(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】壁面に意匠性を付与する水系塗材組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 133/00 20060101AFI20240529BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240529BHJP
C09D 5/28 20060101ALI20240529BHJP
C09D 7/43 20180101ALI20240529BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240529BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240529BHJP
E04F 13/02 20060101ALN20240529BHJP
【FI】
C09D133/00
C09D5/02
C09D5/28
C09D7/43
C09D7/61
C09D7/63
E04F13/02 A
(21)【出願番号】P 2020109016
(22)【出願日】2020-06-24
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松崎 亮弥
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-106958(JP,A)
【文献】特開2018-127535(JP,A)
【文献】特表平11-503710(JP,A)
【文献】特開平08-157757(JP,A)
【文献】特開2006-152231(JP,A)
【文献】特開2010-158666(JP,A)
【文献】特開2014-205765(JP,A)
【文献】国際公開第2007/077879(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0264579(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 133/00
C09D 5/02
C09D 5/28
C09D 7/43
C09D 7/61
C09D 7/63
E04F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル樹脂系エマルジョンと、充填材と、骨材と、顔料と、増粘剤と、成膜助剤と、から成り、成膜助剤はグルタル酸ジイソブチルから成
り、グルタル酸ジイソブチルはアクリル樹脂系エマルジョンの固形分100重量部に対して5~20重量部であることを特徴とする壁面に意匠性を付与する水系塗材組成物。
【請求項2】
グルタル酸ジイソブチルはアクリル樹脂系エマルジョンの固形分100重量部に対して5~10.0重量部であることを特徴とする請求項1記載の壁面に意匠性を付与する水系塗材組成物。
【請求項3】
骨材が硅砂であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の壁面に意匠性を付与する水系塗材組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の外壁や内壁の壁面に0.4~8.5mm厚に塗付し、該壁面に様々な凹凸模様から成る意匠性を付与する一液型の水系塗材組成物であって、特には施工後に硬化した塗材からの臭気が少ない、壁面に意匠性を付与する水系塗材組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、多価アルコールやグリコールエーテル類の親水性の溶剤の配合量が少なく、低温下で良好な塗膜乾燥性があり、意匠性を有した凹凸のある仕上がりや施工時に塗膜厚みに微妙な差異があってもひび割れを生じることがなく、温度が高い夏季に施工しても塗膜表面に皮張りが生じることが無く作業性が良好な水系塗材組成物が提案されている(特許文献1)。
【0003】
該特許文献1に係る水系塗材組成物は、アクリル樹脂エマルジョン、表面に水酸基を有する骨材、ビニル基を有するトリアルコキシシラン、顔料、充填材、増粘剤、成膜助剤とから成る水系塗材組成物であって、固形分重量が50%以上80%未満である水系塗材組成物であり、成膜助剤を必須としていて、該成膜助剤はエマルジョンのポリマー粒子の融着を促進し、該ポリマーによる均一な皮膜を形成させることを目的で配合され、エチレングリコールジエチルエーテル、ベンジルアルコール、ブチルセロソルブ、エステルアルコールが使用される、としているが、明細書中における実施例では入手が容易で使い易いテキサノール(2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート)を使用している。
【0004】
