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特許7495814インプリント装置、および物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】インプリント装置、および物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240529BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020084790
(22)【出願日】2020-05-13
(65)【公開番号】P2021180256
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西邑 直亮
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-260193(JP,A)
【文献】特開平10-041219(JP,A)
【文献】特開2016-076558(JP,A)
【文献】特開2019-102735(JP,A)
【文献】国際公開第2017/145924(WO,A1)
【文献】特開2019-186456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン領域を有するモールドを用いて基板上のインプリント材にパターンを形成するインプリント装置であって、
前記基板を保持して移動可能なステージと、
前記インプリント材を吐出するディスペンサと、
を備え、
前記ステージの上面のうち前記基板を保持する保持領域の周囲には、前記インプリント材を硬化させる光の照度を検出するセンサと、前記ディスペンサから吐出された前記インプリント材を受けるための受容部と、前記ステージの位置を検出するためのマークとが設けられ、
前記ステージの前記上面は、前記ディスペンサの下方と前記モールドの下方との間での前記ステージの移動において前記パターン領域の下方を通過する第1領域と、前記移動において前記パターン領域の下方を通過しない第2領域を有し、前記センサ、前記受容部および前記マークは、前記第2領域に配置されており、
前記センサ、前記受容部および前記マークの少なくとも2つの間に前記第1領域が配置されている、ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
パターン領域を有するモールドを用いて基板上のインプリント材にパターンを形成するインプリント装置であって、
前記基板を保持して移動可能なステージと、
前記インプリント材を吐出するディスペンサと、
を備え、
前記ステージの上面のうち前記基板を保持する保持領域の周囲には、前記インプリント材を硬化させる光の照度を検出するセンサと、前記ディスペンサから吐出された前記インプリント材を受けるための受容部と、前記ステージの位置を検出するためのマークとが設けられ、
前記ステージの前記上面は、前記ディスペンサの下方と前記モールドの下方との間での前記ステージの移動において前記パターン領域の下方を通過する第1領域と、前記移動において前記パターン領域の下方を通過しない第2領域を有し、前記センサ、前記受容部および前記マークは、前記第2領域に配置されており、
前記ディスペンサは、前記モールドに対して第1方向側に配置され、
前記受容部は、前記ステージの前記上面において、前記センサおよび前記マークより前記第1方向側に配置されている、ことを特徴とするンプリント装置。
【請求項3】
前記センサ、前記受容部および前記マークは、前記ステージの前記上面において、前記保持領域より前記第1方向側に配置されている、ことを特徴とする請求項2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記ステージは、前記保持領域の周囲に設けられた周囲部材を含み、
前記センサ、前記受容部および前記マークは、前記周囲部材における前記第2領域に配置されている、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記周囲部材は、複数の部分部材を有し、前記複数の部分部材の間に形成される溝が前記第2領域に配置されるように構成されている、ことを特徴とする請求項4に記載のインプリント装置。
【請求項6】
パターン領域を有するモールドを用いて基板上のインプリント材にパターンを形成する処理を行うインプリント装置であって、
前記基板を保持して移動可能なステージと、
前記インプリント材を吐出するディスペンサと、
前記ステージの移動を制御する制御部と、
を備え、
前記ステージの上面のうち前記基板を保持する保持領域の周囲には、前記インプリント材を硬化させる光の照度を検出するセンサと、前記ディスペンサから吐出された前記インプリント材を受けるための受容部と、前記ステージの位置を検出するためのマークとが設けられ、
前記制御部は、前記処理において、前記センサ、前記受容部および前記マークの少なくとも1つが前記パターン領域の下方を通過することを回避するように、前記ディスペンサの下方と前記モールドの下方との間での前記ステージの移動を制御する、ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記ディスペンサの下方と前記モールドの下方との間での前記ステージの移動経路を、前記少なくとも1つが前記パターン領域の下方を通過することを回避するように決定し、当該移動経路に従って前記ステージの移動を制御する、ことを特徴とする請求項6に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記ディスペンサの下方と前記モールドの下方との間を最短経路で前記ステージを移動させるときに前記少なくとも1つが前記パターン領域の下方を通過すると判断した場合に、前記移動経路を決定する、ことを特徴とする請求項7に記載のインプリント装置。
【請求項9】
前記受容部および前記マークはそれぞれ、前記ステージの上面に形成された段差によって構成されている、ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項10】
前記センサは、前記ステージの上面に形成された凹部の中に配置されている、ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項11】
前記マークは、前記モールドに対する前記ステージの位置を検出するための第1マーク、および前記基板を搬送する搬送機構に対する前記ステージの位置を検出するための第2マークの少なくとも一方を含む、ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のインプリント装置を用いて基板上にパターンを形成する形成工程と、
前記形成工程でパターンが形成された前記基板を加工する加工工程と、を含み、
