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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/511 20060101AFI20240529BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20240529BHJP
   A61F 13/475 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
A61F13/511 300
A61F13/49 315
A61F13/475 111
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020105947
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022000095
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】須田 裕喜
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-072612(JP,A)
【文献】特開2008-086494(JP,A)
【文献】特開2011-206108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収性物品の幅方向の両側において前記吸収性物品の長手方向に沿って設けられ、その幅方向途中部が前記トップシートの肌側面に前記長手方向に沿って固定され、撥水性及び/又は防水性のシートを含む一対の第1の立体ギャザーと、
帯状の形状を有し、幅方向一端が前記第1の立体ギャザーの前記トップシートを臨む表面に固定され、幅方向他端が前記トップシートの前記肌側面に固定され、前記第1の立体ギャザーと前記トップシートとの固定界面を跨いで前記長手方向に延びる高吸収性シートと、を更に備え、
前記高吸収性シートは、不織布と、前記不織布に対向配置されるパルプ含有不織布と、これらの間に固着担持された高吸収性ポリマーと、を含み、
前記パルプ含有不織布は、スパンボンド不織布と、前記スパンボンド不織布の少なくとも一方の表面に一体化されたパルプ繊維層と、を含み、
前記第1の立体ギャザーは、自由端を有し、前記自由端は前記高吸収性シートの内部の前記高吸収性ポリマーが膨潤することにより起立することを特徴とする、吸収性物品。
【請求項2】
前記高吸収性シートは、前記パルプ含有不織布の前記不織布との非対向面を、前記第1の立体ギャザーの前記トップシートを臨む前記表面、及び前記トップシートの前記肌側面に固定する、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記高吸収性シートは、前記不織布がエアスルー不織布である、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記高吸収性シートの前記幅方向の前記他端は、前記トップシートの前記長手方向長さ寸法をL(cm)としたとき、前記トップシートの前記長手方向の一端から0.1L(cm)以上0.9L(cm)以下の領域に固定されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記高吸収性シートの前記幅方向の前記他端は、前記トップシートの前記幅方向の長さ寸法をM(cm)としたときに、前記トップシートの前記幅方向の一端及び他端からそれぞれ0.1M(cm)以上0.3M(cm)以下の領域に固定されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記一対の第1の立体ギャザーの前記幅方向外側に前記長手方向に沿って設けられ、撥水性及び/又は防水性のシートを含む一対の第2の立体ギャザーを備えている、請求項1~5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙おむつ等の吸収性物品では、尿、便等の体液の横漏れを防止するために、一般に立体ギャザーが用いられている。そして、吸収性物品においては、体液の外部への漏れを防止することは、非常に重要な課題の一つであることから、立体ギャザーのさらなる改良や、立体ギャザー以外の漏れ防止部材の開発等について、様々な提案がなされている。
【0003】
特許文献1には、使用状態で自由起立するウエスト用のバリヤーカフスを製品長手方向端部の使用面側に有し、バリヤーカフスはバリヤーシートを二重にして構成され、バリヤーカフスの起立遠位縁近傍及び起立領域内の起立近位縁近傍に、弾性伸縮部材をそれぞれ配設した吸収性物品が開示されている。この構造によれば、吸収性物品の肌側面に補助パッドを重ねた場合でも、ウエスト部での漏れが防止されると記載されている。
