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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】電子回路およびインバータ
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/687 20060101AFI20240529BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20240529BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240529BHJP
【FI】
H03K17/687 A
H02M1/08 A
H02M7/48 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020096894
(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公開番号】P2021190939
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-11-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(72)【発明者】
【氏名】上野 武司
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-330935(JP,A)
【文献】特開2012-129971(JP,A)
【文献】国際公開第2009/044602(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/153459(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/00-17/70
H02M 1/08
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1スイッチング素子を駆動する電子回路であって、
第1電流を生成し、第1電圧として、前記第1電流に基づく電圧または第1所定電圧を出力する第1回路と、
前記第1電圧に基づいて、第1出力電流を生成する第2回路と、
前記第1出力電流を前記第1スイッチング素子に出力する第1出力端子と、
前記第1スイッチング素子の駆動および非駆動に関する第1入力信号が入力される第1入力端子と、
前記第1入力信号に基づいて、前記第1電圧を前記第1所定電圧に切り替えて前記第1電流を停止させる第1制御信号を生成する第3回路と、
第2電流を生成する第4回路と、
前記第2電流を入力電圧に変換する第5回路と、
を備え、
前記第1回路は、前記入力電圧に基づいて、前記第2電流に応じた前記第1電流を生成し、
前記第1回路は、前記第2回路に第2電圧として前記入力電圧または第3所定電圧を出力し、
前記第2回路は、前記第1電圧および前記第2電圧に基づいて、前記第1出力電流を生成し、
前記第3回路は、前記第1入力信号に基づいて、前記第2電圧を前記入力電圧または前記第3所定電圧に切り替える第2制御信号を生成する、
電子回路。
【請求項2】
第1スイッチング素子を駆動する電子回路であって、
第1電流を生成し、第1電圧として、前記第1電流に基づく電圧または第1所定電圧を出力する第1回路と、
前記第1電圧に基づいて、第1出力電流を生成する第2回路と、
前記第1出力電流を前記第1スイッチング素子に出力する第1出力端子と、
前記第1スイッチング素子の駆動および非駆動に関する第1入力信号が入力される第1入力端子と、
前記第1入力信号に基づいて、前記第1電圧を前記第1所定電圧に切り替えて前記第1電流を停止させる第1制御信号を生成する第3回路と、
第2電流を生成する第4回路と、
前記第2電流を入力電圧に変換する第5回路と、
を備え、
前記第1回路は、前記入力電圧に基づいて、前記第2電流に応じた前記第1電流を生成し、
前記第1スイッチング素子のドレイン端子における、電圧に関する値および電流に関する値の少なくとも一方を取得する取得回路をさらに備え、
前記第4回路は、前記取得回路が取得した前記電圧に関する値および前記電流に関する値の少なくとも一方に基づいて、前記第2電流を生成する、
電子回路。
【請求項3】
第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子のドレイン端子と電気的に接続されるソース端子を有する第2スイッチング素子とを駆動する電子回路であって、
第1電流を生成し、第1電圧として、前記第1電流に基づく電圧または第1所定電圧を出力する第1回路と、
前記第1電圧に基づいて、第1出力電流を生成する第2回路と、
前記第1出力電流を前記第1スイッチング素子に出力する第1出力端子と、
前記第1スイッチング素子の駆動および非駆動に関する第1入力信号が入力される第1入力端子と、
前記第1入力信号に基づいて、前記第1電圧を前記第1所定電圧に切り替えて前記第1電流を停止させる第1制御信号を生成する第3回路と、
第2電流を生成する第4回路と、
前記第2電流を入力電圧に変換する第5回路と、
を備え、
前記第1回路は、前記入力電圧に基づいて、前記第2電流に応じた前記第1電流を生成し、
前記入力電圧に基づいて前記第2電流に応じた第3電流を生成し、第3電圧として前記第3電流に基づく電圧または第5所定電圧を出力する第6回路と、
前記第3電圧に基づいて、第2出力電流を生成する第7回路と、
前記第2出力電流を前記第2スイッチング素子に出力する第2出力端子と、
前記第2スイッチング素子の駆動および非駆動に関する第2入力信号が入力される第2入力端子と、
前記第2入力信号に基づいて、前記第3電圧を第5所定電圧に切り替えて前記第3電流を停止させる第3制御信号を生成する第8回路と、
をさらに備える、
電子回路。
【請求項4】
前記第1出力端子における電圧を第2所定電圧と比較する第1比較回路、
をさらに備え、
前記第3回路は、前記第1出力端子における電圧と第2所定電圧の比較結果を表す信号にさらに基づいて、前記第1制御信号を生成する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項5】
前記第3回路は、前記第1スイッチング素子の駆動および非駆動の切り替わりに関する所定の時間にさらに基づいて、前記第1制御信号を生成する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項6】
前記第1回路は、前記第2回路に第2電圧として前記入力電圧または第3所定電圧を出力し、
前記第2回路は、前記第1電圧および前記第2電圧に基づいて、前記第1出力電流を生成し、
前記第3回路は、前記第1入力信号に基づいて、前記第2電圧を前記入力電圧または前記第3所定電圧に切り替える第2制御信号を生成する、
請求項1~5のいずれか一項に記載に電子回路。
【請求項7】
前記第4回路は、第4所定電圧および抵抗を含み、
前記第2電流は、前記第4所定電圧の電圧値および前記抵抗の抵抗値に基づいて決定される、
請求項1~6のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項8】
前記第1スイッチング素子のドレイン端子における、電圧に関する値および電流に関する値の少なくとも一方を取得する取得回路をさらに備え、
前記第4回路は、前記取得回路が取得した前記電圧に関する値および前記電流に関する値の少なくとも一方に基づいて、前記第2電流を生成する、
請求項1、3、請求項1又は3を引用する請求項4、請求項1又は3を引用する請求項5、請求項1又は3を引用する請求項6、または、請求項1又は3を引用する請求項7に記載の電子回路。
【請求項9】
前記第1スイッチング素子のドレイン端子と電気的に接続されるソース端子を有する第2スイッチング素子をさらに駆動する電子回路であって、
前記入力電圧に基づいて前記第2電流に応じた第3電流を生成し、第3電圧として前記第3電流に基づく電圧または第5所定電圧を出力する第6回路と、
前記第3電圧に基づいて、第2出力電流を生成する第7回路と、
前記第2出力電流を前記第2スイッチング素子に出力する第2出力端子と、
前記第2スイッチング素子の駆動および非駆動に関する第2入力信号が入力される第2入力端子と、
前記第2入力信号に基づいて、前記第3電圧を第5所定電圧に切り替えて前記第3電流を停止させる第3制御信号を生成する第8回路と、
をさらに備える、
請求項1、2、請求項1又は2を引用する請求項4、請求項1又は2を引用する請求項5、請求項1又は2を引用する請求項6、請求項1又は2を引用する請求項7、請求項1を引用する請求項8、請求項1を引用する請求項4を引用する請求項8、請求項1を引用する請求項5を引用する請求項8、請求項1を引用する請求項6を引用する請求項8、または、請求項1を引用する請求項7を引用する請求項8、に記載の電子回路。
【請求項10】
前記第2出力端子における電圧を第6所定電圧と比較する第2比較回路、
をさらに備え、
前記第8回路は、前記第2出力端子における電圧と第6所定電圧の比較結果を表す信号にさらに基づいて、前記第3制御信号を生成する、
請求項9に記載の電子回路。
【請求項11】
前記第8回路は、前記第2スイッチング素子の駆動および非駆動の切り替わりに関する所定の時間にさらに基づいて、前記第3制御信号を生成する、
請求項3、9または10に記載の電子回路。
【請求項12】
前記第6回路は、前記入力電圧に基づいて前記第2電流に応じた第4電流を生成し、前記第7回路に第4電圧として前記第4電流に基づく電圧または第7所定電圧を出力し、
前記第7回路は、前記第3電圧および前記第4電圧に基づいて、前記第2出力電流を生成し、
前記第8回路は、前記第2入力信号に基づいて、前記第4電圧を前記第4電流に基づく電圧、または前記第7所定電圧に切り替える第4制御信号を生成する、
請求項3、9乃至11のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項13】
前記第2出力端子における電圧を第8所定電圧と比較する第4比較回路、
をさらに備え、
前記第8回路は、前記第2出力端子における電圧と第8所定電圧の比較結果を表す信号にさらに基づいて、前記第3制御信号を生成する、
請求項3、9乃至12のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項14】
前記第6回路は高耐圧トランジスタを含み、
前記高耐圧トランジスタのソース端子に接続される回路の基準電位は前記第1スイッチング素子のソース電位であり、
前記高耐圧トランジスタのドレイン端子に接続される回路の基準電位は前記第2スイッチング素子のソース電位である、
