(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】洗濯機用の処理剤タンク及び洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 39/02 20060101AFI20240529BHJP
【FI】
D06F39/02 A
(21)【出願番号】P 2020150575
(22)【出願日】2020-09-08
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】椎橋 貞人
【審査官】高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-074971(JP,A)
【文献】実開平05-037619(JP,U)
【文献】特表2005-514133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯運転に際して所定量の洗濯処理剤を洗濯機の水槽内に自動で投入する装置に用いられ、複数回分の洗濯処理剤を貯留可能な、洗濯機用の処理剤タンクであって、
前記処理剤タンクに洗濯処理剤を補給するための補給口を備え、
前記補給口は、前記処理剤タンク内部と外部とを連通するとともに、前記処理剤タンク内部にて当該補給口を区画形成する仕切壁が
、当該処理剤タンクの上壁側の部分から下方へ延設されており、
前記仕切壁には、その板厚方向に貫通する孔部または切欠き部が設けられている洗濯機用の処理剤タンク。
【請求項2】
軸部を有し、前記補給口を開閉する蓋を備え、
前記処理剤タンクにおいて、前記蓋の前記軸部を軸支させる軸受部分または前記軸部の近傍部分に、当該処理剤タンク内部と外部とを連通し且つ前記補給口を前記蓋で閉じたときの空気の通り道となる空気口を設けた請求項
1記載の洗濯機用の処理剤タンク。
【請求項3】
前記処理剤タンク
には、当該処理剤タンクにおいて満杯の液位を示す指標部
が設けられている請求項1
または2記載の洗濯機用の処理剤タンク。
【請求項4】
前記孔部または切欠き部は、その一部若しくは全部が、前
記指標部よりも上方に位置する請求項
3記載の洗濯機用の処理剤タンク。
【請求項5】
前記処理剤タンクは、上面開口を有するタンク本体と、前記上面開口を覆う
前記上壁を有するタンクカバーと、の組み合わせで構成されており、
前記タンクカバー
の前記上壁において、前記補給口を開閉する蓋を有するとともに、前記タンク本体の内壁と組み合わさる外周リブを有し、
前記補給口は、前記仕切壁と前記外周リブとで形成されており、その補給口における当該外周リブの下端が、前
記指標部と同じ高さ若しくは前記指標部よりも上方に位置する請求項
3または4記載の洗濯機用の処理剤タンク。
【請求項6】
前記処理剤タンクは、上面開口を有するタンク本体と、前記上面開口を覆う
前記上壁を有するタンクカバーと、の組み合わせで構成されており、
前記タンクカバー
の前記上壁において、前記補給口を開閉する蓋を有するとともに、前記タンク本体の内壁と組み合わさる外周リブを有し、
前記外周リブは、前記タンク本体の内壁と組み合わさるよう前記タンクカバーから下方へ突出し、その外周リブの突出長が、前
記指標部よりも上方に位置するように設定されている請求項
3または4記載の洗濯機用の処理剤タンク。
【請求項7】
水槽と、
洗濯運転に際して所定量の洗濯処理剤を水槽内に自動で投入する装置であって、複数回分の洗濯処理剤を貯留可能な処理剤タンク、及びその処理剤タンク内の洗濯処理剤を前記水槽へ投入するために駆動される駆動手段を有する自動投入装置と、を備えた洗濯機であって、
前記処理剤タンクに洗濯処理剤を補給するための補給口を備え、
前記補給口は、前記処理剤タンク内部と外部とを連通するとともに、前記処理剤タンク内部にて当該補給口を区画形成する仕切壁が
、当該処理剤タンクの上壁側の部分から下方へ延設されており、
前記仕切壁には、その板厚方向に貫通する孔部または切欠き部が設けられている洗濯機。
【請求項8】
水槽と、
洗濯運転に際して所定量の洗濯処理剤を水槽内に自動で投入する装置であって、複数回分の洗濯処理剤を貯留可能な処理剤タンク、及びその処理剤タンク内の洗濯処理剤を前記水槽へ投入するために駆動される駆動手段を有する自動投入装置と、を備えた洗濯機であって、
前記処理剤タンクに洗濯処理剤を補給するための補給口を備え、
前記補給口は、前記処理剤タンク内部と外部とを連通するとともに、前記処理剤タンク内部にて当該補給口を区画形成する仕切壁が