前記加工工程で加工された前記基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、および物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モールド(型)と基板上のインプリント材とを接触させた状態で該インプリント材を硬化させることにより基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置が、半導体デバイス等の量産用リソグラフィ装置の1つとして注目されている。インプリント装置では、基板上の硬化したインプリント材からモールドを引き離した際にモールドが帯電するため、その帯電による静電気力(クーロン力)がパーティクルに対して作用し、パーティクルがモールドに引き寄せられて付着しうる。このようにモールドにパーティクルが付着した状態でモールドを基板上のインプリント材に接触させてパターン形成を行うと、変形したパターンが形成されたり、モールドおよび/または基板が破損したりしうる。特許文献1には、パーティクルを捕集する捕集器(捕集面)を原版駆動部の周囲に設け、基板またはその周辺部材に付着しているパーティクルを捕集器により吸引し捕集することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-96697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インプリント装置では、基板を保持するステージの上面に、センサやマーク等を配置するために隙間や段差(凹部)が形成されることがある。このような隙間や段差は、パーティクルが溜まりやすい上、特許文献1に記載された方法によってはパーティクルを除去しきれないため、隙間や段差に残ったパーティクルがモールドのパターン領域に付着する可能性がある。
【0005】
そこで、モールドのパターン領域へのパーティクルの付着を低減するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのインプリント装置は、パターン領域を有するモールドを用いて基板上のインプリント材にパターンを形成するインプリント装置であって、前記基板を保持して移動可能なステージと、前記インプリント材を吐出するディスペンサと、を備え、前記ステージの上面のうち前記基板を保持する保持領域の周囲には、前記インプリント材を硬化させる光の照度を検出するセンサと、前記ディスペンサから吐出された前記インプリント材を受けるための受容部と、前記ステージの位置を検出するためのマークとが設けられ、前記ステージの前記上面は、前記ディスペンサの下方と前記モールドの下方との間での前記ステージの移動において前記パターン領域の下方を通過する第1領域と、前記移動において前記パターン領域の下方を通過しない第2領域を有し、前記センサ、前記受容部および前記マークは、前記第2領域に配置されており、前記センサ、前記受容部および前記マークの少なくとも2つの間に前記第1領域が配置されている、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、モールドのパターン領域へのパーティクルの付着を低減するために有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】インプリント装置の構成を示す概略図
図2】基板ステージの上面図
図3】基板ステージの断面図
図4】インプリント処理を示すフローチャート
図5】クリーニング処理を実施している様子を示す図
図6】従来のインプリント処理における基板ステージの移動の制御例を示す図
図7】第1実施形態のインプリント処理における基板ステージの移動の制御例を示す図
図8】基板ステージの上面における累積通過領域を示す図
図9】第2実施形態の周囲部材におけるセンサ等の配置例を示す図
図10】第実施形態の周囲部材の構成およびセンサ等の配置例を示す図
図11】物品の製造方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<第1実施形態>
本発明に係る第1実施形態について説明する。インプリント装置は、基板上に供給されたインプリント材と型とを接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギを与えることにより、型の凹凸パターンが転写された硬化物のパターンを形成する装置である。例えば、インプリント装置は、基板上に液状のインプリント材を供給し、凹凸のパターンが形成されたモールド(型)を基板上のインプリント材に接触させた状態で当該インプリント材を硬化させる。そして、モールドと基板との間隔を広げて、硬化したインプリント材からモールドを剥離(離型)することで、基板上のインプリント材にモールドのパターンを転写することができる。このような一連の処理は「インプリント処理」と呼ばれ、基板における複数のショット領域の各々について行われる。
【0012】
インプリント材には、硬化用のエネルギが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギとしては、電磁波、熱等が用いられる。電磁波としては、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される、赤外線、可視光線、紫外線などの光である。
【0013】
硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物である。このうち、光により硬化する光硬化性組成物は、重合性化合物と光重合開始材とを少なくとも含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマ成分などの群から選択される少なくとも一種である。
【0014】
インプリント材は、スピンコータやスリットコータにより基板上に膜状に付与される。あるいは、液体噴射ヘッドにより、液滴状、あるいは複数の液滴が繋がってできた島状または膜状となって基板上に付与されてもよい。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下である。
【0015】
[インプリント装置の構成]
本実施形態のインプリント装置100の構成について図1図3を参照しながら説明する。図1は、本実施形態のインプリント装置100の構成を示す概略図である。図2(a)は、基板ステージSTの上面図であり、図2(b)は、基板チャック2および周囲部材3を取り除いた状態の基板ステージSTの上面図(即ち、図1のA-A断面図)である。また、図3(a)は、図2(a)に示す基板ステージSTのB-B断面図であり、図3(b)は、図2(a)に示す基板ステージSTのC-C断面図である。以下の説明において、基板1の上面に平行な面内において互いに直交する方向をX方向およびY方向とし、基板1の面に垂直な方向をZ方向とする。なお、「X方向」とは、+X方向よび-X方向を含むものとして定義されうる。「Y方向」および「Z方向」についても同様である。
【0016】
本実施形態のインプリント装置100は、例えば、基板1を保持して移動可能な基板ステージSTと、モールド10を保持するインプリントヘッドIHと、照射部15と、第1計測部16と、第2計測部17と、供給部18と、制御部19とを含みうる。制御部19は、例えばCPUやメモリなどを有するコンピュータによって構成され、インプリント装置100の各部を制御するとともに、基板1における複数のショット領域の各々に対するインプリント処理を制御する。