【0004】
特許文献2には、吸収体とギャザーシートと不透液性フィルム材と表面シートとによって囲まれ、軟便等の体液を一旦貯留可能な断面視略三角形状の空間部を備え、排泄された体液を該空間部に一旦貯留して吸収体に吸収させるように構成した吸収性物品が開示されている。この構成によれば、体液、特に軟便漏れが低減すると記載されている。
【0005】
特許文献3には、吸収体の長手方向両側縁に沿って設けられた、液不透過性のシートからなる一対の第1の立体ギャザーと、その幅方向外側に設けられた一対の第2の立体ギャザーと、を備え、第1の立体ギャザーのトップシート表面から立ち上がる起立点(以下単に「起立点」ともいう)と、第2の立体ギャザーの起立点との間に、液透過性のトップシートを幅方向に露出させた吸収性物品が開示されている。この構造によれば、内側の第1の立体ギャザーを超えて外側の第2の立体ギャザーで堰き止められた体液を、トップシートの露出面から内部の吸収体に吸収させることができ、漏れが防止されるとともに、吸収体への体液捕集性が向上すると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-293032号公報
【文献】特開2007-143874号公報
【文献】特開2011-206108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の吸収性物品では、大量の尿や軟便が一度に排出された場合には、確実に漏れを防止することは難しいという課題が存在する。
【0008】
本発明の目的は、大量に排出された尿や軟便を容易に吸収し、漏れを防止できる吸収性物品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、第1の立体ギャザーの幅方向途中部をトップシートの肌側面に固定し、第1の立体ギャザーとトップシートとの固定界面を跨いで所定の特性を有する体液吸収性シートを設けることで、所望の吸収性物品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記の吸収性物品に係る。
【0010】
(1)液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、を備える吸収性物品であって、
前記吸収性物品の幅方向の両側において前記吸収性物品の長手方向に沿って設けられ、その幅方向途中部が前記トップシートの肌側面に前記長手方向に沿って固定され、撥水性及び/又は防水性のシートを含む一対の第1の立体ギャザーと、
帯状の形状を有し、幅方向一端が前記第1の立体ギャザーの前記トップシートを臨む表面に固定され、幅方向他端が前記トップシートの前記肌側面に固定され、前記第1の立体ギャザーと前記トップシートとの固定界面を跨いで前記長手方向に延びる高吸収性シートと、を更に備え、
前記高吸収性シートは、不織布と、前記不織布に対向配置されたパルプ含有不織布と、これらの間に固着担持された高吸収性ポリマーと、を含み、
前記パルプ含有不織布は、スパンボンド不織布と、前記スパンボンド不織布の少なくとも一方の表面に一体化されたパルプ繊維層と、を含むことを特徴とする、吸収性物品。
(2)前記高吸収性シートは、前記パルプ含有不織布の前記不織布との非対向面を、前記第1の立体ギャザーの前記トップシートを臨む前記表面、及び前記トップシートの前記肌側面に固定する、上記(1)の吸収性物品。
(3)前記高吸収性シートは、前記不織布がエアスルー不織布である、上記(1)又は(2)の吸収性物品。
(4)前記高吸収性シートの前記幅方向の前記他端は、前記トップシートの前記長手方向長さ寸法をL(cm)としたとき、前記トップシートの前記長手方向の一端から0.1L(cm)以上0.9L(cm)以下の領域に固定されている、上記(1)~(3)のいずれかの吸収性物品。
(5)前記高吸収性シートの前記幅方向の前記他端は、前記トップシートの前記幅方向の長さ寸法をM(cm)としたときに、前記トップシートの前記幅方向の一端及び他端からそれぞれ略0.1M(cm)以上0.3M(cm)以下の領域に固定されている、上記(1)~(4)のいずれかの吸収性物品。
(6)前記一対の第1の立体ギャザーの前記幅方向外側に前記長手方向に沿って設けられ、撥水性及び/又は防水性のシートを含む一対の第2の立体ギャザーを備えている、上記(1)~(5)のいずれかの吸収性物品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、大量に排出された尿や軟便を容易に吸収し、漏れを防止できる吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る吸収性物品の構成を模式的に示す平面図である。
