(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びゴム組成物から成形されるシール材
(51)【国際特許分類】
C08L 23/16 20060101AFI20240529BHJP
C08L 83/10 20060101ALI20240529BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
C08L23/16
C08L83/10
C09K3/10 Z
C09K3/10 G
(21)【出願番号】P 2020105558
(22)【出願日】2020-06-18
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】金田 青
(72)【発明者】
【氏名】川島 祐樹
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-204644(JP,A)
【文献】特開2017-155159(JP,A)
【文献】特開2003-155382(JP,A)
【文献】特開平08-020683(JP,A)
【文献】特開昭63-251419(JP,A)
【文献】特開2017-071680(JP,A)
【文献】特開2015-189774(JP,A)
【文献】特開2020-158559(JP,A)
【文献】特開2012-153756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C09K 3/10-3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチレンプロピレンジエンポリマーと、(B)シリコーン鎖とシリコーン鎖以外の重合体ブロックを有するブロック共重合体と、を含
み、
前記(B)シリコーン鎖とシリコーン鎖以外の重合体ブロックを有するブロック共重合体が、膜状ポリオレフィンに包まれて複合体を形成しているゴム組成物。
【請求項2】
前記(B)シリコーン鎖とシリコーン鎖以外の重合体ブロックを有するブロック共重合体が、(B1)シリコーン鎖とポリオレフィン鎖を有するブロック共重合体である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記(B1)シリコーン鎖とポリオレフィン鎖を有するブロック共重合体が、
下記式(1)
[a1]-[b]-[a2] (1)
(式中、[a1]、[a2]は、それぞれ独立に、ポリオレフィン鎖、[b]は、シリコーン鎖を示す。)で表されるトリブロック共重合体である請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記(A)エチレンプロピレンジエンポリマー100質量部に対して、前記(B)シリコーン鎖とシリコーン鎖以外の重合体ブロックを有するブロック共重合体を0.20質量部以上9.0質量部未満含む請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記(A)エチレンプロピレンジエンポリマー100質量部に対して、前記(B)シリコーン鎖とシリコーン鎖以外の重合体ブロックを有するブロック共重合体を0.70質量部以上7.0質量部以下含む請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記ポリオレフィン鎖が、炭素数2以上20以下のオレフィンに由来する構造単位を含む請求項2または3に記載のゴム組成物。
【請求項7】
シール材用である請求項1乃至
6のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
請求項1乃至
7のいずれか1項に記載のゴム組成物から成形される成形材。
【請求項9】
請求項1乃至
7のいずれか1項に記載のゴム組成物から成形されるシール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレンプロピレンジエンポリマーとシリコーン鎖を有するブロック共重合体を含むゴム組成物に関し、特に、タック性に優れた成形材を得ることができるゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンプロピレンジエン(EPDM)ポリマーを主成分とする組成物は、耐水性、機械的特性に優れる等の点から、Oリングやパッキン等のシール材、例えば、耐水性が要求されるシール材の材料として使用される。Oリングやパッキン等のシール材の材料として使用するための、エチレンプロピレンジエン(EPDM)ポリマーを主成分とする組成物としては、所定の溶解度パラメータを有する高分子分散剤、タルク及びEPDMを含むゴム組成物であって、タルクに対する前記高分子分散剤の質量割合が0.1~30重量%であるゴム組成物が提案されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1では、タルクの分散性を向上させることで、ゴム組成物の成形材の機械的特性、特に、引っ張り強度を向上させるものである。