請求項3、9乃至13のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項15】
前記第1スイッチング素子をさらに備える、
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の電子回路。
【請求項16】
前記第1スイッチング素子および前記第2スイッチング素子をさらに備える、
請求項3、請求項3を引用する請求項4、請求項3を引用する請求項5、請求項3を引用する請求項6、請求項3を引用する請求項4を引用する請求項6、請求項3を引用する請求項5を引用する請求項6、請求項3を引用する請求項7、請求項3を引用する請求項4を引用する請求項7、請求項3を引用する請求項5を引用する請求項7、請求項3を引用する請求項6を引用する請求項7、請求項3を引用する請求項8、請求項3を引用する請求項4を引用する請求項8、請求項3を引用する請求項5を引用する請求項8、請求項3を引用する請求項6を引用する請求項8、請求項3を引用する請求項7を引用する請求項8、または、請求項9乃至14のいずれか一項、に記載の電子回路。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか一項に記載の電子回路を複数備える、
インバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子回路およびインバータに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体スイッチング素子に電流を供給する電子回路において、参照する電流に応じた電流を流すカレントミラー回路を用いて、半導体スイッチング素子へ供給する電流を決定する電子回路が知られている。このような電子回路において、消費電力を低減させることができる電子回路およびインバータが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6042091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、消費電力を低減させることができる電子回路およびインバータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、実施形態の電子回路は、第1スイッチング素子を駆動する電子回路であって、第1電流を生成し、第1電圧として、この第1電流に基づく電圧または第1所定電圧を出力する第1回路と、この第1電圧に基づいて、第1出力電流を生成する第2回路と、この第1出力電流をこの第1スイッチング素子に出力する第1出力端子と、この第1スイッチング素子の駆動および非駆動に関する第1入力信号が入力される第1入力端子と、この第1入力信号に基づいて、この第1電圧をこの第1所定電圧に切り替えてこの第1電流を停止させる第1制御信号を生成する第3回路を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態における電子回路100の構成を含む駆動システム図。
図2】第1の実施形態における駆動システムのタイミングチャート。
図3】第1の実施形態に適用可能な電子回路150の構成を含む駆動システム図。
図4】第2の実施形態における電子回路200の構成を含む駆動システム図。
図5】第2の実施形態における駆動システムのタイミングチャート。
図6】第2の実施形態に適用可能な電子回路250の構成を含む駆動システム図。
図7】第2の実施形態に適用可能な電子回路260の構成を含む駆動システム図。
図8】第2の実施形態における駆動システム図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明を実施するための実施形態について図面を参照して説明する。開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0008】
(第1の実施形態)
図1に、本実施形態における駆動システムを示す。この駆動システムは、スイッチング素子MSWL、基準電流源10、電流-電圧変換回路20(以降、I-V変換回路20とも称する)、スイッチング素子MSWLのオンまたはオフに応じて、電流が流れる先が変わる電流調整回路30、およびスイッチング素子MSWLを駆動する電子回路100を備える。
【0009】
スイッチング素子MSWLは、電子回路100から供給される電流により、駆動状態(オン状態)と非駆動状態(オフ状態)が切り替わる(以降、スイッチングを行うとも称する)半導体素子である。スイッチング素子MSWLは一般にゲート端子、ドレイン端子およびソース端子を備え、駆動状態ではドレイン端子からソース端子へ電流を流し、非駆動状態ではドレイン端子からソース端子へ電流を流さない。本実施形態では、このスイッチング素子MSWLは高耐圧パワーMOSFET(Metal Oxide Semicinductor Field Effect Transistor、以降MOSFETはMOSトランジスタと称する)とする。なお、高耐圧パワーMOSトランジスタは例示であり、他の種類の素子でもよい。例えば、このスイッチング素子MSWLは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、サイリスタなどでもよいし、SiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)などの化合物半導体を用いた素子でもよい。また、スイッチング素子MSWLは、今後開発される半導体を用いた素子を含む。
【0010】
スイッチング素子MSWLは、スイッチングを行うことで、スイッチング素子MSWLに接続される負荷を駆動させる(図示せず)。この負荷は電子機器や電気機器であり、例えばエアコンや冷蔵庫、電車、ロボット等に搭載されるモータ、サーバ電源用のPFC(Power Factor Correction)回路などである。
【0011】
また、スイッチング素子MSWLのゲート端子は電子回路100と接続され、スイッチング素子MSWLのドレイン端子は電流調整回路30に接続され、スイッチング素子MSWLのソース端子は基準電位に接続される。基準電位とは例えばグランドであるが、グランドの0Vに限定されない。ここで、スイッチング素子MSWLのゲート端子は制御端子とも称される。スイッチング素子MSWLが例えばバイポーラトランジスタであれば、この制御端子はベース端子に相当する。なお、ソース端子はエミッタ端子に相当し、ドレイン端子はコレクタ端子に相当する。
【0012】
基準電流源10は、電子回路100がスイッチング素子MSWLに出力する電流の基準となる電流(以降、電流Irefとも称する)を生成する回路である。基準電流源10は、トランジスタMref、増幅器OPref、電圧源Vref、抵抗Rrefを備える。トランジスタMrefは、本実施形態ではN型トランジスタである。トランジスタMrefのゲート端子は増幅器OPrefの出力側端子と接続され、ドレイン端子はI-V変換回路20と接続され、ソース端子は抵抗Rrefの一端とおよび増幅器OPrefの-の入力側端子と接続される。抵抗Rrefのもう一端は基準電位に接続される。電圧源Vrefは、増幅器OPrefの+の入力側端子に接続される。増幅器OPrefは、+の入力側端子の電圧と、-の入力側端子の電圧の差分を増幅し、出力側端子から出力する。電圧源Vrefは、所定の電圧(以降、電圧Vrefとも称する)を生成する。基準電流源10は、電圧Vrefおよび抵抗Rrefの抵抗値(以降、抵抗Rrefとも称する)に基づいた電流Irefを生成し、I-V変換回路20へ供給する。
【0013】
I-V変換回路20は、基準電流源10から供給された電流Irefを電圧Vbiasに変換し、電子回路100へ入力電圧として入力する。I-V変換回路20はトランジスタMbiasを備える。トランジスタMbiasは本実施形態ではP型トランジスタである。トランジスタMbiasのゲート端子は電子回路100と接続され、ソース端子は電圧源Vdd1と接続され、ドレイン端子とゲート端子が接続される。トランジスタMbiasのゲート端子とドレイン端子を接続することで、I-V変換回路20は電流IrefおよびトランジスタMbiasのゲート・ソース間の電圧で定まる電圧(以降、電圧Vbiasとも称する)に変換することができる。
【0014】
電流調整回路30は、スイッチング素子MSWLのオンまたはオフに応じて、電流を流す先を変える回路である。電流調整回路30は、スイッチング素子MSWLのドレイン端子および電圧源Vbbと接続される。電流調整回路30は、インダクタL1およびダイオードD1を備える。インダクタL1およびダイオードD1が並列に接続される。スイッチング素子MSWLがオンの場合、電流調整回路30からスイッチング素子MSWLに電流ISWLが流れる。一方、スイッチング素子MSWLがオフの場合、電流ISWLは電流調整回路30の内部においてインダクタL1からダイオードD1へと流れ、スイッチング素子MSWLには電流ISWLは流れない。
【0015】
電子回路100は、スイッチング素子の駆動および非駆動に関する入力信号VinLを受けて、スイッチング素子MSWLに対して供給する電流(以降、電流IoutLとも称する)を制御することにより、スイッチング素子MSWLのスイッチングを行う。電子回路100は、電圧-電圧変換回路110(以降、V-V変換回路110とも称する)、電圧-電流変換回路120(以降、V-I変換回路120)、および生成回路130、および電圧源Vdd1を備える。V-V変換回路110はV-I変換回路120と接続されV-I変換回路120は出力端子GLとも接続される。生成回路130は、入力端子INLと接続されて、入力信号VinLを受け取る。電圧源Vdd1は、所定の電圧(以降、電圧Vdd1とも称する)を生成する。
【0016】
V-V変換回路110は、V-I変換回路120に印加する電圧を生成する。V-V変換回路110が生成する電圧は、電圧VLPおよび電圧VLNとも称する。電圧VLPおよび電圧VLNとして、入力電圧、電圧Vdd1または電圧源Vdd2が生成する所定の電圧(以降、電圧Vdd2とも称する)、およびV-V変換回路110内において流れる電流に基づいた電圧(以降、電圧Vbias2とも称する。説明は後述する)のいずれかが出力される。本実施形態では図2に示すように、電圧VLPとして電圧Vdd1または電圧Vbiasを供給し、電圧VLNとして電圧Vdd2、基準電位または電圧Vbias2のいずれかを供給する。
【0017】
V-V変換回路110は、トランジスタMLP2、トランジスタMLN2、スイッチSWLP1、スイッチSWLP2、スイッチSWLP3、スイッチSWLN1、スイッチSWLN2、スイッチSWLN3、電圧源Vdd2を備える。
