着強度を保持し、剥離を発生させにくくした蒸着セロハン貼合紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、原紙に、光沢をもつ金属を蒸着したセロハンを貼合してなる蒸着セロハン貼合紙において、該セロハンの少なくとも非蒸着面に防湿コートを施したものを使用し、原紙と蒸着セロハンの蒸着面とを水系接着剤にてウェットラミネート法にて貼合しており、非蒸着面にプライマーコート層を設けたことを特徴とする蒸着セロハン貼合紙により、上記の課題を解決できることを見出した。
又、水系接着剤が、ノニオン又はカチオン性のイオン性を有し、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル共重合体、もしくはそのいずれかを成分として含む樹脂エマルジョン接着剤であることを特徴とすることで、原紙と蒸着の密着性に有効であり、紙層破壊となり、セロハンの剥離を防止するのにより効果を発揮することを見出した。
更に、水系接着剤の固形分濃度が30~60%であり、B型粘度計で700~2500mPa・sの粘度であり、エマルジョン塗布量3~20g/mであることを特徴とすることで、蒸着セロハンの防湿コート層の密着を保持し、セロハンの剥離を防止するのに更に有効であることを見出した。
一方、プライマーコート層としては、樹脂成分としてポリエステルを含有し、かつ固形分濃度10~25%の濃度であり、粘度がザーンカップ(以下、Z.C.と記すことがある)NO.3で11~30秒の塗液であり、溶液塗布量2~15g/mであることを特徴とすることで、プライマーコート層の密着強度と後加工の印刷適性や糊貼り適性を保持しつつ、蒸着フィルムの輝度感の低下を抑えることを可能にした。
蒸着防湿コートセロハンの本来の金属光沢の変質に対しては、貼合紙の製造工程中の各乾燥炉の乾燥温度を50~110℃で、乾燥炉の通過時間の合計を30秒以内とすることで解決した。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、天然物由来原料であるセロハンを使用した強光沢の意匠紙を実現し、従来と変わらない加工適性を持った環境配慮型の包装用紙、印刷用紙、加工用紙などを製造でき、持続可能型社会に貢献するパッケージや加工製品を社会に提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】両面防湿コートされた蒸着セロハン貼合紙の構成図である。
図2】片面防湿コートされた蒸着セロハン貼合紙の構成図である。
図3】セロハンと蒸着層との間で界面剥離が発生した例を示す写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1および図2は、本発明における蒸着セロハン貼合紙の構成を示すものである。
図1は、セロハンの両面が防湿コートされた蒸着セロハンを貼合した構成であり、図2は、セロハンの片面が防湿コートされた蒸着セロハンを貼合した構成を示すものである。
【0009】
[原紙]
本発明において、基材となる原紙6としては、基本的には針葉樹パルプや広葉樹パルプを原料として抄造してなるものであるが、メカニカルパルプや非木材パルプ、段ボールや雑誌,新聞などを使用した古紙原料、ミルクカートン古紙、その他の回収紙や場内損紙を原料としたり、これらを適宜配合して用いたものであってもよい。
また、単層抄きの洋紙であっても、多層抄きの板紙であってもよい。
【0010】
板紙の場合は、全層をバージンパルプ原料から抄造するアイボリー質、古紙や着色パルプ,未晒パルプなどを中層に用いたカード質、表層以外を古紙としたボール質、全層を古紙としたものであってもよい。
原紙の片面または両面には、炭酸カルシウムやカオリンなどをコートしたものを用いてもよく、コート紙やアート紙、キャストコート紙、微塗工紙などが平滑性がよいため、より好適に用いられる。
【0011】
原紙6の坪量としては、使用用途に応じて任意に設定することができ、例えば、印刷用紙として使用する場合は200g/m以下の比較的薄い原紙が好ましく使用される。また、例えば、パッケージ用途においては、150~400g/m程度の比較的厚い原紙が使用でき、使用形態に応じて選定すればよく、特に制約はない。
また、ポリエチレンやポリプロピレンを用いた合成紙、それに無機材料や着色顔料などを添加したものなども使用することもできる。ただし、環境的な側面からは植物原料からなる原紙を用いた方が好ましい。
【0012】
[セロハン]
本発明において使用する蒸着セロハンの基材となるセロハン3は、パルプなどのセルロース原料を水酸化ナトリウムなどで溶解してビスコース化し、これをシート状にして中和させ、セルロースに戻したものである。無色のものが広く使用されているが、着色剤を添加して着色したものでもよく、必要に応じて滑剤や帯電防止剤など、種々の添加剤が使用されていてもよい。
【0013】
セロハン3の厚みとしては、任意に設定できるが、10~50μmのものが好適に用いられる。10μmより薄い場合は、その製造や加工の工程において破断しやすく、50μmより厚い場合は、剛性が高くなり、貼合紙を後加工する際に、打ち抜きや裁断などの工程での刃切れ性や罫線加工する場合の罫線の入り方に不具合が生じる場合がある。
