(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】有機シラノール化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/08 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
C07F7/08 B
(21)【出願番号】P 2020104809
(22)【出願日】2020-06-17
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【氏名又は名称】神 紘一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 光武
(72)【発明者】
【氏名】八木ケ谷 謙一
【審査官】池上 佳菜子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/176425(WO,A1)
【文献】特表平09-501704(JP,A)
【文献】特開2000-186093(JP,A)
【文献】特開2017-019969(JP,A)
【文献】Steffen, Patricia et al.,Catalytic and Stereoselective ortho-Lithiation of a Ferrocene Derivative,Angewandte Chemie, International Edition,2013年07月23日,vol.52, no.37,pp.9836-9840
【文献】Yactine, Bashim et al.,Do-it-yourself functionaized silicones part2: synthesis by ring opening polymerization of commercial cyclosiloxanes,Polymers for Advanced Technologies,2009年07月16日,vol.21, no.2,pp.139-149
【文献】Andres, Roman et al.,Carbosilane dendrons functionalized at their focal point,European Journal of Inorganic Chemistry,2005年08月04日,no.18,pp.3742-3749
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
(式(1)中、R
1~R
3は各々独立に置換されていてもよい炭素数1~10個の炭化水素基であり、R
4は-OSiR
5R
6R
7(R
5~R
7は各々独立に置換されていてもよい炭素数1~10個の炭化水素基である。)、-OR
8(R
8は置換されていても良い炭素数1~10個の炭化水素基である。)、またはX(Xはハロゲン原子である。))
で表されるシリル化合物と、
下記一般式(2):
【化2】
(式(2)中、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、nは、Mがアルカリ金属の場合は1、アルカリ土類金属の場合は2である。)
で表される金属水酸化物との反応において、
HSP値が18以上である非プロトン性極性溶媒を利用
し
前記R
1
~R
3
の各々の炭素数が1~10個であることを特徴とする、
下記一般式(3):
【化3】
(式(3)中、R
1~R
3は一般式(1)のR
1~R
3であり、M、nは一般式(2)のM、nである。)
で表される有機シラノール化合物の製造方法。
【請求項2】
前記非プロトン性溶媒が、2-メチルテトラヒドロフラン、酢酸エチル、1-メチル-2-ピロリドン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、アニソール、アセトン、ベンゾニトリル、ピペリジン、1,4-ジオキサン、プロピオニトリル、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルアセトアミド、ニトロベンゼン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、およびジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(2)において、Mがアルカリ金属である、請求項1または2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機シラノール化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機シラノールの金属塩(本明細書において、「有機シラノール化合物」という。)は従来、対応するシラノールと、金属単体または金属の水酸化物との反応により合成されてきた(例えば、非特許文献1)。しかしながら、この方法は、原料のシラノールが一般的に不安定であることから、比較的高価であり、有機シラノール化合物を製造するコストを高くする傾向にあった。また、金属単体を用いる場合、水素を発生することから、改善の余地があった。
【0003】
比較的安定で安価なジシロキサン化合物と、金属の水酸化物とを原料とする有機シラノール化合物の合成方法が報告されている(例えば、非特許文献2)。しかしながら、該方法は、下記に示す平衡反応であるため、目的物である有機シラノール化合物の収率が低い傾向にあった。