一方、非特許文献1では、新築小学校校舎の使用開始後に、児童や教職員の約半数が様々な体調不良を訴え、竣工後約6か月を経過した時点で室内空気中化学物質を精査したところ、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(テキサノール)と1-メチル-2-ピロリドンが高濃度で検出され、実験によりこれらの物質が校舎使用開始に伴う暖房の使用により、校舎内の室内空気を汚染したと推測している(非特許文献1)。
【0005】
また、厚生労働省では平成30年8月31日に第22回シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会を開き、これらの物質について新たに指針値を定める検討を行っていて、アクリル樹脂エマルジョンを使用し、主として成膜助剤にテキサノールを使用することでポリマーによる均一な被膜を形成する水系塗材組成物においては、施工後に非特許文献1に示されるようにテキサノールに起因する臭気を発する可能性を有することが課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】小林智ほか;水性塗料成分1-メチル-2-ピロリドン及びテキサノールによる新築小学校の室内空気汚染,室内環境,vol.13,No.1,pp39-52,2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、成膜助剤にテキサノール(2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート)を使用することなく、建築物の外壁や内壁の壁面に0.4~8.5mm厚に塗付し、該壁面に様々な凹凸模様から成る意匠性を付与することが出来、施工後に硬化した塗材からの臭気が少ない水系塗材組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題について鋭意検討し、請求項1記載の発明は、アクリル樹脂系エマルジョンと、充填材と、骨材と、顔料と、増粘剤と、成膜助剤と、から成り、成膜助剤はグルタル酸ジイソブチルから成り、グルタル酸ジイソブチルはアクリル樹脂系エマルジョンの固形分100重量部に対して5~20重量部であることを特徴とする壁面に意匠性を付与する水系塗材組成物を提供する。
【0010】
請求項2記載の発明は、グルタル酸ジイソブチルはアクリル樹脂系エマルジョンの固形分100重量部に対して5~10.0重量部であることを特徴とする請求項1記載の壁面に意匠性を付与する水系塗材組成物を提供する。
【0011】
請求項3記載の発明は、骨材が硅砂であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の壁面に意匠性を付与する水系塗材組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の壁面に意匠性を付与する水系塗材組成物は、成膜助剤にグルタル酸ジイソブチルを使用しているため壁面に施工後、硬化した塗材からの臭気が少ないという効果がある。
【0013】
特に請求項2記載の水系塗材組成物は、グルタル酸ジイソブチルの配合量がアクリル樹脂系エマルジョンの固形分100重量部に対して5~10.0重量部と少ないため、特に臭気が低い効果があり、室内の内壁に塗付するのに適するという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明の壁面に意匠性を付与する水系塗材組成物は、アクリル樹脂系エマルジョンと、充填材と、骨材と、顔料と、増粘剤と、成膜助剤と、から成り、成膜助剤はグルタル酸ジイソブチルから成り、グルタル酸ジイソブチルはアクリル樹脂系エマルジョンの固形分100重量部に対して5~20重量部であることを特徴とする壁面に意匠性を付与する水系塗材組成物であり、必
要に応じて消泡剤や分散剤等を配合することが出来る。
【0016】
<アクリル樹脂系エマルジョン>
本発明のアクリル樹脂系エマルジョンには、アクリル酸エステル系共重合樹脂、酢酸ビニル・アクリル酸エステル系共重合樹脂、シリコン変性アクリル樹脂等のアクリル樹脂系エマルジョンを使用することができる。アクリル樹脂とするアクリル系単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、n-アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、等を使用することが出来る。他の不飽和単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン等のスチレン誘導体;(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、及びクロトン酸等のカルボキシル基含有単量体;(メタ)アクリル酸や、クロトン酸、イタコン酸;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや、2(3)-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、アリルアルコール、多価アルコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有単量体;(メタ)アクリルアミドや、マレインアミド等のアミド基含有単量体;2-アミノエチル(メタ)アクリレートや、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3-アミノプロピル(メタ)アクリレート、2-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン等のアミノ基含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレートや、アリルグリシジルエーテル、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物と活性水素原子を有するエチレン性不飽和単量体との反応により得られるエポキシ基含有単量体やオリゴノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、3-(メタ)アクリロキシブチルフェニルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、及び3-(メタ)アクリロキシプロピルジエチルメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有単量体;その他、酢酸ビニル、塩化ビニル、更には、エチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、ジアルキルフマレート等を使用することが出来る。
【0017】
アクリル樹脂系エマルジョン中の樹脂のガラス転移温度は-30~20℃が好ましい。ガラス転移温度が-30℃未満の場合は仕上がり表面にタックが生じて汚れやすくなり、20℃超の場合は成膜不良となる。本発明の水系塗材組成物全体100重量部中の樹脂固形分は5.0~20.0重量部が好ましく、5.0重量部未満では粘着性、塗付作業性が低下し、また20.0重量部超では粘度が低下し塗付作業性が低下すると共に表現できる意匠(パターン)数が低下する。市販のアクリル樹脂系エマルジョンとしては、アクロナールPS743(BASF社製、固形分55重量%)がある。
【0018】
<充填材>
本発明に使用する充填材は、平均粒径D50(重量による積算50%の粒径)が100μm未満のものを言い、組成物の粘度や塗付性の調整を目的として配合し、重質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、硅砂粉等が使用でき、重質炭酸カルシウムが安価でコスト的負担を軽減させることが出来る。充填材の配合量は塗材組成物全体100重量部に対して2~30重量部、好ましくは3~25重量部であり、2重量部未満では下地の色が透けるなどの隠蔽性が不足し、30重量部超では塗材粘度が高くなって塗付作業性が不良となる。3重量部未満では色調によっては隠蔽性が低下する場合があり、25重量部超では冬季等の低温度下では塗付作業性が低下する傾向にある。
【0019】
<骨材>
本発明に使用する骨材は、平均粒径D50(重量による積算50%の粒径)が100μm以上のものを言い、仕上がり表面に凹凸を付与することを目的として配合されるが、平均粒径が100μm以上であればその粒子径は任意に選択することができ、例えば硅砂,ガラス,シリカ,タルク,重質炭酸カルシウムなどが使用可能である市販の平均粒径200μmの重質炭酸カルシウムとしてはK-250(商品名,旭鉱末(株)製)がある。骨材の配合量は組成物全体100重量部に対して25~65重量部であり25重量部未満では意匠性(塗材の凹凸感)が不足し、65重量部超では作業性が低下する。
【0020】
<顔料>
顔料には、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(弁柄)、クロム酸鉛、黄鉛、黄色酸化鉄等の無機系顔料等が使用できるが、中でも酸化チタンは下地の隠蔽性に優れ、白色であるため主たる顔料として使用することが出来る。
【0021】
<増粘剤>
増粘剤は、鏝塗り作業性や保水性の向上を目的として配合し、水溶性セルロースエーテル、ウレタン変性ポリエーテル、ポリカルボン酸等が使用できる。水溶性セルロースエーテルとしてはhiメトローズ90SH15000(信越化学株式会社製、商品名)がある。増粘剤の配合量は組成物全体100重量部に対して0.1~5.0重量部が好ましく、0.1重量部未満では十分な増粘効果が得られず塗材の凹凸模様が不十分となり、5.0重量部超では塗付作業性が低下する。
【0022】
<成膜助剤>
成膜助剤には、エマルジョンのポリマー粒子の融着を促進し、ポリマーによる均一な皮膜を形成させることを目的で配合し、本発明では特にグルタル酸ジイソブチルを使用する。グルタル酸ジイソブチルから成る成膜助剤の配合量はアクリル樹脂系エマルジョンの固形分100重量部に対して5~20重量部が好ましく、5~10.0重量部がより好ましい。5重量部未満では低温での成膜が不十分となる場合があり、20重量部超では塗材の表面に汚れが付着し易くなる場合がある。また10.0重量部以下ではより臭気が低くなる傾向にある。
【0023】