、当該処理剤タンクの上壁側の部分から下方へ延設されており、
前記
処理剤タンクには、
当該処理剤タンクにおける上部の空間であって前記補給口側の空間と隣り合い且つ前記仕切壁で仕切られた空間と連通する孔部または切欠き部が
前記仕切り壁の下端より上方に設けられている洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、洗濯機用の処理剤タンク及び洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、ユーザの利便性向上のために、洗濯処理剤を自動投入用のタンクに予め複数回分貯留しておき、洗濯運転時に必要量をタンクから水槽へ自動的に投入する自動投入装置を備えた洗濯機が開発されている。この洗濯機の自動投入装置において、タンクは、ユーザにより洗濯処理剤が補給口から補給され、貯留されるようになっており、具体的には以下のように構成されている。
【0003】
即ち自動投入装置のタンクにおいて、洗濯処理剤の補給口は、例えばタンク上面側にて開閉される開口として設けられるとともに、その開口周縁から下方へ延びる仕切り部分でタンク内部を仕切る形態をなしている。
この場合、補給口は、タンク内部において仕切り部分で囲われた注ぎ口となるため、その仕切り部分の形態如何によっては(例えば仕切り部分でより深く仕切るようにすれば)洗濯処理剤を注ぎ易くなり、又、当該補給口の開口から覗く仕切り部分の内壁にて、洗濯処理剤を注ぐときの液位を視認することができる。
【0004】
しかしながら、係る補給口は、タンク内部において仕切り部分で囲われた空間と、その周りの空間とを仕切ることとなるから、補給口から覗く満タン液位まで洗濯処理剤を注いだとしても、その周りの空間まで洗濯処理剤が満たされず、実際のタンクの有効容積を狭める虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、内部に補給口を区画形成した処理剤タンクにおける有効容積の減少を抑制することができる洗濯機用の処理剤タンク及び洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の洗濯機用の処理剤タンクは、洗濯運転に際して所定量の洗濯処理剤を洗濯機の水槽内に自動で投入する装置に用いられ、複数回分の洗濯処理剤を貯留可能なものであり、前記処理剤タンクに洗濯処理剤を補給するための補給口を備え、前記補給口は、前記処理剤タンク内部と外部とを連通するとともに、前記処理剤タンク内部にて当該補給口を区画形成する仕切壁が、当該処理剤タンクの上壁側の部分から下方へ延設されており、前記仕切壁には、その板厚方向に貫通する孔部または切欠き部が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】処理剤タンクにおける補給口側の部分を拡大して示す平面図
【
図7】補給口を開いた状態を拡大して示す補給口近傍部の斜視図
【
図8】タンクカバーにおける密閉構造を外周リブとともに拡大して示す断面図
【
図9】第2実施形態における処理剤タンクの補給口近傍部を拡大した斜視図
【
図10】同補給口近傍部を空気口とともに拡大して示す断面図
【
図11】第3実施形態におけるタンクカバーの構成を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した複数の実施形態について、図面に基づき説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付す等して説明を省略する。
<第1実施形態>
第1実施形態について
図1~
図8を参照しながら説明する。本実施形態の洗濯機1は、洗濯物たる衣類に対する所定の処理、この場合少なくとも、洗い処理、すすぎ処理、及び脱水処理を含む洗濯運転の実行が可能な洗濯機を例とする。また、
図1に示すように、洗濯機1は、回転槽4の回転中心軸が水平方向に延び或は水平方向に対して傾斜する方向に延びる、所謂横軸型のドラム式洗濯機とする。
【0010】
洗濯機1において、その外郭を構成する外箱2は矩形箱状をなしている。外箱2の前面部2aは、やや前下がりの傾斜状に形成されており、この前面部2aには、図示しない洗濯物出入口を開閉する扉3が設けられている。
図1、