【化1】
【0004】
比較的安定で安価なジシロキサン化合物と、金属の水酸化物とを原料とする有機シラノール化合物の製造方法において、脱水剤として水素化ナトリウムを添加する方法が開示されている(特許文献1)。この方法は、水素化ナトリウムにより、副生する水を除去し、平衡を有機シラノール化合物が生成する側に偏らせ、収率よく有機シラノール化合物を製造する方法と推察される。しかしながら、該方法では、水素化ナトリウムと水が反応し、水素を発生することがあり、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Journal of American Chemical Society 68巻(1946年)2282-2284貢
【文献】Croatica Chemica Acta 80巻(2007年)109-115貢
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みなされたものであり、水素の発生を抑え、反応時間が短く、収率が高い有機シラノール化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、HSP値が18以上である非プロトン性極性溶媒を利用し、シリル化合物と、金属水酸化物とを反応させ、有機シラノール化合物を製造する方法は、水素の発生を抑えて、反応時間が短く、収率が高いことを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
下記一般式(1):
【化2】
(式(1)中、R
1~R
3は各々独立に置換されていてもよい炭素数1~10個の炭化水素基であり、R
4は-OSiR
5R
6R
7(R
5~R
7は各々独立に置換されていてもよい炭素数1~10個の炭化水素基である。)、-OR
8(R
8は置換されていてもよい炭素数1~10個の炭化水素基である。)、またはX(Xはハロゲン原子である。))
で表されるシリル化合物と、
下記一般式(2):
【化3】
(式(2)中、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、nは、Mがアルカリ金属の場合は1、アルカリ土類金属の場合は2である。)
で表される金属水酸化物との反応において、
HSP値が18以上である非プロトン性極性溶媒を利用
し
前記R
1
~R
3
の各々の炭素数が1~10個であることを特徴とする、
下記一般式(3):
【化4】
(式(3)中、R
1~R
3は一般式(1)のR
1~R
3であり、M、nは一般式(2)のM、nである。)
で表される有機シラノール化合物の製造方法。
[2]
前記非プロトン性溶媒が、2-メチルテトラヒドロフラン、酢酸エチル、1-メチル-2-ピロリドン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、アニソール、アセトン、ベンゾニトリル、ピペリジン、1,4-ジオキサン、プロピオニトリル、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルアセトアミド、ニトロベンゼン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、およびジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載の製造方法。
[3]
前記一般式(2)において、Mがアルカリ金属である、[1]または[2]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、有機シラノール化合物を、水素の発生を抑えて、反応時間が短く、収率が高く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0012】
本実施形態に係る製造方法は、下記一般式(1):
【化5】
(式(1)中、R
1~R
3は各々独立に置換されていてもよい炭素数1~10個の炭化水素基であり、R
4は-OSiR
5R
6R
7(R
5~R
7は各々独立に置換されていてもよい炭素数1~10個の炭化水素基である。)、-OR
8(R
8は置換されていてもよい炭素数1~10個の炭化水素基である。)、またはX(Xはハロゲン原子である。)、
で表されるシリル化合物と、
下記一般式(2):
【化6】
(式(2)中、Mはアルカリ金属、またはアルカリ土類金属であり、nは、Mがアルカリ金属の場合は1、アルカリ土類金属の場合は2である。)
で表される金属水酸化物との反応において、
HSP値が18以上である非プロトン性極性溶媒を利用することを特徴とする、
下記一般式(3):
【化7】
(式(3)中、R
1~R
3は上記一般式(1)と同じR
1~R
3であり、M、nは上記一般式(2)と同じM、nである。)
で表される有機シラノール化合物の製造方法である。
【0013】
本明細書において、上記一般式(1)で表されるシリル化合物を「化合物(1)」、上記一般式(2)で表される金属水酸化物を「化合物(2)」、上記一般式(3)で表される有機シラノール化合物を「化合物(3)」と称する場合がある。
【0014】
以下、上記シリル化合物、上記金属水酸化物、上記有機シラノール化合物、およびその他の成分の詳細について説明する。
【0015】
<シリル化合物(化合物(1))>
