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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-28
(45)【発行日】2024-06-05
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20240529BHJP
   B62D 25/10 20060101ALI20240529BHJP
【FI】
E02F9/00 N
B62D25/10 J
B62D25/10 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020162126
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022054875
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 講介
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-172114(JP,A)
【文献】特開2013-076264(JP,A)
【文献】特開平11-139584(JP,A)
【文献】登録実用新案第3159982(JP,U)
【文献】米国特許第10087602(US,B2)
【文献】特開2016-069964(JP,A)
【文献】特開2018-017287(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0204229(US,A1)
【文献】特開平08-311927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00-9/18
B62D 25/10-25/13
B60K 11/00-15/00
F01N 3/00-3/38
F01N 9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造体をなし前側に作業装置が取付けられた車体フレームと、
前記車体フレームの後側に設けられたカウンタウエイトと、
前記カウンタウエイトの前側に位置して前記車体フレーム上に左右方向に延在する横置き状態に設けられたエンジンと、
前記エンジンの左右方向の一側に位置して排気ガスを処理する排気ガス後処理装置と、
前記エンジンと前記排気ガス後処理装置を覆うように前記車体フレーム上に設けられた左側面板、右側面板およびメンテナンス用の開口部を有する上面板からなる外装カバーと、
前記エンジンの上方に位置して前記上面板の前記開口部を覆って設けられ、前記カウンタウエイト側を支点として開閉可能なエンジンカバーと、
前記エンジンカバーの一側に並ぶように前記排気ガス後処理装置の上方に位置して前記上面板の前記開口部を覆って設けられ、前記カウンタウエイト側を支点として開閉可能な後処理装置カバーと、
前記後処理装置カバーから上方に突出して設けられ、前記排気ガス後処理装置に接続された尾管と、
を備えてなる建設機械において、
前記エンジンカバーと前記後処理装置カバーとの間に設けられ、前記エンジンカバーの開扉に伴って展開される防護カバーを有し、
前記防護カバーは、
前記エンジンカバーが開いて、かつ、前記後処理装置カバーが閉じられているときに、展開された状態となって、前記エンジンカバーが開かれることで形成される前記エンジンの上方のメンテナンススペースと前記後処理装置カバー上の前記尾管との間を覆い、
前記エンジンカバーと前記後処理装置カバーとが共に開いているときに、前記エンジンカバーと前記後処理装置カバーとの間に畳まれて格納されることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記防護カバーは、エンジン側扇状板と後処理装置側扇状板とを含む、扇形状をした複数の扇状板により構成されており、
複数の前記扇状板のそれぞれは、前記カウンタウエイト側を回動支点として前記エンジンカバーの開閉方向に回動可能、かつ、左右方向に並んで設けられていると共に、前記回動支点を中心とした円弧状の円弧溝が形成されており、
複数の前記扇状板のうち隣り合う扇状板は、互いの前記円弧溝内に移動可能に係合するフックにより連結されており、
前記エンジン側扇状板は、前記エンジンカバーに連結されており、
前記後処理装置側扇状板は、前記後処理装置カバーに連結されていることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項に記載の建設機械において、
前記後処理装置カバーと前記後処理装置側扇状板とのうちいずれかの一方には長孔が設けられ、