図2に示すように、外箱2の内部には、前記回転槽4と、この回転槽4を収容する水槽5とが設けられている。図示は省略するが、回転槽4は、内部に洗濯物を収容することが可能な有底円筒状をなすドラムであり、その内周面には、洗濯物をかき上げるための周知のバッフルが設けられている。水槽5は、水を溜めることが可能な有底円筒状をなす槽であり、図示しないサスペンションによって弾性的に支持されている。
【0011】
水槽5の背面側には、例えばDCブラシレスモータからなる洗濯機モータ6が設けられている。洗濯機モータ6の回転軸は、水槽5の背面を貫通して回転槽4の背面に連結されており、回転槽4は、洗濯機モータ6により直接回転駆動される。
また、
図2に示すように、洗濯機1は、水槽5内に水を供給するための給水経路7aを含む給水装置7、及び水槽5内の水を機外に排水するための排水経路8aを含む排水装置8を備えている。給水装置7は、例えば水道などの水源(図示略)から水槽5に延びる給水経路7aの途中に、後述する給水弁7bなどを備えた構成となっている。また、排水装置8は、水槽5の底部から機外に延びる排水経路8aの途中に、排水弁8bなどを備えた構成となっている。
【0012】
図1に示す外箱2上面部の前側部分には、操作パネル9が設けられている。操作パネル9について、詳しい図示は省略するが、電源スイッチや、スタートキー、洗濯運転のコースの設定等を行うための設定キー等、各種操作キー等が設けられている。また、操作パネル9では、洗濯運転の実行に際して、後述する自動投入装置10により自動で洗濯処理剤を投入するか、又は図示しない手動用投入ケースを用いて手動で1回分の洗濯処理剤を投入するかについて、ユーザによる選択操作が可能とされている。
【0013】
給水装置7は、
図1に示すように、例えば外箱2内における水槽5上方の左奥部に位置して設けられている。給水装置7は、図示しない外部の水源に接続されるホース接続口7cから、水槽5上部の接続口5a(
図2参照)へ延びる給水経路7aの途中に供給部7dを備える。
供給部7dは、自動投入装置10により洗濯処理剤が供給される部分であり、給水弁7bは、ホース接続口7cと供給部7dとの間に設けられている。給水弁7bは、洗濯機1全体の制御を司る図示しない制御装置により駆動制御され、給水経路7aを開閉する。
【0014】
自動投入装置10は、予め複数回分の洗濯処理剤を貯留しておき、複数回の洗濯運転にわたって所定量の洗濯処理剤を自動で水槽5内に供給する装置である。
図1、
図2に示すように、自動投入装置10は、洗剤や柔軟仕上げ剤といった洗濯処理剤を貯留するための処理剤タンク11、これを収容するタンク収容部12及びカバー14、投入ポンプ13等を備えている。
処理剤タンク11は、例えば合成樹脂製の容器であり、前後方向又は左右方向に長い矩形容器状をなしている。処理剤タンク11は、複数回の運転で使用する洗濯処理剤を貯留するために、例えば少なくとも数百mL~2L程度の容量を有する。
また、本実施形態の処理剤タンク11は、
図1に示すように例えば2つの処理剤タンク11A,11Bで構成されるものとする。このうち、一方の処理剤タンク11Aは、洗濯処理剤として洗剤を貯留し、他方の処理剤タンク11Bは、洗濯処理剤として柔軟仕上げ剤を貯留する。
【0015】
なお、一般的な洗濯運転においては、洗剤の消費量が柔軟仕上げ剤の消費量よりも多いことから、
図1に示す2つの処理剤タンク11A,11Bのうち、洗剤を貯留する処理剤タンク11Aを、柔軟仕上げ剤を貯留するための処理剤タンク11Bよりも容量を大きくしている。もっとも、2つの処理剤タンク11A,11Bの容量を同一としてもよい。
【0016】
自動投入装置10は、各処理剤タンク11A,11Bに対応した数の投入ポンプ13A,13Bを有している(
図2参照)。
本実施形態において、処理剤タンク11A,11B及び投入ポンプ13A,13Bは、夫々左右で対をなす略同様の構成を採用していることから、
図2では便宜上、「処理剤タンク11」及び「投入ポンプ13」として各々1つずつ示している。また、処理剤タンク11A,11B及び投入ポンプ13A,13Bは、洗剤用のものに符号「A」を、柔軟仕上げ剤用のものに符号「B」を付したものであり、各々1ずつ代表して「処理剤タンク11」及び「投入ポンプ13」と称し、説明を簡単化する。
【0017】
