(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】保持装置、リソグラフィ装置及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240529BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
G03F7/20 501
H01L21/68 P
(21)【出願番号】P 2020098883
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健士
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-191755(JP,A)
【文献】特開2017-175071(JP,A)
【文献】特開2015-222778(JP,A)
【文献】実開平01-026648(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24
G03F 9/00-9/02
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を保持する保持装置であって、
前記物体を真空吸着するための吸着部と、
前記吸着部に接続する複数の第1ラインのそれぞれに対応して設けられ、前記複数の第1ラインを介して前記吸着部に供給される
減圧された気体を生成する複数の生成部と、
前記複数の生成部のそれぞれに接続する複数の第2ラインを介して、前記複数の生成部に圧縮エアを供給するポンプと、
前記複数の第2ラインのそれぞれに接続する複数の接続ラインと、前記複数の接続ラインを統合する統合ラインとを含む第3ラインと、
前記統合ラインに設けられ、前記統合ライン
の開
閉を制御する制御弁と、
前記複数の接続ラインのそれぞれに設けられ、前記複数の第2ラインのうちの1つのラインに存在する前記圧縮エアが前記第3ラインを介して前記複数の第2ラインのうちの他のラインに流入することを抑制する複数の逆止弁と、
を有することを特徴とする保持装置。
【請求項2】
前記複数の生成部のそれぞれと前記ポンプとの間に設けられ、前記複数の第2ラインのそれぞれを開閉することによって、前記ポンプから前記複数の生成部への前記圧縮エアの供給、及び、前記ポンプから前記複数の生成部への前記圧縮エアの供給の停止を制御する複数のバルブを更に有することを特徴とする請求項
1に記載の保持装置。
【請求項3】
前記制御弁及び前記複数のバルブを制御する制御部を更に有し、
前記制御部は、
前記物体を前記吸着部で真空吸着する場合には、前記統合ラインを閉じて前記複数の第2ラインを開くように、前記制御弁及び前記複数のバルブを制御し、
前記吸着部による前記物体の真空吸着を解除する場合には、前記統合ラインを開けて前記複数の第2ラインを閉じるように、前記制御弁及び前記複数のバルブを制御することを特徴とする請求項
2に記載の保持装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数の第2ラインのそれぞれの開閉が独立して制御されるように、前記複数のバルブを個別に制御することを特徴とする請求項
3に記載の保持装置。
【請求項5】
前記複数の生成部のそれぞれは、前記ポンプから供給された前記圧縮エアを排出することで前記
減圧された気体を生成するエジェクタを含むことを特徴とする請求項1乃至
4のうちいずれか1項に記載の保持装置。
【請求項6】
前記吸着部は、前記物体が載置されて前記物体を真空吸着する吸着部材を含み、
前記吸着部材には、前記複数の第1ラインのそれぞれと接続する複数の吸着孔が設けられていることを特徴とする請求項1乃至
5のうちいずれか1項に記載の保持装置。
【請求項7】
前記吸着部は、前記物体がそれぞれ載置されて前記物体をそれぞれ真空吸着する複数の吸着部材を含み、
前記複数の吸着部材のそれぞれには、前記複数の第1ラインのうちの少なくとも1つのラインと接続する吸着孔が設けられていることを特徴とする請求項1乃至
5のうちいずれか1項に記載の保持装置。
【請求項8】
基板にパターンを形成するリソグラフィ装置であって、
前記基板を物体として保持する請求項1乃至
7のうちいずれか1項に記載の保持装置を有することを特徴とするリソグラフィ装置。