【0014】
[防湿コート層]
本発明においては、少なくとも非蒸着面に防湿コートを施したものを使用する必要がある。防湿コート層2は、非蒸着面のみに設けても、蒸着面を含めた両面に設けてもよい。
少なくとも非蒸着面に防湿コート層2を設けることにより、原紙と蒸着セロハンを貼合した後にセロハン3の吸放湿を防止して、セロハン3の寸法変化や歪の発生を抑制することができる。
【0015】
防湿コート層2の面側を原紙6とは反対側にして貼合するため、防湿コート層2が貼合紙の表面側に配置されることになり、貼合紙や後加工した製品が置かれた湿度環境によるカールや、寸法変化によるねじれなどの発生を防止する効果がある。
【0016】
防湿コートに使用する剤としては、ポリ塩化ビニリデンやアクリル樹脂、ポリエチレンワックス、ポリ塩化ビニル-ポリ酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン-ポリ酢酸ビニル共重合体などの防湿性を有する樹脂が一般に用いられる。
これら防湿性を有する樹脂をコーティングする工法としては、グラビアコートやロールコートなど、様々なコーティング方法をとることができ、塗布量も任意で設定することが可能である。また、シリカやアルミナなどの透明な無機物や、アルミニウムなどの金属を蒸着するなどして防湿コート層としてもよい。
【0017】
[金属蒸着層]
このようにして得られた防湿コートしたセロハンの少なくとも片面には光沢をもつ金属蒸着層4を加工する。防湿コートを施した面が片面の場合は防湿コート層の無い面に蒸着を行い、両面に防湿コートを施した場合は任意の片面に蒸着を行う。必要であれば、両面に蒸着を施してもよい。
蒸着に用いる金属としては、アルミニウムのほか、錫、銅、金、銀、亜鉛、クロム、ニッケル、プラチナなどを用いることができるが、経済面と入手や蒸着加工の容易さなどから、アルミニウム、錫、銅が比較的よく用いられる。
【0018】
蒸着層4の厚さとしては、10~500nmのものが好適である。10nmより薄い場合は十分な金属光沢が得られず、遮蔽力もないため、原紙6が透けてしまい、強光沢の意匠性が得られない。一方、500nmを超える場合は、蒸着膜の柔軟性が低下し、ひび割れや凝集破壊を起こしやすくなるとともに、蒸着工程に手間がかかり、経済面で非常に高価なものとなり、実用性に欠けるものとなってしまう。
【0019】
この蒸着による金属光沢の付与は、単に蒸着を施して強光沢を発現する一般的な蒸着フィルムの製法で行えばよく、エンボス加工などと組み合わせて、ホログラムフィルムやレンズフィルムとして製造してもよい。また、2種以上の金属を用い、それを混合して蒸着したり、2層以上の蒸着層を設けてもよい。
なお、先にこの蒸着工程を行い、その後に前述の防湿コート層を設ける加工順をとることもできる。
【0020】
[ウェットラミネート]
上記のようにして作成された蒸着セロハンは、本発明においては、ウェットラミネートにより原紙に積層するが、この際、前記蒸着層を原紙側に配して接着剤により貼合するものである。
ドライラミネート法によっても接着させることは可能ではあるが、ドライラミネート法では、通常、硬化剤を接着剤に配合して用いるため、接着剤層が固い層となり、後に図3に示すように、蒸着層とセロハンの界面で剥離が起こりやすくなってしまうことがある。これは、前記の蒸着セロハンでは、蒸着層とセロハンとの密着強度がアルミニウムなどを蒸着したPETフィルムなどと比較して低調となっているためである。
【0021】
蒸着層4とセロハン3の間に防湿コート層2が介在しても、防湿コート層2とセロハン3との密着強度が同様に比較的低調であるため、結果として同じ現象が発生する。
これに対し、ウェットラミネート法では、接着剤層5はドライラミネート用接着剤に対して柔軟性がある。このため、セロハンを剥がそうとしても接着剤層5に伸びと粘りがあり、セロハン3と蒸着層4との剥がれを防止することができる。
ウェットラミネートに用いられる接着剤には水分が大量に含まれるが、蒸着層4があるためにその水分がセロハン3に到達するのを防止することができ、蒸着層4とセロハン3の間に防湿コート層2が介在すると、その水分遮断効果はより大きなものとなる。
【0022】
[水系接着剤層]
水系接着剤層5としては、ノニオン又はカチオン性のイオン性を有し、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル共重合体、もしくはそのいずれかを成分として含む樹脂エマルジョン接着剤を用いることで、十分な接着力を得られる。一方で非エマルジョン接着剤の場合は、接着力が不十分となる。
水系接着剤で使用される樹脂としては、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、アクリル酸エステル-酢酸ビニル共重合体などを含むものが好適に使用できる。
イオン性についてはカチオン性或いはノニオン性を有することを特徴とすることで、接着剤層5と原紙6の密着性に優れ、紙層破壊となり、セロハン3と蒸着層4の界面剥離を防止するのに更に有効である。
【0023】
接着剤層5のイオン性がアニオン性の場合、蒸着層4と密着させると金属と接着剤の密着が強くなりすぎるため、やはり、図3に示すように、セロハン3と金属蒸着間で剥がれてしまい、構成的に十分な接着状態となりにくい。