【0017】
モールド10は、通常、石英など紫外線を透過することが可能な材料で作製されており、基板側の面における一部の領域(パターン領域11)には、基板上のインプリント材に転写されるべき凹凸パターンが形成されている。パターン領域11は、例えば数十μm程度の段差で構成されたメサ形状を有している。また、基板1としては、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられ、必要に応じて、その表面に基板とは別の材料からなる部材が形成されていてもよい。基板1としては、具体的に、シリコンウェハ、化合物半導体ウェハ、石英ガラスなどである。また、インプリント材の付与前に、必要に応じて、インプリント材と基板との密着性を向上させるために密着層を設けてもよい。
【0018】
基板ステージSTは、基板1を保持して移動可能に構成される。基板ステージSTは、例えば、真空保持などにより基板1を保持する基板チャック2と、基板チャック2を支持して定盤8の上をXY方向に移動可能な可動部4とを含みうる。可動部4には、定盤8に向かって圧縮空気を噴出することで可動部4を定盤8から浮上させるためのエアガイド21が備えられている。これにより、可動部4は、定盤8から浮上した状態で、定盤8の上面に沿ってXY方向に移動することができる。また、可動部4は、駆動機構DMによって駆動される。駆動機構DMは、ビーム部材5と、第1駆動部6と、第2駆動部7とを含みうる。
【0019】
ビーム部材5は、X方向への可動部4の移動をガイド(案内)するためにX方向に延伸した部材であり、可動部4に設けられた開口(凹部)を貫通するように配置されている。ビーム部材5は、可動部4の移動をガイドするガイド部分5aと、該ガイド部分5aの両端(X方向)において該ガイド部分5aを支持する支持部分5bとを含みうる。支持部分5bには、後述する第2駆動部7の可動子7bが設けられるとともに、エアガイド22、23が備えられている。エアガイド22は、ビーム部材5を定盤8から浮上させるために定盤8に向かって圧縮空気を噴出し、エアガイド23は、X方向においてビーム部材5を位置決めするために第2駆動部7の固定子7aに向かって圧縮空気を噴出する。また、可動部4に設けられた開口の側面(ビーム部材5側の面)にはエアガイド24が備えられており、ビーム部材5(ガイド部分5a)の側面に向かって圧縮空気を噴出することで、ビーム部材5に対して可動部4を位置決めすることができる。
【0020】
第1駆動部6は、可動部4をビーム部材5に沿ってX方向に駆動する。第1駆動部6は、例えば、X方向に沿って配列された複数のコイルを有する固定子6aと、永久磁石を有する可動子6bとで構成されたリニアモータを含みうる。本実施形態では、図2(b)に示すように、第1駆動部6の固定子6aはビーム部材5(ガイド部分5a)に設けられており、可動子6bは可動部4に設けられている。また、第2駆動部7は、ビーム部材5をY方向に駆動する。第2駆動部7は、例えば、Y方向に沿って配列された複数のコイルを有する固定子7aと、永久磁石を有する可動子7bとで構成されたリニアモータを含みうる。本実施形態では、第2駆動部7の可動子7bは、ビーム部材5の支持部分5bに設けられている。
【0021】
インプリントヘッドIHは、例えば、モールドチャック12と、モールドステージ13と、モールド駆動部14とを含みうる。モールドチャック12は、モールドステージ13によって支持されており、真空保持などによりモールド10を保持する。モールドチャック12およびモールドステージ13には、照射部15からの光を通過させるための開口(不図示)が設けられている。また、モールドステージ13には、基板ステージSTによって保持された基板1の高さを検出するセンサ20や、モールド10を基板上のインプリント材に押印(押圧)したときの圧力を検出するロードセル(不図示)などが設けられてもよい。
【0022】
モールド駆動部14は、モールド昇降用のアクチュエータを含み、モールドチャック12およびモールドステージ13とともにモールド10をZ方向に駆動する。具体的には、モールド駆動部14は、モールド10と基板上のインプリント材とを接触させたり、硬化したインプリント材からモールド10を剥離(離型)したりするように、モールド10をZ方向に駆動する機能を有する。また、モールド駆動部14は、モールド10の傾き(姿勢)を基板に合わせて補正する機能を有してもよい。
【0023】
照射部(硬化部)15は、モールド10と基板上のインプリント材とが接触している状態で、モールド10を介してインプリント材に光(例えば紫外光)を照射し、インプリント材を硬化させる。照射部15は、例えば、光源と、光源から射出された光を整形する光学系(コリメータレンズ等)とを含みうる。
【0024】
第1計測部16は、例えばモールドステージ13に設けられたTTM(Through The Mold)スコープを含みうる。具体的には、第1計測部16は、モールド10に設けられたアライメントマークを介して、基板ステージST(周囲部材3)に設けられた基準マーク、および/または基板1に設けられたアライメントマークを検出するための光学系および撮像系を有する。そして、第1計測部16は、TTMスコープでの検出結果に基づいて、XY方向におけるモールド10と基板1(各ショット領域)との相対位置、および/またはモールド10と基板ステージSTとの相対位置を計測する。
【0025】
第2計測部17は、モールド10を介さずに、基板ステージST(周囲部材3)に設けられた基準マーク、および/または基板1に設けられたアライメントマークを検出するための光学系および撮像系を有するオフアクシススコープを含みうる。そして、第2計測部17は、オフアクシススコープでの検出結果に基づいて、XY方向におけるモールド10と基板1(各ショット領域)との相対位置、および/またはモールド10と基板ステージSTとの相対位置を計測する。これにより、制御部19は、第1計測部16での計測結果および/または第2計測部17での計測結果に基づいて、モールド10と基板1との位置合わせを制御することができる。
【0026】
供給部18は、インプリント材(例えば、光硬化型の樹脂)を吐出する吐出口を有するディスペンサを含み、ディスペンサにインプリント材を吐出(滴下)させることにより基板上にインプリント材を供給する。供給部18(ディスペンサ)は、例えばピエゾジェット方式やマイクロソレノイド方式などを採用し、基板ステージSTによりXY方向に基板1が移動している状態で、微小な容積を有する複数の液滴としてインプリント材を吐出する。これにより、供給部18は、基板上(各ショット領域上)にインプリント材を供給することができる。
【0027】
ここで、本実施形態のインプリント装置100では、基板チャック2(基板1の保持領域)の周囲に周囲部材3が設けられている。周囲部材3は、パージプレートもしくは同面板とも呼ばれ、可動部4により支持されているとともに、その上面が基板1の上面と同一平面になるようにZ軸方向の位置が調整されている。周囲部材3を設けることにより、モールド10の凹凸パターンへのインプリント材の充填性を向上させるためにモールド10と基板1との間に供給される充填促進ガス(例えばヘリウム)の濃度を均一化することができる。また、周囲部材3を設けることにより、基板1の周囲においてモールド10の下方に形成される隙間を小さくすることができる。そのため、外部空間からモールド10と基板1との間にパーティクルを入り込みにくくし、モールド10のパターン領域11にパーティクルが付着することを低減することができる。