【請求項9】
前記保持装置に保持された前記基板に原版のパターンを投影する投影光学系を有することを特徴とする請求項
8に記載のリソグラフィ装置。
【請求項10】
請求項
8又は
9に記載のリソグラフィ装置を用いて基板にパターンを形成する工程と、
前記工程で前記パターンが形成された前記基板を処理する工程と、
処理された前記基板から物品を製造する工程と、
を有することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持装置、リソグラフィ装置及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原版(レチクル又はマスク)を照明光学系で照明し、原版のパターンを投影光学系を介して基板(ウエハ)に投影する露光装置が従来から用いられている。露光装置に用いられる基板保持装置(ステージ)においては、近年の基板のサイズの大型化に伴って基板吸着用の系統数が増加する傾向にあり、基板の反り(形状)への対策として基板をエリアごとに吸着する分割吸着方式が採用されている。
【0003】
基板保持装置は、一般的に、基板吸着用に真空エア及び真空発生装置で生成した真空エアを用いている場合が多い(特許文献1及び2参照)。この場合、真空エアや真空発生装置への圧縮エアは、吸着制御部から基板吸着部又は真空発生装置に供給され、吸着制御部内の供給弁で真空エアや圧縮エアの供給又は停止を行うことで基板吸着部に載置された基板に対する真空吸着又は真空開放の制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平5-39798号公報
【文献】特開平11-340305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、基板に対する真空吸着を開放する際に、吸着制御部で真空エアや圧縮エアの供給を停止しても、ステージと吸着制御部との間のチューブに残存する真空エアや圧縮エアが基板吸着部に供給され続ける。このため、基板吸着部での真空開放に時間を要し、生産性を低下させる要因となる。また、真空開放に要する時間を短くするために各分割吸着系統に大気開放弁を設けることも考えられるが、大気開放弁の増加によるステージ及び配管ユニットの大型化やコスト増大が課題となる。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、物体を真空吸着する吸着部での真空開放に要する時間を短縮して生産性を向上するのに有利な技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての保持装置は、物体を保持する保持装置であって、前記物体を真空吸着するための吸着部と、前記吸着部に接続する複数の第1ラインのそれぞれに対応して設けられ、前記複数の第1ラインを介して前記吸着部に供給される減圧された気体を生成する複数の生成部と、前記複数の生成部のそれぞれに接続する複数の第2ラインを介して、前記複数の生成部に圧縮エアを供給するポンプと、前記複数の第2ラインのそれぞれに接続する複数の接続ラインと、前記複数の接続ラインを統合する統合ラインとを含む第3ラインと、前記統合ラインに設けられ、前記統合ラインの開閉を制御する制御弁と、前記複数の接続ラインのそれぞれに設けられ、前記複数の第2ラインのうちの1つのラインに存在する前記圧縮エアが前記第3ラインを介して前記複数の第2ラインのうちの他のラインに流入することを抑制する複数の逆止弁と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、物体を真空吸着する吸着部での真空開放に要する時間を短縮して生産性を向上するのに有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一側面としての露光装置の構成を示す概略図である。
【
図2】吸着部の具体的な構成の一例を示す図である。
【
図3】第1実施形態における保持装置の構成を示す図である。
【
図4】第1実施形態における保持装置の構成を示す図である。
【
図5】第1実施形態における保持装置の構成を示す図である。
【
図6】第2実施形態における保持装置の構成を示す図である。
【