図2図1のX-X切断線における模式断面図である。
図3】第1実施形態に係る吸収性物品の吸液後の状態を示す模式断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る吸収性物品の構成を模式的に示す断面図である。
図5】高吸収性シートの一実施形態の構成を模式的に示す平面図である。
図6図5のY-Y切断線における模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、吸収性物品の着用とは、体液の吸収前後を問わず、吸収性物品を身体に装着した状態をいう。吸収性物品において、長手方向とは吸収性物品を身体に着用したときに着用者の股間部を介して身体の前後に亘る方向であり、幅方向とは長手方向に対して直交する方向であり、厚み方向とは各構成部材を積層する方向である。肌側面とは、吸収性物品の着用時において、着用者の肌に当接する表面又は肌を臨む表面であり、非肌側面とは、着用者の衣服に接触する表面又は衣服を臨む表面である。体液とは、尿や血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出された液体をいう。
【0014】
<吸収性物品(第1実施形態)>
以下、図面を参照しつつ、本実施形態について説明する。図1及び図2は第1実施形態に係る吸収性物品1を示す。図3は、吸収性物品1の体液吸収後の状態を示す。図4は第2実施形態に係る吸収性物品2を示す。図5及び図6は、第1の立体ギャザー13のトップシート10を臨む表面13xに固定される高吸収性シート20を示す。これらの図面は本実施形態の吸収性物品1、2中の各構成部材の形状や寸法、大小関係等を規定するものではない。
【0015】
本実施形態の吸収性物品1、2は、ベビー用又は成人用を問わず種々の吸収性物品として使用できるが、代表的には、軽失禁パッド、尿吸収パッド、生理用ナプキン、失禁用使い捨ておむつ、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつ等が挙げられる。アウターとしての各種紙おむつと、インナーとしての吸収性物品1、2とを組み合わせてもよい。吸収性物品1、2の、長手方向の寸法、及び幅方向の寸法はいずれも特に限定されないが、例えば、100mm以上800mm以下の範囲、及び50mm以上500mm以下の範囲である。吸収性物品1、2の寸法を前記の範囲に調整することで、種々の用途のものが容易に得られる。
【0016】
<吸収性物品(第1実施形態)>
吸収性物品1は、図1及び図2に示すように、吸収性物品1を着用したときに相対的に肌側に位置する、液透過性のトップシート10と、トップシート10に対向して配置され、吸収性物品1を着用したときに相対的に非肌側に位置する液不透過性のバックシート12と、トップシート10とバックシート12との間に配置された吸収体11と、トップシート10の肌側面の幅方向両端に主に設けられ、幅方向途中部がトップシート10の肌側面に固定された第1の立体ギャザー13と、第1の立体ギャザー13のトップシート10を臨む表面13x及びトップシート10の肌側面に固定された高吸収性シート20と、を備える。吸収体11はトップシート10とバックシート12との間に挟まれた構造となり、尿等の体液はトップシート10を通して吸収体11に吸収及び保持される。吸収性物品1の用途やタイプに応じて、レッグギャザー、ウエストギャザー、サイドフラップ等を適宜設けることができる。
【0017】
本実施形態によれば、第1の立体ギャザー13を設け、第1の立体ギャザー13のトップシート10の肌側面を臨む表面13x(以下単に「表面13x」ともいう)とトップシート10の肌側面との固定界面を跨いで、体液を高吸収し得る高吸収性シート20を固定することで、大量の体液が急激に排出された場合でも、横漏れを防止しつつ、体液を吸収することができる。すなわち、第1の立体ギャザー13の表面13xとトップシート10の肌側面との固定界面を跨いで、不織布16と、パルプ含有不織布17と、これらの間に固着担持された高吸収性ポリマー18と、を含む高吸収性シート20を固定することにより、大量の体液が一度に急激に排出されたときに、トップシート10を通して吸収体11で吸収するとともに、残余の体液が横漏れを起こしそうになっても、高吸収性シート20がこれを吸収し、その内部の高吸収性ポリマー18が膨潤し、図3に示すように、第1の立体ギャザー13を起立させ、体液の幅方向への流れを堰き止め、吸収体11に導くことができる。このような横漏れ防止機構を設けることで、横漏れをほぼ確実に防止できると共に、体液が着用者自身や衣服に付着し難くなり、衛生的である。
【0018】