【0028】
また、周囲部材3の上面には、複数の機能部材が設けられる。本実施形態では、機能部材として、例えば、センサ33と、受容部35と、基準マークとが周囲部材3の上面に設けられる。
【0029】
センサ33は、インプリント材を硬化させるために照射部15から射出された硬化光の照度を検出する照度計であり、図3(a)に示すように、その上面が基板1の上面と同一平面になるように、周囲部材3の上面に形成された開口34の内部に配置される。これにより、硬化光の照度計測を基板1と同一の高さで精度よく行うことができる。受容部35は、供給部18(ディスペンサ)から予備吐出されたインプリント材を受けるための受け皿であり、図3(b)に示すように、周囲部材3の上面に形成された段差(凹部)によって構成されうる。周囲部材3の受容部35に対して供給部18からインプリント材を吐出させる予備吐出を定期的に行うことにより、基板1に対するインプリント処理の際に供給部18から安定的にインプリント材を吐出させることができる。
【0030】
基準マークは、基板ステージSTの位置を検出するためのマークであり、第1基準マーク31(第1マーク)と第2基準マーク36(第2マーク)とを含みうる。第1基準マーク31は、モールド10に対する基板ステージSTの位置を検出するためにマークであり、図3(a)に示すように、その上面が基板1の上面と同一平面になるように、周囲部材3の上面に形成された開口32の内部に配置される。この第1基準マーク31を第1計測部16および/または第2計測部17により検出することで、モールド10に対する基板ステージSTの位置を精度よく検出することができる。第2基準マーク36は、基板1を搬送する基板搬送機構(不図示)に対する基板ステージSTの位置を検出するためのマークであり、図3(b)に示すように、周囲部材3の上面に形成された段差(凹部)によって構成されうる。この第2基準マーク36を、基板搬送機構に設けられたカメラ等により検出することで、基板搬送機構に対する基板ステージSTの位置を精度よく検出することができる。
【0031】
[インプリント処理]
上述した本実施形態のインプリント装置100で行われるインプリント処理について説明する。図4は、本実施形態のインプリント処理を示すフローチャートである。図4に示すフローチャートの各工程は、制御部19によって制御されうる。
【0032】
ステップS11では、制御部19は、基板搬送機構(不図示)を用いて、基板ステージSTの基板チャック2の上に基板1を搬入し、基板1を保持するように基板チャック2を制御する。また、この際、制御部19は、基板搬送機構のカメラ等に基板ステージST(周囲部材3)の第2基準マーク36を検出させることにより、基板搬送機構に対する基板ステージSTの位置を確認させ、安定した基板1の搬送を行うことができる。
【0033】
ステップS12では、制御部19は、基板1の各ショット領域に設けられたマーク(アライメントマーク)の位置を第2計測部17に計測させ、基板ステージSTに対する基板1の各ショット領域の位置情報を取得する。制御部19は、基板1における全ショット領域についてマークの位置を第2計測部17に計測させることで該位置情報を取得してもよいし、幾つかのサンプルショット領域についてマークの位置を第2計測部17に計測させることで該位置情報を取得してもよい。また、制御部19は、第2計測部17で計測された各マークの位置に基づいて、各ショット領域の形状や姿勢(向き)に関する情報を求めてもよい。ここで、制御部19は、インプリント処理の前段階において、第2計測部17に基板ステージST(周囲部材3)の第1基準マーク31を検出させるとよい。これにより、第2計測部17に対する基板ステージSTの位置を把握(確認)し、基板ステージSTに対する基板1の各マークの位置情報を精度よく取得することができる。
【0034】
ステップS13では、制御部19は、供給部18により、基板1における複数のショット領域のうちインプリント処理を行う対象ショット領域上にインプリント材を供給する。例えば、制御部19は、供給部18の下方に対象ショット領域が配置されるように基板ステージSTにより基板1を移動させた後、供給部18と基板1とを相対的に移動させながら供給部18にインプリント材を吐出させる。これにより、対象ショット領域上にインプリント材を供給することができる。
【0035】
ステップS14では、制御部19は、モールド10のパターン領域11と基板1の対象ショット領域上のインプリント材とを接触させる。例えば、制御部19は、ステップS12で取得した各ショット領域の位置情報に基づいて、モールド10(パターン領域11)の下方に対象ショット領域が配置されるように基板ステージSTにより基板1を移動させる。そして、制御部19は、インプリントヘッドIH(モールド駆動部14)によりモールド10を-Z方向に駆動してモールド10と基板1との間隔を狭め、モールド10のパターン領域11と基板1の対象ショット領域上のインプリント材とを接触させる。ここで、制御部19は、インプリント処理の前段階において、第1計測部16に基板ステージST(周囲部材3)の第1基準マーク31を検出させるとよい。これにより、インプリントヘッドIH(モールド10)に対する基板ステージSTの位置を把握(確認)し、モールド10のパターン領域11の下方に基板1の対象ショット領域を精度よく配置することができる。
【0036】
ステップS15では、制御部19は、モールド10のパターン領域11と基板1の対象ショット領域との位置合わせを行う。例えば、制御部19は、モールド10のパターン領域に設けられたアライメントマークと基板1の対象ショット領域に設けられたアライメントマークとの相対位置を第1計測部16に計測させる。そして、第1計測部16で計測された相対位置が目標相対位置になるように、モールド10のパターン領域11と基板1の対象ショット領域との位置合わせを行う。
【0037】
ステップS16では、制御部19は、モールド10のパターン領域11と基板1の対象ショット領域上のインプリント材とが接触している状態で、照射部15によりインプリント材に硬化光を照射して該インプリント材を硬化させる。ここで、制御部19は、インプリント処理の前段階において、基板ステージSTを移動させながら、基板ステージST(周囲部材3)のセンサ33に照射部15からの硬化光の照射強度および照射分布を計測させるとよい。これにより、センサ33での計測結果に基づいて、インプリント材への硬化光の照射光量を精度よく制御することができる。
【0038】
ステップS17では、制御部19は、インプリントヘッドIH(モールド駆動部14)によりモールド10を+Z方向に駆動してモールド10と基板1との間隔を広げ、硬化したインプリント材からモールド10を剥離する(剥離処理)。これにより、モールド10のパターン領域11に形成された凹凸パターンが基板1の対象ショット領域上のインプリント材に転写され、インプリント材のパターンを対象ショット領域上に形成することができる。