図7】第2実施形態における保持装置の構成を示す図である。
【
図8】第2実施形態における保持装置の構成を示す図である。
【
図9】第3実施形態における保持装置の構成を示す図である。
【
図10】第3実施形態における保持装置の構成を示す図である。
【
図11】第3実施形態における保持装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。更に、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
図1は、本発明の一側面としての露光装置100の構成を示す概略図である。露光装置100は、半導体デバイスや液晶表示素子の製造工程であるリソグラフィ工程に採用され、原版を用いて基板にパターンを形成するリソグラフィ装置である。露光装置100は、原版であるレチクル(マスク)Rを介して基板Wを露光して、レチクルRのパターンを基板Wに転写する露光処理を行う。露光装置100には、ステップ・アンド・スキャン方式、ステップ・アンド・リピート方式、その他の露光方式を採用することができる。なお、本明細書及び添付図面では、基板Wの表面に平行な方向をXY平面となるXYZ座標系で方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸及びZ軸のそれぞれに平行な方向をX方向、Y方向及びZ方向とする。
【0013】
露光装置100は、光源110からの光でレチクルRを照明する照明光学系120と、レチクルRに形成されたパターンを基板Wに投影する投影光学系130と、物体としての基板Wを保持する保持装置200と、制御部150と、を有する。
【0014】
光源110は、波長約365nmの水銀ランプや波長約248nmのKrFエキシマレーザ、波長約193nmのArFエキシマレーザなどのエキシマレーザなどを含み、複数の波長帯域の光を露光光として射出(出力)する。
【0015】
照明光学系120は、遮光板121と、ハーフミラー122と、フォトセンサ123と、ミラー124と、整形光学系(不図示)と、オプティカルインテグレータ(不図示)と、を含む。光源110から射出された光は、整形光学系を介して所定の形状に整形され、オプティカルインテグレータに入射する。オプティカルインテグレータは、レチクルRを均一な照度分布で照明するための多数の2次光源を形成する。レチクルRは、その表面に、基板Wに転写すべきパターン(例えば、デバイスの回路パターン)が形成されている。遮光板121は、照明光学系120の光路上に配置され、レチクル上に任意の照明領域を規定(形成)する。ハーフミラー122は、照明光学系120の光路上に配置され、レチクルRを照明する露光光の一部を反射する(取り出す)。フォトセンサ123は、ハーフミラー122で反射される光の光路上に配置され、制御部150に対して、露光光の強度(露光エネルギー)に対応した信号を出力する。制御部150は、フォトセンサ123から出力される信号に基づいて、遮光板121などを制御する。
【0016】
投影光学系130は、屈折光学系又はカタディオプトリック光学系などであって、レチクルRのパターンを倍率β(例えば、β=1/2)で縮小し、レジスト(感光剤)が塗布された基板W(のショット領域)に投影(結像)する。投影光学系130は、例えば、光学素子131と、開口絞り132と、を含む。第1駆動部101は、制御部150の制御下において、投影光学系130の光軸に沿った方向(Z軸方向)に光学素子131を駆動する(移動させる)。光学素子131を駆動することで、投影光学系130の諸収差の増大を抑制しながら、投影倍率を良好に維持し、歪曲誤差を低減することができる。開口絞り132は、投影光学系130の瞳面(レチクルRに対するフーリエ変換面)に配置される。開口絞り132は、円形状の開口を有する。第2駆動部102は、制御部150の制御下において、開口絞り132の開口の直径を調整(制御)する。
【0017】
保持装置200は、ステージ140と、吸着部160と、吸着制御部170とを含み、本実施形態では、基板Wを保持する保持機構として具現化される。
【0018】
ステージ140は、吸着部160を支持して移動可能なステージである。ステージ140は、第3駆動部103によって、6自由度に関して制御され、基板Wを位置決めする。ここで、6自由度は、XYZ座標系の各軸に沿った並進自由度と、各軸の周りの回転自由度とを含む。