【0004】
一方で、Oリングやパッキン等のシール材には、各種設備への取り付け容易性、シール材の交換作業性等の点から、相手材との貼り付きを防止することが要求されることがある。また、例えば、通常の流体取り出し時は開弁した状態で流体を流し、緊急時等に閉弁して流体の流出を遮断するゴム製の遮断弁などでは、製品保管時は閉弁状態であるため、製品保管の間に相手材と遮断弁が貼り付いてしまい、流体取り出し時に開弁できなくなる問題が生じる場合がある。従って、的確なシール性の点からも、シール材には相手材との貼り付きを防止することが要求されることがある。そこで、従来は、シール材に打ち粉(例えば、タルクなど)を施したり、または離型剤を塗布することで、相手材との貼り付きを防止していた。また、シール材を各種設備へ取り付けるにあたり、シール材の取り付け部位にグリース等の潤滑剤を塗布することで、シール材の取り付け部位にシール材が貼り付くことを防止していた。
【0005】
しかしながら、シール材の取り付け部位に打ち粉、離型剤、グリース等を施与する工程が必要となると、シール材の取り付け作業や交換作業が煩雑となるという問題、また、打ち粉、離型剤、グリース等によって、シール材の取り付け部位の周辺が汚染されてしまうという問題があった。上記から、エチレンプロピレンジエンポリマーを主成分とする組成物から成形された成形体には、タック性を低減することで、相手材との貼り付きを防止することが要求されることがある。しかし、特許文献1等の従来のエチレンプロピレンジエンポリマーを主成分とする組成物から成形されたシール材では、タック性の低減が十分ではない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、タック性の低減された成形体を得ることができるエチレンプロピレンジエンポリマーを含むゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1](A)エチレンプロピレンジエンポリマーと、(B)シリコーン鎖とシリコーン鎖以外の重合体ブロックを有するブロック共重合体と、を含むゴム組成物。
[2]前記(B)シリコーン鎖とシリコーン鎖以外の重合体ブロックを有するブロック共重合体が、(B1)シリコーン鎖とポリオレフィン鎖を有するブロック共重合体である[1]に記載のゴム組成物。
[3]前記(B1)シリコーン鎖とポリオレフィン鎖を有するブロック共重合体が、
下記式(1)
[a1]-[b]-[a2] (1)
(式中、[a1]、[a2]は、それぞれ独立に、ポリオレフィン鎖、[b]は、シリコーン鎖を示す。)で表されるトリブロック共重合体である[2]に記載のゴム組成物。
[4]前記(B)シリコーン鎖とシリコーン鎖以外の重合体ブロックを有するブロック共重合体が、ポリオレフィンを含むポリオレフィン部と複合体を形成している[1]乃至[3]のいずれか1つに記載のゴム組成物。
[5]前記(A)エチレンプロピレンジエンポリマー100質量部に対して、前記(B)シリコーン鎖とシリコーン鎖以外の重合体ブロックを有するブロック共重合体を0.20質量部以上9.0質量部未満含む[1]乃至[4]のいずれか1つに記載のゴム組成物。
[6]前記(A)エチレンプロピレンジエンポリマー100質量部に対して、前記(B)シリコーン鎖とシリコーン鎖以外の重合体ブロックを有するブロック共重合体を0.70質量部以上7.0質量部以下含む[1]乃至[4]のいずれか1つに記載のゴム組成物。
[7]前記ポリオレフィン鎖が、炭素数2以上20以下のオレフィンに由来する構造単位を含む[2]または[3]に記載のゴム組成物。
[8]シール材用である[1]乃至[7]のいずれか1つに記載のゴム組成物。
[9][1]乃至[8]のいずれか1つに記載のゴム組成物から成形される成形材。
[10][1]乃至[8]のいずれか1つに記載のゴム組成物から成形されるシール材。
【発明の効果】
【0009】
本発明のゴム組成物の態様によれば、(A)エチレンプロピレンジエンポリマーと、(B)シリコーン鎖とシリコーン鎖以外の重合体ブロックを有するブロック共重合体と、を含むことにより、タック性の低減された成形体を得ることができる。従って、本発明のゴム組成物から成形した成形体をシール材として各種設備へ取り付けるにあたり、シール材の取り付け部位に、打ち粉、離型剤、グリース等を施与する必要がなく、シール材の取り付け作業性、交換作業性が向上し、また、シール性も向上する。また、本発明のゴム組成物の態様によれば、(A)エチレンプロピレンジエンポリマーと、(B)シリコーン鎖とシリコーン鎖以外の重合体ブロックを有するブロック共重合体と、を含むことにより、摩擦係数の低減された成形体を得ることができる。従って、本発明のゴム組成物から成形した成形体をシール材として適用する際に、滑り性、摺動性が向上して、シール材の取り付け作業性と交換作業性の向上に寄与する。