シリル化合物において、R1~R3は各々独立に置換されていてもよい炭素数1~10個の炭化水素基であり、R4は-OSiR5R6R7(R5~R7は各々独立に置換されていてもよい炭素数1~10個の炭化水素基である。)、-OR8(R8は炭素数1~10個の置換されていてもよい炭化水素基である。)、またはX(Xはハロゲン原子である。)である。
【0016】
R1~R3、R5~R8について「置換されていてもよい炭化水素基」とは、例えば、脂肪族炭化水素基、フェニル基等の芳香族炭化水素基、または炭化水素基中の水素原子がフッ素原子に置換されたトリフルオロメチル基等のフッ素置換炭化水素基等が挙げられる。
上記炭化水素基は、必要に応じて、官能基を有していてもよい。
このような官能基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、ニトリル基(-CN)、エーテル基(-O-)、カーボネート基(-OCO2-)、エステル基(-CO2-)、カルボニル基(-CO-)、スルフィド基(-S-)、スルホキシド基(-SO-)、スルホニル基(-SO2-)、およびウレタン基(-NHCO2-)等が挙げられる。
【0017】
R1~R3、R5~R8の炭素数は1~10個が好ましい。シリル化合物の入手が容易であり、製造コストをより抑制でき、経済性により優れる製造方法となる傾向にあることから、炭素数1~8個がより好ましい。化合物(1)と、化合物(2)との反応性がより高くなり、反応時間がより短くなる傾向にあることから、炭素数1~6個がさらに好ましい。
【0018】
R1~R3、R5~R8を具体的に例示するならば、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、1-メチルビニル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、およびフルオロメチル基等の脂肪族炭化水素基、ベンジル基、フェニル基、ニトリル置換フェニル基、およびフルオロ化フェニル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。入手が容易であり、製造コストをより抑制でき、経済性により優れる製造方法となる傾向にあることから、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ベンジル基、およびフェニル基がより好ましく、メチル基、エチル基、iso-プロピル基、tert-ブチル基、およびフェニル基がさらに好ましい。
【0019】
Xは、ハロゲン原子であれば特に限定されないが、入手が容易であり、製造コストをより抑制でき、経済性により優れる製造方法となる傾向にあることから、フッ素原子、および塩素原子がより好ましい。目的物である化合物(3)に含まれるハロゲン原子の量を低減でき、より高い純度の有機シラノール化合物を得られる傾向にあることから、フッ素原子がさらに好ましい。
【0020】
化合物(1)を具体的に例示するならば、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ヘキサイソプロピルジシロキサン、1,2-ジ(tert-ブチル)1,1,2,2-テトラメチルジシロキサン、ヘキサフェニルジシロキサン、メトキシトリメチルシラン、メトキシトリエチルシラン、メトキシトリイソプロピルシラン、メトキシ(tert-ブチル)ジメチルシラン、メトキシトリフェニルシラン、エトキシトリメチルシラン、エトキシトリエチルシラン、エトキシトリイソプロピルシラン、エトキシ(tert-ブチル)ジメチルシラン、エトキシトリフェニルシラン、トリメチルシリルフルオリド、トリエチルシリルフルオリド、トリイソプロピルシリルフルオリド、(tert-ブチル)ジメチルシリルフルオリド、トリフェニルシリルフルオリド、トリメチルシリルクロリド、トリエチルシリルクロリド、トリイソプロピルシリルクロリド、(tert-ブチル)ジメチルシリルクロリド、およびトリフェニルシリルクロリド等が挙げられる。
上記の中でも、入手が容易であり、製造コストをより抑制でき、経済性により優れる製造方法となる傾向にあることから、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサフェニルジシロキサン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、トリメチルシリルフルオリド、トリエチルシリルフルオリド、トリフェニルシリルフルオリド、トリメチルシリルクロリド、およびトリエチルシリルクロリドがより好ましい。同様の観点から、ヘキサメチルジシロキサン、メトキシトリメチルシラン、およびトリフェニルシリルフルオリドがさらに好ましい。
化合物(1)は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
<金属水酸化物(化合物(2))>
金属水酸化物を示す一般式(2)において、Mはアルカリ金属、またはアルカリ土類金属である。化合物(1)との反応性がより高くなり、反応時間がより短くなる傾向にあることから、アルカリ金属がより好ましい。アルカリ金属としては特に限定されないが、入手が容易であり、製造コストをより抑制でき、経済性により優れる製造方法となる傾向にあることから、リチウム、ナトリウム、およびカリウムがより好ましい。化合物(3)の収率がより高くなる傾向にあることから、ナトリウム、およびカリウムがさらに好ましい。
化合物(2)は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
<非プロトン性極性溶媒>