【0019】
XY平面におけるステージ140の位置は、ステージ140に固定されたミラー141までの距離をレーザ干渉計142で計測することで得られる。ステージ140と基板Wとの位置関係は、アライメント計測系104で計測される。
【0020】
基板Wのフォーカスずれは、投光光学系105と検出光学系106とを含むフォーカス計測系FMで計測される。投光光学系105は、基板Wに塗布されたレジストを感光させない光を投光する。検出光学系106は、基板Wで反射された光を検出する。検出光学系106には、基板Wで反射された光に対応させて複数の受光素子が配置されている。複数の受光素子の各受光面は、結像光学系を介して、基板Wで反射される光の各反射点と略共役となるように構成されている。従って、基板Wのフォーカスずれは、検出光学系106において、受光素子(受光面)に入射する光の位置ずれとして計測される。
【0021】
吸着部160は、ステージ140に支持されている。吸着部160は、吸着制御部170の制御下において、基板Wを真空吸着する(保持する)。なお、本実施形態では、吸着制御部170が制御部150とは別に設けられているが、これに限定されるものではない。例えば、制御部150が吸着制御部170の機能を有していてもよい。
【0022】
制御部150は、CPUやメモリなどを含む情報処理装置(コンピュータ)で構成され、記憶部152に記憶されたプログラムに従って、露光装置100の全体を制御する。制御部150は、露光装置100の各部を制御して、基板を露光して基板上の各ショット領域にレチクルRのパターンを転写する露光処理や露光処理に関連する各種の処理を行う。
【0023】
図2を参照して、吸着部160の具体的な構成を説明する。吸着部160は、
図2に示すように、境界21、22及び23で区分(分割)された吸着領域11、12及び13を含む。また、吸着部160には、吸着領域11、12及び13のエアを排出することで基板Wを真空吸着する吸着孔31、32及び33と、ピン昇降孔41、42及び43とが吸着部160を貫通して(即ち、貫通孔として)設けられている。ピン昇降孔41乃至43は、吸着部160と基板搬送ハンド(不図示)との間で基板Wの搬送(受け渡し)をする際に、昇降ピン(不図示)を昇降させるための開口である。基板搬送ハンドは、ピン昇降孔41乃至43から上昇した昇降ピンに基板Wを載置する。そして、基板搬送ハンドが退避してから、昇降ピンを下降させることで基板Wが吸着部160の上に載置される。
【0024】
以下、保持装置200の具体的な構成や機能について、各実施形態で説明する。
【0025】
<第1実施形態>
図3及び
図4は、第1実施形態における保持装置200Aの構成、特に、保持装置200Aの配管の一例を示す図である。保持装置200Aは、保持装置200として露光装置100に組み込まれ、基板Wを保持する保持機構である。
【0026】
図3は、保持装置200Aが基板Wを保持している、即ち、吸着部160が基板Wを真空吸着しているときの状態を示している。吸着部160の吸着領域11乃至13のそれぞれには、基板Wを真空吸着する際に基板Wを支持する多数の小突起部が設けられている。
【0027】
吸着部160に設けられた複数の吸着孔31、32及び33のそれぞれは、吸着孔31、32及び33のそれぞれ(吸着部160)に接続する複数の第1ラインL1を介して、複数の真空生成部E1、E2及びE3に接続されている。真空生成部E1乃至E3は、本実施形態では、第1ラインL1のそれぞれに対応して設けられ、第1ラインL1を介して吸着部160(吸着孔31乃至33)に供給される真空エアを生成する真空生成装置である。真空生成部E1乃至E3のそれぞれは、本実施形態では、エジェクタで構成されている。
【0028】
複数の真空生成部E1、E2及びE3には、複数の第2ラインL2が接続され、かかる複数の第2ラインL2を介して、真空生成部E1乃至E3は、真空生成部E1乃至E3に圧縮エアを供給する圧縮エアポンプ173に接続されている。また、複数の第2ラインL2のそれぞれにおいて、複数の真空生成部E1、E2及びE3のそれぞれと圧縮エアポンプ173との間には、電磁弁をそれぞれ含む複数のエアオペレートバルブAV1、AV2及びAV3が設けられている。エアオペレートバルブAV1乃至AV3は、電磁弁で第2ラインL2を開閉することによって、圧縮エアポンプ173から真空生成部E1乃至E3への圧縮ガスの供給、及び、かかる圧縮ガスの供給の停止を制御するためのバルブである。エアオペレートバルブAV1乃至AV3は、本実施形態では、分岐用のマニホールド171を介して、圧縮エアポンプ173に接続されている。