【0018】
トランジスタMLP2は、本実施形態ではP型トランジスタである。トランジスタMLP2のゲート端子はI-V変換回路20と接続され、ソース端子は電圧源Vdd1と接続され、ドレイン端子はスイッチSWLN2と接続される。トランジスタMLN2は、本実施形態ではN型トランジスタである。トランジスタMLN2のゲート端子はスイッチSWLN1、スイッチSWLP2、およびV-I変換回路120と接続される。トランジスタMLN2のドレイン端子はスイッチSWLN2と接続され、ソース端子はスイッチSWLN3と接続される。また、トランジスタMLN2のゲート端子とドレイン端子は接続される。
【0019】
スイッチSWLP1、スイッチSWLP2、スイッチSWLP3、スイッチSWLN1、スイッチSWLN2、およびスイッチSWLN3は、生成回路130からの信号により、それぞれ短絡または開放する。以降、スイッチが短絡する状態をオン、スイッチが開放する状態をオフとも称する。V-V変換回路110は、スイッチSWLP1~SWLP3、SWLN1~SWLN3のそれぞれの短絡または開放の状態に応じて、入力電圧、電圧Vdd1またはVdd2、およびV-V変換回路110内において流れる電流に基づいた電圧のいずれかを切り替え、電圧VLPおよび電圧VLNとしてV-I変換回路120に印加する。
【0020】
スイッチSWLP1は、電圧源Vdd1およびV-I変換回路120の間に接続される。スイッチSWLP2は、電圧源Vdd2およびV-I変換回路120の間に接続される。スイッチSWLP3は、I-V変換回路20およびV-I変換回路120との間に接続される。スイッチSWLN1は、V-I変換回路120と基準電位の間に接続される。スイッチSWLN2は、トランジスタMLP2のドレイン端子およびトランジスタMLN2のドレイン端子の間に接続される。スイッチSWLN3は、トランジスタMLN2のソース端子と基準電位の間に接続される。
【0021】
V-I変換回路120は、V-V変換回路110から印加された電圧VLPおよびVLNの少なくとも一方に基づいて、スイッチング素子MSWLのゲート端子に出力する出力電流IoutLを生成する。この出力電流は、出力端子GLを通じてスイッチング素子MSWLのゲート端子に供給される。図1では、出力端子GLにおける電圧をVoutL(以降、電圧VoutLとも称する)と表している。V-I変換回路120は、トランジスタMLP1およびトランジスタMLN1を備える。
【0022】
トランジスタMLP1は、本実施形態では一例としてP型トランジスタである。トランジスタMLP1のゲート端子はスイッチSWLP1およびSWLP3と接続される。V-V変換回路110が生成した電圧VLPはトランジスタMLP1のゲート端子に印加される。トランジスタMLP1のソース端子は電圧源Vdd1に接続される。トランジスタMLP1のドレイン端子は出力端子GLおよびトランジスタMLN1のドレイン端子と接続される。トランジスタMLN1は、本実施形態では一例としてN型トランジスタである。トランジスタMLN1のゲート端子はスイッチSWLN1、SWLP2、およびトランジスタMLN2のゲート端子と接続される。V-V変換回路110が生成した電圧VLNはトランジスタMLN1のゲート端子に印加される。トランジスタMLN1のソース端子は基準電位に接続される。トランジスタMLP1のドレイン端子は出力端子GLおよびトランジスタMLP1のドレイン端子と接続される。
【0023】
生成回路130は、入力端子INLから、スイッチング素子MSWLの駆動または非駆動に関する信号である入力信号VinLを受け取る。生成回路130は、入力信号VinLに基づいて、スイッチSWLP1、スイッチSWLP2、スイッチSWLP3、スイッチSWLN1、スイッチSWLN2、およびスイッチSWLN3のそれぞれを短絡または開放を制御する制御信号Lを生成する。制御信号Lは信号LP1、LP2、LP3、LN1、LN2、およびLN3を含む。信号LP1はスイッチSWLP1に、信号LP2はスイッチSWLP2に、信号LP3はスイッチSWLP3に、信号LN1はスイッチSWLN1に、信号LN2はスイッチSWLN2に、信号LN3はスイッチSWLN3にそれぞれ対応する。生成回路130は、信号LP1~LP3、LN1~LN3を、対応するスイッチに伝送する。信号LP1~LP3、LN1~LN3を伝送する方法は任意であり、有線であってもよいし、無線であってもよい。
【0024】
以上、本実施形態の駆動システムの構成を説明した。電子回路100は、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路で実装されてもよい。1チップ上にまとめて実装されてもよいし、一部の回路が別のチップ上に実装されてもよい。また、生成回路130の機能は、プロセッサなどの処理部で実現するようにしてもよい。
【0025】
図2は、本実施形態の駆動システムのタイミングチャートである。本実施形態の駆動システムの動作を、図2を用いて説明する。図2のタイミングチャートでは、入力信号VinLについて、時刻T0からT2までハイ信号、時刻T2からT4までロー信号が入力される。図2は、時刻T0からT4までのスイッチング素子MSWLおよび電子回路100の構成要素の状態を表している。図2では、ハイ信号はHとして表され、ロー信号はLとして表される。電子回路100は、入力信号VinLとしてハイ信号を受けた場合、スイッチング素子MSWLを駆動するように出力電流を生成する。電子回路100は、入力信号VinLとしてロー信号を受けた場合、スイッチング素子MSWLを非駆動とするように出力電流を生成する。なお、詳細は後述するが、電子回路100が入力信号VinLとしてハイ信号を受けてからスイッチング素子MSWLが実際に駆動するまで、または電子回路100が入力信号VinLとしてロー信号を受けてからスイッチング素子MSWLが実際に非駆動となるまでは、タイムラグが生じる。また、電子回路100には、基準電流源10で生成された電流Irefに基づく電圧VbiasがI-V変換回路20によって印加されている。このI-V変換回路20のトランジスタMbiasはオンである。
【0026】
時刻T0において、ハイ信号が入力信号VinLとして電子回路100に入力される。生成回路130は、信号LP1、LP2、LN2、およびLN3としてロー信号、信号LP3およびLN1としてハイ信号を生成し、対応するスイッチに伝達する。その結果、スイッチSWLP1、SWLP2、SWLN2、およびSWLN3はオフ、スイッチSWLP3およびSWLN1はオンとなる。この場合、V-V変換回路110は電圧Vbiasを電圧VLPとしてV-I変換回路120に印加する。電圧Vbiasは、電圧Vdd1よりも小さい。この電圧Vbiasにより、トランジスタMLP1はオンとなる。一方、V-I変換回路120に印加される電圧VLNは基準電位となり、トランジスタMLN1はオフとなる。このとき、V-V変換回路110には、電流は流れていない。なお、電流が流れていないとは、厳密に電流0であることに限定されず、回路の設計上電流が流れていないとみなせる程度の電流が流れることは許容する。
【0027】
この場合、トランジスタMbiasのゲート端子とトランジスタMLP1のゲート端子が接続され、カレントミラー回路を構成する。カレントミラー回路とは、一方のトランジスタのソース・ドレイン間を流れる電流に応じた電流を、もう一方のトランジスタのソース・ドレイン間に流す回路である。トランジスタMbiasのソース・ドレイン間に流れる電流は電流Irefであるため、トランジスタMLP1のソース・ドレイン間には電流Irefに応じた電流(以降、この電流をI1とする)が流れる。電流I1は、電流Irefと、トランジスタMbiasおよびトランジスタMLP1のサイズ比に応じて決まる。トランジスタのサイズは、トランジスタの幅とゲートの長さの比で表される。例えば、トランジスタMbiasのサイズとトランジスタMLP1のサイズが1:n(nは0より大きい数)の場合、電流I1はn×Irefとなる。電流I1は、電流IoutLとして出力端子GLから出力され、スイッチング素子MSWLのゲート端子に供給される。電流I1を通じて、スイッチング素子MSWLのゲート・ソース間の寄生容量に電荷が溜まっていく。この寄生容量に電荷が溜まっていくにつれて、出力端子GLにおける電圧VoutLが上昇する。時刻T0から時刻T01までは、スイッチング素子MSWLはオフである。
【0028】
時刻T0からスイッチング素子MSWLのゲート端子に電流I1が供給され続け、時刻T01において、スイッチング素子MSWLのドレイン・ソース間に電流(以降、この電流をISWLとする)が流れ始める。時刻T02において、出力端子GLにおける電圧VoutLが特定の値であるVLplateauに到達する。このVLplateauにおいて、電流ISWLはISWL1に到達し、スイッチング素子MSWLのドレイン端子の電圧VSWがVbbから低下し始める。時刻T02から時刻T03において、電圧VoutLはVLplateauを保ち、電流ISWLはISWL1を保ち、電圧VSWは低下し続ける。なお、VLplateauおよびISWL1を保つとは、厳密に同じ値を保つことに限定されず、同様のレベルであればよい。電圧VSWは、時刻T03において0となる。スイッチング素子MSWLは、時刻T03においてはオンとなっている。スイッチング素子MSWLは、時刻T01からT03の間(時間Tt)は、オフからオンへと切り替わっている最中である。スイッチング素子MSWLがオフからオンに、またはオンからオフに切り替わる時間Ttを、遷移時間、遷移している間などと称する。
【0029】
電圧VoutLは、時刻T03から再び電圧が上昇していき、時刻T1において電圧VLmaxとなる。電圧VLmaxとは、スイッチング素子MSWLのゲート・ソース間の寄生容量に電荷が溜まり切ったことを意味する。このとき、トランジスタMLP1のソース端子における電圧(=Vdd1)と、ドレイン端子における電圧(=VLmax)が同じレベルとなるため、トランジスタMLP1はオンからオフとなる。トランジスタMbiasとトランジスタMLP1はカレントミラー回路として機能しないため、電流IoutLは0となる。電流IoutL=0、電圧VoutL=VLmax、電流ISWL=ISWL1、電圧VSW=0の状態は、時刻T1から時刻T2まで続く。なお、時刻T0からT2までの間、V-V変換回路110には、電流は流れていない。
【0030】
時刻T2において、ロー信号が入力信号VinLとして電子回路100に入力される。生成回路130は、信号LP2、LP3、およびLN1としてロー信号、信号LP1、LN2、およびLN3としてハイ信号を生成し、対応するスイッチに伝達する。その結果、スイッチSWLP2、SWLP3、およびSWLN1はオフ、スイッチSWLP1、SWLN2、およびSWLN3はオンとなる。この場合、V-V変換回路110は電圧Vdd1を電圧VLPとしてV-I変換回路120に印加する。トランジスタMLP1のゲート端子における電圧と、ソース端子における電圧は同じ電圧Vdd1となり、トランジスタMLP1はオフとなる。