以下、各構成部材について、トップシート10、吸収体11、バックシート12、第1の立体ギャザー13、及び高吸収性シート20の順でさらに詳しく説明する。これらの構成部材は、シート状及び板状以外の立体構造を有していてもよい。
【0019】
(トップシート)
トップシート10の基材としては、体液が吸収体11へと移動する液透過性を備えていればよく、例えば、サーマルボンド不織布等の不織布、サーマルボンド不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、これらの1種又は2種以上を積層した複合シート等が挙げられる。トップシート10は、液透過性を向上させる観点から、表面に公知の方法に従ってエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。トップシート10には、肌への刺激を低減させる観点から、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等の1種又は2種を含有させてもよい。トップシート10の坪量は、強度及び加工性の観点から、例えば14g/m以上40g/m以下の範囲である。トップシート10の形状は特に制限されず、尿等の体液を吸収体11に誘導するため、吸収体11の全部又は一部を覆う形状であればよい。
【0020】
(吸収体)
吸収体11はトップシート10とバックシート12との間に配置され、吸収基材を含み、必要に応じて吸収成分を含んでもよい。吸収基材としては、一般に生理用ナプキンやおむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用される吸収性繊維を特に制限なく使用でき、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等が挙げられる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプが好ましい。フラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等の綿状解繊物等が挙げられる。吸収体11の吸収性繊維の坪量は、吸収性能及び肌触りを損なわない観点から、例えば50g/m以上800g/m以下の範囲である。
【0021】
吸収成分としては特に限定されないが、例えば、高吸収性ポリマー(Super Absorbent Polymer、以下「SAP」ともいう)が挙げられる。高吸収性ポリマーとしては、体液を吸収及び保持し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸塩、ポリアスパラギン酸塩、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等が挙げられる。これらの中でも、重量あたりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸塩が好ましく、ポリアクリル酸ナトリウムがより好ましい。高吸収性ポリマーは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。吸収体11のSAPの坪量は、吸収性能及び肌触りを損なわない観点から、例えば10g/m以上500g/m以下の範囲であり、吸収体11のSAPの含有量は、例えば吸収体11全量の15質量%以上50質量%以下の範囲である。
【0022】
吸収体11の形態としては、例えば、吸収性繊維からなる形態、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成した積層マットの形態等が挙げられる。繊維形態に成形したSAPを使用することもできる。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体11の形状の安定化の観点から、吸収体11をキャリアシートに包んでもよい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布が挙げられる。キャリアシートを複数備える場合は、キャリアシートの基材は同一でも異なるものでもよい。
【0023】
吸収体11は、2層以上の吸収体からなるものでもよく、例えば、上層吸収体と下層吸収体とを積層したものでもよい。この場合、上層吸収体と下層吸収体の長手方向及び幅方向の寸法は、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より大きくてもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法と同じでもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より小さくてもよい。