【0029】
複数の第2ラインL2において、真空生成部E1乃至E3のそれぞれとエアオペレートバルブAV1乃至AV3のそれぞれとの間には、複数の第2ラインL2のそれぞれから分岐する分岐路として第3ラインL3が接続されている。第3ラインL3は、複数の第2ラインL2のそれぞれに接続する複数の接続ラインCLと、かかる複数の接続ラインCLを統合する統合ラインMLとを含む。また、統合ラインMLには、統合ラインMLを開閉することによって、複数の接続ラインCLを介して複数の第2ラインL2の大気開放を制御する制御弁として、電磁弁701が設けられている。更に、複数の接続ラインCLのそれぞれには、複数の第2ラインL2のうち、1つのラインに存在する圧縮エアが第3ラインL3を介して他のラインに流入することを抑制(防止)する複数の逆止弁CV1、CV2及びCV3が設けられている。
【0030】
基板Wを吸着部160で真空吸着する場合、吸着制御部170は、複数のラインL2を開くように、エアオペレートバルブAV1乃至AV3(電磁弁)をOPEN状態に制御する。圧縮エアポンプ173から真空生成部E1乃至E3に供給された圧縮エアを真空生成部E1乃至E3のそれぞれからステージ140の内部に排出することで、真空生成部E1乃至E3のそれぞれで真空エアが生成される。真空生成部E1乃至E3のそれぞれで生成された真空エアは、第1ラインL1を介して、吸着孔31乃至33のそれぞれに供給され、吸着部160で基板Wが真空吸着される。
【0031】
真空生成部E1乃至E3とエアオペレートバルブAV1乃至AV3との間には、上述したように、本実施形態では排気ポートとして機能する電磁弁701に接続する第3ラインL3(分岐路)が設けられている。基板Wを吸着部160で真空吸着する場合、吸着制御部170は、統合ラインML(第3ラインL3)を閉じるように、電磁弁701をCLOSE状態に制御する。これにより、複数の第2ラインL2から第3ラインL3に流入した(流れ込んだ)圧縮エアが封止される。また、第3ラインL3に流入した圧縮エアが電磁弁701を介して第2ラインL2に戻ること(即ち、他の排出口に繋がる系統への回り込み)は、接続ラインCLに設けられた逆止弁CV1乃至CV3によって防止されている。
【0032】
図4は、保持装置200Aが基板Wを保持していない、即ち、吸着部160による基板Wの真空吸着を解除して、例えば、基板Wを搬送しているときの状態を示している。吸着部160による基板Wの真空吸着を解除する場合、吸着制御部170は、複数の第2ラインL2を閉じるように、エアオペレートバルブAV1乃至AV3(電磁弁)をCLOSE状態に制御する。これにより、圧縮エアポンプ173から真空生成部E1乃至E3への圧縮エアの供給が停止される。同時に、吸着制御部170は、統合ラインMLを開けるように、排気ポートとなる電磁弁701をOPEN状態に制御する。これにより、真空生成部E1乃至E3のそれぞれとエアオペレートバルブAV1乃至AV3のそれぞれとの間の第2ラインL2に残存している圧縮エアは、電磁弁701に繋がる第3ラインL3から電磁弁701に流れ込み、電磁弁701から排出される。従って、圧縮エアポンプ173から真空生成部E1乃至E3への圧縮エアの供給が即座に停止され、吸着部160での真空開放に要する時間を短縮することができる。このため、本実施形態の保持装置200Aを有する露光装置100によれば、基板Wの受け渡しに要する時間が短縮され、生産性(スループット)の向上に有利となる。
【0033】
なお、本実施形態では、吸着制御部170は、複数の第2ラインL2の開閉をまとめて制御する、即ち、複数のエアオペレートバルブAV1乃至AV3の状態が全て同じ状態となるように制御しているが、これに限定されるものではない。例えば、吸着制御部170は、
図5に示すように、複数の第2ラインL2のそれぞれの開閉が独立して制御されるように、複数のエアオペレートバルブAV1乃至AV3の状態を個別に制御してもよい。