【0031】
この場合におけるV-V変換回路110がV-I変換回路120に印加する電圧VLNを説明する。スイッチSWLN2およびSWLN3がオンとなったことにより、トランジスタMbiasとトランジスタMLP2とはカレントミラー回路を構成する。これにより、トランジスタMLP2のソース・ドレイン間およびトランジスタMLN2のドレイン・ソース間に電流I2が流れる。すなわち、V-V変換回路110において電流I2が流れる。電流I2は、電流I1での説明と同様に、電流Irefと、トランジスタMbiasおよびトランジスタMLP2のサイズ比に応じた電流となる。例えば、トランジスタMbiasとトランジスタMLP2のサイズ比が1:m(mは0より大きい数)である場合、電流I2はm×Irefとなる。これにより、トランジスタMLN2のゲート端子には、電流I2とトランジスタMLN2のゲート・ソース間の電圧の関係で定まる電圧Vbias2が生成される。V-V変換回路110は、電圧Vbias2を電圧VLNとしてV-I変換回路120に印加する。
【0032】
ゲート端子に電圧VLNが印加されたトランジスタMLN1はオンとなる。ここで、トランジスタMLN1とトランジスタMLN2とはカレントミラー回路を構成する。これにより、トランジスタMLN1のドレイン・ソース間に電流I3が流れる。電流I3は、電流I1およびI2の説明と同様に、電流Irefと、トランジスタMLN2およびトランジスタMLN1のサイズ比に応じた電流となる。例えば、トランジスタMLN2とトランジスタMLN1のサイズ比が1:l(lは0より大きい数)である場合、電流I3はl×m×Irefとなる。V-I変換回路120は、電流I3を電流IoutLとして出力端子GLに出力し、スイッチング素子MSWLのゲート端子に供給する。電流IoutLは、図1に表されるように、矢印の方向を正とするため、電流I3は負の値となる。すなわち、スイッチング素子MSWLのゲート・ソース間の寄生容量に溜まっている電荷は、トランジスタMLN1を通じて基準電位に流される。この寄生容量から電荷が抜けていくにつれて、出力端子GLにおける電圧VoutLが低下する。時刻T2から時刻T21までは、スイッチング素子MSWLはオンである。
【0033】
時刻T2からスイッチング素子MSWLのゲート端子に電流I3が供給され続け、時刻T21において、電圧VoutLがVLplateauに到達する。時刻T21から、電圧VSWが上昇し始める。時刻T21から時刻T22において、電圧VoutLはVLplateauを保ち、電流ISWLはISWL1を保ち、電圧VSWは上昇し続ける。時刻T22において、電圧VSWはVbbに到達し、電流ISWLがISWL1から低下し始め、電圧VoutLがVLplateauから低下し始める。電流ISWLは、時刻T23において0となる。スイッチング素子MSWLは、時刻T23においてはオフとなっている。スイッチング素子MSWLは、時刻T21からT23の間は、オンからオフへと切り替わっている最中である。ここで、スイッチング素子MSWLがオフからオンに切り替わる場合の遷移時間は、電流I1の値に応じて決まり、スイッチング素子MSWLがオンからオフに切り替わる場合の遷移時間は、電流I3の値に応じて定まる。すなわち、遷移時間Ttは、基準電流源10が生成する電流Irefと、I-V変換回路20、V-V変換回路110、およびV-I変換回路120が備えるトランジスタの大きさによって、任意に設定することができる。図2では一例として、これらの遷移時間をともにTtとして表しているが、必ずしも同じ時間長に限定されない。
【0034】
時刻T3において、生成回路130は制御信号Lの一部を切り替える。生成回路130は、信号LP2としてハイ信号、信号LN2およびLN3としてロー信号を生成し、対応するスイッチに伝達する。その結果、スイッチSWLP2はオン、スイッチSWLN2およびSWLN3はオフに切り替わる。信号LP2、LN2、およびLN3以外の制御信号Lについては、時刻T3以前のオンオフを維持する。この時刻T3は、スイッチング素子MSWLがオフになったと考えられる時刻となるように設定される。例えば、生成回路130は、スイッチング素子MSWLの駆動および非駆動の切り替わりに関する所定の時間として、あらかじめ時間Tdを定めておく。生成回路130は、時刻T2から時間Td経過した時刻を時刻T3としてもよいし、電圧VoutLが時刻T2以降であらかじめ定めた電圧VtNになった時刻を時刻T3としてもよい。本実施形態では、生成回路130は時刻T2から時間Td経過した時刻を時刻T3として制御信号Lの一部を切り替える。
【0035】
スイッチSWLP2、SWLN2、およびSWLN3の切り替えにより、トランジスタMLN1のゲート端子には電圧源Vdd2が接続される。これにより、トランジスタMLN1のゲート端子には電圧Vdd2が印加される。電圧Vdd2は、電圧Vbias2よりも大きい電圧である。トランジスタMLN1のゲート端子に印加される電圧が大きくなったことにより、電流IoutLは電流I3よりも絶対値が大きい負の電流となる(以降、この電流を電流ILminとも称する)。電流IoutLが電流ILminとなることで、電圧VoutLはより早く低下し、スイッチング素子MSWLのゲート・ソース間の寄生容量に溜まっていた電荷をより短い時間で抜くことができる。電圧VLNを電圧Vbias2から電圧Vdd2に切り替えても、スイッチング素子MSWLはすでにオフとなっているため、スイッチング素子MSWLのスイッチングへの影響は小さい。電圧VoutLが0に近づくと、電流IoutLは0に漸近する。時刻T3において、スイッチSWLN2およびSWLN3がオフとなったことにより、トランジスタMLP2およびMLN2に電流が流れなくなる。したがって、スイッチング素子MSWLがオフである時刻T3以降、時刻T4までのV-V変換回路110の消費電力を低減させることができる。
【0036】
時刻T3以降も電圧VoutLは低下し続け、時刻T31において、電圧VoutLが0となるとする。電圧VoutLが0となることは、スイッチング素子MSWLのゲート・ソース間の寄生容量に溜まっていた電荷が抜けたことを意味する。トランジスタMLN1のゲート端子の電圧レベルとソース端子の電圧レベルが同程度となるため、トランジスタMLN1はオフとなる。以降、時刻T4までスイッチング素子MSWL、電子回路100の状態に変化はない。
【0037】
時刻T4において、ハイ信号が入力信号VinLとして電子回路100に入力される。以降、駆動システムは、上記に説明した時刻T0からT4までと同様に動作する。
【0038】
以上、本実施形態における駆動システムを説明した。本実施形態の図などは説明のための一例であり、表現が一部異なっているものも含まれる。例えば、スイッチング素子MSWL、基準電流源10、I-V変換回路20、電流調整回路30は電子回路100とは分けて説明したが、電子回路100は、これらのうち少なくとも1つを含んでいてもよい。また、本実施形態では、電圧源Vrefは基準電流源10に含まれ、電圧源Vdd1およびVdd2は電子回路100に含まれているが、これらの電圧源のうち少なくとも1つを外部に設置し、外部の電圧源から対応する電圧を基準電流源10または電子回路100に印加してもよい。また、図2では、説明のために電流IoutLおよびISWLの電流レベル、電圧VoutLおよびVSWの電圧レベルは直線により表されているが、一部が曲線であってもよい。信号LP1~LN3は同時に切り替わっているように見えるが、スイッチング素子MSWLの切り替わりに影響を及ぼさない程度であれば、同時でなくてもよい。
【0039】
さらに、本実施形態の変形例は様々に実装、実行可能である。以降、本実施形態の変形例を説明する。
【0040】
(変形例)
変形例の電子回路150は、電圧源VtNと、生成装置130に電圧VoutLと電圧源VtNが生成する所定の電圧(以降、電圧VtNとも称する)を比較する比較回路VgdetLNを備える。図3は、電子回路150の構成図を含む駆動システムを表す。本実施形態で説明したように、生成装置130は電圧VoutLが電圧VtNとなった時刻(時刻T3)において、制御信号Lの一部を切り替える。時刻T3の制御信号Lの切り替えにより、V-V変換回路110に電流が流れなくなり、電子回路100の消費電力を低減させることができる。電圧VtNは、スイッチング素子MSWLがオフであるゲート電圧から設定される。なお、電圧源VtNおよび比較回路VgdetLNの少なくとも一方は電子回路100の外部に設置し、生成回路130に電圧VtNまたは比較回路VgdetLNとVoutLの比較結果を入力してもよい。
【0041】
以上、本実施形態の変形例を説明した。本実施形態の電子回路は、スイッチング素子MSWLのスイッチングにおいて、スイッチング素子MSWLの遷移後に制御信号の一部を切り替える。これにより、スイッチング素子MSWLのスイッチングへの影響を抑えつつ、電子回路の消費電力を低減することができる。
【0042】
(第2の実施形態)
図4に、本実施形態における駆動システムを示す。この駆動システムは、スイッチング素子MSWLおよびMSWH、基準電流源10、I-V変換回路20、およびスイッチング素子MSWLおよびMSWHを駆動する電子回路200を備える。
【0043】
スイッチング素子MSWHは、第1の実施形態で説明したスイッチング素子MSWLと同様であるため、説明を省略する。スイッチング素子MSWHのゲート端子は電子回路200と接続され、ドレイン端子は電圧源Vbbと接続され、ソース端子はスイッチング素子MSWLのドレイン端子と接続される。ここで、スイッチング素子MSWHの基準電位はスイッチング素子MSWLのドレイン端子における電電位であり、スイッチング素子MSWLの基準電位(例えばグランド)とは異なる。本実施形態では、スイッチング素子MSWHの基準電位を、電圧VSWと表す。スイッチング素子MSWLとMSWHのような、直列されたスイッチング素子は、ハーフブリッジとも称される。本実施形態のVSWはスイッチング素子MSWHの基準電位であるが、一定の電圧に限定されず、様々な値を取りうる。
【0044】