本発明のセロハンに使用する水系接着剤は固形分濃度が30~60%であり、B型粘度計で700~2500mPa・sであり、エマルジョン塗布量が3~20g/mであることが望ましい。また適宜、消泡剤や硬化剤などを添加してもよい。
【0024】
固形分濃度が30%未満だとセロハン面への濡れ性が悪くなり、十分な接着力が得られにくくなり、固形分濃度が60%を超えると、接着剤として不安定となり、そもそも使用できない。
水系接着剤の粘度については、B型粘度計で700mPa・s未満とするとコーターのロール上に接着剤が載らず、セロハンへの転移量が減少し、接着に必要な塗布量を確保できなくなる。
【0025】
一方、2500mPa・sを超えると、セロハン3への均一な塗布が難しくなり、部分的に膨れの発生が始まってしまうので、金属蒸着の鏡面の面感が悪くなる場合があり、好ましくない。
エマルジョン塗布量については、3g/m未満であると、接着力が発現されず、十分な接着力を得られ難い。又、エマルジョン塗布量が20g/mより多いと乾燥が不十分となり、後工程に耐えられない可能性がある。
【0026】
[プライマーコート層]
防湿コート面上には、後工程の印刷適性や糊貼り適性を好適にするため、プライマーコート層1を設ける。
このプライマーコート層1は樹脂成分としてポリエステルを含有し、かつ溶液の固形分濃度が10~25%の濃度であり、粘度がZ.C.NO.3で11~30秒であり、溶液塗布量2~15g/mであることが望ましい。
【0027】
プライマーコート層1にポリエステルを主成分とするアンカー剤を使用することで、プライマーコート層1と防湿コート層2の間にはたらく結合力が強まり、密着が強固となる。
プライマーコート層1へは必要に応じて滑り性を向上剤、静電気除電剤、硬化剤、皮膜補強剤、回収凝固防止剤などへ樹脂成分に対して、適宜、添加してもよく、任意の色調に着色したものであってもい。
又、プライマーコート層1の溶液の樹脂固形分濃度については、10%未満であると後工程の印刷適性の性能が発現されないことがあり、又、プライマーコート層1の耐磨性が不足し、擦れ傷が発生しやすくなる。
【0028】
一方、樹脂固形分濃度が25%を超えると表面が凹凸を有し、平滑性が悪化することがあり、又、プライマーコート層1が白く曇り、蒸着セロハンの輝度感を低下させることがある。
プライマー塗料粘度については、Z.C.NO.3で11秒未満とすると、泳ぎ現象が発生し、プライマーコート層1が局所的に不均一な塗膜となり思わしくない。一方、塗料粘度をZ.C.NO.3で30秒より高くとすると、塗料粘度過多となり、均一な表面が得られず塗工ムラとなり、輝度感が悪化することがある。
【0029】
更に、プライマー溶液塗布量については、2g/m未満であると、プライマーコート層のカスレや擦れ傷が発生しやすくなるとともに、後工程の印刷適性の性能が発現されず、インキ密着不良が発生することがある。一方、15g/mを超える塗布量とすると、プライマーコート層1の乾燥性が低下し、ブロッキングを起こすことがあり、又、プライマーコート層1が白く曇り、蒸着セロハンの輝度感を低下させることになる。これらを防止するためには乾燥温度を上げたり、乾燥時間を長くする必要が生じ、後に記す表面の虹発色につながってしまう。
【0030】
[蒸着セロハン貼合紙の原紙裏面]
このようにして得られた蒸着セロハンを貼合した積層紙においては、蒸着フィルム面とは反対側の原紙6の裏面にカール防止効果をもたらす加工を施すことも有効である。
一般に、フィルムをウェットラミネート法で貼合すると、フィルム面を内側にしたカールが発生することがある。
これを防止するためには、フィルムと反対面の原紙裏面に水を塗布したり、ポリビニルアルコールや澱粉などの水溶液などを塗布して乾燥させ、原紙裏面を収縮させてカールを緩和することが有効とされる。
【0031】
蒸着セロハン貼合紙においても同じ手法を用いることが可能である。
この際、ポリビニルアルコールや澱粉などの水溶液の固形分濃度は、カールの状態に応じて任意に設定でき、水または水溶液中にはエタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなどのアルコール成分やグリコール成分などを添加することもできる。
【0032】
ポリビニルアルコールは部分鹸化品や架橋品、変性品でもよく、澱粉も熱可塑性などに変性されたものであってもよい。
また、炭酸カルシウムやカオリンなどをバインダー成分などと混合したエマルジョンコート層を設けてもよい。
これらのカール防止処理は、蒸着セロハンを貼合する前工程で行っても、貼合後に行ってもよく、グラビアコートやロールコート、エアナイフコートなど、任意のコート法を用いることができる。
【0033】
また、原紙裏面の吸放湿を遮断する方法としては、フィルムを貼合する方法も有効である。
フィルムとしては特に制約はないが、環境面を考慮すると、植物由来原料を使用したものや、生分解性を有するものであることが望ましい。
貼合の方法は、ウェットラミネート、ドライラミネート、サンドイッチラミネート、サーマルラミネートなど、種々の方法を用いることができる。