図5は、エアオペレートバルブAV1のみをOPEN状態に制御して真空生成部E1のみに圧縮エアを供給し、吸着部160に設けられた吸着孔31のみで基板Wを真空吸着している状態を示している。
【0034】
<第2実施形態>
図6及び
図7は、第2実施形態における保持装置200Bの構成、特に、保持装置200Bの配管の一例を示す図である。保持装置200Bは、保持装置200として露光装置100に組み込まれ、基板Wを保持する保持機構である。
【0035】
図6は、保持装置200Bが基板Wを保持している、即ち、吸着部160が基板Wを真空吸着しているときの状態を示している。複数の第1ラインL1において、吸着部160に設けられた吸着孔31乃至33のそれぞれと真空生成部E1乃至E3のそれぞれとの間には、複数の第1ラインL1のそれぞれから分岐する分岐路として第3ラインL3が接続されている。第3ラインL3は、複数の第1ラインL1のそれぞれに接続する複数の接続ラインCLと、かかる複数の接続ラインCLを統合する統合ラインMLとを含む。また、統合ラインMLには、統合ラインMLを開閉することによって、複数の接続ラインCLを介して複数の第1ラインL1の大気開放を制御する制御弁として、電磁弁801が設けられている。更に、複数の接続ラインCLのそれぞれには、複数の第1ラインL1のうち、1つのラインに存在する真空エアが第3ラインL3を介して他のラインに流入することを抑制(防止)する複数の逆止弁CV1、CV2及びCV3が設けられている。
【0036】
基板Wを吸着部160で真空吸着する場合、吸着制御部170は、複数の第2ラインL2を開くように、エアオペレートバルブAV1乃至AV3(電磁弁)をOPEN状態に制御する。圧縮エアポンプ173から真空生成部E1乃至E3に供給された圧縮エアを真空生成部E1乃至E3のそれぞれからステージ140の内部に排出することで、真空生成部E1乃至E3のそれぞれで真空エアが生成される。真空生成部E1乃至E3のそれぞれで生成された真空エアは、第1ラインL1を介して、吸着孔31乃至33のそれぞれに供給され、吸着部160で基板Wが真空吸着される。
【0037】
吸着部160に設けられた吸着孔31乃至33と真空生成部E1乃至E3との間には、上述したように、本実施形態では大気開放ポートとして機能する電磁弁801に接続する第3ラインL3(分岐路)が設けられている。基板Wを吸着部160で真空吸着する場合、吸着制御部170は、統合ラインML(第3ラインL3)を閉じるように、電磁弁801をCLOSE状態に制御する。これにより、複数の第1ラインL1から第3ラインL3に流入した(流れ込んだ)真空エアが封止される。また、第3ラインL3に流入した真空エアが電磁弁801を介して第1ラインL1に戻ること(即ち、他の排出口に繋がる系統への回り込み)は、接続ラインCLに設けられた逆止弁CV1乃至CV3によって防止されている。
【0038】
図7は、保持装置200Bが基板Wを保持していない、即ち、吸着部160による基板Wの真空吸着を解除して、例えば、基板Wを搬送しているときの状態を示している。吸着部160による基板Wの真空吸着を解除する場合、吸着制御部170は、複数の第2ラインL2を閉じるように、エアオペレートバルブAV1乃至AV3(電磁弁)をCLOSE状態に制御する。これにより、圧縮エアポンプ173から真空生成部E1乃至E3への圧縮エアの供給が停止される。同時に、吸着制御部170は、統合ラインMLを開けるように、大気開放ポートとなる電磁弁801をOPEN状態に制御する。これにより、電磁弁801から、第3ラインL3を介して、吸着孔31乃至33のそれぞれと真空生成部E1乃至E3のそれぞれとの間の複数の第1ラインL1に大気が入り込む。一方、真空生成部E1乃至E3のそれぞれとエアオペレートバルブAV1乃至AV3のそれぞれとの間の複数の第2ラインL2に残存している圧縮エアは、真空生成部E1乃至E3のそれぞれからステージ140の内部に排出される。このため、吸着孔31乃至33のそれぞれと真空生成部E1乃至E3のそれぞれとの間の複数の第1ラインL1には、一時的に(即ち、第2ラインL2に残存している圧縮エアが排出されるまでは)、真空生成部E1乃至E3から真空エアが供給される。但し、吸着孔31乃至33のそれぞれと真空生成部E1乃至E3のそれぞれとの間の複数の第1ラインL1には、第3ラインL3から大気も入り込んでいるため、複数の第1ラインL1における真空状態を大気開放することができる。従って、吸着部160での真空開放に要する時間を短縮することができる。このため、本実施形態の保持装置200Bを有する露光装置100によれば、基板Wの受け渡しに要する時間が短縮され、生産性(スループット)の向上に有利となる。