電子回路200は、スイッチング素子MSWLの駆動および非駆動に関する入力信号VinLおよびスイッチング素子MSWHの駆動および非駆動に関する入力信号VinHを受けて、スイッチング素子MSWLおよびMSWHに対して供給する電流を制御することにより、スイッチング素子MSWLおよびMSWHのスイッチングを行う。以降、電子回路200がスイッチング素子MSWHに対して供給する電流を、IoutHとも称する。電子回路200のような、ハーフブリッジを駆動する電子回路200は、ハーフブリッジドライバとも称される。電子回路200は、第1の実施形態で説明した電子回路150に加えて、電圧-電圧変換回路210(以降、V-V変換回路210とも称する)、電圧-電流変換回路220(以降、V-I変換回路220とも称する)、生成回路230、レベルシフト回路231a、231b、231c、電圧源Vdd3、VtP、VtN’、比較回路VgdetHN、およびVgdetHPを備える。
【0045】
電子回路200の基準電位は、電子回路200の構成要素によって異なる。例えば、第1の実施形態で説明した構成要素や、V-V変換回路210に含まれる一部の要素の基準電位は、スイッチング素子MSWLの基準電位となる。一方、V-V変換回路210に含まれる一部の要素の基準電位、V-I変換回路220、電圧源Vdd3、VtP、VtN’、比較回路VgdetHN、およびVgdetHPなその基準電位は、電圧VSWとなる。
【0046】
V-V変換回路210はI-V変換回路20、V-I変換回路220、および電圧源Vdd3と接続される。V-I変換回路220は出力端子GHとも接続される。生成回路230は、レベルシフト回路231cを通じて入力端子INHと接続され、比較回路VgdetHPおよびVgdetHNと接続される。レベルシフト回路231aは生成回路230と比較回路VgdetHNの間と、生成回路130と接続される。レベルシフト回路231bは生成回路230と比較回路VgdetHPの間と、生成回路130と接続される。比較回路VgdetHNはさらに電圧源VtNおよびV-I変換回路220と接続される。比較回路VgdetHPはさらに電圧源VtPおよび電圧VSWと接続される。
【0047】
V-V変換回路210は、V-I変換回路220に印加する電圧を生成する。V-V変換回路210が生成する電圧は、電圧VHPおよび電圧VHNとも称する。電圧VHPおよび電圧VHNとして、電圧源Vdd3が生成する所定の電圧(以降、電圧Vdd3とも称する)、電圧源Vdd4が生成する所定の電圧(以降、電圧Vdd4とも称する)、電圧源Vdd5が生成する所定の電圧(以降、電圧Vdd5とも称する)、およびV-V変換回路210内において流れる電流に基づいた電圧(以降、電圧Vbias3、電圧Vbias4とも称する。それぞれ説明は後述する)のいずれかが出力される。これらの電圧は基準電位が電圧VSWであるため、スイッチング素子MSWLの基準電位を基準とすると、電圧VSWが付加される。本実施形態では図5に示すように、電圧VHPとして電圧Vdd3+VSW、電圧Vdd5+VSW、または電圧Vbias3+VSWを供給し、電圧VHNとして電圧Vdd4+VSW、電圧VSWまたは電圧Vbias4+VSWのいずれかを供給する。
【0048】
V-V変換回路210は、トランジスタMHP2、トランジスタMHP3、トランジスタMHP4、トランジスタMHN2、トランジスタMHN3、トランジスタMHN4、トランジスタMHN5、スイッチSWHP1、スイッチSWHP2、スイッチSWHP3、スイッチSWHP4、スイッチSWHP5、スイッチSWHP6、スイッチSWHN1、スイッチSWHN2、スイッチSWHN3、スイッチSWHN4、電圧源Vdd4、電圧源Vdd5を備える。
【0049】
V-V変換回路210の基準電位は、V-V変換回路210の構成要素によって基準電位が異なる。例えばトランジスタMHP3、MHN3、MHN4の基準電位は、スイッチング素子MSWLの基準電位となる。一方、トランジスタMHP1、MHP2、MHP4、MHN1、MHN2、電圧源Vdd4、Vdd5の基準電位は電圧VSWとなる。
【0050】
トランジスタMHP2、MHP3、およびMHP4は、本実施形態ではP型トランジスタである。トランジスタMHP2のゲート端子はトランジスタMHP4のゲート端子と接続され、ソース端子は電圧源Vdd1と接続され、ドレイン端子はスイッチSWHN2と接続される。トランジスタMHP3のゲート端子はI-V変換回路20と接続され、ソース端子は電圧源Vdd1と接続され、ドレイン端子はスイッチSWHN4と接続される。トランジスタMHP4のソース端子はスイッチSWHP5と接続され、ドレイン端子はスイッチSWHP6と接続される。また、トランジスタMHP4は、ゲート端子とドレイン端子が接続される。
【0051】
トランジスタMHN2、トランジスタMHN3、トランジスタMHN4、およびトランジスタMHN5は、本実施形態ではN型トランジスタである。トランジスタMHN2のゲート端子はV-I変換回路220と接続され、ソース端子はスイッチSWHN3と接続され、ドレイン端子はスイッチSWHN2と接続される。また、トランジスタMHN2は、ゲート端子とドレイン端子が接続される。
【0052】
トランジスタMHN2のドレイン端子はスイッチSWHN2と接続され、ソース端子はスイッチSWHN3と接続される。また、トランジスタMHN2のゲート端子とドレイン端子は接続される。トランジスタMHN3のゲート端子はトランジスタMHN4のゲート端子と接続され、ソース端子は基準電位と接続され、ドレイン端子はスイッチSWHN4と接続される。また、トランジスタMHN3のトランジスタのゲート端子とドレイン端子は接続される。トランジスタMHN4のソース端子は基準電位と接続され、ドレイン端子はトランジスタMHN5のソース端子と接続される。トランジスタMHN5は、高耐圧トランジスタである。トランジスタMHN5のソース端子と接続される側の基準電位はスイッチング素子MSWLの基準電位であり、トランジスタMHN5のドレイン端子と接続される側の基準電位は電圧VSWであるため、基準電位の差分を吸収し、回路の破壊を防止することができる。トランジスタMHN5のゲート端子は電圧源Vdd1と接続され、ドレイン端子は、スイッチSWHP6と接続される。
【0053】
スイッチSWHP1、スイッチSWHP2、スイッチSWHP3、スイッチSWHP4、スイッチSWHP5、スイッチSWHP6、スイッチSWHN1、スイッチSWHN2、およびスイッチSWHN3は、生成回路230からの信号により、それぞれ短絡または開放する。スイッチSWHN4は、生成回路130からの信号により、短絡または開放する。V-V変換回路210は、スイッチSWHP1~SWHP6、SWHN1~SWHN4のそれぞれの短絡または開放の状態に応じて、電圧Vdd3、Vdd4、またはVdd5、およびV-V変換回路210内において流れる電流に基づいた電圧のいずれかを切り替え、電圧VHPおよび電圧VHNとしてV-I変換回路220に印加する。
【0054】
スイッチSWHP1は、電圧源Vdd3およびV-I変換回路220の間に接続される。スイッチSWHP2は、電圧源Vdd4とV-I変換回路220の間に接続される。スイッチSWHP3は、トランジスタMHP2のゲート端子およびMHP4とゲート端子の間と、V-I変換回路220の間に接続される。スイッチSWHP4は、電圧源Vdd5およびV-I変換回路220の間に接続される。スイッチSWHP5は、電圧源Vdd3およびトランジスタMHP4のソース端子の間に接続される。スイッチSWHP6は、トランジスタMHP4のドレイン端子およびトランジスタMHN5のドレイン端子の間に接続される。スイッチSWHN1は、電圧VSWおよびV-I変換回路220の間に接続される。スイッチSWHN2は、トランジスタMHP2のドレイン端子およびトランジスタMHN2のドレイン端子の間に接続される。スイッチSWHN3は、トランジスタMHN2のソース端子および電圧VSWの間に接続される。スイッチSWHN4は、トランジスタMHP3のドレイン端子およびトランジスタMHN3のドレイン端子の間に接続される。
【0055】
V-I変換回路220は、V-V変換回路210から印加された電圧VHPおよびVHNの少なくとも一方に基づいて、スイッチング素子MSWHのゲート端子に出力する出力電流を生成する。この出力電流は、出力端子GHを通じてスイッチング素子MSWHのゲート端子に供給される。図1では、出力端子GHにおける電圧をVoutH(以降、電圧VoutHとも称する)、出力電流をIoutHと表している。V-I変換回路220は、トランジスタMHP1およびトランジスタMHN1を備える。
【0056】
トランジスタMHP1は、本実施形態では一例としてP型トランジスタである。トランジスタMHP1のゲート端子はスイッチSWHP1、SWHP3、SWHP4、およびトランジスタMHP2のゲート端子とトランジスタMHP4のゲート端子の間と接続される。V-V変換回路210が生成した電圧VHPはトランジスタMHP1のゲート端子に印加される。トランジスタMHP1のソース端子は電圧源Vdd1に接続される。トランジスタMHP1のドレイン端子は出力端子GHおよびトランジスタMHN1のドレイン端子と接続される。トランジスタMHN1は、本実施形態では一例としてN型トランジスタである。トランジスタMHN1のゲート端子はスイッチSWHN1、SWHP2、およびトランジスタMHN2のゲート端子と接続される。V-V変換回路210が生成した電圧VHNはトランジスタMHN1のゲート端子に印加される。トランジスタMHN1のソース端子は電圧VSWに接続される。トランジスタMHP1のドレイン端子は出力端子GHおよびトランジスタMHP1のドレイン端子と接続される。
【0057】
生成回路230は、入力端子INHからの入力信号VinHに基づいて、スイッチSWHP1、スイッチSWHP2、スイッチSWHP3、スイッチSWHP4、スイッチSWHP5、スイッチSWHP6、スイッチSWHN1、スイッチSWHN2、およびスイッチSWHN3のそれぞれを短絡または開放を制御する制御信号Hを生成する。この入力信号VinHは、スイッチング素子MSWHの駆動または非駆動に関する信号である。制御信号Hは信号HP1、HP2、HP3、HP4、HP5、HP6、HN1、HN2、およびHN3を含む。信号HP1はスイッチSWHP1に、信号HP2はスイッチSWHP2に、信号HP3はスイッチSWHP3に、信号HP4はスイッチSWHP4に、信号HP5はスイッチSWHP5に、信号HP6はスイッチSWHP6に、信号HN1はスイッチSWHN1に、信号HN2はスイッチSWHN2に、信号HN3はスイッチSWHN3にそれぞれ対応する。生成回路230は、信号HP1~HP6、HN1~HN3を、対応するスイッチに伝送する。信号HP1~HP6、HN1~HN3を伝送する方法は任意であり、有線であってもよいし、無線であってもよい。
【0058】
また、第1の実施形態で説明した生成回路130は、入力端子INHからの入力信号VinHに基づいて、さらにスイッチSWHN4を短絡または開放を制御する信号HN4を生成する。信号HN4は、制御信号Lに含まれる。生成回路130は、信号HN4をスイッチSWHN4に伝送する。信号HN4を伝送する方法は、有線であっても無線であってもよい。