【0039】
ステップS18では、制御部19は、次にインプリント処理を行うべきショット領域(次のショット領域)が基板1にあるか否かを判断する。次のショット領域がある場合にはステップS13に進み、次のショット領域がない場合にはステップS19に進む。ステップS19では、制御部19は、基板搬送機構(不図示)を用いて、基板ステージSTの基板チャック2から基板1を搬出する。
【0040】
[パーティクルの除去]
インプリント装置100でインプリント処理を安定して実施するためには、基板1およびモールド10のパターン領域11へのパーティクルの付着を低減することが好ましい。そのため、インプリント装置100では、基板ステージST上のパーティクルを除去するためのクリーニング処理が定期的に行われる。クリーニング処理は、一例として、図5に記載されているように、モールド10の周辺に捕集器41(捕集面)を設け、捕集器41と基板ステージSTの上面と対向させた状態で捕集器41と基板ステージSTとを相対移動させる。捕集器41には、基板ステージST(周囲部材3)との間に電界を発生させるための電位が供給され、この電界により基板ステージST上のパーティクルを捕集器41に吸引して捕集することができる。
【0041】
図5(a)は、図2(a)のB-B断面図であり、周囲部材3における第1基準マーク31およびセンサ33を含む経路上を捕集器41を移動させてクリーニング処理を実施している様子を表している。 図5(a)の左図は、捕集器41によるクリーニング処理を実施する前の段階を表しており、周囲部材3の上面にはパーティクル42が存在している。また、第1基準マーク31およびセンサ33は、周囲部材3の上面に形成された開口32、34の内部にそれぞれ配置されているため、第1基準マーク31と開口32との隙間、およびセンサ33と開口34との隙間にもパーティクル43が存在している。基板ステージSTを矢印方向に駆動して、捕集器41を基板ステージST(周囲部材3)の上面に対して相対的に移動させることにより、周囲部材3の上面のクリーニング処理を実施することができる。
【0042】
図5(a)の右図は、捕集器41によるクリーニング処理を実施した後の段階を表している。周囲部材3の上面に存在していたパーティクル42については、捕集器41との距離が短いため捕集器41によって捕集することができる。一方で、第1基準マーク31およびセンサ33が配置されている開口32、34の隙間に存在しているパーティクル43については、捕集器41との距離が長いため、捕集器41で十分な吸引力が得られず、捕集面41によって捕集することが困難になる。捕集部41は電界によりパーティクルの吸引を行っているので、パーティクルとの距離が長くなると距離の2乗に反比例して吸引力が落ちてしまう。この距離に依存した吸引力の低下により第1基準マーク31と開口32の隙間、およびセンサ33と開口34の隙間にはパーティクル43が残ってしまう。
【0043】
同様に、図5(b)は、図2(a)のC-C断面図であり、周囲部材3における受容部35および第2基準マーク36を含む経路上を捕集器41を移動させてクリーニング処理を実施している様子を表している。 図5(b)の左図は、捕集器41によるクリーニング処理を実施する前の段階を表しており、周囲部材3の上面にはパーティクル44が存在し、受容部35および第2基準マーク36を構成する段差(凹部)にはパーティクル45が存在している。基板ステージSTを矢印方向に駆動して、捕集器41を基板ステージST(周囲部材3)の上面に対して相対的に移動させることにより、周囲部材3の上面のクリーニング処理を実施することができる。
【0044】
図5(b)の右図は、捕集器41によるクリーニング処理を実施した後の段階を表している。周囲部材3の上面に存在していたパーティクル44については、捕集器41によって捕集することができる。一方で、受容部35および第2基準マーク36ついては、周囲部材3の上面に形成された段差(凹部)によって構成されており、捕集器41との距離が長く、捕集器41によって捕集することが困難になる。特に、受容部35および第2基準マーク36を構成する段差(凹部)の隅部に付着したパーティクル45は2つの面に対して付着しているので、捕集面41での捕集がより困難になりうる。
【0045】
このように捕集器41を用いたクリーニング処理では、第1基準マーク31と開口32との隙間、センサ33と開口34との隙間、受容部35および第2基準マークを構成する段差(凹部)では、パーティクルを除去しきれず、パーティクルが残りやすい。ここで、上記の例では、捕集器41に静電気力を発生させるクリーニング方法を記載したが、捕集器41にエアー吸引力や磁力を発生させるクリーニング方法であってもよい。いずれの方法においても、捕集器41とパーティクルとの距離に応じて捕集能力が低下してしまうので同様の結果となる。また、ワイプ等を用いて周囲部材3上のパーティクルを拭き取るクリーニング方法においても同様に、周囲部材3の隙間・段差(凹部)の拭き取りを行うことは困難である。
【0046】
本実施形態のインプリント処理では、ステップS17において基板上の硬化したインプリント材からモールド10を剥離した際に、モールド10が帯電しうる(これは、剥離帯電と呼ばれる)。そのため、クリーニング処理において捕集器41により捕集することができずに周囲部材3に残ったパーティクル43、45は、剥離帯電したモールド10のパターン領域11が上方を通過した際に、パターン領域11に付着する可能性がある。また、基板ステージSTはXY方向に加減速駆動しているため、ステージ駆動時の加減速度によってパーティクル43、45に慣性力が加わり、剥離帯電したモールド10のパターン領域11にパーティクル43、45がより付着しやすくなってしまう。剥離帯電したモールド10の下方に気体供給部(不図示)によって気体の流れを形成している場合も同様である。気体供給部により形成された気体の流れでパーティクル43、45に力が加わるため、剥離帯電したモールド10のパターン領域11にパーティクル43、45がより付着しやすくなってしまう。
【0047】
そこで、本実施形態の制御部19は、クリーニング処理では除去しきれずに周囲部材3に残ったパーティクルがモールド10のパターン領域11に付着することを回避するように、インプリント処理における基板ステージSTの移動を制御する。具体的には、制御部19は、センサ33、受容部35、第1基準マーク31および第2基準マーク36の少なくとも1つがモールド10のパターン領域11の下方を通過することを回避するように、インプリント処理における基板ステージSTの移動を制御する。インプリント処理における基板ステージSTの移動は、供給部18(ディスペンサ)の下方とモールド10(パターン領域11)の下方との間での基板ステージSTの移動を含む。以下では、本実施形態のインプリント処理における基板ステージSTの移動制御について、従来のインプリント処理における基板ステージSTの移動制御と比較しながら説明する。
【0048】
[従来の基板ステージの移動制御]
