(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】円すいころ軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 19/36 20060101AFI20240529BHJP
F16C 33/36 20060101ALI20240529BHJP
F16C 33/46 20060101ALI20240529BHJP
F16C 33/58 20060101ALI20240529BHJP
F16C 33/56 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
F16C19/36
F16C33/36
F16C33/46
F16C33/58
F16C33/56
(21)【出願番号】P 2020096727
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【氏名又は名称】鳥居 洋
(72)【発明者】
【氏名】林 康由
(72)【発明者】
【氏名】萬田 佐保子
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-173841(JP,A)
【文献】特開2008-309270(JP,A)
【文献】特開2016-200227(JP,A)
【文献】特開2007-187308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/36
F16C 33/36
F16C 33/46
F16C 33/56-33/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に外輪軌道面を有する外輪と、外周面に内輪軌道面を有する内輪と、前記外輪軌道面と前記内輪軌道面との間に転動自在に配置される複数の円すいころと、この複数の円すいころを所定の間隔で収容保持する複数のポケットを有する保持器とを備え、前記外輪の外輪軌道面の小径側端部と大径側端部、および内輪の内輪軌道面の小径側端部と大径側端部の4つの端部のうち、外輪の外輪軌道面の大径側端部に半径方向内方に突出する鍔部を形成した円すいころ軸受において、接触角を40°~50°とし、外輪鍔の肉厚Eところ大径側径DWとの関係が、0.19<E/Dw<0.44を満足
し、前記保持器の外径側もしくは内径側に円すいころの案内面を有し、且つ保持器の案内面と逆側に円すいころの脱落を防止する爪を1つ以上有し、さらに保持器の大径リング部外周面に、当該リング部の肉厚が保持器案内面を有する柱部の肉厚よりも薄くなる切欠部を形成し、前記保持器の案内面にころを当てたときの、ころ外接円径Pと、保持器の爪にころを当てたときのころ外接円径P’が、軌道面からの外輪鍔高さCに対して|P-P’|≧Cの関係を満たし、且つ、鍔外径角度γが35°~50°であることを特徴とする円すいころ軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロボットや建設機械の減速機で使用される円すいころ軸受、特に、外輪の外輪軌道面の小径側端部と大径側端部、および内輪の内輪軌道面の小径側端部と大径側端部の4つの端部のうち、外輪の外輪軌道面の大径側端部に半径方向内方に突出する鍔部を形成した、外輪鍔形式の円すいころ軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内輪の内輪軌道面の大径側端部に鍔部を形成しないで、外輪の外輪軌道面の大径側端部にのみ半径方向内方に突出する鍔部を形成した外輪鍔形式の円すいころ軸受は、特許文献1または特許文献2に開示はされているものの、製品として実用化されているものはほとんど見かけない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平1-85521号公報
【文献】特開2016-196944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その理由としては、内輪の内輪軌道面の大径側端部に鍔部を形成した内輪鍔形式の円すいころ軸受に比べ、外輪の外輪軌道面の大径側端部に鍔部を形成した外輪鍔形式の円すいころ軸受は、純アキシャル荷重の負荷能力が極端に下がるということが一番に挙げられる。