前記後処理装置カバーと前記後処理装置側扇状板とのうちいずれかの他方には前記長孔内を移動可能な状態で前記長孔に連結する連結突起が設けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項に記載の建設機械において、
前記後処理装置カバーには、前記後処理装置側扇状板と連結するための連結突起が突出して設けられ、
前記エンジンカバーには、当該エンジンカバーを閉じた状態で前記連結突起に上側から係合して前記後処理装置カバーの開扉方向への動作を規制する係合部が設けられていることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジンを備えた油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例である油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、上部旋回体の前側に俯仰の動作が可能に設けられた作業装置とによって構成されている。
【0003】
上部旋回体は、支持構造体をなし前側に作業装置が取付けられた旋回フレームと、旋回フレームの後側に設けられたカウンタウエイトと、カウンタウエイトの前側に位置して旋回フレーム上に左右方向に延在する横置き状態に設けられたエンジンと、エンジンの左右方向の一側に位置して排気ガスを処理する排気ガス後処理装置と、エンジンと排気ガス後処理装置を覆うように旋回フレーム上に設けられた左側面板、右側面板およびメンテナンス用の開口部を有する上面板からなる外装カバーと、エンジンの上方に位置して上面板の開口部を覆って設けられ、カウンタウエイト側を支点として開閉可能なエンジンカバーと、エンジンカバーの一側に並ぶように排気ガス後処理装置の上方に位置して上面板の開口部を覆って設けられ、カウンタウエイト側を支点として開閉可能な後処理装置カバーと、後処理装置カバーから上方に突出して設けられ、排気ガス後処理装置に接続された尾管と、を備えている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-069964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1による建設機械では、エンジンカバーを開扉してエンジン周りのメンテナンスを行う場合、メンテナンススペースの近傍に尾管が位置している。この尾管は、排気ガスによって高温になっているから、エンジン等のメンテナンス時に接触することを考慮して、尾管の温度が下がるまで作業を行うことができない。このために、メンテナンスを行うときの作業性が低下してしまうという問題がある。
【0006】
本発明の一実施形態の目的は、尾管の温度が下がるのを待つことなく、メンテナンスを行うことができるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、支持構造体をなし前側に作業装置が取付けられた車体フレームと、前記車体フレームの後側に設けられたカウンタウエイトと、前記カウンタウエイトの前側に位置して前記車体フレーム上に左右方向に延在する横置き状態に設けられたエンジンと、前記エンジンの左右方向の一側に位置して排気ガスを処理する排気ガス後処理装置と、前記エンジンと前記排気ガス後処理装置を覆うように前記車体フレーム上に設けられた左側面板、右側面板およびメンテナンス用の開口部を有する上面板からなる外装カバーと、前記エンジンの上方に位置して前記上面板の前記開口部を覆って設けられ、前記カウンタウエイト側を支点として開閉可能なエンジンカバーと、前記エンジンカバーの一側に並ぶように前記排気ガス後処理装置の上方に位置して前記上面板の前記開口部を覆って設けられ、前記カウンタウエイト側を支点として開閉可能な後処理装置カバーと、前記後処理装置カバーから上方に突出して設けられ、前記排気ガス後処理装置に接続された尾管と、を備えてなる建設機械において、前記エンジンカバーと前記後処理装置カバーとの間に設けられ、前記エンジンカバーの開扉に伴って展開される防護カバーを有し、前記防護カバーは、前記エンジンカバーが開いて、かつ、前記後処理装置カバーが閉じられているときに、展開された状態となって、前記エンジンカバーが開かれることで形成される前記エンジンの上方のメンテナンススペースと前記後処理装置カバー上の前記尾管との間を覆い、前記エンジンカバーと前記後処理装置カバーとが共に開いているときに、前記エンジンカバーと前記後処理装置カバーとの間に畳まれて格納される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、尾管の温度が下がるのを待つことなく、メンテナンスを行うことができ、作業効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベルを示す左側面図である。