場合によっては、蒸着セロハンを原紙の両面に貼合することも有効である。
そのほか、熱可塑性樹脂を押し出しラミネート法で積層することもでき、この場合もやはり、植物由来原料を使用した樹脂や、生分解性を有する樹脂であることが望ましい。
【0034】
[製造工程]
以上のような構成資材を用い、本発明の蒸着セロハン貼合紙は作成されるが、その製造工程としては、蒸着セロハンのウェットラミネート、プライマーコート、要すればカール防止加工を行うことになるが、その工程順は任意に定めることができ、全工程を一度に加工しても、分割して行っても良い。
又、エンボス加工やスリット加工、平判断裁加工などを追加することも任意である。
【0035】
ウェットラミネート工程は、原紙とセロハンを貼合させる貼合工程であり、水系接着剤を塗付する方法としては種々の方法をとることができる。
まず、水系接着剤をピックアップする方法としては、カラーパン内の接着剤をピックアップする方法、或いは噴射式でエマルジョンを溜めピックアップする方法、又はグラビアロールにて接着剤を計量、ピックアップするなど、何れの方法を採ってもよい。
【0036】
接着剤は、ピックアップしたロールから直接蒸着セロハンに接着剤を転移させても、若しくは更に別ロールに接着剤転移してから転移させても良い。
更に紙とセロハンについて圧着を行うべく、インプレッションロールを通過する。
インプレッションロールに使用するロールについてはステンレスロール、鉄ロール、樹脂ロール何れを用いても構わない。その後、乾燥炉を通過し、接着剤を乾燥、固化させる。
【0037】
蒸着セロハン上にプライマー溶液塗工を実施する場合の塗布方式としては、グラビアコーター、ロールコーター、グラビアリバースコーターなど任意の方法を用いることができる。その後、溶液塗工後の乾燥炉を通過し、裏面のコートを実施後、更に乾燥炉を通過する。
貼合紙の裏面にカール防止加工を行う必要がある場合においては、その方法については前述した任意の加工方式を採用することができる。
【0038】
上記の製造工程においては、乾燥炉を通過する工程は、貼合工程通過後の乾燥炉と蒸着セロハン上のプライマー溶液塗工通過後の乾燥炉の2セクションあり、裏面にカール防止コートを採用した場合にはその乾燥炉を含めると3セクションとなる。
【0039】
[乾燥炉セクション]
本発明に用いる蒸着防湿コートセロハンは熱履歴に敏感であり、乾燥炉で加熱されると虹発色を呈し、本来の金属光沢を変質させてしまう場合がある。このため、上記のような乾燥炉セクションの条件設定に注意を要する。
本発明においては、熱風乾燥機を使用する際は全ての乾燥炉セクションの乾燥温度を50~110℃の範囲とし、全セクションの乾燥炉通過時間の合計を30秒以下とすることが好ましい。
【0040】
温度を110℃より高くしたり、通過時間の合計が30秒を超過すると、セロハン表面に虹発色が生じて本来の金属光沢の意匠を損なってしまう場合がある。 更に望ましくは100℃以下とするとより好ましい。
赤外線ヒーターなどで乾燥させる場合も、貼合紙の表面温度が上記範囲を超えないようにするのが好ましい。
又、ドラム式の接触乾燥機を用いる場合は、貼合紙の表面温度を50℃~85℃とし、接触時間を3秒以内とするとよい。
【0041】
各セクションの乾燥温度の下限は50℃であるが、この温度を下回ると、いずれの工程においても接着不良などの問題が発生する場合がある。
特にプライマーコート工程で熱量が不足すると、プライマーコート面の曇りが発生し、金属光沢の輝度感を損ねてしまう場合があり、更にはプライマーコート層と防湿コート層の密着が低下し、後加工の印刷適性や糊貼り適性を損なうおそれがある。又、貼合紙の表裏の接触でブロッキングが発生してしまう場合があり好ましくない。
【0042】
このようにして作成された蒸着セロハン貼合紙は、必要に応じ、裁断され、グラビア印刷やオフセット印刷、フレキソ印刷、シルク印刷などの印刷加工を経て、その使用形態に応じて罫線加工、打抜き加工、糊貼り加工などが施される。また、ホットスタンプ加工やUVニス加工、ブリスター加工などの追加加工も可能であり、多様な品種、用途に使用することができる。
【0043】
以下に各実施例に基づき、本発明の蒸着セロハン貼合紙について、より具体的に説明するが、本発明はこれらの事例に限定されるものではない。
本明細書の実施例1から8、比較例1から16を作成するのに用いた各種原材料は表1の通りである。
【表1】
又、本明細書の実施例、比較例を作成するのに用いた水系接着剤・プライマー剤の塗工及び乾燥の条件を表2に一覧で示す。
【表2】
尚、以下の実施例1から8及び比較例1から16について、その評価を行うに際しては、各評価項目については以下の(a)(b)(c)の評価方法に基づき実施した。各実施例および比較例の評価結果を表3にて示す。
【表3】
表3の評価結果において、「○」は合格、「△」と「×」は不合格である。
評価項目は以下の通りである。
【0044】
(a)「接着状態」; 流れ方向20cm×幅方向4cmにカットした貼合紙から蒸着セロハンを180度の角度をつけ、手作業ではがした。蒸着層の界面剥離がなく原紙表面層の?れであった場合は「○」、蒸着層が原紙側に残る界面剥離となった場合は「△」、蒸着層がセロハン側にあり、蒸着面と接着剤間で?れた場合は「×」とした。