非プロトン性極性溶媒とは、プロトン供与性(水素原子をプロトンとして放つ性質)を有さない極性溶媒である(理化学辞典((株)岩波書店))参照)。本実施形態の有機シラノール化合物の製造方法には、溶媒として、上記非プロトン製極性溶媒のみを用いることが好ましい。
【0023】
「HSP値」は、以下の数式(4)で示されるHansen(ハンセン)の三次元溶解性パラメーター値である。以下において単位の表記は省略するが、単位は(MPa)0.5である。
HSP値=(δD
2+δP
2+δH
2)0.5 (4)
分散項δD:分子間の分散力によるエネルギー
極性項δP:分子間の双極子相互作用によるエネルギー
水素結合項δH:分子間の水素結合によるエネルギー
【0024】
HSP値は、例えば、Hansen Solubility Parameters: A User‘s Handbook,Second Edition(CRC Press)等の書籍や各種公知文献により得ることができる。また、書籍や公知文献からHSP値を得られない場合には、各種推算法(原子団寄与法、計算機シミュレーション等)を利用することができる。
【0025】
HSP値は、有機シラノール化合物の収率がより高くなる傾向にあることから、18以上であることが好ましく、同様の観点から、22以上であることがより好ましい。反応時間がより短くなり、有機シラノール化合物の収率がより高くなる傾向にあることから、HSP値は、24.0以上であることがより好ましく、24.5以上であることがさらに好ましく、25.0以上であることが特に好ましい。
【0026】
HSP値の上限は、一般的に入手可能な非プロトン性極性溶媒の有する値であれば特に限定されないが、入手が容易であり、製造コストをより抑制でき、経済性により優れる製造方法となる傾向にあることから、30以下であることが好ましい。反応時間がより短くなり、有機シラノール化合物の収率がより高くなる傾向にあることから、HSP値は27以下であることがより好ましい。
【0027】
HSP値が18以上である非プロトン性極性溶媒は、一般的に用いられる溶媒であれば特に限定されないが、具体的には、2-メチルテトラヒドロフラン(HSP値=18.1)、酢酸エチル(HSP値=18.2)、1-メチル-2-ピロリドン(HSP値=18.6)、テトラヒドロピラン(HSP値=18.6)、テトラヒドロフラン(HSP値=19.5)、アニソール(HSP値=19.5)、アセトン(HSP値=19.9)、ベンゾニトリル(HSP値=19.9)、ピペリジン(HSP値=20.2)、1,4-ジオキサン(HSP値=20.5)、プロピオニトリル(HSP値=21.7)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(HSP値=22.1)、N,N-ジメチルアセトアミド(HSP値=22.8)、ニトロベンゼン(HSP値=24.0)、アセトニトリル(HSP値=24.4)、N,N-ジメチルホルムアミド(HSP値=24.9)、ジメチルスルホキシド(HSP値=26.7)、およびプロピレンカーボネート(HSP値=27.2)等が例示される。なお、上記HSP値は、Hansen Solubility Parameters: A User‘s Handbook,Second Edition(CRC Press)から算出した。
上記の非プロトン性極性溶媒は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
HSP値が18以上であり、27以下である非プロトン性極性溶媒を用いることで、有機シラノール化合物の収率がより高くなる傾向にあることから、非プロトン性極性溶媒としては、2-メチルテトラヒドロフラン、酢酸エチル、1-メチル-2-ピロリドン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、アニソール、アセトン、ベンゾニトリル、ピペリジン、1,4-ジオキサン、プロピオニトリル、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルアセトアミド、ニトロベンゼン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、およびジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0029】
HSP値が22以上であり、27以下である非プロトン性極性溶媒を用いることで、有機シラノール化合物の収率がより高くなる傾向にあることから、非プロトン性極性溶媒としては、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルアセトアミド、ニトロベンゼン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、およびジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0030】
HSP値が24.5以上であり、27以下である非プロトン性極性溶媒を用いることで、反応時間がより短くなり、有機シラノール化合物の収率がより高くなる傾向にあることから、非プロトン性極性溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド、および/またはジメチルスルホキシドがさらに好ましい。
【0031】
<有機シラノール化合物(化合物(3))の製造>
シリル化合物と金属水酸化物とを反応させることにより、有機シラノール化合物を得ることができる。