【0010】
本発明のゴム組成物の態様によれば、(B)シリコーン鎖とシリコーン鎖以外の重合体ブロックを有するブロック共重合体が、下記式(1)
[a1]-[b]-[a2] (1)
(式中、[a1]、[a2]は、それぞれ独立に、ポリオレフィン鎖、[b]は、シリコーン鎖を示す。)で表されるトリブロック共重合体であることにより、成形体のタック性が確実に低減され、また、摩擦係数の低減に寄与できることで成形体の滑り性、摺動性が向上する。
【0011】
本発明のゴム組成物の態様によれば、(B)シリコーン鎖とシリコーン鎖以外の重合体ブロックを有するブロック共重合体が、ポリオレフィンを含むポリオレフィン部と複合体を形成していることにより、(B)シリコーン鎖とシリコーン鎖以外の重合体ブロックを有するブロック共重合体の分散性が向上し、成形体のタック性がより確実に低減される。
【0012】
本発明のゴム組成物の態様によれば、(A)エチレンプロピレンジエンポリマー100質量部に対して(B)シリコーン鎖とシリコーン鎖以外の重合体ブロックを有するブロック共重合体を0.20質量部以上9.0質量部未満含むことにおり、成形体のタック性と摩擦係数が低減しつつ、成形体への加工性を得ることができる。
【0013】
本発明のゴム組成物の態様によれば、(A)エチレンプロピレンジエンポリマー100質量部に対して(B)シリコーン鎖とシリコーン鎖以外の重合体ブロックを有するブロック共重合体を0.70質量部以上7.0質量部以下含むことにより、成形体のタック性がより確実に低減されつつ、成形体への加工性がさらに向上する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明のゴム組成物についての詳細を説明する。本発明のゴム組成物は、(A)エチレンプロピレンジエンポリマーと、(B)シリコーン鎖とシリコーン鎖以外の重合体ブロックを有するブロック共重合体と、を含む。本発明のゴム組成物では、エチレンプロピレンジエンポリマーがベースポリマーとして配合されている。
【0015】
(A)エチレンプロピレンジエンポリマー
エチレンプロピレンジエンポリマーは、エチレン、プロピレンおよびジエンモノマーとの三元共重合体である。ジエンモノマーは架橋用モノマーである。エチレンプロピレンジエンポリマーに用いられるジエンモノマーとしては、特に限定されず、例えば、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-プロピリデン-5-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、ノルボルナジエン等の環状ジエン類;1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,5-ヘプタジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、6-メチル-1,7-オクタジエン等の鎖状非共役ジエン類等が挙げられる。エチレンプロピレンジエンポリマーとしては、エチレンプロピレンジエンゴムを挙げることができる。
【0016】
エチレンプロピレンジエンポリマーのムーニー粘度(ML1+4 100℃)は、特に限定されないが、その下限値は、成形体に柔軟性を付与する点から、30が好ましく、35が特に好ましい。一方で、エチレンプロピレンジエンポリマーのムーニー粘度(ML1+4 100℃)の上限値は、成形体が硬くなるのを防止する点から、100が好ましく、70が特に好ましい。ムーニー粘度とは、エチレンプロピレンジエンポリマーのムーニー粘度計による粘度の尺度である。
【0017】
エチレンプロピレンジエンポリマー中のジエンモノマーの含有量は、特に限定されないが、その下限値は、成形体に柔軟性を付与する点から、2.0質量%が好ましく、5.0質量%が特に好ましい。一方で、エチレンプロピレンジエンポリマー中のジエンモノマーの含有量の上限値は、成形体の耐久性の点から、20質量%が好ましく、15質量%が特に好ましい。
【0018】
(B)シリコーン鎖とシリコーン鎖以外の重合体ブロックを有するブロック共重合体
シリコーン鎖とシリコーン鎖以外の重合体ブロックを有するブロック共重合体(以下、単に、「ブロック共重合体(B)」ということがある。)は、シリコーン鎖のブロックとシリコーン鎖以外の重合体ブロックを有するブロック共重合体である。(A)エチレンプロピレンジエンポリマーに、ブロック共重合体(B)が配合されることにより、タック性の低減された成形体を得ることができる。従って、本発明のゴム組成物から成形した成形体をシール材として各種設備へ取り付けるにあたり、シール材の取り付け部位に、打ち粉、離型剤、グリース等を施与する必要がなく、シール材の取り付け作業性、交換作業性が向上し、また、シール性も向上する。また、(A)エチレンプロピレンジエンポリマーに、ブロック共重合体(B)が配合されることにより、摩擦係数の低減された成形体を得ることができるので、シール材の取り付け作業性と交換作業性の向上に寄与する。
【0019】
シリコーン鎖以外の重合体ブロックとしては、ポリオレフィン鎖(オレフィンの重合体ブロック)、アクリル酸、メタクリル酸、アクリレート及びメタクリレートからなる群から選択された少なくとも1種の(メタ)アクリル系モノマーを含むモノマーを構成単位とする重合体ブロック等を挙げることができる。このうち、タック性を確実に低減する点から、(B1)シリコーン鎖とポリオレフィン鎖を有するブロック共重合体が好ましく、(B1)シリコーン鎖とポリオレフィン鎖を有するブロック共重合体としては、成形体のタック性が確実に低減され、また、摩擦係数が低減して成形体の滑り性、摺動性が向上する点から、下記式(1)
[a1]-[b]-[a2] (1)
(式中、[a1]、[a2]は、それぞれ独立に、ポリオレフィン鎖、[b]は、シリコーン鎖を示す。)で表されるトリブロック共重合体が特に好ましい。
【0020】
[a1]及び[a2]のポリオレフィン鎖を構成するオレフィンとしては、例えば、炭素数2~50のオレフィンが上げられる。炭素数2~50のオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、炭素数4~50のα-オレフィンが挙げられる。炭素数4~50のα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ペンテン、1-オクテン、3-エチル-4-メチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘプテン、1-ノネン、3,4-ジメチル-1-ヘプテン、1-デセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。これらのうち、炭素数2~20のオレフィンが好ましく、炭素数2~12のオレフィンがより好ましく、エチレン、プロピレン、炭素数4~8のα-オレフィンがさらに好ましく、エチレンが特に好ましい。ポリオレフィン鎖を構成するオレフィンは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
ポリオレフィン鎖の数平均分子量は、特に限定されないが、100以上500000以下が好ましく、200以上100000以下がより好ましく、500以上50000以下がさらに好ましく、700以上10000以下が特に好ましい。上記数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ測定法により、オルトジクロロベンゼンを溶媒として使用して測定し、ポリエチレン換算値として得られる分子量である。
【0022】
[a1]のポリオレフィン鎖と[a2]のポリオレフィン鎖は、ポリオレフィン鎖を構成するオレフィン種及び/または平均分子量は、同じでもよく異なっていてもよい。
【0023】
式(1)で表されるトリブロック共重合体は、[b]のシリコーン鎖に、ポリオレフィン鎖(オレフィンの重合体ブロック)がグラフト重合されているグラフト共重合体でもよい。[b]のシリコーン鎖にグラフト重合しているポリオレフィン鎖としては、上記したオレフィンから構成されるポリオレフィン鎖を挙げることができる。また、[b]のシリコーン鎖にグラフト重合しているポリオレフィン鎖の、ゲル浸透クロマトグラフ測定法により分析した数平均分子量は、特に限定されないが、100以上500000以下が好ましく、200以上100000以下がより好ましく、500以上50000以下がさらに好ましく、700以上10000以下が特に好ましい。[b]のシリコーン鎖にグラフト重合されているポリオレフィン鎖は、[a1]のポリオレフィン鎖を構成するオレフィン種及び/または[a1]のポリオレフィン鎖の平均分子量と、同じでもよく異なっていてもよい。また、[b]のシリコーン鎖にグラフト重合されているポリオレフィン鎖は、[a2]のポリオレフィン鎖を構成するオレフィン種及び/または[a2]のポリオレフィン鎖の平均分子量と、同じでもよく異なっていてもよい。
【0024】
式(1)で表されるトリブロック共重合体のシリコーン鎖の質量:ポリオレフィン鎖の質量の比率は、特に限定されないが、タック性と摩擦係数をバランスよく低減する点から、5:95~95:5が好ましく、10:90~90:10が特に好ましい。
【0025】