【0045】
(b)「輝度感」; 作成した蒸着セロハン貼合紙が貼合前の蒸着セロハン面と同等の輝度感を発揮しているかを目視にて判断した。蒸着セロハンに相当する輝度感であれば「○」、表面に凹凸が生じたり擦れ傷があって輝度感が低下している場合は「△」、白濁や虹発色などの金属光沢を損なう発色がある場合は「×」とした。
【0046】
(c)「プライマーコート層密着強度」:いわゆるセロテープピック法(登録商標:セロテープ)にて評価した。巾15mm、長さ約15cmのセロハンテープを評価するプライマーコート面に貼りつけ、空気を抜くようにして指で擦り、テープの端を直角方向に引っ張り、約1秒で?す。この際にプライマーコート層がセロハンテープ側に取られてこなければ「○」、一部分で取られた場合は「△」、全面的に取られた場合は「×」とした。
以下に、個別に実施例と比較例について説明する。
【実施例1】
【0047】
実施例1は、図1に示すように、符号で示すと1/2/3/2/4/5/6の順番で積層された構造からなっている。
原紙6として巾805mm 、坪量310g/mのコート紙、三菱製紙株式会社製「三菱Nパールカード」(商品名)を使用。
蒸着セロハンは、巾800mm、厚さ23μmのセロハン3の両面に防湿コート層2を設け、片面にアルミニウムを真空蒸着して金属蒸着層4とした尾池パックマテリアル株式会社製の「セロメタル」(商標)を用いた。
水系接着剤5として、コニシ株式会社製のカチオン性のビニル共重合樹脂エマルジョン「SP2850N」(商品名)を用い、固形分濃度50% 、粘度1940mPa・s(B型粘度計)、エマルジョン塗布量が6g/mとなるよう調整してウェットラミネーターで塗布し、蒸着面と原紙のコート面を貼合した。
【0048】
更にセロハン3側の最上面に表面の保護と印刷適性の向上のために、プライマーコート層1を設けた。プライマーコート層1としては、ポリエステル系のプライマー剤、 DICグラフィックス株式会社製「SFプライマー930」(商品名)を、固形分濃度23%、粘度20秒(Z.C.No.3)、溶液塗布量が7g/mとなるよう塗布して乾燥させることで、蒸着セロハン貼合紙Sを得た。この時の通紙速度は60m/minであり、各乾燥炉の乾燥温度は100℃ 、乾燥炉の通過時間の合計は10秒となるようにした。
得られた蒸着セロハン貼合紙Sにおいては、蒸着セロハンの接着強度および金属光沢は良好だった。
【0049】
また、実施例1の簡易構造として、図2に示すように、符号で示すと1/2/3/4/5/6の順番で積層されて、セロハン3と金属蒸着層4の間の防湿コート層2を省略したセロハン貼合紙Sを用いてもよい。
この簡易構造のセロハン貼合紙Sも実施例1のセロハン貼合紙Sと同様に蒸着セロハンの接着強度および金属光沢は良好だった。
【実施例2】
【0050】
実施例2は、実施例1と同様に、符号で示すと1/2/3/2/4/5/6の順番で積層された構造からなっている。
即ち、原紙6として巾805mm 、坪量310g/mのコート紙、三菱製紙株式会社製「三菱Nパールカード」(商標)使用。
蒸着セロハンは、巾800mm、厚さ23μmのセロハン3の両面に防湿コート層2,2を設け、片面にアルミニウムを真空蒸着して金属蒸着層4を設けた尾池パックマテリアル株式会社製の「セロメタル」(商標)を用いた。
水系接着剤5として、昭和電工株式会社のノニオン系の酢酸ビニル重合樹脂エマルジョン「AX-428J」(商品名)を用い、固形分濃度35% 、粘度750mPa・s(B型粘度計)、エマルジョン塗布量が5g/mとなるよう調整してウェットラミネーターで塗布し、蒸着面と原紙のコート面を貼合した。
【0051】
更にセロハン面3に表面の保護と印刷適性の向上のために、プライマーコート層1を設けた。プライマーコート層1としては、ポリエステル系のプライマー剤、 DICグラフィックス株式会社製「SFプライマー930」(商品名)を、固形分濃度25%、粘度25秒(Z.C.No.3)、溶液塗布量が3g/mとなるよう塗布して乾燥させることで、蒸着セロハン貼合紙Sを得た。この時の通紙速度は60m/minであり、各乾燥炉の乾燥温度は100℃ 、乾燥炉の通過時間の合計は10秒となるようにした。
得られた蒸着セロハン貼合紙Sにおいては、蒸着セロハンの接着強度および金属光沢は良好だった。
【0052】
また、実施例2の簡易構造として、図2に示すように、符号で示すと1/2/3/4/5/6の順番で積層されて、セロハン3と金属蒸着層4の間の防湿コート層2を省略したセロハン貼合紙Sを用いてもよい。
この簡易構造のセロハン貼合紙Sも実施例2のセロハン貼合紙Sと同様に蒸着セロハンの接着強度および金属光沢は良好だった。
【実施例3】
【0053】
実施例3は、実施例1と同様に、符号で示すと1/2/3/2/4/5/6の順番で積層された構造からなっている。
原紙6として巾805mm 、坪量310g/mのコート紙、三菱製紙株式会社製「三菱Nパールカード」(商標)を使用。蒸着セロハンは、巾750mm、厚さ20μmのセロハン3の両面に防湿コート層2,2を設け、片面にアルミニウムを真空蒸着して金属蒸着層4としたフタムラ化学株式会社製の「NatureFlex」(商標)を用いた。