シリル化合物と金属水酸化物とを反応させることにより、有機シラノール化合物が得られる詳細な理由は明らかではないが、下記に示すようにシリル化合物と金属水酸化物が反応することでシラノール(R
1R
2R
3SiOH)を形成し、シラノールと金属水酸化物とが反応することで、有機シラノール化合物と水とが生成すると推察される。
【化8】
【0032】
上述したように、シラノール(R1R2R3SiOH)と金属水酸化物との反応は平衡反応であるため、副生する水を脱水剤により除去することで、平衡を有機シラノール化合物が生成する側に偏らせ、反応時間をより短く、有機シラノール化合物の収率をより高くできる傾向がある。
【0033】
脱水剤は、一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、具体的には、水素化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、五酸化二リン、活性アルミナ、シリカゲル、およびモレキュラーシーブ等が挙げられる。これらは単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
脱水剤の中でも、水素の発生を抑えつつ有機シラノール化合物を製造でき、脱水能力がより高く、反応時間をより短く、有機シラノール化合物の収率をより高くできる傾向にあることから、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、五酸化二リン、活性アルミナ、およびモレキュラーシーブがより好ましい。同様の観点から、酸化カルシウム、およびモレキュラーシーブがさらに好ましい。
【0035】
シリル化合物と、金属水酸化物と、非プロトン性極性溶媒とを少なくとも含む混合物を反応させる際、脱水剤を混合物に添加してもよい。有機シラノール化合物の収率がより高まる傾向にあることから、脱水剤は、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、および五酸化二リンがより好ましく、酸化カルシウムがさらに好ましい。
【0036】
シリル化合物と、金属水酸化物と、非プロトン性極性溶媒とを少なくとも含む混合物を反応させる際、脱水剤と混合物とを別々とし、反応中に蒸発した物質を液化させ、液化した物質と脱水剤とを接触させ水を除去し、シリル化合物と金属水酸化物との反応に再利用してもよい。脱水剤と混合物とを別々とすることで、より簡便な操作で脱水剤を再生、再利用でき、経済性により優れる製造方法となる傾向にある。有機シラノール化合物の収率がより高まる傾向にあることから、脱水剤は、活性アルミナ、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、およびモレキュラーシーブがより好ましく、モレキュラーシーブがさらに好ましい。なお、脱水剤は乾燥ガス気流下で加熱することにより、再生、再利用することができる。例えば、活性アルミナは180℃、酸化カルシウムは1000℃、酸化マグネシウムは800℃、モレキュラーシーブは400℃に加熱することでそれぞれ再生することができる。
【0037】
シリル化合物と金属水酸化物とのモル比は、有機シラノール化合物の収率がより高まる傾向にあることから、1:0.5以上であることが好ましい。同様の観点から、1:0.75以上であることがより好ましく、1:1以上であることがさらに好ましい。
シリル化合物と金属水酸化物とのモル比は、過剰な金属水酸化物を用いないことで、より経済性に優れる製造方法となる傾向にあることから、1:10以下であることが好ましい。同様の観点から、1:6以下であることがより好ましく、1:4以下であることがさらに好ましい。
【0038】
金属水酸化物と非プロトン性極性溶媒との質量比は、シリル化合物と金属水酸化物との反応により生成した有機シラノール化合物の析出を抑制できる傾向にあることから、1:2以上であることが好ましい。同様の観点から、1:4以上であることがより好ましく、1:5以上であることがさらに好ましい。
金属水酸化物と非プロトン性極性溶媒との質量比は、反応時間がより短くなり、有機シラノール化合物の収率がより高くなる傾向にあることから、1:100以下であることが好ましい。同様の観点から、1:60以下であることがより好ましく、1:40以下であることがさらに好ましい。
【0039】
脱水剤を利用する場合、金属水酸化物と脱水剤との質量比は、反応時間をより短く、有機シラノール化合物の収率をより高くできる傾向にあることから、1:0.3以上であることが好ましい。同様の観点から、1:0.8以上であることがより好ましく、1:1以上であることがさらに好ましい。
金属水酸化物と脱水剤との質量比は、再生する場合であっても、過剰な脱水剤を用いないことで、より経済性に優れる製造方法となる傾向にあることから、1:10以下であることが好ましい。同様の観点から、1:5以下であることがより好ましく、1:3以下であることがさらに好ましい。
【0040】
シリル化合物と金属水酸化物との反応の反応温度(反応液の温度)は、一般的に用いられる範囲であれば特に限定されないが、反応時間がより短くなり、有機シラノール化合物の収率がより高くなる傾向にあることから、40℃以上であることが好ましく、同様の観点から、60℃以上であることがより好ましい。反応温度は、シリル化合物、および有機シラノール化合物の分解を抑制でき、有機シラノール化合物の収率がより高まる傾向にあることから、160℃以下であることが好ましく、同様の観点から、130℃以下であることがより好ましい。