【0024】
(バックシート)
本実施形態のバックシート12の基材としては、吸収体11が保持している体液が漏れない液不透過性を備えたものであればよく、例えば、不織布、樹脂フィルム、これらの1種又は2種以上の積層体である複合シート等が挙げられる。不織布としては、特に限定されず、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布積層体、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体等の複合不織布、これらの1種又は2種以上の積層体である複合材料等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。また、着用時の蒸れを防止する観点から、バックシート12は透湿性を有していてもよい。透湿性を付与するために、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合することや、バックシート12に穿孔のためのエンボス加工を施すことが挙げられる。
【0025】
(第1の立体ギャザー)
第1の立体ギャザー13は、例えば、吸収性物品1の着用者が排泄した体液の横漏れを防止するために設けられる。一対の第1の立体ギャザー13は、吸収性物品1の幅方向の両側において吸収性物品1の長手方向に沿って設けられ、その幅方向途中部がトップシート10の肌側面に吸収性物品1の長手方向に沿って固定され、撥水性及び/又は防水性のシートを含む。
【0026】
本実施形態の第1の立体ギャザー13は、弾性伸縮部材13aと、第1のシート部材13bと、を含む。弾性伸縮部材13aは、第1のシート部材13bの自由端(他端)付近に長手方向に沿って配設され、該自由端に起立性を付与し、第1のシート部材13b全体を着用者の体型に合わせて変形可能とすることができる。第1のシート部材13bは、本実施形態では幅方向一端(固定端)がバックシート12の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向途中部がトップシート10の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向他端が自由端である。なお、シート部材13bの幅方向途中部を、後述する高吸収性シート20により、トップシート10の肌側面に固定してもよい。弾性伸縮部材13aにより起立性が付与された第1のシート部材13b及びその自由端は、高吸収性シート20の内部の高吸収性ポリマー18が膨潤することにより起立し、体液の横漏れを防止する。
【0027】
第1のシート部材13bの固定端(幅方向一端)の固定位置は、本実施形態に限定されず、例えば、バックシート12の非肌側面、内部に吸収体11を収納したトップシート10とバックシート12との各縁辺の全部又は一部接合体の肌側面又は非肌側面の幅方向両端付近、トップシート10の肌側面の幅方向両端付近等が挙げられる。さらに、第1の立体ギャザー13は、前述の固定位置のいずれかから、幅方向に延伸し、折り曲げ自在の一対の部材として構成してもよい。なお、第1のシート部材13の幅方向一端である固定端がトップシート10の肌側面で固定されているときは、この固定界面を跨ぐように高吸収性シート20を固定してもよい。
【0028】
第1のシート部材13bは撥水性及び/又は防水性を有するシートであり、例えば不織布から構成される。第1のシート部材用不織布としては、疎水性繊維にて形成された撥水性及び/又は防水性(液不透過性)の不織布を特に限定なく使用でき、例えば、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布/メルトブロー不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布(SMS不織布)等が挙げられる。第1の立体ギャザー13又は第1のシート部材13bの坪量は、例えば、10g/m以上100g/m以下の範囲である。弾性伸縮部材13aとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等からなる、糸状、紐状、帯状のものを適宜使用することができる。
【0029】
(高吸収性シート)
高吸収性シート20は、図5及び図6に示すように、不織布16と、不織布16に対向配置されるパルプ含有不織布17と、これらの間に固定された高吸収性ポリマー18とを含み、吸収性物品1の長手方向に延びる帯状部材である。本実施形態では、不織布16の露出した表面(パルプ含有不織布17との非対向面)16aは、第1の立体ギャザー13及びトップシート10との非固定面であり、パルプ含有不織布17の露出した表面(不織布16との非対向面)17aは、第1の立体ギャザー13及びトップシート10との固定面である。パルプ含有不織布17は、第1の立体ギャザー13の表面13xとの固定性等の観点から、不織布16との非対向面17aがスパンボンド不織布であり、不織布16と対向する表面17bがパルプ繊維層であることが好ましい。