図2】作業装置の一部を省略した油圧ショベルの平面図である。
図3】上部旋回体の後側部分を拡大して示す斜視図である。
図4】エンジンカバーの一部を破断して防護カバーを露出させた状態を図3と同様位置から見た斜視図である。
図5】エンジンカバーを開いて防護カバーを展開させた状態を図3と同様位置から見た斜視図である。
図6】エンジンカバーと後処理装置カバーを開いた状態を図3と同様位置から見た斜視図である。
図7図5からエンジン、防護カバー等を省略した状態の上部旋回体の後側部分を示す斜視図である。
図8】エンジン側扇状板を単体で示す斜視図である。
図9】カバー側扇状板を単体で示す斜視図である。
図10】中間扇状板を単体で示す斜視図である。
図11図5中のフックを単体で示す斜視図である。
図12図5中のフックを単体で示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る建設機械の代表例として、ホイール式の油圧ショベルを例に挙げ、図1ないし図12に従って詳細に説明する。
【0011】
図1図2において、油圧ショベル1は、左右の前輪2Aおよび左右の後輪2Bを有する自走可能なホイール式の下部走行体2を備えたホイール式の油圧ショベルである。油圧ショベル1は、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に俯仰の動作が可能に設けられた作業装置4とを備えている。
【0012】
旋回フレーム5は、下部走行体2上に旋回可能に搭載されている。旋回フレーム5は、上部旋回体3の支持構造体なす車体フレームを構成している。この旋回フレーム5の前側には、作業装置4が取付けられている。
【0013】
カウンタウエイト6は、旋回フレーム5の後部に設けられている。カウンタウエイト6は、作業装置4との重量バランスをとる重錘をなしている。カウンタウエイト6は、後面の中央が後側に突出した略円弧状に形成されている。
【0014】
図5図6に示すように、エンジン7は、カウンタウエイト6の前側に位置して旋回フレーム5上に設けられている。エンジン7は、例えば、ディーゼルエンジンとして構成され、左右方向に延在する横置き状態で搭載されている。エンジン7の右側には、油圧ポンプ(図示せず)が取付けられている。一方、エンジン7の左側には、冷却ファンに対面してラジエータ、オイルクーラ等からなる熱交換装置(いずれも図示せず)が配置されている。
【0015】
図6に示すように、排気ガス後処理装置8は、エンジン7の左右方向の一側となる右側に位置して油圧ポンプ上に設けられている。排気ガス後処理装置8は、エンジン7の排気側に接続され、エンジン7から排出される排気ガス中の有害物質を除去したり、排気音を低減したりする。排気ガス後処理装置8は、エンジン7からの排気ガスを高温のまま取入れることにより、有害物質を燃焼して除去する機能を有している。そして、排気ガス後処理装置8で処理された排気ガスは、上向きに突出した排気口8Aから後述の尾管20を通じて外部(外気)に放出される。
【0016】
図2に示すように、作動油タンク9は、排気ガス後処理装置8の前側に位置して旋回フレーム5上に設けられている。この作動油タンク9は、油圧ショベル1に搭載された各種アクチュエータに供給される作動油を貯える。一方、燃料タンク10は、作動油タンク9の右側に隣接して旋回フレーム5上に設けられている。この燃料タンク10は、エンジン7に供給される燃料を貯える。
【0017】
キャブ11は、エンジン7の前側に位置して旋回フレーム5の左側に配置されている。キャブ11は、オペレータが搭乗するもので、内部にはオペレータが着座する運転席、走行用のハンドル、作業用の操作レバー等(いずれも図示せず)が配設されている。
【0018】
外装カバー12は、エンジン7、排気ガス後処理装置8を含む機器を覆うように、旋回フレーム5上に設けられている。外装カバー12は、カウンタウエイト6と作動油タンク9、燃料タンク10、キャブ11との間に設けられている。外装カバー12は、後述の左側面板13、右側面板14および上面板15を含んで構成されている。
【0019】
左側面板13は、キャブ11とカウンタウエイト6との間に位置して、熱交換装置の左側を覆っている。一方、右側面板14は、燃料タンク10とカウンタウエイト6との間に位置して、油圧ポンプ、排気ガス後処理装置8の右側を覆っている。
【0020】
上面板15は、左側面板13の上縁と右側面板14の上縁とに亘って左右方向に延びて設けられている。上面板15は、カウンタウエイト6の上面と同等の高さ位置に配置されている。上面板15は、エンジン7、排気ガス後処理装置8等をメンテナンスするためのメンテナンス用の開口部15Aを有している。この開口部15Aは、エンジン7、排気ガス後処理装置8、熱交換装置の上側に大きく開口している。