反応温度は上記範囲であれば一定である必要はなく、途中で変化させてもよい。
【0041】
シリル化合物と金属水酸化物との反応時間は、一般的に用いられる範囲であれば特に限定されないが、有機シラノール化合物の収率の安定性がより高まることから、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。過剰な反応時間としないことで、シリル化合物、および有機シラノール化合物の分解を抑制できる傾向にあることや、より経済性に優れる製造方法となる傾向にあることから、100時間以下であることが好ましい。同様の観点から、50時間以下であることがより好ましく、10時間以下であることがさらに好ましい。
【0042】
反応圧力は、一般的に用いられる範囲であれば特に限定はされず、通常は大気圧下で反応が行われる。ただし、シリル化合物や非プロトン性極性溶媒の標準状態での蒸気圧が低く、シリル化合物や非極性溶媒を液化させ、再利用しない場合には、大気圧以上の加圧を行うことが、有効な手段である。シリル化合物や非極性溶媒を液化させ、再利用する場合には、大気圧以下の減圧であってもよい。
【0043】
反応雰囲気は、一般的に用いられる雰囲気であれば特に限定はされないが、通常は大気雰囲気、窒素雰囲気、およびアルゴン雰囲気等が用いられる。これらの中でも、より安全に有機シラノール化合物を製造できる傾向にあることから、窒素雰囲気、およびアルゴン雰囲気が好ましい。また、より経済性に優れる製造方法となる傾向にあることから、窒素雰囲気がさらに好ましい。
反応雰囲気は、単独で用いてもよいし、複数種の反応雰囲気を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
有機シラノール化合物と、シリル化合物、金属水酸化物、および非プロトン性極性溶媒とを少なくとも含む反応生成物から、各々を分離除去する方法としては、一般的に用いられる分離除去方法であれば特に限定されず用いることができる。例えば、蒸留による揮発成分の分離除去、濾過による不溶固体の分離除去、再結晶による分離精製等が挙げられる。
これらの方法は、単独で用いてもよいし、複数種の方法を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
濾過による分離除去方法では、金属水酸化物をろ過により除去し、シリル化合物、有機シラノール化合物、および非プロトン性極性溶媒の混合物を取得する方法が例示できる。さらに、シリル化合物、有機シラノール化合物、および非プロトン性極性溶媒の混合物を蒸留、再結晶等の方法を用いることで、シリル化合物、有機シラノール化合物、および非プロトン性極性溶媒を各々分離する方法が例示できる。
【0046】
以上のように、本発明は、水素の発生を抑え、反応時間が短く、収率が高く、有機シラノール化合物を製造することができる。
【実施例】
【0047】
以下に本実施形態を具体的に説明した実施例を例示する。本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
実施例および比較例において使用した分析方法は、以下の通りである。
核磁気共鳴分析(NMR):1H-NMRによる分子構造解析
測定装置:JNM-ECZ400S型核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製)
溶媒:重クロロホルム
基準物質:テトラメチルシラン(0.00ppm)
積算回数:8回
【0049】
<反応温度>
反応温度は、外部加熱冷却装置を用いず、室温である場合は、室温である。また、ウォーターバスやオイルバス等の外部加熱冷却装置を利用する場合には、外部加熱冷却装置に用いられている媒体の温度が反応温度である。
【0050】
<有機シラノール化合物収率>
有機シラノール化合物収率は、60mol%以上70mol%未満の場合に良好(判定「B」)と判断し、70mol%以上90mol%未満の場合に特に良好(判定「A」)と判断し、90mol%以上の場合に極めて良好(判定「AA」)と判断した。これら以外の場合は不良(判定「C」)と判断した。
【0051】
実施例および比較例において使用した原材料を以下に示す。なお、非プロトン性極性溶媒、およびプロトン性極性溶媒のHSP値は、Hansen Solubility Parameters: A User‘s Handbook,Second Edition(CRC Press)から算出した。
【0052】
(シリル化合物(化合物(1))
(1)ヘキサメチルジシロキサン(東京化成工業株式会社製、以下、「S-1」という)
(2)メトキシトリメチルシラン(東京化成工業株式会社製、以下、「S-2」という)
(3)フルオロトリフェニルシラン(東京化成工業株式会社製、以下、「S-3」という)
【0053】
(金属水酸化物(化合物(2))
(4)水酸化ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級、以下、「M-1」という)
(5)水酸化カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級、以下、「M-2」という)
【0054】
(非プロトン性極性溶媒)
(6)1-メチル-2-ピロリドン(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級、以下、「AP-1」という、HSP値=18.6)