まず、従来のインプリント処理における基板ステージSTの移動制御について説明する。図6は、基板1および周囲部材3を上方(+Z方向側)から見た図であり、従来のインプリント処理における基板ステージSTの移動の制御例を示している。図6では、基板1における複数のショット領域のうちショット領域Sh1~Sh4に対して順番にインプリント処理を行う例を示しており、モールド10のパターン領域11および供給部18(ディスペンサ)の位置もあわせて図示されている。なお、図6では、基板1におけるショット領域Sh1~Shを単に数字のみで表している。
【0049】
図6(1-a)は、ショット領域Sh1のインプリント処理(剥離処理)が完了した段階であり、モールド10(パターン領域11)が剥離帯電している状態である。そして、図6(1-b)に示すように、供給部18によりショット領域Sh2上にインプリント材を供給するため、ショット領域Sh2が供給部18の下方に配置されるように基板ステージSTを移動させる。図6(1-b)には、基板ステージSTの上面のうち、当該基板ステージSTの移動においてモールド10のパターン領域11の下方を通過する通過領域51aが示されている。通過領域51aは、パーティクルが残りやすい隙間や段差(凹部)が生じるセンサ33、受容部35、第1基準マーク31および第2基準マークを含まない平面であり、事前のクリーニング処理によりパーティクルの除去が行われている。そのため、本工程での基板ステージSTの移動においてモールド10のパターン11にパーティクルが付着する可能性は低い。
【0050】
ショット領域Sh2上へインプリント材を供給した後、図6(1-c)に示すように、ショット領域Sh2がモールド10のパターン領域11の下方に配置されるように基板ステージSTを移動させる。図6(1-c)には、基板ステージSTの上面のうち、当該基板ステージSTの移動においてモールド10のパターン領域11の下方を通過する通過領域51bが示されている。通過領域51bも、通過領域51aと同様に、センサ33等を含まない平面であり、事前のクリーニング処理によりパーティクルの除去が行われている。そのため、本工程での基板ステージSTの移動においてモールド10のパターン11にパーティクルが付着する可能性は低い。
【0051】
図6(2-a)は、ショット領域Sh2のインプリント処理(剥離処理)が完了した段階である。そして、図6(2-b)に示すように、供給部18によりショット領域Sh3上にインプリント材を供給するため、ショット領域Sh3が供給部18の下方に配置されるように基板ステージSTを移動させる。図6(2-b)には、基板ステージSTの上面のうち、当該基板ステージSTの移動においてモールド10のパターン領域11の下方を通過する通過領域51cが示されている。また、ショット領域Sh3上へインプリント材を供給した後、図6(2-c)に示すように、ショット領域Sh3がモールド10のパターン領域11の下方に配置されるように基板ステージSTを移動させる。図6(2-c)には、基板ステージSTの上面のうち、当該基板ステージSTの移動においてモールド10のパターン領域11の下方を通過する通過領域51dが示されている。通過領域51cおよび51dのいずれも、パーティクルが残りやすい隙間が生じる第1基準マーク31を含んでいるため、基板ステージSTの移動においてモールド10のパターン11にパーティクルが付着する可能性が高い。
【0052】
同様に、図6(3-a)は、ショット領域Sh3のインプリント処理(剥離処理)が完了した段階である。そして、図6(3-b)に示すように、供給部18によりショット領域Sh4上にインプリント材を供給するため、ショット領域Sh4が供給部18の下方に配置されるように基板ステージSTを移動させる。図6(3-b)には、基板ステージSTの上面のうち、当該基板ステージSTの移動においてモールド10のパターン領域11の下方を通過する通過領域51eが示されている。また、ショット領域Sh4上へインプリント材を供給した後、図6(3-c)に示すように、ショット領域Sh4がモールド10のパターン領域11の下方に配置されるように基板ステージSTを移動させる。図6(3-c)には、基板ステージSTの上面のうち、当該基板ステージSTの移動においてモールド10のパターン領域11の下方を通過する通過領域51fが示されている。通過領域51eおよび51fのいずれも、パーティクルが残りやすい隙間が生じる第1基準マーク31を含んでいるため、基板ステージSTの移動においてモールド10のパターン11にパーティクルが付着する可能性が高い。
【0053】
[本実施形態の基板ステージの移動制御]
次に、本実施形態のインプリント処理における基板ステージSTの移動制御について説明する。図7は、基板1および周囲部材3を上方(+Z方向側)から見た図であり、本実施形態のインプリント処理における基板ステージSTの移動の制御例を示している。図7では、図6と同様に、基板1における複数のショット領域のうちショット領域Sh1~Sh4に対して順番にインプリント処理を行う例を示しており、モールド10のパターン領域および供給部18(ディスペンサ)の位置もあわせて図示されている。なお、図7(1-a)~(3-c)は、図6(1-a)~(3-c)にそれぞれ対応している。また、図7においても、図6と同様に、基板1におけるショット領域Sh1~Shを単に数字のみで表している。
【0054】
図7には、基板ステージSTの上面のうち、基板ステージST移動においてモールド10のパターン領域11の下方を通過する通過領域52a~52fが図示されている。本実施形態の基板ステージSTの移動制御(図7)は、従来の基板ステージSTの移動制御(図6)と比べ、供給部18の下方とモールド10の下方との間における基板ステージSTの移動経路が異なる。つまり、本実施形態のインプリント処理では、センサ33、受容部35、第1基準マーク31および第2基準マークの少なくとも1つがモールド10のパターン領域11の下方を通過することを回避するように、基板ステージSTの移動を制御している。
【0055】
図7(1-a)~(1-c)は、ショット領域Sh1のインプリント処理(剥離処理)が完了してから、供給部18によりショット領域Sh2上にインプリント材を供給するために基板ステージSTを移動させる工程を示している。図7(1-b)~(1-c)には、基板ステージSTの上面のうち、基板ステージSTの移動においてモールド10のパターン領域11の下方を通過する通過領域52a、52bがそれぞれ示されている。通過領域51aおよび51bのいずれも、パーティクルが残りやすい隙間や段差が生じるセンサ33等を含まないため、基板ステージSTの移動においてモールド10のパターン11にパーティクルが付着する可能性は低い。
【0056】
図7(2-a)~(2-c)は、ショット領域Sh2のインプリント処理(剥離処理)が完了してから、供給部18によりショット領域Sh3上にインプリント材を供給するために基板ステージSTを移動させる工程を示している。この工程において、図6(2-a)~(2-c)に示す従来のインプリント処理のように基板ステージSTを移動させると、上述したようにモールド10のパターン領域11にパーティクルが付着する可能性が高くなる。そこで、本実施形態のインプリント処理では、センサ33等がモールド10のパターン領域11の下方を通過することを回避するように、基板ステージSTの移動を制御する。