【0030】
高吸収性シート20は、パルプ含有不織布17の表面17aの幅方向一端が、第1の立体ギャザー(又は第1のシート部材13b)のトップシート10を臨む表面13xに固定され、表面17aの幅方向他端が、トップシート10の肌側面に固定され、第1の立体ギャザー13の表面13xとトップシート10の肌側面との固定界面を跨いで、長手方向に延びる。ここで、幅方向の一端及び他端とは、幅方向の一方の縁辺及び他方の縁辺のみを意味するのではなく、幅方向の一方の縁辺とその周辺領域及び他方の縁辺とその周辺領域をそれぞれ意味する。また、高吸収性シート20の幅方向中央から一方の縁辺までの領域を幅方向一端とし、幅方向中央から他方の縁辺までの領域を幅方向他端としてもよい。
【0031】
本実施形態の高吸収性シート20の内部では、SAPが固定されて長手方向に延びるSAP固定領域30と、不織布16とパルプ含有不織布17とが接合されて長手方向に延びるシート固定領域31と、が幅方向に交互に配置されている。幅方向に並んだ2つのSAP固定領域30のうち、一方が第1の立体ギャザー13の表面13xに固定される領域であり、他方がトップシート10の肌側面に固定される領域である。特に、SAP固定領域30の幅方向の両側にシート固定領域31を配置することにより、SAP固定領域30の内部の高吸収性ポリマー18が体液を吸収して膨潤したときに、2つのSAP固定領域30の間のシート固定領域31が長手方向に沿って幅方向に折れ曲がる応力が負荷されやすくなり、第1の立体ギャザー13が起立する。ここで、2つのSAP固定領域30の間のシート固定領域31におけるパルプ含有不織布17側の表面を、第1の立体ギャザー13の表面13x及びトップシート10の肌側面のいずれにも固定されない非固定面としてもよい。
【0032】
SAP固定領域30では、高吸収性ポリマー18は、好ましくはホットメルト接着剤により不織布16とパルプ含有不織布17との間に固着担持されている。高吸収性ポリマー18の体液吸収性を阻害せず、かつ、着用時の肌触りを損なわないように、ホットメルト接着剤の含有量は例えば10g/m以下の範囲である。また、シート固定領域31では、不織布16及びパルプ含有不織布17の各対向面が好ましくはホットメルト接着剤により固定されている。また、高吸収性シート20のパルプ含有不織布17側の表面17aと、第1の立体ギャザー13の表面13x及びトップシート10の肌側面との固定にもホットメルト接着剤が用いられる。
【0033】
ホットメルト接着剤としては、融点が100℃以上180℃以下のものを特に限定なく使用でき、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン系共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン系共重合体等の合成ゴム系ホットメルト接着剤、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のオレフィン系ホットメルト接着剤等が挙げられる。ホットメルト接着剤の塗布方法としては、例えば、ノズルから溶融状態のホットメルト接着剤を非接触式で塗布するカーテンコート法やスパイラル法、接触式で塗布するスロット法等、公知の方法が利用できる。
【0034】
高吸収性シート20の、トップシート10の肌側面に固定される幅方向他端は、トップシート10の長手方向長さ寸法(又は長手方向の最大長さ寸法)をL(cm)としたとき、例えば、トップシート10の長手方向の一端又は他端から0.1L(cm)以上0.9L(cm)以下の範囲、又は0.2L(cm)以上0.8L(cm)以下の範囲の領域に固定されることが好ましい。この領域から外れた場合、高吸収性シート20が体液を吸収して膨潤するときに、長手方向両端部分の固定が外れ、高吸収性シート20内部の高吸収性ポリマー18が外部に漏れ出す可能性が生じる傾向がある。
【0035】
高吸収性シート20の、トップシート10の肌側面に固定される幅方向他端は、トップシート10の幅方向の長さ寸法(又は幅方向の最大長さ寸法)をM(cm)としたときに、トップシート10の幅方向の一端及び他端からそれぞれ略0.1M(cm)以上0.3M(cm)以下の、トップシート10の幅の領域に固定されていることが好ましい。高吸収性シート20の幅方向他端の固定位置がトップシート10の幅方向の一端及び他端から0.1M(cm)未満であると、第1の立体ギャザー13のトップシート10肌側面での固定部位が無くなり、いずれも固定強度が低下する傾向がある。高吸収性シート20の幅方向他端の固定位置がトップシート10の幅方向の一端及び他端から0.3M(cm)を超えると、より大きい、体液を受け止め、吸収体11に体液を浸透させるトップシート10の機能を損なう傾向がある。