【0021】
熱交換装置カバー16は、上面板15の左側に位置して熱交換装置の上側を覆っている。熱交換装置カバー16は、下側と右側が開口した前後方向に長尺なボックス体として形成され、左側が上面板15に開閉可能に取付けられている。ここで、熱交換装置カバー16は、例えば、当該熱交換装置カバー16と後述のエンジンカバー17とを閉じた状態では、熱交換装置カバー16にエンジンカバー17の一部が係合することにより、単独では開扉できないようになっている。換言すれば、エンジンカバー17に施錠すれば、熱交換装置カバー16の開扉も一緒に規制することができる。
【0022】
エンジンカバー17は、エンジン7の上方に位置して上面板15の開口部15Aを覆って設けられている。また、エンジンカバー17は、前面部17A、後面部17B、左面部17C、右面部17Dおよび上面部17Eにより下側が開口したボックス体として形成されている。
【0023】
図7に示すように、右面部17Dの下縁側には、前面部17A側に位置して係合部17Fが設けられている。この係合部17Fは、エンジンカバー17を閉じた状態で、後述する後処理装置カバー19の連結突起19Eに係合することにより、後処理装置カバー19が単独で開扉方向に動作するのを規制する。
【0024】
また、上面部17Eには、下面の前面部17A寄り位置から下向きに延びて連結ブラケット17Gが設けられている。この連結ブラケット17Gは、後述する連結機構28の一部を構成している。連結ブラケット17Gは、右面部17Dの近傍に位置して右面部17Dと平行に延びた長方形状の板体からなる。連結ブラケット17Gの下側部位には、エンジンカバー17を閉じた状態において横方向に延びて長孔17G1が形成されている。長孔17G1には、後述のリンク部材29を介して防護カバー21のカバー側扇状板25が連結される。
【0025】
さらに、図2図3に示すように、上面部17Eには、ハンドル17H1を有する開閉機構17Hが設けられている。開閉機構17Hには、ハンドル17H1の操作を規制するキーシリンダ17H2が取付けられている。これにより、エンジンカバー17は、図3に示すように、閉扉した状態で開閉機構17Hのキーシリンダ17H2を施錠側に操作することにより、エンジンカバー17を閉扉状態にロックすることができる。しかも、前述した熱交換装置カバー16と後述の後処理装置カバー19は、閉じた状態のエンジンカバー17と係合状態にあるから、エンジンカバー17と一緒に熱交換装置カバー16と後処理装置カバー19もロックすることができる。
【0026】
ここで、エンジンカバー17は、カウンタウエイト6側に位置する後面部17Bが複数、例えば2個の蝶番17Jを介して上面板15に取付けられている。従って、エンジンカバー17は、各蝶番17Jを支点として上面板15に開閉可能に取付けられている。これにより、エンジンカバー17は、図3図4に示す閉扉位置と図5図6図7に示す開扉位置(全開位置)との間で回動(開閉)することができる。また、エンジンカバー17と外装カバー12との間には、エンジンカバー17の開閉を補助するためのガスばね(図示せず)が設けられている。
【0027】
後部固定カバー18は、カウンタウエイト6側(後側)に位置してエンジンカバー17の右隣りに設けられている。後部固定カバー18は、前側と下側が開口したボックス体として形成され、上面板15上に固定的に取付けられている。また、後部固定カバー18の上部前側には、後述の蝶番19Fを介して後処理装置カバー19が開閉可能に取付けられている。
【0028】
後処理装置カバー19は、エンジンカバー17の一側、即ち、後部固定カバー18の前側に位置して右面部17Dの右側に並ぶように設けられている。後処理装置カバー19は、排気ガス後処理装置8の上方に位置して上面板15の開口部15Aを覆っている。後処理装置カバー19は、前面部19A、左面部19B、右面部19Cおよび上面部19Dにより下側と後側が開口したボックス体として形成されている。
【0029】
図7に示すように、左面部19Bの下縁側には、前面部19A側に位置して連結突起19Eが左側に突出して設けられている。この連結突起19Eは、防護カバー21を構成するエンジン側扇状板24の長孔24Dに連結することにより、長孔24Dと一緒に連結機構を構成している。また、連結突起19Eには、エンジンカバー17の閉扉状態では、右面部17Dの係合部17Fが上側から係合している。
【0030】
ここで、後処理装置カバー19は、カウンタウエイト6側に位置する上面部19Dの後部が複数、例えば2個の蝶番19Fを介して後部固定カバー18に取付けられている。従って、後処理装置カバー19は、各蝶番19Fを支点として上面板15に開閉可能に取付けられている。これにより、後処理装置カバー19は、図3図4図5図7に示す閉扉位置と図6に示す開扉位置(全開位置)との間で回動(開閉)することができる。また、後処理装置カバー19と外装カバー12との間には、後処理装置カバー19の開閉を補助するためのガスばね(図示せず)が設けられている。