上記の配合成分の他に、塗材中の巻き込み等による泡を消失させるために消泡剤や、充填材や顔料等を均一に分散させるための分散剤が配合されることがある。
【0024】
本発明の水系塗材組成物は施工にあたっては、ローラー刷毛、パターンローラー、金鏝、吹き付けガン等を使用して、目的としている意匠となるように適切に施工器具を選択し、その意匠に適した塗付量で仕上げる。配合された水系塗材組成物の適正粘度としては、300~700Pa・sが好ましく、このような粘度とするには、適当量の水を加えることで調整することが出来る。
【0025】
また、本発明の水系塗材組成物の塗付厚みは0.4mm~8.5mmと一般的な塗料よりも厚く、上記ローラー刷毛、パターンローラー、金鏝、吹き付けガン等を使用して、目的とする意匠を付与する。
【0026】
以下、実施例及び比較例にて具体的に説明する。
【実施例】
【0027】
<材料の作製>
表1の配合に従って、実施例及び比較例の水系塗材組成物を作製した。表1において、アクリル樹脂系エマルジョンはアクロナール7067(固形分:47~49%、樹脂のガラス転移温度:10℃、BASF社製、商品名)を使用し、充填剤Aは硅砂粉#300(平均粒径D50が25μm、株式会社トウチュウ製、商品名)を、充填材Bは平均粒径D50が10μmの重質炭酸カルシウムBF-200(備北粉化社製、商品名)を、充填材Cは平均粒径D50が20μmの重質炭酸カルシウムSFT-2000(三共製粉製、商品名)を使用し、骨材Aは、東北硅砂7号(比重1.5、平均粒径D50150μm、東北硅砂株式会社製、商品名)を、骨材Bは、平均粒径D50が200μmの重質炭酸カルシウムK-250(旭鉱末社製、商品名)を使用し、顔料には酸化チタンR-820(石原産業株式会社製、商品名)を使用し、増粘剤は水溶性セルロースエーテルhiメトローズ90SH-15000(信越化学株式会社製、商品名)を、成膜助剤Aにはグルタル酸ジイソブチルを、成膜助剤Bにはテキサノール(2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート)を使用し、成膜助剤CにはC14脂肪酸のイソプロピルエステルを使用し、成膜助剤Dには炭素数不明の脂肪酸エステル化合物(ケン化価:250mgKOH/g、酸価0.5mgKOH/g、液状、沸点:270~280℃)をそれぞれ使用した。この他には消泡剤及び分散剤を添加したが、これらは水系塗材用の市販品より適宜選択されるものを使用することが出来る。これらの原料を均一に混合分散させ、実施例及び比較例の壁面に意匠性を付与する水系塗材組成物とした。
【0028】
【0029】
実施例及び比較例の水系塗材組成物について、以下に示す評価方法により評価した。
【0030】
<評価方法>
【0031】
<低温安定性>
実施例及び比較例の水系塗材組成物を、直径100mm容量1リットルの金属製容器に充填し密閉する。まず-5±2℃の恒温器内に18時間静置し、次に23℃50%RHの環境下に6時間静置する。この操作を3回繰り返したのち、組成物中に塊の発生、分離、凝集の有無を確認し、これらが無いものを〇、それ以外を×と評価した。
【0032】
<ひび割れ抵抗性>
JISA5430規定のフレキシブルボード(300mm×150mm×4mm)にシーラーとして溶剤型塩化ゴム系下塗り材(JS-410、アイカ工業株式会社製、商品名)を0.2kg/m2塗布し、4時間以上乾燥させた後、実施例及び比較例の水系塗材組成物を0.9kg/m2にて金鏝を使用して塗付し、23℃50%RH環境下で12時間養生した。その後同一の水系塗材組成物を塗付して、水系塗材組成物の塗付厚みが0.4~8.5mmになるように金鏝を使用して塗付し、直ちに風速3m/sの風(23℃50RH%)が流れる風洞内に、塗付面が気流と並行となるように静置し、6時間後に表面にひび割れが発生しているかどうか目視によって確認した。ひび割れが発生しているものを×、無いものを〇と評価した。
【0033】
<初期耐水性>
JISA5430規定のフレキシブルボード(150mm×150mm×4mm)にシーラーとして溶剤型塩化ゴム系下塗り材(JS-410、アイカ工業株式会社製、商品名)を0.2kg/m2塗布して、4時間以上乾燥させた後、実施例又は比較例の水系塗材組成物を塗付量0.9kg/m2にて金鏝を使用して塗付し、23℃50%RH環境下で12時間養生した。その後同一の水系塗材組成物を塗付して、水系塗材組成物の塗付厚みが0.4~8.5mmになるように金鏝を使用して塗付し、同様に23℃50%RHで1日間養生して試験体とした。養生後23℃の水に浸漬し、24時間経過後の表面の膨れ、軟化を目視及び指蝕で評価した。膨れ、軟化がない場合は○、これ以外は×とした。
【0034】
<温冷繰返し性>
JIS A 6909に準拠した方法で試験体を作製した。先ず70×70×20mmモルタルピースにシーラーとして水系アクリル下塗り材(JS-500、アイカ工業株式会社製、商品名)を0.2kg/m2塗布して、4時間以上乾燥させた後、実施例又は比較例の水系塗材組成物を塗付量0.9kg/m2にて金鏝を使用して塗付し、23℃50%RHで12時間養生した。その後同一の水系塗材組成物を塗付して、水系塗材組成物の塗付厚みが0.4~8.5mmになるように金鏝を使用して塗付し、同様に23℃50%RHで14日間養生して試験体とした。当該試験体を、温度23℃18h水浸漬→-20℃3h→50℃3hの温冷繰り返し試験を10サイクル行い、塗材表面の膨れの有無を目視にて確認した。膨れが発生した場合は×、膨れの発生がない場合は○とした。