ところで、一般的に円すいころ軸受において、モーメント剛性と軸受寿命を向上させるには、ころサイズ(ころ径)を大きくすることが有効である。
【0005】
ところが、外輪鍔形式の円すいころ軸受の場合、軸受断面高さと軸受PCDを同じにしてころサイズを大きくすると、外輪鍔部の肉厚が薄くなるため、外輪鍔部の強度低下が懸念され、実用化することが困難となる。
【0006】
そこで、この発明は、内輪鍔形式の円すいころ軸受に比べ純アキシャル荷重の負荷能力を極端に低くすることなく、十分なモーメント荷重と軸受寿命を有し、しかも外輪鍔部の強度低下の懸念もない、実用化可能な外輪鍔形式の円すいころ軸受の設計基準を見出すことを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、この発明は、ころ径と外輪鍔部の肉厚との関係に着目し、ころ径と外輪鍔部の肉厚の関係を所定の数値範囲にすることによって、内輪鍔形式の円すいころ軸受と比べても純アキシャル荷重の負荷能力が極端に低くなく、そして十分なモーメント荷重と軸受寿命を有し、しかも外輪鍔部の強度低下の懸念もない、実用化可能な外輪鍔形式の円すいころ軸受を得ることができるといことを見出したのである。
【0008】
すなわち、この発明は、内周面に外輪軌道面を有する外輪と、外周面に内輪軌道面を有する内輪と、前記外輪軌道面と前記内輪軌道面との間に転動自在に配置される複数の円すいころと、この複数の円すいころを所定の間隔で収容保持する複数のポケットを有する保持器とを備え、前記外輪の外輪軌道面の小径側端部と大径側端部、および内輪の内輪軌道面の小径側端部と大径側端部の4つの端部のうち、外輪の外輪軌道面の大径側端部に半径方向内方に突出する鍔部を形成した円すいころ軸受において、接触角を40°~50°とし、外輪鍔の肉厚Eところ大径側径Dwとの関係を、0.19<E/Dw<0.44を満足させるというものである。
【0009】
なお、この発明において、接触角とは、軸受中心軸と外輪軌道面のなす角度、外輪鍔部の肉厚Eとは外輪軌道面と外輪鍔面の接点から軸受外径面までの距離、ころ大径側径Dwとは円すいころの大径側端面の直径をいうものとする。
【発明の効果】
【0010】
円すいころ軸受の径方向サイズを一定、すなわち、軸受断面高さHと軸受外径Dを一定にして、ころサイズ(ころ径)を大きくすると、負荷容量Crが大きくなり、軸受寿命とモーメント剛性を高くすることができても、ころサイズを大きくすることにより、外輪鍔の肉厚Eが薄くなって、鍔部の強度が低下し、過大荷重を受けることで鍔部の割れが発生する懸念があるが、この発明で規定する数値規定を満足するように外輪鍔形式の円すいころ軸受の設計を行うことにより、すなわち、接触角を40°~50°とし、外輪鍔の肉厚Eところ大径側径Dwとの関係を、0.19<E/Dw<0.44を満足させれば、内輪鍔形式の円すいころ軸受と比べても純アキシャル荷重の負荷能力が極端に低くなく、十分なモーメント荷重と軸受寿命を有し、しかも外輪鍔部の強度低下の懸念もない、外輪鍔部の円すいころ軸受が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】外輪の外輪軌道面の大径側端部に鍔部を形成した外輪鍔形式の円すいころ軸受に純アキシャル荷重を負荷した際における外輪側転動体荷重と内輪側転動体荷重と鍔側転動体荷重の分力を模式的に示した説明図である。
【
図2】内輪の内輪軌道面の大径側端部に鍔部を形成した内輪鍔形式の円すいころ軸受に純アキシャル荷重を負荷した際における外輪側転動体荷重と内輪側転動体荷重と鍔側転動体荷重の分力を模式的に示した説明図である。
【
図3】この発明の実施形態に係る外輪鍔形式の円すいころ軸受を保持器の柱部で切断した拡大部分断面図である。
【
図4】この発明の実施形態に係る外輪鍔形式の円すいころ軸受に使用する円すいころの側面図である。
【
図5】
図3の外輪鍔形式の円すいころ軸受をハウジングに組み付けた状態を示す拡大部分断面図である。
【
図6】
図3の外輪鍔形式円すいころ軸受の外輪側の大鍔部と円すいころの接触面積を概念的に示した概略図である。
【
図7】
図3の外輪鍔形式の円すいころ軸受における保持器のころ案内面に円すいころを押し当てた状態を示す拡大図である。