(7)N,N-ジメチルアセトアミド(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級、以下、「AP-2」という、HSP値=22.8)
(8)アセトニトリル(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級、以下、「AP-3」という、HSP値=24.4)
(9)N,N-ジメチルホルムアミド(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級、以下、「AP-4」という、HSP値=24.9)
(10)ジメチルスルホキシド(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級、以下、「AP-5」という、HSP値=26.7)
(11)1,2-ジメトキシエタン(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級、以下、「AP-6」という、HSP値=17.6)
【0055】
(プロトン性極性溶媒)
(12)エタノール(富士フイルム和光純薬株式会社製、試薬特級、以下、「PS-1」という、HSP値=26.5)
【0056】
(脱水剤)
(13)酸化カルシウム(富士フイルム和光純薬株式会社製、以下、「DH-1」という)
(14)モレキュラーシーブス3A 1/16(富士フイルム和光純薬株式会社製、以下、「DH-2」という)
【0057】
[実施例1]
還流冷却器を取り付けた200mLの3口フラスコに、窒素雰囲気下、表1に示す組成にて、シリル化合物(S-1、10g、61.6mmol)、金属水酸化物(M-1、4.9g、122.5mmol)、非プロトン性極性溶媒(AP-1、50g)を加え、80℃に設定したオイルバスに3口フラスコを入れ、4時間加熱した。3口フラスコをオイルバスから出し、室温まで冷却した後、不溶物を濾過し、有機シラノール化合物(ナトリウムトリメチルシラノラート)を含有する1-メチル-2-ピロリドン溶液を得た。得られた濾液をサンプリングし、1H-NMRで測定すると、有機シラノール化合物が60mol%生成していることが確認された。本結果より、有機シラノール化合物収率は、良好(判定「B」)と判断した。
ナトリウムトリメチルシラノラート
1H-NMR:δ(ppm)0.20(9H)
なお、室温まで冷却した3口フラスコの気相部を、可燃性ガス検知器(新コスモス株式会社製、XP-3110)にて測定をした結果、水素は検出されなかった。
【0058】
[実施例2]
表1の組成、反応温度、反応時間に従って、実施例1と同様の方法により、有機シラノール化合物(ナトリウムトリメチルシラノラート)を製造した。表1に示す通り、有機シラノール化合物収率は70mol%であることから、特に良好(判定「A」)と判断した。
なお、室温まで冷却した3口フラスコの気相部を、可燃性ガス検知器(新コスモス株式会社製、XP-3110)にて測定をした結果、水素は検出されなかった。
【0059】
[実施例3]
表1の組成、反応温度、反応時間に従って、実施例1と同様の方法により、有機シラノール化合物(ナトリウムトリメチルシラノラート)を製造した。表1に示す通り、有機シラノール化合物収率は75mol%であることから、特に良好(判定「A」)と判断した。
なお、室温まで冷却した3口フラスコの気相部を、可燃性ガス検知器(新コスモス株式会社製、XP-3110)にて測定をした結果、水素は検出されなかった。
【0060】
[実施例4]
表1の組成、反応温度、反応時間に従って、実施例1と同様の方法により、有機シラノール化合物(ナトリウムトリメチルシラノラート)を製造した。表1に示す通り、有機シラノール化合物収率は97mol%であることから、極めて良好(判定「AA」)と判断した。
なお、室温まで冷却した3口フラスコの気相部を、可燃性ガス検知器(新コスモス株式会社製、XP-3110)にて測定をした結果、水素は検出されなかった。
【0061】
[実施例5]
表1の組成、反応温度、反応時間に従って、実施例1と同様の方法により、有機シラノール化合物(ナトリウムトリメチルシラノラート)を製造した。表1に示す通り、有機シラノール化合物収率は99mol%であることから、極めて良好(判定「AA」)と判断した。
なお、室温まで冷却した3口フラスコの気相部を、可燃性ガス検知器(新コスモス株式会社製、XP-3110)にて測定をした結果、水素は検出されなかった。
【0062】
[比較例1]
表2の組成、反応温度、反応時間に従って、実施例1と同様の方法により、有機シラノール化合物(ナトリウムトリメチルシラノラート)を製造した。表2に示す通り、有機シラノール化合物収率は20mol%であることから、不良(判定「C」)と判断した。
【0063】
[比較例2]
表2の組成、反応温度、反応時間に従って、実施例1と同様の方法により、有機シラノール化合物(ナトリウムトリメチルシラノラート)を製造した。表2に示す通り、有機シラノール化合物収率は23mol%であることから、不良(判定「C」)と判断した。
【0064】
【0065】
【0066】
表1、2に示すように、本実施形態に係る、HSP値が18以上である非プロトン性極性溶媒を利用し、シリル化合物と、金属水酸化物とを反応させ、有機シラノール化合物を製造する方法は、水素の発生を抑え、反応時間が短く、収率が高く、優れた方法であることが確認された。これに対して、HSP値が18未満である非プロトン性極性溶媒、またはプロトン性極性溶媒を利用した比較例によれば、反応時間が長く、有機シラノール化合物収率も十分ではなかった。