投入ポンプ13は、例えばモータやソレノイドなどのアクチュエータによってピストンを駆動することにより液体を吸引して送出する構成のポンプ13である。投入ポンプ13は、流入側にポンプ接続部13aを有しており、そのポンプ接続部13aを介して処理剤タンク11に接続されている。これにより、投入ポンプ13は、処理剤タンク11内から所定量、この場合、1回の運転に使用する量の洗濯処理剤を吸引し、その吸引した洗濯処理剤を、給水経路7aの供給部7d側へ吐出する。投入ポンプ13は駆動手段として、前記洗濯運転を制御する制御装置により洗濯処理剤の種類別に駆動制御される。
【0018】
図1に示すように、タンク収容部12は、外箱2上面部の開口2bに臨み、当該収容部12の上面が開口した矩形箱状をなしている。タンク収容部12は、例えば2つの処理剤タンク11を左右に並べて外箱2内部に収容することが可能な大きさに形成されている。タンク収容部12のカバー14は、開口2bに合わさる矩形状のものである。カバー14は、開口2bの後縁部に設けられた支持軸14aにより回動可能に軸支され、開口2bを開閉する。
【0019】
各処理剤タンク11は、カバー14を開放した状態で、タンク収容部12に対して開口2bから着脱することができる。なお、処理剤タンク11には、タンク収容部12への当該タンク11の着脱時にユーザの手指を掛けることが可能な手掛部16(
図3参照)が設けられるとともに、ポンプ接続部13aに対して着脱される導出管17が設けられているが、手掛部16や導出管17を含むタンク11の構成について、詳しくは後述する。
【0020】
上記した処理剤タンク11は、タンク収容部12に収容されるようにして取付けられることに伴い、その導出管17がポンプ接続部13aに接続され、嵌合する(
図2、
図3参照)。この状態で、給水弁7bが開放されると、ホース接続口7cから供給された水道水が給水経路7aに流入し供給部7dを通る。供給部7dには、投入ポンプ13の駆動により、所要量の洗濯処理剤が自動的に供給される。
このため、供給部7dに供給された洗濯処理剤は、給水弁7bにより供給される水によって、或いは当該水とともに給水経路7aを経由して、水槽5内に供給される。こうして、自動投入装置10は、洗濯運転に際して、所定量の洗濯処理剤を水槽5内に自動で投入するようになっている。
【0021】
さて、本実施形態の処理剤タンク11は、洗濯処理剤を補給するための補給口19を備えており、ユーザにより洗濯処理剤が補給口19から補給され、貯留される。係る処理剤タンク11の構成について、
図3~
図8も参照しながら詳述する。
【0022】
図3、
図4に示すように、処理剤タンク11は、上面開口20を有するタンク本体21と、上面開口20を覆うタンクカバー22と、の組み合わせで構成されている。
タンク本体21は、底壁21aと、周壁21b~21dとしての前壁21b、後壁21c、及び左右の側壁21dと、を有し、上記の如く左右方向に幅狭な矩形容器状乃至直方体状をなしている。
【0023】
タンク本体21における前壁21b上部には、前方へ張出す手掛部16が設けられている。手掛部16は、処理剤タンク11の上方から見て、その前壁21bと当該手掛部16とで枠形状をなしている。これにより、手掛部16内へ手指を入れ、手掛部16に内側から手指を掛けて、処理剤タンク11を上方へ引上げるようにしてタンク収容部12から取外すことができる。
【0024】
図3に示すように、タンク本体21には、後壁21c下部側に位置させて後方に張出す張出部分24が設けられている。張出部分24には、投入ポンプ13のポンプ接続部13aに挿入されて接続される導出管17が設けられている。
詳しい図示は省略するが、導出管17は、張出部分24の後壁24cを基端側として内方へ延びる水平部と、この水平部先端側から底壁21aに向けて下方へ延びる垂直部と、が夫々筒状をなし、全体として逆「L」字に形成されている。このため、洗濯処理剤は、導出管17を通じてタンク本体21の内底部側(底壁21a側)から導出される。
なお、タンク本体21において、上記した導出管17と後壁24cとを一体の部品として溶着により一体に組付けることができるが、当該部品や手掛部16を含むタンク本体21全体を一体成形してもよい。
【0025】
図3、
図4に示すように、タンクカバー22は、全体として前後方向に長い矩形板状をなす上壁22aを主体とし、タンク本体21の上面開口20を覆う大きさに形成されている。
タンクカバー22は、上壁22aにおいて補給口19を開閉する蓋25を有するとともに、タンク本体21の上縁部に組み合わさる第1外周リブ26と第2外周リブ27を有する。
【0026】
補給口19は、
図5~