【0031】
なお、後処理装置カバー19を開閉可能に支持する各蝶番19Fの軸線は、エンジンカバー17を開閉可能に支持する各蝶番17Jの軸線と前後方向と上下方向とに位置がずれている。これにより、後処理装置カバー19を開閉したときの軌跡とエンジンカバー17を開閉したときの軌跡とにずれが生じている。
【0032】
尾管20は、後処理装置カバー19の上面部19Dから上方に突出して設けられている。尾管20は、エンジン7から排出される排気ガスを外部に放出するための排気管の一部を構成している。尾管20は、後処理装置カバー19の閉扉状態で排気ガス後処理装置8の排気口8Aに接続されている。尾管20は、排気ガス後処理装置8から排出された高温の排気ガスが流通するために高温になる。
【0033】
次に、本実施形態の特徴部分となる防護カバー21の構成および動作について詳細に説明する。
【0034】
防護カバー21は、エンジンカバー17と後処理装置カバー19との間に設けられている。図5に示すように、防護カバー21は、エンジンカバー17を開いた状態で形成されるエンジン7の上方のメンテナンススペース22と閉じられた後処理装置カバー19上の尾管20との間を覆う。
【0035】
防護カバー21は、エンジンカバー17の開閉方向に連続する複数枚の扇状板を含んで構成されている。詳しくは、防護カバー21は、支点部材23、エンジン側扇状板24、カバー側扇状板25、中間扇状板26、連結機構28を含んで構成されている。
【0036】
支点部材23は、各扇状板24,25,26が回動するときに中心、即ち、扇の要となっている。支点部材23は、エンジンカバー17を閉じた状態で、後面部17Bと右面部17Dとの隅に配置され、上面板15または上面板15を支持する構造体に取付けられている。支点部材23は、左右方向に延びたピン23Aを有し、このピン23Aに各扇状板24,25,26の基部が回動可能に取付けられている。
【0037】
エンジン側扇状板24は、エンジン7側に配置されている。図8に示すように、エンジン側扇状板24は、鋭角(例えば、20度程度)な基部に設けられたピン孔24Aを中心にした扇状板として形成されている。エンジン側扇状板24は、外径側に位置してピン孔24Aを中心とした円弧溝24Bを有している。また、エンジン側扇状板24の外径側には、エンジン7側の直線部24Cに沿って長孔24Dが設けられている。円弧溝24Bには、後述のフック27が係合される。
【0038】
長孔24Dは、後処理装置カバー19と防護カバー21との間に設けられ、エンジンカバー17と後処理装置カバー19とが開閉するときの位置ずれを許容するための連結機構を構成している。具体的には、長孔24Dは、連結突起19Eの移動を許すことで、後処理装置カバー19が各蝶番19Fを支点として開閉するときの軌跡と、エンジン側扇状板24がピン孔24A(支点部材23のピン23A)を支点として回動するときの軌跡との位置ずれを許容している。
【0039】
カバー側扇状板25は、後処理装置カバー19側に配置されている。図9に示すように、エンジン側扇状板24と同様に、鋭角(例えば、20度程度)な基部に設けられたピン孔25Aを中心にした扇状板として形成されている。カバー側扇状板25は、外径側に位置してピン孔25Aを中心とした円弧溝25Bを有している。カバー側扇状板25の外径側には、エンジン7側のエンジン側直線部25Cを切り欠いた切欠部25Dが設けられている。円弧溝25Bには、後述のフック27が係合される。また、切欠部25Dは、エンジンカバー17を閉じたときに、後処理装置カバー19の連結突起19Eとの干渉を避ける。
【0040】
さらに、カバー側扇状板25の外径側には、後処理装置カバー19側のカバー側直線部25Eの近傍に位置して連結孔25Fが設けられている。この連結孔25Fには、後述する連結機構28のリンク部材29の連結ピン29Aが連結される。
【0041】
中間扇状板26は、エンジン側扇状板24とカバー側扇状板25との間に1枚以上、例えば2枚配置されている。図10に示すように、エンジン側扇状板24と同様に、鋭角(例えば、20度程度)な基部に設けられたピン孔26Aを中心にした扇状板として形成されている。中間扇状板26は、外径側に位置してピン孔26Aを中心とした円弧溝26Bを有している。中間扇状板26の外径側には、エンジン7側の直線部26Cを切り欠いた切欠部26Dが設けられている。円弧溝26Bには、フック27が係合される。また、切欠部26Dは、エンジンカバー17を閉じたときに、後処理装置カバー19の連結突起19Eとの干渉を避ける。