水系接着剤5として、コニシ株式会社製のカチオン性のビニル共重合樹脂エマルジョン「SP2850N」(商品名)を用い、固形分濃度40% 、粘度1800mPa・s(B型粘度計)、エマルジョン塗布量が11g/mとなるよう調整してウェットラミネーターで塗布し、蒸着面と原紙のコート面を貼合した。
【0054】
更にセロハン3面に表面の保護と印刷適性の向上のために、プライマーコート層1を設けた。
プライマーコート層1としては、ポリエステル系のプライマー剤、 DICグラフィックス株式会社製「SFプライマー930」を、固形分濃度11%、粘度15秒(Z.C.No.3)、溶液塗布量が14g/mとなるよう塗布して乾燥させることで、蒸着セロハン貼合紙Sを得た。この時の通紙速度は60m/minであり、各乾燥炉の乾燥温度は100℃ 、乾燥炉の通過時間の合計は10秒となるようにした。
得られた蒸着セロハン貼合紙Sにおいては、蒸着セロハンの接着強度および金属光沢、プライマーコート層の密着性は良好だった。
【0055】
また、実施例3の簡易構造として、図2に示すように、符号で示すと1/2/3/4/5/6の順番で積層されて、セロハン3と金属蒸着層4の間の防湿コート層2を省略したセロハン貼合紙Sを用いてもよい。
この簡易構造のセロハン貼合紙Sも実施例3のセロハン貼合紙Sと同様に蒸着セロハンの接着強度および金属光沢は良好だった。
【実施例4】
【0056】
実施例4は、実施例1と同様に、符号で示すと1/2/3/2/4/5/6の順番で積層された構造からなっている。
原紙6として巾790mm 、坪量315g/mのキャスト紙、興陽製紙株式会社製「エスプリコート紙 裏面微塗工」(商品名)を使用。蒸着セロハンは、巾750mm、厚さ20μmのセロハン3の両面に防湿コート層2,2を設け、片面にアルミニウムを真空蒸着したフタムラ化学株式会社製の「NatureFlex」(商標)とした。
水系接着剤5として、コニシ株式会社製のカチオン性のビニル共重合樹脂エマルジョン「SP2850N」(商品名)を用い、固形分濃度50% 、粘度1940mPa・s(B型粘度計)、エマルジョン塗布量が3g/mとなるよう調整してウェットラミネーターで塗布し、蒸着面と原紙のコート面を貼合した。
【0057】
更にセロハン面に表面の保護と印刷適性の向上のために、プライマーコート層1を設けた。
プライマーコート層1としては、ポリエステル系のプライマー剤、 DICグラフィックス株式会社製「SFプライマー930」(商品名)を、固形分濃度10%、粘度12秒(Z.C.No.3)、溶液塗布量が5g/mとなるよう塗布して乾燥させることで、蒸着セロハン貼合紙Sを得た。この時の通紙速度は60m/minであり、各乾燥炉の乾燥温度は100℃ 、乾燥炉の通過時間の合計は10秒となるようにした。
得られた蒸着セロハン貼合紙Sにおいては、蒸着セロハンの接着強度および金属光沢、プライマーコート層の密着性は良好だった。
【0058】
また、実施例4の簡易構造として、図2に示すように、符号で示すと1/2/3/4/5/6の順番で積層されて、セロハン3と金属蒸着層4の間の防湿コート層2を省略したセロハン貼合紙Sを用いてもよい。
この簡易構造のセロハン貼合紙Sも実施例4のセロハン貼合紙Sと同様に蒸着セロハンの接着強度および金属光沢は良好だった。
【実施例5】
【0059】
水系接着剤5として、昭和電工株式会社のノニオン系の酢酸ビニル重合樹脂エマルジョン「AX-428J」(商標)を用い、固形分濃度50% 、粘度2500mPa・s(B型粘度計)、エマルジョン塗布量が8g/mとなるよう調整した以外は実施例2と同様にして蒸着セロハン貼合紙Sを得た。
蒸着セロハンの接着強度および金属光沢、プライマーコート層の密着性は良好だった。
【実施例6】
【0060】
水系接着剤5として、コニシ株式会社製のノニオン性のポリエチレン―ポリ酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン「SP220N」(商品名)を用い固形分濃度50% 、粘度2400mPa・s(B型粘度計)、エマルジョン塗布量が6g/mとなるよう調整した以外は実施例1と同様にして蒸着セロハン貼合紙Sを得た。
蒸着セロハンの接着強度および金属光沢、プライマーコート層の密着性は良好だった。
【実施例7】
【0061】
各乾燥炉の乾燥温度を全て60℃ 、乾燥炉の通過時間の合計は25秒となるようにした以外は実施例1と同様にして蒸着セロハン貼合紙Sを得た。
蒸着セロハンの接着強度および金属光沢、プライマーコート層の密着性は良好だった。
【実施例8】
【0062】
水系接着剤5として、コニシ株式会社製のカチオン性のビニル共重合樹脂エマルジョン「SP2850N」(商品名)を用い、固形分濃度50% 、粘度1940mPa・s(B型粘度計)、エマルジョン塗布量が17g/mとなるよう調整し、乾燥炉の通過時間の合計を20秒となるようにした以外は実施例1と同様にして蒸着セロハン貼合紙Sを得た。
蒸着セロハンの接着強度および金属光沢、プライマーコート層の密着性は良好だった。
【比較例1】
【0063】
水系接着剤5として、クラレ株式会社製のPVAを固形分濃度10%、粘度2500mPa・s(B型粘度計)となるように水に溶解した非エマルジョン系の水溶液接着剤を用い、水溶液塗布量は6g/mとなるようにした以外は実施例1と同様にして蒸着セロハン貼合紙を得た。