【
図8】
図3の外輪鍔形式の円すいころ軸受における保持器の爪に円すいころを押し当てた状態を示す拡大図である。
【
図9】(a)(b)(c)は、ころ-保持器アッシーを外輪に挿入する手順を示す拡大部分断面図である。
【
図10】接触角を各種変化させた例のモーメント剛性比を示すグラフである。
【
図11】接触角を各種変化させた例の寿命比を示すグラフである。
【
図12】内輪鍔形式の円すいころ軸受を保持器の柱部で切断した拡大断面図である。
【
図13】
図12の内輪鍔形式の円すいころ軸受をハウジングに組み付けた状態を示す拡大部分断面図である。
【
図14】
図12の内輪鍔形式の円すいころ軸受の内輪側の大鍔部と円すいころの接触面積を概念的に示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0013】
この発明の実施形態に係る円すいころ軸受11は、
図3に示すように、内周面に外輪軌道面12aを有する外輪12と、外周面に内輪軌道面13aを有する内輪13と、前記外輪軌道面12aと前記内輪軌道面13aとの間に転動自在に配置される複数の円すいころ14と、この複数の円すいころ14を所定の間隔で収容保持する複数のポケットを有する保持器15とを備え、前記外輪12の外輪軌道面12aの小径側端部と大径側端部、および内輪13の内輪軌道面13aの小径側端部と大径側端部の4つの端部のうち、外輪12の外輪軌道面12aの大径側端部に半径方向内方に突出する鍔部12bを形成した、外輪鍔形式のものである。
【0014】
この発明に係る円すいころ軸受11は、内輪13の小径側端部の小鍔をなくし、小鍔の分だけころ長さを長くして高負荷容量化を図ると共に、外輪12の外輪軌道面12aの大径側端部に半径方向内方に突出する鍔部12bを形成し、内輪13の内輪軌道面13aの大径側端部の鍔部をなくしている。
【0015】
この発明の円すいころ軸受11は、接触角αを40°~50°の急こう配に設定して高モーメント剛性化を図っており、
図3の実施形態に係る円すいころ軸受11は、接触角αを45°に設定している。
【0016】
接触角が40°~50°の急こう配の円すいころ軸受11は、外輪12の外輪軌道面12aの大径側端部と内輪13の大径側の端面との間に軸方向に大きなスペースが空くので、このスペースを利用してこの発明では半径方向内方に突出する鍔部12bを形成している。
【0017】
外輪12の外輪軌道面12aの大径側端部に半径方向内方に突出する鍔部12bを形成し、内輪13の内輪軌道面13aの大径側端部の鍔部をなくすことにより、軸方向のコンパクト化を図ることができる。
【0018】
即ち、
図3に2点鎖線で示すように、内輪13の内輪軌道面13aの大径側端部に鍔部12bを形成した場合の軸方向幅をT’とすると、内輪13の内輪軌道面13aの大径側端部の鍔部をなくすことによって、内輪13の軸方向幅を薄くすることができ、外輪12の外輪軌道面12aの大径側端部に半径方向内方に突出する鍔部12bを形成した場合の軸方向幅がTであるから、T’-Tの分だけ軸方向幅をコンパクトにすることができる。
【0019】
この発明のように、外輪12の外輪軌道面12aの大径側端部に半径方向内方に突出する鍔部12bを形成することにより、内輪13の内輪軌道面13aの大径側端部に鍔部を形成する
図11に示す内輪鍔形式の円すいころ軸受1に比し、鍔部を高剛性化できる。
【0020】
即ち、
図3に示すように、外輪12の外輪軌道面12aの大径側端部に半径方向内方に突出する鍔部12bを形成する場合と、
図12に示すように、内輪3の内輪軌道面3aの大径側端部に鍔部3bを形成する場合とを比較すると、鍔部の高さC(軌道面と鍔面の交点と鍔部頂点からなる径方向の距離)が同じだとしても、
図6に示すころ端面と外輪鍔面との接触面積は、
図14に示す内輪鍔形式の円すいころ軸受におけるころ端面と内輪鍔面との接触面積よりも約7%大きくなり、ころに発生する誘起スラスト力を受ける面積が外輪鍔形式の方が大きくなるので、接触部の応力が低くなり、ころ端面と鍔面の接触ひずみが小さくなる。
【0021】
また、
図12に示す内輪鍔形式の円すいころ軸受のように、内輪3の大径側端部に鍔部3bを設けると、円すいころ4に発生する誘起スラスト力は、