図7に示すようにタンクカバー22の上壁22aの前半部において矩形枠状をなす部分で開口している。つまり、補給口19は、タンクカバー22の上壁22aにおける矩形の開口19aにて、処理剤タンク11内部と外部とを連通する。また、補給口19の開口19a周辺には、その後辺部に位置させてタンク本体21内部で当該補給口19を区画形成する仕切壁29が下方へ延設されている。
【0027】
詳細には、タンクカバー22には、補給口19の開口19a後辺部に位置させて段落ち部30が設けられるとともに、段落ち部30から下方へ延びる仕切壁29が設けられている。段落ち部30は、タンクカバー22の上壁22aから段落ちして凹んだ段付き状をなしている。
段落ち部30の左右両端部には、蓋25の軸部25aを軸支させる左右一対の軸受部分31,31が形成されている。
図9に示すように、左側の軸受部分31は、段落ち部30の左隅部に設けられた半円筒状の受部31aと、その受部31a前側の突起部31bとを含む部分であり、受部31aと突起部31bとの間に軸部25aの左端部が嵌合する(
図7参照)。同様に、右側の軸受部分31は、段落ち部30の右隅部に設けられた図示しない半円筒状の受部と、その前側の突起部31b(
図5参照)とを含む部分であり、当該受部と突起部31bとの間に軸部25aの右端部が嵌合する。なお、
図9に示す左側の軸受部分31には、空気口41を設けているが、第2実施形態として説明する。
【0028】
蓋25は、補給口19の開口19aに合わさる矩形板状をなしており、その一辺部に軸部25aを有する。蓋25は、その軸部25aが段落ち部30の軸受部分31,31で嵌合して軸支されることにより、開口19aを塞ぐ閉位置と(
図3、
図4参照)、開口19aを開放する開位置(
図6参照)との間で回動する。このとき、蓋25は、閉位置でタンクカバー22上面と面一になり、閉位置から開位置まで90度以上回動する構成とされている。
【0029】
図6に示すように、蓋25の下面となる裏面には、パッキン32用の保持部33が設けられている。パッキン32は、蓋25の閉位置で補給口19の開口19aを密閉するためのシール材である。保持部33は、蓋25の周縁部に沿ってパッキン32を保持する。
【0030】
図4、
図8に示すように、前記第1外周リブ26と第2外周リブ27は、何れもタンクカバー22外周部分において下方へ突出するように設けられている。
このうち、第2外周リブ27は、
図8に示すようにタンクカバー22の外縁に位置し、タンク本体21の外壁212側に接触可能に組み合わさる。第1外周リブ26は、第2外周リブ27に対して、パッキン34の厚さ分の隙間を空けた内周側の位置にあり、タンク本体21の内壁211側に接触可能に組み合わさる。
【0031】
タンクカバー22における上壁22aの下面には、第1外周リブ26と第2外周リブ27との間を保持部として、パッキン34が保持されている(
図4、
図8参照)。パッキン34は、タンク本体21上縁にタンクカバー22を組み合わせた状態で、タンク本体21の上面開口20を密閉するためのシール材として用いられる。
【0032】
図7、
図8に示すように、第1外周リブ26における下方への突出長H1は、基本的に第2外周リブ27の下方へ突出長H2に比して大きいものとする(H1>H2)。
他方、第2外周リブ27のうち、
図3に示すタンクカバー22後縁側の部分は、その突出長H2cが当該後縁側以外の突出長H2よりも大きくなるように設定された係止片35とされている(H2c>H2)。
【0033】
係止片35には、横長なスリット状の孔35aが形成されていて、タンク本体21後壁21cの係止部36で係止される(
図4参照)。また、係止片35に手指を掛けてタンクカバー22をタンク本体21から取外すとき、係止片35は、自身の可撓性により孔35aが係止部36から外れる向きに撓んで、その係止が解除されるようになっている。
【0034】
第1外周リブ26は、その突出長がH1に設定され、当該外周リブ26の下端と仕切壁29の下端とを同じ高さに揃えている(
図4、
図7、
図8参照)。なお、
図4に示す第1外周リブ26の後端側では、後方に向かうに従い突出長を小さくする傾斜26cが設けられており、タンクカバー22を取外すときに干渉しないようにしている。
【0035】
図5~
図7に示すように、補給口19は、第1外周リブ26の内方を前後に区画する仕切壁29と、当該外周リブ26とで形成される。この場合、第1外周リブ26のうち、補給口19を構成する仕切壁29の手前側の部分を「外周リブ261」、仕切壁29の奥側の部分を「外周リブ262」とも称し、両者261,262を区別する(