【0059】
レベルシフト回路231a、231b、および231cは、入力される信号の電圧レベルを調整する回路である。レベルシフト回路231aおよび231bは、電圧VSWを基準とする比較回路VgdetHNおよびVgdetHPの比較結果を表す信号が入力される。レベルシフト回路231aおよび231bは、この比較結果を表す信号を、スイッチング素子MSWLの基準電位を基準とする生成回路130に適した電圧に調整し、生成回路130に送る。レベルシフト回路231cは、基準電位を基準とする入力信号VinHを、電圧VSWを基準とする生成回路230に適した電圧に調整し、生成回路230に送る。
【0060】
レベルシフト回路231aは、生成回路230および比較回路VgdetHNの間、および生成回路130と接続される。レベルシフト回路231bは、生成回路230および比較回路VgdetHPの間、および生成回路130と接続される。レベルシフト回路231cは、入力端子INHおよび生成回路230と接続される。
【0061】
比較回路VgdetHNは、電圧VoutHおよび電圧VtN’を比較し、比較した結果を表す信号を生成回路230およびレベルシフト回路231aを通じて生成回路130に送る。詳細には、電圧源VtN’の基準電位は電圧VSWなので、比較回路VgdetHNは電圧VoutH-VSWと電圧VtN’を比較する。比較回路VgdetHPは、電圧VoutH-VSWおよび電圧VtPを比較し、比較した結果を表す信号を生成回路230およびレベルシフト回路231bを通じて生成回路130に送る。詳細には、電圧源VtPの基準電位は電圧VSWなので、比較回路VgdetHPは電圧VoutH-VSWと電圧VtPを比較する。比較した結果を表すこれらの信号は、生成回路130が生成する制御信号Lおよび生成回路230が生成する制御信号Hのうち、一部の信号の切り替えに使われる。
【0062】
以上、本実施形態の駆動システムの構成を説明した。電子回路200は、第1の実施形態で説明した電子回路100と同様の実装・実現方法が適用可能である。
【0063】
図5は、本実施形態の駆動システムのタイミングチャートであり、スイッチング素子MSWHの駆動に関わる部分のタイミングチャートを表している。図5を用いて、本実施形態の駆動システムのうち、スイッチング素子MSWHの駆動に関わる部分の動作を、時刻T0’から時刻T4’に沿って説明する。これらの時刻は、第1の実施形態の時刻T0から時刻T4と連動してもよいし、連動しなくてもよい。すなわち、スイッチング素子MSWLの駆動と、スイッチング素子MSWHの駆動は独立に行われてもよいし、一方がもう一方に従属して行われてもよい。なお、本実施形態の駆動システムのうち、スイッチング素子MSWLの駆動に関わる部分の動作については、第1の実施形態で説明したタイミングチャートと同様であるので、説明を省略する。なお、図5では、電圧VHP、VHN、VoutH、について、スイッチング素子MSWHの基準電位である電圧VSWを差し引いて表している。また、電圧VSW’=Vbb-VSWと表している。
【0064】
入力信号VinHについて、時刻T0’からT2’までハイ信号、時刻T2’からT4’までロー信号が入力される。図5では、ハイ信号はHとして表され、ロー信号はLとして表される。電子回路200は、入力信号VinHとしてハイ信号を受けた場合、スイッチング素子MSWHを駆動するように出力電流を生成する。電子回路200は、入力信号VinHとしてロー信号を受けた場合、スイッチング素子MSWHを非駆動とするように出力電流を生成する。なお、第1の実施形態での説明と同様に、電子回路200が入力信号VinHとしてハイ信号を受けてからスイッチング素子MSWHが実際に駆動するまで、または電子回路200が入力信号VinHとしてロー信号を受けてからスイッチング素子MSWHが実際に非駆動となるまでは、タイムラグが生じる。また、電子回路200には、基準電流源10で生成された電流Irefに基づく電圧VbiasがI-V変換回路20によって印加されている。このI-V変換回路20のトランジスタMbiasはオンである。トランジスタMHN5のゲート端子には電圧Vdd1が印加され、トランジスタMHN5はオンとなる。
【0065】
時刻T0’において、ハイ信号が入力信号VinHとして電子回路200に入力される。生成回路130は信号HN4としてハイ信号を生成し、スイッチSWHN4に伝達する。生成回路230は、信号HP1、HP2、HP4、HN2、およびHN3としてロー信号、信号HP3、HP5、およびHP6としてハイ信号を生成し、対応するスイッチに伝達する。その結果、スイッチSWHP1、SWHP2、SWHP4、SWHN2、およびSWHN3はオフ、スイッチSWHP3、SWHP5、SWHP6、およびSWHN4はオンとなる。
【0066】
スイッチSWHN4がオンとなったことにより、トランジスタMbiasとトランジスタMHP3とはカレントミラー回路を構成する。これにより、トランジスタMHP3のソース・ドレイン間およびトランジスタMHN3のドレイン・ソース間に電流I4が流れる。すなわち、V-V変換回路210の一部において電流I4が流れる。電流I4は、電流I1~I3での説明と同様に、電流Irefと、トランジスタMbiasおよびトランジスタMHP3のサイズ比に応じた電流となる。例えば、トランジスタMbiasとトランジスタMHP3のサイズ比が1:k(kは0より大きい数)である場合、電流I4は電流k×Irefとなる。
【0067】
また、スイッチSWHP5およびSWHP6がオンとなったことにより、トランジスタMHN3とトランジスタMHN4とはカレントミラー回路を構成する。これにより、スイッチSWHP5からトランジスタMHP4、スイッチSWHP6、トランジスタMHN5、およびトランジスタMHN4を通じて、電流I5が流れる。すなわち、V-V変換回路210の一部において電流I5が流れる。電流I5は、電流I1~I4での説明と同様に、電流Irefと、トランジスタMHN3およびトランジスタMHN4のサイズ比に応じた電流となる。例えば、トランジスタMHN3とトランジスタMHN4のサイズ比が1:j(jは0より大きい数)である場合、電流I5は電流j×k×Irefとなる。これにより、トランジスタMHP4のゲート端子には、電流I5とトランジスタMHP4のゲート・ソース間の電圧の関係で定まる電圧Vbias3+VSWが生成される。V-V変換回路210は、電圧Vbias3+VSWを電圧VHPとしてV-I変換回路220に印加する。この電圧Vbias3+VSWにより、トランジスタMHP1はオンとなる。一方、電圧VHNは電圧VSWとなり、スイッチング素子MSWHの基準電位であるため、トランジスタMHN1はオフとなる。
【0068】
ここで、トランジスタMHP1がオンとなったため、トランジスタMHP4とトランジスタMHP1とはカレントミラー回路を構成する。これにより、トランジスタMHP1のドレイン・ソース間に電流I6が流れる。電流I6は、電流I1~I5の説明と同様に、電流Irefと、トランジスタMHP4およびトランジスタMHP1のサイズ比に応じた電流となる。例えば、トランジスタMHP4とトランジスタMHP1のサイズ比が1:i(iは0より大きい数)である場合、電流I6はi×j×k×Irefとなる。V-I変換回路220は、電流I6を電流IoutHとして出力端子GHに出力し、スイッチング素子MSWHのゲート端子に供給される。電流IoutHは、図4に表されるように、矢印の方向を正とするため、電流I6は正の値となる。すなわち、スイッチング素子MSWHのゲート・ソース間の寄生容量に電荷が溜まっていく。この寄生容量に電荷が溜まっていくにつれて、電圧VoutH-VSWが上昇する。時刻T0’から時刻T01’までは、スイッチング素子MSWHはオフである。
【0069】
時刻T0’からスイッチング素子MSWHのゲート端子に電流I6が供給され続け、時刻T01’において、スイッチング素子MSWHのドレイン・ソース間に電流(以降、この電流を電流ISWHとする)が流れ始める。時刻T02’において、電圧VoutH-VSWが特定の値であるVHplateauに到達する。この電圧VoutH-VSW=VHplateauにおいて、電流ISWHは特定の値であるISWH1に到達し、スイッチング素子MSWHのドレイン・ソース間電圧VSW’が低下し始める。電圧VSW’は、電圧Vbbから0へと低下していく。時刻T02’から時刻T03’において、電圧VoutH-VSWは電圧VHplateauを保ち、電流ISWHはISWH1を保ち、電圧VSW’は低下し続ける。なお、電圧VHplateauおよびISWH1を保つとは、厳密に同じ値を保つことに限定されず、同様のレベルであればよい。電圧VSW’は、時刻T03’において0となる。スイッチング素子MSWHは、時刻T03’においてはオンとなっている。スイッチング素子MSWHは、時刻T01’からT03’の間(時間Tt’)は、オフからオンへと切り替わっている最中である。時間Tt’は、スイッチング素子MSWHがオフからオンに、またはオンからオフに切り替わる時間であり、第1の実施形態と同様に遷移時間、遷移している間などと称する。スイッチング素子MSWHがオフからオンに切り替わる場合の遷移時間は、電流I6の値に応じて決まり、スイッチング素子MSWHがオンからオフに切り替わる場合の遷移時間は、後述する電流I8の値に応じて定まる。すなわち、遷移時間Tt’は、基準電流源10が生成する電流Irefと、I-V変換回路20、V-V変換回路210、およびV-I変換回路220が備えるトランジスタの大きさによって、任意に設定することができる。図5では一例として、これらの遷移時間をともにTt’として表しているが、必ずしも同じ時間長に限定されない。また、本実施形態における遷移時間Tt’は、第1の実施形態で説明した遷移時間Ttと同様でもよいし、異なってもよい。
【0070】
電圧VoutH-VSWは、時刻T03’から再び電圧が上昇していく。時刻T1’において、生成回路130は制御信号Lの一部を切り替え、生成回路230は制御信号Hの一部を切り替える。生成回路130は、信号HN4としてロー信号を生成し、スイッチSWHN4に伝達する。生成回路230は、信号HP3、HP5、HP6としてロー信号、信号HP4としてハイ信号を生成し、対応するスイッチに伝達する。その結果、スイッチSWHP4はオン、スイッチSWHP3、SWHP5、SWHP6、およびSWHN4はオフに切り替わる。信号HP3、HP4、HP5、およびHP6以外の制御信号Hについては、時刻T0’に切り替わった信号を維持する。この時刻T1’は、スイッチング素子MSWHがオンになったと考えられる時刻となるように設定される。例えば、生成回路130および230は、スイッチング素子MSWHの駆動および非駆動の切り替わりに関する所定の時間として、あらかじめ時間Td’を定めておく。生成回路130および230は、時刻T0’から時間Td’経過した時刻を時刻T1’としてもよいし、電圧VoutH-VSWが時刻T0’以降であらかじめ定めた電圧VtPになった時刻を時刻T1’としてもよい。本実施形態では、生成回路130および230は、比較回路VgdetHPによる電圧VoutH-VSWと電圧VtPとの比較結果を表す信号を受け取っており、電圧VoutHーVSWが電圧VtPとなった時刻(比較結果が変わった時刻)を時刻T1’として信号HN4および制御信号Hの一部を切り替える。