【0035】
<初期残存タック性>
JISA5430規定のフレキシブルボード(150mm×150mm×4mm)にシーラーとして溶剤型塩化ゴム系下塗り材(JS-410、アイカ工業株式会社製、商品名)を0.2kg/m2塗布して、4時間以上乾燥させた後、実施例又は比較例の水系塗材組成物を塗付量0.9kg/m2にて金鏝を使用して塗付し、23℃50%RH環境下で12時間養生した。その後同一の水系塗材組成物を塗付して、水系塗材組成物の塗付厚みが0.4~8.5mmになるように金鏝を使用して塗付し、同様に23℃50%RHで1日間養生して試験体とした。該試験体の塗材面を水平に保持しながら、JISZ8901に規定する焼成関東ローム 8種の粉体を0.1~0.5kg/m2となるように振り掛け、その後塗材面を垂直に保持して該粉体を落下させ、塗材表面の汚れの状況を目視で判定した。塗材面全体に粉体の付着があるものを×、部分的に粉体の付着があるものを△、粉体の付着が無いものを〇と評価した。
【0036】
<促進耐候性>
JISA5430規定のフレキシブルボード(70mm×750mm×8mm)にシーラーとして溶剤型塩化ゴム系下塗り材(JS-410、アイカ工業株式会社製、商品名)を0.2kg/m2塗布して、4時間以上乾燥させた後、実施例又は比較例の水系塗材組成物を塗付量0.9kg/m2にて金鏝を使用して塗付し、23℃50%RH環境下で12時間養生した。その後同一の水系塗材組成物を塗付して、水系塗材組成物の塗付厚みが0.4~8.5mmになるように金鏝を使用して塗付し、同様に23℃50%RHで7日間養生して試験体とした。該試験体に紫外線耐候性試験機(EYE SUPER UV TESTER(SUV-W161:岩崎電気社製、メタルハライドランプ))にて紫外線照射後、塗材表面の照射前と照射後との色差ΔEを色彩色差計(CM-2600d、コニカミノルタセンシング株式会社製)にて測定した。ΔEが3.0以上を×、ΔEが3.0未満を〇と評価した。
【0037】
<屋外暴露性>
JISA5430規定のフレキシブルボード(265mm×100mm×4mm)にシーラーとして溶剤型塩化ゴム系下塗り材(JS-410、アイカ工業株式会社製、商品名)を0.2kg/m2塗布して、4時間以上乾燥させた後、実施例又は比較例の水系塗材組成物を塗付量0.9kg/m2にて金鏝を使用して塗付し、23℃50%RH環境下で12時間養生した。その後同一の水系塗材組成物を塗付して、水系塗材組成物の塗付厚みが0.4~8.5mmになるように金鏝を使用して塗付し、同様に23℃50%RHで7日間養生して試験体とした。試験体は2体づつ作製し、そのうちの一体を水平面に対して70度の角度で縦長状に設置した。当該試験体の塗膜面の上部から高さ300mmの位置には、水平面に対して10度の角度で設置された波板(波の幅32mm、長さ500mm)の下端部を配設させ、波板の波底部を流下してくる雨水が、試験体の塗膜上部に落下し、当該雨水が試験体の塗膜下部に自重で流下するようにした。この条件で3ヶ月間屋外に暴露し、雨水によって汚れた塗膜部分と、暴露していないもう一体の試験体塗膜との色差を色彩色差計(CM-2600d、コニカミノルタセンシング株式会社製)にて測定し、当該色差ΔEを屋外暴露性として評価した。ΔE0.5未満を○、0.5以上を×とした。
【0038】
<臭気性>
JISA5430規定のフレキシブルボード(300mm×300mm×4mm)にシーラーとして溶剤型塩化ゴム系下塗り材(JS-410、アイカ工業株式会社製、商品名)を0.2kg/m2塗布して、4時間以上乾燥させた後、実施例又は比較例の水系塗材組成物を塗付量0.9kg/m2にて金鏝を使用して塗付し、10℃環境下で12時間養生した。その後同一の水系塗材組成物を塗付して、水系塗材組成物の塗付厚みが0.4~8.5mmになるように金鏝を使用して塗付し、10℃環境下に載置され且つ内部が10℃となっている臭気測定用チャンバー(500mm×500mm×500mm)内に2か月間放置し試験体とした。その後該試験体が置かれた臭気測定用チャンバー自体を23℃50%RH環境下に18時間放置し、その後直ちに該チャンバー内に鼻を入れ、強い臭気を感じるものを×、僅かに臭気を感じるものを△、臭気を感じないものを〇と評価した。
【0039】
<意匠性>
900mm角のJISA5430規定のフレキシブルボードを垂直に設置し、実施例又は比較例の水系塗材組成物を剣先ゴテで凹凸の差を付けながら塗付厚みが0.4~8.5mmと成るようにして扇型の柄をつけ、そのまま乾燥させる。硬化後、つけた柄がそのままの状態を保っているものを○、柄に崩れ(ダレ、レベリング)がある場合は×とした。
【0040】
<評価結果>
【0041】
評価結果を表2に示す。
【0042】