【0042】
フック27は、エンジン側扇状板24とエンジン7側の中間扇状板26との間、カバー側扇状板25と後処理装置カバー19側の中間扇状板26との間、エンジン7側の中間扇状板26と後処理装置カバー19側の中間扇状板26との間に合計3個設けられている。図11図12に示すように、フック27は、長円状の板体からなり、長さ方向の端部側に表裏で互いに反対側に突出した鍔付きの係合ピン27Aを有している。
【0043】
フック27は、例えば、一方の係合ピン27Aをエンジン側扇状板24の円弧溝24Bに係合させ、他方の係合ピン27Aをエンジン側扇状板24に隣り合うエンジン7側の中間扇状板26の円弧溝26Bに係合させる。これにより、フック27は、エンジン側扇状板24と中間扇状板26とを全体が重なった格納位置と一部だけが重なった展開位置とに案内することができる。同様に、フック27は、カバー側扇状板25と後処理装置カバー19側の中間扇状板26との間、エンジン7側の中間扇状板26と後処理装置カバー19側の中間扇状板26との間も格納、展開自在に連結している。
【0044】
連結機構28は、エンジンカバー17と防護カバー21との間に設けられ、エンジンカバー17と後処理装置カバー19とが開閉するときの位置ずれを許容する。連結機構28は、エンジンカバー17の連結ブラケット17G(長孔17G1)とリンク部材29とを含んで構成されている。リンク部材29は、長尺な板体からなり、長さ方向の一側に連結ピン29Aが設けられている。一方、リンク部材29の長さ方向の他側には、連結ピン29Aと反対側に突出して鍔付きの係合ピン29Bが設けられている。
【0045】
連結機構28は、リンク部材29の連結ピン29Aをカバー側扇状板25の連結孔25Fに回動可能に取付け、リンク部材29の係合ピン29Bをエンジンカバー17の連結ブラケット17Gの長孔17G1に係合させる。これにより、連結機構28は、カバー側扇状板25をエンジンカバー17に連結することができる。
【0046】
しかも、連結機構28は、リンク部材29が自由に回動でき、また、係合ピン29Bが長孔17G1に対して移動自在に係合している。これにより、連結機構28は、エンジンカバー17が各蝶番17Jを支点として開閉するときの軌跡と、カバー側扇状板25がピン孔25A(支点部材23のピン23A)を支点として回動するときの軌跡との位置ずれを許容している。
【0047】
このように構成された防護カバー21は、図3に示すように、エンジンカバー17を閉じた状態では、図4に示す格納位置に配置されている。この格納位置の防護カバー21は、エンジンカバー17の内部に納められている。一方、図5に示すように、エンジンカバー17を開いた状態では、後処理装置カバー19に連結されたエンジン側扇状板24とエンジンカバー17に連結されたエンジン側扇状板24との間で各中間扇状板26が連なって広がることで、防護カバー21が展開位置となる。この防護カバー21の展開位置では、メンテナンススペース22と尾管20との間を覆うことができる。
【0048】
本実施の形態によるホイール式の油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、ホイール式の油圧ショベル1の動作について説明する。
【0049】
オペレータは、キャブ11に搭乗して運転席に座り、エンジン7を作動させる。この状態で、キャブ11内に配置された走行用のハンドル等を操作することにより、下部走行体2を駆動して油圧ショベル1を前進または後退させることができる。また、作業用の操作レバーを操作することにより、上部旋回体3を旋回させつつ作業装置4を用いて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0050】
ここで、エンジン7等のメンテナンスを行う場合について説明する。この場合には、エンジンカバー17を開扉してエンジン7の上方にメンテナンススペース22を確保する。しかし、エンジン7の停止直後は、メンテナンススペース22の近傍に位置する尾管20が排気ガスの熱によって高温になっているから、尾管20の温度が下がるまで作業を行うことができない。
【0051】
然るに、本実施形態によれば、エンジンカバー17と後処理装置カバー19との間には、エンジンカバー17を開いた状態で形成されるメンテナンススペース22と閉じられた後処理装置カバー19上の尾管20との間を覆う防護カバー21が設けられている。これにより、メンテナンススペース22で作業を行うためにエンジンカバー17を開いたときには、防護カバー21によって尾管20との接触を防止することができる。
【0052】
この結果、作業者は、尾管20の温度が下がるのを待つことなく、尾管20の温度が高いエンジン7の停止直後でもメンテナンスを開始することができ、作業効率を向上することができる。