図13に白抜き矢印で示すように、鍔部3bで受けることになり、鍔部3bに掛かる曲げ応力によって鍔部3bにひずみが生じる可能性があるが、外輪鍔形式の円すいころ軸受は、
図5に白抜き矢印で示すように、円すいころ14に発生する誘起スラスト力は、外輪12の鍔部12bに掛かる曲げ応力をハウジング6で受けることができるため、鍔部12bの剛性が高くなる。
図12の内輪鍔形式の円すいころ軸受において、符号2は外輪、2aは外輪軌道面、5は保持器を示している。
【0022】
この発明は、接触角を40°~50°とし、外輪鍔の肉厚Eところ大径側径Dwとの関係を、0.19<E/Dw<0.44を満足するように設定することにより、内輪の内輪軌道面の大径側端部に鍔部を形成したものと比べて純アキシャル荷重の負荷能力を極端に低くすることなく、十分なモーメント荷重と軸受寿命を有し、しかも外輪鍔部の強度低下の懸念もない、外輪鍔形式の円すいころ軸受を得るようにしたものである。
【0023】
ここで、ころ径(ころ大径側径Dw)と外輪鍔の肉厚Eの関係はE/Dwで表しており、この値が大きいほど外輪鍔の肉厚Eが厚く、ころ大径側径Dwが小さいことを表している。
【0024】
この発明の円すいころ軸受11は、接触角が40°~50°であるが、外部荷重を一定とし、また軸受のPCDところのサイズと個数は一定で接触角のみを変化させたときのモーメント剛性は
図10のグラフのとおりであり、また、寿命比は
図11に示すグラフのとおりである。この
図10と
図11のグラフから各接触角に対する総合評価を行うと表1に示すとおりとなり、接触角を40~50°にすることにより、軸受のモーメント剛性と寿命を両立させることができるということが確認できた。
【0025】
【0026】
この発明において、外輪鍔の肉厚Eところ大径側径Dwとの関係を、0.19<E/Dw<0.44にするという数値規定は、軸受の径方向サイズ一定、すなわち、軸受断面高さH、軸受外径Dを一定として、接触角αを変えながら、モーメント荷重、軸受寿命及び鍔強度の比較を行った表2~表4の結果より求めたものである。
【0027】
なお、表2~表4において、寿命とモーメント剛性の〇は、実用可能(寿命が長い、モーメント剛性が高い)な領域を表し、×は〇に対して軸受機能への信頼性が低い(寿命が短い、モーメント剛性が低い)領域を示している。
また、鍔強度に於いては、〇は安全率1.2以上を示し信頼性が高く、×は安全率1.2未満を示し、信頼性が低い領域を示している。
【0028】
なお、鍔強度の安全率の定義は以下通りである。
鍔強度の安全率=軸受の静定格ラジアル荷重C0r相当を軸受に負荷したときの鍔部に発生する
最大応力/一般軸受鋼の疲労限許容応力
を示すものである。
この安全率1.2の基準は、「日本機械学会_疲労強度の設計資料」にも記載されているとおり、疲労強度の安全率基準として鉄道車両や自動車など幅広い分野で使用されている汎用的なものである。
【0029】
表2~表4において、軸受寿命、モーメント剛性及び鍔強度が〇であるE/Dwの範囲は、2重線で囲む、接触角40°で0.19~0.46、接触角45°で0.19~0.45、接触角50°で0.18~0.44である。
この表2~表4において2重線で囲む範囲が、すなわち、接触角40~50°における0.19<E/Dw<0.44の範囲内が、寿命かつモーメント剛性の性能が高く、鍔強度及び安全率が高い領域となる。
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
円すいころ軸受の場合、ころサイズ、ころ本数、接触角、ころ角度、鍔部に対するころの接点位置と鍔側軌道面との角度xが同じ諸元の場合、内輪の内輪軌道面の大径側端部に鍔部を形成した
図2に示すもの(以下、「内輪鍔軸受」という。)と、外輪の外輪軌道面の大径側端部に鍔部を形成した
図1に示すもの(以下、「外輪鍔軸受」という。)を比較すると、純アキシャル(Fa)負荷時に、外輪鍔軸受の方が、内輪鍔軸受よりも転動体荷重(外輪側転動体荷重Fo、内輪側転動体荷重Fi)及び転動体と軌道輪との接触面圧が増加するが、この発明のように、接触角を40°~50°とし、且つ、ころ角度を3.5°以下にした場合、純アキシャル(Fa)負荷時の転動体荷重(外輪側転動体荷重Fo、内輪側転動体荷重Fi)及び軌道輪との接触面圧の増加を抑制し、純ラジアル(Fr)負荷時の転動体荷重及び軌道輪との接触面圧も抑制することができる。