【0071】
スイッチSWHP3、SWHP4、SWHP5、SWHP6、およびSWHN4の切り替えにより、トランジスタMHP1のゲート端子には電圧源Vdd5が接続される。これにより、トランジスタMHP1のゲート端子には、電圧VHPとして電圧Vdd5+VSWが印加される。電圧Vdd5は、電圧Vbias3よりも小さい電圧である。トランジスタMHP1のゲート端子に印加される電圧が小さくなったことにより、電流IoutHは電流I6よりも大きい電流となる(以降、この電流を電流IHmaxとも称する)。電流IoutHが電流IHmaxとなることで、電圧VoutHはより早く上昇し、スイッチング素子MSWHのゲート・ソース間の寄生容量に電荷をより短い時間で溜めることができる。電圧VHPを電圧Vbias3+VSWから電圧Vdd5+VSWに切り替えても、スイッチング素子MSWHはすでにオンとなっているため、スイッチング素子MSWHのスイッチングへの影響は小さい。電圧VoutH-VSWがVHmaxに近づくと、電流IoutHは0に漸近する。
【0072】
また、時刻T1’において、スイッチSWHP3、SWHP5、SWHP6、およびSWHN4がオフとなったことにより、トランジスタMHP3、MHN3、MHN4、およびMHP4に電流が流れなくなる。したがって、スイッチング素子MSWHがオンである時刻T1’以降、時刻T2’までのV-V変換回路210の消費電力を低減させることができる。
【0073】
時刻T1’以降も電圧VoutH-VSWは上昇し続け、時刻T11’において、電圧VoutH-VSWがVHmaxとなるとする。電圧VoutH-VSWがVHmaxとなることは、スイッチング素子MSWHのゲート・ソース間の寄生容量に電荷が溜まり切ったことを意味する。このとき、トランジスタMHP1のソース端子における電圧(=Vdd3+VSW)と、ドレイン端子における電圧(=VHmax+VSW)が同じレベルとなるため、トランジスタMHP1はオンからオフとなる。このとき、電流IoutHは0となる。以降、時刻T2’までスイッチング素子MSWH、および電子回路200のうち、スイッチング素子MSWHのスイッチングに関する部分の状態に変化はない。
【0074】
時刻T2’において、ロー信号が入力信号VinHとして電子回路200に入力される。時刻T2’において、生成回路130は制御信号Lの一部を切り替え、生成回路230は制御信号Hの一部を切り替える。生成回路130は信号HN4としてハイ信号を生成し、スイッチSWHN4に伝達する。生成回路230は、信号HP4およびHN1としてロー信号、信号HP1、HP5、HP6、HN2、およびHN3としてハイ信号を生成し、対応するスイッチに伝達する。その結果、スイッチSWHP4およびSWHN1はオフ、スイッチSWHP1、SWHP5、SWHP6、SWHN2、およびSWHN3はオンとなる。スイッチSWHP2はオフを維持する。この場合、V-V変換回路210は電圧Vdd3+VSWを電圧VHPとしてV-I変換回路220に印加する。トランジスタMHP1のゲート端子における電圧と、ソース端子における電圧は同じ電圧Vdd3+VSWとなり、トランジスタMHP1はオフとなる。
【0075】
以下、時刻T2’における電圧VHNについて説明する。スイッチSWHN4がオンとなったことにより、トランジスタMbiasとトランジスタMHP3とはカレントミラー回路を構成する。これにより、トランジスタMHP3のソース・ドレイン間およびトランジスタMHN3のドレイン・ソース間に電流I4が流れる。すなわち、V-V変換回路210の一部において電流I4が流れる。また、スイッチSWHP5およびSWHP6がオンとなったことにより、トランジスタMHN3とトランジスタMHN4とはカレントミラー回路を構成する。これにより、スイッチSWHP5からトランジスタMHP4、スイッチSWHP6、トランジスタMHN5、およびトランジスタMHN4を通じて、電流I5が流れる。すなわち、V-V変換回路210の一部において電流I5が流れる。
【0076】
また、スイッチSWHN2およびSWHN3がオンとなったことにより、トランジスタMHP4とトランジスタMHP2とはカレントミラー回路を構成する。これにより、トランジスタMHP2からスイッチSWHN2、トランジスタMHN2、およびスイッチSWHN3を通じて、電流I7が流れる。すなわち、V-V変換回路210の一部において電流I7が流れる。電流I5は、電流I1~I6での説明と同様に、電流Irefと、トランジスタMHP4およびトランジスタMHP2のサイズ比に応じた電流となる。例えば、トランジスタMHP4とトランジスタMHP2のサイズ比が1:h(hは0より大きい数)である場合、電流I7は電流h×j×k×Irefとなる。これにより、トランジスタMHN2のゲート端子には、電流I7とトランジスタMHP2のゲート・ソース間の電圧の関係で定まる電圧Vbias4+VSWが生成される。V-V変換回路210は、電圧Vbias4+VSWを電圧VHNとしてV-I変換回路220に印加する。この電圧Vbias4により、トランジスタMHN1はオンとなる。
【0077】
ここで、トランジスタMHN2とトランジスタMHN1とはカレントミラー回路を構成する。これにより、トランジスタMHN1のドレイン・ソース間に電流I8が流れる。電流I8は、電流I1~I2の説明と同様に、電流Irefと、トランジスタMHN2およびトランジスタMHN1のサイズ比に応じた電流となる。例えば、トランジスタMHN2とトランジスタMHN1のサイズ比が1:g(gは0より大きい数)である場合、電流I8はg×h×j×k×Irefとなる。V-I変換回路220は、電流I8を電流IoutHとして出力端子GHに出力し、スイッチング素子MSWHのゲート端子に供給する。電流IoutHは、図4に表されるように、矢印の方向を正とするため、電流I8は負の値となる。すなわち、スイッチング素子MSWHのゲート・ソース間の寄生容量に溜まっている電荷は、トランジスタMHN1を通じてスイッチング素子MSWHの基準電位に流される。この寄生容量から電荷が抜けていくにつれて、電圧VoutHーVSWが低下する。時刻T2’から時刻T21’までは、スイッチング素子MSWHはオンである。
【0078】
時刻T2’からスイッチング素子MSWHのゲート端子に電流I8が供給され続け、時刻T21’において、電圧VoutH-VSWがVHplateauに到達する。時刻T21’から、電圧VSW’が上昇し始める。電圧VSW’は、0からVbbへと上昇していく。時刻T21’から時刻T22’において、電圧VoutH-VSWはVHplateauを保ち、電流ISWHはISWH1を保ち、電圧VSW’は上昇し続ける。時刻T22において、電圧VSW’はVbbに到達し、電流ISWHがISWH1から低下し始め、電圧VoutH-VSWがVHplateauから低下し始める。電流ISWHは、時刻T23’において0となる。スイッチング素子MSWHは、時刻T23’においてはオフとなっている。スイッチング素子MSWHは、時刻T21’からT23’の間は、オンからオフへと切り替わっている最中である。図5では、時刻T21’からT23’の間を遷移時間Tt’としているが、時刻T01’からT03’の間とは異なる時間を遷移時間として設定してもよい。
【0079】
電圧VoutH-VSWは、時刻T23’から再び電圧が低下していく。時刻T3’において、生成回路130は制御信号Lの一部を切り替え、生成回路230は制御信号Hの一部を切り替える。生成回路130は、信号HN4としてロー信号を生成し、スイッチSWHN4に伝達する。生成回路230は、信号HP5、HP6、HN2、HN3としてロー信号、信号HP2としてハイ信号を生成し、対応するスイッチに伝達する。その結果、スイッチSWHP2はオン、スイッチSWHP5、SWHP6、SWHN2、SWHN3、およびSWHN4はオフに切り替わる。信号HP2、HP5、HP6、HN2、およびHN3以外の制御信号Hについては、時刻T3’以前のオンオフを維持する。この時刻T3’は、スイッチング素子MSWHがオフになったと考えられる時刻となるように設定される。例えば、生成回路130および230は、スイッチング素子MSWHの駆動および非駆動の切り替わりに関する所定の時間として、あらかじめ時間Td’を定めておく。生成回路130および230は、時刻T2’から時間Td’経過した時刻を時刻T3’としてもよいし、電圧VoutH-VSWが時刻T2’以降であらかじめ定めた電圧VtN’になった時刻を時刻T1’としてもよい。時刻Td’は、時刻T0’から時刻T1’までの間とは異なる時間を設定してもよい。本実施形態では、生成回路130および230は、比較回路VgdetHNによる電圧VoutH-VSWと電圧VtN’との比較結果を表す信号を受け取っており、電圧VoutH-VSWが電圧VtN’となった時刻(比較結果が変わった時刻)を時刻T3’として信号HN4および制御信号Hの一部を切り替える。
【0080】
スイッチSWHP2、SWHP5、SWHP6、SWHN2、SWHN3、およびSWHN4の切り替えにより、トランジスタMHN1のゲート端子には電圧源Vdd4が接続される。これにより、トランジスタMHN1のゲート端子には、電圧VHNとして電圧Vdd4+VSWが印加される。電圧Vdd4は、電圧Vbias4よりも大きい電圧である。トランジスタMHN1のゲート端子に印加される電圧が大きくなったことにより、電流IoutHは電流I8よりも絶対値が大きい負の電流となる(以降、この電流を電流IHminとも称する)。電流IoutHが電流IHminとなることで、電圧VoutHはより早く低下し、スイッチング素子MSWHのゲート・ソース間の寄生容量に溜まっていた電荷をより短い時間で抜くことができる。電圧VHNを電圧Vbias4+VSWから電圧Vdd4+VSWに切り替えても、スイッチング素子MSWHはすでにオフとなっているため、スイッチング素子MSWHのスイッチングへの影響は小さい。電圧VoutH-VSWが0に近づくと、電流IoutHは0に漸近する。
【0081】