【0057】
例えば、制御部19は、供給部18の下方とモールド10の下方との間での基板ステージSTの移動経路を、センサ33等がモールド10のパターン領域11の下方を通過することを回避するように決定する。そして、決定した移動経路に従って基板ステージSTの移動を制御しうる。この場合において、制御部19は、従来のインプリント処理のように供給部18の下方とモールド10の下方との間を最短経路で基板ステージSTを移動させるときにモールド10のパターン領域11の下方をセンサ33等が通過するか否かを判断する。そして、最短経路ではパターン領域11の下方をセンサ33等が通過すると判断した場合に、センサ33等がパターン領域11の下方を通過することを回避するための基板ステージSTの移動経路を決定しうる。
【0058】
供給部18の下方にショット領域Sh3を配置する場合には、図7(2-b)の通過領域52cで示すように、基板ステージSTを+X方向に移動させた後に+Y方向に移動させる。また、モールド10のパターン領域11の下方にショット慮域Sh3を配置する場合には、図7(2-c)の通過領域52dで示すように、基板ステージSTを-Y方向に移動させた後、+X方向に移動させて-Y方向に移動させる。このように基板ステージSTを移動させることにより、センサ33等がモールド10のパターン領域11の下方を通過することを回避し、パターン領域11にパーティクルが付着する可能性を低下させることができる。
【0059】
図7(3-a)~(3-c)は、ショット領域Sh3のインプリント処理(剥離処理)が完了してから、供給部18によりショット領域Sh4上にインプリント材を供給するために基板ステージSTを移動させる工程を示している。この工程においても、通過領域52e、52fで示すように、センサ33等がモールド10のパターン領域11の下方を通過することを回避するように、基板ステージSTの移動を制御する。これにより、パターン領域11にパーティクルが付着する可能性を低下させることができる。
【0060】
図8は、基板ステージSTの上面において、複数のショット領域に対するインプリント処理でモールドのパターン領域11の下方を通過した通過領域の累積結果(以下では、累積通過領域と呼ぶことがある)を示している。図8(a)は、従来のインプリント処理における累積通過領域51を示しており、図8(b)は、本実施形態のインプリント処理における累積通過領域52を示している。図8(a)に示す従来のインプリント処理では、累積通過領域51に第1基準マーク31および受容部35が含まれているため、モールド10のパターン領域11にパーティクルが付着する可能性が高い。一方、図8(b)に示す本実施形態のインプリント処理では、累積通過領域52にセンサ33等が含まれていないため、モールド10のパターン領域11にパーティクルが付着する可能性を低下させることができる。
【0061】
上述したように、本実施形態のインプリント装置100は、センサ33等がモールド10のパターン領域11の下方を通過することを回避するように、供給部18の下方とモールド10の下方との間での基板ステージSTの移動を制御している。これにより、モールド10のパターン領域11にパーティクルが付着する可能性を低下させ、基板上に形成されたインプリント材のパターンに変形が生じたり、モールド10および/または基板1が破損したりすることを低減することができる。ここで、本実施形態では、周囲部材3に設けられる機能部材として、センサ33、受容部35、第1基準マーク31および第2基準マーク36を例示したが、それに限られず、他の部材を周囲部材3に設けてもよい。例えば、何らかの機構や部材を周囲部材3に設けたときに隙間や段差が生じた場合、制御部19は、モールド10のパターン領域11の下方を当該隙間や段差が通過することを回避するように、基板ステージSTの移動を制御しうる。
【0062】
<第2実施形態>
本発明に係る第2実施形態について説明する。第1実施形態では、センサ33等の複数の機能部品がモールド10のパターン領域11の下方を通過することを回避するように、インプリント処理における基板ステージSTの移動を制御する例について説明した。一方、本実施形態では、センサ33等の複数の機能部材を、基板ステージSTの移動の際にモールド10のパターン領域11の下方を通過しないように基板ステージST(周囲部材3)の上面に配置する例に説明する。なお、本実施形態は、以下で特に言及しない限り第1実施形態のインプリント装置100の構成を基本的に引き継ぐものである。
【0063】
本実施形態のインンプリント装置100では、基板ステージST(周囲部材3)の上面において、第1領域53とそれとは異なる第2領域54とが設定される。第1領域53は、供給部18(ディスペンサ)の下方とモールド10の下方との間での基板ステージSTの移動においてモールド10のパターン領域11の下方を通過する領域である。第2領域54は、供給部18(ディスペンサ)の下方とモールド10の下方との間での基板ステージSTの移動においてモールド10のパターン領域11の下方を通過しない領域である。そして、センサ33、受容部35、第1基準マーク31および第2基準マーク36は、第2領域54に配置される。これにより、クリーニング処理では除去しきれずに周囲部材3に残ったパーティクルがモールド10のパターン領域11に付着する可能性を低減することができる。
【0064】
図9(a)~(b)は、基板1および周囲部材3を上方(+Z方向側)から見た図であり、本実施形態の周囲部材3におけるセンサ33等の配置例を示す図である。本実施形態の周囲部材3の上面には、第1実施形態と同様に、センサ33、受容部35、第1基準マーク31および第2基準マーク36が機能部材として設けられている。また、図9(a)~(b)では、基板ステージSTの上面のうち、供給部18の下方とモールド10の下方との間での基板ステージSTの移動においてモールド10のパターン領域11が通過する通過領域が、第1領域53として図示されている。第1領域53は、例えば、図8(a)に示した従来のインプリント処理における累積通過領域51に対応する領域である。また、基板ステージSTの上面のうち、第1領域53以外の領域は、供給部18の下方とモールド10の下方との間での基板ステージSTの移動においてモールド10のパターン領域11が通過しない第2領域54である。
【0065】
図9(a)~(b)に示す基板ステージSTにおいて、センサ33、受容部35、第1基準マーク31および第2基準マーク36は、周囲部材3の上面における第2領域54に配置されている。これにより、上述した第1実施形態の基板ステージSTの移動制御を行わなくても、従来の基板ステージSTの移動制御を行うだけで、モールド10のパターン領域11の下方をセンサ33等が通過することを回避することができる。つまり、当該パターン領域11にパーティクルが付着する可能性を低減することができる。
【0066】