【0034】
図1に示す外輪鍔軸受と
図2に示す内輪鍔軸受における純アキシャル負荷時の転動体荷重の算出式は、
Fio:外輪側の転動体荷重(内輪鍔軸受)
Foo:外輪側の転動体荷重(外輪鍔軸受)
Fii:内輪側の転動体荷重(内輪鍔軸受)
Foi:内輪側の転動体荷重(外輪鍔軸受)
Fir:鍔側の転動体荷重(内輪鍔軸受)
For:鍔側の転動体荷重(外輪鍔軸受)
α:軸受中心軸と外輪軌道面のなす角度
θ:軸受中心軸と内輪軌道面のなす角度
β:ころ角度
x:鍔部に対するころの接点位置と鍔側軌道面との角度
Y:ころ大端面と内輪鍔部との接点角度(θ+x)
δ:ころ大端面と外輪鍔部との接点角度(α-x)
とした場合に、次のようになる。
Fio=Fa/sinα
Foo=Foi(sinθ・sinδ+cosθ・cosδ)/(cosα・cosδ+sinα・sinδ)
Fii=Fio(sinα・sinY+cosα・cosY)/(cosθ・cosY+sinθ・sinY)
Foi=Fa/sinθ
Fir=(Fiicosθ-Fiocosα)/sinY
For=(Foicosθ-Foocosα)/sinδ
【0035】
上記の計算式により、純アキシャル荷重Faを負荷して、接触角が40°~50°で、ころ角度を3.5°以下にした各例と、接触角が40°以下で、ころ角度が3.5°以上にした各例について、最大転動体荷重と最大接触面圧を求めると、表5~表11のとおりとなる。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
前記表5~表11の結果から、軸受寸法が同一の外輪鍔軸受と内輪鍔軸受とについて、内輪鍔軸受の最大転動体荷重及び最大接触面圧を100%にして比較すると、この発明で規定される外輪鍔軸受は、最大転動体荷重及び最大接触面圧を共に、内輪鍔軸受の10%以内の増加率に抑制できるのに対し、この発明の規定外の外輪鍔軸受は、最大転動体荷重及び最大接触面圧の少なくとも一方が、内輪鍔軸受よりも増加率が10%を超えるということが確認された。
【0044】
この発明において、保持器15としては、樹脂製のものを使用することができる。
【0045】
保持器15は、
図7および
図8に示すように、大径側に大径リング部15aと、小径側に小径リング部15bを有し、外径部に円すいころ14を案内するころ案内面15cを有し、内径面に円すいころ14を保持する爪15dを有する。円すいころ14を案内するころ案内面15cと円すいころ14を保持する爪15dは逆でもよい。また、保持器15の大径リング部15aの外周面に、外輪12の鍔部12bとの干渉を避ける切欠き部15eを設けている。
【0046】
図7に示すように、円すいころ14を保持器15の外径側にあるころ案内面15cに押し当てたときのころ外接円径をPとし、
図7に示すように、保持器15の内径側の爪15dに円すいころ14を押し当てたときのころ外接円径をP’とした場合、
図9(a)(b)(c)に示す手順で、ころ-保持器アッシーを外輪12に挿入する際に、鍔部12bの鍔高さCが同一で、接触角αと、鍔外径角度γ、|P-P’|を各種変更し、ころ-保持器アッシーの外輪12への挿入のし易さを判定した結果を表13~表17に示す。
表12~表16の結果から、接触角が40~50°のものは、|P-P’|≧C、且つ、鍔外径角度γが35°~50°の場合において、ころ-保持器アッシーの外輪12への挿入性が良好であるということが確認できた。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
この発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲において、さらに種々の形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内の全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0053】
11 :軸受
12 :外輪
12a :外輪軌道面
12b :鍔部
13 :内輪
13a :内輪軌道面
15 :保持器
15a :大径リング部
15b :小径リング部
15c :案内面
15d :爪
15e :切欠き部