この評価結果としては、貼合後に蒸着セロハンの剥離を試みると、非エマルジョン接着剤であるため、蒸着セロハンの蒸着面と接着剤間に十分な接着力が得られず、界面剥離した。
【比較例2】
【0064】
水系接着剤5として、アニオン性のサイデン化学株式会社製のアクリル・酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン「AC-60」(商品名)を用い、濃度46% 、粘度2230mPa・s(B型粘度計)、エマルジョン塗布量は6g/mとなるよう調整した以外は実施例1と同様にして蒸着セロハン貼合紙を得た。
この評価結果としては、貼合後に蒸着セロハンの剥離を試みると、蒸着層がセロハンと界面剥離を起こしてコート紙側に取られ、十分な接着力が確保されなかった。
【比較例3】
【0065】
水系接着剤5として、コニシ株式会社製のカチオン性のビニル共重合樹脂エマルジョン「SP2850N」(商品名)を用い、固形分濃度20% 、粘度500mPa・s(B型粘度計)、エマルジョン塗布量が6g/mとなるよう調整した以外は実施例1と同様にして蒸着セロハン貼合紙を得た。
この評価結果としては、貼合後に蒸着セロハンの剥離を試みると、蒸着セロハンの蒸着面と接着剤間に十分な接着力が得られず、容易に界面剥離した。
【比較例4】
【0066】
水系接着剤5として、コニシ株式会社製のカチオン性のビニル共重合樹脂エマルジョン「SP2850N」(商品名)を用い、固形分濃度50% 、粘度は増粘剤としてIPAを5%添加して粘度3000mPa・s(B型粘度計)、エマルジョン塗布量が12g/mとなるよう調整した以外は実施例1と同様にして蒸着セロハン貼合紙を得た。
この評価結果としては、水系接着剤のセロハンへの均一な塗布ができず、部分的に膨れの発生が始まり、金属蒸着の鏡面の面感が悪くなり、不良品となってしまった。
【比較例5】
【0067】
水系接着剤5として、コニシ株式会社製のカチオン性のビニル共重合樹脂エマルジョン「SP2850N」(商品名)を用い、固形分濃度50% 、粘度1940mPa・s(B型粘度計)、エマルジョン塗布量が2g/mとなるよう調整した 以外は実施例1と同様にして蒸着セロハン貼合紙を得た。
この評価結果としては、貼合後に蒸着セロハンの剥離を試みると、蒸着セロハンの蒸着面と接着剤間に十分な接着力が得られず、容易に界面剥離した。
【比較例6】
【0068】
水系接着剤5として、コニシ株式会社製のカチオン性のビニル共重合樹脂エマルジョン「SP2850N」(商品名)を用い、固形分濃度50% 、粘度1940mPa・s(B型粘度計)、エマルジョン塗布量が25g/mとなるよう調整した以外は実施例1と同様にして蒸着セロハン貼合紙を得た。
この評価結果としては、貼合後に蒸着セロハンの剥離を試みると、乾燥不充分で蒸着セロハンの蒸着面と接着剤間に十分な接着力が得られず、界面剥離した。
【比較例7】
【0069】
プライマーコート層1として、硝化綿-ポリウレタン混合系のプライマー剤、DICグラフィックス株式会社製「MET-517」(商標)を用い、固形分濃度20%、粘度19秒(Z.C.NO.3)、溶液塗布量が7g/mとなるよう塗布する以外は実施例1と同様にして蒸着セロハン貼合紙を得た。
この評価結果としては、プライマーコート層が密着不十分により表面から剥離した。
【比較例8】
【0070】
プライマーコート層1として、ポリエステル系のプライマー剤、DICグラフィックス株式会社製「SFプライマー930」(商品名)を用い、固形分濃度8%、粘度12秒(Z.C.NO.3)、溶液塗布量が7g/mとなるよう塗布する以外は実施例1と同様にして蒸着セロハン貼合紙を得た。
この評価結果としては、プライマーコート層の塗布量が少ないため、表面の耐摩性が保持されず、擦れキズが発生した。
【比較例9】
【0071】
プライマーコート層1として、ポリエステル系のプライマー剤、DICグラフィックス株式会社製「SFプライマー930」(商品名)を用い、固形分濃度28%、粘度30秒(Z.C.NO.3)、溶液塗布量が3g/mとなるよう塗布する以外は実施例1と同様にして蒸着セロハン貼合紙を得た。
この評価結果としては、プライマーの固形分濃度が高く、塗布面が凹凸を有して表面平滑性が悪化した。又、プライマーコート層が白く曇り、輝度感の低下が大きいため、良品を得られなかった。
【比較例10】
【0072】
プライマーコート層1として、ポリエステル系のプライマー剤、DICグラフィックス株式会社製「SFプライマー930」(商品名)を用い、固形分濃度13%、粘度10秒(Z.C.NO.3)、溶液塗布量が6g/mとなるよう塗布する以外は実施例1と同様にして蒸着セロハン貼合紙を得た。
この評価結果としては、プライマーコート層の泳ぎが発生し、輝度感が不均一となった。
【比較例11】
【0073】
プライマーコート層1として、ポリエステル系のプライマー剤、DICグラフィックス株式会社製「SFプライマー930」(商品名)を用い、固形分濃度35%、粘度52秒(Z.C.NO.3)、溶液塗布量が3g/mとなるよう塗布する以外は実施例1と同様にして蒸着セロハン貼合紙を得た。
この評価結果としては、塗料粘度過多であり、均一な表面が得られず、塗工ムラで輝度感が低下してしまった。