ここで、供給部18(ディスペンサ)がモールド10に対して第1方向側(+X方向側)に配置されている場合、センサ33、受容部35、第1基準マーク31および第2基準マーク36は、基板1の保持領域より第1方向側に配置されているとよい。また、受容部35は、基板ステージSTの上面において、センサ33、第1基準マーク31および第2基準マーク36より第1方向側に配置されているとよい。供給部18からのインプリント材の予備吐出に要する時間を短縮するためには、できる限り供給部18の近くに受容部35を配置して、供給部18の下方に受容部35を配置するときの基板ステージSTの移動を短縮することが望ましいからである。
【0067】
図9(a)~(b)に示すセンサ33等の配置例では、センサ33、受容部35、第1基準マーク31および第2基準マーク36が、基板1の保持領域より第1方向側(+X方向側)に配置されている。また、図9(a)に示す配置例では、受容部35および第2基準マーク36は、基板1の保持領域の中心(重心)より+Y方向側に配置され、センサ33および第1基準マーク31は、基板1の保持領域の中心(重心)より-Y方向側に配置されている。一方、図9(b)に示す配置例では、第1基準マーク31および第2基準マーク36は、基板1の保持領域の中心(重心)より+Y方向側に配置され、センサ33および受容部35は、基板1の保持領域の中心(重心)より-Y方向側に配置されている。図9(a)~(b)のいずれの配置例においても、受容部35は、センサ33、第1基準マーク31および第2基準マーク36より+X方向側に配置されている。
【0068】
上述したように、本実施形態のインプリント装置100では、基板ステージST(周囲部材3)の上面において、センサ33、受容部35、第1基準マーク31および第2基準マーク36は第2領域54に配置される。これにより、従来の基板ステージSTの移動制御を行っても、モールド10のパターン領域11の下方をセンサ33等が通過することを回避し、パターン領域11にパーティクルが付着する可能性を低下させることができる。また、従来の基板ステージSTの移動制御のように、供給部18の下方とモールド10の下方との間での基板ステージSTの移動経路を短縮化(短絡化)することができるため、スループットの点においても有利になりうる。
【0069】
<第3実施形態>
本発明に係る第3実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態の構成を基本的に引き継ぐものであるが、周囲部材3が複数の部分部材61~65で構成されている点で異なる。
【0070】
図10は、基板1および周囲部材3を上方(+Z方向側)から見た図であり、本実施形態の周囲部材3の構成およびセンサ等の配置例を示す図である。本実施形態の周囲部材3は、複数の部分部材61~65で構成されている。複数の部分部材61~65は、互いに分離可能であり、且つ、それぞれ個別に可動部4と着脱可能(取り外し可能)に構成されうる。図10に示す構成例では、周囲部材3を構成する複数の部分部材61~65のうち、部分部材61には第1領域53が配置される。また、部分部材62には第2基準マーク36が設けられ、部分部材63に受容部35が設けられ、部分部材64にはセンサ33が設けられ、部分部材65には第1基準マーク31が設けられている。
【0071】
このようにセンサ等の各機能部材を部分部材61~65に個別に設けること、即ち、1つの機能部材を1つの部分部材に設けることにより、各機能部材に対応した部分部材を取り外してそれぞれのメンテナンスを容易に行うことができる。例えば、センサ33をメンテナンスする際には部分部材64を可動部4から取り外すだけでよいため、該メンテナンスが容易になる。ここで、各部分部材61~65は、メンテナンスの際に取り外されるため、ネジ等で取り外し可能に可動部4に固定する必要がある。しかしながら、各部分部材61~65の上面においてネジ等で固定すると当該ネジ等により凹形状ができてしまい、該凹形状にパーティクルが溜まりやすくなるため望ましくない。そのため、各部分部材61~65は、その上面を平面形状にするため、裏面や側面からネジ等で固定するとよい。
【0072】
また、周囲部材3を複数の部分部材61~65で構成すると、複数の部分部材61~65の間に溝が形成されてしまう。このような溝には、パーティクルが溜まりやすく、クリーニング処理では当該パーティクルを除去しきれない。そのため、当該溝が第1領域53に配置されていると、溝に存在するパーティクルがモールド10のパターン領域11に付着する可能性が高くなる。そこで、本実施形態では、第1領域53においては、溝が形成されないように一体の構造体で部分部材61が構成される。即ち、複数の部分部材61~65の間に形成される溝が第2領域54に配置されるよう周囲部材3が構成されている。これにより、第1領域53においては周囲部材3を平面形状にすることができるため、モールド10のパターン領域11にパーティクルが付着する可能性を低下させることができる。
【0073】
<物品の製造方法の実施形態>
本発明の実施形態にかかる物品の製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施形態の物品の製造方法は、基板上に供給(塗布)されたインプリント材に上記のインプリント装置を用いてパターンを形成する工程と、かかる工程でパターンを形成された基板を加工する工程とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0074】
インプリント装置を用いて成形した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0075】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0076】
次に、物品の具体的な製造方法について説明する。図11(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウェハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0077】
図11(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図11(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを通して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0078】
図11(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0079】
図11(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図11(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0080】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0081】
1:基板、2:基板チャック、3:周囲部材、4:可動部、ST:基板ステージ、10:モールド、11:パターン領域、31:第1基準マーク、33:センサ、35:受容部、36:第2基準マーク、100:インプリント装置。
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