図4参照)。
こうして、補給口19は、タンクカバー22の開口19aから下方に延びる仕切壁29と外周リブ261とで略矩形筒状をなしている。
【0036】
詳細には、仕切壁29は、前方に向かうに従い下方へ傾斜した傾斜部29aと、傾斜部29a下端側から下方へ延びる垂直部29bとで漏斗状に屈曲している(
図4、
図7参照)。仕切壁29は、処理剤タンク11内部にて補給口19を区画形成するもの、つまり傾斜部29a及び垂直部29bで、後述する補給口19側の空間S1と後方の空間S2と(
図4参照)に分ける壁を構成する。
仕切壁29の傾斜部29aには、
図5~
図7に示すように「これ以下」として、「矢印」で傾斜部29aの下端側に指された基準線37が設けられている。基準線37は、刻印や印刷等により形成された所謂満タン液位であって、処理剤タンク11において満杯の液位を示す指標部となる。
【0037】
基準線37は、仕切壁29において視認し易い傾斜部29aに形成しているが、仕切壁29における垂直部29bの下端(
図7、
図9の符号37´で示す二点鎖線参照)に合わせて形成してもよい。或いは、垂直部29bの下端自体を指標部として「矢印」等で特定してもよい。以下では説明の便宜上、基準線或いは指標部について、垂直部29bの下端に設定したものを「基準線37´」と称する。また、基準線は、満杯の液位を特定可能な指標部となるものであればよく、外周リブ261側やタンク本体21の内壁211側に位置させて形成してもよいし、「これ以下」の文字等も含め適宜変更してもよい。
また、補給口19における外周リブ261の下端を、仕切壁29の下端と揃う高さとしているが、当該仕切壁29の下端よりも上方に位置するように形成してもよい。つまり、外周リブ261の下端を、
図7、
図8の符号26xで示す二点鎖線の位置として、前記基準線37´よりも上方となるように形成することができる。
【0038】
そして、仕切壁29の傾斜部29aには、その板厚方向に貫通する一対の孔部38,38が設けられている。
図5~
図7に示すように、一方の孔部38は、仕切壁29における傾斜部29a左端側に位置し、他方の孔部38(
図5参照)は、傾斜部29a右端側に位置する。孔部38,38は、何れも傾斜部29a下端から上端にわたって延びる縦長な長孔として形成されている。
【0039】
この場合、孔部38,38は、夫々の下端が基準線37と略同じ高さの位置、夫々の上端が傾斜部29a上端の位置にある。これにより、仕切壁29で仕切られた処理剤タンク11上部の空間であって、
図4にS1、S2で示す前後の空間S1,S2を、傾斜部29aの孔部38,38で連通する。
なお、上記したタンクカバー22は、蓋25を除いて、各外周リブ26,27や仕切壁29等の各部位を、合成樹脂材料による一体成形が可能であり、その樹脂成形に際して孔部38,38や基準線37を形成することができる。
【0040】
続いて、洗濯処理剤の補給に係る構成の作用について説明する。
洗濯処理剤の補給は、上記の如く処理剤タンク11をタンク収容部12から取外した状態或いは少なくともタンク収容部12のカバー14を開いた状態で行われるものとする(
図1参照)。また、処理剤タンク11の蓋25を前記開位置まで回動させて(
図6参照)、補給口19を開放する。
【0041】
このとき、ユーザは、補給口19の開口19aから覗く基準線37を目安に洗濯処理剤を注いでいく。これにより、開口19aから注がれた洗濯処理剤は、当該補給口19を通して処理剤タンク11内部に貯留され、その液位が次第に上昇して基準線37に達するまで補給を行うものとする。
【0042】
ここで、本実施形態と異なり、仕切壁29の孔部38,38が無いものと仮定した場合、開口19aから視認される限りにおいて、基準線37の示す液位まで満杯にしたとしても(
図4の液位F1参照)、死角となる仕切壁29奥方の空間S2では、その仕切壁29の下端を超えて液位F2が上昇しない。つまり、このものでは、処理剤タンク11内部へ洗濯処理剤を補給したときに、補給口19内の空間S1とその奥方の空間S2とでは、
図4に示すような液位の差(F1-F2)が生じ、奥方の空間S2まで洗濯処理剤で満たすことができず、実際に洗濯処理剤を貯留できる有効容積を狭める結果となる。
【0043】