【比較例12】
【0074】
プライマーコート層1として、ポリエステル系のプライマー剤、DICグラフィックス株式会社製「SFプライマー930」(商品名)を用い、固形分濃度23%、粘度20秒(Z.C.NO.3)、溶液塗布量が1g/mとなるよう塗布する以外は実施例1と同様にして蒸着セロハン貼合紙を得た。
この評価結果としては、プライマーコート層のカスレが発生し、擦れ傷も多発した。
【比較例13】
【0075】
プライマーコート層1として、ポリエステル系のプライマー剤、DICグラフィックス株式会社製「SFプライマー930」(商品名)を用い、固形分濃度23%、粘度20秒(Z.C.NO.3)、溶液塗布量が20g/mとなるよう塗布する以外は実施例1と同様にして蒸着セロハン貼合紙を得た。
この評価結果としては、製品の平判断裁後の積載でブロッキングが発生し、良品とならなかった。
【比較例14】
【0076】
各乾燥炉の乾燥温度を全て130℃ 、乾燥炉の通過時間の合計は10秒となるようにした以外は実施例1と同様にして蒸着セロハン貼合紙を得た。
この評価結果としては、セロハン面が虹色に変色してしまい、輝度感に影響を及ぼした。
【比較例15】
【0077】
各乾燥炉の乾燥温度を全て40℃ 、乾燥炉の通過時間の合計は10秒となるようにした以外は実施例1と同様にして蒸着セロハン貼合紙を得た。
この評価結果としては、乾燥不足でプライマーコート層の密着不良が発生し、セロテープピック(登録商標:セロテープ)で?れてしまった。又、プライマーコート層が白化してしまい、輝度感が低下した。
【比較例16】
【0078】
各乾燥炉の乾燥温度を全て100℃ 、乾燥炉の通過時間の合計は40秒となるようにした以外は実施例1と同様にして蒸着セロハン貼合紙を得た。
この評価結果としては、セロハン面が虹色に変色してしまい、輝度感に影響を及ぼした。
【0079】
以上のように、本発明の実施例1~実施例8は、いずれにおいても蒸着セロハンの接着強度は良好であり、輝度感も保持され、プライマーコート層の密着強度も良好であった。
これに対し比較例1~比較例2では、蒸着セロハンの接着状態の評価に関して、水系接着剤として、非エマルジョンであるPVAを用いると十分な接着が確保できなかった。またアニオン性のエマルジョン樹脂を用いると、蒸着層とセロハンとで界面剥離が発生し、接着状態が損なわれた。
【0080】
また、比較例3~6において、水系接着剤の固形分濃度30%、粘度700mPa・s(B型粘度計)を下回った場合、および塗布量3g/mを下回った場合も、蒸着セロハンの接着状態が不十分であった。
逆に塗布量20g/mを超過させると、接着剤が乾燥不足となり接着力が不十分であった。粘度2500mPa・s(B型粘度計)を上回った場合は水系接着剤のセロハンへの均一な塗布ができず、部分的に膨れが発生した。
【0081】
一方、比較例7において、プライマーコート層として、硝化綿-ポリウレタン混合系のプライマー剤を使用すると、プライマーコート層の密着が低下して容易にセロテープピック(登録商標:セロテープ)で剥離してしまった。
また、比較例8~比較例13においては、プライマー剤が固形分濃度10%あるいは塗布量2g/mを下回った場合、プライマーコート層の塗布量が少ないため、表面の耐摩性が保持されず、擦れキズが発生した。
【0082】
粘度が11秒(Z.C.NO.3)を下回った場合は、プライマーコート層の泳ぎが発生し、輝度感が不均一となり面感を損なった。
一方でプライマー剤の固形分濃度が25%を超過すると、塗布面が凹凸を有して表面平滑性が悪化した。又、プライマーコート層が白く曇り、輝度感の低下が大きいものとなった。
粘度が15秒(Z.C.NO.3)を上回った場合、プライマーコート層の塗りムラから表面の輝度感低下につながった。
塗布量を15g/mよりも超過させると、製品の平判断裁後の積載でブロッキングが発生してしまった。
【0083】
比較例14~比較例16においては、乾燥炉での加熱条件を変化させたが、乾燥炉の温度を上昇させて130℃とした場合と、乾燥時間を増加させて100℃×40秒とした場合には、過加熱で虹発色を招き金属蒸着の光沢に変調をきたして輝度感が損なわれた。
逆に乾燥炉温度を低下させて40℃×10秒とした場合には、乾燥不足でプライマーコート層の密着不良が発生し、セロテープピック(登録商標:セロテープ)で?れてしまった。又、プライマーコート層が白化してしまい、輝度感が低下した。
以上のように、比較例では、いずれにおいても良品となる製品は得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の蒸着セロハン貼合紙は、光沢感を有する包装用紙、印刷用紙、加工用紙などとして、必要により、裁断、印刷、オーバーコート、罫線加工、打抜き加工、他の部材との接着、糊貼り加工などを施し、パッケージやカタログ、パンフレット、書籍、ファンシー用品、トレーディングカードゲームのカード、文具などに使用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 プライマーコート層
2 防湿コート層
3 セロハン
4 金属蒸着層
5 水系接着剤層
6 原紙
S 蒸着セロハン貼合紙
図1
図2
図3