【0036】
また、高吸収性シート20の、第1の立体ギャザー13の表面13xに固定される幅方向一端は、第1の立体ギャザー13を起立させたときに、第1の立体ギャザー13の自由端付近に配設された弾性伸縮部材13aの高さ位置よりも低い位置に固定されることが好ましい。弾性伸縮部材13aよりも高い位置に固定すると、第1の立体ギャザー13と高吸収性シート20とが肌に当たる際、硬さを感じてしまうため好ましくない。
【0037】
高吸収性シート20に用いられる不織布16としては、体液が高吸収性シート20の内部へと移動する液透過性を有するものを特に限定なく使用でき、例えば、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布等の不織布、サーマルボンド不織布/スパンボンド不織布積層体である複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、これらの2種以上の積層体である複合シート等が挙げられる。これらの中でも、体液透過性と強度との高水準でのバランス等の観点から、エアスルー不織布が好ましい。不織布16の坪量は、例えば、14g/m以上40g/m以下の範囲である。不織布16の形状は本実施形態の長方形状に限定されず、高吸収性シート20の内部に体液を誘導する観点から、高吸収性シート20内のSAP固定領域30を覆い、かつシート固定領域31を形成可能な形状であればよい。
【0038】
パルプ含有不織布17は、例えば、高吸収性シート20(又は高吸収性ポリマー18)の体液吸収を補助する機能を有している。パルプ含有不織布17は、スパンボンド不織布とパルプ繊維層とを一体化した不織布シートである。このような不織布シートとしては、例えば、不織布を構成する繊維とパルプ繊維とを併用してスパンボンド不織布として作製した混在型不織布シート、スパンボンド不織布とパルプ繊維からなる不織布とを重ね合わせ、加圧処理及び/又は加熱処理を施して得られる圧着又は融着型不織布シート、スパンボンド不織布とパルプ繊維からなる不織布とを比較的少量の接着剤で接合した接着型不織布シート、水流交絡法によりスパンボンド不織布に水流及びパルプ繊維を吹き付けて得られる水流交絡型不織布シート等が挙げられる。なお、水流交絡型不織布シートでは、スパンボンド不織布にパルプ繊維が絡みつき、スパンボンド不織布の一方の表面にパルプ繊維層が形成されるだけでなく、他方の面にもスパンボンド不織布内部を通過してきたパルプ繊維が部分的に突出したり、絡みついたりしていることがある。これらの不織布シートの中でも、パルプ繊維層の機能を十分に発揮させる観点から、水流交絡型不織布シートが好ましい。
【0039】
パルプ含有不織布17のスパンボンド不織布としては、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法等で作製された不織布を特に限定なく使用できるが、その材質としては、例えば、ナイロン(商標名)、ビニロン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の合成樹脂を好ましく使用できる。スパンボンド不織布は、複数の合成樹脂繊維を含んでいてもよい。これらの中でも、強度、柔らかさ等の観点から、ポリプロピレン繊維を含むスパンボンド不織布が好ましく、構成繊維が全てポリプロピレン繊維であるスパンボンド不織布がより好ましい。また、スパンボンド不織布の坪量は特に限定されないが、引張強度と触感の柔らかさの観点から、例えば、7g/m以上20g/m以下である。
【0040】
パルプ繊維層に含まれるパルプ繊維としては特に限定されないが、例えば、ラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルース、ダグラスファー等の針葉樹晒クラフトパルプ(以下「NBKP」ともいう)が挙げられる。NBKPは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。パルプ繊維層の坪量は特に限定されないが、均一性、触感、吸収性等の観点から、例えば30g/m以上70g/m以下である。
【0041】
パルプ繊維の含有量は、例えば、パルプ含有不織布17全量の65質量%以上90質量%以下であり、残部がスパンボンド不織布であり、又は70質量%以上85質量%以下であり、残部がスパンボンド不織布である。パルプ繊維の含有量が65質量%未満であると体液の吸収性、拡散性等の面で安定したパルプ含有不織布17が形成されない傾向があり、90質量%超えるとパルプ含有不織布17が硬くなる傾向がある。