この点、本実施形態の仕切壁29にあっては、孔部38,38により、仕切壁29奥方の空間S2の空気を補給口19内へ逃がすことができる。このため、洗濯処理剤の補給時に、その液位が仕切壁29の下端を超えても、補給口19内の空間S1と奥方の空間S2とで液位の差(F1-F2)を生じさせることがなく、奥方の空間S2も基準線37と同じ液位F1まで補給することができる。よって、処理剤タンク11の有効容積を狭めることなく、洗濯処理剤を所期の満杯の液位に貯留することができる。
【0044】
以上説明したように、本第1実施形態の処理剤タンク11において、補給口19は、処理剤タンク11内部と外部とを連通するとともに、処理剤タンク11内部にて当該補給口19を区画形成する仕切壁29が下方へ延設されており、仕切壁29には、その板厚方向に貫通する孔部38,38が設けられている。
【0045】
これによれば、処理剤タンク11内部に、仕切壁29で区画された補給口19と隣り合う空間S2があるものとしても、洗濯処理剤の補給時に、その空間S2の空気を、孔部38,38を通して補給口19側へ逃がすことができる。よって、処理剤タンク11において、洗濯処理剤を貯留するための有効容積が低減されることを抑制することができ、液位F2が上昇しないデッドスペースを無くすことが可能となる。
【0046】
前記孔部38,38は、その全部が、例えば基準線37のような処理剤タンク11において満杯の液位を示す指標部よりも上方に位置する。これによれば、指標部を目安に洗濯処理剤を補給して処理剤タンク11を満杯にする場合でも、仕切壁29の孔部38,38から確実に空気を逃すことができ、所期の有効容積を確保することができる。
【0047】
前記補給口19は、仕切壁29と外周リブ261とで形成されている。また、補給口19における当該外周リブ261の下端を、処理剤タンク11において満杯の液位を示す指標部(例えば
図7の二点鎖線の基準線37´)と同じ高さ、若しくは当該基準線37´よりも上方に位置させる場合に(同図の符号26x参照)、タンクカバー22とタンク本体21との間の隙間からの洗濯処理剤の漏れを抑制することができる。
【0048】
即ち例えば、外周リブ261の下端が、
図7の符号26xで示す二点鎖線の位置にあるとき、内部に貯留した洗濯処理剤で浸されないようにすることができる。従って、毛細管現象の如く当該外周リブ261とタンク本体21の内壁211との間で液位が上昇することを抑制することができ、例えばパッキン34等のシール機能と相俟って(或いは十分なシール機能が発揮されていなくても)外部への液漏れを、より抑制できるようになる。
【0049】
<他の実施形態>
図9~
図11は、本発明の第2、第3実施形態を示している。以下では、既述した実施形態と実質的に異なる点について述べることとする。
【0050】
図9に示す第2実施形態のタンクカバー40は、第1実施形態のタンクカバー22と次の点で相違する。即ち、タンクカバー40には、段落ち部30左側の軸受部分31に位置させて、その左側の第1外周リブ26の一部を切欠くようにして空気口41が形成されている。
詳細には、空気口41は、
図9、
図10に示す第1外周リブ26において軸受部分31の受部31aと突起部31bとにわたる左側の部位を同左方に貫通する部分41aと、段落ち部30左端とタンク本体21の内壁211との間に形成された隙間の部分41bとが連なり、処理剤タンク11外部と内部とを連通する。
【0051】
このように本第2実施形態の処理剤タンク11において、蓋25の軸部25aを軸支させる軸受部分31に、当該処理剤タンク11内部と外部とを連通し且つ補給口19を蓋25で閉じたときの空気の通り道となる空気口41を設けた。
【0052】
これによれば、空気口41によって、補給口19の蓋25を開閉するときの勢いで、処理剤タンク11内部の液位が変動することを抑制することができ、上記した外部への液漏れを抑制することができる。また、空気口41は、軸受部分31において処理剤タンク11の外観を損なわないように設けることができ、外部の埃等が浸入し難いものとすることができる。さらに、例えば前記導出管17を通じて内部の洗濯処理剤を導出し易くなり、処理剤タンク11のシール性に起因する投入ポンプ13の吸込み量の減少を抑制することができる。
【0053】
なお、空気口41は、左右一対の軸受部分31に対応させて、左右に対称的に設けた一対の空気口41,41で構成してもよい。
また、空気口41は、タンクカバー40の段落ち部30における軸部25aの近傍部分に位置させて、その段落ち部30を貫通する孔で構成してもよい。この場合、空気口の孔や切欠きは、使用者側から見てつまり処理剤タンク11の上方から或いは当該タンク11手前側で斜め上方から見て蓋25の軸部25aで隠れる部分に、処理剤タンク11の外観を損なわないように設けることができる。