また、ブロック共重合体(B)は、ポリオレフィンを含むポリオレフィン部と複合体を形成してブロック共重合体複合体となっていてもよい。ブロック共重合体複合体であることにより、エチレンプロピレンジエンポリマーへの分散性が向上し、成形体のタック性がより確実に低減される。ブロック共重合体複合体の態様としては、例えば、ブロック共重合体(B)が膜状のポリオレフィン部に包まれている態様が挙げられる。ポリオレフィン部のポリオレフィンは、化学構造にシリコーン鎖を含まないポリオレフィン鎖である点で、ブロック共重合体(B)のポリオレフィン鎖とは相違する。ブロック共重合体複合体は、本発明のゴム組成物中で、ブロック共重合体複合体の構造が維持されていてもよく、ブロック共重合体(B)とポリオレフィン部が分離している等、ブロック共重合体複合体の構造が維持されていなくてもよい。
【0026】
ポリオレフィン部を形成するポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、炭素数4~20のα-オレフィンが挙げられる。炭素数4~20のα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ペンテン、1-オクテン、3-エチル-4-メチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘプテン、1-ノネン、3,4-ジメチル-1-ヘプテン、1-デセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン等が挙げられる。このうち、エチレン、プロピレン、炭素数4~8のα-オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。ポリオレフィン部を構成するオレフィンは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
ブロック共重合体複合体の、ブロック共重合体(B)の質量:ポリオレフィン部の質量の比率は、特に限定されないが、成形体のタック性がさらに低減される点から、10:90~50:50が好ましく、20:80~40:60が特に好ましい。
【0028】
ブロック共重合体(B)の配合量は、特に限定されないが、その下限値は、エチレンプロピレンジエンポリマー100質量部に対して、成形体のタック性と摩擦係数が確実に低減する点から、0.20質量部が好ましく、成形体のタック性がより確実に低減する点から、0.70質量部がより好ましく、成形体のタック性がさらに低減する点から、1.20質量部がさらに好ましく、成形体のタック性がさらに低減しつつ、摩擦係数がより確実に低減する点から、2.5質量部が特に好ましい。一方で、ブロック共重合体(B)の配合量の上限値は、エチレンプロピレンジエンポリマー100質量部に対して、成形体の加工性を得る点から、9.0質量部未満(例えば、8.9質量部)が好ましく、成形体への加工性がさらに向上する点から、7.0質量部がより好ましく、成形体のタック性がさらに低減しつつ、摩擦係数がより確実に低減する点から、5.0質量部が特に好ましい。
【0029】
任意成分
本発明のゴム組成物では、(A)成分であるエチレンプロピレンジエンポリマーと、(B)成分であるシリコーン鎖とシリコーン鎖以外の重合体ブロックを有するブロック共重合体以外に、必要に応じて、他の成分、例えば、各種添加剤、離型剤、体質剤、着色剤等を、適宜、添加することができる。
【0030】
各種添加剤としては、例えば、架橋剤、架橋促進助剤、老化防止剤、可塑剤、紫外線安定化剤、酸化防止剤、消臭剤、難燃剤、耐候性付与剤、帯電防止剤、スリップ剤、イオン交換剤等を挙げることができる。
【0031】
ゴム組成物の調製方法
本発明のゴム組成物の調製方法としては、例えば、上記各成分を、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、ロールミキサー、バンバリーミキサー、タンブラーミキサー、ブラベンダー等を用いて溶融混練することで調製する方法が挙げられる。また、必要に応じて、溶融混練前に、上記各成分を、予備混練してもよい。
【0032】
ゴム組成物の成形材
本発明のゴム組成物の成形材の形状は、特に限定されず、例えば、シート状、フィルム状、リング状、リボン状、ブロック状等が挙げられる。本発明のゴム組成物を材料とした成形材の製造方法は、特に限定されず、例えば、上記のように調製したゴム組成物を、押出成形法、射出成形法、射出圧縮成形法、溶融流涎法、インフレーション成形法、圧縮成形法、トランスファー成形法、注型成形法等、公知の成形方法を用いることで、所定の形状に成形して成形材を製造することができる。
【0033】
ゴム組成物の用途