【0067】
[実施例6]
表3の組成、反応温度、反応時間に従って、実施例1と同様の方法により、有機シラノール化合物(ナトリウムトリメチルシラノラート)を製造した。表3に示す通り、有機シラノール化合物収率は93mol%であることから、極めて良好(判定「AA」)と判断した。
なお、室温まで冷却した3口フラスコの気相部を、可燃性ガス検知器(新コスモス株式会社製、XP-3110)にて測定をした結果、水素は検出されなかった。
【0068】
[実施例7]
表3の組成、反応温度、反応時間に従って、実施例1と同様の方法により、有機シラノール化合物(ナトリウムトリメチルシラノラート)を製造した。表3に示す通り、有機シラノール化合物収率は99mol%であることから、極めて良好(判定「AA」)と判断した。
なお、室温まで冷却した3口フラスコの気相部を、可燃性ガス検知器(新コスモス株式会社製、XP-3110)にて測定をした結果、水素は検出されなかった。
【0069】
[実施例8]
表3の組成、反応温度、反応時間に従って、実施例1と同様の方法により、有機シラノール化合物(カリウムトリメチルシラノラート)を製造した。表3に示す通り、有機シラノール化合物収率は99mol%であることから、極めて良好(判定「AA」)と判断した。
カリウムトリメチルシラノラート
1H-NMR:δ(ppm)0.207(9H)
なお、室温まで冷却した3口フラスコの気相部を、可燃性ガス検知器(新コスモス株式会社製、XP-3110)にて測定をした結果、水素は検出されなかった。
【0070】
[実施例9]
表3の組成、反応温度、反応時間に従って、実施例1と同様の方法により、有機シラノール化合物(ナトリウムトリメチルシラノラート)を製造した。表3に示す通り、有機シラノール化合物収率は98mol%であることから、極めて良好(判定「AA」)と判断した。
なお、室温まで冷却した3口フラスコの気相部を、可燃性ガス検知器(新コスモス株式会社製、XP-3110)にて測定をした結果、水素は検出されなかった。
【0071】
[実施例10]
表3の組成、反応温度、反応時間に従って、実施例1と同様の方法により、有機シラノール化合物(ナトリウムトリフェニルシラノラート)を製造した。表3に示す通り、有機シラノール化合物収率は94mol%であることから、極めて良好(判定「AA」)と判断した。
ナトリウムトリフェニルシラノラート
1H-NMR:δ(ppm)7.52-7.60(9H)、7.97-8.00(6H)
なお、室温まで冷却した3口フラスコの気相部を、可燃性ガス検知器(新コスモス株式会社製、XP-3110)にて測定をした結果、水素は検出されなかった。
【0072】
[実施例11]
表3の組成、反応温度、反応時間に従って、実施例1と同様の方法により、有機シラノール化合物(ナトリウムトリメチルシラノラート)を製造した。表3に示す通り、有機シラノール化合物収率は96mol%であることから、極めて良好(判定「AA」)と判断した。
なお、室温まで冷却した3口フラスコの気相部を、可燃性ガス検知器(新コスモス株式会社製、XP-3110)にて測定をした結果、水素は検出されなかった。
【0073】
【0074】
[実施例12]
実施例5で得られたろ過後の有機シラノール化合物(ナトリウムトリメチルシラノラート)を含有するジメチルスルホキシド溶液をナスフラスコに入れ、ロータリーエバポレーターで減圧留去した。その後、さらに真空乾燥機で減圧留去し、白色固体(13.5g)を得た。得られた白色固体は1H-NMRより、有機シラノール化合物が99質量%(収率97%)含まれていることが確認された。
【0075】
[実施例13]
脱水剤(DH-1、6.9g、123.0mmol)を添加した以外は、実施例6と同様に、有機シラノール化合物(ナトリウムトリメチルシラノラート)を製造した。結果、有機シラノール化合物収率は98mol%であることから、極めて良好(判定「AA」)と判断した。
なお、室温まで冷却した3口フラスコの気相部を、可燃性ガス検知器(新コスモス株式会社製、XP-3110)にて測定をした結果、水素は検出されなかった。
【0076】
[実施例14]
200mLの3口フラスコに、窒素雰囲気下、シリル化合物(S-1、10g、61.6mmol)、金属水酸化物(M-1、4.9g、122.5mmol)、非プロトン性極性溶媒(AP-3、50g)を加え、脱水剤(DH-2、14.0g)を充填したソックスレー抽出器を取り付け、その上に還流冷却器を取り付けた。その後、95℃に設定したオイルバスに3口フラスコを入れ、4時間加熱した。3口フラスコをオイルバスから出し、室温まで冷却した後、不溶物を濾過し、有機シラノール化合物(ナトリウムトリメチルシラノラート)を含有するアセトニトリル溶液を得た。得られた濾液をサンプリングし、1H-NMRで測定すると、有機シラノール化合物が91mol%生成していることが確認された。本結果より、有機シラノール化合物収率は、極めて良好(判定「AA」)と判断した。
なお、室温まで冷却した3口フラスコの気相部を、可燃性ガス検知器(新コスモス株式会社製、XP-3110)にて測定をした結果、水素は検出されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明により、有機シラノール化合物を水素の発生を抑え、反応時間が短く、収率が高く製造することができる。