【0039】
なお、本実施形態では、吸着制御部170は、複数の第2ラインL2の開閉をまとめて制御する、即ち、複数のエアオペレートバルブAV1乃至AV3の状態が全て同じ状態となるように制御しているが、これに限定されるものではない。例えば、吸着制御部170は、
図8に示すように、複数の第2ラインL2のそれぞれの開閉が独立して制御されるように、複数のエアオペレートバルブAV1乃至AV3の状態を個別に制御してもよい。
図8は、エアオペレートバルブAV1のみをOPEN状態に制御して真空生成部E1のみに圧縮エアを供給し、吸着部160に設けられた吸着孔31のみで基板Wを真空吸着している状態を示している。
【0040】
<第3実施形態>
図9及び
図10は、第3実施形態における保持装置200Cの構成、特に、保持装置200Cの配管の一例を示す図である。保持装置200Cは、保持装置200として露光装置100に組み込まれ、基板Wを保持する保持機構である。
【0041】
図9は、保持装置200Cが基板Wを保持している、即ち、吸着部160が基板Wを真空吸着しているときの状態を示している。吸着部160に設けられた複数の吸着孔31、32及び33のそれぞれは、吸着孔31、32及び33のそれぞれ(吸着部160)に接続する複数の第1ラインL1を介して、真空ポンプ273に接続されている。真空ポンプ273は、複数の第1ラインL1を排気して複数の吸着孔31乃至33のそれぞれ(吸着部160)に供給される真空エアを生成する。複数の第1ラインL1のそれぞれにおいて、吸着部160と真空ポンプ273との間には、複数の電磁弁SV1、SV2及びSV3が設けられている。電磁弁SV1乃至SV3は、複数の第1ラインL1のそれぞれを開閉することによって、真空ポンプ273による複数の第1ラインL1の排気、及び、真空ポンプ273による複数の第1ラインL1の排気の停止を制御するための弁である。電磁弁SV1乃至SV3は、本実施形態では、3つ以上のポートを含み、分岐用のマニホールド171を介して、真空ポンプ273に接続されている。
【0042】
複数の第1ラインL1において、吸着部160に設けられた吸着孔31乃至33のそれぞれと電磁弁SV1乃至SV3のそれぞれとの間には、複数の第1ラインL1のそれぞれから分岐する分岐路として第2ラインL22が接続されている。第2ラインL22は、複数の第1ラインL1のそれぞれに接続する複数の接続ラインCL1と、かかる複数の接続ラインCL1を統合する統合ラインML1とを含む。また、統合ラインML1には、統合ラインML1を開閉することによって、複数の接続ラインCL1を介して複数の第1ラインL1の大気開放を制御する制御弁として、電磁弁801が設けられている。更に、複数の接続ラインCL1のそれぞれには、複数の第1ラインL1のうち、1つのラインに存在する真空エアが第2ラインL22を介して他のラインに流入することを抑制(防止)する複数の逆止弁CV1、CV2及びCV3が設けられている。
【0043】
基板Wを吸着部160で真空吸着する場合、吸着制御部170は、複数の第1ラインL1を開くように、電磁弁SV1乃至SV3をOPEN状態に制御する。吸着部160に設けられた吸着孔31乃至33と電磁弁SV1乃至SV3との間には、上述したように、本実施形態では大気開放ポートとして機能する電磁弁801に接続する第3ラインL3(分岐路)が設けられている。基板Wを吸着部160で真空吸着する場合、吸着制御部170は、統合ラインML1(第2ラインL22)を閉じるように、電磁弁801をCLOSE状態に制御する。これにより、複数の第1ラインL1から第2ラインL22に流入した(流れ込んだ)真空エアが封止される。また、第2ラインL22に流入した真空エアが電磁弁801を介して第1ラインL1に戻ること(即ち、他の排出口に繋がる系統への回り込み)は、接続ラインCL1に設けられた逆止弁CV1乃至CV3によって防止されている。従って、第1ラインL1を介して、真空エアが吸着孔31乃至33のそれぞれに供給され、吸着部160で基板Wが真空吸着される。