【0042】
パルプ含有不織布17全体としての坪量は、例えば、40g/m以上80g/m以下の範囲、又は40g/m以上60g/m以下の範囲である。40g/m未満であるとパルプ含有不織布17が柔らかくなりすぎる傾向があり、80g/mを超えるとパルプ含有不織布17が硬くなりすぎる傾向がある。
【0043】
高吸収性シート20中に固定される高吸収性ポリマー(SAP)18としては、吸収体11で用いられる高吸収性ポリマーと同様のものを特に限定なく使用できる。高吸収性シート20における高吸収性ポリマー18の坪量は、横漏れ防止の吸収性能を確保する観点から、例えば、200g/m以上1200g/m以下の範囲であり、また、吸収性能、吸収後の肌触り及び着用者の動きやすさ等をより向上させる観点から、例えば、300g/m以上900g/m以下の範囲である。
【0044】
なお、微粉末のSAPは粉体としての流動性が悪く、不織布16側又はパルプ含有不織布17側から高吸収性シート20の外部に漏れ出し、SAPが体液を吸収して硬くなることによりごつごつとした触感が発生し、取扱い性が十分ではないことから、中位粒子径のSAPの使用が好適である。高吸収性ポリマー18の中位粒子径は、例えば、50μm以上600μm以下の範囲、50μm以上550μm以下の範囲又は100μm以上500μm以下の範囲である。
【0045】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品1の製造方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法を採用することができ、例えば、衣類側から、バックシート12、吸収体11、トップシート10の順に積層し、トップシート10とバックシート12とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定した上で、第1の立体ギャザー13を所定の位置に固定し、さらにその幅方向内側に高吸収性シート20、第1の立体ギャザー13の幅方向外側に第2の立体ギャザー14を固定することで、吸収性物品1を製造することができる。そして、これを包装体に個別包装した後、長手方向に3つ折りにして折り畳めばよい。
【0046】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る吸収性物品2は、吸収性物品1の変形例であり、図4に示すように、第1の立体ギャザー13の幅方向外側に設けられた第2の立体ギャザー14を有する以外は、吸収性物品1と同じ構成を有している。第2の立体ギャザー14を設けることにより、大量の体液が一度に排出されても、体液の横漏れを顕著に防止できる。
【0047】
(第2の立体ギャザー)
第2の立体ギャザー14は、一対の第1の立体ギャザー13の、吸収性物品1の幅方向外側に吸収性物品1の長手方向に沿って設けられ、撥水性及び/又は防水性のシートを含んでいる。本実施形態の第2の立体ギャザー14は、弾性伸縮部材14aと、第2のシート部材14bと、を含む。弾性伸縮部材14aは、第1の立体ギャザー13の弾性伸縮部材13aと同じ機能を有し、かつ同じ材料を使用できる。第2のシート部材14bは、いずれも第1のシート部材13bの外側において、幅方向一端がバックシート12の幅方向両端付近に固定され、幅方向途中部がトップシート10の肌側面の幅方向両端付近に固定され、幅方向他端が弾性伸縮部材14aの配設により起立性を有する自由端になっている。第2のシート部材14bの幅方向一端の固定位置の変形例も第1のシート部材13aと同じであり、用いられる材料も同じである。第2の立体ギャザー14(又は第2のシート部材14b)の坪量は、第1の立体ギャザー13と同様に、例えば10g/m以上100g/m以下の範囲である。
【0048】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることは当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0049】
1、2 吸収性物品
10 トップシート
11 吸収体
12 バックシート
13 第1の立体ギャザー
13a、14a 弾性伸縮部材
13b 第1のシート部材
13x 表面
14 第2の立体ギャザー
14b 第2のシート部材
16 不織布
16a 表面
17 パルプ含有不織布
17a、17b 表面
18 高吸収性ポリマー
20 高吸収性シート
20a 膨潤後の高吸収性シート
30 SAP固定領域
31 シート固定領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6