【0054】
図11は、第3実施形態のタンクカバー42を示す側面図である。
タンクカバー42には、前記第1外周リブ26に代えて第1外周リブ26´が設けられるとともに、フロート43が設けられている。
【0055】
図11に示すように、第1外周リブ26´は、補給口19側の前記外周リブ261と、その突出長H1に比して小さい突出長H1´に設定された仕切壁29奥側の外周リブ262´とで構成されている(H1>H1´)。この場合、外周リブ262´の突出長H1´は、処理剤タンク11における基準線37よりも上方に位置する。
このように、本第3実施形態の外周リブ262´において、その突出長H1´が、処理剤タンク11において満杯の液位を示す指標部(例えば基準線37)よりも上方に位置するように設定されるものとする。
【0056】
上記のように、第1外周リブ26´の下端において指標部よりも上方の位置にある部分、つまり第1外周リブ26´のうち例えば外周リブ262´の下端が基準線37よりも上方の位置にあることから、内部に貯留した洗濯処理剤で浸されないようにすることができ、当該外周リブ262´とタンク本体21の内壁211との間で液位が上昇することを抑制することができる等、上記した実施形態と同様の効果を奏する。
上記した第1外周リブ26´において、外周リブ262´のみならず、外周リブ261を含む全周にわたって突出長をH1´とし、仕切壁29のみ突出長をH1に設定してもよい。このように、第1外周リブ26´の下端が全周にわたって、例えば基準線37よりも上方の位置にあるとき、その全周にわたって内部に貯留した洗濯処理剤で浸されないようにすることができる。
【0057】
なお、フロート43は、タンクカバー42下面の後部側に設けられた支持部44で揺動可能に支持されている。これにより、フロート43は、処理剤タンク11内部において、洗濯処理剤の貯留量の増減に伴って、支持部44を支点に浮き沈みする。詳しい図示及び説明は省略するが、フロート43は、例えば永久磁石を内蔵しており、その永久磁石の接近を検出するための磁気センサを処理剤タンク11に搭載することで、洗濯処理剤の残量を自動で検出するようになっている。
【0058】
上記した各実施形態について、図示しない縦軸型の洗濯機にも適用しうることは勿論である。また、各実施形態を組み合わせたり変更したりして実施することもできる。
例えば、仕切壁29において、孔部38,38を円形とする等、孔部の形状や配置、個数を含め適宜してもよい。こうした孔部は、その一部が処理剤タンク11における基準線37よりも上方に位置するように設けた場合でも、当該孔部から空気を逃すことができる等、上記した実施形態と同様の効果を奏する。
【0059】
また、孔部38,38に代えて切欠き部を設けるようにしてもよい。図示は省略するが、切欠き部は、例えば孔部38,38の下端側を仕切壁29の下端側まで延ばすようにして、仕切壁29を切欠くことにより形成される。
即ち、切欠き部は、例えば仕切壁29の板厚方向に貫通し且つ仕切壁29の下端側から上端側へ向かって切欠くようにしたスリット状に形成することができる。また、切欠き部の一部又は全部が、処理剤タンク11における基準線37よりも上方に位置する場合でも、当該切欠き部から空気を逃すことができる等、上記した実施形態と同様の効果を奏する。
【0060】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示
したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は
、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、
種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変更は、発明の
範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含
まれる。
【符号の説明】
【0061】
図面中、1は洗濯機、5は水槽、10は自動投入装置、11,11A,11Bは処理剤タンク、19は補給口、21はタンク本体、22,40,42はタンクカバー、25は蓋、25aは軸部、26,261,262,262´は外周リブ、29は仕切り壁、31は軸受部分、37,37´は基準線(指標部)、38は孔部、41は空気口、を示す。