【0053】
また、防護カバー21は、エンジンカバー17の開閉方向に連続する複数枚の扇状板、即ち、エンジン側扇状板24、カバー側扇状板25、2枚の中間扇状板26を含んで構成されている。従って、エンジンカバー17を閉じた状態では、各扇状板24,25,26をコンパクトに(低く)格納することができる。これにより、防護カバー21は、エンジンカバー17内に収納することができる。この結果、エンジンカバー17と後処理装置カバー19とを密接させることができるから、雨水や塵埃の浸入を防ぐことができる。
【0054】
しかも、後処理装置カバー19を開いたときには、防護カバー21(各扇状板24,25,26)をエンジンカバー17側に畳むことができる。これにより、排気ガス後処理装置8のメンテナンスを行う場合でも、広い作業スペースを確保することができ、この点でも作業性を向上することができる。
【0055】
後処理装置カバー19と防護カバー21との間には、エンジンカバー17と後処理装置カバー19とが開閉するときの位置ずれを許容する長孔24Dを用いた連結機構を備えている。また、エンジンカバー17と防護カバー21との間には、エンジンカバー17と後処理装置カバー19とが開閉するときの位置ずれを許容する長孔17G1を用いた連結機構28を備えている。これにより、エンジンカバー17、後処理装置カバー19、防護カバー21(各扇状板24,25,26)の回動支点がずれている場合でも、それぞれを円滑に動作させることができるから、設計の自由度を高めることができる。
【0056】
さらに、後処理装置カバー19には、防護カバー21と連結するための連結突起19Eが設けられている。また、エンジンカバー17には、当該エンジンカバー17を閉じた状態で連結突起19Eに係合して後処理装置カバー19の開扉方向への動作を規制する係合部17Fが設けられている。従って、エンジンカバー17の開閉機構17Hに設けたキーシリンダ17H2を施錠することにより、熱交換装置カバー16の開扉も一緒に規制することができる。
【0057】
なお、実施形態では、防護カバー21には、4枚の扇状板24,25,26を設けた場合を例に挙げて説明している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、扇状板を2枚、3枚または5枚以上設ける構成としてもよい。この場合、各扇状板の基部の角度は、20度前後と異なる角度が採用される。
【0058】
実施形態では、後処理装置カバー19と防護カバー21との間に、エンジンカバー17と後処理装置カバー19とが開閉するときの位置ずれを許容する長孔24Dを用いた連結機構を設け、エンジンカバー17と防護カバー21との間に、エンジンカバー17と後処理装置カバー19とが開閉するときの位置ずれを許容する長孔17G1を用いた連結機構28を設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、エンジンカバーと防護カバーとの間または後処理装置カバーと防護カバーとの間のいずれか一方だけに連結機構を設ける構成としてもよい。
【0059】
また、実施形態では、外装カバー12の上面板15上に、熱交換装置カバー16、エンジンカバー17、後処理装置カバー19等を設けた場合を例に挙げて説明している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、熱交換装置カバーを省略して外装カバーの上面板上にエンジンカバーと後処理装置カバーとを設ける構成としてもよい。
【0060】
さらに、実施形態では、ホイール式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、クローラ式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。また、ホイールローダ、クレーン等の他の建設機械にも適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
4 作業装置
5 旋回フレーム(車体フレーム)
6 カウンタウエイト
7 エンジン
8 排気ガス後処理装置
12 外装カバー
13 左側面板
14 右側面板
15 上面板
15A 開口部
17 エンジンカバー
17F 係合部
17G 連結ブラケット(連結機構)
17G1,24D 長孔
17J,19F 蝶番(支点)
19 後処理装置カバー
19E 連結突起(連結機構)
20 尾管
21 防護カバー
22 メンテナンススペース
24 エンジン側扇状板(扇状板)
25 カバー側扇状板(扇状板)
26 中間扇状板
28 連結機構
図1
図2
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