本発明のゴム組成物の用途としては、特に限定されず、Oリングやパッキン等のシール材の材料等を挙げることができる。上記から、本発明のゴム組成物から、成形材として、Oリングやパッキン等のシール材等を製造することができる。
【実施例】
【0034】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明は、その趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0035】
実施例1~7、比較例1
下記表1に示す各成分を下記表1に示す配合割合にて配合し、ニーダーを用いて60分の条件にて溶融混練させて、実施例1~7、比較例1にて使用するゴム組成物を調製した。そして、調製したゴム組成物をプレス成形法にて、シートの形状、寸法200×200mmに成形後、170℃にて10分間の一次加硫、150℃にて2時間の二次加硫を行って試験サンプルを作製した。なお、下記表1中の数字は質量部を示す。
【0036】
なお、表1中の各成分についての詳細は以下の通りである。
【0037】
(A)エチレンプロピレンジエンポリマー
・NORDEL 6530XFC:エチレン量55質量%、ジエン量8.5質量%の高ジエンEPDM、DOW社。
【0038】
(B)シリコーン鎖とシリコーン鎖以外の重合体ブロックを有するブロック共重合体
・イクスフォーラ PE3027:ポリエチレン鎖-シリコーン鎖-ポリエチレン鎖で表されるトリブロック共重合体(ブロック共重合体(B)に相当)が、ポリエチレン膜(ポリオレフィン部に相当)に包まれているブロック共重合体複合体、ポリエチレン鎖-シリコーン鎖-ポリエチレン鎖で表されるトリブロック共重合体の質量:ポリエチレン膜の質量=30:70、三井化学ファイン株式会社。
【0039】
また、実施例1~7、比較例1の試験サンプル作製に使用した共通成分と、その配合量は以下の通りである。
体質剤
・二酸化ケイ素:配合量は25質量部。
【0040】
以下の成分は、各種添加剤である。
・老化防止剤:配合量は3.0質量部。
・架橋促進助剤:配合量は7.3質量部。
【0041】
・可塑剤:配合量は6.0質量部。
・カップリング剤:配合量は2.0質量部。
・架橋剤:配合量は6.0質量部。
【0042】
試験サンプルの評価項目は以下の通りである。
(1)摩擦係数
鈴木-松原式摩擦試験機にて、摩擦係数を測定し、以下の基準にて評価した。
○:摩擦係数2.80以下
△:摩擦係数2.80超3.40以下
×:摩擦係数3.40超
【0043】
(2)タック性
タック試験機にて、タック値を測定し、以下の基準にて評価した。
◎:タック値10gf以下
○○:タック値10gf超50gf以下
○:タック値50gf超100gf以下
△:タック値100gf超200gf以下
×:タック値200gf超
【0044】
(3)加工性
プレス成形法にて、加工性を評価し、以下の基準で評価した。
○:加工上問題なし
△:加工可能だが、成形時に若干の離型剤の塗布が必要
×:成形できない、または成形時に従来量の離型剤の塗布が必要
【0045】
評価結果を下記表1に示す。
【0046】
【0047】
上記表1に示すように、エチレンプロピレンジエンポリマーにポリエチレン鎖-シリコーン鎖-ポリエチレン鎖のトリブロック共重合体を配合した実施例1~7では、タック性が低減した成形体を得ることができた。また、実施例1~7では、摩擦係数を低減でき、試験サンプルの滑り性、摺動性も向上することが判明した。特に、エチレンプロピレンジエンポリマー100質量部に対してポリエチレン鎖-シリコーン鎖-ポリエチレン鎖のトリブロック共重合体を0.9~9.0質量部配合した実施例2~7では、タック性がより低減し、エチレンプロピレンジエンポリマー100質量部に対してポリエチレン鎖-シリコーン鎖-ポリエチレン鎖のトリブロック共重合体を3.0~9.0質量部配合した実施例4~7では、タック性が著しく低減した。
【0048】
また、エチレンプロピレンジエンポリマー100質量部に対してポリエチレン鎖-シリコーン鎖-ポリエチレン鎖のトリブロック共重合体を3.0~4.5質量部配合した実施例4、5では、摩擦係数が大きく低減した。また、エチレンプロピレンジエンポリマー100質量部に対してポリエチレン鎖-シリコーン鎖-ポリエチレン鎖のトリブロック共重合体を0.30~6.0質量部配合した実施例1~6では、加工性にも優れていた。
【0049】
一方で、上記表1から、エチレンプロピレンジエンポリマーにポリエチレン鎖-シリコーン鎖-ポリエチレン鎖のトリブロック共重合体を配合しなかった比較例1では、タック性も摩擦係数も低減しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のゴム組成物は、タック性と摩擦係数の低減した成形体を得ることができるので、広汎な分野で利用可能であり、特に、Oリングやパッキン等のシール材の材料の分野で利用価値が高い。