また、時刻T3’において、スイッチSWHP5、SWHP6、SWHN2、SWHN3、およびSWHN4がオフとなったことにより、トランジスタMHP2、MHP3、MHP4、MHN2、MHN3、およびMHN4に電流が流れなくなる。したがって、スイッチング素子MSWHがオフである時刻T3’以降、時刻T4’までのV-V変換回路210の消費電力を低減させることができる。
【0082】
時刻T3’以降も電圧VoutH-VSWは低下し続け、時刻T31’において、電圧VoutH-VSWが0となるとする。電圧VoutH-VSWが0となることは、スイッチング素子MSWHのゲート・ソース間の寄生容量に溜まっていた電荷が抜けたことを意味する。このとき、トランジスタMHN1のドレイン端子の電圧レベルとソース端子の電圧レベルが同程度となるため、トランジスタMHN1はオフとなる。以降、時刻T4’までスイッチング素子MSWH、および電子回路200のうち、スイッチング素子MSWHのスイッチングに関する部分の状態に変化はない。
【0083】
時刻T4’において、ハイ信号が入力信号VinHとして電子回路200に入力される。以降、駆動システムは、上記に説明した時刻T0’からT4’までと同様に動作する。
【0084】
以上、本実施形態における駆動システムを説明した。本実施形態の図などは説明のための一例であり、表現が一部異なっているものも含まれる。例えば、スイッチング素子MSWLおよびMSWH、基準電流源10、I-V変換回路20は電子回路200とは分けて説明したが、電子回路200は、これらのうち少なくとも1つを含んでいてもよい。また、本実施形態では、電圧源Vrefは基準電流源10に含まれ、電圧源Vdd3、Vdd4、およびVdd5は電子回路200に含まれているが、これらの電圧源のうち少なくとも1つを外部に設置し、外部の電圧源から対応する電圧を基準電流源10または電子回路200に印加してもよい。また、図5では、説明のために電流IoutHおよびISWHの電流レベル、電圧VoutHおよびVSW’の電圧レベルは直線により表されているが、一部が曲線であってもよい。信号HP1~HP6、HN1~HN4は同時に切り替わっているように見えるが、スイッチング素子MSWHの切り替わりに影響を及ぼさない程度であれば、同時でなくてもよい。さらに、本実施形態の変形例は様々に実装、実行可能である。以降、本実施形態の変形例を説明する。
【0085】
(変形例)
電子回路200が出力する電流IoutHは、基準電流源10が生成する電流Irefに比例した関係にある。電子回路200は、スイッチング素子MSWLのドレイン端子における電圧に関する値を取得し、基準電流源10はこの電圧に関する値に基づいて、電流Irefを生成してもよい。
【0086】
図6は、電子回路200に、取得回路232および増幅器OPSRrefをさらに備える電子回路250を表す。取得回路232は、スイッチング素子MSWLのドレイン端子(スイッチング素子MSWHの基準電位)および増幅器OPSRrefの-の入力側端子と接続されている。増幅器OPSRrefの+の入力側端子は電圧源VSRrefと接続されている。電圧源VSRrefが生成する電圧は電圧VSRrefである。増幅器OPSRrefの出力側端子は、基準電流源10の増幅器OPrefの+の入力側端子に接続される。
【0087】
取得回路232は、スイッチング素子MSWLのドレイン端子における電圧に関する値を取得する。電圧に関する値とは、例えば、スイッチング素子MSWLのドレイン端子における電圧(電圧VSW)や電圧VSWの時間微分値などである。取得回路232は、この電圧に関する値を電圧に変換し(あるいは電圧そのまま)、増幅器OPSRrefに送る。増幅器OPSRrefは、取得回路から送られた電圧に関する値を表す電圧と電圧VSRrefの差分を増幅し、基準電流源10の増幅器OPrefの+の入力側端子に送る。電圧VSRrefは、スイッチング素子MSWLおよびMSWHのスルーレートの目標値を表す電圧である。なお、電圧VSRrefは、電子回路250の外部から入力されてもよい。
【0088】
このようにすることで、基準電流源10は、スイッチング素子MSWLおよびMSWHの少なくとも一方のスイッチングに応じて、スイッチング素子MSWLおよびMSWHのスルーレートの目標値に対してフィードバックがかかった電流Irefを生成することができる。電子回路250は、この電流Irefに比例した出力電流IoutLをスイッチング素子MSWLのゲート端子に供給し、出力電流IoutHをスイッチング素子MSWHのゲート端子に供給することができる。これにより、スイッチング素子MSWLおよびMSWHのスイッチングをより効果的にすることができる。
【0089】
なお、取得回路232は、スイッチング素子MSWLのドレイン端子における電流に関する値を取得してもよい。電流に関する値とは、例えば、スイッチング素子MSWLのドレイン端子における電流やこの電流の時間微分値などである。図7は、取得回路232がスイッチング素子MSWLのドレイン端子における電流に関する値を取得する電子回路260を表す。取得回路232はスイッチング素子MSWLのドレイン端子に接続される以外の接続関係は、電子回路250と同様であるので省略する。
【0090】
取得回路232は、スイッチング素子MSWLのドレイン端子における電圧に関する値を取得し、この電流に関する値を電圧に変換して増幅器OPSRrefに送る。増幅器OPSRrefは、取得回路から送られた電流に関する値を表す電圧と電圧VSRrefの差分を増幅し、基準電流源10の増幅器OPrefの+の入力側端子に送る。
【0091】
このようにすることで、基準電流源10は、電子回路250での説明と同様に、スイッチング素子MSWLおよびMSWHの少なくとも一方のスイッチングに応じて、スイッチング素子MSWLおよびMSWHのスルーレートの目標値に対してフィードバックがかかった電流Irefを生成することができる。これにより、スイッチング素子MSWLおよびMSWHのスイッチングをより効果的にすることができる。
【0092】
なお、図6および図7を組み合わせ、取得回路232はスイッチング素子MSWLのドレイン端子における電圧に関する値および電流に関する値の少なくとも一方を取得し、基準電流源10は取得した電圧に関する値および電流に関する値の少なくとも一方に基づいて、電流Irefを生成してもよい。
【0093】
以上、本実施形態の変形例を説明した。本実施形態の電子回路は、スイッチング素子MSWHのスイッチングにおいて、スイッチング素子MSWHの遷移後に制御信号の一部を切り替える。これにより、スイッチング素子MSWHのスイッチングへの影響を抑えつつ、電子回路の消費電力を低減することができる。また、基準電流源およびI-V変換回路を増加させずに、スイッチング素子MSWLおよびスイッチング素子MSWHをスイッチングさせることができる。これにより、駆動システムの回路規模を小さくすることができ、小型化、コストの低減、消費電力の削減を行うことができる。
【0094】
(第3の実施形態)
図8に、本実施形態における駆動システムを示す。この駆動システムは、第2の実施形態で説明した駆動システムを3つ用いて、三相インバータに適用するインバータである。このインバータは、スイッチング素子MSWLU、MSWLV、MSWLW、MSWHU、MSWHV、MSWHW、基準電流源10、I-V変換回路20、および電子回路200U、200V、200Wを備える。
【0095】
I-V変換回路20は、電子回路200U、200V、200Wと接続されている。電子回路200Uは、スイッチング素子MSWLUおよびMSWHUと接続されている。電子回路200Vは、スイッチング素子MSWLVおよびMSWHVと接続されている。電子回路200Wは、スイッチング素子MSWLWおよびMSWHWと接続されている。スイッチング素子MSWLUおよびMSWHUのスイッチングノードVSWU、スイッチング素子MSWLVおよびMSWHVのスイッチングノードVSWV、およびスイッチング素子MSWLWおよびMSWHWのスイッチングノードVSWWは、負荷に接続されている。本実施形態では例えば、モータMに接続されている。
【0096】
電子回路200Uはスイッチング素子MSWLUおよびスイッチング素子MSWHUを駆動し、電子回路200Vはスイッチング素子MSWLVおよびスイッチング素子MSWHVを駆動し、電子回路200Wはスイッチング素子MSWLWおよびスイッチング素子MSWHWを駆動する。電子回路200U、200V、200Wは、それぞれの駆動するスイッチング素子について、独立に駆動してもよいし、1つのスイッチング素子について従属に駆動させてもよい。電子回路200U、200V、200Wは、基準電流源10が生成する電流Irefに基づいた電流を、それぞれが駆動するスイッチング素子に供給する。
【0097】
スイッチング素子MSWLU、MSWLV、MSWLW、MSWHU、MSWHV、MSWHWそれぞれの駆動/非駆動により、モータMを駆動させることができる。基準電流源10、I-V変換回路20、および電子回路200U、200V、200Wの個別の動作は、第1の実施形態、第2の実施形態での説明と同様であるため、説明を省略する。なお、電子回路200U、200V、200Wは、第2の実施形態の変形例である電子回路250および260を適用可能である。
【0098】
以上、本実施形態を説明した。本実施形態の駆動システムは、三相インバータを構成する6個のスイッチング素子それぞれのゲート端子に供給する電流を、1つの基準電流源を生成する電流によって設定することができる。これにより、スイッチング素子におけるEMIとスイッチング損失とのトレードオフを調整することが容易となる。また、複数の電子回路において、基準電流源およびI-V変換回路を共用することができる。これにより、駆動システムの回路規模を小さくすることができ、小型化、コストの低減、消費電力の削減を行うことができる。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規の実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0100】
10:基準電流源
20:電流-電圧変換回路
30:電流調整回路
100:電子回路
110:電圧-電圧変換回路
120:電圧-電流変換回路
130:生成回路
200、200U、200V、200W:電子回路
210:電圧-電圧変換回路
220:電圧-電流変換回路
230:生成回路
231a、231b、231c:レベルシフト回路
232:取得回路
250:電子回路
260:電子回路
図1
図2
図3
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図5
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図8