【0044】
図10は、保持装置200Cが基板Wを保持していない、即ち、吸着部160による基板Wの真空吸着を解除して、例えば、基板Wを搬送しているときの状態を示している。吸着部160による基板Wの真空吸着を解除する場合、吸着制御部170は、複数の第1ラインL1を閉じるように、電磁弁SV1乃至SV3をCLOSE状態に制御する。これにより、真空ポンプ273から吸着孔31乃至33の真空エアの供給が停止される。更に、電磁弁SV1乃至SV3の別のポートから大気が入り込むことで、吸着孔31乃至33と電磁弁SV1乃至SV3との間の複数の第1ラインL1が真空状態から大気開放される。同時に、吸着制御部170は、統合ラインML1を開けるように、大気開放ポートとなる電磁弁801をOPEN状態に制御する。これにより、電磁弁801から、第2ラインL22を介して、吸着孔31乃至33のそれぞれと電磁弁SV1乃至SV3のそれぞれとの間の複数の第1ラインL1に大気が入り込む。電磁弁SV1乃至SV3から入り込む大気に加えて、第2ラインL22からも大気が入り込むことで、吸着部160での真空開放に要する時間を短縮することができる。このため、本実施形態の保持装置200Cを有する露光装置100によれば、基板Wの受け渡しに要する時間が短縮され、生産性(スループット)の向上に有利となる。
【0045】
なお、本実施形態では、吸着制御部170は、複数の第1ラインL1の開閉をまとめて制御する、即ち、複数の電磁弁SV1乃至SV3の状態が全て同じ状態となるように制御しているが、これに限定されるものではない。例えば、吸着制御部170は、
図11に示すように、複数の第1ラインL1のそれぞれの開閉が独立して制御されるように、複数の電磁弁SV1乃至SV3の状態を個別に制御してもよい。
図11は、電磁弁SV1のみをOPEN状態に制御して、吸着部160に設けられた吸着孔31のみで基板Wを真空吸着している状態を示している。
【0046】
上述した実施形態では、吸着部160は、1つの吸着部材、具体的には、基板Wが載置されて基板Wを真空吸着する吸着部材(所謂、チャック)で構成され、かかる吸着部材に、複数のラインL1のそれぞれと接続する複数の吸着孔31乃至33が設けられている。但し、吸着部160は、複数の吸着部材で構成されていてもよい。この場合、吸着部材のそれぞれには、複数のラインL1のそれぞれと接続する複数の吸着孔31乃至33が設けられていてもよいし、複数のラインL1のうちの少なくとも1つのラインと接続する吸着孔が設けられていてもよい。
【0047】
本発明の実施形態における物品の製造方法は、例えば、デバイス(半導体素子、磁気記憶媒体、液晶表示素子など)などの物品を製造するのに好適である。かかる製造方法は、露光装置100を用いて、基板にパターンを形成する工程と、パターンが形成された基板を処理する工程と、処理された基板から物品を製造する工程とを含む。また、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージングなど)を含みうる。本実施形態における物品の製造方法は、従来に比べて、物品の性能、品質、生産性及び生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0048】
なお、本発明は、リソグラフィ装置を露光装置に限定するものではなく、例えば、インプリント装置にも適用することができる。インプリント装置は、基板上に供給(配置)されたインプリント材と型(原版)とを接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型のパターンが転写された硬化物のパターンを形成する。
【0049】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0050】
100:露光装置 140:ステージ 160:吸着部 170:吸着制御部 173:圧縮エアポンプ 200:保持装置 701:電磁弁 W:基板 L1:第1ライン L2:第2ライン L3:第3ライン CL:接続ライン ML:統合ライン E1、E2、E3:真空生成部 CV1、CV2、CV3:逆止弁